説明

遊星歯車機構の潤滑構造

【課題】新たな潤滑油の供給が一時的に停止された場合に、その時点で遊星ギア用シャフト内に溜まっている潤滑油を、潤滑に有効利用することができる、遊星歯車機構の潤滑構造を提供する。
【解決手段】メインシャフト10の周囲を自転しながら公転可能な遊星ギア30と、軸受32を介して遊星ギアを自転可能に支持する遊星ギア用シャフト31と、遊星ギア用シャフトを支持するキャリア11とを備え、メインシャフトからは潤滑油が吐出され、遊星ギア用シャフトに設けられた案内穴開口部の近傍には、メインシャフトから吐出された潤滑油を受けて案内穴開口部へ案内する案内プレート12が設けられ、案内された潤滑油は軸受へと案内され、案内プレート12における案内穴開口部に対向する側の面であるプレート対向面12Mには、潤滑油の逆流を防止する逆流防止弁部材13が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両におけるモータとエンジンの駆動力を分配する駆動ユニットに用いられている遊星歯車機構の潤滑構造に係り、特に遊星ギアの軸受への潤滑構造に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関(以下、エンジンと記載する)と電気モータを用いたハイブリッド車両における従来の駆動ユニット100の例を図4(部分断面図)に示し、図4に示した従来の駆動ユニット100における遊星ギア130の周辺の拡大図(断面図)を図5に示す。
駆動ユニット100のメインシャフト110はエンジンEに接続されてエンジンEによって回転駆動される。
メインシャフト110の外周には軸受122を介してメインシャフト110と同軸上にサンギア120が設けられており、サンギア120はモータMG1によって回転駆動される。
そしてメインシャフト110の周囲を自転しながら公転することが可能な遊星ギア130の外歯がサンギア120の外歯と噛合っている。遊星ギア130は軸受132を介して遊星ギア用シャフト131にて自転可能に支持されている。
また遊星ギア用シャフト131は、メインシャフト110に接続されたキャリア111にてメインシャフト110の周囲を公転可能に支持されている。
遊星ギア130の外歯は、メインシャフト110と同軸上に設けられたリングギア140の内歯と噛合っており、リングギア140は軸受142を介してハウジングHに支持されている。
そしてリングギア140の外歯はカウンタギア150の外歯と噛合っており、カウンタギア150は出力軸に接続されている。
なお、モータMG2の側も上記したモータMG1からリングギア140までのギア機構と同様にモータMG2用のサンギアと遊星ギア等が設けられているが説明を省略する。
【0003】
各ギアや軸受は、主にはねかけ潤滑にて潤滑油が供給されているが、遊星ギア130と遊星ギア用シャフト131の間に設けられている軸受132については、エンジンEの動作状態に応じて公転する場合と公転しない場合があり、決まった位置に留まっておらず、構造上、はねかけ潤滑とすることは非常に困難である。
そこで、以下に説明する潤滑構造にて軸受132に潤滑油を供給している。
軸受132に供給される潤滑油は、まずメインシャフト110における回転軸ZM方向における一方の端部に設けられたオイルポンプP(他方の端部にはエンジンEが接続されている)からメインシャフト110内に軸線方向に設けられた潤滑油通路110aに圧送される。潤滑油通路110aに圧送された潤滑油は、メインシャフト110の外周面と潤滑油通路110aとを連通する連通穴110b、及びサンギア120の内周面と外周面とを連通する連通穴120aを経由してメインシャフト110の外周方向に吐出される。連通穴110bは遊星ギア用シャフト131における案内穴開口部131aの近傍に設けられており、連通穴110b、120aを通って吐出された潤滑油の一部は遊星ギア用シャフト131に設けられた案内穴開口部131aから案内穴131bへと案内される。そして案内穴131bに案内された潤滑油は、遊星ギア用シャフト131の外周面と案内穴131bとを連通する連通穴131cを通って軸受132へと供給される。
なお、遊星ギア用シャフト131の案内穴開口部131aの近傍には、連通穴110b、120aから吐出された潤滑油を受けて案内穴開口部131aへと案内する案内プレート112が設けられている。
【0004】
