説明

遊星歯車機構及びそれを用いた電動弁

【課題】歯数を大きくすることなく減速比を大きくし、小型化を可能にする遊星歯車機構を提供する。
【解決手段】遊星歯車機構1においては、出力内歯ギア45よりも入力ギアである太陽ギア91の方が負荷が小さいので、遊星ギア93にモジュールの小さいギア(第2遊星ギア95)を接続するとともに、第2遊星ギア95に太陽ギア91が噛み合わされている。太陽ギア91は第2遊星ギア95と同一のモジュールである。第2遊星ギア95には太陽ギア91の回転が減速して伝達され、減速された回転をする第2遊星ギア95は、リングギア44と出力内歯ギア45との僅かな歯数差に基づいて更に減速されて出力される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽ギア、遊星ギア、内歯固定ギア及び内歯回動ギアを備える遊星歯車機構、及びそれを用いて空気調和機の冷媒流量制御用等を行う電動弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動モータを介して弁の開閉を行ういわゆる電動弁としては、ロータの回転を直接ねじ機構に伝達して弁の開閉を行うようにしたものもあるが、ロータの回転を減速機構で減速してねじ機構に伝達するようにしたものが提案されており、この形式のものでは、ロータの単位回転当たりのトルクが大きくなるので、負荷が大きい場合にも使用でき、1駆動パルス当たりの弁開度の分解能を高くすることができる。
【0003】
本出願人は、電動モータの回転を減速機構で減速して伝達する形式の電動弁として、遊星歯車式減速機構を介して弁の開閉動作に変換し、遊星歯車式減速機構に用いられるギアのモジュール、減速比、遊星歯車式減速機構から出力回転を取り出す出力内歯ギアの歯底円径との関係を一定範囲に定めることで、遊星歯車式減速機構を構成する要素となる各ギアの寸法範囲のバランスを良好にし、電動弁の外径を定める要素となるモータのロータ内に、高い減速比を持つ遊星歯車式減速機構を納めて、減速された出力において大きなトルクを得て、小型化を図ったものを提案している(特許文献1,2)。
【0004】
特許文献1又は特許文献2に記載の電動弁は、内部に弁室が形成されている弁本体と、弁室の壁面の一部に形成された弁座と、弁座に形成されている開口を開閉可能に配置された弁体と、弁体を開口に接離させる弁棒と、弁本体に取り付けられ、弁本体との間に空間を区画形成する円筒状のキャンと、該キャンの外周部に装着される電動モータの励磁装置(ステータ)と、キャンの内部に回転自在に支持され励磁装置によって回転駆動される永久磁石型のロータ組立体と、3K型不思議遊星歯車式の減速機構からの出力回転を弁棒に伝達して弁体の弁座に対する接離動作に変換するねじ機構部とを備えており、ロータ組立体と遊星歯車式減速機構とを弁本体とキャンとによって区画形成される空間内に配置するという構成となっている。
【0005】
図4〜図6に、上記従来の遊星歯車式減速機構が適用された電動弁の一例が示されている。図4は従来の電動弁の一例を示す全体縦断面図、図5は図4に示す電動弁に用いられている遊星歯車式減速機構を一部切り取って示す斜視図、図6は図5に示す遊星歯車式減速機構の分解図である。全体を符号100で示す電動弁は、励磁機能で作用しステータ2とロータ組立体8とから成るモータを備える駆動部1aと、当該駆動部1aによる回転駆動力が入力されて歯車減速を行い減速した回転を出力するギア減速機部1bと、当該ギア減速機部1bからの減速回転をねじ作用によってねじ軸方向の変位に変換して出力する送りねじ機構部1cとを備えている。
【0006】
符号30は受け部材68を介して弁本体10に固着された気密容器である有頂円筒状のキャンであり、駆動部1aは、キャン30の外周部に配設されており且つボビンに巻き付けられたコイル140が樹脂と一体にモールドされて構成された電動モータの励磁装置、即ち、ステータ2と、キャン30の内部に回転自在に支持されており且つステータ2によって回転駆動される永久磁石型のロータ組立体8とを有している。ステータ2とロータ組立体8とは電動モータの一例としてのステッピングモータを構成している。
【0007】
