説明

運転支援装置及びプログラム

【課題】他の走行体視点の状況も考慮した精度の高い衝突判定を行う。
【解決手段】環境認識部32で、レーザレーダ12、撮像装置14、GPS装置16、車両センサ18の各データ、及び地図情報を用いて、自車両の現在の状況及び自車両を基準とした他の走行体の状況を示す自車両ベクトルと、他の走行体の現在の状況及び他の走行体を基準とした自車両及びその他の他の走行体の状況を示す走行体ベクトルを算出する。行動予測部40で、算出された自車両ベクトル及び走行体ベクトルと、変化モデル記憶部38に記憶された自車両及び他の走行体の行動状態の変化を予測するための自車両変化モデル及び走行体変化モデルとを照合して、自車両及び他の走行体の行動状態の変化を予測し、衝突判定部42で、予測結果に基づいて、自車両と他の走行体との相対距離を算出して、自車両と他の走行体との衝突の可能性を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転支援装置及びプログラムに係り、特に、自車両周辺に存在する他の走行体との衝突の可能性を判定する運転支援装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自車両と自車両周辺に存在する他車両、二輪車両、自転車、歩行者等の他の走行体との衝突の可能性を判定し、判定結果に基づいてドライバへの警報を行ったり、車両運動を制御したりすることが行われている。
【0003】
例えば、自動車等の移動体の外界環境の検出結果からその環境内に含まれる危険度(リスク)に係る情報を適応的に認識するリスク認識システムが提案されている(特許文献1参照)。特許文献1のリスク認識システムでは、ドライバを認識器の学習においての教師とし、ドライバの運転操作からリスク情報を抽出し、その運転操作に基づくリスク情報と、カメラから得られる画像情報との関連を人工知能技術を用いて学習させている。例えば、ドライバが歩行者を回避するような操作行動を行ったとき、その状況が危険であると判断し、そのときに得られた画像は危険であるということを学習させる。そして、次に同じような画像が得られた場合に危険であるという出力を行い、ドライバに警告を与えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−96365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の発明では、画像特徴量を用いて自車両前方の状況の危険度を推定しているが、画像特徴量のみで危険状態を規定することは困難であり、自車両前方の状況と危険状態とが不確定な関係で対応付けられている場合もある。そのため、運転支援を行うための確度を持ってその学習結果を使用する際に、調整等の煩雑な処理が必要となる、という問題がある。また、衝突の可能性を判定する上で、他の走行体の行動を予測することが重要となるが、特許文献1に記載の発明では、他の走行体視点での他の走行体の行動が考慮されていないため、判定精度が低くなる、という問題がる。
【0006】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、他の走行体視点の状況も考慮した精度の高い衝突判定を行うことができる運転支援装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の運転支援装置は、自車両の走行状態及び自車両周辺に存在する他の走行体の走行状態を含む走行環境を取得する取得手段と、前記取得手段により取得された自車両の走行状態及び走行環境に基づいて、前記自車両の現在の状況及び該自車両を基準とした他の走行体の状況を示す自車両ベクトルを算出すると共に、前記他の走行体の現在の状況及び該他の走行体を基準とした自車両の状況を示す走行体ベクトルを算出するベクトル算出手段と、前記ベクトル算出手段により算出された自車両ベクトルと、複数の学習用自車両ベクトルの各々と所定時間後の自車両の行動状態の変化とを対応させた自車両変化モデルとに基づいて、前記所定時間後の自車両の行動状態の変化を予測すると共に、前記ベクトル算出手段により算出された走行体ベクトルと、複数の学習用走行体ベクトルの各々と前記所定時間後の他の走行体の行動状態の変化とを対応させた走行体変化モデルとに基づいて、前記所定時間後の他の走行体の行動状態の変化を予測する予測手段と、前記取得手段により取得された前記自車両の走行状態及び走行環境、並びに前記予測手段により予測された前記所定時間後の自車両の行動状態の変化及び前記所定時間後の他の走行体の行動状態の変化に基づいて、前記所定時間経過以降の前記自車両と前記他の走行体との相対距離を推定し、推定した前記相対距離に基づいて、前記自車両と前記他の走行体との衝突の可能性を判定する判定手段と、を含んで構成されている。
【0008】
本発明の運転支援装置によれば、取得手段が、自車両の走行状態及び自車両周辺に存在する他の走行体の走行状態を含む走行環境を取得し、ベクトル算出手段が、取得手段により取得された自車両の走行状態及び走行環境に基づいて、自車両の現在の状況及び自車両を基準とした他の走行体の状況を示す自車両ベクトルを算出すると共に、他の走行体の現在の状況及び他の走行体を基準とした自車両の状況を示す走行体ベクトルを算出する。このように走行体ベクトルも算出することにより、他の走行体視点での他の走行体の行動を考慮することができる。
【0009】
そして、予測手段が、ベクトル算出手段により算出された自車両ベクトルと、複数の学習用自車両ベクトルの各々と所定時間後の自車両の行動状態の変化とを対応させた自車両変化モデルとに基づいて、所定時間後の自車両の行動状態の変化を予測すると共に、ベクトル算出手段により算出された走行体ベクトルと、複数の学習用走行体ベクトルの各々と所定時間後の他の走行体の行動状態の変化とを対応させた走行体変化モデルとに基づいて、所定時間後の他の走行体の行動状態の変化を予測する。すなわち、他の走行体については、他の走行体視点の走行体ベクトルを用いて行動状態の変化を予測することができる。
【0010】