ここで、特許文献1に記載された従来技術では、吐出された潤滑油を案内プレート112にて受けた際、受けた潤滑油を、案内プレート112とキャリア111との隙間から外部に漏らすことなく案内穴開口部131aに案内するために(遊星ギア130の公転による遠心力にて外部に漏れる可能性がある)、案内プレート112における案内穴開口部131aの側に、案内穴開口部131a内に延出した案内爪112y(図5参照)を備えた遊星歯車機構の潤滑構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−4700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ハイブリッド車両は、負荷に対してエンジンによる駆動力とモータによる駆動力との分配が最適となるように制御して燃費を向上させて有害物質の排出量の低減を実現しており、頻度としては少ないが、低速域や軽負荷域ではエンジンが停止するような場合もある。また、従来のハイブリッド車両は外部電源からの充電は無く、エンジンの動力や回生エネルギーを用いて充電しており、モータの駆動力のみで走行してエンジンが停止する期間は短く、頻度も少ない。
少ない頻度且つ短時間ではあるが、エンジンEが停止すると、駆動ユニット100では、オイルポンプPの動作も停止し、軸受132には、その時点で案内穴開口部131a、案内穴131b、連通穴131c、及び軸受132の周囲に溜まっている潤滑油が供給される。そして、しばらくするとエンジンが始動され(エンジンが停止する期間は短いため)、オイルポンプPが駆動されて新たな潤滑油が供給される。
【0007】
従来及び現在では、エンジンの停止期間は短く、頻度も少ないので、エンジン停止中は遊星ギア用シャフト131内、及び軸受132の周囲に溜まっている潤滑油にて必要な潤滑を行うことができる。しかし、将来的には、外部電源から充電可能に設定されて、有害物質の排出をより少なくするためにエンジンの停止期間がより長く設定されると、エンジンの停止期間中に必要とする潤滑油が不足する可能性がある。
この場合、特許文献1に記載された従来技術では、エンジンが停止してメインシャフト110、キャリア111、及びオイルポンプPの回転が停止すると、せっかく遊星ギア用シャフト131内の案内穴131b等に溜まっている潤滑油が案内穴開口部131a及び案内プレート112における潤滑油を受けるためのプレート開口部から漏れ落ちてしまうので、好ましくない。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、新たな潤滑油の供給が一時的に停止された場合に、その時点で遊星ギア用シャフト内に溜まっている潤滑油を、潤滑に有効利用することができる、遊星歯車機構の潤滑構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係る遊星歯車機構の潤滑構造は次の手段をとる。
まず、本発明の第1の発明は、メインシャフト10と、前記メインシャフト10の周囲を自転しながら公転することが可能な遊星ギア30と、軸受32を介して前記遊星ギア30を自転可能に支持する遊星ギア用シャフト31と、前記メインシャフト10の周囲を前記遊星ギア30が公転可能となるように前記遊星ギア用シャフト31を支持するキャリア11と、を備え、前記遊星ギア用シャフト31内には前記軸受32に供給する潤滑油を案内する案内穴31bが軸線方向に形成され、当該案内穴31bの軸線方向における一方の端部には案内穴開口部31aが形成されており、前記案内穴31bの軸線方向における他方の端部は前記遊星ギア用シャフト31内の途中まで形成されて当該遊星ギア用シャフト31の外周面と当該案内穴31bとを連通する連通穴31cに接続されている、遊星歯車機構の潤滑構造である。
前記メインシャフト10における前記案内穴開口部31aの近傍からは潤滑油が吐出され、前記案内穴開口部31aの近傍には、前記メインシャフト10から吐出された潤滑油を受けて前記案内穴開口部31aへと案内する案内プレート12が設けられ、前記案内穴開口部31aに案内された潤滑油は前記案内穴31bと前記連通穴31cを経由して前記軸受32へと案内される。
そして、前記案内プレート12における前記案内穴開口部31aに対向する側の面であるプレート対向面12Mには、潤滑油の逆流を防止する逆流防止弁部材13が設けられている。
【0010】
