説明

過流防止弁装置

【課題】 気体である圧縮性流体の一次圧力P1が平常時に低下しても、一次ポート15および二次ポート16を連通する流路を開状態に保ち、一次ポート15から流入する圧縮性流体の流量が、管路の破損によって、過大な予め定める流量以上になった異常時、閉状態に切り換える。
【解決手段】 前記流路に介在される可変絞り弁部12は、一次圧力P1が低くなるにつれてピストン21がばね部材22のばね力によって貫通孔26の開度を大きく変化させ、圧縮性流体の流量が一定なら、可変絞り弁部12における一次ポート15側の圧力P1と二次ポート16側の連通路18の圧力P1’との差圧ΔPが、一定に保たれ、この差圧ΔPは流量が増大すれば大きくなる。可変絞り弁部12よりも下流の過流防止弁部13では、前記差圧ΔPが予め定める設定差圧以上になったとき、一次圧力P1によって過流ピストン34が過流ばね部材35のばね力に抗して、前記流路を閉状態に瞬時に切り換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路を流過する気体である圧縮性流体が、予め定める流量以上となったときに流路を開状態から閉状態にする過流防止弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図14は、従来技術である過流防止弁装置1を示す断面図である。過流防止弁1に一次ポート2から流体が流入し、矢符3に示すように、弁体4に形成される孔5から有底円筒状の弁体4の内空間に流入して、二次ポート6から流出する。弁体4は、孔5に流入しようとする流体の圧力を損失させるような固定絞りとしても機能するように形成される。このような固定絞りによる圧力損失によって、一次ポート2から流入する流体の圧力である一次圧力p1よりも、二次ポート6から流出する流体の圧力である二次圧力p2が低くなって、一次圧力p1と二次圧力p2との間に差圧が生じる。
【0003】
一次ポート2から流入する流体の流量が予め定める設定流量以上になると、前記差圧が予め設定される設定差圧以上になり、弁体4に軸線方向一方W1に与えられる一次圧力p1に基づく駆動力が、弁体4に軸線方向他方W2に与えられる二次圧力p2に基づく駆動力と、ばね部材7からのばね力との合力よりも大きくなる。これによって弁体4は、軸線方向一方W1に変位して、孔5が閉じて、一次ポート2と二次ポート6との接続状態が閉状態となる(たとえば特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平8−109974号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図15は、流体が圧縮性流体である場合の固定絞りにおける一次圧力と圧力損失との関係を示すグラフである。前述の従来技術の過流防止弁装置1のような固定絞りにおいて、流体が気体である圧縮性流体の場合、一般的に、図15の曲線Laに示すように、一次圧力が高くなるにつれて圧力損失が小さくなる。このように固定絞りでは、一次圧力の変動による圧力損失の変動が生じる。
【0006】
図16は、流体が圧縮性流体である場合の過流防止弁装置1の一次圧力p1とトリップ流量qtとの関係を示すグラフである。従来の過流防止弁装置1では、流体が圧縮性流体である場合、前述のように一次圧力が高くなるにつれて、固定絞りにおける圧力損失が小さくなる。圧力損失が小さくなると、一次圧力p1と二次圧力p2との差圧が小さくなる。したがって一次圧力p1が高くなると、図16の曲線Lbに示すように、過流防止弁装置1の弁体4が差圧によって軸線方向一方W1に変位して、一次ポート2と二次ポート6との接続状態を閉状態にするときの流量であるトリップ流量qtが大きくなる。このように前記過流防止弁装置1では、一次圧力p1の変動によるトリップ流量qtの変動が生じる。
【0007】
たとえば一次圧力p1が変動して高くなり、トリップ流量qtが設定流量よりも大きくなってしまうと、一次ポート2から流入する流体の流量が設定流量以上になっても、一次ポート2と二次ポート6との接続状態が閉状態にならなくなり、二次ポート6から設定流量よりも大きな流量の流体が流出する危険性がある。
【0008】
一次圧力p1が広範囲に変動する場合、設定流量または前記設定流量付近の流量の流体を二次ポート6から流出させないように、一次ポート2と二次ポート6との接続状態を閉状態にすることが困難となる。
【0009】
したがって本発明の目的は、一次ポートから流入する圧縮性流体の圧力である一次圧力が変動しても、一次ポートから流入する圧縮性流体の流量が予め定める設定流量以上になると、一次ポートおよび二次ポートを連通する流路を開状態から閉状態に確実に切り換えることができる過流防止弁装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の本発明は、(a)圧縮性流体が供給される一次ポート(15)と、連通路(18)との間に、可変絞り弁部(12,12A〜12E)が設けられ、
(b)前記連通路(18)と、二次ポート(16)との間に、過流防止弁部(13)が設けられ、
(c)前記可変絞り弁部(12,12A〜12E)は、
(c1)ピストン(21,21A〜21E)であって、
軸線(L21,L21A〜L21E)に沿って開度調整方向一方(H1)と開度調整方向他方(H2)とに変位自在に保持され、
前記開度調整方向他方(H2)にあるピストン(21,21A〜21E)の軸線(L21,L21A〜L21E)方向の一端部(23,23A〜23E)は、一次ポート(15)に臨み、そのピストン(21,21A〜21E)の一端部(23,23A〜23E)から軸線(L21,L21A〜L21E)方向に沿って貫通路(25,25A〜25E)が形成され、
ピストン(21,21A〜21E)の一端部(23,23A〜23E)には、貫通路(25,25A〜25E)と前記連通路(18)とに臨んで開口する貫通孔(26,26A〜26E)が形成され、
ピストン(21,21A〜21E)が前記開度調整方向一方(H1)に変位するにつれて、前記貫通孔(26,26A〜26E)の前記連通孔(18)に対する開口面積が小さくなり、ピストン(21,21A〜21E)が前記開度調整方向他方(H2)に変位するにつれて前記開口面積が大きくなることによって、可変絞りを実現するピストン(21,21A〜21E)と、
(c2)ピストン(21,21A〜21E)に、前記開度調整方向他方(H2)のばね力を与えるばね部材(22,22A〜22E)とを有し、
(c3)一次圧力P1が高くなるにつれて開度を小さくし、一次圧力P1が低くなるにつれて開度を大きくする可変絞り弁部(12,12A〜12E)であり、
(d)前記過流防止弁部(13)は、
(d1)過流ピストン(34)であって、
軸線(L34)に沿って軸線方向一方(R1)と軸線方向他方(R2)とに変位自在に保持され、
前記軸線方向一方(R1)にある過流ピストン(34)の一端部(39)は、一次ポート(15)に臨み、
前記軸線方向他方(R2)にある過流ピストン(34)の他端部(43)は、前記連通路(18)に臨み、
過流ピストン(34)が前記軸線方向一方(R1)に変位して前記連通路(18)と二次ポート(16)との流路を開状態とし、
過流ピストン(34)が前記軸線方向他方(R2)に変位して前記連通路(18)と二次ポート(16)との流路を閉状態とする過流ピストン(34)と、
(d2)過流ピストン(34)に、前記軸線方向一方(R1)のばね力を与える過流ばね部材(35)とを有し、
(d3)一次ポート(15)と前記連通路(18)との差圧ΔPが、予め定める設定差圧以上になったとき、過流ピストン(34)によって前記流路を開状態から閉状態に切り換える過流防止弁部(13)とを含むことを特徴とする過流防止弁装置である。
【0011】
本発明に従えば、一次ポートおよび二次ポートを連通する流路に介在される可変絞り弁部は、一次ポートから流入する気体である圧縮性流体の圧力である一次圧力が高くなるにつれて、開度を小さくする。また可変絞り弁部は、一次圧力が低くなるにつれて、開度を大きくする。従来技術の過流防止弁のような固定絞りでは、流体が圧縮性流体である場合、一次圧力が高くなるにつれて圧力損失すなわち差圧が小さくなるという特性がある。このような固定絞りでは、一次圧力が高くなるにつれて、一次ポート側の圧力すなわち一次圧力と固定絞りにおける二次ポート側の圧力との差圧が小さくなるので、前記差圧を一定にすることができない。
【0012】
これに対して本発明の可変絞り弁部は、一次圧力が高くなるにつれて開度を小さくするので、固定絞りに比べて圧力損失を大きくして、可変絞り弁部における一次ポート側の圧力と二次ポート側、すなわち連通路側の圧力との差圧の変動を抑える。このように本発明の可変絞り弁部は、前述のように一次圧力に応じて開度を変化させるので、一次圧力が変動しても、可変絞り弁部における一次ポート側の圧力と二次ポート側の圧力との差圧の変動を抑えることができる。これによって可変絞り弁部は、一次圧力が変動しても、圧力損失の変動が抑えられる特性を有することができる。
【0013】
圧縮性流体では、固定絞りにおいて、一次圧力P1が低くなると、一定流量では、差圧が大きくなる現象が存在するので、この差圧を一定にするために、本発明では、固定絞りに代えて可変絞りとする。この可変絞りの開度は、一次圧力が低くなれば、大きく変化させて、差圧が大きくならないようにする。換言すると、非圧縮性流体とは異なり、圧縮性流体では、一次圧力が低下すると、固定絞りでは、差圧が大きくなるという前述の現象があるので、差圧が大きくなるのを防ぐために、本発明は、可変絞りを採用し、その開度を、一次圧力の低下時、大きくして、圧力損失、すなわち差圧を小さくする方向に、ピストン21,21A〜21Eによる絞りの開口面積を大きく開く。本発明では、この可変絞りを採用した一次圧力が変動しても、流量が一定なら、差圧を一定に保つ定差圧機能を有し、しかしながら流量に対しては定差圧機能を有せず、一次圧力が一定なら、流量が増大すれば差圧が増大する一構成要素を、可変絞り弁部12と称している。
【0014】
可変絞り弁部のピストンは、予め定める開度調整方向へ変位自在に保持され、開度調整方向一方へ変位するにつれて開度を小さくしかつ開度調整方向他方へ変位するにつれて開度を大きくする。また前記ピストンは、一次圧力に基づく駆動力を開度調整方向一方に受ける。可変絞り弁部のばね部材は、ピストンに開度調整方向他方へばね力を与える。一次圧力が高くなるにつれて、可変絞り弁部のピストンに与えられる一次圧力に基づく開度調整方向一方の駆動力は、ばね部材から与えられる開度調整方向他方へのばね力よりも大きくなるので、ピストンは、開度調整方向一方へ変位して、開度を小さくする。また一次圧力が低くなるにつれて、可変絞り弁部のピストンに与えられる一次圧力に基づく開度調整方向一方の駆動力は、ばね部材から与えられる開度調整方向他方へのばね力よりも小さくなるので、ピストンは、開度調整方向他方へ変位して、開度を大きくする。このようなピストンおよびばね部材によって、一次圧力に応じて、一次圧力が高くなるにつれて開度を小さくし、一次圧力が低くなるにつれて開度を大きくするように、開度を変化させる可変絞り弁部を実現することができる。
