説明

運転支援装置、運転支援方法及び運転支援プログラム

【課題】他車両の走行資格に応じた案内を行うことができる運転支援装置、運転支援方法及び運転支援プログラムを提供する。
【解決手段】ナビゲーションユニット11は、異なる複数の走行資格が規定された複数の車線を有する資格規定道路を、自車両が走行しているか否かを判断し、自車両が資格規定道路を走行していると判断した際に、自車走行車線の走行資格と、自車走行車線に隣接する隣接車線の走行資格とを取得する。また、隣接車線を走行する他車両を認識し、隣接車線を走行する他車両が有する走行資格を取得し、隣接車線を走行する他車両が有する走行資格と、自車走行車線に規定された走行資格又は隣接車線に規定された走行資格とに基づいて、隣接車線を走行する他車両に関する案内を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転支援装置、運転支援方法及び運転支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の流れをスムーズにするため等の理由により、走行するためのルールが規定された車線を有する道路が設定されている。例えば、アメリカのカープールレーンでは、道路を走行する車両を減少させることを目的として、車両の乗員数が複数である場合にカープールレーンを走行可能であると規定している。そして、車両の現在位置周辺の地図表示や、現在位置等から目的地までの経路の探索及び案内を行うナビゲーション装置において、上述のような車線を走行するためのルールを考慮した経路を設定し、案内する技術が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−131085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記したような走行するためのルールが規定された車線を有する道路においては、その道路を走行する車両が車線に規定されたルールに適合するか否か、即ち車両がルールの規定された車線を走行する走行資格を有しているか否かに応じて、車線変更が可能か否かが決定される。例えば、同じ進行方向の車線としてカープールレーンとルールが規定されていない車線とを有する片側二車線の道路において、車両がルールの規定されていない車線を走行中である場合、乗員数が複数であればカープールレーンへの車線変更を行うことが出来るが、乗員数が一人、即ち運転者のみであれば車線変更を行うことが出来ないこととなる。
【0005】
そして、上記したような車線を有する道路を走行する際、車線変更をしようとする車両の走行資格の有無を考慮した運転支援は行われていなかった。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、他車両の走行資格に応じた案内を行うことができる運転支援装置、運転支援方法及び運転支援プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の運転支援装置は、走行資格が規定された車線を有する資格規定道路を、自車両が走行しているか否かを判断する道路認識手段と、前記自車両が前記資格規定道路を走行していると判断した際に、自車走行車線に規定された走行資格の規定に関する情報及び当該自車走行車線に隣接する隣接車線に規定された走行資格の規定に関する情報のうち少なくともいずれか一方を取得する資格取得手段と、前記隣接車線を走行する他車両を認識する他車両認識手段と、前記他車両が有する走行資格に関する情報を取得する他車両資格取得手段と、前記他車両が有する走行資格に関する情報と、取得された前記自車走行車線に規定された走行資格の規定に関する情報及び前記隣接車線に規定された走行資格の規定に関する情報のうち少なくともいずれか一方とに基づいて、前記他車両に関する案内を行うか否かを判断する案内手段とを備えたことを要旨とする。
【0007】
請求項1に記載の運転支援装置によれば、自車両が資格規定道路を走行している際に、
他車両が有する走行資格の規定に関する情報と、取得された前記自車走行車線に規定された走行資格の規定に関する情報及び隣接車線に規定された走行資格の規定に関する情報のうち少なくともいずれか一方とに基づいて、隣接車線を走行する他車両に関する案内を行うか否かを判断する。このため、他車両の走行資格と、各車線の走行資格とに応じて、自車両の走行に影響を及ぼす可能性のある他車両に関する案内を行うことができる。
【0008】
請求項2に記載の運転支援装置は、請求項1に記載の運転支援装置において、前記案内手段は、前記他車両が有する走行資格に関する情報に基づき、前記自車走行車線に規定された走行資格を満たすか否かを判断し、前記他車両が、前記自車走行車線に規定された走行資格を満たす場合に、当該他車両に関する案内を行うことを要旨とする。
