説明

連続加硫設備及び連続加硫方法

【課題】連続加硫の立上げ時の未加硫のゴム管のたるみに起因するトラブルの発生を防止して、円滑に連続加硫の立上げを行うことのできる連続加硫設備を提供する。
【解決手段】連続加硫設備22における押出機のヘッド30と加硫管32とを離隔して配置するとともに、加硫管32には、その先端側に構成されたシリンダ部62と、シリンダ部62に対しシール部材64を介して摺動可能に内嵌したスライド筒68と、スライド筒68の先端側に設けられ、ヘッド30に密着状態に接続される接続部72と、を備えて伸縮運動し、加硫管32と押出機のヘッド30とを連結及び連結解除可能な連結装置34を設けておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はゴム管の連続加硫設備及び連続加硫方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴム管の加硫設備として、押出機のヘッドから押し出した未加硫のゴム管を加硫管の内部を連続的に通過させ、加硫管の内部で蒸気等の媒体にて加圧下に加熱し、連続的に加硫する連続加硫設備が公知である。
【0003】
従来において、この種の連続加硫設備では、押出機のヘッドと加硫管とを直接連結状態とし、押出機のヘッドから出た未加硫のゴム管をそのまま加硫管内に連続供給するようになしている。
【0004】
ところでこの種の連続加硫設備では、連続加硫の開始時に、押出機と加硫管との一方、通常は押出機の側を加硫管から後退移動させて、押出機のヘッドと加硫管との間に所要のスペースを形成し、予め加硫管に通したダミーゴム管と、押出機から出た未加硫のゴム管の各端部をそのスペースにおいてジョイントし、その後において、後退移動により一旦加硫管から引き離した押出機を前進移動させて、押出機のヘッドと加硫管とを再び連結状態とし、連続加硫を実行するといったことが行われる。
【0005】
図9はこれを模式的に表している。
図9(I)は、押出機のヘッド200と加硫管202との直接連結状態を表しており、この状態から(II)に示しているように押出機を後退移動させて、ヘッド200と加硫管202との間にスペースSを形成し、そして(III)に示しているように予め加硫管202に通したダミーゴム管204と、押出機のヘッド200から出たゴム管206とを、そのスペースSにおいてジョイント治具208にてジョイントし、その後押出機を前進移動させて再び図9(I)に示すようにヘッド200と加硫管202とを連結状態とし、引取機にてダミーゴム管204を引取開始してゴム管の連続押出し及び加硫を実行する。
【0006】
しかしながらこの場合、ヘッド200を加硫管202に向けて前進移動させたとき、ダミーゴム管204及びゴム管206の、スペースSに位置していた部分が、図9(IV)に示すようにたるみを生じてしまう。
このたるんだ部分はそのまま加硫管202の内部に送られることとなり、そしてこのたるみによって加硫管202の内部で未加硫のゴム管206が管壁に擦ったりしてトラブルを生じてしまう。
【0007】
具体的には、未加硫のゴム管206が管壁に擦ることでゴム破れを生じたり、またたるみを生じたゴム管206が加硫管202の内部或いは出口部分で詰まりを生じたりする。
そうなるとゴム管206の連続加硫を上手く立ち上げることができない。
【0008】
尚、下記特許文献1,特許文献2,特許文献3には加硫管を用いてゴム管を連続加硫する設備が開示されているが、これら特許文献に開示のものでは上記の問題を解決することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−187879号公報
【特許文献2】特公平3−74885号公報
【特許文献3】特開2009−241490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は以上のような事情を背景とし、連続加硫の立上げ時の未加硫のゴム管のたるみに起因するトラブルの発生を防止して、円滑に連続加硫の立上げを行うことのできる連続加硫設備及び連続加硫方法を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