【0015】
すなわち可変絞り弁部12のピストン21が、一次圧力P1の低下によってばね部材22の開度調整方向他方(H2)のばね力によって変位して開口面積を大きくする動作を行い、一次圧力P1が高いとき、ピストン21は逆の開度調整方向一方(H1)に変位し、こうしてピストン21の開度調整方向(H1,H2)の位置に対応する絞り開度は、ピストン21の一次ポート15側の受圧面に作用する一次圧力P1に依存し、流量には依存しない。そのため一次圧力P1の変動に拘らず、差圧ΔP(=P1−P1’、P1’は連通路18の圧力であり、過流防止弁部13が開状態では二次ポートの二次圧力P2に等しい)が一定に保たれる。この差圧は、圧縮性流体の流量が増大すれば大きくなる。
【0016】
このような前述の圧縮性流体に特有な原理を利用して、一次圧力が変動しても流量が一定であれば一次圧力と二次圧力との差圧が一定に保たれ、その差圧は、一次圧力が一定であれば圧縮性流体の流量の増大に伴って、増大する可変絞り弁部12が実現される。この可変絞り弁部12を過流防止弁部13に組み合わせて、本発明の装置を実現する。
【0017】
参考のために述べると、非圧縮性流体が固定絞りに一定流量で流れているとき、一次圧力P1が変動しても、差圧ΔP(=P1−P1’)は変化せず、流量Q∝(ΔP)1/2が成立するので、圧縮性流体の前述の現象とは異なる。
【0018】
一次ポートおよび二次ポートを連通する流路の可変絞り弁部よりも二次ポート側に介在される過流防止弁部は、可変絞り弁部における一次ポート側の圧力と二次ポート側の圧力との差圧が、予め定める設定差圧以上になったとき、前記流路を開状態から閉状態に切り換える。前述のように可変絞り弁部は、一定流量では、一次圧力が変動しても前記差圧の変動を抑えるが、流量が増大すれば、差圧が増大する。過流防止弁部13は、一次圧力を、過流ピストン34を過流ばね部材35のばね力に抗して駆動変位するためのいわばパイロット圧として用い、前述の差圧が予め定める設定差圧以上になったとき過流ピストン34が連通路18と二次ポート16との流路を開状態から閉状態に切り換える。過流防止弁部13は、圧縮性流体だけでなく非圧縮性流体でも同様に動作するが、このような一次圧力P1をパイロット圧として用いることが重要である。したがって前記流路を開状態から閉状態に切り換えるときの圧縮性流体の流量である設定流量に基づいて、前記設定差圧を予め設定しておくことによって、一次圧力が変動しても、一次ポートから流入する流体の流量が前記設定流量以上になると、前記流路を開状態から閉状態に確実に切り換えることができる。
【0019】
したがって本発明の装置において、平常時に流量Q1が流れているとき、たとえば二次側の管路が破損すると、流量が平常時の前記流量Q1から過大な流量Q2となり、それと同時に、二次圧力P2,P1’が低下し、このとき圧縮性流体を供給するたとえば圧力容器の一次圧力P1はそのままであるので、差圧ΔP(=P1−P1’)が大きくなる。
【0020】
過流防止弁部13は、この大きくなった差圧ΔP(=P1−P1’)が予め定める設定差圧以上であれば、急峻に閉じる。これによって過大流量Q2で圧縮性流体が流れ出ることが防がれる。
【0021】
請求項2記載の本発明は、過流ピストン(34)による前記流路の閉状態を開状態とするように、過流ピストン(34)を前記軸線方向一方(R1)に変位する弁復帰手段をさらに含むことを特徴とする。
【0022】
本発明に従えば、弁復帰手段は、過流防止弁部による前記流路の閉状態を開状態とするように、過流防止弁部を操作する。弁復帰手段によって、一次ポートから流入する流体の流量が前記設定流量以上になって、前記流路を開状態から閉状態に切り換えた過流防止弁部を操作することで、容易に前記流路の閉状態を開状態にすることができる。
【発明の効果】
【0023】
請求項1記載の本発明によれば、可変絞り弁部は、一定流量では、一次圧力が高くなるにつれて開度を小さくするので、固定絞りに比べて圧力損失を大きくして、可変絞り弁部における一次ポート側の圧力と二次ポート側、すなわち連通路側の圧力との差圧の変動を抑える。このように一次圧力に応じて開度を変化させるので、一定流量では、一次圧力が変動しても、可変絞り弁部における一次ポート側の圧力と二次ポート側の圧力との差圧の変動を抑えることができる。これによって可変絞り弁部は、一定流量では、一次圧力が変動しても、圧力損失すなわち差圧の変動が抑えられる特性を有することができる。
【0024】
過流防止弁部は、可変絞り弁部における一次ポート側の圧力と二次ポート側の圧力との差圧が、予め定める設定差圧以上になったとき、前記流路を開状態から閉状態に切り換える。前記流路を開状態から閉状態に切り換えるときの圧縮性流体の流量である設定流量に基づいて、前記設定差圧を予め設定しておくことによって、一次圧力が変動しても、一次ポートから流入する流体の流量が前記設定流量以上になると、前記流路を開状態から閉状態に確実に切り換えることができる。
【0025】
請求項2記載の本発明によれば、弁復帰手段によって、一次ポートから流入する流体の流量が前記設定流量以上になって、前記流路を開状態から閉状態に切り換えた過流防止弁部を操作することで、容易に前記流路の閉状態を開状態にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1は、本発明の第1の実施形態の過流防止弁装置10を示す断面図である。図2は、過流防止弁装置10を示す流体圧回路図である。過流防止弁装置10は、一次側から二次側に流体が流下する流路に介在され、供給される流体の流量が、予め定める設定流量以上になると、前記流路を開状態から閉状態に切換えて、設定流量以上の流体を二次側に流下させないようにする装置である。流体は、気体である圧縮性流体である。過流防止弁装置10は、ハウジング11、可変絞り弁部12、過流防止弁部13および手動弁部14を含んで構成される。
【0027】
ハウジング11には、一次ポート15および二次ポート16が形成される。またハウジング11には、第1連通路17、第2連通路18、第3連通路19および第4連通路20が形成される。第1連通路17は、一次ポート15と可変絞り弁部12とに連通する。第2連通路18は、可変絞り弁部12と過流防止弁部13とに連通する。第3連通路19は、手動弁部14と二次ポート16とに連通する。第4連通路20は、一次ポート15と過流防止弁部とに連通する。
【0028】
可変絞り弁部12は、前記第1連通路17と第2連通路18との間に介在され、一次ポート15から流入する流体の圧力である一次圧力P1に応じて、一次圧力P1が高くなるにつれて開度を小さくし、一次圧力P1が低くなるにつれて開度を大きくするように、開度を変化させる特性を有する。可変絞り弁部12は、ピストン21およびばね部材22を含んで構成される。ピストン21は、予め定める開度調整方向H1,H2へ変位自在にしてハウジング11に保持され、開度調整方向一方H1へ変位するにつれて開度を小さくし、かつ開度調整方向他方H2へ変位するにつれて開度を大きくする。ばね力発生手段であるばね部材22は、たとえば圧縮コイルばねで実現され、ピストン21に、開度調整方向他方H2へばね力を与える。
【0029】
詳細に述べると、ハウジング11には、第1連通路17および第2連通路18に連なり、ピストン21およびばね部材22が嵌り込むためのピストン用空間が形成される。ピストン21は、開度調整方向一方H1が、ピストン21の軸線方向一端部23から軸線方向他端部24に向かう方向に平行となり、開度調整方向他方H2が、ピストン21の軸線方向他端部24から軸線方向一端部23に向かう方向に平行となるように配置されて、前記ピストン用空間に嵌り込む。このような状態でピストン21は、ハウジング11に保持される。
【0030】
ピストン21の軸線方向一端部23は、開度調整方向他方H2に開放する有底円筒状に形成されるとともに、軸線方向他端部24は、開度調整方向一方H1に開放する有底円筒状に形成される。またピストン21は、軸線方向一端部23が開度調整方向他方H2上流側から第1連通路17に臨むとともに、前記軸線方向一端部23が半径方向内方側から第2連通路18に臨むように配置される。ピストン21の軸線方向他端部24は、残余の部分に比べて外径が大きく形成される。ピストン21の軸線方向中央部21aの外周部は、シールを達成した状態で、ハウジング11に当接している。
【0031】
ピストン21には、その軸線L21に沿って軸線方向一端部23から軸線方向他端部24に貫通する貫通路25が形成される。またピストン21の軸線方向一端部23には、半径方向に貫通し、貫通路25および第2連通路18に臨んで開口する貫通孔26が形成される。前記貫通孔26の第2連通路18に対する開口面積は、貫通孔26の開口面積よりも小さく設定される。したがって貫通孔26と第2連通路18との間に、絞りが形成される。前記貫通孔26の第2連通路18に対する開口面積は、ピストン21が開度調整方向一方H1に変位するにつれて小さくなり、開度調整方向他方H2に変位するにつれて大きくなる。これによって可変絞り弁部12は、ピストン21が開度調整方向一方H1へ変位するにつれて開度が小さくなり、開度調整方向他方H2へ変位するにつれて開度が大きくなるような可変絞りを実現できる。
【0032】
またピストン21は、第1連通路17に連なる第1圧力室27と、貫通路25を介して第1圧力室27に連なる第2圧力室28と、ばね収容空間32とにハウジング11内を仕切る。またピストン21の軸線方向一端部23には、第1圧力室27の流体から開度調整方向一方H1に向かう一次圧力P1を受ける第1受圧面積A1の第1受圧面29が形成される。詳細に述べると、第1圧力室27は、ピストン用空間の一部分を含み、少なくとも第1連通路17およびピストン21の軸線方向一端部23の端面に臨む。また第1受圧面29は、少なくともピストン21の軸線方向一端部23の端面を含む。これによってピストン21は、第1圧力室27の流体から、一次圧力P1に基づく開度調整方向一方H1の力を受けることができる。
【0033】
さらにピストン21の軸線方向他端部24には、第2圧力室28の流体から開度調整方向他方H2に向かう一次圧力P1を受ける第2受圧面積A2の第2受圧面30が形成される。詳細に述べると、ハウジング11には、開度調整方向他方H2に沿って延びる円柱状のロッド部31が形成され、ロッド部31の開度調整方向他方H2側端部の外周部が、シールを達成した状態で、ピストン21の軸線方向他端部24の内周部に当接している。このようにしてピストン21の軸線方向他端部24とロッド部31の開度調整方向他方H2側端部との間に、第2圧力室28が形成される。第2受圧面29は、ロッド部31の開度調整方向他方H2側端部の端面に対向する。これによってピストン21は、第2圧力室28の流体から、一次圧力P1に基づく開度調整方向他方H2の力を受けることができる。
【0034】
本実施の形態において、第1受圧面積A1が第2受圧面積A2よりも大きくなるように、第1受圧面29および第2受圧面30が形成される。これによってピストン21は、一次圧力P1に基づく駆動力を開度調整方向一方H1に受けることができる。
