説明

連設の超微細化装置

【課題】有機物等の固形物を連続的に効率的に、所望の粒度に繰り返し超微細化できるようにする。
【解決手段】 二連設超微細化装置1は、逆U字形状の連通湾曲上部11と有底13、16の垂直下部12、15とから成る二つの外円筒体10A、10Bと、それら垂直下部内で環状空間18、19を形成する内円筒体20A、20Bと、一方の外円筒体10Aの環状空間18に被処理物を含んだ高速流体L1を供給して反時計方向の好ましくは8m/秒以上の高速旋回流H1を発生する第一ポンプP1及び配管32と、内円筒体20Aの底部21から、上縁22を越えて底23に落下する中間被処理水W1を吸引し、外円筒体10Bの環状空間19に高速流体L2を供給して時計方向の高速旋回流H2を発生する第二ポンプP2及び配管33と、内円筒体20Bの底部26から、上縁27を越えて底16に落下する処理水を排出する配管34と、配管34の弁V3と、外円筒体の結合中央上部に接続された排出管39とから成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種有機物などの固形状の被処理物を含んだ流体を高速旋回させて、高速旋回流が発生する剪断作用や筒体底へ落下による衝撃力によってミクロンのレベルまで被処理物を繰り返し超微細化する連設の超微細化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品加工や畜産、一般家庭からの廃棄物には多量の有機物を含み、しかも有機物系廃棄物は、微細な固形物でありながら液状ないしはスラリー状になっているものが多く、例えば、豆腐製造の副生成物の「おから」や、酒粕や醤油粕や油粕、畜産農家や牧場から排出される家畜の糞尿、家庭やレストランやホテルなどからの生ゴミや賞味期限食品などがあり、これらは、肥料に再生利用されるものもあるが、大部分は焼却処分されているのが現状である。
【0003】
これらの廃棄物は、種々の形態の成分を含んでおり、これらを例えば肥料としてりようするには、乾燥した粉末や顆粒やペレットなどの状態に加工するのが好ましいが、このためには、細かく粉砕ないし微細化する必要がある。上記のような廃棄物には、野菜の葉軸や根茎、畜糞中の藁などの相対的に長い繊維物や、硬い骨質などを含み、更に油脂や志望などの脂質も含んでいるために、乾燥を容易にして造粒するために、それらを粉砕して微細化する必要がある。しかも、これらの廃棄物は、通常多量の水分を含んでいるので、その処理には液体中に含まれたままで微細化されることが要求される。
【0004】
有機物の微細化のためにキャビテーションを利用した先行技術がある(特許文献1参照)。特許文献1には、箱状の容器内の一端側に容器内部に向けて水噴射ノズルを配置し、空気を水ジェット中に巻き込ませて積極的にキャビテーション泡を発生させ、反対側端部の開口部から排出する構成であって、キャビテーション流によって有機物の細胞の破壊や気液分離などを行うもであった。
【0005】
キャビテーションを利用した別の技術では、特許文献2が示すように、池などの水域の水中に、高圧水噴射ノズルとその対向がわに凹面を有するターゲット板とを配置して、ノズルとターゲットとの間でキャビテーションを伴った高速水ジェットを自己循環的に発生させ、キャビテーション流によって水中の有機物の分解や細菌の細胞膜の破壊を行って、貯水などを長時間かけて浄化しようとするものであった。
【特許文献1】特開平11−319819
【特許文献2】特開2001−017988
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
