説明

連続乳化装置および水性エマルジョンの連続的製造方法

【課題】粒径が小さく、安定性に優れた水性エマルジョンを迅速に製造できる連続乳化装置および該水性エマルジョンの迅速な製造方法を提供する。
【解決手段】ケーシング内の混合室に回転円盤が設置されており、該回転円盤の上面と下面にスクレーパが取り付けられており、該混合室内壁からリング板が該下面スクレーパの切り欠きの間に非接触状態で延出しており、該混合室は該回転円盤と該リング板により上部混合室、中部混合室、および下部混合室に区分されており、ケーシングの上部には上部混合室へ液状材料、水および乳化剤を供給するための上部供給口が存在し、ケーシングの側壁には下部混合室へ水または乳化剤水溶液を供給するための下部供給口と、下部混合室から水性エマルジョンを外部へ排出するための排出口が開口していることを特徴とする連続乳化装置。上記連続乳化装置を用いて水性エマルジョンを連続的に製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続乳化装置および水性エマルジョンの連続的製造方法に関する。詳しくは、液状材料(例えば、シリコーンオイル)、水および乳化剤をケーシング内に連続的に供給し、スクレーパ付き回転円盤の回転によって混合して該液状材料を連続的に乳化するための装置、およびその装置を使用して水性エマルジョンを連続的に製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特公昭59−51565号公報には、剪断攪拌機構を備えた円筒状容器内にシリコーンオイル、乳化剤および水を連続的に供給し、該容器内を0.049MPa以上の加圧状態に維持しながら、剪断速度501/秒以上となるように剪断攪拌を行うことにより、粘度10万センチポイズ以上のグリース状シリコーン水性液を連続的に製造する方法が開示されている。しかし、しかし、加圧状態で剪断をかけるので発熱しやすいという欠点がある。また、通常濃度の水性エマルジョンにするには、別の撹拌装置内で水で希釈しなければならないという欠点がある。また、グリース状であるため、通常の攪拌装置を用いた場合、均一な水性エマルションを得るのに長時間を要するという問題がある。特開2000−449号公報には、ケーシング内に液状オルガノポリシロキサンと乳化剤と水を供給しスクレーパ付き回転円盤の回転によってグリース状オルガノポリシロキサン水性液を製造する方法が開示されている。しかし、通常濃度の水性エマルジョンにするには、別の撹拌装置内で水で希釈しなければならないという欠点がある。また、グリース状であるため、通常の攪拌装置を用いた場合、均一な水性エマルションを得るのに長時間を要するという問題がある。はじめから水の仕込み量を増やして希釈状態でシリコーンオイルを乳化させるようとすると、エマルジョンの粒径が大きくなり、不安定であるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭59−51565号公報
【特許文献2】特開2000−449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明者らは、かかる欠点、問題のない連続乳化装置および水性エマルジョンの連続的製造方法を開発すべく鋭意研究した結果、本発明を完成するに至った。本発明の目的は、粒径が小さく、安定性に優れた水性エマルジョンを迅速に製造することができる連続乳化装置および粒径が小さく、安定性に優れた水性エマルジョンを迅速に製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ケーシング内の混合室に回転円盤が設置されており、該回転円盤の上面と下面にスクレーパが取り付けられており、該混合室内壁からリング板が該下面スクレーパの切り欠きの間に非接触状態で延出しており、該混合室は該回転円盤と該リング板により上部混合室、中部混合室、および下部混合室に区分されており、ケーシングの上部には上部混合室へ液状材料、水および乳化剤を供給するための上部供給口が存在し、ケーシングの側壁には下部混合室へ水または乳化剤水溶液を供給するための下部供給口と、下部混合室から水性エマルジョンを外部へ排出するための排出口が開口していることを特徴とする連続乳化装置(A);ケーシング内の混合室に回転円盤が設置されており、該回転円盤の上面と下面にスクレーパが取り付けられており、該混合室内壁から上部リング板と下部リング板が該下面スクレーパの切り欠きの間に非接触状態で延出しており、該混合室は該回転円盤、該上部リング板および該下部リング板により上部混合室、中上部混合室、中下部混合室および下部混合室に区分されており、ケーシングの上部には上部混合室へ液状材料、水および乳化剤を供給するための上部供給口が存在し、ケーシングの側壁