説明

運動機能の維持または向上剤

【課題】キノコの水性溶媒抽出物を有効成分とする運動機能の維持または向上剤、運動機能の維持または向上用食品の提供。
【解決手段】運動機能の維持または向上効果を有するキノコの水性溶媒抽出物を有効成分として用いることで、運動機能の維持または向上剤、運動機能の維持または向上用食品を得た。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はキノコの水性溶媒抽出物を有効成分とする運動機能の維持または向上剤、運動機能の維持または向上用食品に関する。
【背景技術】
【0002】
今日の日本は,長寿化と少子化の影響により本格的な高齢社会を迎えている。日本の満50歳以上の人口は年々増加し、2025年には三千万人を超えることが予想されている。このような状況のなかで、近年高齢者の健康維持、健康改善についての対策が重要性を増している。高齢者一人ひとりがより元気になることは、個人にとってより充実した老後の人生を過ごせるだけでなく、社会的にも医療費の削減につながるからである。
【0003】
人間は加齢とともに,いわゆる老化現象によって身体の器官が衰弱するが、特に身体の土台である筋肉や骨の脆弱化が進行すると、日常生活動作に支障をきたし、生活の質(QOL)の低下につながる。特に転倒は寝たきりにつながる可能性が高く、その予防は非常に重要である。また、筋力の低下は、糖や脂質代謝機能の低下や基礎代謝というエネルギー消費量の低下をもたらすため、糖尿病や肥満、高脂血症といった生活習慣病の発症に密接な関係があると言われている。
【0004】
一般的に運動機能の維持および機能向上には運動が欠かせないことが知られているが、今日、中高年に最も親しまれている運動はウォーキングやストレッチ、ラジオ体操などである。これらはスタミナの向上、生活習慣病の予防には有効であるものの、筋肉や骨などの機能維持・向上には負荷が軽すぎるため、十分な効果が期待できない。しかしながら、負荷のかかる激しい運動を高齢者が行うことは怪我の危険性を高めるうえに、精神的にも長続きしないことから適切とは言いがたい。
【0005】
このような背景から、日常の食生活の中で手軽に摂取することができ、運動機能低下を抑制する、あるいは運動機能を向上させるような食品、医薬品、機能性食品が求められている。
【0006】
経口摂取により運動機能、特に筋力維持・向上効果を訴求した特許としては以下の報告がされているが、キノコの水性溶媒抽出物に筋力向上・維持効果があることはこれまで知られておらず、筋力以外の運動機能について述べられているものも存在しなかった。
【特許文献1】特開2008−13473号公報
【特許文献2】特開2006−16359号公報
【特許文献3】特開2002−65212号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、運動機能の維持または向上剤、運動機能の維持または向上用食品を提供することを課題とする。即ち、日常の食生活を維持しながらも、併用して摂取することで、運動機能の維持または向上ができる食品、医薬品、機能性食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、以上の状況を鑑み、運動機能の維持または向上を目的として日常の食生活で手軽に摂取できる素材について検討を重ねた結果、キノコ類から得られる抽出物、特に担子菌類ヒダナシタケ目に属するキノコ、さらに限定するならばマイタケから得られる抽出物に運動機能を維持または向上する効果があることを見出し、本発明に至った。
【0009】
上記の課題を解決するための本発明のうち、特許請求の範囲・請求項1に記載する発明は、キノコの水性溶媒抽出物を有効成分として含む運動機能の維持または向上剤である。
【0010】
同請求項2に記載する発明は、水性溶媒抽出物が前処理としてキノコの酵素分解を行ったものである請求項1に記載の運動機能の維持または向上剤である。
【0011】