ステータ2は、板ばねにより形成された取付用金具180によりキャン30に対して着脱自在に嵌装される。この例では、ステータ2は、キャン30に形成された突起102が取付用金具180に形成された穴182に弾性的に嵌合されることで位置決めされている。ステータ2の励磁のため、コイル140には、コネクタ141及びリード142を介して外部の電源から給電される。弁本体10は、その内部に弁室14が形成されるとともに、その底部15には弁本体10の底面に開口するオリフィス16が形成されている。弁本体10には、弁室14の側面に連通する配管22、及びオリフィス16の下端に連通する配管20が固着されている。
【0008】
ギア減速機部1bは、ロータ組立体8の回転を減速する遊星歯車式減速機構(以下、「減速機構」と略す)40から成っている。減速機構40は、ロータ組立体8と一体の太陽ギア41と、例えばプラスチックを成型加工して形成されているキャリア42に回転自在に支持され且つ太陽ギア41と噛み合う複数の縦長の遊星ギア43と、太陽ギアと同心に配置されていて弁本体10に対して固定支持されており且つ各遊星ギア43の一部分(上側部分)と噛み合うリングギア44と、有底円筒状に形成されておりリングギア44の歯数と僅かに歯数が異なる内歯が内周に形成された(即ち、リングギア44とは転位関係にある)出力内歯ギア45とを備えている。各遊星ギア43は、リングギア44と噛み合うと同時に、一部分(下側部分)において、出力内歯ギア45と噛み合っている。減速機構40によって減速されたロータ組立体8の回転は、出力ギア45を介して送りねじ機構1cの出力軸(ドライバ)46に伝達される。ロータ組立体8は、磁性材料を含有するプラスチック材料によって、周壁としての筒体202と中央に配設される太陽ギア部材204とが一体に有頂筒状に成型されており、太陽ギア部材204を縦に貫通するシャフト201によって、キャン30内部において回転自在に配設されている。太陽ギア部材204の中心に延びるボスの外周に太陽ギア41が形成されている。リングギア44は、例えばプラスチックを成型加工して作られたリング状のギアであり、下部が弁本体10の上部に嵌合されている円筒状の部材であるギアケース220の上部に固着されている。
【0009】
このような構成によれば、電動モータの出力回転が入力される太陽ギア41が自転回転をすると、太陽ギア41とリングギア44とに噛み合う遊星ギア43が自転しながら太陽ギア41の回りを公転回転する。遊星ギア43は、リングギア44との関係で転位した関係にある出力内歯ギア45と噛み合っているので、遊星ギア43のこの回転により、出力内歯ギア45は、転位の程度(歯数差)に応じてリングギア44に対して例えば50対1程度の相対的に非常に高い減速比で回転する。遊星ギア43が転位した関係にあるリングギア44と出力内歯ギア45とに噛み合っている遊星歯車機構は不思議遊星歯車機構と称されている。
【0010】
送りねじ機構1cは、筒状軸受50、ねじ軸52及びボール65を備えている。筒状軸受50は、その下端部が弁本体10内に嵌入しており、弁本体10の段差部64に対して、ばね受け本体74の上側フランジ部75を介して支持された状態で、プレス加工等の手段によって弁本体10から抜け出し不能に取り付けられる。筒状軸受50は、その上端面にて減速機構40の出力内歯ギア45を下側から支えており、筒状軸受50の中空上部には減速機構40の出力軸46が挿入されている。筒状軸受50の中空下部に形成されている雌ねじ部51には、ねじ軸52の外周に形成されている雄ねじ部53が螺合している。また、ねじ軸52に設けられている平ドライバ部である凸部54が減速機構40の出力軸46の下端部に形成されているスリット状の凹部55に差し込まれていて、出力軸46の回転をねじ軸52に伝達する。ねじ軸52の下端には凹部が形成されており、ボール65が当該凹部に嵌まり込んだ状態でねじ軸52に固着されている。ねじ軸52の回転は、筒状軸受50との間のねじ作用によって軸方向の移動に変換され、ボール65及びボール受け部材66を介して弁軸60側へ伝達される。なお、ねじ軸52に凹部を設け、凹部に差し込まれる凸部を出力軸46に設けるようにしてもよい。
【0011】