【0009】
請求項2に記載の運転支援装置によれば、他車両が有する走行資格が、自車走行車線に規定された走行資格を満たす場合に、当該他車両に関する案内を行う。このため、自車走行車線に車線変更する可能性がある他車両に関する案内を行うことができる。
【0010】
請求項3に記載の運転支援装置は、請求項1に記載の運転支援装置において、前記案内手段は、前記他車両が有する走行資格に関する情報に基づき、前記隣接車線に規定された走行資格を満たすか否かを判断し、前記他車両が、前記隣接車線に規定された走行資格を満たさない場合に、当該他車両に関する案内を行うことを要旨とする。
【0011】
請求項3に記載の運転支援装置によれば、他車両が有する走行資格が、隣接車線に規定された走行資格を満たす場合に、当該他車両を、当該他車両に関する案内を行う。このため、自車走行車線に車線変更する可能性がある他車両に関する案内を行うことができる。
【0012】
請求項4に記載の運転支援装置は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の運転支援装置において、前記案内手段は、自車位置が、前記隣接車線と前記自車走行車線との間で車線変更可能な車線変更区間以前の所定範囲内に存在する場合に、前記他車両に関する案内を行うか否かを判断することを要旨とする。
【0013】
請求項4に記載の運転支援装置によれば、自車両が、車線変更区間以前の所定範囲以内に存在する場合に、他車両に関する案内を行うか否かを判断する。このため、不要な案内を行わず、案内を行う必要が有る場合にのみ、他車両に関する案内を行うことができる。
【0014】
請求項5に記載の運転支援方法は、自車両周辺の他車両に関する案内を、前記自車両のドライバーに対して行う制御手段を用いた運転支援方法において、前記制御手段が、走行資格が規定された車線を有する資格規定道路を、自車両が走行しているか否かを判断し、前記自車両が前記資格規定道路を走行していると判断した際に、自車走行車線に規定された走行資格の規定に関する情報及び当該自車走行車線に隣接する隣接車線の規定に関する情報に規定された走行資格のうち少なくともいずれか一方を取得し、前記隣接車線を走行する他車両を認識前記他車両が有する走行資格に関する情報を取得し、前記他車両が有する走行資格に関する情報と、取得された前記自車走行車線に規定された走行資格の規定に関する情報及び前記隣接車線に規定された走行資格の規定に関する情報のうち少なくともいずれか一方とに基づいて、前記他車両に関する案内を行うか否かを判断することを要旨とする。
【0015】
請求項5に記載の運転支援方法によれば、自車両が資格規定道路を走行している際に、他車両が有する走行資格の規定に関する情報と、取得された前記自車走行車線に規定された走行資格の規定に関する情報及び隣接車線に規定された走行資格の規定に関する情報のうち少なくともいずれか一方とに基づいて、隣接車線を走行する他車両に関する案内を行うか否かを判断する。このため、他車両の走行資格と、各車線の走行資格とに応じて、自
車両の走行に影響を及ぼす可能性のある他車両に関する案内を行うことができる。
【0016】
請求項6に記載の運転支援プログラムは、自車両周辺の他車両に関する案内を、前記自車両のドライバーに対して行う制御手段を用いた運転支援プログラムにおいて、前記制御手段を、走行資格が規定された車線を有する資格規定道路を、自車両が走行しているか否かを判断する道路認識手段と、前記自車両が前記資格規定道路を走行していると判断した際に、自車走行車線に規定された走行資格の規定に関する情報及び当該自車走行車線に隣接する隣接車線に規定された走行資格の規定に関する情報のうち少なくともいずれか一方を取得する資格取得手段と、前記隣接車線を走行する他車両を認識する他車両認識手段と、前記他車両が有する走行資格に関する情報を取得する他車両資格取得手段と、前記他車両が有する走行資格に関する情報と、取得された前記自車走行車線に規定された走行資格の規定に関する情報及び前記隣接車線に規定された走行資格の規定に関する情報のうち少なくともいずれか一方とに基づいて、前記他車両に関する案内を行うか否かを判断する案内手段として機能させることを要旨とする。
【0017】
請求項6に記載の運転支援プログラムによれば、自車両が資格規定道路を走行している際に、他車両が有する走行資格の規定に関する情報と、取得された前記自車走行車線に規定された走行資格の規定に関する情報及び隣接車線に規定された走行資格の規定に関する情報のうち少なくともいずれか一方とに基づいて、隣接車線を走行する他車両に関する案内を行うか否かを判断する。このため、他車両の走行資格と、各車線の走行資格とに応じて、自車両の走行に影響を及ぼす可能性のある他車両に関する案内を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】運転支援システムのブロック図。