同請求項3に記載する発明は、キノコが担子菌類ヒダナシタケ目に属する請求項1または2に記載の運動機能の維持または向上剤である。
【0012】
同請求項4に記載する発明は、キノコの水性溶媒抽出物が多糖、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質のいずれか1つ以上を含むキノコの水性溶媒抽出物である請求項1〜3のいずれかに記載の運動機能の維持または向上剤である。
【0013】
同請求項5に記載する発明は、有効成分としてさらにビタミンD類、クレアチン類の少なくとも1つ以上を含む請求項1〜4のいずれかに記載の運動機能の維持または向上剤である。
【0014】
同請求項6に記載する発明は、ビタミンD類がキノコ由来である請求項5に記載の運動機能の維持または向上剤である。
【0015】
同請求項7に記載する発明は、筋力の向上効果を有する請求項1〜6のいずれかに記載の運動機能の維持または向上剤である。
【0016】
同請求項8に記載する発明は、キノコの水性溶媒抽出物を有効成分として含む運動機能の維持または向上用食品である。
【0017】
同請求項9に記載する発明は、水性溶媒抽出物が前処理としてキノコの酵素分解を行ったものである請求項8に記載の運動機能の維持または向上用食品である。
【0018】
同請求項10に記載する発明は、キノコが担子菌類ヒダナシタケ目に属する請求項8または9に記載の運動機能の維持または向上用食品である。
【0019】
同請求項11に記載する発明は、キノコの水性溶媒抽出物が多糖、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質のうちいずれか1つ以上を含むキノコの水性溶媒抽出物である請求項8〜10のいずれかに記載の運動機能の維持または向上用食品である。
【0020】
同請求項12に記載する発明は、有効成分としてさらにビタミンD類、クレアチン類の少なくとも1つ以上を含む請求項8〜11のいずれかに記載の運動機能の維持または向上用食品である。
【0021】
同請求項13に記載する発明は、ビタミンD類がキノコ由来である請求項12に記載の運動機能の維持または向上用食品である。
【0022】
同請求項14に記載する発明は、筋力の向上効果を有する請求項8〜13のいずれかに記載の運動機能の維持または向上用食品である。
【0023】
同請求項15に記載する発明は、飲料、調理食品、健康食品、機能性食品、特定保健用食品、栄養補助食品、または病者用食品である、請求項8〜14のいずれかに記載の運動機能の維持または向上用食品である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によって、安全性が高く経口摂取することにより運動機能の維持または向上ができる食品あるいは医薬品組成物を提供することができる。これにより高齢者は日常の食生活や運動環境を変えることなく、運動機能を維持することができるため、転倒防止や寝たきり防止にもつながり、高齢者のQOLの維持に貢献できる。また、高齢者以外にも、アスリートの筋力強化、リハビリ、ダイエットなどを目的として摂取することで、筋力の維持や更なる筋力の向上の効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0026】
本発明の「運動機能の維持または向上剤」には、キノコの水性溶媒抽出物を有効成分として含み、運動機能の維持または向上効果を有する剤であればいずれのものも含まれる。また、本発明の「運動機能の維持または向上用食品」には、キノコの水性溶媒抽出物を有効成分として含み、運動機能の維持または向上効果を有する食品であればいずれのものも含まれる。
【0027】
本発明の「運動機能の維持または向上剤」、「運動機能の維持または向上用食品」における「運動機能の維持または向上」とは、高齢者、筋力強化を目的とするアスリート、リハビリやダイエット中の人等において、筋力の低下抑制または向上等により、身体能力を維持し、または高めることをいう。