送りねじ機構1cにおいてねじ軸52を開弁方向へ移動させるときには、雌ねじ部51と雄ねじ部53の間のバックラッシュを除去するため、弁本体10には、弁軸60を開弁方向に付勢するコイルばね70が設けられている。コイルばね70を支持するため、弁室12には金属製の有底筒状のばね受け73(ばね覆い部材)が配設されている。このばね受け73は、弁軸60の外周面を下端部を残して覆う筒状の周壁74と、その上端に外側に屈曲する態様で形成された上側フランジ部(外向きフランジ部)75と、周壁74の下端に内側に屈曲し且つ弁軸60が貫通可能な孔77を残す態様で形成された下側フランジ部(内向きフランジ部)76と、下側フランジ部76から更に先端側に延び弁軸60を案内するガイド部78とを有している。コイルばね70は、その上端部が弁軸60の大径部67に当接しており、その下端部がばね受け73の下側フランジ部76に当接することによって、圧縮された状態に支持されている。周壁74の上側フランジ部75は、弁本体10の弁穴63の下端に形成されている段差部64と、弁穴63に装着された筒状軸受50の下端部との間に挟み込まれて固定されている。
【0012】
ばね受け73に圧縮状態に保持されたコイルばね70のばね力によって弁軸60は常に開弁方向(ねじ機構部1cの方向)に付勢されており、送りねじ機構1cからの力によって弁軸60を閉弁方向に押し下げるときには、コイルばね70のばね力に抗して弁軸60を下げ、弁軸60の先端に形成されている弁体61を弁座62に座着させてオリフィス16を閉じる。ねじ軸52はロータ組立体8の回転に対して、微少回転数での回転が可能となり、その回転に応じたねじ軸52の軸方向変位は微小変位で制御可能となるので、弁軸60の弁座62に対する位置はギア減速部1bによって高い分解能で位置決めされ、弁体61とオリフィス16の間の流路面積は高精度に制御され、通過する冷媒流量を高精度で調節することができる。即ち、分解能の高い弁開度制御が達成される。送りねじ機構1cを開弁方向に作動させるときには、コイルばね70のばね力によって、弁軸60はねじ軸52の上昇に追従して移動する。
図4に示された電動弁においては、ばね受け73のガイド部78内側(孔77)と弁軸60との間の微小な間隙、並びに弁本体10及び筒状軸受50等に適宜に設けられた間隙を通して、キャン30内に冷媒が導入されるようになっている。ばね受け73のガイド部78と弁軸60との間の微小な間隙は、冷媒に含まれる可能性のある異物がキャン30内に侵入するのを防止する作用がある。
【0013】
ここで、ギアのモジュールを例えば0.2〜0.4とし、遊星歯車式減速機構のリングギアの歯底円径を例えば直径15mm以下とすれば、遊星歯車式減速機構による減速比は30〜100にも達する。モジュール及びリングギアの径についてこれらの数値範囲を選択することにより、製造が困難になることなく、軸方向の長さ及び径共に十分に小型でありながら、大きな減速比を持つ電動弁を得ることができる。
【0014】
しかしながら、これら特許文献に開示の電動弁においては、同特許文献に示されるように、不思議遊星歯車減速装置の減速比は各歯車の歯数によって自ずと決定される。また、上記歯車は、その構成上、モジュールを同一にする必要がある。ところで、遊星歯車機構の減速比計算には、遊星歯車の歯数の定義関係なく、内歯車(内歯車同士の歯数差も)と太陽歯車の歯数差が減速比に起因する。よって、太陽歯車歯数<内歯車歯数の比率が大きくなると、減速比は大きくなる。このように、すべての歯が噛み合う必要のある遊星歯車機構では、各歯車のモジュールは同一である必要があり、太陽ギア及び内歯車の歯数(ピッチ円直径)により、自ずと遊星ギアの歯数も決定される(転移させれば若干変わる)。ただし、設計には種々条件(遊星歯車の個数等)があり、それに合致するものについてのみ設計可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2007−321978号公報
【特許文献2】特開2008−267464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記のような遊星歯車機構では、固定ギアと出力ギアの外形寸法が定められると、減速比は所定の範囲内の値となり、それ以上の減速比が得られない。大きな減速比を得るには歯車機構が大型化してしまう。また、歯車機構の大型化を防止すべくモジュールを小さくすると、歯車の耐久性が劣ることになる。
