説明

連続鋳造機におけるロールのベアリング異常検出装置及び方法

【課題】 連続鋳造機におけるロールのベアリング異常を早期に且つ正確に検出する。
【解決手段】 鋳片を挟み込む一対のロール2,3が鋳片の鋳造方向に所定の間隔で並ぶ連続鋳造機において、各ロール2,3の両端部を回転可能に支持するベアリング4a,4a,5a,5bの異常を検出する装置及び方法であって、一対のロール2,3間における少なくとも2箇所の対向間隔L1,L2を測定し、測定した少なくとも2箇所の測定値の差(L1−L2)を計算すると共に、各測定位置の当該測定前に測定した測定値との差(ΔL1,ΔL2)を計算し、それぞれ計算した値が予め設定されたしきい値を超えたときに、そのしきい値を超えたロールのベアリング異常と判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続鋳造機におけるロールのベアリング異常を検出するロールベアリング異常検出装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
連続鋳造機は、転炉で精錬された溶鋼を連続的に鋳造し、圧延素材となる鋼片(スラブ)を製造する設備である。この連続鋳造機には、鋳型の下方からパスラインに沿って鋳片を水冷しながら凝固させるためのロール列、すなわちこの鋳片を挟み込む一対のロールが当該鋳片の鋳造方向に所定の間隔で複数並んで設けられている。
【0003】
連続鋳造機では、これらロール列のロール間隔やロールアライメント等が正規の値から外れてしまうと、一対のロール間を鋳片が通過する間の凝固過程で、鋳片内部の溶融金属に割れ等が生じてしまい、この鋳片の品質異常を招いてしまう。特に、ロールの両端部を回転可能に支持するベアリングに異常が生じた場合には、ロールの回転不良や回転不能によって、鋳片表面にロールとの摩擦による疵が発生してしまう。
【0004】
しかしながら、連続鋳造機におけるロールの設置場所は、非常に狭所であり、鋳片からの輻射熱も直接当たるため、操業中の点検やメンテナンスによって、このようなロールのベアリング異常をオンラインで検出することは困難である。したがって、このロールの点検及びメンテナンス作業は、一定期間毎に行われる定期修理等の長時間連続鋳造機の操業を休止する場合に限られている。
【0005】
また、連続鋳造機では、周囲の使用環境や潤滑状態によってロールのベアリングが徐々に悪化していくものもあれば、突然悪くなるものもある。したがって、上述した定期修理だけでロールのベアリング異常を検出することは困難である。さらに、操業中にロールのベアリング異常が発生した場合には、品質異常の鋳片が発生して始めてロールのベアリング異常が発見されるため、その度に多大な生産障害を招くことになる。
【0006】
また、従来のロールの点検作業では、回転するロールを目視によって検査したり、ベアリングから排出したグリースを分析したりするといった定性的な検査しか行われておらず、ロールのベアリング異常は、ベアリング内部の潤滑状態や使用環境の違いによって大きく異なるため、このような検査でロールのベアリング異常を発見することは非常に困難である。さらに、これらの点検作業には、人手と時間が多く掛かるため、メンテナンスのための費用が嵩むといった問題も発生してしまう。
【0007】
ところで、連続鋳造機の操業中にロールの状態をオンラインで定量的に把握する技術としては、例えばダミーバーに設置されたロール間隔測定器を用いて、ロール間隔の異常を検知する方法が提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0008】
しかしながら、この特許文献1に記載される方法では、あるガイドロール対の間隔の測定値と、前後のガイドロール対の間隔の平均値とを比較し、それらの偏差がしきい値を超えるとき異常と判定する方法のため、検知されたロール間隔の異常からは一概にロールのベアリング異常と判定することはできない。すなわち、このロール間隔測定器の主な役割は、連続鋳造機におけるロールの対向間隔を測定することであって、このロール間隔測定器が測定した測定値には、ロールのベアリング異常によるものもあれば、ロールの磨耗やロールの曲がり(振れ)等のロール自体によるものも含まれている。
【0009】