水噴出装置からの高速水流中では、キャビテーションと呼ばれる空洞化現象が発生し、細菌細胞に対して強力に剪断や引っ張りや圧縮などの大きな力が作用して細胞を破壊して微細化することができる。このキャビテーションの破壊能力は、さらには細胞や、これによって構成される組織や繊維をも破壊して、上記のような廃棄物の微細化のために利用できることは考えられる。
【0007】
上記の特許文献1の技術は、高速水流の破壊力によって細菌細胞などの比較的柔軟な微細な有機物を破壊するが、高速水流中での瞬間的な破壊であって持続性が無く、廃棄物中に含まれる組織や繊維物や硬質部を含む比較的大きな塊状物に対しては破壊効率が低いために実用性が無かった。特に、繊維や塊状物に対してジェット流を効率良く供給できなかった。また、動物組織の脂肪分を含む廃棄物の処理にあたっては、脂肪分が分離して水中で懸濁してフィルターなどに沈着して装置を詰まらせることが多く、連続的に効率的に運転する上で問題であった。
【0008】
また、容器内での粉砕や微細化の処理では、容器内にキャビテーション領域を作って連続的に運転するので、容器を構成する金属材に対してキャビテーションの浸食作用や大きな繰り返しの衝撃が加わり、繰り返しによる疲労破壊にも注意を払う必要がある。
【0009】
本発明は、上記問題に鑑み、動物性有機物を含む広範囲の種類の固形状の被処理物に対して連続的に且つ効率的に、所望の粒度に必要に応じて超微細化を繰り返すことができ、構造が簡単で耐久性の大きな装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第一発明は、立面視で略逆U字形状に中央上部で互いに連通状態で結合し、湾曲上部と有底の垂直下部とから成る略逆J字形状の複数の外筒体と、
各外筒体の垂直下部の内部において間に環状空間を形成するように垂直下部の底に固定された有底の垂直内筒体と、
上記複数の外筒体のいずれかの環状空間に固形状の被処理物を含んだ高速流体を供給して好ましくは8m/秒以上の平面視で時計方向か、又は反時計方向の高速旋回流を発生する第一ポンプ及び配管と、
高速流体が供給される外筒体の内筒体の底部から、該内筒体の開放上縁を越えて底に落下し流入してくる流体を吸引して、上記いずれか以外の外筒体の環状空間に被処理物を含んだ高速流体を供給して好ましくは8m/秒以上の平面視で反時計方向か、又は時計方向の高速旋回流を発生する第二ポンプ及び配管と、
上記いずれか以外の外筒体の内筒体の底部から、該内筒体の開放上縁を越えて底に落下し流入してくる流体を排出する配管と、
該流体排出配管に設けられた排出量調節手段と、から構成されており、
上記高速流体が含有している被処理物は、上記環状空間における高速旋回流が発生する剪断作用と上記内筒体の底への流体の落下による衝撃力によってミクロンのレベルまで超微細化されることを特徴とする連設の超微細化装置である。
【0011】
上記第一ポンプからの配管と、上記第二ポンプまでの配管と、上記排出の配管とには、各々開閉弁が配置される。
また、上記第一ポンプからの配管には高速流体に空気を混入するエゼクターが設けられる。
更に、上記外筒体の中央上部には、余剰流体を排出する排出管が接続される。
上記いずれか以外の外筒体は、その環状空間内に突出量変更可能に突き出た複数の突出部材を有することができる。
更に、上記環状空間に固形状の被処理物を含んだ高速流体の供給は、ほぼ接線方向から行われる。
【0012】
第二発明は、立面視で略逆U字形状に中央上部で互いに連通状態で結合し、湾曲上部と有底の垂直下部とから成る略逆J字形状の二つの外筒体と、
各外筒体の垂直下部の内部において間に環状空間を形成するように垂直下部の底に固定された有底の垂直内筒体と、
上記二つの外筒体の内の一方の環状空間に被処理物を含んだ高速流体を供給して好ましくは8m/秒以上の平面視で時計方向か、又は反時計方向の高速旋回流を発生する第一ポンプ及び配管と、