そして、判定手段が、取得手段により取得された自車両の走行状態及び走行環境、並びに予測手段により予測された所定時間後の自車両の行動状態の変化及び所定時間後の他の走行体の行動状態の変化に基づいて、所定時間経過以降の自車両と他の走行体との相対距離を推定し、推定した相対距離に基づいて、自車両と他の走行体との衝突の可能性を判定する。
【0011】
このように、自車両の状況及び自車両を基準とした他の走行体の状況を示す自車両ベクトルだけでなく、他の走行体の状況及び他の走行体を基準とした自車両の状況を示す走行体ベクトルも算出して、他の走行体の所定時間後の行動状態の変化を予測するため、他の走行体視点の状況も考慮した精度の高い衝突判定を行うことができる。
【0012】
また、前記ベクトル算出手段は、前記自車両の状況として、少なくとも自車両の位置、速度、加速度、及び向きを含み、前記他の走行体の状況として、少なくとも他の走行体の位置、速度、及び向きを含んだ前記自車両ベクトル及び前記走行体ベクトルを算出するようにすることができる。また、前記取得手段は、走行環境として前記自車両及び前記他の走行体が存在する走路の形状を取得し、前記ベクトル算出手段は、前記自車両の状況として、さらに自車両の進行方向の所定距離先の走路の曲率半径を含み、前記他の走行体の状況として、さらに他の走行体の進行方向の所定距離先の走路の曲率半径を含んだ前記自車両ベクトル及び前記走行体ベクトルを算出するようにすることができる。このように、各種情報を用いて自車両ベクトル及び走行体ベクトルを算出することにより、衝突判定の精度を向上させることができる。
【0013】
また、前記ベクトル算出手段は、前記自車両周辺に存在する他の走行体が複数存在する場合には、所定個の他の走行体を選択し、前記自車両の現在の状況及び該自車両を基準とした選択された他の走行体の各々の状況を示す自車両ベクトルを算出すると共に、選択された他の走行体の各々について、前記選択された他の走行体の現在の状況及び該他の走行体を基準とした自車両の状況及びその他の選択された他の走行体の各々の状況を示す走行体ベクトルを算出するようにすることができる。その際、前記ベクトル算出手段は、前記自車両と前記選択された他の走行体の各々との距離が近い順に前記自車両ベクトル及び前記走行体ベクトルの要素とするようにすることができる。このように、他の走行体が複数存在するような複雑な状況の場合でも、適切に自車両ベクトル及び走行体ベクトルを算出することができる。
【0014】
また、前記自車両変化モデルを、前記自車両ベクトルが投影されるベクトル空間を複数に区分した各々の領域内での行動状態の変化別の割合で定め、前記走行体変化モデルを、前記走行体ベクトルが投影されるベクトル空間を複数に区分した各々の領域内での行動状態の変化別の割合で定めるようにすることができる。このような自車両変化モデル及び走行体変化モデルを用いることにより、自車両及び他の走行体の行動状態の変化を柔軟に予測することができる。
【0015】
また、前記予測手段は、前記所定時間後の自車両の行動状態の変化別の割合を予測すると共に、前記所定時間後の他の走行体の行動状態の変化別の割合を予測し、前記判定手段は、自車両の行動状態の変化と他の走行体の行動状態の変化との組合せの各々について前記相対距離を推定し、前記相対距離が予め定めた閾値距離より小さくなる組合せの前記自車両の行動状態の変化別の割合と前記他の走行体の行動状態の変化別の割合とを乗算した発生割合に基づいて、前記自車両と前記他の走行体との衝突の可能性を判定するようにすることができる。
【0016】
また、前記行動状態の変化を、加速、等速、及び減速とすることができる。
【0017】
また、本発明の運転支援装置は、前記取得手段で取得された自車両の走行状態及び走行環境の履歴に基づいて、前記所定時間後の自車両の行動状態の変化、及び前記所定時間後の他の走行体の行動状態の変化を算出する変化算出手段と、前記ベクトル算出手段により算出された前記自車両ベクトルと前記変化算出手段により算出された前記所定時間後の自車両の行動状態の変化との対応に基づいて、前記自車両変化モデルを更新すると共に、前記ベクトル算出手段により算出された前記走行体ベクトルと前記変化算出手段により算出された前記所定時間後の他の走行体の行動状態の変化との対応に基づいて、前記走行体変化モデルを更新する更新手段と、を含んで構成するようにすることができる。このように、実際に取得されたデータに基づいて、自車両変化モデル及び走行体変化モデルを更新することにより、車両やドライバの個人差を吸収することができる。
【0018】
また、前記他の走行体には、他車両、二輪車両、自転車、及び歩行者が含まれる。
【0019】
また、本発明の運転支援プログラムは、コンピュータを、自車両の走行状態及び自車両周辺に存在する他の走行体の走行状態を含む走行環境を取得する取得手段、前記取得手段により取得された自車両の走行状態及び走行環境に基づいて、前記自車両の現在の状況及び該自車両を基準とした他の走行体の状況を示す自車両ベクトルを算出すると共に、前記他の走行体の現在の状況及び該他の走行体を基準とした自車両の状況を示す走行体ベクトルを算出するベクトル算出手段、前記ベクトル算出手段により算出された自車両ベクトルと、複数の学習用自車両ベクトルの各々と所定時間後の自車両の行動状態の変化とを対応させた自車両変化モデルとに基づいて、前記所定時間後の自車両の行動状態の変化を予測すると共に、前記ベクトル算出手段により算出された走行体ベクトルと、複数の学習用走行体ベクトルの各々と前記所定時間後の他の走行体の行動状態の変化とを対応させた走行体変化モデルとに基づいて、前記所定時間後の他の走行体の行動状態の変化を予測する予測手段、及び前記取得手段により取得された前記自車両の走行状態及び走行環境、並びに前記予測手段により予測された前記所定時間後の自車両の行動状態の変化及び前記所定時間後の他の走行体の行動状態の変化に基づいて、前記所定時間経過以降の前記自車両と前記他の走行体との相対距離を推定し、推定した前記相対距離に基づいて、前記自車両と前記他の走行体との衝突の可能性を判定する判定手段として機能させるためのプログラムである。
【0020】
