説明

過酢酸水をオンサイト且つオンデマンド生産するための連続した方法

水溶液中または気相の過酢酸が、連続した方法にてオンサイト且つオンデマンドで調製される。下流操作の需要を満たすため、制御された速度で過酢酸を生産することができる。1つの態様において、パイプラインリアクタおよび蒸留塔が過酢酸の生産に用いられる。別の態様において、装置は、連続ポットリアクタおよび蒸留塔を過酢酸の生産用に含む。本発明は、現在利用可能な方法と比較してはるかに安全な過酢酸水の供給源を提供できる可能性を有しており、それは部分的には、リアクタ内の反応物、特に気相の反応物のインベントリーが制限されていることによる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、消毒、滅菌、漂白、および化学合成などの用途に有用な酸化剤である過酢酸水の調製に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
過酢酸(本明細書においてPAAまたはHOOAcと表す)は、広範な種々の最終用途におけるその有用性が長年認識されている。例えば、水および廃水の消毒において、PAAは、毒性副産物の生産または化学残留物の残留を伴うことなく、公衆および環境に有害な微生物および病原体を破壊する。漂白の用途においては、PAAは繊維の強度を低下させることなく、より高い水準の白色度をもたらす。機材の衛生化、穀物および土壌の滅菌、および化学合成を含むその他の用途も、代替物に優るPAAの恩典による利益を受ける。
【0003】
PAAは現在、微量の安定剤を伴う過酸化水素、酢酸、水、および硫酸の平衡混合物(本明細書において平衡過酢酸またはeq-PAAと表す)として商業的に生産されている。活性を示す過酢酸の含有量は、特定の最終用途に応じて、典型的に5〜35重量%に制御されている。
【0004】
しかしeq-PAAには、その実用的有用性を制限するいくつかの短所がある。例えば、eq-PAAは、特に高濃度において、固有の不安定性および安全上の懸念によって使用が制限される。National Fire Prevention Association(NFPA)基準によれば、35%溶液は可燃性である。商用輸送規制では公共の道路上を輸送する場合の濃度を35%未満に制限しているが、製造業者は、特別な状況を除いて、典型的には濃度を15%に制限している。
【0005】
平衡産物として、eq-PAAはかなりの量の未反応の原料を含有する。それらの未反応材料は、活性PAAのコストを2〜3倍増加させ得る経済的な無駄を意味する。
【0006】
これら未反応材料の存在がeq-PAAの使用の妨げとなる用途が多数存在する。例えば、従来の廃水処理場において、未反応の過酸化水素(H2O2)および酢酸(HOAc)は、毒性、化学的酸素要求量(COD)、生化学的酸素要求量(BOD)、および全有機炭素(TOC)などを含む、最終排水の負荷特性に大きく寄与する。これらの特性は全て、米国Clean Water Actの下に公表されている地域および連邦政府の排水許可(例えば NPDES, National Pollutant Discharge Elimination System)を満たさなければならない。
【0007】
eq-PAAの制限を緩和するためのいくつかの方法が提唱されている。Lokkesmoreらの米国特許第5,122,538号(特許文献1)には、使用時点においてオンサイトで平衡過酢酸産物を生産する方法が開示されている。同方法は、非膨張性酸交換樹脂を触媒として用いて、酢酸および過酸化水素から過酢酸を生産する。この方法の欠点は、過酢酸産物がかなりの量の酢酸および過酸化水素を含有することである。長時間の平衡時間(数時間)は過酢酸の大量のインベントリー(inventory)を必要とし、それは、特別な予防措置を要する追加の貯蔵ハザードを意味する。オンサイトの生産および貯蔵用のこの方法は、コスト、安全性、および環境に対する有害な影響を保持している。