【図2】本実施形態の処理手順を示すフローチャート。
【図3】本実施形態の処理手順を示すフローチャート。
【図4】(a)は支援対象区間を示す平面図、(b)及び(c)は隣接車線から他車両が車線変更する際の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を、ナビゲーションシステムに具体化した一実施形態を図1〜図4に従って説明する。図1は、本実施形態のナビゲーションシステム1のブロック図である。
本実施形態のナビゲーションシステム1は、運転支援装置としてのナビゲーション装置10、位置検出センサ3、測距センサ4、カメラ5、ディスプレイ6、スピーカ7を備えている。ナビゲーション装置10は、CPU12、RAM13及びROM14等からなるナビゲーションユニット11、車両側インターフェース(I/F)15、地理情報記憶部16、通信装置19、画像処理部20、画像プロセッサ21、音声プロセッサ22を備えている。ナビゲーションユニット11は、道路認識手段、資格取得手段、他車両認識手段、他車両資格取得手段、案内手段及び制御手段に対応し、運転支援プログラムを格納している。
【0020】
ナビゲーションユニット11は、車両側I/F15を介して、位置検出センサ3から、検出信号を取得して、自車位置を算出する。本実施形態では、位置検出センサ3は、GPS受信部30、車速センサ31、及びジャイロセンサ32などからなる。ナビゲーションユニット11は、GPS受信部30に基づき、電波航法により、緯度・経度等の絶対位置を検出する。また、ナビゲーション装置10は、自律航法により、車速センサ31及びジャイロセンサ32に基づき基準位置からの相対位置を算出する。そして、緯度・経度で表される絶対位置及び相対位置を組み合わせて、自車位置を特定する。
【0021】
地理情報記憶部16には、道路ネットワークデータ17、地図描画データ18が格納さ
れている。道路ネットワークデータ17は、ノードデータ及びリンクデータと、道路種別データを有している。ノードは、交差点や道路の端点、車線変更区間の端点に設定され、リンクは各ノードの間に設定されている。ノードデータは、ノードの座標や識別子等を有し、リンクデータは、リンクの識別子や、接続ノードの識別子、経路探索に用いられるリンクコスト等を有する。
【0022】
道路種別データは、高速道路、国道、一般道といった道路の種別を、リンクと関連付けて有している。さらに、リンクデータには、車線数と、車線のパターンと、各車線に規定された走行資格の規定に関する情報(以降、車線走行資格情報という)とが関連付けて記憶されている。車線走行資格情報は、例えば、車線がカープールレーンである場合には、当該車線を走行可能な車種若しくは乗車人数(××人以上)等である。ここで、車種とは、車両の名称やグレード等であっても良いし、ハイブリッド車両や電気自動車等の特定の駆動方式にて走行する車両を示すこととしてもよい。尚、走行資格が規定されていない車線については、走行資格の規定無しを示すコードが記憶されている。
【0023】
地図描画データ18は、ディスプレイ6に、地図画面を表示するためのデータであって、道路の曲線部を描画するための道路形状データや、道路以外の領域を描画するための背景データを有している。
【0024】
画像プロセッサ21は、図示しない画像データ記憶部から画像データを読み出したり、地理情報記憶部16から地図描画データ18を読み出して、各種画面をディスプレイ6に表示する。
【0025】
音声プロセッサ22は、図示しない音声データ記憶部から音声データを読み出して、各種案内音声をスピーカ7から出力する。
また、ナビゲーションユニット11は、自車両周辺の他車両を認識する機能を有する。ナビゲーションユニット11は、測距センサ4に基づき、周辺の他車両との相対距離を検出する。測距センサ4は、例えば数十メートル〜150メートル程度の障害物との距離を測定可能なミリ波レーダ等であって、自車両の車体に取り付けられ、本実施形態では少なくとも自車両前方及び前側方の他車両との相対距離を検出する。
【0026】
また、ナビゲーションユニット11は、カメラ5と画像処理部20とに基づいて、周辺の他車両の有無を判断する。カメラ5は、自車両の車体に取り付けられ、自車両前方及び前側方を撮影する。画像処理部20は、カメラ5から取得した画像データに対し、車両を検出するための公知の画像処理を行い、他車両を認識する。
【0027】
ナビゲーションユニット11は、測距センサ4の検出結果と、画像処理部20の画像処理結果とに基づき、自車両周辺の他車両の有無及びその他車両との相対距離を算出する。尚、画像処理のみで他車両との相対距離を算出可能な場合には、測距センサ4を省略してもよい。