なお、本発明のプログラムを記憶する記憶媒体は、特に限定されず、ハードディスクであってもよいし、ROMであってもよい。また、CD−ROMやDVDディスク、光磁気ディスクやICカードであってもよい。更にまた、該プログラムを、ネットワークに接続されたサーバ等からダウンロードするようにしてもよい。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明の運転支援装置及びプログラムによれば、自車両の状況及び自車両を基準とした他の走行体の状況を示す自車両ベクトルだけでなく、他の走行体の状況及び他の走行体を基準とした自車両の状況を示す走行体ベクトルも算出して、他の走行体の所定時間後の行動状態の変化を予測するため、他の走行体視点の状況も考慮した精度の高い衝突判定を行うことができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施の形態の運転支援装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】シーンの一例を示すイメージ図である。
【図3】シーンベクトル記憶部に記憶された自車両ベクトル及び走行体ベクトル、並びに行動状態変化の一例を示す図である。
【図4】自車両変化モデル及び走行体変化モデルの生成を説明するための概略図である。
【図5】自車両変化モデル及び走行体変化モデルの一例を示す図である。
【図6】自車両と他の走行体との相対距離を予測する際の加速度の算出方法の一例を説明するための図である。
【図7】予測された自車両の行動状態変化と他の走行体の行動状態変化の組合せを示す図である。
【図8】自車両と他の走行体との相対距離の予測結果の一例を示す図である。
【図9】本実施の形態の運転支援装置における衝突判定処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図10】本実施の形態の運転支援装置における学習処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0024】
図1に示すように、本実施の形態に係る運転支援装置10は、自車両の前方に対してレーザを1次元(水平方向)に走査しながら照射し、レーザの反射によりレーザが照射された物体の2次元位置を検出するレーザレーダ12と、車両周辺を撮像するCCDカメラ等で構成され、撮像された画像の画像データを出力する撮像装置14と、GPS衛星からの衛星信号を受信し、擬似距離データ等のGPSデータを出力するGPS装置16と、自車両の車速を検出する車速センサ、自車両の加速度を検出する加速度センサ、及び自車両のヨー角を検出するヨー角センサを含む車両センサ18と、判定結果に応じて警報を表示するための表示装置や警報を音声出力するためのスピーカ等で構成された警報装置22と、自車両と他の走行体との衝突の可能性を判定する処理を実行するコンピュータ30と、を備えている。
【0025】
コンピュータ30は、運転支援装置10全体の制御を司るCPU、後述する衝突判定処理ルーチン及び学習処理ルーチンを含む運転支援処理ルーチンを実行するためのプログラム等を記憶したROM、データ等を一時的に記憶するRAM、各種情報が記憶されたメモリ、及びこれらを接続するバスを含んで構成されている。
【0026】
このコンピュータ30をハードウエアとソフトウエアとに基づいて定まる機能実現手段毎に分割した機能ブロックで説明すると、図1に示すように、レーザレーダ12により測定された測定データ、撮像装置14により撮像された画像データ、GPS装置16から出力されたGPSデータ、車両センサ18の検出値、及びネットワークを介して接続された電子地図記憶装置20に記憶された地図情報に基づいて、シーン(状況)に応じた自車両ベクトル及び走行体ベクトル、並びに自車両及び他の走行体の所定時間後の行動状態変化を算出する環境認識部32と、自車両ベクトルと自車両の行動状態変化、及び走行体ベクトルと他の走行体の行動状態変化とが対応して記憶されるシーンベクトル記憶部34と、シーンベクトル記憶部34に記憶された情報を学習して、自車両及び他の走行体の行動状態の変化を予測するための変化モデルを生成する学習部36と、生成された変化モデルが記憶される変化モデル記憶部38と、自車両ベクトル、走行体ベクトル、及び変化モデルに基づいて、自車両及び他の走行体の行動を予測する行動予測部40と、予測された自車両及び他の走行体の行動に基づいて、自車両と他の走行体との衝突の可能性を判定する衝突判定部42と、を含んだ構成で表すことができる。なお、環境認識部32が、本発明の取得手段、ベクトル算出手段、及び変化算出手段の一例であり、学習部36が、本発明の更新手段の一例である。
【0027】
環境認識部32は、GPS装置16からGPSデータを取得し、自車両の位置座標(S_x,S_y)を算出する。また、車両センサ18の車速センサ、加速度センサ、及びヨー角センサの検出値を取得し、自車両の進行方向をX軸、X軸に直交する方向をY軸とするXY座標系を想定し、自車両の速度(S_vx,S_vy)、自車両の加速度(S_ax,S_ay)、自車両の向き(S_dir)を算出する。なお、自車両の速度は、GPSデータのドップラー周波数に基づいて算出するようにしてもよいし、時系列の自車両の位置座標を微分して算出してもよい。また、自車両の加速度は、時系列の自車両の速度を微分して算出してもよい。
【0028】
また、環境認識部32は、撮像装置14から出力された画像データ、及びレーザレーダ12の測定データを取得し、画像データを画像認識した結果、及びレーザレーダ12による物体検出の結果に基づいて、自車両の周辺に存在する他の走行体を抽出し、他の走行体リストを生成する。例えば、図2に示すシーンでは、走行体A及び走行体Bが抽出される。
【0029】
また、環境認識部32は、さらに、可動物識別部32aと走路識別部32bとを含んだ構成で表すことができる。
【0030】
可動物識別部32aは、取得した画像データを画像認識して、他の走行体リストに含まれる走行体の属性c(他車両、二輪車両、自転車、歩行者等)を識別する。例えば、図2の例では、走行体Aの属性は「歩行者」、走行体Bの属性は「他車両」と識別される。また、画像認識の結果から、他の走行体の各々の向き(O_dir)を算出する。向きdirは、xの正方向を0deg、yの正方向を90deg、xの負方向を180degとして表した角度(degree)である。
【0031】