【0008】
より完全な解決法は、eq-PAA中の非PAA成分を分離および再循環することを含む。これらに含まれるものとして、1950年代から利用可能になっている蒸留PAA(本明細書においてaq-PAAと表す)がある。
【0009】
Weibergらの初期の米国特許第3,264,346号(特許文献2)には、酢酸、過酸化水素、硫酸、水および過酢酸を含有する反応媒質から溶液を蒸留することによって過酢酸の水溶液を生産するための方法が説明されている。この処理の使用は、過酸化水素と酢酸のモル比が5:1〜15:1であることを要する。
【0010】
Swern, D.「Organic Peroxides」Vol. 1, John Wiley & Sons, New York, 1970, pp. 349-351(非特許文献1)には、酢酸、過酸化水素、過酢酸、および硫酸触媒を実質的な平衡状態で含有する水性反応媒質から過酢酸を蒸留することによって過酢酸を生産するための方法が説明されている。
【0011】
他の技術には、蒸留、パージ処分、および産物安定化など、aq-PAA生産方法の具体的な局面が説明されている。
【0012】
過酢酸水生産のための連続した方法の1つの実例はPudasの米国特許第5,886,216号(特許文献3)である(EP 0789016(特許文献4)も参照)。同特許には、前述のようにWeibergら(US 3,264,346(特許文献2))およびSwernが説明した様式による過酢酸水の生産が説明されているが、蒸留に必要な熱エネルギー入力が、ポンプと熱交換器とからなる外部ループを通る反応媒質の循環によって供給される点が異なる。循環速度は、外部ループ内における蒸発を防ぐための十分なレベルに保たれ、同時に、熱入力は、熱交換器を通って温水を循環させることによって反応媒質0.2KW/KGを超えるレベルに保たれる。この様式により、リアクタ上のジャケットを通して温水を循環させるよりも効率的な熱伝達が実現できるが、この方法は、リアクタ内の高度の蒸発および液滞留量に関連するハザードという不利な点を抱えている。
【0013】
EP 1004576 A1(特許文献5)には、酸性触媒の存在下で水性媒質中において過酸化水素および酢酸を反応させ、そして過酢酸を連続的に蒸留することによって過酢酸を生産するための方法であって、反応媒質中の過酸化水素と酢酸のモル比がそれぞれ0.6:1〜4:1の範囲であり、反応媒質が自然の対流沸騰によってサーモサイホンリボイラーを通して循環される方法が開示されている。
【0014】
別の派生物は、新鮮な酸性触媒を反応媒質に連続的に供給し同時に同程度の量を連続的に引き出して方法の安全性を脅かす不純物の媒質を精製するという、反応物質スパージングを含む。媒質スパージングの1つの実例はPohjanvesiらの米国特許出願第20020177732号(特許文献6)に説明されており、同出願は、媒質の一部をボトム産物として引き出すことによって反応媒質に触媒を連続的に供給することによる改善を説明している。得られる媒質を蒸留して、最大収率でaq-PAAにする。
【0015】
EP 1247802(特許文献7)には、酸性パージ流中に残留した硫酸および酢酸を中和し、蒸留した過酢酸産物とパージ流とを組み合わせることによって、酸性パージ流を処分するための方法が説明されている。廃液流をなくすことに加えて、やや良好な原料の利用が実現される。
【0016】
別の実例は、aq-PAAの安定化に安定剤および冷却器を用いることをさらに説明したEP 98203946.3(特許文献8)である。
【0017】
別の実例はPohjanvesiらの米国特許出願第20020193626号(特許文献9)に説明されており、同出願は、塩基を用いて未反応の酸を中和し、これにより蒸留されたPAA産物が安定化されることを説明している。重要な点として、これらの酸中和方法は全て、化学量論的等量の塩基を追加すること、およびほとんどの用途において望ましくない共役塩を導入することなど、共通の欠点を抱えている。
