説明

運転支援装置

【課題】車両の運転者が提供された情報に過剰な期待をすることを抑制する。
【解決手段】運転支援装置(10)は、車両(1)に搭載され、路上に設置された路側器(201、202)から所定範囲内で通信可能な第1通信手段(104)と、前記車両とは異なる他の車両に搭載された車載器と通信可能な第2通信手段(104)と、第1通信手段又は第2通信手段により取得された情報を前記車両の運転者に報知可能な報知手段(106、114)と、第1通信手段により情報が取得された時点より前の所定期間内に、第2通信手段により情報が取得されたことを条件に、運転者に対する報知方法を変更するように報知手段を制御する制御手段(109)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば安全運転支援システムにおいて、運転者に情報を提供する運転支援装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置では、例えば、路上に設置された、例えば光ビーコン等のスポット通信型路側機と通信することによって情報を取得すること、他の車両に搭載された装置と通信することによって情報を取得することが可能である。
【0003】
この種の装置として、例えば、光ビーコンとの通信可能領域を通過した直後に、路上に設置され所定の信号を送信する送信機からの信号を受信し、送信機との時刻を疑似的に同期させた後に、受信した信号に基づいて自車位置を特定する装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−031241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、運転者にとって、提供された情報が、スポット通信型路側機と通信することによって得られた情報であるか、連続通信型路側器(又は他の車両に搭載された装置)と通信することによって得られた情報であるか、を認識することは困難である。すると、運転者が提供された情報に過剰な期待をしてしまう可能性があるという技術的問題点がある。特許文献1に記載された技術では、該問題点を解決することは極めて困難であるという技術的問題点がある。
【0006】
本発明は、例えば上記問題点に鑑みてなされたものであり、運転者が提供された情報に過剰な期待をすることを抑制することができる運転支援装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の運転支援装置は、上記課題を解決するために、車両に搭載され、路上に設置された路側器から所定範囲内で通信可能な第1通信手段と、前記車両とは異なる他の車両に搭載された車載器と通信可能な第2通信手段と、前記第1通信手段又は前記第2通信手段により取得された情報を前記車両の運転者に報知可能な報知手段と、前記第1通信手段により情報が取得された時点より前の所定期間内に、前記第2通信手段により情報が取得されたことを条件に、前記運転者に対する報知方法を変更するように前記報知手段を制御する制御手段とを備える。
【0008】
本発明の運転支援装置によれば、当該運転支援装置は、例えば自動車等の車両に搭載されている。第1通信手段は、路上に設置された、例えば光ビーコンであるスポット型路側器と、該路側器から所定範囲内で通信可能である。第2通信手段は、当該運転支援装置が搭載されている車両とは異なる連続通信型路側器(又は他の車両に搭載された、例えば電波メディア等である車載器)と通信可能である。
【0009】
例えばスピーカ、モニタ等の報知手段は、第1通信手段又は第2通信手段により取得された情報を車両の運転者に報知可能である。例えばメモリ、プロセッサ等を備えてなる制御手段は、第1通信手段により情報が取得された時点より前の所定期間内に、第2通信手段により情報が取得されたことを条件に、運転者に対する報知方法を変更するように報知手段を制御する。
【0010】
ここで、「所定期間」とは、運転者に対する報知方法を変更するように報知手段を制御するか否かを決定する期間であり、予め固定値として、又は何らかのパラメータに応じた可変値として定められている期間である。このような所定期間は、実験的若しくは経験的に、又はシミュレーションによって、例えば、一の報知方法に起因する印象が運転者に残っている期間を求めて、該求められた期間として、或いは該求められた期間より大なり小なり長い期間として設定すればよい。
【0011】
本願発明者の研究によれば、以下の事項が判明している。第1通信手段は、路上の所定領域内において路側器と通信可能である。このため、例えば、当該運転支援装置を備える車両が交差点を右折しようとする際、該車両が所定領域内を走行中に対向車両が存在する場合にのみ、対向車両が存在する旨の情報が運転者に報知される。他方、第2通信手段は、例えば他の車両に搭載された車載器からの電波が届く範囲内において該車載器と通信可能である。このため、当該運転支援装置を備える車両が交差点を右折しようとする際、該車両が、他の車両に搭載された車載器からの電波が届く範囲内を走行中であれば、該車両が交差点を右折するまで、対向車両が存在する旨の情報が運転者に報知される。
【0012】
ところで、上述の如く、第1通信手段により取得される情報と、第2通信手段により取得される情報とは類似している。このため、運転者が、報知された情報は、第1通信手段により取得されたのか、第2通信手段により取得されたのかを認識することは困難である。すると、例えば第2通信手段により取得された情報が報知されることに慣れた運転者は、仮に第1通信手段により取得された情報が報知された場合であっても、報知された情報に過剰な期待をしてしまう可能性がある。
【0013】