【0035】
ばね収容空間32は、ロッド部31のピストン21の軸線方向他端部24に当接している部分を除く外周部と、ロッド部31を除くハウジング11とが、ロッド部31の半径方向に間隔をあけるような円環状に形成される。ばね部材22は、ピストン21の軸線方向他端部24に当接している部分を除くロッド部31の外周部を内挿するようにして、ばね収容空間32に配置される。また、ばね部材22はピストン21の軸線方向他端部24に、開度調整方向他方H2上流側から当接するように配置される。これによってばね部材22は、ピストン21に開度調整方向他方H2のばね力を与えることができる。ばね収容空間32は、ハウジング11に形成される大気開放孔33によって、大気に開放されている。
【0036】
過流防止弁部13は、可変絞り弁部12における一次ポート15側の圧力と二次ポート16側の圧力との差圧が、予め定める設定差圧以上になったとき、流路を開状態から閉状態に切り換える。過流防止弁部13は、過流ピストン34、過流ばね部材35および過流突起片36を含んで構成される。過流ピストン34は、大略的に有底円筒状に形成される。過流ばね部材35は、たとえば圧縮コイルばねで実現される。
【0037】
弁復帰手段である手動弁部14は、過流防止弁部13による流路の閉状態を開状態とするように、過流防止弁部13を操作する。手動弁部14は、弁本体37および突起部38を含んで構成される。弁本体37は、大略的に円柱状に形成される。
【0038】
ハウジング11には、第2連通路18、第3連通路19および第4連通路20に連なり、過流ピストン34および過流ばね部材35ならびに弁本体37が嵌り込むための収容空間が形成される。過流ピストン34および弁本体37は、過流ピストン34の軸線L34と弁本体37の軸線L37とが、同軸または大略的に同軸であるようにして配置されて、収容空間に嵌り込む。
【0039】
過流ピストン34は、詳細に述べると、その軸線方向一端部39が開放する有底円筒状に形成され、その軸線L34に沿って変位自在にしてハウジング11に保持される。過流ピストン34の軸線方向中央部には、半径方向外方に突出して周方向全周に延びるフランジ状の外向き凸部41が形成される。過流ピストン34の軸線方向一端部39および外向き凸部41は、過流ピストン34の残余の部分に比べて外径が大きく形成されており、これらの軸線方向一端部39および外向き凸部41の外周部は、ハウジング11に当接する。また過流ピストン34の軸線方向一端部39と外向き凸部41との間には、過流ピストン34の内空間と外空間とを連通するように、半径方向に貫通する過流貫通孔40が形成される。
【0040】
過流ピストン34の軸線方向一端部39から外向き凸部41の間の外周部と、当該外周部に臨むハウジング11とが、過流ピストン34の半径方向に間隔をあけて形成される円筒状の過流ばね収容空間42に、過流ばね部材35が配置される。このとき過流ばね部材35は、過流ピストン34の軸線方向一端部39と外向き凸部41との間の外周部を内挿するように配置される。また過流ばね部材35は、過流ピストン34の軸線方向一端部39に、軸線方向他端部43側から当接するように配置される。また過流ばね部材35は、ハウジング11に、過流ピストン34の軸線方向一端部39側から当接するように配置される。これによって過流ばね部材35は、過流ピストン34に、過流ピストン34の軸線方向他端部43から軸線方向一端部39に向かう方向である軸線方向一方R1に、ばね力を与えることができる。過流防止弁部13において、第4連通路20と過流ピストン34の内空間と、過流ばね収容空間42とは、過流貫通孔40を介して連通している。
【0041】
過流ピストン34の軸線方向一端部39は、第4連通路20に臨んで開放する。一次ポート15からの流体は、第4連通路20を介して、過流ピストン34の軸線方向一端部39から過流ピストン34の内空間に流入する。これによって過流ピストン34は、一次ポート15から流入する流体の一次圧力P1に基づく駆動力を、軸線方向一端部39から軸線方向他端部43に向かう方向である軸線方向他方R2に受けることができる。また過流ピストン34の軸線方向他端部43は、第2連通路18に臨む。これによって過流ピストン34は、第2連通路18を流下する流体の圧力(以後、「二次側圧力」と表記することがある)P1’に基づく駆動力を、軸線方向一方R1に受けることができる。
【0042】
過流ピストン34の軸線方向他端部43には、軸線L34に沿って軸線方向他方R2に突出する略円柱状の突出部44が設けられる。前記突出部44は、過流ピストン34の残余の部分に比べて外径が小さく形成される。また前記突出部44の基端部の周辺の軸線方向他端部43には、周方向に延びる特殊樹脂から成る過流シート部45が形成される。
【0043】
過流突起片36は、過流ピストン34の突出部44とは間隔をあけて、前記突出部44に向かうとともに、過流ピストン34の軸線方向一方R1に向かって突出して周方向全周に延びる円環状に形成されて、ハウジング11に設けられる。過流ピストン34は、過流シート部45が過流突起片36から離間している開状態位置と、過流シート部45がシールを達成した状態で過流突起片36に当接する閉状態位置とに配置可能である。過流ピストン34が、図1に示されるような開状態位置に配置されるとき、第2連通路18と第3連通路19とが連通する開状態である。過流ピストン34が閉状態位置に配置されるとき、第2連通路18と第3連通路19とが遮断される閉状態である。
【0044】
手動弁部14の弁本体37の軸線方向一端部46の端面部分に、周方向全周に延びる特殊樹脂から成るシート部47が形成される。突起片38は、弁本体37のシート部47に向かって突出して周方向全周に延びる円環状に形成されてハウジング11に設けられる。過流防止弁部13の過流ピストン34の軸線方向他方R2側の収容空間であって、弁本体37が嵌り込むべき収容空間に臨むハウジング11には、内ねじ48が形成される。手動弁部14の弁本体37の軸線方向他端部49の外周部には、ハウジング11の内ねじ48に螺合可能な外ねじ50が形成される。
【0045】
手動弁部14の弁本体37は、収容空間に嵌り込み、弁本体37の軸線方向一端部46がシールを達成した状態でハウジング11に当接するとともに、弁本体37の軸線方向他端部49の外ねじ50がハウジング11の内ねじ48に螺着して、ハウジング11に保持される。この状態で、手動弁部14の弁本体37は、その軸線L37まわりに回転自在であって、前記軸線L37まわり一方向に回転することによって、軸線方向他端部49から軸線方向一端部46に向かう方向である軸線方向一方T1に螺進可能であって、前記軸線L37まわり他方向に回転することによって、前記軸線方向一方T1とは逆向きの軸線方向他方T2に螺退可能である。弁本体37の軸線方向他端部49には、軸線方向他方T2に開放する工具嵌合凹所51が形成され、工具嵌合凹所51はハウジング11に形成される工具挿入孔52を介して外空間に露出している。前記工具嵌合凹所51に嵌合可能な、たとえば六角レンチなどの工具を嵌合させて、工具を回転することによって、弁本体37を軸線L37まわりに回転することができる。
【0046】
手動弁部14の弁本体37を、軸線L37まわり一方に回転すると、軸線方向一方T1に螺進して、シート部47が突起部38に近接する。さらに前記弁本体37を軸線方向一方T1に螺進させることによって、シート部47はシールを達成した状態で突起部38に当接する。このように弁本体37のシート部47が突起部38に当接している状態では、第2連通路18と第3連通路19とが遮断される閉状態となる。また弁本体37を、軸線L37まわり他方に回転すると、軸線方向他方T2に螺退して、シート部47が突起部38から離間する。このように、図1に示すような弁本体37のシート部47が突起部38から離間している状態では、第2連通路18と第3連通路19とが連通する開状態となる。
【0047】
過流防止弁部13の過流ピストン34の突出部44は、過流ピストン34が開状態位置に配置されるときに、前記突出部44の遊端部の端面が、軸線方向に関して突起部38と同じ位置、または軸線方向一方R1側となるように形成される。また過流ピストン34が、開状態位置よりも軸線方向他方R2側の閉状態位置に配置されるとき、過流ピストン34の突出部44は、突起部38よりも手動弁部14の弁本体37側に突出するように形成される。手動弁部14の弁本体37は、流体を一次ポート15から二次ポート16に流下させるような通常時には、図1に示すような、過流防止弁部13の過流ピストン34が閉状態位置に配置されることを阻止することなく、確実に閉状態位置に配置可能となる通常位置に配置される。
【0048】
また手動弁部14の弁本体37は、流体を一次ポート15から二次ポート16に流下することを強制的に阻止する停止時には、弁本体37のシート部47が突起部38に当接するような停止位置に配置するようにしてもよい。このとき第3連通路18と第4連通路19とは遮断される閉状態となる。
【0049】
過流防止弁部13の過流ピストン34が閉状態位置に配置されている状態で、手動弁部14の弁本体37を軸線L37まわり一方向に回転して軸線方向一方T1に螺進させると、弁本体37の軸線方向一端部46が過流ピストン34の突出部44に当接する。このように当接した状態で弁本体37をさらに軸線方向一方T1に螺進させることによって、過流ピストン34は弁本体37とともに軸線方向一方R1に変位する。弁本体37をさらに軸線方向一方T1に螺進させると、過流シート部45が過流突起片36から離間して、過流ピストン34は開状態位置に配置される。その後、弁本体37を軸線L37まわり他方向に回転して、軸線方向他方T2に螺退させて通常位置に配置することで、第2連通路18と第3連通路19とが連通する開状態となる。
【0050】
一次ポート15から一次圧力P1の流体が過流防止弁装置10に流入すると、流体は第1連通路17および第4連通路20を流下する。第1連通路17を流下した流体は、可変絞り弁部12に流入して、第1圧力室27に流入するとともに、貫通路25を介して第2圧力室28に流入する。第1および第2圧力室27,28の流体は、一次圧力P1を保持している。また可変絞り弁部12の貫通路25を流下する流体の一部は、貫通孔26を介して、第2連通路18に流入する。
【0051】
このとき可変絞り弁部12のピストン21は、第1圧力室27の一次圧力P1に保持される流体から、開度調整方向一方H1に(P1・A1)の力を受ける。また前記ピストン21は、第2圧力室28の一次圧力P1に保持される流体から、開度調整方向他方H2に(P1・A2)の力を受ける。さらに前記ピストン21は、ばね部材22から開度調整方向他方H2にばね力を受ける。したがって、このときの可変絞り弁部12のピストン21に関する力の釣合いは、次式(1)のように表される。
P1・A1=P1・A2+K・(ΔH+Z) …(1)
【0052】
前式(1)において、Kは、ばね部材22のばね定数である。ΔHは、可変絞り弁部12に流体が流入していない状態を初期状態として、この初期状態におけるばね部材22の自然状態からの撓み量である。Zは、ピストン21の初期状態からの開度調整方向一方H1への変位量であって、一次圧力P1と流下する流体の流量とに依存する。また「・」は、乗算を表す演算記号である。また本実施の形態において、第1受圧面積A1は、第2受圧面積A2よりも大きい。