本発明の「運動機能の維持または向上」には、筋力の維持または増加に加え、例えば、高齢者におけるQOLの向上、10m歩行時間の短縮、最大1歩幅の増加、開眼片脚立ち時間の増加等が挙げられる。
【0028】
本発明における「キノコ」とは担子菌類ヒダナシタケ目(マイタケ、シロマイタケ、ハナビラタケ等を含む)の子実体、その菌糸体および胞子の組み合わせから選択されるキノコを指し、その中でも特にマイタケを用いることが好ましい。
【0029】
本発明の「キノコの水性溶媒抽出物」はキノコから温水または熱水により抽出される。原料とするキノコは原型のまま用いても良いが、より抽出効率を高めるためには破砕し、フレーク状またはペースト状にして用いることが好ましい。破砕の際、原料が高温になると抽出効率が低下するため、原料温度を30℃以下、好ましくは20℃以下、より好ましくは10℃以下に保持するとよい。得られた破砕原料は、そのまま使用してもよいが、場合によっては冷凍保存してもよい。
【0030】
破砕された原料は、そのまま水を加えて抽出工程に進んでもよいが、前処理として「キノコの酵素分解」を行うと、より抽出効率が上昇するため好ましい。酵素処理には糖質分解酵素を用いることが好ましく、例えば、アミラーゼ、セルラーゼまたはグルコシダーゼ等を用いることができ、これらの酵素を組み合わせて用いることもできる。酵素分解の処理条件は使用する酵素に準じるが、場合によってはさらにカルシウムやナトリウムなどを加えてもよい。酵素液のpHは必ずしも調節する必要はないが、通常pH3.5〜pH7.5、好ましくはpH6.0〜pH7.0であることが好ましい。
【0031】
前処理として酵素分解を行った場合、酵素分解の後、酵素の失活処理を行い、失活処理を行った後、熱水抽出を行うことが好ましい。熱水抽出は従来知られているいずれの方法も用いることができ、場合によって加圧熱水を用いてもよい。熱水抽出後、抽出液を圧搾、遠心分離、ろ過等の方法によって固液分離することが好ましい。抽出液は液体のまま用いることもできるが、フリーズドライ、スプレードライ、ドラムドライ等によって粉末化してもよい。このようにして得られたキノコの水性溶媒抽出物は、多糖、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質のいずれか1つ以上を含むものであってもよい。
【0032】
本発明の「キノコの水性溶媒抽出物」は「運動機能の維持または向上剤」や「運動機能の維持または向上用食品」の有効性成分として、これらの剤や食品に配合することができる。それ以外にも抽出液または抽出粉末として、さまざまな食品、医薬品、機能性食品等に配合することができる。配合する食品としては、例えば、健康補助食品等の機能性食品としてだけでなく、飲料、調味料、野菜加工食品、果実加工食品、魚加工食品、肉製品、酪農製品、加工卵製品、香辛料、パン類、菓子類、調理食品、半調理食品、チルド食品、ペットフード等が挙げられる。また、本発明の「キノコの水性溶媒抽出物」を配合した食品、医薬品、機能性食品等の製造にあたり、通常の食品等の製造に用いられる、賦形剤、乳化剤、増粘剤、着色料、香料、調味料、香辛料などを適宜配合してもよい。
【0033】
本発明の「運動機能の維持または向上剤」、「運動機能維持または向上用食品」には、キノコの水性溶媒抽出物をそのまま、または他の成分とともに含むものである。
他の有効成分としては、「運動機能の維持または向上」に有効ないずれの成分も含まれるが、例えばビタミンDまたはクレアチンが挙げられる。本発明の「運動機能の維持または向上剤」、「運動機能の維持または向上用食品」にキノコの水性溶媒抽出物とビタミンDまたはクレアチンとを併せて配合することで、運動機能の維持または向上効果がさらに増強される。また、キノコの水性溶媒抽出物のみを有効成分として含む「運動機能の維持または向上剤」、「「運動機能の維持または向上用食品」とビタミンDまたはクレアチンとを組み合わせて摂取する場合にも運動機能の維持または向上効果が増強される。ビタミンDとクレアチンとを本発明の「運動機能の維持または向上剤」、「運動機能の維持または向上用食品」の成分として同時に含むことも有効である。