なお、走行体Aの向きについて表記する場合には「OA_dir」とし、走行体Bの向きについて表記する場合には「OB_dir」とする。以下、他の走行体の各々を区別することなく他の走行体に関する情報を表記する場合には「O_」とし、特定の他の走行体の情報を表記する場合には、「OA_」「OB_」等のように表記する。
【0032】
さらに、可動物識別部32aは、取得したレーザレーダ12の測定データに基づいて、自車両と他の走行体の各々との相対距離を算出し、相対距離の微分値を自車両に対する他の走行体の各々の相対速度として算出し、相対速度の微分値を自車両に対する他の走行体の各々の相対加速度として算出する。そして、自車両の位置座標(S_x,S_y)、自車両の速度(S_vx,S_vy)、自車両の加速度(S_ax,S_ay)、相対距離、相対速度、及び相対加速度に基づいて、他の走行体の位置座標(O_x,O_y)、他の走行体の速度(O_vx,O_vy)、及び他の走行体の加速度(O_ax,O_ay)を算出する。
【0033】
走路識別部32bは、電子地図記憶装置20から地図情報を取得し、地図情報とGPSデータとを照合して、最近傍の走行可能なレーンや歩道等を認識し、自車両及び他の走行体の走行する走路の中央線を識別する。そして、自車両の進行方向走路の中央線をクロソイド曲線で近似した場合における所定距離(S_WL)先の曲率半径(S_WR)を算出する。同様に、他の走行体の進行方向走路の所定距離(O_WL)先の曲率半径(O_WR)を算出する。なお、所定距離WLは、Z秒後(例えば、2〜3秒後)の自車両及び他の走行体の行動を予測することを考慮して、属性に応じたZ秒間の走行距離を想定した値を予め定めておく。例えば、属性が自車両または他車両であれば、WL=50mとして定めておくことができる。
【0034】
また、環境認識部32は、他の走行体リストに含まれる他の走行体の中から、自車両との距離が近い順にN個の他の走行体を選択する。また、選択した他の走行体について、過去のデータを参照して既にデータが存在する走行体については、既に付与されている走行体固有の識別番号と同一の識別番号を付与する。新たに出現した走行体については、新たな識別番号を付与する。
【0035】
また、環境認識部32は、自車両及び過去のデータが存在する走行体の各々について、x方向の速度vx及びy方向の速度vyの合成速度の絶対値の現時点の値VとZ秒前の値VT−Zとの増減から行動状態の変化を示す行動状態変化を算出する。本実施の形態では、行動状態変化を、加速、等速、及び減速とする。具体的には、VT−Z−V<εであれば加速、VT−Z−V>εであれば減速、その他を等速として行動状態変化を算出する。εは、例えば1m/sとすることができる。
【0036】
また、環境認識部32は、自車両及び選択されたN個の他の走行体の各々について算出した属性c、向きdir、位置(x,y)、速度(vx,vy)、加速度(ax,ay)、距離WL、曲率半径WRを用いて、現在のシーンにおける自車両ベクトル及び走行体ベクトルを生成する。例えば、図2に示すようなシーンQにおける自車両ベクトルは下記(1)式となる。
【0037】
シーンQの自車両ベクトル
=(S_c,S_x,S_y,S_vx,S_vy,S_ax,S_ay,S_dir,S_WR,S_WL,
OA_c,OA_x,OA_y,OA_vx,OA_vy,OA_ax,OA_ay,OA_dir,OA_WR,OA_WL,
OB_c,OB_x,OB_y,OB_vx,OB_vy,OB_ax,OB_ay,OB_dir,OB_WR,OB_WL)
・・・(1)
【0038】
ここで、自車両ベクトルは、自車両、自車両との距離が最も近い走行体、自車両との距離が次に近い走行体、・・・自車両との距離が最も遠い走行体の順に、各々の状況を示す値をベクトルの要素とする。また、他の走行体の走行体ベクトルは、自車両ベクトルと同一の値を用いて、要素の順番を他の走行体との距離が近い順に要素の順番を入れ換えることで生成することができる。シーンQにおける走行体Aの走行体ベクトルを下記(2)式に示す。
【0039】
シーンQの走行体Aの走行体ベクトル
=(OA_c,OA_x,OA_y,OA_vx,OA_vy,OA_ax,OA_ay,OA_dir,OA_WR,OA_WL,
OB_c,OB_x,OB_y,OB_vx,OB_vy,OB_ax,OB_ay,OB_dir,OB_WR,OB_WL,
S_c,S_x,S_y,S_vx,S_vy,S_ax,S_ay,S_dir,S_WR,S_WL)
・・・(2)
【0040】
シーンQにおける自車両ベクトル及び走行体ベクトルを上記のように生成することにより、自車両ベクトルでは、自車両を基準としたシーンQの状況を捉えることができ、走行体ベクトルでは、他の走行体を基準とした、すなわち他の走行体視点のシーンQの状況を捉えることができる。
【0041】
シーンベクトル記憶部34には、生成された自車両ベクトル、走行体ベクトル、及び算出された行動状態変化が記憶される。記憶する際には、自車両ベクトル及び走行体ベクトルと、その自車両ベクトル及び走行体ベクトルが生成された時刻(データが取得された時刻)のZ秒後の時刻に算出された行動状態変化とが対応するように記憶する。
【0042】
図3にシーンベクトル記憶部34に記憶された自車両ベクトル及び走行体ベクトル、並びに行動状態変化の一例を示す。図中の「ID」は自車両及び他の走行体に付与された固有の識別番号であり、自車両は、ID=0で固定である。また、図中の行動状態変化は、加速を「1」、等速を「0」、減速を「−1」で示している。また、自車両ベクトルにおける他の走行体の状況を示す要素は、選択されたN個の他の走行体について自車両との距離が近い順に「O1_」〜「ON_」としている。同様に、走行体ベクトルにおける自車両及びその他の他の走行体の状況を示す要素は、基準となる他の走行体を除いた(N−1)個の他の走行体及び自車両について基準となる他の走行体との距離が近い順に「O1_」〜「ON_」としている。走行体ベクトルにおいて、基準となる走行体は、「OS_」としている。また、データ取得の時間間隔dtは、例えば0.1秒とすることができる。
【0043】
学習部36は、さらに、自車両シーン分類部36aと走行体シーン分類部36bとを含んだ構成で表すことができる。
【0044】