には下部混合室へ水または乳化剤水溶液を供給するための下部供給口と、下部混合室から水性エマルジョンを外部へ排出するための排出口が開口していることを特徴とする連続乳化装置(B);および、上記2種の連続乳化装置の回転円盤を回転させつつ、上部供給口から液状材料、水および乳化剤を上部混合室へ連続的に供給し、下部供給口から水または乳化剤水溶液を下部混合室へ連続的に供給し、排出口から水性エマルジョンを外部へ連続的に排出することを特徴とする水性エマルジョンの連続的製造方法に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の水性エマルジョンの連続的製造装置および水性エマルジョンの連続的製造方法を用いて液状材料の水性エマルジョンを連続的に製造すると、粒径が小さく、保存安定性に優れた水性エマルジョンを迅速に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施例1の連続乳化装置Aの縦断面図である。
【図2】本発明の実施例2の連続乳化装置Bの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
上記連続乳化装置(A)では、上部混合室へ連続的に供給された液状材料、水および乳化剤は、回転する回転円盤上を半径方向外側に移動して上部混合室の天井および上部混合室の内壁に衝突する。上部混合室の天井に付着した材料は上面スクレーパにより掻きとられ、せん断作用を受ける。掻きとられた材料は回転円盤上に落下して再び回転円盤上を半径方向外側に移動する。上部混合室の内壁に付着した材料は側面スクレーパが存在する場合は側面スクレーパにより掻きとられ、せん断作用を受ける。かくして第1回目の混練作用を受けて粗グリース状物となる。この粗グリース状物は、回転円盤の周端部と混合室の内壁との隙間を通って中部混合室に移動して、リング板と下面スクレーパの切り欠きの間でせん断作用を受ける。かくして第2回目の混練作用を受けて均一化したグリース状物となる。この均一化したグリース状物は、リング板の周端部と回転軸との隙間を通って下部混合室に移動し、リング板の下面とケーシング低部の傾斜面に付着したグリース状物は下面スクレーパにより掻きとられ、せん断作用を受ける。かくして第3回目の混練作用を受ける。その間、均一化したグリース状物は、ケーシングの側壁に開口した下部供給管から下部混合室へ連続的に供給された水または乳化剤水溶液と混ざって希釈される。計3回の混練作用を受け、供給された水または乳化剤水溶液で希釈されて水性エマルジョンとなり、ケーシング低部に開口した排出口から外部へ連続的に排出される。リング板が存在するので,下部供給管から下部混合室へ連続的に供給された水または乳化剤水溶液が、リング板より上、すなわち、中部混合室に行きにくい。したがって、グリース状物が低粘性化したり、エマルジョンの粒子径が大きくなりにくい。
【0009】
上記連続乳化装置(B)では、上部混合室へ連続的に供給された液状材料、水および乳化剤は、回転する回転円盤上を半径方向外側に移動して上部混合室の天井および側壁に衝突する。上部混合室の天井に付着した材料は上面スクレーパにより掻きとられ、せん断作用を受ける。掻きとられた材料は回転円盤上に落下して再び回転円盤上を半径方向外側に移動する。上部混合室の内壁に付着した材料は側面スクレーパが存在する場合は側面スクレーパにより掻きとられ、せん断作用を受ける。かくして第1回目の混練作用を受けて粗グリース状物となる。この粗グリース状物は、回転円盤の周端部とケーシングの内壁との隙間を通って中上部混合室に移動して、上部リング板と下面スクレーパの切り欠きの間でせん断作用を受ける。かくして第2回目の混練作用を受けて均一化したグリース状物となる。この均一化したグリース状物は、上部リング板の周端部と回転軸との隙間を通って中下部混合室に移動し、下部リング板と下面スクレーパの切り欠きの間でせん断作用を受ける。かくして第3回目の混練作用を受けてより均一化したグリース状物となる。より均一化したグリース状物は下部リング板の周端部と回転軸との隙間を通って下部混合室に移動し、下部リング板の下面とケーシング低部の傾斜面に付着したグリース状物は下面スクレーパにより掻きとられ、せん断作用を受ける。かくして第4回目の混練作用を受ける。その間、より均一化したグリース状物は、ケーシングの側壁に開口した下部供給管から下部混合室へ供給された水または乳化剤水溶液と連続的に混ざって希釈される。計4回の混練作用を受け、供給された水または乳化剤水溶液で希釈されて水性エマルジョンとなり、ケーシング低部に開口した排出口から外部へ連続的に排出される。上部リング板と下部リング板が存在するので、下部供給管から下部混合室へ連続的に供給された水または乳化剤水溶液が、これらリング板より上、すなわち、中下部混合室に行きにくく、中上部混合室に行かない。したがって、グリース状物が低粘性化したり、エマルジョンの粒子径が大きくなることはまずあり得ない。