この第1の発明によれば、案内プレートにおける案内穴開口部に対向する面(プレート対向面)に逆流防止弁部材を設けることで、潤滑油の供給が一時的に停止された場合に、遊星ギア用シャフト内に溜まっている潤滑油が漏れ落ちる(逆流する)ことを防止する。これにより、遊星ギア用シャフト内に溜まっている潤滑油を有効利用することができる。
【0011】
次に、本発明の第2の発明は、上記第1の発明に係る遊星歯車機構の潤滑構造であって、前記案内プレート12は、前記案内穴開口部31aの一部であって前記メインシャフト10から遠い部分及び前記案内穴開口部31aの周囲の一部であって前記メインシャフト10の側を除いた部分を覆う平坦部12aと、前記平坦部12aに対して凸状に膨らむような形状に形成されて前記メインシャフト10の側にプレート開口部12cが形成された潤滑油受部12bと、を有しており、前記潤滑油受部12bは、前記案内穴開口部31aよりも前記メインシャフト10の側に延設されている。
そして、前記逆流防止弁部材13は、延設された前記潤滑油受部12bにおける前記プレート対向面12Mに設けられている。
【0012】
この第2の発明によれば、逆流防止弁部材を適切な位置に設けることで、遊星ギア用シャフト内に溜まっている潤滑油が漏れ落ちる(逆流する)ことを適切な位置で防止することができる。
【0013】
次に、本発明の第3の発明は、上記第1の発明または第2の発明に係る遊星歯車機構の潤滑構造であって、前記逆流防止弁部材13は、プレート状の形状を有しており、前記メインシャフト10の側が前記プレート対向面12Mに固定され、固定個所13aを中心として摺動可能である。
そして逆流防止弁部材13は、前記メインシャフト10から吐出される潤滑油を受けた際の潤滑油による圧力が発生していない場合、あるいは前記遊星ギア30の公転による遠心力が発生していない場合、前記固定個所13aを中心にして前記案内穴開口部31aの側に摺動して前記案内プレート12から前記案内穴開口部31aまでの経路を閉鎖する。
また逆流防止弁部材13は、前記メインシャフト10から吐出される潤滑油を受けた際の潤滑油による圧力が発生している場合、あるいは前記遊星ギア30の公転による遠心力が発生している場合、前記固定個所13aを中心にして前記プレート対向面12Mの側に摺動して前記案内プレート12から前記案内穴開口部31aまでの経路を開口する。
【0014】
この第3の発明では、エンジン運転中は、潤滑油を受けた際の圧力とキャリアの公転による遠心力とが発生しており、エンジンが停止すると、この圧力及び遠心力が発生していないことに着目し、これらを利用して逆流防止弁部材を適切に開閉させることができる。
これにより、エンジンが運転中には適切な経路で潤滑油を循環させ、エンジンが停止した場合には遊星ギア用シャフト内に溜まっている潤滑油を漏らすことなく(逆流させることなく)軸受の潤滑として有効利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の遊星歯車機構の潤滑構造を適用した駆動ユニット1の一実施の形態を説明する外観図(部分断面図)である。
【図2】駆動ユニット1における遊星ギア30の周辺の拡大図(断面図)である。
【図3】駆動ユニット1におけるメインシャフト10、サンギア20、遊星ギア30、リングギア40、カウンタギア50の配置と噛合い状態を示す模式図(回転軸ZM方向から見た図)である。
【図4】従来の遊星歯車機構の潤滑構造を適用した従来の駆動ユニット100を説明する外観図(部分断面図)である。
【図5】従来の駆動ユニット100における遊星ギア130の周辺の拡大図(断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明を実施するための形態を図面を用いて説明する。図1は、本発明の遊星歯車機構の潤滑構造を適用した駆動ユニット1の外観(部分断面図)を示しており、図2は駆動ユニット1における遊星ギア30の周囲の断面図を示しており、図3は回転軸ZM方向から見た各ギアの配置と噛合い状態を示す模式図を示している。なお、図3では遊星ギア30(B)の周囲における手前側のキャリア11やハウジングH等の記載を省略している。また、図3に示すA−A断面が図2である。
本実施の形態では、モータからの駆動力と内燃機関からの駆動力とを適切に分配するハイブリッド車両の駆動ユニットを例として説明する。
【0017】
●[遊星歯車機構を備えた駆動ユニットの全体構造(図1〜図3)]