而して請求項1は連続加硫設備に関するもので、押出機のヘッドに気密に連結された加硫管を有し、該押出機のヘッドから押し出したゴム管を該加硫管の内部を連続的に通過させて、該加硫管の内部で加圧下に加熱して連続的に加硫する連続加硫設備であって、前記押出機のヘッドと前記加硫管とを該加硫管の軸方向に離隔して配置するとともに、該加硫管には、(a)該加硫管の先端側に構成されたシリンダ部と、(b)該シリンダ部に対しシール部材を介して該加硫管の軸方向に摺動可能に内嵌し、前記押出機のヘッド側への突出し運動及び該ヘッドから離間して該シリンダ部内部に引き込み運動するスライド筒と、(c)該スライド筒の先端側に設けられ、前記ヘッドに密着状態に接続される接続部と、を備えて前記加硫管の軸方向に伸縮運動し、該加硫管と前記押出機のヘッドとを連結及び連結解除可能な連結装置を設けたことを特徴とする。
【0012】
請求項2のものは、請求項1において、前記スライド筒は、後端側の筒形のピストン部と、該ピストン部から前記ヘッド側に延び出した、該ピストン部よりも小径の筒状のロッド部とを有していることを特徴とする。
【0013】
請求項3のものは、請求項2において、前記シリンダ部には先端側に前記ロッド部の外面に対して相対摺動可能に嵌合するロッド嵌合部が備えてあり、該ロッド嵌合部に該ロッド部の外面との間をシールするシール部材が設けてあり又は/及び前記ピストン部に前記シリンダ部の内面との間をシールするシール部材が設けてあることを特徴とする。
【0014】
請求項4のものは、請求項1〜3の何れかにおいて、前記シリンダ部には、先端側且つ前記ロッド嵌合部の後側位置に、部分的に小径をなす小径部が設けてあり、前記ロッド部の突出し端で前記ピストン部が該小径部の内面に接触状態に嵌合し、該ロッド部が該突出し端から引込方向に移動した状態の下で該ピストン部が該シリンダ部に対し遊嵌するようになしてあることを特徴とする。
【0015】
請求項5のものは、請求項1〜4の何れかにおいて、前記シリンダ部は、前記加硫管の本体部よりも内径が大径となしてあることを特徴とする。
【0016】
請求項6は連続加硫方法に関するもので、押出機のヘッドから押し出したゴム管を、加硫管の内部を連続的に通過させて、該加硫管の内部で加圧下に加熱して連続的に加硫するに際し、前記加硫管には、(a)該加硫管の先端側に構成されたシリンダ部と、(b)該シリンダ部に対しシール部材を介して該加硫管の軸方向に摺動可能に内嵌し、前記押出機のヘッド側への突出し運動及び該ヘッドから離間して前記シリンダ部内部に引き込み運動するスライド筒と、(c)該スライド筒の先端側に設けられ、前記ヘッドに密着状態に接続される接続部と、を備えて前記加硫管の軸方向に伸縮運動し、該加硫管と前記押出機のヘッドとを連結及び連結解除可能な連結装置を設け、前記ゴム管の連続加硫の開始時において、前記ロッド部を引き込めて前記連結装置の接続部と前記押出機のヘッドとの間にスペースを形成し、予め前記加硫管に通したダミーゴム管と前記押出機のヘッドから出た前記ゴム管の各端部を前記スペースでジョイントし、その後に前記ロッド部を突き出して前記加硫管と押出機のヘッドとを前記連結装置にて連結状態とし、前記ダミーゴム管を引取機にて引取開始して該ゴム管の連続押出し及び加硫を実行することを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0017】
以上のように本発明の連続加硫設備は、押出機のヘッドと加硫管とを加硫管の軸方向に離隔して配置するとともに、加硫管に以下の構成を有する連結装置、即ち加硫管の先端側に構成されたシリンダ部と、シリンダ部に対しシール部材を介して加硫管の軸方向に摺動可能に内嵌し、押出機のヘッド側への突出し運動及びヘッドから離間して上記シリンダ部内部に引き込み運動するスライド筒と、スライド筒の先端側に設けられ、押出機のヘッドに密着状態に接続される接続部と、を備えて加硫管の軸方向に伸縮運動し、加硫管と押出機のヘッドとを連結及び連結解除する連結装置を設けたものである。
【0018】
本発明の連続加硫設備では、押出機と加硫管との何れも位置固定のまま、即ちそれらを移動しなくても連結装置を単に収縮動作させるだけで、押出機のヘッドと連結装置における接続部との間に所要のスペースを形成することができる。
そしてそのスペースにおいて、予め加硫管に通してあるダミーゴム管と押出機からの未加硫のゴム管とをジョイントし、その後連結装置を伸長動作させて、連結装置の接続部を押出機のヘッドに接続することで、かかる連結装置を介して押出機のヘッドと加硫管とを連結状態とすることができる。
【0019】