しかるに本発明では、制御手段により、第1通信手段により情報が取得された時点より前の所定期間内に、第2通信手段により情報が取得されたことを条件に、運転者に対する報知方法を変更するように報知手段が制御される。即ち、本発明では、報知方法を変更することにより、報知された情報の取得経路(即ち、第1通信手段により取得された情報であるか、第2通信手段により取得された情報であるか)の違いを運転者に認識させている。従って、本発明の運転支援装置によれば、運転者が提供された情報に過剰な期待をすることを抑制することができる。
【0014】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る車両の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係る車両の走行状態の一例を示す説明図である。
【図3】本発明の実施形態に係るECUが実行する報知処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る運転支援装置の実施形態について、図1乃至図3を参照して説明する。
【0017】
先ず、本実施形態に係る運転支援装置が搭載される車両の構成について、図1を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る車両の構成を示すブロック図である。尚、図1では、説明の便宜上、本実施形態に直接関係のある部材のみ図示しており、他の部材については図示を省略している。
【0018】
図1において、車両1は、GPS(Global Positioning System)101、前方カメラ102、ミリ波レーダ103、インフラ通信装置104、車速センサ105、ディスプレイ106、ACC(Adaptive Cruise Control)スイッチ107、PCS(Pre−Crash Safety)スイッチ108、ECU(Electronic Control Unit)109、地図情報データベース(DB)110、カーナビゲーション111、ブレーキアクチュエータ112、アクセルアクチュエータ113及びスピーカ114を備えて構成されている。
【0019】
GPS101は、GPS衛星からの信号を受信して、当該車両1の現在位置を特定する。ミリ波レーダ103は、ミリ波を出射すると共に、対象物(例えば、前方車両等)により反射された電波を受信し、伝播時間やドップラー効果に起因して生じる周波数差等を基に、対象物の位置や当該車両1との相対速度を測定する。ACCスイッチ107及びPCSスイッチ108は、当該車両1の運転者により夫々ON状態にされることによって、ACC機能及びPCS機能を有効にする。
【0020】
本実施形態に係る運転支援装置10は、車両1に搭載され、路上に設置された光ビーコン(図示せず)と通信可能であり、かつ、当該車両1とは異なる他の車両に搭載された車載器(図示せず)と通信可能なインフラ通信装置104と、光ビーコン又は他の車両に搭載された車載器から取得した情報を当該車両1の運転者に報知可能なディスプレイ106及びスピーカ114と、光ビーコンから情報が取得された時点より前の所定期間内に、他の車両に搭載された車載器から情報が取得されたことを条件に、運転者に対する報知方法を変更するようにディスプレイ106及びスピーカ114を制御するECU109とを備えて構成されている。
【0021】
本実施形態に係る「インフラ通信装置104」は、本発明に係る「第1通信手段」及び「第2通信手段」の一例である。本実施形態に係る「ディスプレイ106」及び「スピーカ114」は、本発明に係る「報知手段」の一例である。本実施形態に係る「ECU109」及び「光ビーコン」は、夫々、本発明に係る「制御手段」及び「路側器」の一例である。本実施形態では、各種電子制御用のECU109の一部を、運転支援装置10の一部として用いている。
【0022】
尚、「当該車両1とは異なる他の車両に搭載された車載器と通信」とは、「車車間通信」を意味する。ここで、本実施形態に係る「車車間通信」は、770MHz帯の電波を利用する通信である。
【0023】
次に、本実施形態に係る運転支援装置10の動作について、図2を参照して説明する。図2は、本実施形態に係る車両の走行状態の一例を示す説明図である。尚、図2において、車両1は、図の下側から上側に向かって走行しているものとする。
【0024】
車両1が、時刻t1において、対向車両である車両2との間の車車間通信を利用した右折支援を受けて交差点c1を右折した後に、時刻t2において、路上に設置された光ビーコン201との間の通信(即ち、路車間通信)を利用した右折支援を受けて交差点c2を右折すると仮定する。
【0025】
この場合、車両1が交差点c1を右折する際、車両1の運転者には、車両1が交差点c1を通過するまで随時情報が提供される。他方、車両1が交差点c2を右折する際、車両1の運転者には、車両1が光ビーコン201と通信可能な所定領域を通過した時のみ情報が提供される。
【0026】
ここで、時刻t1と時刻t2との間が比較的短い場合(例えば、一の報知方法に起因する印象が運転者に残っている程度に短い期間である場合)、車両1の運転者は、交差点c2においても、車両1が交差点c2を通過するまで情報が提供されると期待する可能性がある。
【0027】
そこで、本実施形態に係る運転支援装置10では、光ビーコン201を介して情報が提供された時点より前の所定期間内に、車車間通信を介して情報が提供されたことを条件に、車両1の運転者に対する報知方法が変更される。具体的には例えば、運転支援装置10は、車車間通信を介して情報が提供された際には、警告音により車両1の運転者に報知し、光ビーコン201を介して情報が提供された際には、例えば「対向車両にご注意ください」等の音声により車両1の運転者に報知する。
【0028】
