説明

過給機の冷却装置

【課題】機関冷間時における過給機の過給効率の低下を抑えることのできる過給機の冷却装置を提供する。
【解決手段】排気と冷却水との間で熱交換を行う排気冷却用のアダプタ50と、ハウジング内ウォータジャケット61aが形成されたターボチャージャ60と、アダプタ50に供給された冷却水をハウジング内ウォータジャケット61aに供給する冷却水通路80と、冷却水通路80内の流量を調整する制御バルブ70とを備える。機関冷間時には、機関暖機時に比べて冷却水通路80内の流量が減少するように、制御装置90は制御バルブ70の開度を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過給機の冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、こうした過給機の冷却装置としては、例えば特許文献1に記載のものがある。この特許文献1に記載の過給機では、吸気を過給するコンプレッサタービンを収容しているコンプレッサハウジング内にウォータジャケットを設け、このウォータジャケットに冷却水を供給することで過給による吸気の温度上昇を抑え、これにより過給効率を向上させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−35153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、冷却水の温度が低い機関の冷間時にコンプレッサハウジングに対して冷却水を供給すると、過給機の温度上昇が妨げられるようになる。このように過給機の温度上昇が妨げられると、過給機内に存在する潤滑油の粘度低下も妨げられることにより、過給機の過給効率が低下してしまうおそれがある。
【0005】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、機関冷間時における過給機の過給効率の低下を抑えることのできる過給機の冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、内燃機関から排出される排気と機関の冷却水との間で熱交換を行う熱交換器と、ハウジング内にウォータジャケットが形成された過給機と、前記熱交換器で熱交換された前記冷却水を前記ウォータジャケットに供給する冷却水通路とを備える過給機の冷却装置であって、前記冷却水通路内の流量を調整する制御バルブを備えており、機関冷間時には、機関暖機時に比べて前記冷却水通路内の流量を減少させることをその要旨とする。
【0007】
同構成によれば、排気と熱交換した冷却水が過給機のハウジング内に供給される。ここで、機関冷間時には冷却水の温度が低いため、熱交換器から過給機に向けて多量の冷却水を供給すると、過給機の温度上昇が妨げられてしまう。そこで、同構成では、機関冷間時には、機関暖機時に比べて冷却水通路内の流量を減少させるようにしている。そのため、熱交換器から過給機に温度の低い冷却水が多量に供給されることを抑えることができる。従って、機関冷間時における過給機の温度上昇が促進されて、過給機内に存在する潤滑油の粘度低下も促進されることにより、過給効率の低下を抑えることができるようになる。
【0008】
また、冷却水通路内の流量は制御バルブで調整可能になっており、機関暖機時には、機関冷間時に比べて冷却水通路内の流量が増大される。そのため、冷却水による過給機の冷却を好適に行うことも可能となる。
【0009】
また、外気などが過剰に低い環境下では、過給機が凍結するおそれがある。この点、同構成によれば、機関冷間時における過給機の温度上昇を促進させることができるため、凍結した過給機を早期に解凍することも可能になる。
【0010】
機関冷間時に冷却水通路内の流量を減少させるに際しては、冷却水通路内に冷却水を流しつつ、その流量を機関暖機時よりも減少させるといった構成を採用するほか、請求項2に記載の発明によるように、機関冷間時には、前記冷却水通路内の冷却水の流れを停止させる、といった構成を採用することもできる。同構成によれば、冷却水通路内で冷却水が停滞すると共に、熱交換器等を介して排気の熱量が冷却水通路に伝導してくるために同冷却水通路の温度は高くなる。このように内部で冷却水が停滞した状態で冷却水通路の温度が上昇すると、制御バルブから過給機のウォータジャケットまでの間の存在する冷却水は水蒸気化し、その温度は冷却水の沸点を超える温度になる。このように過給機のウォータジャケットには高温化した水蒸気が存在するようになるため、過給機の温度上昇を更に促進させることができるようになる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の過給機の冷却装置において、前記熱交換器は、機関のシリンダヘッドとエキゾーストマニホールドとの間に介在されて内部に排気通路が形成されている排気冷却用のアダプタであることをその要旨とする。