【0028】
通信装置19は、例えば車車間通信等、他車両に搭載された通信装置と通信可能な装置であり、自車両を中心とする半径所定距離(例えば、1km)以内に存在する他車両から、他車両データを受信する。他車両データは、車両位置、走行車線、車速、他車両が有する走行資格に関する情報としての走行資格情報、車線変更情報を含む。車両位置は、その他車両の現在位置を示し、走行車線は、その他車両が走行中の車線を示す。また、車速は、その他車両の車速であって、走行資格情報は、他車両が走行中の道路に規定された走行資格を満たすか否かを判断するためのデータであり、本実施形態では、例えば他車両の車種や乗車人数等である。車線変更情報は、他車両にてウィンカ(方向指示器)を点滅させるための操作、所定角度以上の操舵がなされたときの操作等の操作がドライバーによって
行われた場合に送信される車線変更があることを示す情報であって、車線変更の方向を含んでいる。尚、他車両が、当該他車両に搭載されたカメラにより路面を撮影したデータを、画像処理部20により画像処理して、車線を区画する白線に接近したことを検出した際に送信されるようにしてもよい。
【0029】
また、自車両は、自車両を中心とする半径所定距離(例えば、1km)以内に存在す周囲の車両に対し、他車両として、上記した他車両データを送信する。
(処理手順)
次に、本実施形態の処理手順について、図2〜図4に従って説明する。
【0030】
図2に示すように、ナビゲーションユニット11は、支援開始を待機する(ステップS1)。具体的には、イグニッションスイッチがオン状態とされた際に支援を開始すると判断してもよいし、自車両が、例えば高速道路等、走行資格が規定された車線を有する所定の道路に進入した際に支援を開始すると判断してもよい。
【0031】
支援を開始すると判断すると(ステップS1においてYES)、自車位置と道路ネットワークデータ17とに基づき、自車両が支援対象道路を走行しているか否かを判断する(ステップS2)。支援対象道路は、上記したカープールレーン等、特定の走行資格が規定された車線を有する道路である。
【0032】
自車両が支援対象道路を走行していないと判断すると(ステップS2においてNO)、ステップS1に戻り、支援を継続するか否かを判断する。
自車両が支援対象道路を走行していると判断すると(ステップS2においてYES)、自車位置が車線変更区間以前の所定距離内に存在するか否か、即ち、自車両が支援対象区間に進入したか否かを判断する(ステップS3)。具体的には、ナビゲーションユニット11は、自車位置と道路ネットワークデータ17とに基づき、自車両が支援対象区間に進入したか否かを判断する。支援対象区間とは、後述するように、走行資格が規定された車線と該車線に隣接する隣接車線との間で車線変更が可能な車線変更区間と、車線変更区間の手前の所定区間を含む区間であり、ステップS3では、道路ネットワークデータ17に記憶されている車線変更区間の端点から所定距離(例えば、300m)手前の地点を自車位置が通過した場合に、自車位置が車線変更区間以前の所定距離内に存在する、即ち、自車両が支援対象区間に進入したと判断する。
【0033】
尚、この支援対象区間について、支援対象道路がカープールレーンを有する道路である場合を例に、図4(a)に基づいて詳細に説明する。図4(a)に示すように、カープールレーンL20を有する道路L1においては、支援対象区間Z1は、カープールレーンL20と普通車線L21との間で車線変更可能な車線変更区間としての進入可能区間Z2と、進行方向において進入可能区間Z2の手前の所定区間Z3とからなる所定範囲の区間である。進入可能区間Z2は、カープールレーンL20と普通車線L21とを区画する道路標示100が途切れる区間であって、所定区間Z3は、進入可能区間Z2以前の所定距離(例えば、300m)の区間である。普通車線L21を走行する車両は、カープールレーンL20の走行資格を満たす場合に、進入可能区間Z2においてカープールレーンL20に車線変更が可能であり、走行資格を満たさない場合には、車線変更ができない。
【0034】
自車両が支援対象区間Z1に進入していないと判断すると(ステップS3においてNO)、ステップS1に戻る。自車両が支援対象区間Z1に進入したと判断すると(ステップS3においてYES)、自車両が支援対象区間Z1を退出するまで、以下の処理を繰り返す。まず、自車走行車線L10に隣接する隣接車線L11であって、自車両前方に、他車両が存在するか否かを、画像処理部20による画像処理結果等に基づき判断する(ステップS4)。尚、このとき、自車位置から、進行方向前方に所定距離(例えば100m以下
)内に他車両が存在するか否かを判断し、所定距離外の車両は自車両前方の車両として検出しない。また、測距センサ4で他車両までの距離を検出してもよい。