自車両シーン分類部36aは、シーンベクトル記憶部34に記憶された自車両ベクトル及び対応して記憶された行動状態変化を学習用データとして学習して、自車両の行動状態の変化を予測するための自車両変化モデルを生成する。具体的には、図4に示すように、自車両ベクトルが投影されるベクトル空間の各軸を離散化してベクトル空間を所定領域に区分したブロック毎に、投影された自車両ベクトルに対応する行動状態変化(加速:AC、等速:CR、減速:DC)別のデータ数、及びその総数Mを計算し、行動状態変化別の割合(加速の割合:P_AC、等速の割合:P_CR、減速の割合:P_DC)を算出する。なお、シーンベクトル記憶部34に該当するデータが存在しない場合に対応するために、初期値として、CR=N(N>0、例えばN=1)、AC=DC=0のように定めておくことができる。離散化の基準をヘッダーとしたブロック毎の行動状態変化別の割合を自車両変化モデルとして、変化モデル記憶部38に記憶する。
【0045】
また、別の手法として、自車両ベクトル及び走行体ベクトルを用いたロジスティック回帰にて、以下の3グループを学習する。
i:ACとそれ以外とを2値化し(ACなら1、それ以外なら0)、これを回帰するモデルF1
ii:DCとそれ以外とを2値化し(DCなら1、それ以外なら0)、これを回帰するモデルF2
iii:CRとそれ以外とを2値化し(CRなら1、それ以外なら0)、これを回帰するモデルF3
【0046】
そして、F1、F2、F3を用いてベクトル空間の各軸を離散化して生成された仮想的な入力ベクトルを用いて、該当するブロック毎にF1、F2、F3の値 P_F1、P_F2、P_F3を算出し、AC、CR、DCの割合P_AC、P_CR、P_DCを以下の様に算定することができる。
P_AC=P_F1/(P_F1+P_F2+P_F3)
P_CR=P_F2/(P_F1+P_F2+P_F3)
P_DC=P_F3/(P_F1+P_F2+P_F3)
【0047】
走行体シーン分類部36bは、走行体ベクトルを用いて、自車両シーン分類部36aと同様の手法により、走行体変化モデルを生成して、変化モデル記憶部38に記憶する。図5に、自車両変化モデル及び走行体変化モデルの一例を示す。
【0048】
行動予測部40は、さらに自車両行動予測部40aと走行体行動予測部40bとを含んだ構成で表すことができる。
【0049】
自車両行動予測部40aは、環境認識部32で生成された現在の自車両ベクトルと、変化モデル記憶部38に記憶された自車両変化モデルとを照合して、Z秒後の自車両の行動状態の変化を予測する。例えば、図5に示す自車両変化モデルにおいて、自車両ベクトルがブロックAに該当する場合には、Z秒後の自車両の行動状態は、「加速」である場合が0%、「等速」である場合が80%、「減速」である場合が20%であると予測する。
【0050】
走行体行動予測部40bは、自車両行動予測部40aと同様の手法により、走行体ベクトルと走行体変化モデルとを照合して、Z秒後の他の走行体の行動状態の変化を予測する。例えば、図5に示す走行体変化モデルにおいて、走行体ベクトルがブロックCに該当する場合には、Z秒後の他の走行体の行動状態は、「加速」である場合が80%、「等速」である場合が20%、「減速」である場合が0%であると予測する。
【0051】
衝突判定部42は、自車両及び他の走行体の現在の走行状態、及び行動予測部40で予測されたZ秒後の行動状態の変化に基づいて、自車両及び他の走行体の軌跡を算出する。例えば、自車両について、現在の自車両の速度および加速度がZ秒間継続した後、Z秒後に行動状態変化(例えば、「加速」)が生じた場合の各時刻の予測位置を算定する。行動状態変化における加速は、例えば加速度1m/sの加速、減速は、例えば加速度−1m/sの減速として予め定めておく。また、他の走行体の場合には、行動状態変化における加速は、例えば加速度1m/sの加速、減速は、例えば加速度−2m/sの減速として、自車両の場合とは異なる値を定めておいてもよい。また、走行体の属性に応じて異なる値を定めておいてもよい。また、以下のように、Z秒経過後以降の加速度を算出してもよい。
【0052】
図6を参照して、S_vx+S_ax・s=0とした場合に、Z>s>0となるsが存在し、かつS_vy+S_ay・s=0となる場合、または、S_vy+S_ay・s=0とした場合に、Z>s>0となるsが存在し、かつS_vx+S_ax・s=0となる場合は、Zはsとして算定する。現在からZ秒まで
S_x’=S_x+S_vx・Z+0.5・S_ax・Z
S_y’=S_y+S_vy・Z+0.5・S_ay・Z
S_vx’=S_vx+S_ax・Z
S_vy’=S_vy+S_ay・Z
【0053】
減速の場合、tの上限は、[(S_vx’)+(S_vx’)0.5÷(−α)として、(Z+t)秒後の加速度を以下のように求める。
S_x”(t) =S_x’+S_vx’・t+0.5 ・azx ・t
S_y”(t) =S_y’+S_vy’・t+0.5 ・azy ・t
【0054】
また、衝突判定部42は、予測された行動状態変化毎に算出された自車両及び他の走行体の軌跡に基づいて、予測された行動状態変化別の割合が0%以外の行動状態変化の全組合せについて、自車両と他の走行体との相対距離を算出する。上記の図5の例の場合には、図7に示すように、(1)自車両の行動状態変化が「等速」、他の走行体の行動状態変化が「加速」の場合、(2)自車両の行動状態変化が「減速」、他の走行体の行動状態変化が「加速」の場合、(3)自車両の行動状態変化が「等速」、他の走行体の行動状態変化が「等速」の場合、(4)自車両の状態変化が「減速」、他の走行体の状態変化が「等速」の場合の4つの組合せが存在する。これら(1)〜(4)の組合せの各々についての自車両と他の走行体との相対距離の一例を図8に示す。
【0055】
現在時刻からZ秒後を経過した以降の時点において、算出された相対距離が閾値dcrよりも小さくなる組合せが存在した場合には、その組合せの自車両の行動状態の変化別の割合と他の走行体の行動状態変化別の割合とを乗算して、その組合せが発生する発生割合を算出し、その発生割合が所定の閾値(例えば、30%)より大きい場合に、自車両と他の走行体とが衝突する可能性があると判定して、警報装置22により警報が出力されるよう制御する。