【0012】
同構成によれば、内燃機関から排出された直後の高温の排気が熱交換器を通過する。このように排気温度があまり低下していない排気の上流側において熱交換が行われるため、排気から冷却水への熱移動量を十分に高めることができ、これにより過給機の温度上昇を促進させることができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1または2に記載の過給機の冷却装置において、前記熱交換器は、機関の冷却水が流れるウォータジャケットが形成されたエキゾーストマニホールドであることをその要旨とする。
【0014】
同構成によっても、内燃機関から排出された直後の高温の排気が熱交換器を通過する。つまり排気温度があまり低下していない排気の上流側において熱交換が行われるため、排気から冷却水への熱移動量を十分に高めることができ、これにより過給機の温度上昇を促進させることができる。また、エキゾーストマニホールド自体を熱交換器として使用することができるため、請求項4に記載の構成と比べて排気系の構造を簡素化することができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の過給機の冷却装置において、前記ハウジングは、吸気を過給するコンプレッサホイールが収容されたコンプレッサハウジングであることをその要旨とする。
【0016】
同構成によれば、機関冷間時において、吸気が通過するコンプレッサハウジングの温度上昇が促進されるため、機関の燃焼室に流入する吸気の温度も高くなり、これにより吸気に混合される燃料の霧化を促進させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明にかかる過給機の冷却装置の第1実施形態について、これが適用される内燃機関及びその周辺構成を示す概略図。
【図2】同実施形態で実行される制御バルブの開閉処理の手順を示すフローチャート。
【図3】同実施形態におけるハウジング水温や制御バルブの開閉状態を示すタイミングチャート。
【図4】第2実施形態で実行される制御バルブの開閉処理の手順を示すフローチャート。
【図5】同実施形態におけるハウジング水温や制御バルブの開閉状態を示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下、この発明にかかる過給機の冷却装置を具体化した第1実施形態について、図1〜図3を参照して説明する。
【0019】
図1に示すように、エンジン10は、シリンダ等を有するシリンダブロック12や、このシリンダブロック12の上部に載置されるシリンダヘッド11を備えている。シリンダヘッド11には吸気通路20が接続されている。
【0020】
また、シリンダヘッド11とエキゾーストマニホールド30との間には排気冷却用のアダプタ50が設けられている。アダプタ50の内部には、排気ポート及びエキゾーストマニホールド30に接続される排気通路50bが設けられるとともに、エンジン10の冷却水が供給されるアダプタ内ウォータジャケット50aが排気通路50bを取り囲むようにして形成されている。このアダプタ内ウォータジャケット50aには、シリンダヘッド11内を流れる冷却水の一部が導入される。このアダプタ50は、エンジン10から排出される排気とエンジン10の冷却水との間で熱交換を行う熱交換器として機能する。
【0021】
エキゾーストマニホールド30の排気下流側には、ターボチャージャ60のタービンハウジング62が接続されている。このタービンハウジング62には、排気の流勢によって回転駆動されるたタービンホイールが収容されている。また、吸気通路20の途中には、ターボチャージャ60のコンプレッサハウジング61が接続されている。このコンプレッサハウジング61には、吸気を過給するコンプレッサホイールが収容されている。また、コンプレッサハウジング61の壁部には、冷却水が流れるハウジング内ウォータジャケット61aが形成されている。