図1〜図3に示すように、本発明の遊星歯車機構の潤滑構造を適用した駆動ユニット1は、メインシャフト10と、サンギア20と、遊星ギア30(図3の例では30(A)〜30(C))と、リングギア40と、カウンタギア50とを備えている。なお、遊星ギアは単数でも複数でもよい。
メインシャフト10は、回転軸ZM回りに回転可能となるように軸受(図示省略)を介してハウジングHに支持され、一方の端部はエンジンE(図示省略)に接続され、他方の端部はオイルポンプP(図示省略)に接続されており、エンジンEにて回転駆動される。そしてエンジンEが回転するとオイルポンプPが駆動される。
【0018】
サンギア20は、メインシャフト10と同軸上に、軸受22を介してメインシャフト10の外周に設けられており、モータMG1によって回転駆動される。
遊星ギア30は、メインシャフト10の周囲を自転しながら公転することが可能となるように設けられている。
遊星ギア30は、軸受32(例えば針状ころ軸受)を介して遊星ギア用シャフト31に支持されており、回転軸ZS回りに自転することが可能である。また遊星ギア用シャフト31は、メインシャフト10に接続されたキャリア11にて支持されている。これにより、メインシャフト10が回転駆動されるとキャリア11も回転軸ZM回りに回転し、遊星ギア30がメインシャフト10の周囲を公転する。
なお、遊星ギア30の外歯はサンギア20の外歯と噛合っている。
【0019】
リングギア40は、メインシャフト10と同軸上に、軸受42を介してハウジングHに支持されている。そしてリングギア40の内歯は遊星ギア30の外歯と噛合っている。
カウンタギア50は、軸受(図示省略)を介してハウジングHに支持されており、出力軸に接続されている。そしてカウンタギア50の外歯はリングギア40の外歯と噛合っている。
なお、モータMG2の側も、上記のモータMG1からリングギア40までのギア機構と同様に、モータMG2用のサンギアと遊星ギア等が設けられているが、同様であるので説明を省略する。
【0020】
●[遊星ギア30の軸受32への潤滑油の経路(図2)]
次に図2を用いて、遊星ギア30の軸受32への潤滑油の経路について説明する。軸受32への潤滑油の供給は、他のギアや軸受への潤滑油の供給と同様にはねかけ式にすることが構造上、非常に困難であるので、以下に説明する構造及び経路にて潤滑油を供給している。
まずオイルポンプPを用いて、メインシャフト10内に軸線方向に形成された潤滑油通路10aに潤滑油を圧送する。
メインシャフト10における案内穴開口部31aの近傍(案内穴開口部31aに対応する位置であり、案内穴開口部31aの入口から回転軸ZMに下ろした垂線とメインシャフト10との交点)には、メインシャフト10の外周面と潤滑油通路10aとを連通する連通穴10bが設けられている。そしてメインシャフト10の外周面における連通穴10bの位置には、潤滑油を溜める溝が円周方向に形成されている。
メインシャフト10の前記溝に対向するサンギア20の内周面には、同様に潤滑油を溜める溝が円周方向に形成されており、サンギア20の前記溝にはサンギア20の内周面と外周面とを連通する連通穴20aが設けられている。
この構造により、オイルポンプPから圧送された潤滑油は、潤滑油通路10a、連通穴10bを経由して連通穴20aの外周側から案内穴開口部31aに向けて吐出される。
【0021】
吐出される潤滑油は、遊星ギア用シャフト31の一方端に開口している案内穴開口部31aの開口方向と直交する方向に吐出されるので、案内穴開口部31aに案内する必要がある。そこで、案内穴開口部31aの周囲には、吐出された潤滑油を受けて案内穴開口部31aに潤滑油を案内する案内プレート12が設けられている。
遊星ギア用シャフト31内には、軸線方向に案内穴31bが形成されており、案内穴31bの軸線方向における一方の端部には案内穴開口部31aが形成(開口)されている。そして軸線方向における他方の端部は、遊星ギア用シャフト31の途中まで穴が形成されて、遊星ギア用シャフト31の外周面と案内穴31bとを連通する連通穴31cに接続されている。
この構造により、案内穴開口部31aに案内された潤滑油は、案内穴31bから連通穴31cを経由して遊星ギア用シャフト31の外周面に案内され、軸受32を潤滑する。
【0022】
●[潤滑油の逆流を防止する構造(図2、図3)]