【0035】
隣接車線L11に、自車両C1よりも進行方向前方に他車両C2が存在しないと判断した場合(ステップS4においてNO)、図3に示すステップS15に進み、支援対象区間Z1を退出するまで、自車両前方に存在する他車両の検出を繰り返す。具体的には、道路ネットワークデータ17に記憶されている車線変更区間の端点のうち、ステップS3において判断対象とした端点とは異なる端点を自車位置が通過したか否かを判断する。そして、端点を自車位置が通過したと判断した場合には、支援対象区間Z1から退出したと判断し、ステップS1に戻る。一方、端点を自車位置が通過していないと判断した場合には、自車両が支援対象区間Z1を退出していないと判断し、ステップS8に戻る。
【0036】
図4(b)に示すように、隣接車線L11であって、自車両C1よりも進行方向前方に他車両C2が存在すると判断すると(ステップS4においてYES)、自車両の車速V1が、その他車両C2の車速V2を超えるか否かを判断する(ステップS5)。ここでは、通信装置19により他車両C2から受信した他車両データに含まれる他車両の車速に基づき判断する。尚、他車両データを用いず、測距センサ4により計測した自車両C1と他車両C2との相対距離の変化を、受信波の計測間隔で除算して相対速度を算出し、算出された相対速度と自車両の車速V1とから他車両C2の車速V2を算出してもよい。又は、異なる複数の撮影データを画像処理して他車両C2の位置を算出し、他車両C2の各位置間の距離と撮影時間間隔とにより他車両の車速V2を算出してもよい。
【0037】
自車の車速V1が、他車両C2の車速V2以下である場合(ステップS5においてNO)、他車両C2は自車両C1から離間する傾向にあるため、他車両C2が自車走行車線L10に車線変更する際の安全度が高いと判断して、ステップS15に進み、自車両C1が支援対象区間Z1から退出するまで上記した処理を繰り返す。
【0038】
一方、自車の車速V1が、他車両C2の車速V2を超える場合(ステップS5においてYES)、その他車両C2は、自車走行車線L10に車線変更する際には注意喚起が必要な可能性がある車両として認識され、ステップS6に進む。
【0039】
ステップS6では、他車両C2から受信した他車両データに基づき、他車両C2による自車走行車線L10の方向への進入操作があるか否かを判断する。具体的には、他車両データに自車走行車線方向への車線変更があることを示す車線変更情報が含まれているか否かを判断する。他車両データに車線変更情報が含まれていない場合に、進入操作が行われていないと判断し(ステップS6においてNO)、図3に示すステップS8に進む。一方、他車両データに車線変更情報が含まれている場合に、進入操作が行われたと判断し(ステップS6においてYES)、自車両C1のドライバーに対して、他車両の車線変更に対して注意を払うよう警告を行う(ステップS7)。例えば、音声プロセッサ22を制御して、スピーカ7から警告音を出力したり、「隣接車線を走行する他車両が車線変更してきます、警戒してください。」などの案内を行う。
【0040】
図3に示すステップS8では、自車位置と道路ネットワークデータ17に基づいて、自車走行車線L10を特定するとともに、道路ネットワークデータ17から、自車走行車線L10の車線走行資格情報を取得し、自車走行車線L10に走行資格が規定されているか否かを判断する。具体的には、取得した自車走行車線L10の車線走行資格情報が走行資格の規定無しを示すコード以外であるとき、自車走行車線L10に走行資格が規定されていると判断する。
【0041】
例えば、自車走行車線L10がカープールレーンであって隣接車線L11が普通車線で
ある場合や、自車走行車線L10及び隣接車線L11の両方がカープールレーンである際等に、自車走行車線L10に走行資格が規定されていると判断する(ステップS8においてYES)。自車走行車線L10に走行資格が規定されていると判断すると、自車両C1が、自車走行車線L10に規定された走行資格を満たすか否か、即ち、自車両C1が、自車走行車線L10に規定された走行資格を有しているか否かを判断する(ステップS9)。具体的には、ステップS8にて取得された車線走行資格情報と、自車両C1の走行資格情報(車種や乗車人数等)に基づいて判断する。例えば、ステップS8にて取得された車線走行資格情報が車種である場合には、自車両C1の車種と自車走行車線L10に規定された車種とを比較し、自車両C1の車種が、自車走行車線L10に走行資格として規定された車種である場合には、自車両C1が、自車走行車線L10に規定された走行資格を満たすと判断する。尚、車線走行資格情報が乗車人数(××人以上)である場合には、自車両C1の乗車人数と自車走行車線L10に規定された乗員人数とを比較し、自車両C1の乗車人数が自車走行車線L10に規定された乗員人数以上である場合に、自車両C1が、自車走行車線L10に規定された走行資格を満たすと判断するようにしてもよい。尚、車種は予めナビゲーションシステム1に登録されており、また乗車人数は、着座センサ等でナビゲーションユニット11が認識可能となっており、これらを自車両C1の走行資格情報として取得する。そして、自車両C1が自車走行車線L10に規定された走行資格を有していないと判断された場合(ステップS9においてNO)、上記したステップS15に進む。