【0018】
PAAに固有の不安定性は、aq-PAAの別の短所、すなわちその輸送適性につながる。周囲温度(例えば20℃)で貯蔵した場合、aq-PAAは迅速にH2O2およびHOAcに戻る(1日あたり約1.5%の分解)。低温(例えば0℃)で貯蔵した場合、この逆反応は顕著に低下し、産物は妥当な貯蔵寿命(1日あたり約0.3%の分解)を保つ可能性がある。したがって、aq-PAAは入念な冷蔵機材および制御がなければ長時間にわたって十分安定ではなく、このことはaq-PAAの流通および貯蔵を大幅に複雑にする。
【0019】
現在まで、米国運輸省(USDOT)は、300ガロンの中間バルクコンテナ(IBC)を超えるコンテナによるeq-PAAの輸送を許可しておらず、一方、aq-PAAの輸送に関する規制は示されていない。したがってPAAは、消毒用の次亜塩素酸ナトリウムなど従来のバルク化学物質と競合できるバルク量および価格では出荷できない。
【0020】
要約すると、aq-PAA生産に関連する先行技術には、最高収率のPAAを生産すること、ならびに、最終用途の要件にかかわらず生産、取り扱い、および貯蔵中のPAAの安定性に対処することという両方の懸念がある。
【0021】
さらに、現在まで、aq-PAA生産技術は、専用の化学物質製造施設の中でのみ商業的に応用されている。これらの方法は、大量の反応溶液、および蒸留塔基部の溶液の上の大きなヘッドスペースを用いた、PAAの大規模生産用に設計されている。この技術に関連する原理的なハザードは、リアクタ中の液体の表面上の蒸気空間中に不安定な条件(可能性として気相爆発)が存在する可能性である。
【0022】
したがって、以上説明した先行技術のいずれも、aq-PAAの実際的なオンサイト生産(すなわち、具体的な最終用途に専用のもの)に適した小〜中規模方法を教示していない。重大な廃棄物を放出することなくPAAを生産し且つ種々の用途に適用するための、より安全で且つ費用対効果の高い方法に対する需要が存在する。幅広い種々の用途に適するよう種々のオンデマンド制御によりaq-PAAを生産できる連続した方法、特に、ある範囲の処理条件下において且つ人による最小限の介入を用いて安全且つ効率的に運転できる処理を開発することが望ましい。
【0023】
【特許文献1】Lokkesmoreら、米国特許第5,122,538号
【特許文献2】Weibergら、米国特許第3,264,346号
【特許文献3】Pudas、米国特許第5,886,216号
【特許文献4】EP 0789016
【特許文献5】EP 1004576 A1
【特許文献6】Pohjanvesiら、米国特許出願第20020177732号
【特許文献7】EP 1247802
【特許文献8】EP 98203946.3
【特許文献9】Pohjanvesiら、米国特許出願第20020193626号
【非特許文献1】Swern, D.,「Organic Peroxides」Vol. 1, John Wiley & Sons, New York, 1970, pp. 349-351
【発明の開示】
【0024】
発明の概要
1つの局面において、本発明は、下流操作の需要を満たすための制御された速度で過酢酸水をインサイチュー(オンサイト)且つオンデマンドで調製する連続した方法に関する。1つの好ましい態様において、水溶液中または気相の過酢酸は、循環する連続パイプライン(管式またはプラグ流れ式)リアクタおよび蒸留塔(精留塔)において生産される。リアクタ内の圧力は、好ましくは、従来採用されているより高い温度での運転を可能にしこれによりリアクタ内での気相の形成を防ぐため、十分高く保たれる。別の態様において、水溶液中または気相の過酢酸は、連続ポットリアクタと蒸留塔とを有する装置内で調製される。この構成は、資本コストがより低いこと、およびリアクタに含有される反応性化学物質のインベントリーが比較的小さいことなどの利点を提供し、したがって大規模運転と比較して高い安全性をもたらすため、需要がより少ない用途に特に好適である。