【0034】
本発明の「運動機能の維持または向上剤」、「運動機能の維持または向上用食品」に含まれる有効成分の量は、本発明の効果が達成される限り、特に限定はされない。
有効成分としてキノコの水性溶媒抽出物を含む場合には、0.01重量%〜100重量%、より好ましくは0.1重量%〜95重量%含有されるのが好ましい。また、1日の摂取量としては、キノコの水性溶媒抽出物が10mg〜5000mg、より好ましくは100mg〜3000mgとなるように本発明の「運動機能の維持または向上剤」、「運動機能の維持または向上用食品」を摂取するのが好ましい。
本発明の「運動機能の維持または向上剤」、「運動機能の維持または向上用食品」における、キノコの水性溶媒抽出物の含有量が0.01重量%を下回ると、本発明の運動機能の維持または向上効果を発揮するためには多量の摂取が必要となるため好ましくない。
【0035】
本発明の「運動機能の維持または向上剤」、「運動機能の維持または向上用食品」には有効成分以外に他の成分を組み合わせて含むことができる。例えば、ビタミン類、アミノ酸類、ミネラル類、食物繊維、糖類、多糖類、酵素類、乳酸菌類、γアミノ酪酸、スピルリナ、キチン、キチンキトサン、クレアチン、グルコサミン、コンドロイチン硫酸等を併用できる。
【0036】
本発明の「運動機能の維持または向上剤」、「運動機能の維持または向上用食品」は、その効果を損なわない限り、種々の剤形に製剤化することができる。剤形としては、錠剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、カプセル剤、丸剤等の経口用固形製剤のほか、溶液剤、懸濁剤、乳剤などの経口液体製剤が挙げられる。またその際、添加剤、例えば賦形剤、安定剤、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、滑沢剤、甘味料、着色料、香料、張度調製剤、緩衝剤、酸化防止剤、pH調整剤等を併用して製剤化することができる。
本発明の「運動機能の維持または向上用食品」には、いずれの飲食品も含まれるが、例えば飲料、調理食品、健康食品、機能性食品、特定保健用食品、栄養補助食品、または病者用食品等が挙げられる。
【0037】
以下に本発明の実施例、試験例を示すが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【実施例1】
【0038】
<キノコの水性溶媒抽出物の製造>
生マイタケIM−BM11号(種苗法に基づく品種出願番号:第17603号)1kgに3倍重量の水を加えアミラーゼを対マイタケ重量比で0.12%、セルラーゼを対マイタケ重量比で0.03%添加し、40℃で6時間加温した後、90℃で2時間熱水抽出を行った。熱水抽出後、固液分離し、マイタケ抽出物を得た。
【実施例2】
【0039】
<キノコの水性溶媒抽出物の製造>
生マイタケIM−BM11号(種苗法に基づく品種出願番号:第17603号)1kgに3倍重量の水を加えアミラーゼを対マイタケ重量比で0.1%、グルコシダーゼを対マイタケ重量比で0.1%添加し、40℃で6時間加温した後、90℃で2時間熱水抽出を行った。熱水抽出後、固液分離し、マイタケ抽出物を得た。
【実施例3】
【0040】
<運動機能の維持または向上剤の製造>
実施例1で製造したマイタケの水性溶媒抽出物を用い、デキストリン、カルシウム(ユニテックフーズ社「ミルクカルシウム28」)、コーンスターチ、菜種硬化油、ステアリン酸カルシウムを適当量配合して、配合して1粒380mgのタブレットとすることで、運動機能の維持または向上剤を製造した。この運動機能の維持または向上剤には、マイタケの水性溶媒抽出物が10粒で500mg含まれるように配合した。
【実施例4】
【0041】
<運動機能の維持または向上剤の製造>