【0010】
供給される液状材料は水に不溶性であるか、難水溶性であればよい。かかる液状材料としては油脂、石油誘導体、合成油、液状化合物、液状ポリマーが例示される。油脂としては、大豆油、菜種油、ごま油、オリーブ油、ラードなどの食用油、魚油、鯨油が例示される。石油誘導体としては鉱油、ワセリン、流動パラフィン、アスファルト、タールが例示される。合成油としては液状ポリオレフィン、高級脂肪酸エステルが例示される。液状化合物としては、洗浄用溶剤、可塑剤、安定剤、硬化剤、触媒が例示される。液状ポリマーとしてはシリコーンオイル、液状ポリブタジエン、液状ポリブテン、液状ポリイソブチレン、液状ポリウレタン、液状エポキシ樹脂が例示される。シリコーンオイルの代表例は、常温で液状のジオルガノポリシロキサンおよびオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。その粘度は、通常数mPa・s以上であり、好ましくは10〜50000mPa・sである。これには、環状のものと直鎖状のものがある。環状のものとしてはオクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサンが例示される。直鎖状のものとしては、両末端トリメチルシロキシ基封鎖のジメチルポリシロキサン、メチルオクチルポリシロキサン、メチルビニルポリシロキサン、ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、メチル(3,3,3-トリフルオロプロピル)ポリシロキサン、ジメチルシロキサン・メチル(3−グリシジロキシプロピル)シロキサン共重合体若しくはジメチルシロキサン・メチル(3−メルカプトプロピル)シロキサン共重合体;両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖のジメチルポリシロキサン、ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体若しくはジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体;分子鎖両末端ヒドロキシル基封鎖のジメチルポリシロキサン、メチルビニルポリシロキサン、ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体若しくはメチル(3,3,3-トリフルオロプロピル)ポリシロキサン;両末端シラノール基封鎖のジメチルポリシロキサンジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体しくはジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体が例示される。;オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、両末端トリメチルシロキシ基封鎖のメチルハイドロジェンポリシロキサンしくはジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体;両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖のジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサンしくはジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体が例示される。シリコーンオイルの他の例は、常温で液状の分岐状メチルポリシロキサンである。シリコーンオイルの替わりに常温で液状のオルガノポリシロキサンレジンであってもよい。シリコーンオイルは2種以上の混合物であってもよい。
【0011】
乳化剤は従来から液状材料の乳化に使用されているものであればよく、液状材料の種類に合わせて適切なものを選択すれば良い。これには高級脂肪酸塩、高級アルコールの硫酸エステル塩、長鎖アルキルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアニオン系界面活性剤;長鎖アルキル第4級アンモニウム塩、高級アミン塩、ベンジルアンモニウム塩などのカチオン型界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン・プロピレン変性ジメチルポリシロキサンなどの非イオン型界面活性剤;両面界面活性剤が例示される。乳化剤の他に保護コロイド剤ないし増粘剤としてポリビニールアルコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロースなどの水溶性ポリマーや抗菌剤ないし防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、防錆剤、染料、充填剤、硬化触媒などを配合してもよい。