従って本発明の連続加硫設備によれば、ダミーゴム管及び押出機からのゴム管の、上記スペースに位置していた部分が、押出機のヘッドと加硫管とを連結状態とすることによってたるみを生じるといったことはなく、それ故そのまま引取機にて引き取り開始して、上記のスペースに位置していたダミーゴム管及び押出機からのゴム管を加硫管の内部に引き込んだときに、加硫管の内部で未加硫のゴム管のたるんだ部分が加硫管の管壁に擦ってゴムの破れを生じたり、或いは加硫管の内部や加硫管の出口部でゴム管のたるんだ部分がつまりを生じ、トラブルを発生させるといったことを防止することができる。
従って本発明の連続加硫設備では連続加硫の立上げを良好に行なうことができる。
【0020】
本発明の連続加硫設備では、上記のスライド筒を、後端側の筒形のピストン部と、ピストン部よりも小径をなしてピストン部から押出機のヘッド側に延び出した筒状のロッド部とを有するものとなしておくことができる(請求項2)。
【0021】
この場合において、シリンダ部には先端側にロッド部の外面に対して相対摺動可能に嵌合するロッド嵌合部を備えておき、そのロッド嵌合部にロッド部の外面との間をシールするシール部材を設け、又はピストン部にシリンダ部の内面との間をシールするシール部材を設け、若しくはロッド嵌合部とピストン部との両方とにそれらシール部材を設けておくことができる(請求項3)。
【0022】
このようにしておけば、加硫管内の加圧媒体、例えば加圧加熱媒体として通常使われる蒸気が連結装置におけるシリンダ部とスライド筒との間を通じて外部に漏出するのを良好に防止することができる。
【0023】
本発明の連続加硫設備ではまた、シリンダ部の先端側に且つ上記ロッド嵌合部の後側位置に、部分的に小径をなす小径部を設けておき、ロッド部の突出し端でピストン部をその小径部の内面に接触状態に嵌合させ、またロッド部が突出し端から引込方向に移動した状態の下ピストン部をシリンダ部に対して遊嵌するようになしておくことができる(請求項4)。
【0024】
このようにすれば、連結装置による押出機のヘッドと加硫管との連結及び連結解除の動作時に、詳しくは連結装置の伸縮動作時に、シリンダ部の内面に対するピストン部の摺動によって大きな抵抗が発生するのを防ぐことができ、連結装置の伸縮動作を小さな力で円滑に行なわせることができる。
【0025】
本発明の連続加硫設備ではまた、上記シリンダ部の内径を、加硫管の本体部よりも大径となしておくことができる(請求項5)。
【0026】
次に請求項6は連続方法に関するもので、この連続加硫方法では、加硫管の先端側に連結装置を設け、そしてゴム管の連続加硫の開始時において、ロッド部を引き込めて連結装置の接続部と押出機のヘッドとの間にスペースを形成し、そのスペースにおいて加硫管に予め通してあるダミーゴム管と押出機のヘッドからの未加硫のゴム管の各端部をジョイントし、その後に連結装置のロッド部を突き出して加硫管と押出機のヘッドとを連結装置にて連結状態とし、ダミーゴム管を引取機にて引き取り開始してゴム管の連続押出し及び加硫を実行する。
【0027】
この製造方法によれば、たるみを生じた未加硫のゴム管が加硫管の内部に送られて、そこで加硫管の管壁との接触によるゴム管の破れや、たるんだ部分がつまりを生じる等のトラブルを良好に回避し得て、連続加硫の立上りを良好に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の適用対象の一例であるゴム被覆ホースを示した図である。
【図2】図1に示すホースの製造設備の全体構成を示した図である。
【図3】図1における押出機のヘッドと加硫管とを連結装置にて連結した状態を外観状態で示した図である。
【図4】図3に示した部分の断面を示した図である。
【図5】図3のV−V視断面図である。
【図6】図4における押出機のヘッドと加硫管とを連結解除状態で示した図である。
【図7】図2に示す加硫管の出口部の水封装置を示した図である。
【図8】本実施形態における連結装置の作用を連続加硫開始時の作業手順とともに示した図である。
【図9】本発明の背景図として連続加硫開始時の作業手順の比較例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、10は本実施形態の適用対象であるゴム被覆ホース(以下単にホースとする)で、樹脂チューブ12と、その外面を覆う管状の被覆ゴム(ゴム管)14とを有している。
ここで被覆ゴム14は樹脂チューブ12を保護するプロテクタとしての働きを有するもので、樹脂チューブ12に対して接着されておらず、単に樹脂チューブ12を被覆しているだけのものである。