【0056】
次に、図9を参照して、コンピュータ30で実行される衝突判定処理ルーチンについて説明する。
【0057】
ステップ100で、レーザレーダ12の測定データ、撮像装置14から出力された画像データ、GPS装置16から出力されたGPSデータ、車両センサ18で検出された検出値を取得する。
【0058】
次に、ステップ102で、GPSデータに基づいて、自車両の位置座標(S_x,S_y)を算出する。また、車両センサ18の車速センサ、加速度センサ、及びヨー角センサの検出値に基づいて、自車両の進行方向をX軸、X軸に直交する方向をY軸とするXY座標系を想定し、自車両の速度(S_vx,S_vy)、自車両の加速度(S_ax,S_ay)、自車両の向き(S_dir)を算出する。
【0059】
次に、ステップ104で、画像データを画像認識し、レーザレーダ12の測定値から自車両の周辺の物体を検出し、画像認識の結果及び物体検出の結果に基づいて、自車両の周辺に存在する他の走行体を抽出し、他の走行体リストを生成する。
【0060】
次に、ステップ106で、画像データを画像認識して、他の走行体リストに含まれる走行体の属性c(他車両、二輪車両、自転車、歩行者等)を識別する。また、画像認識の結果から、他の走行体の各々の向き(O_dir)を算出する。
【0061】
次に、ステップ108で、レーザレーダ12の測定データに基づいて、自車両と他の走行体の各々との相対距離を算出し、相対距離の微分値を自車両に対する他の走行体の各々の相対速度として算出し、相対速度の微分値を自車両に対する他の走行体の各々の相対加速度として算出する。
【0062】
次に、ステップ110で、上記ステップ102で算出された自車両の位置座標(S_x,S_y)、自車両の速度(S_vx,S_vy)、自車両の加速度(S_ax,S_ay)、上記ステップ108で算出された相対距離、相対速度、及び相対加速度に基づいて、他の走行体の位置座標(O_x,O_y)、他の走行体の速度(O_vx,O_vy)、及び他の走行体の加速度(O_ax,O_ay)を算出する。
【0063】
次に、ステップ112で、電子地図記憶装置20から地図情報を取得し、次に、ステップ114で、地図情報とGPSデータとを照合して、最近傍の走行可能なレーンや歩道等を認識し、自車両及び他の走行体の走行する走路の中央線を識別する。
【0064】
次に、ステップ116で、上記ステップ114で識別した自車両の進行方向走路の中央線をクロソイド曲線で近似した場合における所定距離(S_WL)先の曲率半径(S_WR)を算出する。同様に、他の走行体の進行方向走路の所定距離(O_WL)先の曲率半径(O_WR)を算出する。
【0065】
次に、ステップ118で、上記ステップ104で生成した他の走行体リストに含まれる他の走行体の中から、自車両との距離が近い順にN個の他の走行体を選択する。また、選択した他の走行体について、過去のデータを参照して既にデータが存在する走行体については、既に付与されている走行体固有の識別番号と同一の識別番号を付与する。新たに出現した走行体については、新たな識別番号を付与する。
【0066】
次に、ステップ120で、自車両及び過去のデータが存在する走行体の各々について、x方向の速度vx及びy方向の速度vyの合成速度の絶対値の現時点の値VとZ秒前の値VT−Zとの増減に基づいて、VT−Z−V<εであれば加速、VT−Z−V>εであれば減速、その他を等速として行動状態変化を算出する。
【0067】
次に、ステップ122で、自車両及び選択されたN個の他の走行体の各々について算出した属性c、向きdir、位置(x,y)、速度(vx,vy)、加速度(ax,ay)、距離WL、曲率半径WRを用いて、例えば、上記(1)式に示すような、現在のシーンQにおける自車両ベクトル、上記(2)式に示すような、現在のシーンQにおける走行体ベクトルを生成する。なお、上記(2)式では、走行体Aの走行体ベクトルを示しているが、その他の他の走行体についても、同様に走行体ベクトルを算出する。そして、後述する学習処理のために、生成した自車両ベクトル及び走行体ベクトルの各々と、その自車両ベクトル及び走行体ベクトルの各々が生成された時刻(データが取得された時刻)のZ秒後の時刻に算出された行動状態変化とを対応させて、シーンベクトル記憶部34に記憶する。
【0068】
次に、ステップ124で、上記ステップ122で生成された現在の自車両ベクトルと、変化モデル記憶部38に記憶された自車両変化モデルとを照合して、Z秒後の自車両の行動状態変化別の割合を予測する。同様に、走行体ベクトルの各々と走行体変化モデルとを照合して、Z秒後の他の走行体の各々の行動状態変化別の割合を予測する。
【0069】
次に、ステップ126で、自車両及び他の走行体の各々の現在の走行状態、及び上記ステップ124で予測されたZ秒後の行動状態変化別の割合に基づいて、予測された行動状態変化毎に自車両及び他の走行体の各々の軌跡を算出し、予測された行動状態変化別の割合が0%以外の行動状態変化の全組合せについて、自車両と他の走行体の各々との相対距離di(iは組合せ毎の識別番号、図7の例では(1)〜(4))を算出する。
【0070】
次に、ステップ128で、相対距離diが閾値dcrよりも小さくなる組合せiが存在するか否かを判定する。存在する場合には、ステップ130へ移行し、組合せiの自車両の行動状態変化別の割合と他の走行体の行動状態変化別の割合とを乗算して発生割合を算出し、その発生割合が所定の閾値より大きいか否かを判定する。発生割合が閾値より大きい場合には、ステップ132へ移行して、自車両と他の走行体とが衝突する可能性があるとして、警報装置22により警報が出力されるよう制御して、処理を終了する。
【0071】
一方、上記ステップ128で、d≧dcrと判定された場合、及び上記ステップ130で、発生割合が閾値以下と判定された場合には、そのまま処理を終了する。
【0072】
次に、図10を参照して、コンピュータ30で実行される学習処理ルーチンについて説明する。
【0073】
ステップ200で、シーンベクトル記憶部34から自車両ベクトル及び対応して記憶された行動状態変化を学習用データとして読み出す。
【0074】