上記一方の外筒体の内筒体の底部から、該内筒体の開放上縁を越えて底に落下し流入してくる流体を吸引して、他方の外筒体の環状空間に被処理物を含んだ高速流体を供給して好ましくは8m/秒以上の平面視で反時計方向か、又は時計方向の高速旋回流を発生する二組の第二ポンプ及び配管と、
他方の外筒体の内筒体の底部から、該内筒体の開放上縁を越えて底に落下し流入してくる流体を排出する配管と、
上記第一ポンプからの配管と、上記第二ポンプまでの配管と、上記排出の配管とに設けられた開閉弁と、
上記二つの外筒体の結合中央上部に接続された余剰流体の排出用排出管と、から構成されており、
上記高速流体が含有している被処理物は、上記環状空間における高速旋回流が発生する剪断作用と上記内筒体の底への流体の落下による衝撃力によってミクロンのレベルまで超微細化されることを特徴とする連設の超微細化装置である。
【0013】
上記被処理物は、下水や食品加工場からの廃水に含有される有機物の場合、超微細化後に発酵菌とこれと共生関係を取る光合成菌とが添加される処理槽で処理される。
【発明の効果】
【0014】
本第一発明の効果として、本第一発明は、立面視で略逆U字形状に中央上部で互いに連通状態で結合し、湾曲上部と有底の垂直下部とから成る略逆J字形状の複数の外筒体と、各外筒体の垂直下部の内部において間に環状空間を形成するように垂直下部の底に固定された有底の垂直内筒体と、上記複数の外筒体のいずれかの環状空間に固形状の被処理物を含んだ高速流体を供給して好ましくは8m/秒以上の平面視で時計方向か、又は反時計方向の第一方向の高速旋回流を発生する第一ポンプ及び配管と、高速流体が供給される外筒体の内筒体の底部から、該内筒体の開放上縁を越えて底に落下し流入してくる流体を吸引して、上記いずれか以外の外筒体の環状空間に被処理物を含んだ高速流体を供給して好ましくは8m/秒以上の平面視で上記第一方向とは反対方向の高速旋回流を発生する第二ポンプ及び配管と、上記いずれか以外の外筒体の内筒体の底部から、該内筒体の開放上縁を越えて底に落下し流入してくる流体を排出する配管とから簡単な構造に構成されているために、上記高速流体が含有している被処理物が、たとえ動物性有機物を含んでいても、上記環状空間における高速旋回流が発生する剪断作用と上記内筒体の底への流体の落下による衝撃力によって高速流で搬送されながら連続的に且つ効率的にミクロンのレベルまで超微細化される。例えば半径1mmの球状の被処理物が半径0.1ミクロンに超微細化されると、単位重量当りの表面積(比表面積)はほぼ1万倍にも成り、発酵菌などの処理微生物や薬品によって極めて効率的に処理作用を受けることになる。また、上記いずれか以外の外筒体の内筒体の底部からの流体排出配管に設けられた排出量調節手段によってその流体排出量を絞ると外筒体同士が略逆U字形状に中央上部で互いに連通状態で結合しているために、上記いずれかの外筒体側に高速旋回しながら旋回方向で干渉しないように旋回方向が反転して流入し、被処理物は所望の粒度まで繰り返し超微細化の作用を受ける。被処理物は、外筒体の内面に付着した流体層とそれに近接した高速旋回流層との間での剪断作用を受けたり、また内筒体の底への落下激突によって超微細化されるために、単純に肉厚を厚くすることで構造が簡単で耐久性の大きな装置にすることができる。砂などの摩滅性の無機物は、相対的に有機物などに比べて粒子が大きいためにフィルターで事前に瀘過することができる。
【0015】