本発明の目的は、太陽ギアと遊星ギアとの関係に構造に工夫を凝らして、減速比をより一層高めた遊星歯車機構、及び当該遊星歯車機構が適用された電動弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、本発明による遊星歯車機構は、太陽ギアと、前記太陽ギアに噛み合う遊星ギアと、前記遊星ギアに噛み合う内歯固定ギアと、前記遊星ギアに噛み合う内歯回動ギアとを備えた遊星歯車機構において、前記遊星ギアは、前記内歯固定ギア及び前記内歯回動ギアに噛み合う第1遊星ギア、及び前記第1遊星ギアと一体に設けられ、該第1遊星ギアよりも小さなモジュールを有する第2遊星ギアより成り、前記太陽ギアは、前記第2遊星ギアに噛み合うことを特徴としている。
【0018】
本遊星歯車機構の特徴によれば、遊星ギアを、内歯固定ギア及び内歯回動ギアに噛み合う第1遊星ギアと、太陽ギアに噛み合う第2遊星ギアとにより構成したので、第2遊星ギアのモジュールを第1遊星ギアのモジュールと同じに設定する必要がなくなり、該第1遊星ギアのモジュールよりも小さくすることができる。そしてこの結果、太陽ギア及びこれに噛み合う第2遊星ギアの歯数の選定の自由度が増し、従来の不思議歯車機構に比較して、その減速率をさらに大きくすることが出来る。
また、大トルクで駆動対象を駆動する場合においても、当該遊星歯車機構の駆動力入力側の歯車である(太陽ギア及び)第2遊星ギアのモジュールを小さくするだけなので、当該遊星歯車機構の強度や耐久性が低下する懸念がない。
【0019】
また、本発明による電動弁は、ロータ及びステータより成るモータと、弁本体に設けられた弁座に対して進退動する弁体と、前記ロータの回転が前記太陽ギアに伝達され、前記内歯回動ギアが前記弁体に連結された上記遊星歯車機構とを具備したことを特徴としている。
【0020】
本発明の電動弁によれば、ロータの回転が太陽ギアに伝達され、太陽ギアの回転が小さなモジュールを有する第2遊星ギアに伝達されて遊星歯車機構に入力される。第2遊星ギアの回転によって、第2遊星ギアと一体に設けられた第1遊星ギアが回転する。第1遊星ギアは、内歯固定ギアと内歯回動ギアに噛み合っているので、両内歯ギアの歯数差に基づいて大きな減速比で出力される。内歯回動ギアが弁体に連結されているので、弁体は大きな減速比で駆動されることになり、弁体駆動のための大きな出力トルクを得ることができる。
【発明の効果】
【0021】
この発明は、上記のように、遊星ギアを、内歯固定ギア及び内歯回動ギアに噛み合う第1遊星ギアと、この第1遊星ギアと一体に形成されており第1遊星ギアのモジュールよりも小さく且つ太陽ギアと噛み合う第2遊星ギアとを備えるように構成したので、太陽ギアとこれに噛み合う第2遊星ギアとからなる一段目の遊星機構と、内歯固定ギア及び前記内歯回動ギアに噛み合う第1遊星ギアから成る二段目の遊星機構とが直列二段に配設された遊星歯車機構が構成されることになり、電動弁の減速比を一層高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は本発明による電動弁の一実施例を示す全体縦断面図である。
【図2】図2は図1に示す電動弁に用いられている遊星歯車機構を一部切り取って示す斜視図である。
【図3】図3は図2に示す遊星歯車機構の分解図である。
【図4】図4は従来の電動弁の一例を示す全体縦断面図である。
【図5】図5は図4に示す電動弁に用いられている遊星歯車機構を一部切り取って示す斜視図である。
【図6】図6は図5に示す遊星歯車機構の分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付した図面に基づいて、本発明による遊星歯車機構の一実施例を説明する。図1〜図3に示す本発明による遊星歯車機構90及び電動弁1の実施例においては、図4〜図6に示した従来の遊星歯車機構40及び電動弁100を構成する部材や部位と同一又は同等のものには同じ符号を付すことにより、再度の説明を省略する。
【0024】
図1〜図3に示す一実施例は、太陽ギア部材204に固着又は一体的に設けられた太陽ギア91は、図4〜図6に示す従来の遊星歯車機構の太陽ギア41と比べて、歯数は変わらないが、ピッチ円直径が小さい歯車とされている。すなわち、本実施例の太陽ギア91は、従来の例の太陽ギア41よりもモジュール(m=ピッチ円径/歯数)が小さいものとなっている。