【0042】
一方、自車両C1が自車走行車線L10に規定された走行資格を有していると判断すると(ステップS9においてYES)、他車両C2が、自車走行車線に規定された走行資格を満たすか否か、即ち、自車両前方を走行する他車両C2が、自車走行車線L10に対する走行資格を有しているか否かを判断する(ステップS10)。具体的には、ステップS8にて取得された車線走行資格情報と、通信装置19により受信した他車両データに含まれる他車両C2の走行資格情報とに基づいて判断する。例えば、車線走行資格情報が車種である場合には、他車両C2の車種と自車走行車線L10に規定された車種とを比較し、他車両C2の車種が、自車走行車線L10に規定された車種である場合には、他車両C2が、自車走行車線L10に規定された走行資格を満たすと判断する。そして、他車両C2が、自車走行車線L10に規定された走行資格を満たさないと判断された場合には、他車両C2が自車走行車線L10を走行するための走行資格を有していないと判断し(ステップS10においてNO)、ステップS15に進み、自車両C1が支援対象区間Z1から退出するまで上記した処理を繰り返す。
【0043】
他車両C2が、自車走行車線L10に規定された走行資格を満たすと判断された場合には、他車両C2が自車走行車線L10を走行するための走行資格を有していると判断し(ステップS10においてYES)、ステップS11に進む。ステップS11では、道路ネットワークデータ17に基づいて、隣接車線L11を特定するとともに、道路ネットワークデータ17から、隣接車線L11の車線走行資格情報を取得し、隣接車線L11に走行資格が規定されているか否かを判断する。隣接車線L11が、例えばカープールレーン等であって、走行資格が規定されていると判断すると(ステップS11においてYES)、上記したステップS15に進む。例えば隣接車線L11が普通車線等であって、走行資格が規定されていないと判断すると(ステップS11においてNO)、ステップS12に進む。
【0044】
ステップS12では、自車両C1のドライバーに対し、今後、他車両C2の車線変更が行われる可能性が高い旨の注意喚起を行う。例えば、音声プロセッサ22を制御して、スピーカ7から「隣接車線を走行する他車両が車線変更してくる可能性があります、注意してください。」などの案内を出力する。
【0045】
このように、自車両C1が、隣接車線L11であって自車両前方を走行する他車両C2よりも大きな車速で走行し、且つその他車両C2が自車走行車線L10の走行資格を有し、且つ隣接車線L11に走行資格が規定されていない場合、その他車両C2は、自車走行車線L10であって自車両前方の位置に車線変更する可能性がある他車両として認識され、注意喚起が行われる。なぜなら、自車走行車線L10がカープールレーンである場合、他車両C2は隣接車線L11に比べ、優先的に走行できるため、この他車両C2に対しては、警告又は注意喚起を行うか否かを判断する必要があるからである。
【0046】
一方、ステップS8において、例えば自車走行車線L10が普通車線等であって、自車走行車線L10の車線走行資格情報が走行資格の規定無しを示すコードである場合、自車走行車線L10に走行資格が規定されていないと判断し(ステップS8においてNO)、上記したステップS11と同様に、隣接車線L11に走行資格が規定されているか否かを判断する(ステップS13)。隣接車線L11が普通車線等であって、走行資格が規定されていないと判断すると(ステップS13においてNO)、上記したステップS15に進む。
【0047】
隣接車線L11がカープールレーン等であって、走行資格が規定されていると判断すると(ステップS13においてYES)、他車両C2の有する走行資格が、隣接車線に規定された走行資格を満たすか否か、即ち、他車両C2が、隣接車線L11に規定された走行資格を有するか否かを判断する(ステップS14)。具体的には、ステップS13にて取得された車線走行資格情報と、通信装置19により受信した他車両データに含まれる他車両C2の走行資格情報とに基づいて判断する。例えば、その車線走行資格情報が車種である場合には、他車両C2の車種と隣接車線L11に規定された車種とを比較し、他車両C2の車種が、隣接車線L11に走行資格として規定された車種である場合には、他車両C2が、隣接車線L11に規定された走行資格を満たすと判断する。尚、車線走行資格情報が乗車人数(××人以上)である場合には、他車両C2の乗車人数と隣接車線L11に規定された乗員人数とを比較し、他車両C2の乗車人数が隣接車線L11に規定された乗員人数以上である場合に、他車両C2が、隣接車線L11に規定された走行資格を満たすと判断するようにしてもよい。そして、他車両C2が、隣接車線L11に対して規定された走行資格を有すると判断すると(ステップS14においてYES)、上記したステップS15に進む。