上記第一ポンプからの配管と、上記第二ポンプまでの配管と、上記排出の配管とには、各々開閉弁が配置され、第一ポンプからの配管の開閉弁によって流体の供給量を調節できると共に、装置の緊急時に流体供給を止めることができる。また第二ポンプまでの配管の開閉弁によって供給流体に対応して上記いずれかの環状空間において最適な高速旋回流が形成されるように上記いずれかの内筒体からの吸引量を調節できる。また排出の配管の開閉弁によって流体排出量を絞ると上記いずれか以外の外筒体から上記いずれかの外筒体へ流体を高速旋回させながら戻すことができ、また上記いずれかの外筒体及び内筒体と上記いずれか以外の外筒体及び内筒体による超微細化作用で所定の超微細化が達成された場合は、第一ポンプからの供給量よりも多く排出できる状態に排出の配管の開閉弁を設定できる。
【0016】
また、上記第一ポンプからの配管には高速流体に空気を混入するエゼクターが設けられ、空気混入によって剪断作用を起こす高速旋回流層間でのキャビテーション泡の発生を多くできて被処理物の超微細化を促進せせることができる。
更に、上記外筒体の中央上部には、余剰流体を排出する排出管が接続され、排出の配管の開閉弁を絞り過ぎて超微細化装置内に過剰に流体供給された場合に安全弁的に排出管か
ら余剰流体を排出させることができる。
上記いずれか以外の外筒体は、その環状空間内に突出量変更可能に突き出た複数の突出部材を有することができ、第二ポンプによって発生された極めて高い高速旋回流を突出部材に衝突させることでその背後に生じやすいキャビテーションや衝撃力を流体中の被処理物に作用させることができる。
更に、上記環状空間に固形状の被処理物を含んだ高速流体の供給は、ほぼ接線方向から行われ、壁面への衝突を少なくして環状空間内において効率的に高速度の旋回流を発生することができる。
【0017】
第二発明の効果として、第二発明は、立面視で略逆U字形状に中央上部で互いに連通状態で結合し、湾曲上部と有底の垂直下部とから成る略逆J字形状の二つの外筒体と、各外筒体の垂直下部の内部において間に環状空間を形成するように垂直下部の底に固定された有底の垂直内筒体と、上記二つの外筒体の内の一方の環状空間に被処理物を含んだ高速流体を供給して平面視で時計方向又は反時計方向の好ましくは8m/秒以上の高速旋回流を発生する第一ポンプ及び配管と、上記一方の外筒体の内筒体の底部から、該内筒体の開放上縁を越えて底に落下し流入してくる流体を吸引して、他方の外筒体の環状空間に被処理物を含んだ高速流体を供給して平面視で反時計方向又は時計方向の好ましくは8m/秒以上の高速旋回流を発生する二組の第二ポンプ及び配管と、他方の外筒体の内筒体の底部から、該内筒体の開放上縁を越えて底に落下し流入してくる流体を排出する配管と、上記第一ポンプからの配管と、上記第二ポンプまでの配管と、上記排出の配管とに設けられた開閉弁と、上記二つの外筒体の結合中央上部に接続された余剰流体の排出用排出管とから構成されているために、高速流体が含有している被処理物が、たとえ動物性有機物を含んでいても、上記環状空間における高速旋回流が発生する剪断作用と上記内筒体の底への流体の落下による衝撃力によって高速流で搬送されながら連続的に且つ効率的にミクロンのレベルまで超微細化される。例えば半径1mmの球状の被処理物が半径0.1ミクロンに超微細化されると単位重量当りの表面積(比表面積)はほぼ1万倍にも成り、発酵菌などの処理微生物や薬品によって極めて効率的に処理作用を受けることになる。また、他方の流体排出側の外筒体の内筒体の底部からの流体排出量を排出の配管とに設けられた開閉弁で絞ると、外筒体同士が略逆U字形状に中央上部で互いに連通状態で結合しているために、一方の流体供給側の外筒体側に高速旋回しながら旋回干渉しないように旋回方向が反転して流入し、被処理物は所望の粒度まで繰り返し超微細化の作用を受ける。被処理物は、外筒体の内面に付着した流体層とそれに近接した高速旋回流層との間での剪断作用を受け、また内筒体の底へ落下激突を行うために、単純に肉厚を厚くすることで構造が簡単で耐久性の大きな装置にすることができる。
【0018】