次に、ステップ202で、自車両ベクトルが投影されるベクトル空間の各軸を離散化してベクトル空間を所定領域に区分したブロック毎に、投影された自車両ベクトルに対応する行動状態変化(加速:AC、等速:CR、減速:DC)別のデータ数、及びその総数Mを計算し、行動状態変化別の割合(加速の割合:P_AC、等速の割合:P_CR、減速の割合:P_DC)を算出する。
【0075】
次に、ステップ204で、離散化の基準をヘッダーとしたブロック毎の行動状態変化別の割合を自車両変化モデルとして、変化モデル記憶部38に記憶する。
【0076】
次に、ステップ206で、シーンベクトル記憶部34から走行体ベクトル及び対応して記憶された行動状態変化を学習用データとして読み出し、次に、ステップ208及び210で、上記ステップ202及び204と同様に処理して、走行体変化モデルを生成して、変化モデル記憶部38に記憶して、処理を終了する。
【0077】
本ルーチンを所定時間毎に実行して、所定時間内にシーンベクトル記憶部34に新たに記憶されたデータを、前回の処理時点でのブロック毎のデータ数に加算して、ブロック毎の行動状態変化別の割合を算出することで、自車両変化モデル及び走行体変化モデルの各々を更新する。
【0078】
以上説明したように、本実施の形態の運転支援装置によれば、自車両の状況及び自車両を基準とした他の走行体の状況を示す自車両ベクトルだけでなく、他の走行体の状況及び他の走行体を基準とした自車両及びその他の他の走行体の状況を示す走行体ベクトルも算出して、他の走行体の所定時間後の行動状態の変化も予測するため、他の走行体視点の状況も考慮した精度の高い衝突判定を行うことができる。
【0079】
なお、上記実施の形態では、自車両ベクトル及び走行体ベクトルの要素として、自車両及び他の走行体の属性、向き、位置、速度、加速度、進行方向の所定距離、及び進行方向の所定距離先の曲率半径を用いる場合について説明したが、これら全てを要素として含む必要はなく、自車両ベクトルについては、少なくとも、向き、位置、速度、加速度を含み、走行体ベクトルについては、少なくとも、向き、位置、速度を含むものであればよい。
【0080】
また、上記実施の形態では、自車両ベクトルに含まれる要素の順番を、自車両との距離が近い順に所定個(N個)とし、走行体ベクトルに含まれる要素の順番を、他の走行体との距離が近い順に所定個(N個)とする場合について説明したが、自車両または他の走行体の属性に基づいた優先順位順(例えば、車両、二輪車両、自転車、歩行者の順)としたり、自車両または他の走行体との相対速度が大きい順としたりしてもよい。なお、現在のシーンにおいて、他の走行体の個数がN個に満たない場合は、対応する全値を0としたり、予め定めた値としたりしてもよい。
【0081】
また、上記実施の形態では、自車両変化モデル及び走行体変化モデルを、行動状態変化別の割合で定めた場合について説明したが、1つの自車両ベクトル及び走行体ベクトルに対して1つの行動状態変化を予測するような自車両変化モデル及び走行体変化モデルとしてもよい。
【0082】
また、上記実施の形態では、実際に検出された自車両及び他の走行体の状況を用いて自車両変化モデル及び走行体変化モデルを生成及び更新する場合について説明したが、車車間通信等により、他車両で検出されたデータを取得して、このデータもあわせて用いて自車両変化モデル及び走行体変化モデルを生成及び更新するようにしてもよいし、更新処理は行わず、予め実験走行等により検出したデータを用いて生成した自車両変化モデル及び走行体変化モデルを用いるようにしてもよい。
【0083】
また、上記実施の形態では、予測される自車両と他の走行体との相対距離が閾値より小さい組合せの自車両の行動状態変化の割合と他の走行体の行動状態変化の割合とを乗算した発生割合が閾値より大きいか否かにより衝突の可能性を判定する場合について説明したが、相対距離が閾値より小さい組合せが存在する場合には、衝突の可能性ありと判定し、その組合せの発生割合を判定結果として出力するようにしてもよい。
【0084】
また、上記実施の形態では、衝突の可能性ありと判定された場合に、警報を出力する場合について説明したが、予測された相対距離に基づいて、衝突を回避するように車両運動を制御するようにしてもよい。また、撮像装置で撮像された画像上の衝突の可能性がある他の走行体をウインドウで囲むなどの表示を行うことにより、警報を表示するようにしてもよい。
【0085】
また、上記実施の形態では、レーザレーダを用いる場合について説明したが、ミリ波レーダ等を用いてもよい。
【0086】
また、上記実施の形態では、地図情報を外部から取得する場合について説明したが、本装置のコンピュータに地図情報を記憶しておくようにしてもよい。
【符号の説明】
【0087】
10 運転支援装置
12 レーザレーダ
14 撮像装置
16 GPS装置
18 車両センサ
20 電子地図記憶装置
22 警報装置
30 コンピュータ
32 環境認識部
32a 可動物識別部
32b 走路識別部
34 シーンベクトル記憶部
36 学習部
36a 自車両シーン分類部
36b 走行体シーン分類部
38 変化モデル記憶部
40 行動予測部
40a 自車両行動予測部
40b 走行体行動予測部
42 衝突判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の走行状態及び自車両周辺に存在する他の走行体の走行状態を含む走行環境を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された自車両の走行状態及び走行環境に基づいて、前記自車両の現在の状況及び該自車両を基準とした他の走行体の状況を示す自車両ベクトルを算出すると共に、前記他の走行体の現在の状況及び該他の走行体を基準とした自車両の状況を示す走行体ベクトルを算出するベクトル算出手段と、
前記ベクトル算出手段により算出された自車両ベクトルと、複数の学習用自車両ベクトルの各々と所定時間後の自車両の行動状態の変化とを対応させた自車両変化モデルとに基づいて、前記所定時間後の自車両の行動状態の変化を予測すると共に、前記ベクトル算出手段により算出された走行体ベクトルと、複数の学習用走行体ベクトルの各々と前記所定時間後の他の走行体の行動状態の変化とを対応させた走行体変化モデルとに基づいて、前記所定時間後の他の走行体の行動状態の変化を予測する予測手段と、