【0053】
前述のように貫通孔26と第2連通路18との間に、絞りが形成されるので、貫通孔26から第2連通路18に流出する流体の圧力が一次圧力P1から二次側圧力P1’に低下する。このように可変絞り弁部12によって、ΔP(=P1−P1’)の圧力損失が発生する。一次圧力P1が変動して高くなると、第1圧力室27の流体から受ける力(P1・A1)が、第2圧力室28の流体を受ける力(P1・A2)とばね部材22からのばね力(K・(ΔH+Z))との合力よりも大きくなり、ピストン21は、開度調整方向一方H1に変位する。このとき貫通孔26の第2連通路18に対する開口面積は小さくなる。また一次圧力P1が変動して低くなると、第1圧力室27の流体から受ける力(P1・A1)が、第2圧力室28の流体を受ける力(P1・A2)とばね部材22からのばね力(K・(ΔH+Z))との合力よりも小さくなり、ピストン21は、開度調整方向他方H2に変位する。このとき貫通孔26の第2連通路18に対する開口面積は大きくなる。このように一次圧力P1の変動に対応して、貫通孔26の第2連通路18に対する開口面積、換言すれば、一次ポート15から二次ポート16に連通する流路の開度が調整される。
【0054】
図3は、可変絞り弁部12における一次圧力P1と圧力損失ΔPとの関係を示すグラフである。可変絞り弁部12は、一次圧力P1が高くなるにつれて開度を小さくするので、図3の実線L1に示すように、従来の固定絞り(図3の破線La)に比べて、一次圧力P1が高くなるにつれて圧力損失ΔPが大きくなる。これによって、一次圧力P1が高くなるにつれて、可変絞り弁部12における一次ポート15側の圧力である一次圧力P1と二次側圧力P1’との差圧が小さくなることを防止する。このように本実施の形態の可変絞り弁部12は、前述のように一次圧力P1に応じて開度を変化させるので、一次圧力P1が変動しても、可変絞り弁部12における一次ポート15側の圧力P1と二次側圧力P1’との差圧の変動を抑えることができる。これによって可変絞り弁部12は、図3の実線L1に示すような、一次圧力P1が変動しても、圧力損失ΔPの変動が抑えられる特性を有する。
【0055】
可変絞り弁部12において、一次ポート15にピストン21が臨み、一次圧力P1でピストン21の変位による可変絞りの開口面積である開度が決まるので、一次ポート15に流入する流量が増加するにつれて、可変絞り弁部12における一次圧力P1と二次側圧力P1’との差圧ΔPが、流量に対応して大きくなっていき、すなわち二次側圧力P1’は、大きくなった前記差圧ΔPの分、一次圧力P1よりも低くなっていく。このように可変絞り弁部12における二次ポート16側の圧力P1’が低くなって、差圧ΔPが過流防止弁部において予め定めた値である設定差圧以上になると、過流ピストン34の一次圧力P1に基づく軸線方向他方R2の力が、過流ピストン34の二次側圧力P1’による軸線方向一方R1の力と過流ばね部材35からのばね力との合力よりも大きくなる。これによって過流ピストン34は、開状態位置から軸線方向他方R2に変位して閉状態位置に配置されて、前記流路は、第2連通路18と第3連通路19とが遮断される閉状態となる。
【0056】
このように過流防止弁部13は、可変絞り弁部12における一次圧力P1と二次側圧力P1’との差圧が、前記設定差圧以上になったとき、第2連通路18と第3連通路19との連通状態を開状態から閉状態に切り換える。具体的には、可変絞り弁部12は、一次圧力P1が変動しても前記差圧(P1−P1’)の変動を抑えるので、過流防止弁部13は、前記差圧(P1−P1’)が設定差圧以上になったとき、前記流路を開状態から閉状態に切り換える。可変絞り弁部12における一次ポート15側の圧力P1と二次ポート16側の圧力P1’との差圧(P1−P1’)が、設定差圧以上になったときとは、換言すれば、一次ポート15に流入する流量が、前記流路を開状態から閉状態に切り換えるときの流体の流量であるトリップ流量Qt以上になったときである。
【0057】
図4は、過流防止弁装置10の一次圧力P1とトリップ流量Qtとの関係を示すグラフである。過流防止弁装置10は、図3に示すように、一次圧力P1が変動しても、可変絞り弁部12の入口、出口の差圧ΔPの変動を抑える。すなわち過流防止弁部13の軸線方向他端部43側の流体の圧力(すなわち二次側圧力)P1’の変動が抑えられる。これによって、本実施の形態の過流防止弁装置10は、図4の実線L2に示すように、一次圧力P1の変動によるトリップ流量Qtの変動幅を、従来の過流防止弁装置1のトリップ流量(図4の破線Lb)の変動幅よりも小さくすることができる。したがって本実施の形態の過流防止弁装置10は、前記設定圧力をトリップ流量Qtに基づいて予め設定しておくことによって、一次圧力P1が変動しても、一次ポート16から流入する流体の流量がトリップ流量Qt以上になると、前記流路を開状態から閉状態に確実に切り換えることができる。
【0058】
図5は、本発明の第2の実施形態の過流防止弁装置10Aを示す断面図である。過流防止弁装置10Aは、ハウジング11A、可変絞り弁部12A、過流防止弁部13および手動弁部14を含んで構成される。本実施の形態の過流防止弁装置10Aにおいて、過流防止弁部13および手動弁部14は、前述の第1の実施形態の過流防止弁装置10の過流防止弁部13および手動弁部14と同様であるので、同一の参照符号を付して詳細な説明は省略する。また本実施の形態の過流防止弁装置10Aの流体圧回路図は、図2に示す第1の実施形態の過流防止弁装置10の流体圧回路図と同様である。また本実施の形態において、流体は、気体である圧縮性流体である。
【0059】
本実施の形態の過流防止弁装置10Aにおいて、ハウジング11Aは、前述の第1の実施形態の過流防止弁装置10のハウジング11とほぼ同様であるので、異なる部分だけについて説明する。ハウジング11Aに形成される第1連通路17は、一次ポート15と可変絞り弁部12Aとに連通する。第2連通路18は、可変絞り弁部12Aと過流防止弁部13とに連通する。
【0060】
可変絞り弁部12Aは、前記第1連通路17と第2連通路18との間に介在され、一次ポート15から流入する流体の圧力である一次圧力P1に応じて、一次圧力P1が高くなるにつれて開度を小さくし、一次圧力P1が低くなるにつれて開度を大きくするように、開度を変化させる。可変絞り弁部12は、ピストン21Aおよびばね部材22Aを含んで構成される。ピストン21Aは、予め定める開度調整方向H1,H2へ変位自在にしてハウジング11Aに保持され、開度調整方向一方H1へ変位するにつれて開度を小さくし、かつ開度調整方向他方H2へ変位するにつれて開度を大きくする。ばね力発生手段であるばね部材22Aは、たとえば圧縮コイルばねで実現され、ピストン21Aに、開度調整方向他方H2へばね力を与える。
【0061】
詳細に述べると、ハウジング11Aには、第1連通路17および第2連通路18に連なり、ピストン21Aおよびばね部材22Aが嵌り込むためのピストン用空間が形成される。ピストン21Aは、開度調整方向一方H1が、ピストン21Aの軸線方向一端部23Aから軸線方向他端部24Aに向かう方向に平行となり、開度調整方向他方H2が、ピストン21Aの軸線方向他端部24Aから軸線方向一端部23Aに向かう方向に平行となるように配置されて、前記ピストン用空間に嵌り込む。このような状態でピストン21Aは、ハウジング11Aに保持される。
【0062】
ピストン21Aは、大略的に円筒状に形成され、軸線方向一端部23Aは、開度調整方向他方H2に開放する有底円筒状に形成される。またピストン21Aは、軸線方向一端部23Aが開度調整方向他方H2上流側から第1連通路17に臨むとともに、前記軸線方向一端部23Aが半径方向内方側から第2連通路18に臨むように配置される。ピストン21Aの軸線方向中央部31Aは、残余の部分に比べて外径が大きく形成される。またピストン21Aの軸線方向中央部31Aよりも軸線方向一端部23A側の外周部は、シールを達成した状態で、ハウジング11Aに当接している。ピストン21Aの軸線方向他端部24Aの外周部は、シールを達成した状態で、ハウジング11Aに当接している。
【0063】
ピストン21Aには、その軸線L21Aに沿って軸線方向一端部23Aから軸線方向他端部24Aに貫通する貫通路25Aが形成される。またピストン21Aの軸線方向一端部23Aには、半径方向に貫通し、貫通路25Aおよび第2連通路18に臨んで開口する貫通孔26Aが形成される。前記貫通孔26Aの第2連通路18に対する開口面積は、貫通孔26Aの開口面積よりも小さく設定される。したがって貫通孔26Aと第2連通路18との間に、絞りが形成される。前記貫通孔26Aの第2連通路18に対する開口面積は、ピストン21Aが開度調整方向一方H1に変位するにつれて小さくなり、開度調整方向他方H2に変位するにつれて大きくなる。これによって可変絞り弁部12Aは、ピストン21Aが開度調整方向一方H1へ変位するにつれて開度が小さくなり、開度調整方向他方H2へ変位するにつれて開度が大きくなるような可変絞りを実現できる。
【0064】
またピストン21Aは、第1連通路17に連なる第1圧力室27Aと、貫通路25Aを介して第1圧力室27Aに連なる第2圧力室28Aと、ばね収容空間32とにハウジング11A内を仕切る。またピストン21Aの軸線方向一端部23Aには、第1圧力室27Aの流体から開度調整方向一方H1に向かう一次圧力P1を受ける第1受圧面積A1の第1受圧面29Aが形成される。詳細に述べると、第1圧力室27Aは、ピストン用空間の一部分を含み、少なくとも第1連通路17およびピストン21Aの軸線方向一端部23Aの端面に臨む。これによってピストン21Aは、第1圧力室27Aの流体から、一次圧力P1に基づく開度調整方向一方H1の力を受けることができる。
【0065】
さらにピストン21Aの軸線方向他端部24Aには、第2圧力室28Aの流体から開度調整方向他方H2に向かう一次圧力P1を受ける第2受圧面積A2の第2受圧面30Aが形成される。詳細には、前記第2受圧面30Aは、ピストン21Aの軸線方向他端部24Aの端面である。これによってピストン21Aは、第2圧力室28Aの流体から、一次圧力P1に基づく開度調整方向他方H2の力を受けることができる。
【0066】
本実施の形態において、第1受圧面積A1が第2受圧面積A2よりも大きくなるように、第1受圧面29Aおよび第2受圧面30Aが形成される。これによってピストン21Aは、一次圧力P1に基づく駆動力を開度調整方向一方H1に受けることができる。
【0067】
ばね収容空間32Aは、ピストン21Aの軸線方向中央部31Aと軸線方向他端部24Aとの間の外周部と、ハウジング11Aとが、ピストン21Aの半径方向に間隔をあけるような円筒状に形成される。ばね部材22Aは、ピストン21Aの軸線方向中央部31Aと軸線方向他端部24Aとの間の外周部を内挿するようにして、ばね収容空間32Aに配置される。また、ばね部材22Aはピストン21Aの軸線方向中央部31Aに、開度調整方向他方H2上流側から当接するように配置される。これによってばね部材22Aは、ピストン21Aに開度調整方向他方H2のばね力を与えることができる。ばね収容空間32Aは、ハウジング11Aに形成される大気開放孔33Aによって、大気に開放されている。