但しこの被覆ゴム14は、樹脂チューブ12を全長に亘って被覆している。
この実施形態において、樹脂チューブ12はポリアミド(PA12)等の樹脂からなる。
また被覆ゴム14はここではEPDMゴムから成っている。
【0030】
この実施形態において、ホース10は内径dがφ6mm,外径dがφ11.2mmのものである。
この実施形態のものは燃料輸送用ホースとして用いられるものであるが、本発明は他の用途,形態,サイズのゴム被覆ホース一般に適用可能なものである。
図2において、16はホース10の製造設備を示している。
この製造設備16は、受皿17と、繰出機18と、被覆ゴムの押出機20と、加圧式の連続加硫設備22と、水槽24と、引取機26と、受皿28とを有している。
【0031】
この製造設備16では、受皿17上に巻かれた樹脂チューブ12を繰出機18にて連続的に押出機20へと繰り出してヘッド30に通し、そのヘッド30からゴム材料を押し出して、樹脂チューブ12の外面に被覆ゴム14を連続的に押出成形する。
そしてその後、未加硫のホース10を加圧式の連続加硫設備22に通して、そこで連続加硫を行なう。
【0032】
ここで連続加硫設備22では、後述する加硫管32の内部に供給した蒸気を媒体としてホース10に対する加圧及び加熱を行なう。尚媒体としては蒸気以外の空気や窒素ガスを用いても良い。
加硫管32内部のホース10は引取機26による引取作用によって加硫管32内部を通過し、そして加硫管32を出たところで水槽24に浸漬されて、その後受皿28上に巻き取られて行く。
【0033】
図2において、32は長尺をなす加硫管で、34はこの加硫管32と押出機20のヘッド30とを連結及び連結解除する連結装置である。連結装置34の詳細については後述する。
36は加硫管32の出口部で、この出口部36は、図7に示す水封装置38によって水封されている。
この水封装置38では、水槽24内の水がポンプ40にて所定の吐出圧で送出路42を通じて加硫管32内に供給される。また一方過剰の水が、戻り路44を通じて水槽24に戻され、更に出口部36から漏出した水が水槽24へと戻される。
【0034】
46は出口部36を構成する筒状部で、48はその内側に形成されたホース10の通過路である。
50は、この通過路48に沿って配置されたリング状を成すシール部材で、52はそのシール部材50を後側からバックアップする、同じくリング状を成すバックアップリングである。
ここでシール部材50には、例えば軟質且つスポンジ状のシリコンゴムが用いられる。
一方バックアップリング52はシール部材50に対して硬質のもので、実質的に変形を生じないものである。ここではバックアップリング52として例えばフッ素樹脂製のものが用いられる。
【0035】
54は、筒状部46の先端の開口部に装着された栓体で、筒状部46に螺合されている。
上記シール部材50及びバックアップリング52は、この栓体54にて下側から支持されている。
56はスペーサリングで、このスペーサリング56の高さを変えることで、シール部材50に対する軸方向の締付力を調節することができる。
ここでシール部材50は、加硫管32の内圧によって押圧され、内周部を出口部36を通過するホース10に対して接触させ、また外周部を筒状部46に接触させてシール作用を行なう。
【0036】
尚、連続加硫設備22へのホース10の入り側のシール、詳しくは上記の押出機20のヘッド30及び連結装置34間のシールは、図4に示しているように、ヘッド30におけるダイス58のダイス孔60を通過して樹脂チューブ12を被覆するゴム材料、即ち被覆ゴム14そのものによって行なわれる。
【0037】
上記連結装置34の構成が、図3〜図6に具体的に示してある。
図4に示しているようにこの連結装置34は、加硫管32の先端側に構成されたシリンダ部62と、シリンダ部62に対して図4(B)のシール部材64,66を介して加硫管32の軸方向に摺動可能に内嵌し、押出機20のヘッド30側への突き出し運動及びヘッド30から離間してシリンダ部62内部に引き込み運動するスライド筒68と、ブロック状を成してスライド筒68の先端側に設けられ、ヘッド30側のプレート70に押圧されてヘッド30に気密に接続される接続部72とを備えている。
この連結装置34は、加硫管32の軸方向に伸縮運動し、加硫管32と押出機20のヘッド30とを連結及び連結解除する。
【0038】