したがって、この特許文献1に記載された方法では、ロールのベアリング異常まで正確に検出することはできず、ベアリングの経時的な変化も捉えることはできないため、上述したロールのベアリング異常をオンラインで検出する方法とはならず、また、ロール交換やセグメント交換等の指標とすることができない。
【特許文献1】特開平8−300122号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、その目的は、連続鋳造機におけるロールのベアリング異常を早期に且つ正確に検出することができる連続鋳造機におけるロールのベアリング異常検出装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するために、第1の発明に係るベアリング異常検出装置は、鋳片を挟み込む一対のロールが鋳片の鋳造方向に所定の間隔で並ぶ連続鋳造機において、各ロールの両端部を回転可能に支持するベアリングの異常を検出するものであって、一対のロール間における少なくとも2箇所の対向間隔を測定する測定手段と、測定手段が測定した少なくとも2箇所の測定値の差を計算すると共に、各測定位置の当該測定前に測定した測定値との差を計算し、それぞれ計算した値が予め設定されたしきい値を超えたときに、そのしきい値を超えたロールのベアリング異常と判定する判定手段とを備えることを特徴とする。
また、第2の発明に係るベアリング異常検出装置は、第1の発明に係るベアリング異常検出装置において、判定手段が、一対のロールのうち、各測定位置の当該測定前に測定した測定値との差が正の値となるときに、下側のロールのベアリング異常と判定し、各測定位置の当該測定前に測定した測定値との差が負の値となるときに、上側のロールのベアリング異常と判定することを特徴とする。
また、第3の発明に係るベアリング異常検出方法は、鋳片を挟み込む一対のロールが鋳片の鋳造方向に所定の間隔で並ぶ連続鋳造機において、各ロールの両端部を回転可能に支持するベアリングの異常を検出する方法であって、一対のロール間における少なくとも2箇所の対向間隔を測定し、測定した少なくとも2箇所の測定値の差を計算すると共に、各測定位置の当該測定前に測定した測定値との差を計算し、それぞれ計算した値が予め設定されたしきい値を超えたときに、そのしきい値を超えたロールのベアリング異常と判定することを特徴とする。
また、第4の発明に係るベアリング異常検出方法は、第3の発明に係るベアリング異常検出方法において、一対のロールのうち、各測定位置の当該測定前に測定した測定値との差が正の値となるときに、下側のロールのベアリング異常と判定し、各測定位置の当該測定前に測定した測定値との差が負の値となるときに、上側のロールのベアリング異常と判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明では、一対のロール間における少なくとも2箇所の対向間隔を測定し、測定した少なくとも2箇所の測定値の差を計算すると共に、各測定位置の当該測定前に測定した測定値との差を計算し、それぞれ計算した値が予め設定されたしきい値を超えたときに、そのしきい値を超えたロールのベアリング異常と判定することによって、連続鋳造機の操業中にロールの状態をオンラインで定量的に把握することができる。
したがって、本発明によれば、連続鋳造機におけるロールのベアリング異常を早期に且つ正確に検出することができるため、鋳片の品質異常を防止し、生産性を向上させると共に、メンテナンスのための費用を削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を適用した連続鋳造機におけるロールのベアリング異常検出装置及び方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
本発明が適用される連続鋳造機の要部を図1に模式的に示す。この連続鋳造機は、転炉で精錬された溶鋼を連続的に鋳造し、圧延素材となる鋼片(スラブ)を製造する設備である。この連続鋳造機には、鋳型の下方からパスラインに沿って鋳片を水冷しながら凝固させるためのロール列1が設けられている。このロール列1は、鋳片を挟み込む一対のロール2,3が当該鋳片の鋳造方向に所定の間隔で複数並んで設けられたものであり、これら一対のロール2,3の間に通した鋳片を引き抜きながら連続的に鋳造(キャスト)を行う。
【0015】
また、図2に模式的に示すように、一対のロール2,3のうち、下部側に配設された下側ロール2は、その両端部にある支軸2a,2bが下側ベアリング4a,4bによって回転可能に支持されている。同様に、下側ロール2に対向して上部側に配設された上側ロール3は、その両端部にある支軸3a,3bが上側ベアリング5a,5bによって回転可能に支持されている。