【0048】
一方、他車両C2がカープールレーン等に対して規定された走行資格を満たしていない場合、隣接車線L11に対して規定された走行資格を有していないと判断して(ステップS14においてNO)、ステップS12に進み注意喚起を行う。
【0049】
このような場合として例えば、他車両C2がカープールレーンである隣接車線L11に規定された走行資格を有さない状態において、隣接車線L11が外部道路から当該道路L1に進入するための進入路に接続しており、やむをえず、カープールレーンである隣接車線L11に進入しなければならない場合、或いは誤って隣接車線L11に進入した場合等がある。この場合、他車両C2が、隣接車線L11に対して規定された走行資格を有していないため、自車走行車線へ車線変更しなければならず、今後車線変更する可能性が高くなる。そのため、自車両C1のドライバーに対し、今後、他車両の車線変更が行われる可能性が高い旨の注意喚起を行う。
【0050】
また、上記したステップS4〜ステップS15は、自車両C1が支援対象区間Z1を走行している間、数十ミリ秒単位で繰り返し行われることとなるため、通常は、上記走行資格を有し、進入操作を行っていない他車両C2を検出した後、やがてその他車両C2が進入操作を行った際に、自車両C1が当該進入操作を検出することとなる。このため、支援対象区間Z1内では、進入操作を行う前の他車両C2に関して、事前に注意喚起を行い、
その他車両C2が進入操作を行った際に、警告に切り替える。このため、自車両C1のドライバーは、走行資格を有する他車両C2による車線変更に対し、余裕をもって備えることができる。
【0051】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態では、ナビゲーションユニット11は、走行資格が規定された車線を有する資格規定道路を、自車両が走行しているか否かを判断する。また、自車両が前記資格規定道路を走行していると判断した際に、自車走行車線に規定された車線走行資格情報及び当該自車走行車線に隣接する隣接車線に規定された車線走行資格情報のうち少なくともいずれか一方を取得する。また、隣接車線を走行する他車両を認識し、他車両が有する走行資格情報を取得する。さらに、他車両が有する走行資格情報と、取得された自車走行車線に規定された車線走行資格情報及び隣接車線に規定された車線走行資格情報のうち少なくともいずれか一方とに基づいて、他車両に関する案内を行うか否かを判断する。このため、他車両の走行資格と、各車線の走行資格とに応じて、自車両の走行に影響を及ぼす可能性のある他車両に関する案内を行うことができる。
【0052】
(2)上記実施形態では、自車位置が、隣接車線から前記自車走行車線へ車線変更可能な車線変更区間以前の所定距離以内に存在する場合に、他車両に関する案内を行うか否かを判断する。このため、不要な案内を行わず、案内を行う必要が有る場合にのみ、他車両に関する案内を行うことができる。
【0053】
尚、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、車車間通信のみ、又はカメラ5及び画像処理部20のみで他車両を認識するようにしてもよい。
【0054】
・上記実施形態では、走行資格が規定されている車線が、カープールレーンである道路を例に説明を行ったが、特にカープールレーンを有する道路に限定されず、複数車線を有し、該複数車線のうち一部の車線に走行資格が規定されている道路において適用可能である。例えば、バスのみが通行可能なバス専用レーンを有する道路などにおいても適用可能である。
【0055】
・上記実施形態では、自車位置及び他車両の車両位置と、道路ネットワークデータ17とに基づいて、自車走行車線及び隣接車線を特定した。これに加えて、カメラ5及び画像処理部20にて車線を検出し、検出された車線の特徴と、リンクデータに関連付けられている車線のパターンとに基づいて、自車走行車線及び隣接車線を特定するようにしてもよい。このような構成とすると、より正確に自車走行車線及び隣接車線を特定することが出来る。
【符号の説明】
【0056】