【0025】
過酢酸水のオンサイト用途は、好ましくは、下流操作の需要を満たすよう生産速度を制御するため、連続的にモニターされる。使用時点において過酢酸水をオンデマンド生産するためのモジュール式完全自動化装置が利用できることにより、過酢酸水の輸送および貯蔵のハザードおよびコストが解消される。
【0026】
本発明の方法は、既存の技術により利用できる過酢酸水の供給源と比較してはるかに安全な供給源を提供できる可能性を有する。これは、リアクタ内の反応物、特に気相の反応物のインベントリーが制限されていることによる部分が大きい。本発明の方法は、消毒、衛生化、漂白、脱リグニン、脱硫、および化学物質製造を必要とする用途に多数の利点をもたらす。残留反応物または不純物を実質的に含まない、過酸化物の完成産物は、液体の水溶液として生産し種々の任意の用途に向けて計量してもよく、または、特定の用途向けに直接計量される水性蒸気として生産してもよい。事実、ほとんどの反応は、リアクタ内での蒸気の形成を防ぐための十分な圧力下で運転されるパイプラインリアクタ内で実施することができ、これにより全体的な安全性が向上する。
【0027】
発明の詳細な説明
種々の態様に関する以下の説明において、添付の図面への参照が行われる。添付の図面は、本発明の一部を形成するものであり、且つ、本発明を実施してもよい種々の態様を図示する方法によって説明している。他の態様を使用してもよいこと、ならびに、本発明の範囲から逸脱することなく構造的および機能的な改変を行い得ることが理解されるべきである。
【0028】
以後、下流操作の過酢酸需要を満たすための制御された速度における過酢酸水のオンサイト且つオンデマンド生産を主として参照しながら本発明を説明する。商業的に特に重要であるのは、公共下水道廃水処理場の排水の処理および消毒である。生産機材は、下流操作の需要に応じてサイズ決定されてもよく、且つ好ましくは、毎日の需要の高低のばらつきに合わせるため、変動する生産に対応できる。本発明は、幅広い種々の水、廃水、産業水流、商用物品を処理するため、ならびに化合物および中間体の製造または精製において、aq-PAAを生産するのに有用である。他の下流操作の非限定的な例としては、産業廃水、石油の脱硫、冷却水回路、脱インキ、セルロースパルプおよび紙の漂白、織物の漂白、施設の洗濯物、飲用水、プロセス水、娯楽および農業用の水、ならびに食品および飲料用の機材などがある(図3に示す)。化合物および中間体の製造の非限定的な例としては、プラスチック、塗料、およびコーティング産業で使われる天然油のエポキシ化およびヒドロキシル化、ならびに他の天然または合成のオレフィンのエポキシ化などがある。他の非限定的な例としては、例えば建物、構造物、穀物、土壌、果物、野菜、動物、またはその他商業価値のある物品などの燻蒸がある。
【0029】
一般的に、本発明は、PAAによる処理またはPAAによる化合物の変換に感受性である任意の流れの処理に有用性を有する。「PAAによる処理に感受性である流れ」とは、追加の処理を伴ってまたは伴わずに、PAAによって、微生物(非限定的な例として、原生動物、細菌、病原体およびウイルスなど)の個体数が減るか、および/または、毒性がより低いか、硫黄分がより少ないか、その他、下流の分配システムもしくは受け取り側分水界への排出により適したもしくは適合する状態に流れがなるような、任意の水、廃水、または産業水流を指す。「化合物の変換」とは、PAAと反応して、中間体または完成産物などの新しい(またはより純粋な)化学種を形成できる任意の化合物を指す。
【0030】