【0016】
本発明を適用したベアリング異常検出装置は、この連続鋳造機における各ロール2,3に発生したベアリング4a,4b,5a,5bの異常を検出するものであり、一対のロール2,3間における対向間隔を測定する測定手段としてのロール間隔測定器10と、このロール間隔測定器10が測定した測定値に基づいて、ベアリング4a,4b,5a,5bの異常を判定する判定手段としてのコンピュータ11とを備えている。
【0017】
ロール間隔測定器10には、例えばロータリーエンコーダや作動トランスといった公知の測定手段を用いることができる。このロール間隔測定器10は、一対ロール2,3間に挿入される連続鋳造機のダミーバー6に設置されている。そして、このロール間隔測定器10は、一対のロール2,3間における少なくとも2箇所の対向間隔を測定する。このロール間隔測定器10は、一対のロール2,3間における2箇所の対向間隔を測定するように構成されており、具体的には、一対のロール2,3の中央部を挟んで軸方向に対称なベアリング4a,5a側におけるロール2,3の対向間隔L1と、ベアリング4b,5b側におけるロール2,3の対向間隔L2とを測定する。また、ロール間隔測定器10は、ロール列1の全てのロール2,3間において測定を行うことができる。なお、このロール間隔測定器10では、上記2箇所の他にも一対のロール2,3における中央部の対向間隔Lを測定するように構成してもよい。
【0018】
そして、このロール間隔測定器10によって測定された各測定値は、測定データとしてデータ通信ケーブル12を通じて同じくダミーバー6に取り付けられた記憶手段としてのデータ記憶装置13に一旦記憶(保存)される。このデータ記憶装置13には、例えばHDDやメモリ等の公知の記憶手段を用いることができる。また、データ記憶装置13に記憶された測定データは、データ通信ケーブル14を通じてコンピュータ11に供給される。
【0019】
コンピュータ11は、上述した連続鋳造機の各部の制御を行うメインコンピュータに設けられた信号処理回路、或いはこのメインコンピュータに接続された又は独立した情報処理装置であって、データ記憶装置13から測定データが供給されると、内部に記録された判定プログラムに従って、ロール列1の各ロール2,3について、ベアリング4a,4b,5a,5bに異常が発生したか否かの判定を行う。また、異常が発生したロール2,3について、上下どちらのロール2,3のベアリングに異常が発生したかの判定を行う。なお、このベアリング異常検出装置は、上述した測定データ及びそれに基づく判定結果を、図示を省略するモニタに表示したり、プリンタに出力したりすることもできる。
【0020】
ベアリング4a,4b,5a,5bに異常が発生したか否かの判定プログラムには、本発明を適用したベアリング異常検出方法が用いられている。具体的に、このベアリング異常検出方法では、上述したロール間隔測定器10によって測定された各ロール2,3の2箇所の測定値の差、すなわち一方の対向間隔L1の測定値と、他方の対向間隔L2の測定値との差(L1−L2)を計算する。そして、計算した値が予め設定されたしきい値を超えたときに、そのしきい値を超えたロール2,3のベアリング異常と判定する。
【0021】
ここで、図2に示す状態は、一対のロール2,3の対向間隔が正常な場合である。この場合、4箇所のベアリング4a,4b,5a,5bに異常は無く、ロール2,3の軸方向のうち、その中央部の対向間隔L、その中央部を挟んだ左側の対向間隔L1及び右側の対向間隔L2は、共に等しくなっている(L=L1=L2)。
【0022】
これに対して、図3に示すように、一対のロール2,3のベアリング4a,4b,5a,5bのうち、何れか1つに異常が生じた場合には、ベアリングに異常が生じたロールがその自重によって下降することになる。この場合、図2中に示す正常な状態に比べて、ロール2,3の対向間隔L’に差が生じることになる(L≠L’)。
【0023】
一方、一対のロール2,3は、ベアリング4a,4b,5a,5bに異常が生じていない場合であっても、図2中に示す正常な状態に比べて、ロール2,3の対向間隔L’に差が生じることがある。