10…運転支援装置としてのナビゲーション装置、11…道路認識手段、資格取得手段、他車両認識手段、他車両資格取得手段、案内手段、制御手段としてのナビゲーションユニット、C1…自車両、C2…他車両、L1…資格規定道路としての道路、L10…自車走行車線、L11…隣接車線、Z3…所定範囲としての所定区間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行資格が規定された車線を有する資格規定道路を、自車両が走行しているか否かを判断する道路認識手段と、
前記自車両が前記資格規定道路を走行していると判断した際に、自車走行車線に規定された走行資格の規定に関する情報及び当該自車走行車線に隣接する隣接車線に規定された走行資格の規定に関する情報のうち少なくともいずれか一方を取得する資格取得手段と、
前記隣接車線を走行する他車両を認識する他車両認識手段と、
前記他車両が有する走行資格に関する情報を取得する他車両資格取得手段と、
前記他車両が有する走行資格に関する情報と、取得された前記自車走行車線に規定された走行資格の規定に関する情報及び前記隣接車線に規定された走行資格の規定に関する情報のうち少なくともいずれか一方とに基づいて、前記他車両に関する案内を行うか否かを判断する案内手段とを備えたことを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の運転支援装置において、
前記案内手段は、
前記他車両が有する走行資格に関する情報に基づき、前記自車走行車線に規定された走行資格を満たすか否かを判断し、前記他車両が、前記自車走行車線に規定された走行資格を満たす場合に、当該他車両に関する案内を行うことを特徴とする運転支援装置。
【請求項3】
請求項1に記載の運転支援装置において、
前記案内手段は、
前記他車両が有する走行資格に関する情報に基づき、前記隣接車線に規定された走行資格を満たすか否かを判断し、前記他車両が、前記隣接車線に規定された走行資格を満たさない場合に、当該他車両に関する案内を行うことを特徴とする運転支援装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の運転支援装置において、
前記案内手段は、自車位置が、前記隣接車線と前記自車走行車線との間で車線変更可能な車線変更区間以前の所定範囲内に存在する場合に、前記他車両に関する案内を行うか否かを判断することを特徴とする運転支援装置。
【請求項5】
自車両周辺の他車両に関する案内を、前記自車両のドライバーに対して行う制御手段を用いた運転支援方法において、
前記制御手段が、
走行資格が規定された車線を有する資格規定道路を、自車両が走行しているか否かを判断し、
前記自車両が前記資格規定道路を走行していると判断した際に、自車走行車線に規定された走行資格の規定に関する情報及び当該自車走行車線に隣接する隣接車線の規定に関する情報に規定された走行資格のうち少なくともいずれか一方を取得し、
前記隣接車線を走行する他車両を認識し、
前記他車両が有する走行資格に関する情報を取得し、
前記他車両が有する走行資格に関する情報と、取得された前記自車走行車線に規定された走行資格の規定に関する情報及び前記隣接車線に規定された走行資格の規定に関する情報のうち少なくともいずれか一方とに基づいて、前記他車両に関する案内を行うか否かを判断することを特徴とする運転支援方法。
【請求項6】
自車両周辺の他車両に関する案内を、前記自車両のドライバーに対して行う制御手段を用いた運転支援プログラムにおいて、
前記制御手段を、
走行資格が規定された車線を有する資格規定道路を、自車両が走行しているか否かを判
断する道路認識手段と、
前記自車両が前記資格規定道路を走行していると判断した際に、自車走行車線に規定された走行資格の規定に関する情報及び当該自車走行車線に隣接する隣接車線に規定された走行資格の規定に関する情報のうち少なくともいずれか一方を取得する資格取得手段と、
前記隣接車線を走行する他車両を認識する他車両認識手段と、
前記他車両が有する走行資格に関する情報を取得する他車両資格取得手段と、
前記他車両が有する走行資格に関する情報と、取得された前記自車走行車線に規定された走行資格の規定に関する情報及び前記隣接車線に規定された走行資格の規定に関する情報のうち少なくともいずれか一方とに基づいて、前記他車両に関する案内を行うか否かを判断する案内手段として機能させることを特徴とする運転支援プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−257086(P2010−257086A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−104486(P2009−104486)
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】