【0025】
太陽ギア91の周りには複数の遊星ギア93(本実施例では3つの遊星ギア)が配置されている。各遊星ギア93は、内歯固定ギアであるリングギア44及び内歯回動ギアである出力内歯ギア45に噛み合う第1遊星ギア94と、太陽ギア91に噛み合う第2遊星ギア95とから成り、それらは一体的に構成されている。第2遊星ギア95は、リングギア44と太陽ギア部材204との間の空間に配置されている(図1)。
第1遊星ギア94は、従来の遊星ギア43と同じモジュールであり、同じピッチ円直径と歯数を有している。しかしながら、第2遊星ギア95については、太陽ギア91の回転中心と遊星ギア93の回転中心との間の距離が従来の遊星歯車機構の場合の中心間距離と変わらないので、太陽ギア91のピッチ円直径が小さくなった分、第2遊星ギア95のピッチ円直径は大きくなり、歯数も従来よりも大となる。太陽ギア91と第2遊星ギア95とは同一のモジュールで形成されている。したがって、太陽ギア91と第2遊星ギア95との間で得られる減速比は、従来の遊星歯車機構の場合の太陽ギア41と遊星ギア43との間で得られる減速比よりも大きな減速比となる。
言い換えれば、この実施例は、図4〜図6に示された従来の3K型不思議遊星歯車機構における太陽ギアをその回転軸と平行な方向に引き出し、かつ遊星ギア93を、リングギア44及び出力内歯ギア45と噛み合う第1遊星ギア94と、該第1遊星ギア94と一体的にかつ前記太陽ギアに噛み合うようにされた第2遊星ギア95とで構成したものである。したがって、第1遊星ギア94並びにリングギア44及び出力内歯ギア45のモジュールは同一であり、また太陽ギア91及び第2遊星ギア95のモジュールも同一であるが、太陽ギア91及び第2遊星ギア95は、第1遊星ギア94、リングギア44及び出力内歯ギア45と噛み合うことがないので、該太陽ギア91及び第2遊星ギア95のモジュールは、該第1遊星ギア94、リングギア44及び出力内歯ギア45のモジュールと同一とする必要はなく、それよりも小さくすることができる。
【0026】
このようにして、太陽ギア91の回転は、従来の遊星歯車機構の場合よりも減速して第2遊星ギア95に伝達され、第2遊星ギア95と一体に形成されている第1遊星ギア94も、この減速された速度で遊星回転をする。減速された速度で回転する第1遊星ギア94が、僅かな歯数差に設定されているリングギア44及び出力内歯ギア45に噛み合っているので、出力内歯ギア45は、一段目の遊星機構の減速分だけ減速比が大きくなった減速が得られる。
【0027】
図1〜図3に示す実施例では、太陽ギア91の下方に、太陽ギア91の中心軸に挿通され、回転自在に支持されることにより太陽ギア91に対して回転自在な、かつ各第1遊星ギア94と噛み合う補助太陽ギア96が設けられている。この補助太陽ギア96は、第1遊星ギア94と同一のモジュールである。この補助太陽ギア96は、太陽ギア91に対して回転自在であるので、太陽ギア91の回転と干渉することはない。この補助太陽ギア96は、当該遊星歯車機構の減速に寄与するものではなく、複数の第1遊星ギア94の中心部に配置されることにより、複数の遊星ギア93(第1遊星ギア94)に対して内側から支える働きをする。
【0028】
したがって、上記補助太陽ギア96は、第1遊星ギア94の倒れや撓みがなければ設ける必要が無く、構成として省略することができる。また、第1遊星ギア94と第2遊星ギア95とは、別体に形成して互いに固着してもよいが、一体成型で形成しても良い。
【0029】
本遊星歯車機構は、図1に示すように、ロータ8及びステータ2より成るモータと、弁本体10に設けられた弁座62に対して進退動する弁体61とを備える電動弁に適用することができる。ロータ8の回転は太陽ギア91に伝達され、内歯回動ギアである出力内歯ギア45がねじ機構を介して弁体61に連結されており、モータの回転が大きく減速されて出力内歯ギア45に伝達され、その回転が弁体61の直進運動に変換されるので、モータ出力に対して極めて高い分解能と高い出力トルクが得られる。なお、遊星歯車機構は、キャン30内に配置されたロータ8内に配置することができる。
【0030】