例えば図4に示すように、ロール2,3の間を鋳片が通過することによって、ロール2,3の表面に磨耗が生じて、そのロール径が小さくなる場合がある。この場合、ロール2,3の対向間隔L’は、図2中に示す正常な状態に比べて広くなる(L’>L)。
また、図5に示すように、鋳造する鋳片の熱によってロール2,3が熱変形し、ロール2,3に曲がりが生じることもある。この場合、ロール2,3の回転中にロール2,3の対向間隔L’が拡大したり(Lmax)、逆に縮小したり(Lmin)して変動することになる(Lmax≧L’≧Lmin)。
【0024】
したがって、上記特許文献1のように、ダミーバー6に設置されたロール間隔測定器10を用いて、ロール2,3の対向間隔Lを測定し、その測定値がしきい値を超えた場合にベアリング4a,4b,5a,5bに異常が発生したと判定してしまうと、実際にはベアリング異常の過検知となってしまう場合がある。
【0025】
そこで、本発明を適用したベアリング異常検出方法では、このようなロール2,3の磨耗やロール2,3の曲がり(振れ)の影響を排除するために、各ロール2,3間における2箇所の対向間隔L1,L2を定期的に測定し、測定した2箇所の測定値の差(L1−L2)を計算し、計算した値が経時変化と共に予め設定されたしきい値を超えたときに、そのしきい値を超えたロール2,3のベアリング異常と判定する。これにより、ベアリング異常の過検知を無くして、判定精度の向上を図ることできる。
【0026】
さらに、本発明を適用したベアリング異常検出方法では、各測定位置の当該測定前の測定値との差(Δ1,Δ2)、すなわち上述したロール間隔測定器10によって連続鋳造機のキャスト毎に測定される一方の対向間隔L1の測定値L1n(nは測定回数を表す。)と、その測定値L1nよりも前に測定した測定値L1fとの差(ΔL1=L1n−L1f)を計算すると共に、他方の対向間隔L2の測定値L2n(nは測定回数を表す。)と、その測定値L2nよりも前に測定した測定値L2fとの差(ΔL2=L2n−L2f)を計算する。
【0027】
そして、上述した各ロール2,3間の2箇所の測定値の差(L1−L2)がしきい値を超えたときに、そのしきい値を超えたロール2,3のベアリング異常の判定を行うと共に、計算した各測定位置の当該測定前の測定値との差(Δ1,Δ2)から、一対のロール2,3を支持する4つのベアリング4a,4b,5a,5bのうち、どのベアリングに異常が発生したのか判定を行う。
【0028】
具体的に、図6に示すように、下側ロール2のベアリング(例えば図6中左側)4aに異常が発生した場合には、この下側ロール2の自重によってベアリング異常が生じた下側ロール2の左側が下降する。この場合、ロール2,3の一方(図6中左側)の対向間隔L1は、図2中に示す正常な状態のときよりも広くなる。
したがって、ロール2,3の2箇所の対向間隔L1、L2の差(L1−L2)が予め設定されたしきい値を超えると共に、各測定位置の当該測定前に測定した測定値との差(ΔL1,ΔL2)が正の値(>0)となるときには、下側ロール2のベアリング異常と判定することができる。
【0029】
なお且つ、ベアリング異常が発生したロール2,3間の2箇所の測定値の差(L1−L2)からは、この差(L1−L2)が正の値(L1>L2)となるときには、下側ロール2の左側のベアリング異常と判定する一方、この差(L1−L2)が負の値(L1<L2)となるときには、下ロール2の右側のベアリング異常と判定することができる。
【0030】
これに対して、図7に示すように、上側ロール3のベアリング(例えば図7中左側)5aに異常が発生した場合には、この上側ロール3の自重によってベアリング異常が生じた上側ロール3の左側が下降する。この場合、ロール2,3の一方(図7中左側)の対向間隔L1は、図2中に示す正常な状態のときよりも狭くなる。
したがって、ロール2,3の2箇所の対向間隔L1、L2の差(L1−L2)が予め設定されたしきい値を超えると共に、各測定位置の当該測定前に測定した測定値との差(ΔL1,ΔL2)が負の値(<0)となるときには、上側ロール3のベアリング異常と判定することができる。
【0031】
なお且つ、ベアリング異常が発生したロール2,3間の2箇所の測定値の差(L1−L2)からは、この差(L1−L2)が正の値(L1>L2)となるときには、上側ロール3の右側のベアリング異常と判定する一方、この差(L1−L2)が負の値(L1<L2)となるときには、上側ロール3の左側のベアリング異常と判定することができる。
【0032】