【0022】
上記アダプタ内ウォータジャケット50aと上記ハウジング内ウォータジャケット61aとは、第1冷却水通路81及び第2冷却水通路82とで構成される冷却水通路80にて連通されている。また、冷却水通路80の途中には、同冷却水通路80内の流量を調整する制御バルブ70が設けられている。この制御バルブ70の開度が全開にされると冷却水通路80内の流量は最大となり、全開にされると冷却水通路80内の流量は「0」に、つまり冷却水通路80内での冷却水の流れは停止される。
【0023】
これらアダプタ50、冷却水通路80、制御バルブ70、ハウジング内ウォータジャケット61aを有するコンプレッサハウジング61によってターボチャージャ60の冷却装置が構成されている。この冷却装置では、シリンダヘッド11のウォータジャケットに流入した冷却水がアダプタ50、制御バルブ70、第1冷却水通路81を介してコンプレッサハウジング61内に供給される。そして、コンプレッサハウジング61内に供給された冷却水は、第2冷却水通路82、制御バルブ70、アダプタ50を介してシリンダヘッド11のウォータジャケットに戻される。
【0024】
エンジン10には、機関運転状態を検出するための各種センサが取り付けられている。例えば、第1水温センサ100によってエンジン10内を流れる冷却水の温度である機関水温THWeが検出される。また、第2水温センサ110によってハウジング内ウォータジャケット61aを流れる冷却水の温度であるハウジング水温THWhが検出される。
【0025】
エンジン10の各種制御や制御バルブ70の開閉制御は、制御装置90によって行われる。この制御装置90は、中央処理制御装置(CPU)、各種プログラムやマップ等を予め記憶した読出専用メモリ(ROM)、CPUの演算結果等を一時記憶するランダムアクセスメモリ(RAM)、タイマカウンタ、入力インターフェース、出力インターフェース等を備えたマイクロコンピュータを中心に構成されている。そして、制御装置90は、各種センサ等によって検出される機関運転状態に応じて機関制御等を行う。
【0026】
以下、図2を参照して制御バルブ70の開閉処理の手順を説明するとともに、図3を参照して同開閉処理による制御バルブの開閉状態を説明する。なお、この開閉処理は制御装置90によって所定周期毎に繰り返し実行される。
【0027】
本処理が開始されるとまず、機関冷間時か否かが判定される(S100)。ここでは、機関水温THWeが機関の暖機完了を示す判定温度Hよりも低いときに肯定判定される。そして、機関冷間時ではない、つまり機関暖機が完了しているときには(S100:NO)、ターボチャージャ60を冷却水で冷却するために、制御バルブ70の開度は全開にされて(S400、図3の時刻t2以降)、ハウジング水温THWhの上昇が抑えられていく。
【0028】
一方、機関冷間時であると判定される場合には(S100:YES)、次に、ハウジング水温THWhが閾値α未満であるか否かが判定される(S200)。この閾値αは、ハウジング内ウォータジャケット61aに供給される冷却水の温度が過剰に高くなって、ターボチャージャ60に熱損傷を与えることが無いように設定されている値である。そして、ハウジング水温THWhが閾値α以上である場合には(S200:NO)、ターボチャージャ60を冷却水で冷却するために、制御バルブ70の開度は全開にされる(S400)。
【0029】
一方、ハウジング水温THWhが閾値α未満である場合には(S200:YES)、制御バルブ70の開度が冷間時開度Dに設定される(図3の時刻t1〜t2)。この冷間時開度Dは、制御バルブ70の全開開度よりも小さい開度、より詳細には制御バルブ70の全閉開度よりもやや大きい開度であって、冷却水通路80内に冷却水を流しつつ、その流量が機関暖機時よりも少なくなる開度に設定されている。そして図3に示すように、時刻t1〜時刻t2の間では、アダプタ50にて機関熱及び排気熱によって昇温された冷却水が冷間時開度Dに見合った流量にてハウジング内ウォータジャケット61aに供給される。そのため、少なくとも時刻t1〜時刻t2の間では、ハウジング水温THWhが機関水温THWeよりも高くなる。
【0030】
こうしてステップS300またはステップS400の処理が行われると本処理は一旦終了される。