【0012】
上部供給口から上部混合室へ液状材料、水および乳化剤を供給する際は、液状材料100重量部に対して、乳化剤0.1〜30重量部および水0.5〜20重量部の割合で供給するとよい。もちろん、液状材料の乳化の難易度によってこの配合比範囲を越えてもよい。乳化剤は水溶液の形で供給してもよい。下部供給口から下部混合室へ水または乳化剤水溶液を供給する際は、液状材料100重量部に対して水10〜200重量部、あるいは水10〜200重量部と乳化剤0.1〜20重量部の割合で供給するとよい。水または乳化剤水溶液を供給するには、貯蔵タンクから定量ポンプを使用して供給管を通して供給するとよい。本発明の製造方法で製造された水性エマルジョンは、撥水剤、離型剤、潤滑剤、繊維処理剤、皮革処理剤、人工皮革処理剤、化粧品添加剤、艶出し剤、消泡剤、コーテイング材等として有用である。
【実施例】
【0013】
本発明を、図に示す実施例により具体的に説明する。水性エマルジョンの製造は、25℃で行った。水性エマルジョンの平均粒子径はレーザー式粒度分布計(HORIBA製)により測定した。
【0014】
[実施例1]図1の連続乳化装置Aにおいて、ケーシング1内の混合室2には、回転円盤3が水平に設置されている。回転円盤3は、その中心が回転軸4の上端に固定されている。回転軸4はその根元にプーリー5が取り付けられており、図示していないモータの回転が伝達されて回転する。回転円盤3の周速度は3〜100m/secの範囲が好ましい。回転軸4は軸受部6により支持されている。回転円盤3の上面にスクレーパ7aが、側面にスクレーパ7bが、下面にスクレーパ7cが取り付けられている。なお、側面スクレーパは必須ではない。各スクレーパは1個、好ましくは2個以上の複数個取り付けられている。2個以上の場合、いずれも等角度で取り付けられることが好ましい。回転円盤3の下面に取り付けられたスクレーパ7cは回転円盤3の半径方向および上下方向に延びる板状または格子状になっているが、その半径方向外端から内側に向けて水平に延びる切り欠き7dが存在する。スクレーパ7cは下記のリング板8に対して相対移動可能になっている。図1には、どのスクレーパも1個しか表示されておらず、あとの2個は図示されていない。ケーシング1の円筒部1aの内壁下端からリング板8が下面スクレーパ7cの切り欠き7dの中に交差するように非接触状態で延出しており、リング板8の周端部と回転軸4との間には混合物が通過するための隙間があいている。この挿入状態下で回転円盤3が回転する。
【0015】
ケーシング1内の混合室2は、回転円盤3とリング板8により上部混合室2a、中部混合室2b、下部混合室2eに区分されている。ケーシング1の上蓋1bの中央には上部混合室2aへ材料を供給するための上部供給口9が開口し、上部供給管9a、9bの下端が位置している。上部混合室2aへは上部供給管9aから液状材料が供給され、上部供給管9bから乳化剤の水溶液が供給される。上部供給管9a、9bはともに図示していない回転ポンプを経て貯蔵タンクに接続している。液状材料と乳化剤水溶液は一定の比率で連続的に供給される。上部供給管は、一本の二重管であってもよい。ケーシング1の円筒部1aの側壁下端には倒立円錐部1cが連接しており、下部混合室2eに水または乳化剤水溶液を供給するための下部供給管9cが貫入している。円錐部1cの中央には軸受部6が下方から張り出しているので、環状であり、断面V字状の窪みが存在する。ケーシング1の底部である倒立円錐部1cには下部混合室2eから水性エマルジョンを外部へ排出するための排出口11が開口している。
【0016】
[実施例2]図2の連続乳化装置Bにおいて、ケーシング1内の混合室2には、回転円盤3が水平に設置されている。回転円盤3は、その中心が回転軸4の上端に固定されている。回転軸4はその根元にプーリー5が取り付けられており、図示していないモータの回転が伝達されて回転する。回転円盤3の周速度は3〜100m/secの範囲が好ましい。回転軸4は軸受部6により支持されている。回転円盤3の上面にスクレーパ7aが、側面にスクレーパ7bが、下面にスクレーパ7cが取り付けられている。なお、側面スクレーパは必須ではない。各スクレーパは1個、好ましくは2個以上の複数個取り付けられている。2個以上の場合、いずれも等角度で取り付けられることが好ましい。回転円盤3の下面に取り付けられたスクレーパ7cは回転円盤3の半径方向および上下方向に延びる板状または格子状になっているが、その半径方向外端から内側に向けて水平に延びる上部切り欠き7eと下部切り欠き7fが存在する。