なお、しきい値については、上述したロール間隔測定器10によって測定された測定値が各ロール2,3の据付ガタ等の影響も受けるため、この影響も考慮して設定することが望ましい。
また、上述した4箇所のロールベアリング4a,4b,5a,5bのうち、複数箇所に同時に異常が発生することは極めて稀であることから、これら4箇所のベアリングのうち1箇所に異常が発生することを想定したとしても、ベアリング異常の判定を適切に行うことができる。
【0033】
以上のように、本発明が適用された連続鋳造機では、一対のロール2,3間における2箇所の対向間隔L1,L2を測定し、測定した2箇所の測定値の差(L1−L2)を計算すると共に、各測定位置の当該測定前に測定した測定値との差(ΔL1,ΔL2)を計算し、それぞれ計算した値が予め設定されたしきい値を超えたときに、そのしきい値を超えたロールのベアリング異常と判定することによって、連続鋳造機の操業中にロール列1のベアリング4a,4b,5a,5bの状態をオンラインで定量的に把握することができる。
したがって、本発明を適用された連続鋳造機では、ロール列1のベアリング異常を早期に且つ正確に検出することができるため、鋳片の品質異常を防止し、生産性を向上させると共に、メンテナンスのための費用も削減することができる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとするが、以下の実施例は本発明の技術範囲を限定するものではない。
【0035】
(実施例)
実施例では、最大鋳造幅が2200mm、鋳造厚が280mm、機長が45mの連続鋳造機のキャスト毎に、各ロール2,3の中央部を挟んだ左右2箇所の対向間隔L1,L2を測定した。また、ロール間隔測定器10には、ロータリーエンコーダを用い、これらロール間隔測定器10を、各ロール2,3の中央部を挟んだ2箇所の対向間隔L1,L2を測定するようにダミーバー6に設置した。なお、これら2箇所の間の距離は、900mmであり、これら2箇所を測定するロール間隔測定器10をロール中央部を挟んで対称となるように配置した。そして、鋳造開始前には、ロール列1の全てのロール2,3の対向間隔L1,L2について測定を行い、その1回目のキャストの測定値(L1f,L2f)を求めた。
【0036】
実施例では、連続鋳造機のキャスト毎に測定された2箇所の測定値の差(L1−L2)を求めると共に、連続鋳造機のキャスト毎に測定される各測定位置の測定値(L1n,L2n)と、上述した1回目のキャストで測定した測定値(L1f,L2f)との差(ΔL1,ΔL2)を求め、それぞれの値が予め設定されたしきい値(±0.5mm)を超えたときに、そのしきい値を超えたロールのベアリング異常と判定した。その測定結果を図8に示す。
【0037】
図8に示すように、実施例では、測定開始から約2ヶ月間測定を行ったところ、164キャスト目にロール2,3の2箇所の対向間隔L1、L2の差(L1−L2)がしきい値を超え、負の値(L1<L2)となった。また、各測定位置の164キャスト目と1キャスト目との測定値との差(ΔL1,ΔL2)を計算したところ、負の値(<0)となった。このため、実際に異常が発生したと思われるロールを調査したところ、判定通りに上側ロール3の左側のベアリング5aに異常が発見された。
【0038】
(比較例)
比較例では、上記連続鋳造機のキャスト毎に各ロール2,3の1箇所、すなわちロール中央部における対向間隔Lのみを測定し、この測定値とその前後のロール2,3の対向間隔の平均値とを比較し、それらの偏差ΔLがしきい値(±0.5mm)を超えたときに、ロール2,3のベアリング異常と判定する以外は、実施例と同様に上記連続鋳造機における測定を行った。その測定結果を図9に示す。
【0039】
図9に示すように、比較例では、実際に上側ロール3の左側のベアリング5aに異常が発生した164キャストで、ΔLがしきい値が超えておらず、ベアリング異常とは判定されなかった。また、164キャスト目よりも前に、ΔLがしきい値を超えたときが2回(56,76キャスト目)発生したが、実際に該当するロールを検査しても、何れもベアリングの異常は発見されず、過検知であることがわかった。
【0040】
以上のことから、本発明は、連続鋳造機におけるロールのベアリング異常を検出するのに有効であることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0041】