スライド筒68は、後端側の筒形のピストン部74と、ピストン部74から一体にヘッド30側に延び出した、ピストン部74よりも小径の筒状のロッド部76とを有しており、そしてそのピストン部74の外面に、上記のOリングから成るシール部材64が保持されており、ピストン部74がかかるシール部材64を介して、シリンダ部62の先端側に部分的に厚肉且つ内径が小径に形成された小径部78の内面に気密に接触嵌合するようになっている。
【0039】
一方シリンダ部62は、加硫管32の先端側の一部にて構成された、加硫管32の本体部32aよりも大径を成す筒部80を有しており、この筒部80の先端部に、上記の小径部78が形成されている。
この筒部80よりも先端側には、ブロック状を成し、スライド筒68における上記のロッド部76の外面に相対摺動可能に嵌合するロッド嵌合部82が、筒部80に固定状態に設けられている。
そしてこのロッド嵌合部82の内面側に、上記のOリングから成るシール部材64,66が保持されており、かかるロッド嵌合部82が、ロッド部76に対し気密に嵌合せしめられている。
【0040】
尚、ピストン部74の上記のシール部材64及びロッド嵌合部82のシール部材64は、何れも加硫管32内部に供給された加圧加熱媒体、ここでは蒸気がシリンダ部62とスライド筒68との間を通じて外部に漏出するのを防止するものであり、またシール部材66は、外部からのダスト侵入を防止するダストシールとしてのものである。
【0041】
ここでピストン部74側のシール部材64と、ロッド嵌合部82側のシール部材64との一方については、場合によって省略することも可能である。
尚、この連結装置34における上記のシリンダ部62の筒部80は、加硫管32の一部ではなく、加硫管32とは別に且つ加硫管32に一体に設けたものと考えることもできる。
【0042】
上記ブロック状をなす接続部72は、図5に示しているように正面視形状が4角形状をなしており、この接続部72が、図3及び図5に示す支持構造にて支持されている。
これらの図において84は、一対の板状の支持脚86と、それら支持脚86の上端を連結する板状の連結部88とを有する支持フレームで、接続部72はこの支持フレーム84にて図3及び図4中左右方向、即ち加硫管32の軸方向にスライド移動可能に支持されている。
【0043】
これら図3及び図5において、90は接続部72と支持フレーム84とに跨って設けられたLMガイドで、支持フレーム84側に設けられたLMブロック92と、接続部72側に図3中左右方向に延びる形態で設けられ、LMブロック92に嵌合したガイドレール(LMレール)94とを有している。
尚接続部32は、ここではLMガイド90による移動案内の下に、ハンドル操作にて手動で進退移動させる。但し電動モータ等の駆動装置にて進退移動させるようになすこともできる。
【0044】
この実施形態では、連結装置34が伸縮可能とされており、連結装置34を伸長することで、押出機20のヘッド30と加硫管32とを連結装置34を介して気密に連結状態とすることができる。
また一方連結装置34を収縮させることで、ヘッド30と加硫管32とを連結解除することができる。
具体的には、スライド筒68を図4中左方向に突き出して接続部72を押出機20のヘッド30側に押圧し接続することで、ヘッド30と加硫管32とを連結状態とすることができる。
【0045】
一方スライド筒68をシリンダ部62内部に図中右方向に引き込むことで、図6に示しているようにヘッド30と加硫管32とを連結解除し、ヘッド30(具体的にはヘッド30側のプレート70)と、連結装置34における接続部72との間に図6に示すスペースSを形成することができる。
【0046】
尚このとき、図6に示しているようにスライド筒68のピストン部74は、シリンダ部62の小径部78から図中右向きに離間し、シリンダ部62に対して、詳しくはその筒部80に対し遊嵌した状態となる。
【0047】
図8は連結装置34の作用を、連続加硫開始時の作業手順とともに示している。
図8(I)は、連結装置34にて押出機20のヘッド30と加硫管32とを連結した状態を表しており、このときスライド筒68はヘッド30側への突出し端に位置した状態にあり、スライド筒68のピストン部74は、シリンダ部62の小径部78に気密に嵌合した状態にある。
【0048】
図8(II)は、スライド筒68を図中右方向に引き込めて、ヘッド30と加硫管32とを連結解除した状態を表しており、このときピストン部74は、スライド筒68の引込動作開始直後にシリンダ部62、詳しくはその本体をなす筒部80に対し遊嵌状態となって、この遊嵌状態を保ちながら図中右方向に後退移動する。
