説明

連続めっき用水洗装置

【課題】 本発明は、連続めっき用水洗装置に関し、更に詳細には、装置全長を長くすることなく、その処理水の給水量を効果的に節水することが可能な連続めっき用水洗装置の提供。
【解決手段】 被めっき物を裁置するテープを搬送する搬送ローラーと、搬送中の前記テープに散水するためのシャワーと、前記テープを洗浄するための水洗槽を備えた連続めっき用水洗装置であって、前記水洗槽内を、前記テープの通過する順に、第一槽、第二槽、および第三槽に仕切り、各槽を仕切る間仕切りには前記テープおよび水を通過させるためのスリットを設けるとともに、前記水洗槽内の洗浄水を前記第一槽から装置外に排水する手段と、装置外より洗浄水を前記第三槽に供給する手段を設けることにより、前記テープの搬送方向とは逆方向に水が前記各水洗槽間を流れることを可能としてなる連続めっき用水洗装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続めっき用水洗装置に関し、更に詳細には、連続水平めっき装置において、その水洗槽内を3槽に仕切ることにより、1つの水洗槽の幅でありながら、3段水洗の効果を得ることを可能とした連続めっき槽用の水洗装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
めっき製品の仕上がり品質を維持するためには、各処理工程の後において、十分な水洗処理を行ない、被めっき製品を清浄な状態で次の処理工程を施すことが望ましい。この水洗処理は、古くは、1つの水洗槽を用いる、いわゆる1段水洗が用いられていたが、この方法では、すぐに水洗槽中に前工程の処理薬剤が持ち込まれ、十分な水洗ができなくなるという問題があり、更には、その後の処理工程に前工程の薬剤が持ち込まれるという問題もあった。このような問題を避けるためには、水洗水を常に流し出したり、頻繁に変えることが行われていたが、不経済であり、また、排水処理や環境負荷の面からも大きな問題となっている。
【0003】
近年、一段水洗の欠点を解消した方法として、水洗槽を3段に設けた3段水洗が知られている。この方法は、一番後ろの水洗槽から、順次前の水洗槽に少量ずつ水を流すいわゆる向流水洗法と組み合わせることにより、十分な水洗効果を得ながら水洗処理用の水を効果的に節水する方法である。
【0004】
しかしながら、いわゆるリールツーリール方式と呼ばれる、被めっき物をテープ上に搭載し、水平に移動しながらめっきを行う連続めっき装置においては、水洗槽の間にテープ(ワーク)を搬送するローラー等を設ける必要性から、3段水洗槽を設けると装置構造が複雑になるとともに全長が長くなるという問題があった。また、このような装置で3段水洗槽を採用すると、各処理間の移動時間が長くなり、被めっき物の表面が乾燥したり、不活性化するおそれもあり、この面からの問題も有していた。
【0005】
また、連続式めっき装置において、処理水を効果的に減らすための水洗装置も開発されてはいるが(特許文献1)、このものは、垂直式の連続式めっき装置において利用できる技術であり、水平式のタイプに応用できるものではなかった。
【0006】
【特許文献1】特開2004−270003号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、従来の連続めっき用水洗装置のかかる欠点を克服し、装置全長を長くすることなく、その処理水の給水量を効果的に節水することが可能な連続めっき用水洗装置の提供をその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するものであり、被めっき物を裁置するテープを搬送する搬送ローラーと、搬送中の前記テープに散水するためのシャワーと、前記テープを洗浄するための水洗槽を備えた連続めっき用水洗装置であって、前記水洗槽内を、前記テープの通過する順に、第一槽、第二槽、および第三槽に仕切り、各槽を仕切る間仕切りには前記テープおよび水を通過させるためのスリットを設けるとともに、前記第一槽にはフロー排水管を設け、前記第三槽には清浄水を供給する手段を設けることにより、前記テープの搬送方向とは逆方向に水が前記各水洗槽間を流れることを可能としてなる連続めっき用水洗装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る連続めっき用水洗装置は、従来1つの水洗槽を、内部で3つに仕切ることにより3段水洗とほぼ同等な水洗効果を得たものであるため、水洗槽数を増加させることなく、十分な水洗効果を得ることができるものである。例えば、ダイレクトプレーティング(DPSプロセス)は、脱脂等合計6つの処理工程より構成されるものであるため、従来の3水洗槽をもちいる3段水洗を採用すると、装置全体での水洗槽が18槽必要になる。これに対し、本発明に係る連続めっき用水洗装置を使用した場合は、水洗槽としては6個ですむため、装置体の長さを変更することなく、3段水洗を採用することが可能となる。