なお、本発明は、連続鋳造機におけるロールのベアリング異常を検出するのに好適なものであるが、そのような連続鋳造機以外にも一対のロールの間に被プレス材を挟み込んでプレス処理を行うロールプレス装置において、各ロールの両端部を回転可能に支持するベアリングの異常を検出する場合に広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1は、本発明を適用した連続鋳造機におけるロールのベアリング異常検出装置を模式的に示す構成図である。
【図2】図2は、一対のロールの正常状態を模式的に示す正面図である。
【図3】図3は、一対のロールのベアリングに異常が発生した状態を模式的に示す正面図である。
【図4】図4は、一対のロールに摩耗が発生した状態を模式的に示す正面図である。
【図5】図5は、一対のロールに曲がりが発生した状態を模式的に示す正面図である。
【図6】図6は、下側ロールのベアリングに異常が発生した状態を模式的に示す正面図である。
【図7】図7は、上側ロールのベアリングに異常が発生した状態を模式的に示す正面図である。
【図8】図8は、実施例の測定回数とL1−L2との関係を示す示すグラフである。
【図9】図9は、比較例の測定回数とΔLとの関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0043】
1…ロール列、2…下側ロール、2a,2b…支軸、3…上側ロール、3a,3b…支軸、4a,4b…下側ベアリング、5a,5b…上側ベアリング、6…ダミーバー、10…ロール間隔測定器(測定手段)、11…コンピュータ(判定手段)、13…データ記憶装置(記憶手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳片を挟み込む一対のロールが前記鋳片の鋳造方向に所定の間隔で並ぶ連続鋳造機において、各ロールの両端部を回転可能に支持するベアリングの異常を検出する連続鋳造機におけるロールのベアリング異常検出装置であって、
前記一対のロール間における少なくとも2箇所の対向間隔を測定する測定手段と、
前記測定手段が測定した少なくとも2箇所の測定値の差を計算すると共に、各測定位置の当該測定前に測定した測定値との差を計算し、それぞれ計算した値が予め設定されたしきい値を超えたときに、そのしきい値を超えたロールのベアリング異常と判定する判定手段とを備えることを特徴とする連続鋳造機におけるロールのベアリング異常検出装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記一対のロールのうち、前記各測定位置の当該測定前に測定した測定値との差が正の値となるときに、下側のロールのベアリング異常と判定し、前記各測定位置の当該測定前に測定した測定値との差が負の値となるときに、上側のロールのベアリング異常と判定することを特徴とする請求項1に記載の連続鋳造機におけるロールのベアリング異常検出装置。
【請求項3】
鋳片を挟み込む一対のロールが前記鋳片の鋳造方向に所定の間隔で並ぶ連続鋳造機において、各ロールの両端部を回転可能に支持するベアリングの異常を検出する連続鋳造機におけるロールのベアリング異常検出方法であって、
前記一対のロール間における少なくとも2箇所の対向間隔を測定し、測定した少なくとも2箇所の測定値の差を計算すると共に、各測定位置の当該測定前に測定した測定値との差を計算し、それぞれ計算した値が予め設定されたしきい値を超えたときに、そのしきい値を超えたロールのベアリング異常と判定することを特徴とする連続鋳造機におけるロールのベアリング異常検出方法。
【請求項4】
前記一対のロールのうち、前記各測定位置の当該測定前に測定した測定値との差が正の値となるときに、下側のロールのベアリング異常と判定し、前記各測定位置の当該測定前に測定した測定値との差が負の値となるときに、上側のロールのベアリング異常と判定することを特徴とする請求項3に記載の連続鋳造機におけるロールのベアリング異常検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−247687(P2006−247687A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−66189(P2005−66189)
【出願日】平成17年3月9日(2005.3.9)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】