実施例1で製造したマイタケ抽出物を用い、ビタミンD、デキストリン、カルシウム(ユニテックフーズ社「ミルクカルシウム28」)、コーンスターチ、菜種硬化油、ステアリン酸カルシウムを適当量配合して1粒380mgのタブレットを製造した。この運動機能の維持または向上剤には、マイタケの水性溶媒抽出物が10粒で500mg含まれるように配合した。
【実施例5】
【0042】
<運動機能の維持または向上剤の製造>
実施例1で製造したマイタケ抽出物を用い、ビタミンD、クレアチン、デキストリン、カルシウム(ユニテックフーズ社「ミルクカルシウム28」)、コーンスターチ、菜種硬化油、ステアリン酸カルシウムを適当量配合して1粒380mgのタブレットを製造した。この運動機能の維持または向上剤には、マイタケの水性溶媒抽出物が10粒で500mg含まれるように配合した。
【実施例6】
【0043】
<運動機能の維持または向上用食品(クッキー)の製造>
砂糖100g、マーガリン100gをよく混練したのち、卵60gを加え、さらに薄力粉200g、ベーキングパウダー1g、クレアチン20g、実施例2で製造したマイタケ抽出物10g、ビタミンD(0.5%含有品)0.04gを加え軽く混練することでクッキー生地を作成した。10℃、1時間クッキー生地を休ませた後、クッキー生地を伸ばし、1個9gになるように型抜きをし、190℃、15分オーブンで焼成することで、運動機能の維持または向上用食品としてクッキーを製造了した。このクッキーはさくさくとした食感があり、良好な風味を有していた。
【0044】
[試験例1]
人介入試験(1)
1.試験サンプル
実施例3で製造した運動機能の維持または向上剤を用いた。
【0045】
2.試験方法
成人女性(平均年齢62歳)21名を対象に試験を実施した。上記1.の試験サンプルを1日10粒ずつ、6ヶ月間摂取させ、試験前、試験終了時のそれぞれにおいて問診、10m歩行時間、開眼片脚立ち時間、最大1歩幅、膝伸展筋力の測定を実施した。
【0046】
3.試験結果
・QOLの変化
骨粗鬆症患者QOL評価簡略質問表であるMini−JOQOLを回答させたところ、試験終了時にはMini−JOQOLポイントの増加が確認され、QOLの向上が認められた(表1、図1)。以下、図1におけるMini−JOQOLポイントの増加率は、式1で求めた。
[式1]
Mini−JOQOLポイントの増加率(%)=摂取後のMini−JOQOLポイント/摂取前のMini−JOQOLポイント×100
・10m歩行時間の変化
10m歩行時間は試験終了時において短縮傾向が認められた(表1、図2)。以下、図2における10m歩行時間の短縮率は、式2で求めた。
[式2]
10m歩行時間の短縮率(%)=摂取後の10m歩行時間/摂取前の10m歩行時間×100
・最大1歩幅の変化
最大一歩幅は試験終了時において増加傾向が認められた(表1、図3)。この増加傾向は有意水準0.01%で有意であった。以下、図3における最大一歩幅の増加率は、式3で求めた。
[式3]
最大一歩幅の増加率(%)=摂取後の最大一歩幅/摂取前の最大一歩幅×100
・開眼片脚立ち時間の変化
開眼片脚立ち時間は試験終了時において増加傾向が認められた(表1、図4)。この増加傾向は有意水準0.01%で有意であった。以下、図4における開眼片脚立ち時間の増加率は、式4で求めた。
[式4]
開眼片脚立ち時間の増加率(%)=摂取後の開眼片脚立ち時間/摂取前の開眼片脚立ち時間×100
・筋力の変化
筋力は試験終了時において増加傾向が認められた(表1、図5)。この増加傾向は有意水準0.01%で有意であった。以下、図5における筋力の増加率は、式5で求めた。
[式5]
筋力の増加率(%)=摂取後の筋力/摂取前の筋力×100
【0047】
【表1】

【0048】
[試験例2]
人介入試験(2)
1.試験サンプル
実施例4で製造した運動機能の維持または向上剤を用いた。
【0049】
2.試験方法
成人女性(平均年齢63歳)25名を対象に試験を実施した。上記1.での試験サンプルを1日10粒ずつ、6ヶ月間摂取させ、試験前、試験終了時のそれぞれにおいて問診、10m歩行時間、開眼片脚立ち時間、最大1歩幅、膝伸展筋力の測定を実施した。
【0050】