上記被処理物は、下水や食品加工場からの廃水に含有される有機物の場合、超微細化後に発酵菌とこれと共生関係を取る光合成菌とが添加される処理槽で処理され、超微細化によって、例えば半径1mmの球状の被処理物が半径0.1ミクロンに超微細化されると単位重量当りの表面積(比表面積)はほぼ1万倍にも成り、発酵菌などの処理微生物や薬品によって極めて効率的に処理作用を受けることになる。発酵菌の培養タンクや発酵促進タンクに添加される光合成菌は、発酵菌と互いに必要とする物質を供給しあって発酵菌の培養を早めてくれる他に、光合成菌は腐敗菌が発生させる悪臭物質を栄養源として摂取してくれ、発酵菌の増殖力を高める。即ち、光合成菌は、アミノ酸やミネラルやビタミン等の優れた栄養分に富んでいて菌体自身が有機肥料としても有用であるが、腐敗汚泥に会うと硫酸還元菌が発生させる硫化水素を栄養源として積極的に摂取するばかりでなく、有毒アミンであるプトレシンやカタベリン、また発癌催奇性のジメチルニトロサミンも好んで基質として摂取して分解除去する。更に、光合成菌は、緑農地に還元すると作物の根が嫌う有害物質を分解除去し、根の呼吸や栄養代謝系を守り、窒素固定も行って作物の増収をもたらす働きをするばかりでなく、上述のように栄養分に富んでいて土壌中の放線菌が好んで基質として使用することから放線菌の増殖も促進する。増殖された放線菌は、植物病原性の糸状菌を食い殺して更に増殖し、植物病原性の糸状菌による連作障害を防除する働きをする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、本発明の代表的な実施形態の二連設の超微細化装置を図面によって説明する。
図1と図2において、本発明の代表的な実施形態の二連設の超微細化装置1は、下水や食品加工場からの廃水などの有機物や汚泥を固形被処理物して含んだ被処理水Wが処理槽5から高圧水中ポンプP1によって供給され、固形被処理物と水Wのクラスタを超微細化して発酵菌6などによる効率的な消却を図ることができるようにするものであり、立面視で略逆U字形状に中央上部で互いに連通状態で結合し、湾曲した上部11と有底13、16の垂直下部12、15とから成る略逆J字形状の二つの同直径の外円筒体10A、10Bと、各外円筒体10A、10Bの垂直下部12、15の内部において間に環状空間18、19を形成するように垂直下部の底13、16に同心状態で固定された有底23、16の同直径の垂直内円筒体20A、20Bと、流体供給側の外円筒体10Aの環状空間18に被処理物を含んだ高速流体L1をほぼ接線方向から供給して平面視で反時計方向の好ましくは8m/秒以上の、好ましくは30から50m/秒の高速旋回流H1を発生する高圧水中ポンプから成る第一ポンプP1及び配管32と、流体供給側の外円筒体10Aの内円筒体20Aの底部21から、該内円筒体20Aの開放上縁22を越えて底23に落下し流入してくる中間被処理水W1を吸引して、流体排出側の外円筒体10Bの環状空間19に超微細化処理された被処理物を含んだ高速流体L2をほぼ接線方向から供給して平面視で時計方向の好ましくは8m/秒以上の、好ましくは30から50m/秒の高速旋回流H2を発生する二系列の第二ポンプP2、P2及び配管33、33と、流体排出側の外円筒体10Bの内円筒体20Bの底部26から、該内円筒体20Bの開放上縁27を越えて底16に落下し流入してくる処理水W2を処理槽5へ戻す配管34と、第一ポンプP1からの配管32と、第二ポンプP2までの配管33aと、排出配管34とに設けられた開閉弁V1、V2、V3と、二つの外円筒体10A、10Bの結合中央上部に接続され、余剰流体を処理槽5へ戻す余剰流体排出管39とから構成されている。
【0020】