【0068】
流体が一次ポート15から二次ポート16に流下するときの可変絞り弁部12Aの動作は、第1の実施形態の過流防止弁装置10における可変絞り弁部12の動作と同様なので、詳細な説明は省略する。以上のように本実施の形態の過流防止弁装置10Aは、第1の実施形態の過流防止弁装置10と同様の効果を達成できる。
【0069】
また第1および第2の実施形態の過流防止弁装置10,10Aは、第2圧力室28,28Aを形成することによって、ピストン21,21Aには、一次圧力P1に保持される第2圧力室28,28Aの流体から、開度調整方向他方H2に(P1・A2)の力を与えることができる。このような第2圧力室28,28Aが無い場合、一次圧力P1が非常に高いとき、このような一次圧力P1による開度調整方向一方H1の(P1・A1)の力が、非常に大きくなり、これに抗するための開度調整方向他方H2のばね力を発生するために、非常に大形のばね部材22,22Aが必要となる。したがって第1および第2の実施形態の過流防止弁装置10,10Aのように、第2圧力室28,28Aを形成することによって、第2圧力室28,28Aの流体からの開度調整方向他方H2の(P1・A2)の力がピストン21,21Aに与えられるので、ばね部材22,22Aによる開度調整方向他方H2のばね力を大きくする必要がないので、ばね部材22,22Aを小形化することができる。これによって可変絞り弁部12,12Aの小形化が可能となり、さらには過流防止弁装置10,10Aの小形化も実現することができる。
【0070】
図6は、本発明の第3の実施形態の過流防止弁装置10Bを示す断面図である。図7は、過流防止弁装置10Bを示す流体圧回路図である。過流防止弁装置10Bは、ハウジング11B、可変絞り弁部12B、過流防止弁部13および手動弁部14を含んで構成される。本実施の形態の過流防止弁装置10Bにおいて、過流防止弁部13および手動弁部14は、前述の第1の実施形態の過流防止弁装置10の過流防止弁部13および手動弁部14と同様であるので、同一の参照符号を付して詳細な説明は省略する。流体は、気体である圧縮性流体である。
【0071】
本実施の形態の過流防止弁装置10Bにおいて、ハウジング11Bは、前述の第1の実施形態の過流防止弁装置10のハウジング11とほぼ同様であるので、異なる部分だけについて説明する。ハウジング11Bに形成される第1連通路17は、一次ポート15と可変絞り弁部12Bとに連通する。第2連通路18は、可変絞り弁部12Bと過流防止弁部13とに連通する。
【0072】
可変絞り弁部12Bは、前記第1連通路17と第2連通路18との間に介在され、一次ポート15から流入する流体の圧力である一次圧力P1に応じて、一次圧力P1が高くなるにつれて開度を小さくし、一次圧力P1が低くなるにつれて開度を大きくするように、開度を変化させる。可変絞り弁部12Bは、ピストン21Bおよびばね部材22Bを含んで構成される。ピストン21Bは、予め定める開度調整方向H1,H2へ変位自在にしてハウジング11Bに保持され、開度調整方向一方H1へ変位するにつれて開度を小さくし、かつ開度調整方向他方H2へ変位するにつれて開度を大きくする。ばね力発生手段であるばね部材22Bは、たとえば圧縮コイルばねで実現され、ピストン21Bに、開度調整方向他方H2へばね力を与える。
【0073】
詳細に述べると、ハウジング11Bには、第1連通路17および第2連通路18に連なり、ピストン21Bおよびばね部材22Bが嵌り込むためのピストン用空間が形成される。ピストン21Bは、開度調整方向一方H1が、ピストン21Bの軸線方向一端部23Bから軸線方向他端部24Bに向かう方向に平行となり、開度調整方向他方H2が、ピストン21Bの軸線方向他端部24Bから軸線方向一端部23Bに向かう方向に平行となるように配置されて、前記ピストン用空間に嵌り込む。このような状態でピストン21Bは、ハウジング11Bに保持される。
【0074】
ピストン21Bの軸線方向一端部23Bは、開度調整方向他方H2に開放する有底円筒状に形成されるとともに、軸線方向他端部24Bは、円柱状に形成される。またピストン21Bは、軸線方向一端部23Bが開度調整方向他方H2上流側から第1連通路17に臨むとともに、前記軸線方向一端部23Bが半径方向内方側から第2連通路18に臨むように配置される。ピストン21Bの軸線方向他端部24Bは、残余の部分に比べて外径が大きく形成される。ピストン21Bの軸線方向中央部31Bの外周部は、シールを達成した状態で、ハウジング11Bに当接している。
【0075】
ピストン21Bには、その軸線L21Bに沿って軸線方向一端部23Bから軸線方向中央部31Bにかけて貫通する貫通路25Bが形成される。またピストン21Bの軸線方向一端部23Bには、半径方向に貫通し、貫通路25Bおよび第2連通路18に臨んで開口する貫通孔26Bが形成される。前記貫通孔26Bの第2連通路18に対する開口面積は、貫通孔26Bの開口面積よりも小さく設定される。したがって貫通孔26Bと第2連通路18との間に、絞りが形成される。前記貫通孔26Bの第2連通路18に対する開口面積は、ピストン21Bが開度調整方向一方H1に変位するにつれて小さくなり、開度調整方向他方H2に変位するにつれて大きくなる。これによって可変絞り弁部12Bは、ピストン21Bが開度調整方向一方H1へ変位するにつれて開度が小さくなり、開度調整方向他方H2へ変位するにつれて開度が大きくなるような可変絞りを実現できる。
【0076】
またピストン21Bは、第1連通路17に連なる圧力室27Bと、ばね収容空間32Bとにハウジング11B内を仕切る。またピストン21Bの軸線方向一端部23Bには、圧力室27Bの流体から開度調整方向一方H1に向かう一次圧力P1を受ける受圧面積A0の受圧面29Bが形成される。詳細に述べると、第1圧力室27Bは、ピストン用空間の一部分を含み、少なくとも第1連通路17およびピストン21Bの軸線方向一端部23Bの端面に臨む。また前記受圧面29Bは、ピストン21Bの軸線方向一端部23Bの端面、および開度調整方向他方H2上流側から貫通路25Bに臨む底面30Bを含む。これによってピストン21Bは、圧力室27Bの流体から、一次圧力P1に基づく駆動力を開度調整方向一方H1に受けることができる。
【0077】
ばね収容空間32Bは円柱状であって、ばね部材22Bが配置される。このときばね部材22Bは、ピストン21Bの軸線方向他端部24Bに、開度調整方向他方H2上流側から当接するように配置される。これによってばね部材22Bは、ピストン21Bに開度調整方向他方H2のばね力を与えることができる。ばね収容空間32Bは、ハウジング11Bに形成される大気開放孔33Bによって、大気に開放されている。
【0078】
一次ポート15から一次圧力P1の流体が過流防止弁装置10Bに流入すると、流体は第1連通路17および第4連通路20を流下する。第1連通路17を流下した流体は、可変絞り弁部12Bに流入して、圧力室27Bに流入する。圧力室27Bの流体は、一次圧力P1を保持している。また可変絞り弁部12Bの貫通路25Bを流下する流体は、貫通孔26Bを介して、第3連通路18に流入する。
【0079】
このとき可変絞り弁部12Bのピストン21Bは、圧力室27Bの一次圧力P1に保持される流体から、開度調整方向一方H1に(P1・A0)の駆動力を受ける。また前記ピストン21は、ばね部材22Bから開度調整方向他方H2にばね力を受ける。したがって、このときの可変絞り弁部12Bのピストン21Bに関する力の釣合いは、次式(2)のように表される。
P1・A0=K・(ΔH+Z) …(2)
【0080】
前式(2)において、Kは、ばね部材22Bのばね定数である。ΔHは、可変絞り弁部12Bに流体が流入していない状態を初期状態として、この初期状態におけるばね部材22Bの自然状態からの撓み量である。Zは、ピストン21Bの初期状態からの開度調整方向一方H1への変位量であって、一次圧力P1と流下する流体の流量とに依存する。また「・」は、乗算を表す演算記号である。
【0081】
前述のように貫通孔26Bと第2連通路18との間に、絞りが形成されるので、貫通孔26Bから第2連通路18に流出する流体の圧力が一次圧力P1から二次側圧力P1’に低下する。このように可変絞り弁部12Bによって、ΔP(=P1−P1’)の圧力損失が発生する。一次圧力P1が変動して高くなると、圧力室27Bの流体から受ける力(P1・A0)が、ばね部材22Bからのばね力(K・(ΔH+Z))よりも大きくなり、ピストン21Bは、開度調整方向一方H1に変位する。このとき貫通孔26Bの第2連通路18に対する開口面積は小さくなる。また一次圧力P1が変動して低くなると、圧力室27Bの流体から受ける力(P1・A0)が、ばね部材22Bからのばね力(K・(ΔH+Z))小さくなり、ピストン21Bは、開度調整方向他方H2に変位する。このとき貫通孔26Bの第2連通路18に対する開口面積は大きくなる。このように一次圧力P1の変動に対応して、貫通孔26Bの第2連通路18に対する開口面積、換言すれば、一次ポート15から二次ポート16に円通する流路の開度が調整される。
【0082】
以上のように本実施の形態の過流防止弁装置10Bは、第1の実施形態の過流防止弁装置10と類似の効果を達成できる。
【0083】
図8は、本発明の第4の実施形態の過流防止弁装置10Cを示す断面図である。図9は、過流防止弁装置10Cを示す流体圧回路図である。過流防止弁装置10Cは、ハウジング11C、可変絞り弁部12C、過流防止弁部13および手動弁部14を含んで構成される。本実施の形態の過流防止弁装置10Cにおいて、過流防止弁部13および手動弁部14は、前述の第1の実施形態の過流防止弁装置10の過流防止弁部13および手動弁部14と同様であるので、同一の参照符号を付して詳細な説明は省略する。また本実施の形態において、流体は、気体である圧縮性流体である。
【0084】
本実施の形態の過流防止弁装置10Cにおいて、ハウジング11Cは、前述の第1の実施形態の過流防止弁装置10のハウジング11とほぼ同様であるので、異なる部分だけについて説明する。ハウジング11Cに形成される第1連通路17は、一次ポート15と可変絞り弁部12Cとに連通する。第2連通路18は、可変絞り弁部12Cと過流防止弁部13とに連通する。
【0085】
可変絞り弁部12Cは、前記第1連通路17と第2連通路18との間に介在され、一次ポート15から流入する流体の圧力である一次圧力P1に応じて、一次圧力P1が高くなるにつれて開度を小さくし、一次圧力P1が低くなるにつれて開度を大きくするように、開度を変化させる。可変絞り弁部12Cは、ピストン21Cおよびばね部材22Cを含んで構成される。ピストン21Cは、予め定める開度調整方向H1,H2へ変位自在にしてハウジング11Cに保持され、開度調整方向一方H1へ変位するにつれて開度を小さくし、かつ開度調整方向他方H2へ変位するにつれて開度を大きくする。ばね力発生手段であるばね部材22Cは、たとえば圧縮コイルばねで実現され、ピストン21Cに、開度調整方向他方H2へばね力を与える。