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0031】
本実施形態では、排気と熱交換を行った冷却水がターボチャージャ60のコンプレッサハウジング61内に供給される。ここで、機関冷間時には冷却水の温度が低いため、アダプタからターボチャージャ60に向けて多量の冷却水を供給すると、ターボチャージャ60の温度上昇が妨げられてしまう。この点、本実施形態では、先の図2に示したステップS100において、機関冷間時であると判定されるときには、ステップS300にて制御バルブ70の開度を冷間時開度Dにして、機関暖機時に比べて冷却水通路80内の流量が減少するようにしている。そのため、アダプタ50からターボチャージャ60に温度の低い冷却水が多量に供給されることを抑えることができる。従って、機関冷間時におけるターボチャージャ60の温度上昇が促進されて、ターボチャージャ60内に存在する潤滑油の粘度低下も促進されることにより、ターボチャージャ60の過給効率の低下が抑えられる。
【0032】
また、冷却水通路80内の流量は制御バルブ70で調整可能になっており、先の図2に示したステップS100において機関暖機が完了していると判定されるときには、ステップS400の処理を実行することにより、機関冷間時に比べて冷却水通路80内の流量が増大するようにしている。そのため、機関の暖機が完了しているときにはターボチャージャ60に多量の冷却水を供給することができ、冷却水によるターボチャージャ60の冷却を十分に行うことも可能となる。
【0033】
また、外気などが過剰に低い環境下では、ターボチャージャ60が凍結するおそれがある。より詳細にはターボチャージャ60内の潤滑油や水分等が凍結して当該ターボチャージャ60が正常に機能しないおそれがある。この点、本実施形態によれば、機関冷間時におけるターボチャージャ60の温度上昇を促進させることができるため、凍結したターボチャージャ60を早期に解凍することも可能になる。
【0034】
また、熱交換器として、シリンダヘッド11とエキゾーストマニホールド30との間に介在されて内部に排気通路50bが形成された排気冷却用のアダプタ50を使用するようにしている。このアダプタ50には、エンジン10から排出された直後の高温の排気が通過する。このように排気温度があまり低下していない排気の上流側において熱交換を行うようにしているため、排気から冷却水への熱移動量を十分に高めることができる。従って、ターボチャージャ60の温度上昇がさらに促進される。
【0035】
そして、吸気を過給するコンプレッサホイールが収容されたコンプレッサハウジング61に、アダプタ50で昇温された冷却水を供給するようにしている。そのため、機関冷間時において、吸気が通過するコンプレッサハウジング61の温度上昇が促進されるため、エンジン10の燃焼室に流入する吸気の温度も高くなり、これにより吸気に混合される燃料の霧化を促進させることも可能となる。
【0036】
以上説明したように、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)排気と冷却水との間で熱交換を行うアダプタ50と、コンプレッサハウジング61にハウジング内ウォータジャケット61aが形成されたターボチャージャ60と、アダプタ50で熱交換された冷却水をハウジング内ウォータジャケット61aに供給する冷却水通路80とを備えるようにしている。そして、冷却水通路80内の流量を調整する制御バルブ70を備えるとともに、機関冷間時には、機関暖機時に比べて冷却水通路80内の流量が減少するように前記制御バルブ70の開度を制御するようにしている。そのため、機関冷間時におけるターボチャージャ60の温度上昇が促進されて、ターボチャージャ60内に存在する潤滑油の粘度低下も促進されることにより、過給効率の低下を抑えることができるようになる。
【0037】
(2)また、冷却水通路80内の流量は制御バルブ70で調整可能になっており、機関暖機時には、機関冷間時に比べて冷却水通路80内の流量が増大される。そのため、冷却水によるターボチャージャ60の冷却を好適に行うことも可能となる。
【0038】
(3)また、機関冷間時におけるターボチャージャ60の温度上昇を促進させることができるため、凍結したターボチャージャ60を早期に解凍することも可能になる。