さて、上記の例では、太陽ギア91の歯数は、従来の太陽ギア41の歯数と同じであるものとして説明したが、本発明はこれのみに限定されることはなく、太陽ギア91の歯数、並びに第1遊星ギア94、第2遊星ギア95、リングギア44及び出力内歯ギア45の歯数は、当該遊星歯車機構90に必要される減速率、大きさ、あるいはその用途等に応じて適宜選択、決定できることは当然である。
したがって、太陽ギア91の歯数を大きくし、及び/あるいは第2遊星ギア95の歯数を小さくすれば、図4〜図6に示された減速機構に比較して増速させることも可能である。
またこの結果、例えば種々の減速率の遊星歯車装置を製造しようとする場合には、第1遊星ギア94、リングギア44及び出力内歯ギア45を共通部品とし、太陽ギア91及び第2遊星ギア95のみを、当該遊星歯車装置に求められる減速比やトルクに応じて適宜設計(モジュールや歯数の選定)を行えば、容易にその製造を行うことが出来る。
【符号の説明】
【0031】
1 電動弁
1a 駆動部 1b ギア減速機部
1c 送りねじ機構
2 ステータ 8 ロータ組立体
10 弁本体 14 弁室
16 オリフィス 20,22 配管
30 キャン
40 遊星歯車式減速機構
41 太陽ギア 42 キャリア
43 遊星ギア 44 リングギア(内歯固定ギア)
45 出力内歯ギア(内歯回動ギア) 46 出力軸
50 筒状軸受 51 雌ねじ部
52 ねじ軸 53 雄ねじ部
54 凸部 55 凹部
60 弁軸 61 弁体
62 弁座 63 弁穴
64 段差部 65 ボール
66 ボール受け部材 67 段差部
68 受け部材 70 コイルばね
73 ばね受け(ばね覆い部材) 74 ばね受け本体
75 上側フランジ部 76 下側フランジ部
77 孔 78 ガイド部
80 コイルばね 81 上端部
82 下端部 83 凹溝
90 遊星歯車機構 91 太陽ギア
93 遊星ギア 94 第1遊星ギア
95 第2遊星ギア 96 補助太陽ギア
102 突起
140 コイル 141 コネクタ 142 リード
180 取付用金具 182 穴
201 シャフト(回転軸) 202 筒体
220 ギアケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽ギアと、
前記太陽ギアに噛み合う遊星ギアと、
前記遊星ギアに噛み合う内歯固定ギアと、
前記遊星ギアに噛み合う内歯回動ギアと
を備えた遊星歯車機構において、
前記遊星ギアは、前記内歯固定ギア及び前記内歯回動ギアに噛み合う第1遊星ギア、及び前記第1遊星ギアと一体に設けられ、該第1遊星ギアよりも小さなモジュールを有する第2遊星ギアより成り、
前記太陽ギアは、前記第2遊星ギアに噛み合うこと
を特徴とする遊星歯車機構。
【請求項2】
請求項1記載の遊星歯車機構において、
前記太陽ギアは、前記第2遊星ギアと同一のモジュールで形成されていること
を特徴とする遊星歯車機構。
【請求項3】
請求項1又は2記載の遊星歯車機構において、
前記遊星ギアは複数であり、
前記第1遊星ギアの中心部には、該第1遊星ギアと噛み合う補助太陽ギアが回転自在に設けられていること
を特徴とする遊星歯車機構。
【請求項4】
請求項3記載の遊星歯車機構において、
前記補助太陽ギアは、前記太陽ギアの中心軸に支持されていること
を特徴とする遊星歯車機構。
【請求項5】
ロータ及びステータより成るモータと、
弁本体に設けられた弁座に対して進退動する弁体と、
前記ロータの回転が前記太陽ギアに伝達され、前記内歯回動ギアが前記弁体に連結された請求項1〜4のいずれか一項記載の遊星歯車機構とを具備したことを特徴とする電動弁。
【請求項6】
請求項5記載の電動弁において、
前記遊星歯車機構は、前記ロータ内に配置されていることを特徴とする電動弁。
【請求項7】
請求項6記載の電動弁において、
前記ロータは、前記弁本体に設けられたキャン内に配置されたことを特徴とする電動弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−67835(P2012−67835A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−212642(P2010−212642)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(391002166)株式会社不二工機 (451)
【Fターム(参考)】