【0010】
また、本発明の連続めっき用水洗装置では、洗浄水が第三槽から第二槽を経て第一槽へと、常にテープの搬送方向とは逆方向に流れていくため、テープが通過する順(第一槽、第二槽、第三槽の順)に、試料に付着している前処理での各種薬液の成分濃度が乗数的に減少し、給水量を大幅に減らすことが出来る。
【0011】
以上のとおり、本発明に係る連続めっき用水洗装置は、従来の水洗装置の水洗槽をそのまま利用することが可能なものであるため、余分な設備投資が不要であるとともに、装置を大型化させる必要もないものである。また、向流三段水洗を可能とするものであるため、使用する水量も大幅に減少させることができるとともに排水処理も簡単になるので、ランニングコストを抑えることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の連続めっき用水洗装置の一実施態様を、図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明はこれら実施態様に何ら制約されるものではない。
【0013】
図1は本実施態様に係る連続めっき用水洗装置の縦断図を、図2は本発明に係る連続めっき用水洗装置の平面図を示す。図中、1は連続めっき用水洗装置本体を、2a−2dは搬送ローラーを、3は給水シャワーを、4はフロー排水管を、5a−5bは散水シャワーを、5cは散布シャワーを、6はテープ搬入用開口部を、7はテープ搬出用開口部を、10は水洗槽を、11は第一槽を、111は第一槽間仕切りを、112は第一槽間仕切りスリットを、12は第二槽を、13は第三槽を、131は第三槽間仕切りを、132は第三槽間仕切りスリットをそれぞれ示し、更にxはテープを示す。
【0014】
図1に示すように、本実施態様に係る連続めっき用水洗装置は、水洗槽10の内部が、間仕切り111および間仕切り131によって、第一槽11、第二槽12、第三槽13の三つからなる水洗槽に仕切られている。このうち、第一槽11は、斜視図である図3に示すように、下部にスリット112を有する間仕切り111と側壁とにより、天面を開放した箱体形状に形成されている。第三槽13も、下部にスリット132を有する間仕切り131と側壁とによりこの第一槽とは対称の天面を開放した箱体形状に形成されている。
【0015】
上記間仕切り111および131のスリット112および131の位置及び大きさは、当該間隔を通って被めっき物を搭載したテープおよび水が水洗槽内を移動することができるものであれば特に限定はされないが、第一槽11および第三槽13内での十分な洗浄時間を維持するために、なるべく液面より離れている位置に設けるほうが好ましく、また、通過する被めっき物を搭載したテープの幅が10cm程度の場合、テープ幅および厚みに2.5cm程度のクリアランスを加えた縦5cm×横15cm程度の大きさに開口部を設けることが好ましい。
【0016】
水洗処理されるテープxは、各搬送ローラーによって装置内を搬送され、水洗槽10内を通過する。搬送ローラー2aと搬送ローラー2cの付近には、散水シャワー5aおよび5bが設けられている。このうち、散水シャワー5aは、前の処理工程で付着した薬剤を洗浄するためのものであり、第二槽12より取水された洗浄水を散水する。一方、散水シャワー5bは搬送中のテープxを乾燥から防ぐためのものであり、装置外より供給される清浄水を、常時テープxに散水する。これらの散水シャワーによって散水される水量は、付着した薬剤の性質や量、あるいは前の処理工程の性質により、適宜選択すればよい。また、搬送ローラー2dの付近には、散布シャワー5cが設けられており、次の薬液処理槽より汲み上げた薬液を散布する。散布された薬液は搬送されるテープとともに、次の処理槽へと戻される。
【0017】