3.試験結果
・QOLの変化
骨粗鬆症患者QOL評価簡略質問表であるMini−JOQOLを回答させたところ、試験終了時にはMini−JOQOLポイントの増加が確認され、QOLの向上が認められた(表2、図1)。
・10m歩行時間の変化
10m歩行時間は試験終了時において短縮傾向が認められた(表2、図2)。この傾向は有意水準0.01%で有意であり、試験例1よりも効果が大きかった。
・最大1歩幅の変化
最大一歩幅は試験終了時において増加傾向が認められた(表2、図3)。この増加傾向は有意水準0.01%で有意であり、試験例1よりも効果が大きかった。
・開眼片脚立ち時間の変化
開眼片脚立ち時間は試験終了時において増加傾向が認められた(表2、図4)。この増加傾向は有意水準0.01%で有意であり、試験例1よりも効果が大きかった。
・筋力の変化
筋力は試験終了時において増加傾向が認められた(表2、図5)。この増加傾向は有意水準0.01%で有意であり、試験例1における結果よりも筋力の増加率が大きかった。
【0051】
【表2】

【0052】
[試験例3]
人介入試験(3)
1.摂取サンプル
実施例5で製造した運動機能の維持または向上剤を用いた。
【0053】
2.試験方法
成人女性(平均年齢65歳)23名を対象に試験を実施した。1で説明した試験サンプルを1日10粒ずつ、6ヶ月間摂取させ、試験前、試験終了時のそれぞれにおいて問診、10m歩行時間、開眼片脚立ち時間、最大1歩幅、膝伸展筋力の測定を実施した。
【0054】
3.試験結果
・QOLの変化
骨粗鬆症患者QOL評価簡略質問表であるMini−JOQOLを回答させたところ、試験終了時にはMini−JOQOLポイントの増加が確認され、QOLの向上が認められた(表3、図1)。
・10m歩行時間の変化
10m歩行時間は試験終了時において短縮傾向が認められた(表3、図2)。この傾向は有意水準0.01%で有意であり、試験例1および2よりも効果が大きかった。
・最大1歩幅の変化
最大一歩幅は試験終了時において増加傾向が認められた(表3、図3)。この増加傾向は有意水準0.01%で有意であり、試験例1における結果よりも最大1歩幅の増加率が大きかった。
・開眼片脚立ち時間の変化
開眼片脚立ち時間は試験終了時において増加傾向が認められた(表3、図4)。この増加傾向は有意水準0.01%で有意であり、試験例1および2よりも効果が大きかった
・筋力の変化
筋力は試験終了時において増加傾向が認められた(表3、図5)。この増加傾向は有意水準0.01%で有意であり、試験例1および2における結果よりも筋力の増加率が大きかった。
【0055】
【表3】

【0056】
以上の結果より、本発明のキノコの水性溶媒抽出物を有効成分として含む運動機能の維持または向上剤によって高齢者のQOLの向上、10m歩行時間の短縮傾向、最大一歩幅の増加傾向、開眼片脚立ち時間の増加傾向、筋力の増加が確認されたことから、本発明の運動機能の維持または向上剤が、運動機能の維持または向上効果を有することが確認された。さらに本発明のキノコの水性溶媒抽出物を有効成分として含む運動機能の維持または向上剤にビタミンDまたはクレアチンを併せて配合することで、その効果がさらに増強されることは示された。
本発明によって示された10m歩行時間の短縮傾向、最大一歩幅の増加傾向、開眼片脚立ち時間の増加傾向は、本発明の運動機能の維持または向上剤によって筋力が向上したことが要因と考えられるが、これに伴う平行感覚や股関節の関節可動域の向上等も影響していると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明により得られる運動機能の維持または向上剤、運動機能の維持または向上用食品は、摂取により運動機能が有意に改善されたことから、特に高齢者を中心とした人の運動機能の維持および向上に非常に有用である。本発明の運動機能の維持または向上剤、運動機能の維持または向上用食品の接種は高齢者における転倒防止効果やQOL向上にもつながることから、その産業的価値は大きい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】キノコの水性溶媒抽出物を有効成分として含む運動機能の維持または向上剤におけるMini−JOQOLポイントの変化を示した図である(試験例1〜3)。