図に示す態様において、過酢酸水は、好適な反応器の中で酢酸(HOAc)と過酸化水素水溶液との酸性触媒反応によって生産され、蒸留され、そして凝縮された水溶液としてまたは蒸気の完成産物として適用される。完成産物は、生産されると同時に、比例的且つ直接的に最終用途に供給される。方法の初期相は、反応物を特定の比で一緒に連続的に追加することによって、定常状態濃度を含み且つ定常状態濃度を最大とする任意の濃度でPAA(HOOAcとも表す)を生産することを含む。PAA形成の速度は、酸性触媒の濃度、各反応物の濃度、反応の温度、ならびに蒸留の温度および圧力に比例する。硫酸を酸性触媒とする全体的なプロセス化学反応を表1に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
反応の化学量論組成の予測によれば、反応効率が100%である場合、1モルのPAAを生産するのに、1モルの酢酸は1モルの過酸化水素を必要とする。PAAは反応物と平衡状態にあることから、理論量より少ない量のPAAがリアクタ内で生産される。一定の酢酸濃度に対する、反応物のモル比およびeq-PAAの収量を表2に示す。
【0033】
【表2】

【0034】
一定の過酸化水素濃度に対する、反応物のモル比およびeq-PAAの収量を表3に示す。
【0035】
【表3】

【0036】
PAAは様々な速度で蒸留されるため、平衡条件は決して満たされず、反応は右方向にシフトするかまたは押す(表1)。より大きな収量でPAAを生産するために反応物の濃度またはモル比を上昇させてもよく、または収量を少なくするために反応物の濃度またはモル比を低下させてもよい。反応物の濃度は、用途の需要を満たすために必要な生産速度によって異なる。
【0037】
酢酸と過酸化水素水溶液とだけの反応は平衡状態まで進行するが、その速度は、実際的な商業使用には遅すぎる。基本的な法則および化学特性も、この速度が主反応物の濃度に比例することを示している。しかし高濃度においても、この速度は実用には遅すぎる。
【0038】
PAA形成の速度を上昇させるため、硫酸などの酸を触媒として加える。この速度は反応に加えられる硫酸および過酸化水素の量に伴って変化することから、硫酸濃度が十分高い場合、硫酸は可逆的な超酸(例えばカロ酸、ペルオキシ一硫酸)または他の中間体として加わると考えられている。表4に示すように、PAA形成の速度は硫酸の濃度に伴って上昇する。酸の濃度は他の反応物による希釈効果に制限されるため、30%を越える濃度を保つことは難しい。表に示した速度は触媒の効果を示すものであり、本発明の範囲を制限するものではない。
【0039】
【表4】

【0040】
本発明の1つの好ましい特徴は、反応中に酸性触媒の量を変化させることによってPAA形成の速度を制御することである。いったん反応が始まったら、リアクタ内の触媒の濃度を上昇または低下させるパージの速度を変化させることによって、PAA形成の速度を上昇させてもよい。例えば構造の材料および反応物から侵出した重金属など、反応混合物中で集められた不純物も、パージ中に除去される。aq-PAAが蒸留されるのに伴って反応が平衡の右側にシフトし(表1)、より多くのPAAが生産される。他の鉱質酸性触媒または固相触媒など、懸濁液中または濾床中に用いられ、超酸特性を有する、他の触媒を用いてもよい。任意でタングステンおよび/またはリン酸塩を含有していてもよい硫化ジルコニア触媒については特に注記する。カロ酸形成を増強するための(超)酸性触媒と過酸化水素とのプレミックスを用いてPAA形成を加速させてもよい。
【0041】
反応速度に対する温度の影響は典型的なアレニウスの挙動に従う。80℃を超える温度上昇はPAAおよびH2O2の分解を加速させしたがって性能を制限するため、温度上昇単独ではPAAの収量を達成するのに十分ではない。しかし、温度および硫酸触媒の濃度の両方を上昇させると、実際的な反応速度が得られる。したがって、周囲温度から60〜80℃まで温度を調節することによって、PAAの生産速度をあらかじめ選択するための別の制御がもたらされる。適用される熱エネルギーの入力は、用途の需要を満たすため、変化し、且つ、望ましい生産速度に比例する。
【0042】