スクレーパ7cは下記の上部リング板8aと下部リング板8bに対して相対移動可能になっている。図2には、どのスクレーパも1個しか表示されておらず、あとの2個は図示されていない。ケーシング1の円筒部1aの内壁から上部リング板8aが下面スクレーパ7cの上部切り欠き7eの中に交差するように非接触状態で延出しており、上部リング板8aの周端部と回転軸4との間には混合物が通過するための隙間があいている。ケーシング1の円筒部1aの内壁下端から下部リング板8bが下面スクレーパ7cの下部切り欠き7fの中に交差するように非接触状態で延出しており、下部リング板8aの周端部と回転軸4との間には混合物が通過するための隙間があいている。この挿入状態下で回転円盤3が回転する。
【0017】
ケーシング1の混合室2は、回転円盤3と上部リング板8aと下部リング板8bにより上部混合室2a、中上部混合室2c、中下部混合室2d、下部混合室2eに区分されている。ケーシング1の上蓋1bの中央には上部混合室2aへ材料を供給するための上部供給口9が開口し、上部供給管9a、9bの下端が位置している。上部混合室2aへは上部供給管9aから液状材料が供給され、上部供給管9bから乳化剤の水溶液が供給される。上部供給管9a、9bはともに図示していない回転ポンプを経て貯蔵タンクに接続している。液状材料と乳化剤水溶液は一定の比率で連続的に供給される。上部供給管は、一本の二重管であってもよい。ケーシング1の円筒部1aの側壁下端には倒立円錐部1cが連接しており、下部混合室2eに水または乳化剤水溶液を供給するための下部供給管9cが貫入している。倒立円錐部1cの中央には軸受部6が下方から張り出しているので、環状であり、断面V字状の窪みが存在する。ケーシング1の底部である倒立円錐部1cには下部混合室2eから水性エマルジョンを外部へ排出するための排出口11が開口している。
【0018】
[実施例3]図1の連続混合装置A(リング板8の幅は30mmである)において、回転円盤3を回転させつつ(回転円盤3の周速度は24m/秒である)、粘度3000mPa・sの両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン100重量部と塩化セチルトリメチルアンモニウム0.6重量部と水1.4重量部の割合で、図示しない定量ポンプを用いて該ジメチルポリシロキサンを上部供給管9aから上部混合室2aに連続的に供給し、図示しない定量ポンプを用いて該塩化セチルトリメチルアンモニウムと水を上部供給管9bから上部混合室2aに連続的に供給して、高粘度グリース状の水性液とした。同時に、図示していない定量ポンプを用いて、水を下部供給管9cから下部混合室2eに連続的に供給して高粘度グリース状の水性液と連続的に混合した。排出口11から温度が30℃以下であり、均一なO/W型のジメチルポリシロキサンの水性エマルジョンが連続的に排出された。該水性エマルジョンの平均粒子径をレーザー式粒度分布計(HORIBA製)により測定したところ、1.0μmであった。調製直後および1ヵ月保存後にエマルジョンを目で観察したところ、均一であり、表面に油膜は存在しなかった。
【0019】
[実施例4]図2の連続混合装置B(上部リング板8aおよび下部リング板8bの幅は30mmである)において、回転円盤3を回転させつつ(回転円盤3の周速度は24m/秒である)、粘度3000mPa・sの両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン100重量部と塩化セチルトリメチルアンモニウム0.6重量部と水1.4重量部の割合で、図示しない定量ポンプを用いて該ジメチルポリシロキサンを上部供給管9aから上部混合室2aに連続的に供給し、図示しない定量ポンプを用いて該塩化セチルトリメチルアンモニウムと水を上部供給管9bから上部混合室2aに連続的に供給して、高粘度グリース状の水性液とした。同時に、図示していない定量ポンプを用いて、水を下部供給管9cから下部混合室2eに連続的に供給して高粘度グリース状の水性液と連続的に混合した。排出口11から温度が30℃以下であり、均一なO/W型のジメチルポリシロキサンの水性エマルジョンが連続的に排出された。該水性エマルジョンの平均粒子径をレーザー式粒度分布計(HORIBA製)により測定したところ、0.4μmであった。調製直後および1ヵ月保存後にエマルジョンを目で観察したところ、均一であり、表面に油膜は存在しなかった。
【0020】
[比較例]実施例3において、リング板8を取外した以外は上記連続乳化装置Aと同一の連続乳化装置を使用し、同一の原料を使用して同一条件で乳化、希釈を試みたところ、均一なO/W型のジメチルポリシロキサンの水性エマルジョンが得られたが、平均粒子径は5.0μmであった。調製直後にエマルジョンを目で観察したところ、表面に油膜が存在した。