各外円筒体10A、10Bの湾曲した上部11は、逆U字形状の一本の湾曲管で形成されている。流体供給側の内円筒体20Aは、その内部への流入を容易にするために高さを比較的低くし且つ落差を大きくするために底23を下げているのに対して、流体排出側の内円筒体20Bは、超微細化を繰り返す場合に流体供給側の環状空間18へ戻すために高速旋回流H2を上方へ案内するのに都合が良いように、また落差を大きくするために高さを高くしている。流体供給側の内円筒体20Aでは、その底部21から二台の第二ポンプP2、P2によって中間被処理水W1が吸引されるので、開放上縁22を越えてくる中間被処理水W1は底23に激しく衝突し、被処理物や水クラスタの超微細化を強める。また、第一ポンプP1からの配管32には、キャビテーション泡を多く発生したり、処理槽5での好気性菌の活性化を図るために高速水流を利用して空気Aを吸引するエゼクターEが設けられている。更に、流体排出側の外円筒体10Bの内側には、その環状空間19内に突出量変更可能に突き出た複数の突出部材17を有しており、第二ポンプP2、P2によって発生された極めて高い高速旋回流H2を突出部材17に衝突させることでその背後に生じやすいキャビテーションや衝撃力を中間被処理水中の被処理物に作用させることができる。高速旋回流H2の減速度やキャビテーション作用や衝撃力の調節は、突出部材17の数や突出量を変えることで行われる。流体排出側の外円筒体10Bと内円筒体20Bとは底16を共有している。
【0021】
中間被処理水W1中の被処理物の超微細化は、環状空間18、19における高速旋回流H1、H2が外円筒体10A、10Bの内面に付着した水層とそれに近接した高速旋回水流層との間で発生する剪断作用とそれに付随したキャビテーション作用と、中間被処理水W1、W2が内円筒体20A、20Bの底23、16に落下して発生する衝撃力と、高速旋回流H2が突出部材17への衝突とによって達成される。被処理水中の被処理物の種類や超微細化度に応じて、この二連設の超微細化装置1の運転モードを選択することができる。即ち、微細化の容易な被処理物や緩い超微細化度に対応して繰り返し超微細化を行う必要が無い場合は、供給量と排出量が釣り合った状態で運転すればよいし、繰り返し超微細化を行う場合は、被処理水の供給量よりも排出量が少なくなるように排出配管34に設けられた開閉弁V3を絞ることで、流体排出側の環状空間19における高速旋回流H2が高速旋回しながら、環状空間18の高速旋回流H1と旋回干渉しないように旋回方向が反転して流体供給側の環状空間18に流入し、被処理物が所望の粒度まで繰り返し超微細化の作用を受けるように運転する。その場合は、供給量は排出配管34からの排出量と余剰流体用排出管39からの排出量と均衡される。第一ポンプP1からの配管32の開閉弁V1は、供給量の調節と危急時の供給停止に使用され、また第二ポンプP2までの各配管33aの各開閉弁V2は、高速旋回流H2の速度調節に使用され、また排出配管34に設けられた開閉弁V3は、上述のように繰り返し超微細化を行うか、行わないかを制御するために使用される。
【0022】
上記二連設の超微細化装置1の他に、図3と図4に示すように三連設の超微細化装置2があり、二連設の超微細化装置1に付設の外円筒体40Bが重ねられた構造になっている。二連設の超微細化装置1の構造と同じ部分は同じ符号で図示されている。外円筒体40Bの上部41は、図4に示すように外円筒体10A’の上方において上部11’の接続部11Aに重なるように接続され、合流時に旋回方向を同一にすることは言うまでも無く、合流時に高速旋回流H1への干渉をできるだけ少なくするようにしている。繰り返し超微細化を行う場合は、排出配管34の開閉弁V3と排出配管44の開閉弁V4とを絞ることで行う。配管32からの供給量と排出配管34、44からの排出量の差分は、余剰流体用排出管39から排出される。他にも四連設など、一つの流体供給側の外円筒体に複数の流体排出側の外円筒体を連設した構成の超微細化装置も構築される。