【0086】
詳細に述べると、ハウジング11Cには、第1連通路17および第2連通路18に連なり、ピストン21Cおよびばね部材22Cが嵌り込むためのピストン用空間が形成される。ピストン21Cは、開度調整方向一方H1が、ピストン21Cの軸線方向他端部24Cから軸線方向一端部23Cに向かう方向に平行となり、開度調整方向他方H2が、ピストン21Cの軸線方向一端部23Cから軸線方向他端部24Cに向かう方向に平行となるように配置されて、前記ピストン用空間に嵌り込む。このような状態でピストン21Cは、ハウジング11Cに保持される。
【0087】
ピストン21Cの軸線方向一端部23Cは、開度調整方向一方H1に開放する有底円筒状に形成されるとともに、軸線方向他端部24Cは、開度調整方向他方H2に開放する有底円筒状に形成される。またピストン21Cは、軸線方向一端部23Cが開度調整方向一方H1上流側から第1連通路17に臨むとともに、前記軸線方向一端部23Cが半径方向内方側から第2連通路18に臨むように配置される。ピストン21Cの軸線方向他端部24Cは、残余の部分に比べて外径が大きく形成される。ピストン21Cの軸線方向中央部21bの外周部は、シールを達成した状態で、ハウジング11Cに当接している。
【0088】
ピストン21Cには、その軸線L21Cに沿って軸線方向一端部23Cから軸線方向他端部24Cに貫通する貫通路25Cが形成される。またピストン21Cの軸線方向一端部23Cには、半径方向に貫通し、貫通路25Cおよび第2連通路18に臨んで開口する貫通孔26Cが形成される。前記貫通孔26Cの第2連通路18に対する開口面積は、貫通孔26Cの開口面積よりも小さく設定される。したがって貫通孔26Cと第2連通路18との間に、絞りが形成される。前記貫通孔26Cの第2連通路18に対する開口面積は、ピストン21Cが開度調整方向一方H1に変位するにつれて小さくなり、開度調整方向他方H2に変位するにつれて大きくなる。これによって可変絞り弁部12Cは、ピストン21Cが開度調整方向一方H1へ変位するにつれて開度が小さくなり、開度調整方向他方H2へ変位するにつれて開度が大きくなるような可変絞りを実現できる。
【0089】
またピストン21Cは、第1連通路17に連なる第1圧力室27Cと、貫通路25Cを介して第1圧力室27Cに連なる第2圧力室28Cと、ばね収容空間32Cとにハウジング11C内を仕切る。またピストン21Cの軸線方向一端部23Cには、第1圧力室27Cの流体から開度調整方向他方H2に向かう一次圧力P1を受ける第1受圧面積A1の第1受圧面29Cが形成される。詳細に述べると、第1圧力室27Cは、ピストン用空間の一部分を含み、少なくとも第1連通路17およびピストン21Cの軸線方向一端部23Cの端面に臨む。また第1受圧面29Cは、少なくともピストン21Cの軸線方向一端部23Cの端面を含む。これによってピストン21Cは、第1圧力室27Cの流体から、一次圧力P1に基づく開度調整方向他方H2の力を受けることができる。
【0090】
さらにピストン21Cの軸線方向他端部24Cには、第2圧力室28Cの流体から開度調整方向一方H1に向かう一次圧力P1を受ける第2受圧面積A2の第2受圧面30Cが形成される。詳細に述べると、ハウジング11Cには、開度調整方向一方H1に沿って延びる円柱状のロッド部31Cが形成され、ロッド部31Cの開度調整方向一方H1側端部の外周部が、シールを達成した状態で、ピストン21Cの軸線方向他端部24Cの内周部に当接している。このようにしてピストン21Cの軸線方向他端部24Cとロッド部31Cの開度調整方向一方H1側端部との間に、第2圧力室28Cが形成される。第2受圧面30Cは、ロッド部31Cの開度調整方向一方H1側の端面に対向する。これによってピストン21Cは、第2圧力室28Cの流体から、一次圧力P1に基づく開度調整方向一方H1の力を受けることができる。
【0091】
本実施の形態において、第2受圧面積A2が第1受圧面積A1よりも大きくなるように、第1受圧面29Cおよび第2受圧面30Cが形成される。これによってピストン21Cは、一次圧力P1に基づく駆動力を開度調整方向一方H1に受けることができる。
【0092】
ばね収容空間32Cは、ピストン21Cの軸線方向中央部21bと軸線方向他端部24Cとの間の外周部と、ハウジング11Cとが、ピストン21Cの半径方向に間隔をあけるように円筒状に形成される。ばね部材22Cは、ピストン21Cの軸線方向中央部21bと軸線方向他端部24Cとの間の外周部を内挿するようにして、ばね収容空間32Cに配置される。また、ばね部材22Cはピストン21Cの軸線方向他端部24Cに、開度調整方向他方H2上流側から当接するように配置される。これによってばね部材22Cは、ピストン21Cに開度調整方向他方H2のばね力を与えることができる。ばね収容空間32Cは、ハウジング11Cに形成される大気開放孔33Cによって、大気に開放されている。
【0093】
一次ポート15から一次圧力P1の流体が過流防止弁装置10Cに流入すると、流体は第1連通路17および第4連通路20を流下する。第1連通路17を流下した流体は、可変絞り弁部12Cに流入して、第1圧力室27Cに流入するとともに、貫通路25Cを介して第2圧力室28Cに流入する。第1および第2圧力室27C,28Cの流体は、一次圧力P1を保持している。また可変絞り弁部12Cの貫通路25Cを流下する流体の一部は、貫通孔26Cを介して、第2連通路18に流入する。
【0094】
このとき可変絞り弁部12Cのピストン21Cは、第1圧力室27Cの一次圧力P1に保持される流体から、開度調整方向他方H2に(P1・A1)の力を受ける。また前記ピストン21Cは、第2圧力室28Cの一次圧力P1に保持される流体から、開度調整方向一方H1に(P1・A2)の力を受ける。さらに前記ピストン21Cは、ばね部材22Cから開度調整方向他方H2にばね力を受ける。したがって、このときの可変絞り弁部12Cのピストン21Cに関する力の釣合いは、次式(3)のように表される。
【0095】
P1・A2=P1・A1+K・(ΔH+Z) …(3)
前式(3)において、Kは、ばね部材22Cのばね定数である。ΔHは、可変絞り弁部12Cに流体が流入していない状態を初期状態として、この初期状態におけるばね部材22Cの自然状態からの撓み量である。Zは、ピストン21Cの初期状態からの開度調整方向一方H1への変位量であって、一次圧力P1と流下する流体の流量とに依存する。また「・」は、乗算を表す演算記号である。また本実施の形態において、第2受圧面積A2は、第1受圧面積A1よりも大きい。
【0096】
前述のように貫通孔26Cと第2連通路18との間に、絞りが形成されるので、貫通孔26Cから第2連通路18に流出する流体の圧力が一次圧力P1から二次側圧力P1’に低下する。このように可変絞り弁部12Cによって、ΔP(=P1−P1’)の圧力損失が発生する。一次圧力P1が変動して高くなると、第2圧力室28Cの流体から受ける力(P1・A2)が、第1圧力室27Cの流体を受ける力(P1・A1)とばね部材22Cからのばね力(K・(ΔH+Z))との合力よりも大きくなり、ピストン21Cは、開度調整方向一方H1に変位する。このとき貫通孔26Cの第2連通路18に対する開口面積は小さくなる。また一次圧力P1が変動して低くなると、第2圧力室28Cの流体から受ける力(P1・A2)が、第1圧力室27Cの流体を受ける力(P1・A1)とばね部材22Cからのばね力(K・(ΔH+Z))との合力よりも小さくなり、ピストン21Cは、開度調整方向他方H2に変位する。このとき貫通孔26Cの第2連通路18に対する開口面積は大きくなる。このように一次圧力P1の変動に対応して、貫通孔26Cの第2連通路18に対する開口面積、換言すれば、一次ポート15からあ二次ポート16に連通する流路の開度が調整される。
【0097】
以上のように本実施の形態の過流防止弁装置10Cは、第1の実施形態の過流防止弁装置10と同様の効果を達成できる。
【0098】
図10は、本発明の第5の実施形態の過流防止弁装置10Dを示す断面図である。過流防止弁装置10Dは、ハウジング11D、可変絞り弁部12D、過流防止弁部13および手動弁部14を含んで構成される。本実施の形態の過流防止弁装置10Dにおいて、過流防止弁部13および手動弁部14は、前述の第1の実施形態の過流防止弁装置10の過流防止弁部13および手動弁部14と同様であるので、同一の参照符号を付して詳細な説明は省略する。また本実施の形態の過流防止弁装置10Dの流体圧回路図は、図9に示す第4の実施形態の過流防止弁装置10Cの流体圧回路図と同様である。また本実施の形態において、流体は、気体である圧縮性流体である。
【0099】
本実施の形態の過流防止弁装置10Dにおいて、ハウジング11Dは、前述の第4の実施形態の過流防止弁装置10Cのハウジング11とほぼ同様であるので、異なる部分だけについて説明する。ハウジング11Dに形成される第1連通路17は、一次ポート15と可変絞り弁部12Dとに連通する。第2連通路18は、可変絞り弁部12Dと過流防止弁部13とに連通する。
【0100】
可変絞り弁部12Dは、前記第1連通路17と第2連通路18との間に介在され、一次ポート15から流入する流体の圧力である一次圧力P1に応じて、一次圧力P1が高くなるにつれて開度を小さくし、一次圧力P1が低くなるにつれて開度を大きくするように、開度を変化させる。可変絞り弁部12Dは、ピストン21Dおよびばね部材22Dを含んで構成される。ピストン21Dは、予め定める開度調整方向H1,H2へ変位自在にしてハウジング11Dに保持され、開度調整方向一方H1へ変位するにつれて開度を小さくし、かつ開度調整方向他方H2へ変位するにつれて開度を大きくする。ばね力発生手段であるばね部材22Dは、たとえば圧縮コイルばねで実現され、ピストン21Dに、開度調整方向他方H2へばね力を与える。
【0101】
詳細に述べると、ハウジング11Dには、第1連通路17および第2連通路18に連なり、ピストン21Dおよびばね部材22Dが嵌り込むためのピストン用空間が形成される。ピストン21Dは、開度調整方向一方H1が、ピストン21Dの軸線方向他端部24Dから軸線方向一端部23Dに向かう方向に平行となり、開度調整方向他方H2が、ピストン21Dの軸線方向一端部23Dから軸線方向他端部24Dに向かう方向に平行となるように配置されて、前記ピストン用空間に嵌り込む。このような状態でピストン21Dは、ハウジング11Dに保持される。
【0102】
ピストン21Dの軸線方向一端部23Dは、開度調整方向一方H1に開放する有底円筒状に形成されるとともに、軸線方向他端部24Dは、開度調整方向他方H2に開放する有底円筒状に形成される。またピストン21Dは、軸線方向一端部23Dが開度調整方向一方H1上流側から第1連通路17に臨むとともに、前記軸線方向一端部23Dが半径方向内方側から第2連通路18に臨むように配置される。ピストン21Dの軸線方向他端部24Dよりも軸線方向一端部23D側の部分であるフランジ部31Dは、残余の部分に比べて外径が大きく形成される。ピストン21Dの軸線方向一端部23Dよりも軸線方向他端部24D側の外周部および軸線方向他端部24Dの外周部は、シールを達成した状態で、ハウジング11Dに当接している。