(4)上記熱交換器として、シリンダヘッド11とエキゾーストマニホールド30との間に介在されて内部に排気通路50bが形成されている排気冷却用のアダプタ50を使用するようにしている。そのため、排気から冷却水への熱移動量を十分に高めることができ、これによりターボチャージャ60の温度上昇をさらに促進させることができる。
【0039】
(5)吸気を過給するコンプレッサホイールが収容されたコンプレッサハウジング61に、アダプタ50で昇温された冷却水を供給するようにしている。そのため、吸気に混合される燃料の霧化を促進させることができる。
(第2実施形態)
次に、本発明を具体化した第2実施形態について、図4及び図5を参照して説明する。
【0040】
本実施形態では、機関冷間時において制御バルブ70を全閉にするようにしており、先の図2に示したステップS300の処理のみが第1実施形態とは異なっている。そこで、以下ではこうした相異点を中心に説明する。
【0041】
図4に、本実施形態における制御バルブ70の開閉処理の手順を示すとともに、図5には、同開閉処理による制御バルブの開閉状態を示す。なお、この開閉処理も制御装置90によって所定周期毎に繰り返し実行される。
【0042】
本処理が開始されるとまず、機関冷間時か否かが判定される(S100)。ここでは、機関水温THWeが機関の暖機完了を示す判定温度Hよりも低いときに肯定判定される。そして、機関冷間時ではない、つまり機関暖機が完了しているときには(S100:NO)、ターボチャージャ60を冷却水で冷却するために、制御バルブ70の開度は全開にされる(S400)。
【0043】
一方、機関冷間時であると判定される場合には(S100:YES)、次に、ハウジング水温THWhが閾値α未満であるか否かが判定される(S200)。この閾値αは、第1実施形態で説明した値と同一である。そして、ハウジング水温THWhが閾値α以上である場合には(S200:NO)、ターボチャージャ60を多量の冷却水で冷却する必要があるため、制御バルブ70の開度は全開にされて(S400、図5の時刻t2以降)、冷却水通路80の流量は最大にされる。これによりハウジング水温THWhの上昇が抑えられて、その温度は徐々に低下していく。
【0044】
一方、ハウジング水温THWhが閾値α未満である場合には(S200:YES)、制御バルブ70は全閉にされる(図5の時刻t1〜t2)。
こうしてステップS500またはステップS400の処理が行われると本処理は一旦終了される。
【0045】
次に、本実施形態の作用を説明する。
本実施形態では、ステップS100にて機関冷間時であると判定されると、ステップS500の処理が実行されることにより、冷却水通路80内の冷却水の流れが停止する(図5の時刻t1〜t2)。従って、冷却水通路80内で冷却水が停滞するようになる。また、排気の熱量がアダプタ50等を介して冷却水通路80に伝導してくるために同冷却水通路80の温度は高くなる。このように内部の冷却水が停滞した状態で冷却水通路80の温度が上昇すると、制御バルブ70からターボチャージャ60のハウジング内ウォータジャケット61aまでの間の存在する冷却水は水蒸気化し、その温度は冷却水の沸点を超える温度になる。従って、図5に示した時刻t1〜時刻t2の間では、ハウジング水温THWh(この場合には水蒸気の温度)が、液体状態となっている冷却水の温度、つまり機関水温THWeよりも非常に高くなる。このようにしてハウジング内ウォータジャケット61aには、高温化した水蒸気が存在するようになるため、ターボチャージャ60の温度上昇を更に促進される。
【0046】
以上説明したように、本実施形態によれば、上記(1)〜(5)の効果に加えて、さらに次の効果を得ることができる。
(6)機関冷間時には、冷却水通路80内の冷却水の流れを停止させるようにしている。そのため、ターボチャージャ60のハウジング内ウォータジャケット61aには高温化した水蒸気が存在するようになり、ターボチャージャ60の温度上昇を更に促進させることができるようになる。
【0047】
なお、上記各実施形態は以下のように変更して実施することもできる。
・アダプタ50で熱交換された冷却水をコンプレッサハウジング61に供給するようにした。この他、タービンハウジング62の壁部にウォータジャケットを設け、このウォータジャケットに対してアダプタ50で熱交換された冷却水を供給するようにしてもよい。
【0048】