そしてスライド筒68が後退端、即ち引込端に到ったところで、ヘッド30側のプレート70と連結装置34の接続部72との間に図6に示すスペースSが形成される。
【0049】
本実施形態では、このようにしてスペースSを形成した状態で、図8(III)に示しているように予め加硫管32に通してあるダミーゴム管96と、押出機20のヘッド30から出たホース10の樹脂チューブ12とをジョイント治具98にてジョイントする。即ち樹脂チューブ12を介してダミーゴム管96と未加硫の被覆ゴム(ゴム管)14とをジョイントする。
ここではダミーゴム管96と樹脂チューブ12のそれぞれを、ジョイント治具98の差込孔に差し込んで、それらをジョイントする。
【0050】
以上のようにしてダミーゴム管96とホース10、つまり未加硫の被覆ゴム14とをジョイントしたところで、図8(IV)に示しているようにスライド筒68を図中左方向に突き出して、接続部72を押出機20のヘッド30側に接続し、ヘッド30と加硫管32とを連結装置34を介して連結状態とする。
そしてその状態で、図2の引取機26及び繰出機18を作動開始させるとともに、押出機20から被覆ゴム14を連続押し出しし、そしてヘッド30から押し出した未加硫のホース10を加硫管32内に連続的に通して、そこで被覆ゴム14の連続加硫を行なう。
【0051】
以上のような本実施形態の連続加硫設備22では、押出機20と加硫管32との何れも位置固定のまま、即ちそれらを移動しなくても連結装置34を単に収縮動作させるだけで、押出機20のヘッド30と連結装置34における接続部72との間に所要のスペースSを形成することができる。
そしてそのスペースSにおいて、予め加硫管32に通してあるダミーゴム管96と押出機20からの未加硫の被覆ゴム14とをジョイントし、その後連結装置34を伸長動作させて、連結装置34の接続部72を押出機20のヘッド30に接続することで、かかる連結装置34を介して押出機20のヘッド30と加硫管32とを連結状態とすることができる。
【0052】
従って本実施形態の連続加硫設備22によれば、ダミーゴム管96及び押出機20からの被覆ゴム14の、上記スペースSに位置していた部分が、押出機20のヘッド30と加硫管32とを連結状態とすることによってたるみを生じるといったことはなく、それ故そのまま引取機26にて引き取り開始して、上記のスペースSに位置していたダミーゴム管96及び押出機20からの被覆ゴム14を加硫管32の内部に引き込んだときに、加硫管32の内部で未加硫の被覆ゴム14のたるんだ部分が加硫管32の管壁に擦ってゴムの破れを生じたり、或いは加硫管32の内部や加硫管32の出口部36で被覆ゴム14のたるんだ部分がつまりを生じ、トラブルを発生させるといったことを防止することができる。
従って本実施形態の連続加硫設備22では連続加硫の立上げを良好に行なうことができる。
【0053】
本実施形態の連続加硫設備22ではまた、シリンダ部62の先端側に且つ上記ロッド嵌合部82の後側位置に、部分的に小径をなす小径部78を設けておき、ロッド部76の突出し端でピストン部74を、その小径部78の内面に接触状態に嵌合させ、またロッド部76が突出し端から引込方向に移動したときには、ピストン部74をシリンダ部62に対して遊嵌するようになしてあるため、連結装置34による押出機20のヘッド30と加硫管32との連結及び連結解除の動作時に、詳しくは連結装置34の伸縮動作時に、シリンダ部62の内面に対するピストン部74の摺動によって大きな抵抗が発生するのを防ぐことができ、連結装置34の伸縮動作を小さな力で円滑に行なわせることができる。
特に連続加硫後の加硫立下げ時に、熱膨張によりシール部材64による摺動抵抗が増大した状態の下でも、連結装置34の収縮動作を円滑に行わせることができる。
【0054】
以上本発明の実施形態を詳述したが、これはあくまで一例示である。
例えば上記の実施形態は、樹脂チューブ12とその外面を覆う被覆ゴム14とを有するホースを連続加硫する場合の例であるが、本発明は芯体としての樹脂マンドレルの外面を被覆する状態に押出機からゴム管を押し出して連続加硫する場合に適用することも可能である。
また上記シリンダ部62及びスライド筒68を上記形態とは異なった形態で構成することも可能であるなど、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた態様で実施することが可能である。