【0103】
ピストン21Dには、その軸線L21Dに沿って軸線方向一端部23Dから軸線方向他端部24Dに貫通する貫通路25Dが形成される。またピストン21Dの軸線方向一端部23Dには、半径方向に貫通し、貫通路25Dおよび第2連通路18に臨んで開口する貫通孔26Dが形成される。前記貫通孔26Dの第2連通路18に対する開口面積は、貫通孔26Dの開口面積よりも小さく設定される。したがって貫通孔26Dと第2連通路18との間に、絞りが形成される。前記貫通孔26Dの第2連通路18に対する開口面積は、ピストン21Dが開度調整方向一方H1に変位するにつれて小さくなり、開度調整方向他方H2に変位するにつれて大きくなる。これによって可変絞り弁部12Dは、ピストン21Dが開度調整方向一方H1へ変位するにつれて開度が小さくなり、開度調整方向他方H2へ変位するにつれて開度が大きくなるような可変絞りを実現できる。
【0104】
またピストン21Dは、第1連通路17に連なる第1圧力室27Dと、貫通路25Dを介して第1圧力室27Dに連なる第2圧力室28Dと、ばね収容空間32Dとにハウジング11D内を仕切る。またピストン21Cの軸線方向一端部23Dには、第1圧力室27Dの流体から開度調整方向他方H2に向かう一次圧力P1を受ける第1受圧面積A1の第1受圧面29Dが形成される。詳細に述べると、第1圧力室27Dは、ピストン用空間の一部分を含み、少なくとも第1連通路17の開口部およびピストン21Dの軸線方向一端部23Dの端面に臨む。また第1受圧面29Dは、少なくともピストン21Dの軸線方向一端部23Dの端面を含む。これによってピストン21Dは、第1圧力室27Dの流体から、一次圧力P1に基づく開度調整方向他方H2の力を受けることができる。
【0105】
さらにピストン21Dの軸線方向他端部24Dには、第2圧力室28Dの流体から開度調整方向一方H1に向かう一次圧力P1を受ける第2受圧面積A2の第2受圧面30Dが形成される。詳細には、前記受圧面30Dは、ピストン21Dの軸線方向他端部24Dの端面である。これによってピストン21Dは、第2圧力室28Dの流体から、一次圧力P1に基づく開度調整方向一方H1の力を受けることができる。
【0106】
本実施の形態において、第2受圧面積A2が第1受圧面積A1よりも大きくなるように、第1受圧面29Cおよび第2受圧面30Cが形成される。これによってピストン21Dは、一次圧力P1に基づく駆動力を開度調整方向一方H1に受けることができる。
【0107】
ばね収容空間32Dは、ピストン21Dのフランジ部31Dと軸線方向一端部23Dよりも軸線方向他端部24D側の部分との間の外周部と、ハウジング11Dとが、ピストン21Dの半径方向に間隔をあけるような円筒状に形成される。ばね部材22Dは、ピストン21Dのフランジ部31Dよりも軸線方向一端部23Dがわの一部分を内挿するようにして、ばね収容空間32Dに配置される。また、ばね部材22Dはピストン21Dのフランジ部31Dに、開度調整方向他方H2上流側から当接するように配置される。これによってばね部材22Dは、ピストン21Dに開度調整方向他方H2のばね力を与えることができる。ばね収容空間32Dは、ハウジング11Dに形成される大気開放孔33Dによって、大気に開放されている。
【0108】
流体が一次ポート15から二次ポート16に流下するときの可変絞り弁部12Dの動作は、第4の実施形態の過流防止弁装置10Cにおける可変絞り弁部12Cの動作と同様なので、詳細な説明は省略する。以上のように本実施の形態の過流防止弁装置10Dは、第4の実施形態の過流防止弁装置10Cと同様の効果を達成できる。
【0109】
図11は、本発明の第6の実施形態の過流防止弁装置10Eを示す断面図である。過流防止弁装置10Eは、ハウジング11E、可変絞り弁部12E、過流防止弁部13および手動弁部14を含んで構成される。本実施の形態の過流防止弁装置10Eにおいて、過流防止弁部13および手動弁部14は、前述の第1の実施形態の過流防止弁装置10の過流防止弁部13および手動弁部14と同様であるので、同一の参照符号を付して詳細な説明は省略する。また本実施の形態の過流防止弁装置10Eの流体圧回路図は、図9に示す第4の実施形態の過流防止弁装置10Cの流体圧回路図と同様である。また本実施の形態において、流体は、気体である圧縮性流体である。
【0110】
本実施の形態の過流防止弁装置10Eにおいて、ハウジング11Eは、前述の第4の実施形態の過流防止弁装置10のハウジング11Cとほぼ同様であるので、異なる部分だけについて説明する。ハウジング11Eに形成される第1連通路17は、一次ポート15と可変絞り弁部12Eとに連通する。第2連通路18は、可変絞り弁部12Eと過流防止弁部13とに連通する。
【0111】
可変絞り弁部12Eは、前記第1連通路17と第2連通路18との間に介在され、一次ポート15から流入する流体の圧力である一次圧力P1に応じて、一次圧力P1が高くなるにつれて開度を小さくし、一次圧力P1が低くなるにつれて開度を大きくするように、開度を変化させる。可変絞り弁部12Eは、ピストン21Eおよびばね部材22Eを含んで構成される。ピストン21Eは、予め定める開度調整方向H1,H2へ変位自在にしてハウジング11Eに保持され、開度調整方向一方H1へ変位するにつれて開度を小さくし、かつ開度調整方向他方H2へ変位するにつれて開度を大きくする。ばね力発生手段であるばね部材22Eは、たとえば圧縮コイルばねで実現され、ピストン21Eに、開度調整方向他方H2へばね力を与える。
【0112】
詳細に述べると、ハウジング11Eには、第1連通路17および第2連通路18に連なり、ピストン21Eおよびばね部材22Eが嵌り込むためのピストン用空間が形成される。ピストン21Eは、開度調整方向一方H1が、ピストン21Eの軸線方向他端部24Eから軸線方向一端部23Eに向かう方向に平行となり、開度調整方向他方H2が、ピストン21Eの軸線方向一端部23Eから軸線方向他端部24Eに向かう方向に平行となるように配置されて、前記ピストン用空間に嵌り込む。このような状態でピストン21Eは、ハウジング11Eに保持される。
【0113】
ピストン21Eの軸線方向一端部23Eは、開度調整方向一方H1に開放する有底円筒状に形成されるとともに、軸線方向他端部24Eは、残余の部分に比べて外径が大きな円柱状に形成される。またピストン21Eは、軸線方向一端部23Eが開度調整方向一方H1上流側から第1連通路17に臨むとともに、前記軸線方向一端部23Eが半径方向内方側から第2連通路18に臨むように配置される。ピストン21Eの軸線方向一端部23Eよりも軸線方向他端部24E側の外周部および軸線方向他端部24Eの外周部は、シールを達成した状態で、ハウジング11Eに当接している。
【0114】
ピストン21Eには、その軸線L21Eに沿って軸線方向一端部23Eから軸線方向他端部24Eに貫通する貫通路25Eが形成される。またピストン21Eの軸線方向一端部23Eには、半径方向に貫通し、貫通路25Eおよび第2連通路18に臨んで開口する貫通孔26Eが形成される。前記貫通孔26Eの第2連通路18に対する開口面積は、貫通孔26Eの開口面積よりも小さく設定される。したがって貫通孔26Eと第2連通路18との間に、絞りが形成される。前記貫通孔26Eの第2連通路18に対する開口面積は、ピストン21Eが開度調整方向一方H1に変位するにつれて小さくなり、開度調整方向他方H2に変位するにつれて大きくなる。これによって可変絞り弁部12Eは、ピストン21Eが開度調整方向一方H1へ変位するにつれて開度が小さくなり、開度調整方向他方H2へ変位するにつれて開度が大きくなるような可変絞りを実現できる。
【0115】
またピストン21Eは、第1連通路17に連なる第1圧力室27Eと、貫通路25Eを介して第1圧力室27Eに連なる第2圧力室28Eと、ばね収容空間32Eとにハウジング11E内を仕切る。またピストン21Eの軸線方向一端部23Eには、第1圧力室27Eの流体から開度調整方向他方H2に向かう一次圧力P1を受ける第1受圧面積A1の第1受圧面29Eが形成される。詳細に述べると、第1圧力室27Eは、ピストン用空間の一部分を含み、少なくとも第1連通路17およびピストン21Eの軸線方向一端部23Eの端面に臨む。また第1受圧面29Eは、少なくともピストン21Eの軸線方向一端部23Eの端面を含む。これによってピストン21Eは、第1圧力室27Eの流体から、一次圧力P1に基づく開度調整方向他方H2の力を受けることができる。
【0116】
さらにピストン21Eの軸線方向他端部24Eには、第2圧力室28Eの流体から開度調整方向一方H1に向かう一次圧力P1を受ける第2受圧面積A2の第2受圧面30Eが形成される。詳細には、前記第2受圧面30Eは、ピストン21Eの軸線方向他端部24Eの端面である。これによってピストン21Eは、第2圧力室28Eの流体から、一次圧力P1に基づく開度調整方向一方H1の力を受けることができる。
【0117】
本実施の形態において、第2受圧面積A2が第1受圧面積A1よりも大きくなるように、第1受圧面29Eおよび第2受圧面30Eが形成される。これによってピストン21Eは、一次圧力P1に基づく駆動力を開度調整方向一方H1に受けることができる。
【0118】
ばね収容空間32Eは、ピストン21Eの軸線方向他端部24Eと軸線方向一端部23Eよりも軸線方向他端部24E側の部分との間の外周部と、ハウジング11Eとが、ピストン21Eの半径方向に間隔をあけるような円筒状に形成される。ばね部材22Eは、ピストン21Eの軸線方向他端部24Eよりも軸線方向一端部23E側の一部分を内挿するようにして、ばね収容空間32Eに配置される。また、ばね部材22Eはピストン21Eの軸線方向他端部24Eに、開度調整方向他方H2上流側から当接するように配置される。これによってばね部材22Eは、ピストン21Eに開度調整方向他方H2のばね力を与えることができる。ばね収容空間32Eは、ハウジング11Eに形成される大気開放孔33Eによって、大気に開放されている。
【0119】
流体が一次ポート15から二次ポート16に流下するときの可変絞り弁部12Eの動作は、第4の実施形態の過流防止弁装置10Cにおける可変絞り弁部12Cの動作と同様なので、詳細な説明は省略する。以上のように本実施の形態の過流防止弁装置10Eは、第4の実施形態の過流防止弁装置10Cと同様の効果を達成できる。
【0120】
また第4〜第6の実施形態の過流防止弁装置10C〜10Eは、第1圧力室27C〜27Eを形成することによって、ピストン21C〜21Eには、一次圧力P1に保持される第1圧力室27C〜27Eの流体から、開度調整方向他方H2に(P1・A1)の力を与えることができる。このような第1圧力室27C〜27Eが無い場合、一次圧力P1が非常に高いとき、このような一次圧力P1による第2圧力室28C〜28Eの流体から開度調整方向一方H1の(P1・A2)の力が、非常に大きくなり、これに抗するための開度調整方向他方H2のばね力を発生するために、非常に大形のばね部材22C〜22Eが必要となる。したがって第4〜第6の実施形態の過流防止弁装置10C〜10Eのように、第1圧力室27C〜27Eを形成することによって、第1圧力室27C〜27Eの流体からの開度調整方向他方H2の(P1・A1)の力がピストン21C〜21Eに与えられるので、ばね部材22C〜22Eによる開度調整方向他方H2のばね力を大きくする必要がないので、ばね部材22C〜22Eを小形化することができる。これによって可変絞り弁部12C〜12Eの小形化が可能となり、さらには過流防止弁装置10C〜10Eの小形化も実現することができる。