aq-PAAの生産速度は、蒸留の圧力および温度によってさらに制御される。蒸留塔内の好ましい温度範囲40〜60℃において、25〜200トール(3〜27 KPa)の圧力範囲、特に50〜100トール(7〜13 KPa)が好ましい。したがって、蒸留中の圧力および温度を調節することによって、aq-PAAの生産速度をあらかじめ選択するための別の制御がもたらされる。適用される真空および温度は、用途の需要を満たすためおよび産物中の望ましいPAA濃度を実現するために必要な望ましい生産速度に比例して変化する。
【0043】
本発明の1つの特徴はPAAの生産中および取り扱い中の安全性に関する。aq-PAAを生成するための本態様に用いられる好ましい態様は2つあり、1つの方法はパイプラインリアクタを利用し、もう1つの方法は連続ポットリアクタを用いる。用いられる方法は、最終用途で必要とされる全体的なaq-PAAの速度によって異なる。当業者には、ハザードリスク管理プログラムの一部として、PAAおよびその前駆体の方法内インベントリーを最小レベルに保たなければならないことが認識される。このタイプの操作に固有のリスクを低減するため、小規模操作に連続ポットリアクタを用いてもよい。なぜならば、方法内インベントリーが小さいからである。そして、操作がより安価で単純であることから、そのような操作には連続ポットリアクタが好ましいことが多い。パイプラインリアクタは、滞留時間が短い液体充填リアクタの使用によって方法内インベントリーが最小限になっている(特に蒸気の体積が小さい)ため、任意のサイズの用途に用いてよく、その固有の安全面の利点のため全ての中〜大規模操作に好ましい。
【0044】
Aq-PAAは既に説明したリアクタのいずれによって生産してもよい。両方の方法を図1および図2に示す。
【0045】
図1に示すパイプライン(PL)リアクタにおいて、過酸化水素、酢酸、硫酸触媒、および水(典型的に過酸化水素および/または酢酸とともに全量が加えられる)は、再循環している反応混合物と一緒に、蒸留塔基部から供給される。反応のための熱はPLリアクタ上のジャケットによって提供され、これは、リアクタ内の蒸発を防ぐため十分な圧力下(リアクタ排出ライン中の背圧制御弁によって制御される)で操作される。反応混合物がリアクタから蒸留塔基部(より低い温度および圧力で作動する)へと排出される際にフラッシングが生じる。蒸気は蒸留塔を通って上昇し、そこで精留されて、望ましいPAA濃度が得られ、残留する過酸化水素および酢酸のレベルは最低限となる。液体はPLリアクタへと再循環する。リアクタおよび関連する機材の操作は、各用途の需要を満たす十分なPAAを生産するように調節される。
【0046】
図2に示す連続ポット(CP)リアクタは、PLリアクタと似ているが、反応物は典型的に蒸留塔基部においてポットリアクタに装填され、そして蒸留は温水または他の加熱媒質を用いてポットリアクタ上のジャケットにより加えられる熱の結果として生じる。還流は蒸留塔に戻されて望ましい精留をもたらし、一方、蒸気の残余は、凝縮されて用途に供給されるか、または蒸気として用途に直接供給される。
【0047】
パイプラインリアクタ
図1に本発明の好ましい態様によるパイプライン(PLリアクタ)を示す。図1に示すPLリアクタ[11]は、CPリアクタ(図2)の場合と比較してリアクタ内の反応物の体積が大幅に少ない状態で作動し、したがって、本質的により安全であり、任意の規模の運転に用いることができるが特に大規模運転に好適である。酢酸[1]、過酸化水素[2]、硫酸[3]、および脱イオン水[4](通常はまたは主として、酢酸および過酸化水素とともに装填される)などの原料は、ジャケット[10]が装着され且つインラインミキサー[9]に先行されたPLリアクタ[11]に装填される。原料は、望ましい生産速度に対応する速度で装填される。PLリアクタ[11]は、過酢酸水の生産にこれまで用いられていた温度より高い温度、且つリアクタ内の蒸発を防ぐのに十分な圧力で運転する。反応混合物は、背圧弁[12]を通ってPLリアクタ[11]から出ると、蒸留塔基部[5]へと排出され、そこで蒸留塔内より低い圧力でフラッシングする。