【符号の説明】
【0021】
A 連続混合装置
B 連続混合装置
1 ケーシング
1a 円筒部
1b 上蓋
1c 倒立円錐部
2 混合室
2a 上部混合室
2b 中部混合室
2c 中上部混合室
2d 中下部混合室
2e 下部混合室
3 回転円盤
4 回転軸
5 プーリー
6 軸受部
7a 上面スクレーパ
7b 側面スクレーパ
7c 下面スクレーパ
7d 切り欠き
7e 上部切り欠き
7f 下部切り欠き
8 リング板
8a 上部リング板
8b 下部リング板
9 上部供給口
9a 上部供給管
9b 上部供給管
9c 下部供給管
10 下部供給口
11 排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング内の混合室に回転円盤が設置されており、該回転円盤の上面と下面にスクレーパが取り付けられており、該混合室内壁からリング板が該下面スクレーパの切り欠きの間に非接触状態で延出しており、該混合室は該回転円盤と該リング板により、粗グリース状物を製造するための上部混合室、グリース状物を製造するための中部混合室、および水性エマルジョンを製造するための下部混合室に区分されており、ケーシングの上部には上部混合室へ液状材料、水および乳化剤を供給するための上部供給口が存在し、ケーシングの側壁には下部混合室へ水または乳化剤水溶液を供給するための下部供給口と、下部混合室から水性エマルジョンを外部へ排出するための排出口が開口していることを特徴とする水性エマルジョンの連続的製造装置の該回転円盤を回転させつつ、該上部供給口から液状材料、水および乳化剤を該上部混合室へ連続的に供給して該上部混合室で粗グリース状物を製造し、該中部混合室または該中上部混合室と該中下部混合室でグリース状物を製造し、該下部供給口から水または乳化剤水溶液を該下部混合室へ連続的に供給してグリース状物と混合することにより水性エマルジョンを製造し、該排出口から水性エマルジョンを外部へ連続的に排出することを特徴とする、水性エマルジョンの連続的製造方法。
【請求項2】
ケーシング内の混合室に回転円盤が設置されており、該回転円盤の上面と下面にスクレーパが取り付けられており、該混合室内壁から上部リング板と下部リング板が該下面スクレーパの切り欠きの間に非接触状態で延出しており、該混合室は該回転円盤、該上部リング板および該下部リング板により粗グリース状物を製造するための上部混合室、グリース状物を製造するための中上部混合室および中下部混合室および水性エマルジョンを製造するための下部混合室に区分されており、ケーシングの上部には上部混合室へ液状材料、水および乳化剤を供給するための上部供給口が存在し、ケーシングの側壁には下部混合室へ水または乳化剤水溶液を供給するための下部供給口と、下部混合室から水性エマルジョンを外部へ排出するための排出口が開口していることを特徴とする水性エマルジョンの連続的製造装置の該回転円盤を回転させつつ、該上部供給口から液状材料、水および乳化剤を該上部混合室へ連続的に供給して該上部混合室で粗グリース状物を製造し、該中部混合室または該中上部混合室と該中下部混合室でグリース状物を製造し、該下部供給口から水または乳化剤水溶液を該下部混合室へ連続的に供給してグリース状物と混合することにより水性エマルジョンを製造し、該排出口から水性エマルジョンを外部へ連続的に排出することを特徴とする、水性エマルジョンの連続的製造方法。
【請求項3】
液状材料がシリコーンオイルであることを特徴とする、請求項1または請求項2記載の水性エマルジョンの連続的製造方法。
【請求項4】
上部供給口から液状材料、水および乳化剤を上部混合室へ連続的に供給する際に、液状材料100重量部に対して、乳化剤0.1〜30重量部および水0.5〜20重量部の割合で供給し、下部供給口から水または乳化剤水溶液を下部混合室へ連続的に供給する際に、グリース状物中の液状材料100重量部に対して水10〜200重量部、あるいは水10〜200重量部と乳化剤0.1〜20重量部の割合で供給することを特徴とする、請求項1または請求項2記載の水性エマルジョンの連続的製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−218356(P2011−218356A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126888(P2011−126888)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【分割の表示】特願2000−298885(P2000−298885)の分割
【原出願日】平成12年9月29日(2000.9.29)
【出願人】(000110077)東レ・ダウコーニング株式会社 (338)
【Fターム(参考)】