【0023】
かくして、本連設の超微細化装置1、2によって、例えば半径が1mmの球状有機物の比表面積が0.00120m/gにすぎなかったものが、半径が0.0001mmの球状に微細化されているとすると、比表面積は12.0m/gと1万倍にも成り、従って処理槽5において供給される発酵菌6は、1万倍の数が表面に付着することができて、有機物の消却や、発酵菌の大量培養を効率的に行うことができる。ラクトバチルス菌などの発酵菌種は、有機物の処理現場や発酵菌の培養現場で採取されたものが、その現場での気候風土で生存してきたもので好ましく、細菌生存圏にできるだけ余計な摩擦をもたらさないようにして存分に効力を発揮できる丈夫な発酵菌を得ることができる。また処理槽5などには、共生関係を取る光合成菌が添加され、互いに必要とする物質を供給しあって培養を早めてくれるほか、液肥等に利用すると光合成菌は腐敗菌が発生させる悪臭物質を栄養源として摂取してくれ、次に説明するように発酵菌が増殖力を高める。即ち、光合成菌は、アミノ酸やミネラルやビタミン等の優れた栄養分に富んでいて菌体自身が有機肥料としても有用であるが、腐敗汚泥に会うと硫酸還元菌が発生させる硫化水素を栄養源として積極的に摂取するばかりでなく、有毒アミンであるプトレシンやカタベリン、また発癌催奇性のジメチルニトロサミンも好んで基質として摂取して分解除去する。更に、光合成菌は、緑農地に還元すると作物の根が嫌う有害物質を分解除去し、根の呼吸や栄養代謝系を守り、窒素固定も行って作物の増収をもたらす働きをするばかりでなく、上述のように栄養分に富んでいて土壌中の放線菌が好んで基質として使用することから放線菌の増殖も促進する。増殖された放線菌は、植物病原性の糸状菌を食い殺して更に増殖し、植物病原性の糸状菌による連作障害を防除する働きをする。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の活用例として下水道施設の無い山岳や僻地で収集される糞尿に、大量に培養した発酵菌を光合成菌と共に投入すると、トイレの浄化にも利用できる。また、下水や食品加工場、畜産関係の排水に含まれる有機物の消却や液肥化、余剰汚泥の消却にも応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の代表的な実施形態に係る二連設の超微細化装置の部分切り欠き立面図。
【図2】同二連設の超微細化装置の平面図。
【図3】本発明の別の実施形態に係る三連設の超微細化装置の概略説明用平面図。
【図4】同三連設の超微細化装置の部分説明図。
【符号の説明】
【0026】
1:二連設の超微細化装置
2:三連設の超微細化装置
5:処理槽
6:発酵菌
10A:流体供給側の外円筒体
10B:流体排出側の外円筒体
11:上部
11’:上部
11A:接合部
12:垂直下部
13:外円筒体の底
16:外円筒体の底
17:突出部材
18:環状空間
19:環状空間
20A:流体供給側の内円筒体
20B:流体排出側の内円筒体
21:流体供給側の内円筒体の底部
22:開放上縁
26:流体排出側の内円筒体の底部
27:開放上縁
32、33:配管
33a:第二ポンプまでの配管
34:排出配管
39:余剰流体用排出管
A:空気
E:エゼクター
L1:流体供給側の外円筒体への高速流体
L2:流体排出側の外円筒体への高速流体
P1:第一ポンプ
P2:第二ポンプ
V1:第一ポンプからの配管の開閉弁
V2:第二ポンプまでの配管の開閉弁
V3:排出量調節手段(開閉弁)
W:被処理水
W1:中間被処理水
W2:中間被処理水


【特許請求の範囲】
【請求項1】
立面視で略逆U字形状に中央上部で互いに連通状態で結合し、湾曲上部と有底の垂直下部とから成る略逆J字形状の複数の外筒体と、