前記取得手段により取得された前記自車両の走行状態及び走行環境、並びに前記予測手段により予測された前記所定時間後の自車両の行動状態の変化及び前記所定時間後の他の走行体の行動状態の変化に基づいて、前記所定時間経過以降の前記自車両と前記他の走行体との相対距離を推定し、推定した前記相対距離に基づいて、前記自車両と前記他の走行体との衝突の可能性を判定する判定手段と、
を含む運転支援装置。
【請求項2】
前記ベクトル算出手段は、前記自車両の状況として、少なくとも自車両の位置、速度、加速度、及び向きを含み、前記他の走行体の状況として、少なくとも他の走行体の位置、速度、及び向きを含んだ前記自車両ベクトル及び前記走行体ベクトルを算出する請求項1記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記取得手段は、走行環境として前記自車両及び前記他の走行体が存在する走路の形状を取得し、
前記ベクトル算出手段は、前記自車両の状況として、さらに自車両の進行方向の所定距離先の走路の曲率半径を含み、前記他の走行体の状況として、さらに他の走行体の進行方向の所定距離先の走路の曲率半径を含んだ前記自車両ベクトル及び前記走行体ベクトルを算出する
請求項2記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記ベクトル算出手段は、前記自車両周辺に存在する他の走行体が複数存在する場合には、所定個の他の走行体を選択し、前記自車両の現在の状況及び該自車両を基準とした選択された他の走行体の各々の状況を示す自車両ベクトルを算出すると共に、選択された他の走行体の各々について、前記選択された他の走行体の現在の状況及び該他の走行体を基準とした自車両の状況及びその他の選択された他の走行体の各々の状況を示す走行体ベクトルを算出する請求項1〜請求項3のいずれか1項記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記ベクトル算出手段は、前記自車両と前記選択された他の走行体の各々との距離が近い順に前記自車両ベクトル及び前記走行体ベクトルの要素とする請求項4記載の運転支援装置。
【請求項6】
前記自車両変化モデルを、前記自車両ベクトルが投影されるベクトル空間を複数に区分した各々の領域内での行動状態の変化別の割合で定め、前記走行体変化モデルを、前記走行体ベクトルが投影されるベクトル空間を複数に区分した各々の領域内での行動状態の変化別の割合で定めた請求項1〜請求項5のいずれか1項記載の運転支援装置。
【請求項7】
前記予測手段は、前記所定時間後の自車両の行動状態の変化別の割合を予測すると共に、前記所定時間後の他の走行体の行動状態の変化別の割合を予測し、
前記判定手段は、自車両の行動状態の変化と他の走行体の行動状態の変化との組合せの各々について前記相対距離を推定し、前記相対距離が予め定めた閾値距離より小さくなる組合せの前記自車両の行動状態の変化別の割合と前記他の走行体の行動状態の変化別の割合とを乗算した発生割合に基づいて、前記自車両と前記他の走行体との衝突の可能性を判定する
請求項6記載の運転支援装置。
【請求項8】
前記行動状態の変化を、加速、等速、及び減速とした請求項1〜請求項7のいずれか1項記載の運転支援装置。
【請求項9】
前記取得手段で取得された自車両の走行状態及び走行環境の履歴に基づいて、前記所定時間後の自車両の行動状態の変化、及び前記所定時間後の他の走行体の行動状態の変化を算出する変化算出手段と、
前記ベクトル算出手段により算出された前記自車両ベクトルと前記変化算出手段により算出された前記所定時間後の自車両の行動状態の変化との対応に基づいて、前記自車両変化モデルを更新すると共に、前記ベクトル算出手段により算出された前記走行体ベクトルと前記変化算出手段により算出された前記所定時間後の他の走行体の行動状態の変化との対応に基づいて、前記走行体変化モデルを更新する更新手段と、
を含む請求項1〜請求項8のいずれか1項記載の運転支援装置。
【請求項10】
前記他の走行体は、他車両、二輪車両、自転車、及び歩行者を含む請求項1〜請求項9のいずれか1項記載の運転支援装置。
【請求項11】
コンピュータを、
自車両の走行状態及び自車両周辺に存在する他の走行体の走行状態を含む走行環境を取得する取得手段、
前記取得手段により取得された自車両の走行状態及び走行環境に基づいて、前記自車両の現在の状況及び該自車両を基準とした他の走行体の状況を示す自車両ベクトルを算出すると共に、前記他の走行体の現在の状況及び該他の走行体を基準とした自車両の状況を示す走行体ベクトルを算出するベクトル算出手段、
前記ベクトル算出手段により算出された自車両ベクトルと、複数の学習用自車両ベクトルの各々と所定時間後の自車両の行動状態の変化とを対応させた自車両変化モデルとに基づいて、前記所定時間後の自車両の行動状態の変化を予測すると共に、前記ベクトル算出手段により算出された走行体ベクトルと、複数の学習用走行体ベクトルの各々と前記所定時間後の他の走行体の行動状態の変化とを対応させた走行体変化モデルとに基づいて、前記所定時間後の他の走行体の行動状態の変化を予測する予測手段、及び
前記取得手段により取得された前記自車両の走行状態及び走行環境、並びに前記予測手段により予測された前記所定時間後の自車両の行動状態の変化及び前記所定時間後の他の走行体の行動状態の変化に基づいて、前記所定時間経過以降の前記自車両と前記他の走行体との相対距離を推定し、推定した前記相対距離に基づいて、前記自車両と前記他の走行体との衝突の可能性を判定する判定手段
として機能させるための運転支援プログラム。
【請求項12】
コンピュータを、請求項1〜請求項10のいずれか1項記載の運転支援装置を構成する各手段として機能させるための運転支援プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−191894(P2011−191894A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−56031(P2010−56031)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】