【0121】
前述の第1〜第6の実施形態の過流防止弁装置10,10A〜10Eにおいて、可変絞り弁部12,12A〜12Eのピストン21,21A〜21Eの軸線と、過流防止弁部13の過流ピストン34および手動弁部14の弁本体37の軸線とは、互いに間隔をあけて平行または略平行にして配置される。第1〜第6の実施形態の過流防止弁装置10,10A〜10Eにおいて、可変絞り弁部12,12A〜12Eのピストン21,21A〜21E、過流防止弁部13の過流ピストン34および手動弁部14の弁本体37の配置位置は、前述のような位置に限ることはない。たとえば可変絞り弁部12,12A〜12Eのピストン21,21A〜21Eの軸線と、過流防止弁部13の過流ピストン34および手動弁部14の弁本体37の軸線とは、ねじれの位置にあってもよい。
【0122】
図12は、本発明の第7の実施形態の過流防止弁装置10Fを示す断面図である。図13は、過流防止弁装置10Fを示す流体圧回路図である。過流防止弁装置10Fは、ハウジング11F、可変絞り弁部12、過流防止弁部13および手動弁部14を含んで構成される。本実施の形態の過流防止弁装置10Fにおいて、可変絞り弁部13、過流防止弁部13および手動弁部14は、前述の第1の実施形態の過流防止弁装置10の可変絞り弁部13、過流防止弁部13および手動弁部14と同様であり、これらの配置位置が異なるだけであるので、同一の参照符号を付して詳細な説明は省略する。また本実施の形態において、流体は、気体である圧縮性流体である。
【0123】
ハウジング11Fは、可変絞り弁部12、過流防止弁部13および手動弁部14を保持する。詳細に述べると、可変絞り弁部12のピストン21の軸線L21と、過流防止弁部13の過流ピストン34の軸線L34と、手動弁部14の弁本体37の軸線L37とが、同軸または大略的に同軸にして配置される。またハウジング11Fの長手方向一端部11aから長手方向他端部11bに向かって、可変絞り弁部12、過流防止弁部13および手動弁部14の順に並んで配置される。このとき可変絞り弁部12のピストン21の軸線方向一端部23は、過流防止弁部13の過流ピストン34の軸線方向一端部39に対向する。また手動弁部14の工具嵌合凹所51は、ハウジング11Fの長手方向他端部11bから外空間に開放している。
【0124】
ハウジング11Fには、一次ポート15および二次ポート16が形成される。またハウジング11Fには、第1連通路17F、第2連通路18F、第3連通路19Fおよび第4連通路20Fが形成される。第1連通路17Fは、一次ポート15と、第2連通路18Fとに連通する。第2連通路18Fは、第1連通路17Fと、可変絞り弁部12の第1圧力室27と、過流防止弁部13の過流ピストン34の内空間とに連通する。第3連通路19Fは、可変絞り弁部12の貫通孔26と、過流防止弁部13の過流ピストン34の軸線方向他端部43側とに連通する。第4連通路20Fは、手動弁部14と二次ポート16とに連通する。
【0125】
一次ポート15から過流防止弁装置10Fに流入した流体は、第1連通路17Fおよび第2連通路18Fを流下して、可変絞り弁部12および過流防止弁部13の過流ピストン34の内空間に流入する。可変絞り弁部12に流入した流体は、第1圧力室27に流入するとともに、貫通路25を介して第2圧力室28に流入する。また可変絞り弁部12の貫通路25を流下する流体の一部は、貫通孔26を介して、第3連通路19Fに流入し、さらに過流防止弁部13に流入する。過流防止弁部13が開状態のとき、過流防止弁部13に流入した流体は、第4連通路20Fをして二次ポート16から流出する。
【0126】
流体が一次ポート15から二次ポート16に流下するときの可変絞り弁部12および過流防止弁部13の動作は、第1の実施形態の過流防止弁装置10における可変絞り弁部12および過流防止弁部13の動作と同様なので、詳細な説明は省略する。以上のように本実施の形態の過流防止弁装置10Fは、第1の実施形態の過流防止弁装置10と同様の効果を達成できる。
【0127】
本発明は、以下の実施の形態が可能である。
【0128】
(1)一次ポートおよび二次ポートを連通する流路に介在され、一次ポートから流入する流体の圧力である一次圧力に応じて、一次圧力が高くなるにつれて開度を小さくし、一次圧力が低くなるにつれて開度を大きくするように、開度を変化させる可変絞り弁部と、
前記流路の可変絞り弁部よりも二次ポート側に介在され、可変絞り弁部における一次ポート側の圧力と二次ポート側の圧力との差圧が、予め定める設定差圧以上になったとき、前記流路を開状態から閉状態に切り換える過流防止弁部とを含むことを特徴とする過流防止弁装置。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】本発明の第1の実施形態の過流防止弁装置10を示す断面図である。
【図2】過流防止弁装置10を示す流体圧回路図である。
【図3】可変絞り弁部12における一次圧力P1と圧力損失ΔPとの関係を示すグラフである。
【図4】過流防止弁装置10の一次圧力P1とトリップ流量Qtとの関係を示すグラフである。
【図5】本発明の第2の実施形態の過流防止弁装置10Aを示す断面図である。
【図6】本発明の第3の実施形態の過流防止弁装置10Bを示す断面図である。
【図7】過流防止弁装置10Bを示す流体圧回路図である。
【図8】本発明の第4の実施形態の過流防止弁装置10Cを示す断面図である。
【図9】過流防止弁装置10Cを示す流体圧回路図である。
【図10】本発明の第5の実施形態の過流防止弁装置10Dを示す断面図である。
【図11】本発明の第6の実施形態の過流防止弁装置10Eを示す断面図である。
【図12】本発明の第7の実施形態の過流防止弁装置10Fを示す断面図である。
【図13】過流防止弁装置10Fを示す流体圧回路図である。
【図14】従来技術である過流防止弁装置1を示す断面図である。
【図15】流体が圧縮性流体である場合の固定絞りにおける一次圧力と圧力損失との関係を示すグラフである。
【図16】流体が圧縮性流体である場合の過流防止弁装置1の一次圧力p1とトリップ流量qtとの関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0130】
10,10A,10B,10C,10D,10E,10F 過流防止弁装置
12,12A,12B,12C,12D,12E 可変絞り弁部
13 過流防止弁部
14 手動弁部
15 一次ポート
16 二次ポート
18 連通路
21,21A,21B,21C,21D,21E ピストン
22,22A,22B,22C,22D,22E ばね部材
34 過流ピストン
35 過流ばね部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)圧縮性流体が供給される一次ポート(15)と、連通路(18)との間に、可変絞り弁部(12,12A〜12E)が設けられ、
(b)前記連通路(18)と、二次ポート(16)との間に、過流防止弁部(13)が設けられ、
(c)前記可変絞り弁部(12,12A〜12E)は、
(c1)ピストン(21,21A〜21E)であって、
軸線(L21,L21A〜L21E)に沿って開度調整方向一方(H1)と開度調整方向他方(H2)とに変位自在に保持され、
前記開度調整方向他方(H2)にあるピストン(21,21A〜21E)の軸線(L21,L21A〜L21E)方向の一端部(23,23A〜23E)は、一次ポート(15)に臨み、そのピストン(21,21A〜21E)の一端部(23,23A〜23E)から軸線(L21,L21A〜L21E)方向に沿って貫通路(25,25A〜25E)が形成され、
ピストン(21,21A〜21E)の一端部(23,23A〜23E)には、貫通路(25,25A〜25E)と前記連通路(18)とに臨んで開口する貫通孔(26,26A〜26E)が形成され、
ピストン(21,21A〜21E)が前記開度調整方向一方(H1)に変位するにつれて、前記貫通孔(26,26A〜26E)の前記連通孔(18)に対する開口面積が小さくなり、ピストン(21,21A〜21E)が前記開度調整方向他方(H2)に変位するにつれて前記開口面積が大きくなることによって、可変絞りを実現するピストン(21,21A〜21E)と、
(c2)ピストン(21,21A〜21E)に、前記開度調整方向他方(H2)のばね力を与えるばね部材(22,22A〜22E)とを有し、
(c3)一次圧力P1が高くなるにつれて開度を小さくし、一次圧力P1が低くなるにつれて開度を大きくする可変絞り弁部(12,12A〜12E)であり、
(d)前記過流防止弁部(13)は、
(d1)過流ピストン(34)であって、
軸線(L34)に沿って軸線方向一方(R1)と軸線方向他方(R2)とに変位自在に保持され、
前記軸線方向一方(R1)にある過流ピストン(34)の一端部(39)は、一次ポート(15)に臨み、
前記軸線方向他方(R2)にある過流ピストン(34)の他端部(43)は、前記連通路(18)に臨み、
過流ピストン(34)が前記軸線方向一方(R1)に変位して前記連通路(18)と二次ポート(16)との流路を開状態とし、
過流ピストン(34)が前記軸線方向他方(R2)に変位して前記連通路(18)と二次ポート(16)との流路を閉状態とする過流ピストン(34)と、
(d2)過流ピストン(34)に、前記軸線方向一方(R1)のばね力を与える過流ばね部材(35)とを有し、
(d3)一次ポート(15)と前記連通路(18)との差圧ΔPが、予め定める設定差圧以上になったとき、過流ピストン(34)によって前記流路を開状態から閉状態に切り換える過流防止弁部(13)とを含むことを特徴とする過流防止弁装置。
【請求項2】
過流ピストン(34)による前記流路の閉状態を開状態とするように、過流ピストン(34)を前記軸線方向一方(R1)に変位する弁復帰手段をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の過流防止弁装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−224040(P2008−224040A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−108298(P2008−108298)
【出願日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【分割の表示】特願2003−69714(P2003−69714)の分割
【原出願日】平成15年3月14日(2003.3.14)
【出願人】(592216188)株式会社カワサキプレシジョンマシナリ (67)
【Fターム(参考)】