軸受32に供給される潤滑油は、まずオイルポンプPから圧送され、当該オイルポンプPはエンジンEにて駆動されている。しかしエンジンEは少ない頻度で且つ短時間ではあるが停止する場合があり、このエンジン停止期間(モータの駆動力のみで走行している期間)では、メインシャフト10の連通穴10bからの(サンギア20の連通穴20aからの)潤滑油の吐出が一時的に止まる。この場合、遊星ギア用シャフト31の案内穴開口部31a、案内穴31b、及び軸受32の周囲に溜まっている潤滑油にて軸受32が潤滑される。
なおエンジン停止期間では、メインシャフト10の回転が停止するので、遊星ギア30の公転は停止するが、モータの駆動力にてサンギア20は回転しているので、遊星ギア30の自転は停止しない。
従って、公転が停止した際に、案内プレートのプレート開口部12cが下方を向く位置となった遊星ギア30では、案内穴開口部31a及び案内穴31bに溜まっている潤滑油が漏れ落ちてしまう可能性がある。
そこで図2に示すように、案内プレート12における案内穴開口部31aに対向する面であるプレート対向面12Mには、潤滑油の逆流(案内穴31bから案内穴開口部31aを経由してプレート開口部12cから漏れる方向の流れ)を防止する逆流防止弁部材13が設けられている。
【0023】
図2及び図3に示すように、案内プレート12は、平坦部12aと潤滑油受部12bにて構成されており、メインシャフト10の側にプレート開口部12cを有している。
平坦部12aは、案内穴開口部31aの一部(メインシャフト10から遠い部分)及び案内穴開口部31aの周囲の一部(メインシャフト10の側を除いた部分)を覆う平坦状である。
潤滑油受部12bは、平坦部12aに対して凸状に膨らむような形状に形成されており、案内穴開口部31aを覆う部分であって平坦部12aでない部分(メインシャフト10に近い部分)及び案内穴開口部31aの周囲を覆う部分であって平坦部12aでない部分(メインシャフト10に向かう側の部分)を覆っている。
また凸状形状の潤滑油受部12bは、案内穴開口部31aよりもメインシャフト10の側に延設されている。
そして逆流防止弁部材13は、延設された潤滑油受部12bにおけるプレート対向面12Mに設けられ、この位置に逆流防止弁部材13が設けられていることで、図2の(閉鎖時)に示すように、案内穴開口部31aから潤滑油が漏れ落ちることを適切な位置で防止することができる。
【0024】
また逆流防止弁部材13は、ゴム材等の弾性体で形成されており、プレート状の形状に形成されている。
そして図2の(閉鎖時)及び(開口時)に示すように、逆流防止弁部材13におけるメインシャフト10の側(固定個所13a)がプレート対向面12Mに固定され、固定個所13aを中心として摺動可能に構成されている。
なお、固定個所13aをプレート対向面12Mに固定する方法としては、加圧しながら加熱して接着する方法、加硫接着する方法、プレート対向面12Mに溝を形成して固定個所13aを嵌め込む方法等、種々の方法がある。
【0025】
逆流防止弁部材13は、メインシャフト10(連通穴10b、20a)から吐出される潤滑油を受けた際の潤滑油による圧力が発生していない場合、あるいは遊星ギア30の公転が停止して公転による遠心力が発生していない場合、図2の(閉鎖時)に示すように、プレート対向面12Mの固定個所13aを中心にして案内穴開口部31aの側に摺動する。そして逆流防止弁部材13は、案内プレート12(プレート開口部12c)から案内穴開口部31aまでの経路を閉鎖する。なお、逆流防止弁部材13をプレート対向面12Mに取り付ける際は、この(閉鎖時)の状態となるように、傾斜を持たせて逆流防止弁部材13をプレート対向面12Mに取り付ける。
また逆流防止弁部材13は、メインシャフト10(連通穴10b、20a)から吐出される潤滑油を受けた際の潤滑油による圧力が発生している場合、あるいは遊星ギア30が公転して公転による遠心力が発生している場合、図2の(開口時)に示すように、プレート対向面12Mの固定個所13aを中心にしてプレート対向面12Mの側に摺動する。そして逆流防止弁部材13は、案内プレート12(プレート開口部12c)から案内穴開口部31aまでの経路を開口する。
なお、逆流防止弁部材13には、摺動し易いようにスリット等を設けておくことが望ましい。
【0026】
以上、本実施の形態にて説明した遊星歯車機構の潤滑構造を用いれば、エンジンEが一時的に停止して軸受32への新たな潤滑油の供給が一時的に停止した場合であっても、遊星ギア用シャフト31内に溜まっている潤滑油が漏れないようにすることで、その時点で遊星ギア用シャフト31内に溜まっている潤滑油を、軸受32の潤滑として適切に利用することが可能である。
【0027】