水洗槽10を構成する第一槽11には、オーバーフロー形式の排水管4を設け、上部より第一槽の洗浄水が排出できるように設けられている。また、第三槽13の上方には、第三槽13を通過した直後のテープx表面および裏面に、装置外より供給される清浄水を散水し、その水がテープxを伝って第三槽13内に流れ落ち、給水されるように、給水シャワー3を、テープxを挟む形で対向させて設けている。ここで、給水シャワー3によって散水、給水される水量は、第三槽13の液面(水位)が常に第二槽12の液面(水位)よりも高く維持できる量であればよく、1L/分〜5L/分程度が好ましい。この量は、散水シャワー5bの散水量や、薬液の性質、搬送速度との兼ね合いで、適宜調整することができる。また、本実施態様では、テープxの乾燥防止手段も兼ねて、テープxを介して第三槽13に給水しているが、他にテープxの乾燥防止手段が担保できれば、テープxを介さずに、直接、第三槽13に洗浄用の清浄水を給水してもよい。
【0018】
図1により本発明水洗装置での水洗処理の一連の流れを説明すると、次の通りである。まず、種々の処理がなされたテープxが、テープ搬入用開口部6より、搬送ローラー2aを介して装置1内へと搬入される。装置1内へと搬入された後、第一槽11内を通過する前段階において、散水シャワー5aによってテープxの表面に散水がされる。
【0019】
次に、テープxは搬送ローラー2bの回転により、第一槽11へと搬送され、第一槽11内を通過することにより、最初の水洗が行われる。その後、テープxは間仕切りスリット112を通過して第二槽12へと搬送され、第二槽内を通過しながら、第2段の水洗が行われる。更に、テープxは間仕切りスリット132から第三槽13へと搬送され、第三槽内を通過しながら、第3段の水洗が行われる。そして、このように3段階で水洗されたテープxは、搬送ローラー2cによって第三槽13から引き上げられ、次の処理工程へと移動する。これらの第一槽11ないし第三槽13で行われる水洗は、テープまたは被めっき物に付着した薬剤の希釈洗浄であり、必要によって、エアー撹拌、機械撹拌、超音波照射等を採用して洗浄効率を高めても良い。
【0020】
第三槽13を通過した直後のテープxには、給水シャワー3による散水がなされるが、ここでテープxに散水された水はそのままテープxを伝って第三槽13へと流れ落ちる。このように絶えず第三槽13へ外部より洗浄水(清浄水)を供給することにより、第三槽13の液面(水位)は常に第二槽12の液面よりも高く保たれる。よって、第三槽13内の洗浄水は、常に間仕切りスリット132を通過して第二槽内へと流入し、これが逆流することはない。
【0021】
また、第一槽11内の洗浄水は、所定の水位に達した時点でフロー排水管4によって装置外部へと排水されるため、第三槽13から絶えず水を供給されている第二槽12よりもその液面(水位)は常に低く保たれる。よって、第二槽12内の洗浄水も、常に間仕切りスリット112を通過して第一槽内へと流入し、逆流することはない。
【0022】
すなわち、テープxは第一槽11から第二槽12を経て第三槽13へと移動するが、洗浄水は、テープxとは逆方向に、第三槽13から第二槽12を経て第一槽11へと移動する。したがって、各水洗槽内の前工程から持ち込まれる薬剤濃度は、テープxが最初に通過する第一槽11において最も高く、給水源に最も近い第三槽13において最も低くなる。したがって、結果的に3段水洗方式と同程度の洗浄効果を得ることができるのである。
【実施例】
【0023】
次に、実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明する。
【0024】
実 施 例
本発明に係る連続めっき用水洗装置を用い、下記条件による水洗効果の確認試験を行ったところ表1の結果が得られた。この試験では、アクチベーター処理後の各水洗槽の洗浄水を処理開始1時間後に採取し、そのPd濃度を調べた。
【0025】
【表1】

【0026】
比 較 例
一槽のみの連続めっき用水洗装置を用い、上記と同条件による水洗効果の確認試験を行ったところ表2の結果が得られた。
【0027】
【表2】

【0028】
本測定結果から読み取れるように、仕切り槽のない一槽のみの1段水洗では、給水量を2倍にしてもPd濃度は1/2弱にしか低下せず、仕切り槽を設けた本発明に係る連続めっき用水洗装置による場合と比較すると、大量の水洗水が必要になる。なお、実施例において、第一槽と第二槽のPd濃度に大きく差がついているが、これは、処理テープに付着したアクチベーター原液が第一槽内を通過する間に大部分除去され、その水洗水は第二槽に逆流せずにオーバーフローから廃液されるためである。