【図2】キノコの水性溶媒抽出物を有効成分として含む運動機能の維持または向上剤における10m歩行時間の変化を示した図である(試験例1〜3)。
【図3】キノコの水性溶媒抽出物およびビタミンDを有効成分として含む運動機能の維持または向上剤における最大1歩幅の変化を示した図である(試験例1〜3)。
【図4】キノコの水性溶媒抽出物およびビタミンDを有効成分として含む運動機能の維持または向上剤における開眼片脚立ち時間の変化を示した図である(試験例1〜3)。
【図5】キノコの水性溶媒抽出物およびビタミンDを有効成分として含む運動機能の維持または向上剤における筋力の変化を示した図である(試験例1〜3)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キノコの水性溶媒抽出物を有効成分として含む運動機能の維持または向上剤。
【請求項2】
水性溶媒抽出物が前処理としてキノコの酵素分解を行ったものである請求項1に記載の運動機能の維持または向上剤。
【請求項3】
キノコが担子菌類ヒダナシタケ目に属する請求項1または2に記載の運動機能の維持または向上剤。
【請求項4】
キノコの水性溶媒抽出物が多糖、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質のうちいずれか1つ以上を含むキノコの水性溶媒抽出物である請求項1〜3のいずれかに記載の運動機能の維持または向上剤。
【請求項5】
有効成分としてさらにビタミンD類、クレアチン類の少なくとも1つ以上を含む請求項1〜4のいずれかに記載の運動機能の維持または向上剤。
【請求項6】
ビタミンD類がキノコ由来である請求項5に記載の運動機能の維持または向上剤。
【請求項7】
筋力の向上効果を有する請求項1〜6のいずれかに記載の運動機能の維持または向上剤。
【請求項8】
キノコの水性溶媒抽出物を有効成分として含む運動機能の維持または向上用食品。
【請求項9】
水性溶媒抽出物が前処理としてキノコの酵素分解を行ったものである請求項8に記載の運動機能の維持または向上用食品。
【請求項10】
キノコが担子菌類ヒダナシタケ目に属する請求項8または9に記載の運動機能の維持または向上用食品。
【請求項11】
キノコの水性溶媒抽出物が多糖、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質のうちいずれか1つ以上を含むキノコの水性溶媒抽出物である請求項8〜10のいずれかに記載の運動機能の維持または向上用食品。
【請求項12】
有効成分としてさらにビタミンD類、クレアチン類の少なくとも1つ以上を含む請求項8〜11のいずれかに記載の運動機能の維持または向上用食品。
【請求項13】
ビタミンD類がキノコ由来である請求項12に記載の運動機能の維持または向上用食品。
【請求項14】
筋力の向上効果を有する請求項8〜13のいずれかに記載の運動機能の維持または向上用食品。
【請求項15】
飲料、調理食品、健康食品、機能性食品、特定保健用食品、栄養補助食品、または病者用食品である、請求項8〜14のいずれかに記載の運動機能の維持または向上用食品。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−256250(P2009−256250A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−108158(P2008−108158)
【出願日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(000119520)一正蒲鉾株式会社 (8)
【出願人】(306007864)ユニテックフーズ株式会社 (23)
【Fターム(参考)】