各外筒体の垂直下部の内部において間に環状空間を形成するように垂直下部の底に固定された有底の垂直内筒体と、
上記複数の外筒体のいずれかの環状空間に固形状の被処理物を含んだ高速流体を供給して平面視で時計方向か、又は反時計方向の高速旋回流を発生する第一ポンプ及び配管と、
高速流体が供給される外筒体の内筒体の底部から、該内筒体の開放上縁を越えて底に落下し流入してくる流体を吸引して、上記いずれか以外の外筒体の環状空間に被処理物を含んだ高速流体を供給して平面視で反時計方向か、又は時計方向の高速旋回流を発生する第二ポンプ及び配管と、
上記いずれか以外の外筒体の内筒体の底部から、該内筒体の開放上縁を越えて底に落下し流入してくる流体を排出する配管と、
該流体排出配管に設けられた排出量調節手段と、から構成されており、
上記高速流体が含有している被処理物は、上記環状空間における高速旋回流が発生する剪断作用と上記内筒体の底への流体の落下による衝撃力によってミクロンのレベルまで超微細化されることを特徴とする連設の超微細化装置。
【請求項2】
上記第一ポンプからの配管と、上記第二ポンプまでの配管と、上記排出の配管とには、各々開閉弁が配置されている請求項1記載の装置。
【請求項3】
上記第一ポンプからの配管には高速流体に空気を混入するエゼクターが設けられている請求項1又は2記載の装置。
【請求項4】
上記外筒体の中央上部には、余剰流体を排出する排出管が接続されている請求項1記載の装置。
【請求項5】
上記いずれか以外の外筒体は、その環状空間内に突出量変更可能に突き出た複数の突出部材を有している請求項1記載の装置。
【請求項6】
上記環状空間に固形状の被処理物を含んだ高速流体の供給は、ほぼ接線方向から行われる請求項1記載の装置。
【請求項7】
立面視で略逆U字形状で中央上部で互いに連通状態で結合し、湾曲上部と有底の垂直下部とから成る略逆J字形状の二つの外筒体と、
各外筒体の垂直下部の内部において間に環状空間を形成するように垂直下部の底に固定された有底の垂直内筒体と、
上記二つの外筒体の内の一方の環状空間に被処理物を含んだ高速流体を供給して平面視で時計方向か、又は反時計方向の高速旋回流を発生する第一ポンプ及び配管と、
上記一方の外筒体の内筒体の底部から、該内筒体の開放上縁を越えて底に落下し流入してくる流体を吸引して、他方の外筒体の環状空間に被処理物を含んだ高速流体を供給して平面視で反時計方向か、又は時計方向の高速旋回流を発生する二組の第二ポンプ及び配管と、
他方の外筒体の内筒体の底部から、該内筒体の開放上縁を越えて底に落下し流入してくる流体を排出する配管と、
上記第一ポンプからの配管と、上記第二ポンプまでの配管と、上記排出の配管とに設けられた開閉弁と、
上記二つの外筒体の結合中央上部に接続された余剰流体の排出用排出管と、から構成されており、
上記高速流体が含有している被処理物は、上記環状空間における高速旋回流が発生する剪断作用と上記内筒体の底への流体の落下による衝撃力によってミクロンのレベルまで超微細化されることを特徴とする連設の超微細化装置。
【請求項8】
上記被処理物は、下水や食品加工場からの廃水に含有される有機物の場合、超微細化後に発酵菌とこれと共生関係を取る光合成菌とが添加される処理槽で処理される請求項1又は7記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−51435(P2006−51435A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−234664(P2004−234664)
【出願日】平成16年8月11日(2004.8.11)
【出願人】(591119624)株式会社御池鐵工所 (86)
【Fターム(参考)】