これにより、車両1の運転者が、車車間通信を介した情報であるのか、光ビーコン201を介した情報であるのかを認識することができる。この結果、車両1の運転者が、提供された情報に過剰な期待をすることを抑制することができる。
【0029】
次に、以上のように構成された運転支援装置10を搭載する車両1の主に走行中に、ECU109が実行する報知処理について、図3のフローチャートを用いて説明する。
【0030】
図3において、先ず、ECU109は、インフラ通信装置104を介して、光ビーコン201からの情報を受信する(ステップS101)。続いて、ECU109は、右折支援システムが実施可能か否かを判定する(ステップS102)。ここで、右折支援システムが実行可能か否かは、例えば、他車両の位置情報を取得しているか、停止線までの距離が一定以上であるか、当該車両1の車速が一定値以下であるか、等に基づいて判定すればよい。
【0031】
右折支援システムが実施不能であると判定された場合(ステップS102:No)、一旦処理を終了する。他方、右折支援システムが実施可能であると判定された場合(ステップS102:Yes)、ECU109は、一定期間内(又は、一定エリア内)に電波メディアを利用した(即ち、車車間通信を利用した)右折支援を提供されたか否かを判定する(ステップS103)。尚、電波メディアを利用した右折支援を提供されたか否かを判定する際、実際に右折支援を提供されたか否かを考慮してもよい(即ち、電波メディアを利用した右折支援を提供可能なエリアを単に通過した場合は除外されてもよい)。
【0032】
一定期間内に電波メディアを利用した右折支援を提供されたと判定された場合(ステップS103:Yes)、ECU109は、対向直進車両があるか否かを判定する(ステップS104)。ここで、対向直進車両があるか否かは、上記ステップS101において受信した情報に、例えば光ビーコン202により対向車両である車両3が検知された旨の情報が含まれているか否かを判定して、判定すればよい。
【0033】
対向直進車両があると判定された場合(ステップS104:Yes)、ECU109は、スピーカ114を介して、例えば「対向車両にご注意ください」という音声を出力する(ステップS105)。ECU109は、更に、例えばサービス提供区間及び時間、利用しているインフラ情報等を、ディスプレイ106上に表示してもよい。或いは、ECU109は、カーナビゲーションに係る画面を静止画像とするようにカーナビゲーション111を制御してもよい。
【0034】
対向直進車両がないと判定された場合(ステップS104:No)、ECU109は、右折支援システムのサービス終了条件が成立したか否かを判定する(ステップS108)。サービス終了条件が成立したと判定された場合(ステップS108:Yes)、ECU109は、サービスが終了した旨を、スピーカ114又はディスプレイ106を介して、当該車両1の運転者に通知する(ステップS109)。他方、サービス終了条件が不成立であると判定された場合(ステップS108:No)、ECU109は、ステップS104の処理を実行する。
【0035】
ステップS103の処理において、一定期間内に電波メディアを利用した右折支援を提供されていないと判定された場合(ステップS103:No)、ECU109は、対向直進車両があるか否かを判定する(ステップS106)。対向直進車両があると判定された場合(ステップS106:Yes)、ECU109は、スピーカ114を介して警告音を出力する(ステップS107)。他方、対向直進車両がないと判定された場合(ステップS106:No)、一旦処理を終了する。
【0036】
尚、上述した運転者に対する報知方法の変更は、類似の道路環境(例えば、対象交差点の、侵入車線数、侵入道路幅、退出車線数、退出道路幅等が類似している場合)に限って実施してもよい。
【0037】
尚、本発明に係る運転支援装置10は、上述の右折支援システムに加えて、例えば赤信号見落とし防止支援システム、発信遅れ防止支援システム等、光ビーコン及び電波メディア(即ち、車車間通信)を利用したシステムに適用可能である。ここで、「赤信号見落とし防止支援システム」とは、赤信号に侵入すると思われる車両の運転者に対し注意喚起を実施するシステムである。また、「発信遅れ防止支援システム」とは、赤信号で停止した車両の運転者に対し、おおよその待ち時間を通知するシステムである。
【0038】
尚、本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨、或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う運転支援装置もまた、本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0039】
1、2、3、…車両、10…運転支援装置、104…インフラ通信装置、106…ディスプレイ、109…ECU、114…スピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、
路上に設置された路側器から所定範囲内で通信可能な第1通信手段と、
前記車両とは異なる他の車両に搭載された車載器と通信可能な第2通信手段と、
前記第1通信手段又は前記第2通信手段により取得された情報を前記車両の運転者に報知可能な報知手段と、
前記第1通信手段により情報が取得された時点より前の所定期間内に、前記第2通信手段により情報が取得されたことを条件に、前記運転者に対する報知方法を変更するように前記報知手段を制御する制御手段と
を備えることを特徴とする運転支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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