・上記各実施形態では、エンジン10から排出される排気とエンジン10の冷却水との間で熱交換を行う熱交換器が、シリンダヘッド11とエキゾーストマニホールド30との間に介装されたアダプタ50であったが、この他のものを使用するようにしてよい。
【0049】
例えば、エキゾーストマニホールド30にエンジン10の冷却水が流れるウォータジャケットを形成して、このウォータジャケットが形成されたエキゾーストマニホールドを熱交換器として使用するようにしてもよい。この場合でも、エンジン10から排出された直後の高温の排気が熱交換器を通過する。つまり排気温度があまり低下していない排気の上流側において熱交換が行われるため、排気から冷却水への熱移動量を十分に高めることができ、これによりターボチャージャ60の温度上昇を促進させることができる。また、エキゾーストマニホールド自体を熱交換器として使用することができるため、アダプタ50を使用する構成と比べて排気系の構造を簡素化することができる。
【0050】
また、排気上流側に限らず、排気系の任意の場所に熱交換器を設けるようにしてもよい。例えば、ターボチャージャ60の排気下流側に設けられる触媒装置の外周に熱交換器を設けるようにしたり、ターボチャージャ60の排気下流側における排気管に熱交換器を設けるようにしてもよい。
【0051】
・ハウジング水温THWhを第2水温センサ110で実際に計測するようにしたが、こうしたセンサを設けずに機関運転状態から推定するようにしてもよい。例えば、機関水温THWeと機関負荷と機関始動後の経過時間などに基づいてハウジング水温THWhを推定するようにしてもよい。
【0052】
・制御バルブ70の開閉を制御装置90で制御するようにした。この他、バイメタルなどのように、温度に応じて変形する素材を利用して制御バルブ70の開閉を行わせるようにしてもよい。
【0053】
・上記各実施形態で説明したターボチャージャ60は、排気の流勢を利用して過給を行う排気駆動式の過給機であった。この他、エンジン10のクランクシャフトからの動力によって駆動される機械駆動式の過給機、いわゆるスーパーチャージャであってもよい。
【符号の説明】
【0054】
10…エンジン、11…シリンダヘッド、12…シリンダブロック、20…吸気通路、30…エキゾーストマニホールド、50…アダプタ、50a…アダプタ内ウォータジャケット、50b…排気通路、60…ターボチャージャ、61…コンプレッサハウジング、61a…ハウジング内ウォータジャケット、62…タービンハウジング、70…制御バルブ、80…冷却水通路、81…第1冷却水通路、82…第2冷却水通路、90…制御装置、100…第1水温センサ、110…第2水温センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から排出される排気と機関の冷却水との間で熱交換を行う熱交換器と、ハウジング内にウォータジャケットが形成された過給機と、前記熱交換器で熱交換された前記冷却水を前記ウォータジャケットに供給する冷却水通路とを備える過給機の冷却装置であって、
前記冷却水通路内の流量を調整する制御バルブを備えており、
機関冷間時には、機関暖機時に比べて前記冷却水通路内の流量を減少させる
ことを特徴とする過給機の冷却装置。
【請求項2】
機関冷間時には、前記冷却水通路内の冷却水の流れを停止させる
請求項1に記載の過給機の冷却装置。
【請求項3】
前記熱交換器は、機関のシリンダヘッドとエキゾーストマニホールドとの間に介在されて内部に排気通路が形成されている排気冷却用のアダプタである
請求項1または2に記載の過給機の冷却装置。
【請求項4】
前記熱交換器は、機関の冷却水が流れるウォータジャケットが形成されたエキゾーストマニホールドである
請求項1または2に記載の過給機の冷却装置。
【請求項5】
前記ハウジングは、吸気を過給するコンプレッサホイールが収容されたコンプレッサハウジングである
請求項1〜4のいずれか1項に記載の過給機の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−2307(P2013−2307A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131467(P2011−131467)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】