【符号の説明】
【0055】
10 ゴム被覆ホース
14 被覆ゴム(ゴム管)
20 押出機
22 連続加硫設備
26 引取機
30 ヘッド
32 加硫管
32a 本体部
34 連結装置
62 シリンダ部
64,66 シール部材
68 スライド筒
72 接続部
74 ピストン部
76 ロッド部
78 小径部
82 ロッド嵌合部
96 ダミーゴム管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出機のヘッドに気密に連結された加硫管を有し、該押出機のヘッドから押し出したゴム管を該加硫管の内部を連続的に通過させて、該加硫管の内部で加圧下に加熱して連続的に加硫する連続加硫設備であって、
前記押出機のヘッドと前記加硫管とを該加硫管の軸方向に離隔して配置するとともに、該加硫管には、
(a)該加硫管の先端側に構成されたシリンダ部と、(b)該シリンダ部に対しシール部材を介して該加硫管の軸方向に摺動可能に内嵌し、前記押出機のヘッド側への突出し運動及び該ヘッドから離間して該シリンダ部内部に引き込み運動するスライド筒と、(c)該スライド筒の先端側に設けられ、前記ヘッドに密着状態に接続される接続部と、を備えて前記加硫管の軸方向に伸縮運動し、該加硫管と前記押出機のヘッドとを連結及び連結解除可能な連結装置を設けたことを特徴とする連続加硫設備。
【請求項2】
請求項1において、前記スライド筒は、後端側の筒形のピストン部と、該ピストン部から前記ヘッド側に延び出した、該ピストン部よりも小径の筒状のロッド部とを有していることを特徴とする連続加硫設備。
【請求項3】
請求項2において、前記シリンダ部には先端側に前記ロッド部の外面に対して相対摺動可能に嵌合するロッド嵌合部が備えてあり、該ロッド嵌合部に該ロッド部の外面との間をシールするシール部材が設けてあり又は/及び前記ピストン部に前記シリンダ部の内面との間をシールするシール部材が設けてあることを特徴とする連続加硫設備。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかにおいて、前記シリンダ部には、先端側且つ前記ロッド嵌合部の後側位置に、部分的に小径をなす小径部が設けてあり、前記ロッド部の突出し端で前記ピストン部が該小径部の内面に接触状態に嵌合し、該ロッド部が該突出し端から引込方向に移動した状態の下で該ピストン部が該シリンダ部に対し遊嵌するようになしてあることを特徴とする連続加硫設備。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかにおいて、前記シリンダ部は、前記加硫管の本体部よりも内径が大径となしてあることを特徴とする連続加硫設備。
【請求項6】
押出機のヘッドから押し出したゴム管を、加硫管の内部を連続的に通過させて、該加硫管の内部で加圧下に加熱して連続的に加硫するに際し、
前記加硫管には、
(a)該加硫管の先端側に構成されたシリンダ部と、(b)該シリンダ部に対しシール部材を介して該加硫管の軸方向に摺動可能に内嵌し、前記押出機のヘッド側への突出し運動及び該ヘッドから離間して前記シリンダ部内部に引き込み運動するスライド筒と、(c)該スライド筒の先端側に設けられ、前記ヘッドに密着状態に接続される接続部と、を備えて前記加硫管の軸方向に伸縮運動し、該加硫管と前記押出機のヘッドとを連結及び連結解除可能な連結装置を設け、
前記ゴム管の連続加硫の開始時において、前記ロッド部を引き込めて前記連結装置の接続部と前記押出機のヘッドとの間にスペースを形成し、予め前記加硫管に通したダミーゴム管と前記押出機のヘッドから出た前記ゴム管の各端部を前記スペースでジョイントし、
その後に前記ロッド部を突き出して前記加硫管と押出機のヘッドとを前記連結装置にて連結状態とし、前記ダミーゴム管を引取機にて引取開始して該ゴム管の連続押出し及び加硫を実行することを特徴とする連続加硫方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−187870(P2012−187870A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−54521(P2011−54521)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】