本発明の遊星歯車機構の潤滑構造は、本実施の形態で説明した外観、形状、構成、構造等に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。
本実施の形態では、軸受32が針状ころ軸受である例を説明したが、軸受の種類を限定するものではなく、種々の軸受に適用することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 駆動ユニット
10 メインシャフト
10a 潤滑油通路
10b、20a 連通穴
11 キャリア
12 案内プレート
12a 平坦部
12b 潤滑油受部
12c プレート開口部
12M プレート対向面
13 逆流防止弁部材
13a 固定個所
20 サンギア
22、32、42 軸受
30 遊星ギア
31 遊星ギア用シャフト
31a 案内穴開口部
31b 案内穴
31c 連通穴
40 リングギア
50 カウンタギア
E エンジン
H ハウジング
MG1、MG2 モータ
P オイルポンプ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
メインシャフトと、
前記メインシャフトの周囲を自転しながら公転することが可能な遊星ギアと、
軸受を介して前記遊星ギアを自転可能に支持する遊星ギア用シャフトと、
前記メインシャフトの周囲を前記遊星ギアが公転可能となるように前記遊星ギア用シャフトを支持するキャリアと、を備え、
前記遊星ギア用シャフト内には前記軸受に供給する潤滑油を案内する案内穴が軸線方向に形成され、当該案内穴の軸線方向における一方の端部には案内穴開口部が形成されており、前記案内穴の軸線方向における他方の端部は前記遊星ギア用シャフト内の途中まで形成されて当該遊星ギア用シャフトの外周面と当該案内穴とを連通する連通穴に接続されている、遊星歯車機構の潤滑構造において、
前記メインシャフトにおける前記案内穴開口部の近傍からは潤滑油が吐出され、
前記案内穴開口部の近傍には、前記メインシャフトから吐出された潤滑油を受けて前記案内穴開口部へと案内する案内プレートが設けられ、前記案内穴開口部に案内された潤滑油は前記案内穴と前記連通穴を経由して前記軸受へと案内され、
前記案内プレートにおける前記案内穴開口部に対向する側の面であるプレート対向面には、潤滑油の逆流を防止する逆流防止弁部材が設けられている、
遊星歯車機構の潤滑構造。
【請求項2】
請求項1に記載の遊星歯車機構の潤滑構造であって、
前記案内プレートは、前記案内穴開口部の一部であって前記メインシャフトから遠い部分及び前記案内穴開口部の周囲の一部であって前記メインシャフトの側を除いた部分を覆う平坦部と、前記平坦部に対して凸状に膨らむような形状に形成されて前記メインシャフトの側にプレート開口部が形成された潤滑油受部と、を有しており、
前記潤滑油受部は、前記案内穴開口部よりも前記メインシャフトの側に延設されており、
前記逆流防止弁部材は、延設された前記潤滑油受部における前記プレート対向面に設けられている、
遊星歯車機構の潤滑構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載の遊星歯車機構の潤滑構造であって、
前記逆流防止弁部材は、
プレート状の形状を有しており、
前記メインシャフトの側が前記プレート対向面に固定され、固定個所を中心として摺動可能であり、
前記メインシャフトから吐出される潤滑油を受けた際の潤滑油による圧力が発生していない場合、あるいは前記遊星ギアの公転による遠心力が発生していない場合、前記固定個所を中心にして前記案内穴開口部の側に摺動して前記案内プレートから前記案内穴開口部までの経路を閉鎖し、
前記メインシャフトから吐出される潤滑油を受けた際の潤滑油による圧力が発生している場合、あるいは前記遊星ギアの公転による遠心力が発生している場合、前記固定個所を中心にして前記プレート対向面の側に摺動して前記案内プレートから前記案内穴開口部までの経路を開口する、
遊星歯車機構の潤滑構造。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−17764(P2012−17764A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−153922(P2010−153922)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】