【0029】
この点について、より具体的に説明すると、水洗槽の水質は、試料に付着して持ち込まれる前処理の薬剤成分と給水量によってバランスする。一般的に水洗1段につき持ち込まれる薬剤濃度は、1/5から1/10になる。したがって、3段水洗とすることにより、第三槽における薬剤濃度は第一槽のそれに対し、およそ1/25から1/100になるため、洗浄水の給水量を計算上1/25から1/100に減少させることができる
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、被めっき物をテープ等に搭載し、水平方向に移動させながらめっきを行う、リールツーリール方式のめっき装置の水洗に極めて有利に使用しうるものである。
【0031】
従って、上記方式を使用するめっき装置や、それ以外の表面処理装置の水洗装置として有利に使用しうるものである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る連続めっき用水洗装置の縦断図。
【図2】本発明に係る連続めっき用水洗装置の平面図。
【図3】本発明に係る連続めっき用水洗装置の第一槽(第三槽)の間仕切りの一実施態様を示す斜視図。
【符号の説明】
【0033】
1 … … 連続めっき用水洗装置本体
2 … … 搬送ローラー
3 … … 給水シャワー
4 … … フロー排水管
5 … … 散水シャワー
6 … … テープ搬入用開口部
7 … … テープ搬出用開口部
10 … … 水洗槽
11 … … 第一槽
12 … … 第二槽
13 … … 第三槽
111 … … 第一槽間仕切り
112 … … 第一槽間仕切りスリット
131 … … 第三槽間仕切り
132 … … 第三槽間仕切りスリット
x … … テープ
以 上

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被めっき物を裁置するテープを搬送する搬送ローラーと、搬送中の前記テープに散水するためのシャワーと、前記テープを洗浄するための水洗槽を備えた連続めっき用水洗装置であって、前記水洗槽内を、前記テープの通過する順に、第一槽、第二槽、および第三槽に仕切り、各槽を仕切る間仕切りには前記テープおよび水を通過させるためのスリットを設けるとともに、前記水洗槽内の洗浄水を前記第一槽から装置外に排水する手段と、装置外より洗浄水を前記第三槽に供給する手段を設けることにより、前記テープの搬送方向とは逆方向に水が前記各水洗槽間を流れることを可能としてなる連続めっき用水洗装置。
【請求項2】
前記水洗槽内の洗浄水を排水する手段が前記第一槽に設けられたフロー排水管による排水であって、前記洗浄水を前記第三槽に供給する手段が前記第三槽の上部に設けられたシャワーによる散水であることを特徴とする請求項1記載の連続めっき用水洗装置。
【請求項3】
搬送中の被めっき物を裁置したテープに散水するための前記シャワーは、前記第一槽の上部および前記第三槽の上部に設けられ、前記第一槽の上部に設けられたシャワーは前記第二槽より取水された洗浄水を前記第一槽に流下するよう散水し、前記第三槽の上部に設けられたシャワーは、装置外より供給された清浄水を、前記テープを伝って前記第三槽に供給されるよう散水することを特徴とする請求項1記載の連続めっき用水洗装置。
【請求項4】
前記間仕切りは、前記第一槽および第三槽を天面を開放した箱体形状に形成し、その前面下部に前記スリットを設けたことを特徴とする請求項1もしくは請求項2のいずれかに記載の連続めっき用水洗装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−314861(P2007−314861A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−148701(P2006−148701)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【出願人】(000120386)荏原ユージライト株式会社 (48)
【出願人】(500326204)瀬戸技研工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】