蒸気は蒸留塔[14]を通って上昇し、そこで精留されて、望ましい留出物濃度が得られる。フラッシング後、蒸留塔基部[5]内の一定組成の反応混合物はPLリアクタ[11]へと再循環され、そこで新鮮な反応物と組み合わされる。生産を増加させるには、全ての反応物の供給速度を比例的に増加させる。反応混合物中の触媒濃度を上昇させて生産速度の上昇を実現するため蒸留塔基部からのパージ速度をいくぶん下げる必要が生じる可能性があり、および/または、温度を上昇させる必要が生じる可能性がある。PLリアクタ[11]内の滞留時間は典型的に1〜30分の範囲であり、好ましくは1〜10分である。PLリアクタ[11]内の反応温度は典型的に60〜80℃の範囲であり、圧力は典型的に500〜1500 mmHg absの範囲である。
【0048】
蒸留塔
蒸留塔[14]は蒸留塔基部[5]の上部に直接取り付けられる。蒸留塔基部[5]は、蒸留塔基部を出た組み合わされた液体およびフラッシング後のリアクタ排出物の液体部分がポンプ[8]という手段によってそこからPLリアクタ[11]へと再循環されるサージポット(surge pot)として機能する。一方、蒸留塔上部は、蒸留塔上部からの蒸気が全面的に凝縮される場所である凝縮器[15]に接続される。蒸留塔[14]は1つまたは複数の理論段を含む。蒸留塔は10個またはそれ以上という多数の理論段を含んでいてもよいが、実用においては通常約3〜6つの理論段を含む。凝縮物の一部は蒸留塔上部に戻されて、ポットを出た蒸気の精留に必要な還流[17]を提供し、一方、留出物の残余は留出物受器[16]からデイドラム(day drum)[18]へと移される。システム内の真空は、水を封液として用いる液封ポンプなどの真空ポンプ[20]によって提供される。留出物の典型的な分析結果は、25%の過酢酸、1%未満の過酸化水素、4%未満の酢酸、および残余水である。蒸留塔基部[5]からの沸騰蒸気混合物は、40〜60℃の範囲、より好ましくは45〜55℃の範囲の温度、および、30〜200トールの範囲、より好ましくは50〜100トールの範囲の圧力で、蒸留塔[14]の底部に移される。
【0049】
任意で、蒸留塔[14]の上部からの蒸気の一部を、処理される水または蒸気流の中へと抽出することによって凝縮せずに用いてもよく(この場合抽出システムは必要な真空を提供する)、またはドライ真空ポンプを通して引き出してもよい;蒸留塔上部からの蒸気の残余は凝縮されて、必要な還流、および少量の追加の液体過酢酸溶液を提供する。少量の追加の液体過酢酸溶液は、デイドラム[18]中に蓄積し、液体としておよびシステムの始動中に用いられる。
【0050】
リアクタブローダウン
触媒のレベルを制御し且つ有害となり得るレベルの汚染物質の蓄積を防ぐため、定期的に、リアクタブローダウンまたはポット内の混合物のパージ流がレベルポット(level pot)[6]へと除去される。生産速度を変更する際にパージ速度の何らかの調整が必要になる可能性もある。多くの場合、パージした混合物を最終用途に加えることが実用的である可能性があり、このことにより副次的な廃棄物処分要件が回避される。他の場合において、パージ流を中和後に下水へと排出することが必要である可能性もある。
【0051】
真空システムおよびベント
封液として水を貫流ベースで用いる液封真空ポンプ[20]によって真空を提供してもよい。PAAの最終用途が廃水処理である場合、その水を封液として用いてもよい。凝縮器からのベント内に残留した全ての凝縮物は、封液として用いられた水の中に吸収される。真空のレベルは、真空ポンプのインレットに空気を入れることによって制御される。実質的にいかなる有機性汚染物質も含まない、真空ポンプからのベントは、大気へと排出される。
【0052】
または、廃水処理などのいくつかの用途について、処理される水を輸送液として用いる抽出システム[22]によって真空を提供してもよい。この場合も、抽出システムへのフロー中の空気は、処理される水の中に溶解するか、または実質的にいかなる有機性汚染物質も含まない水と分けられる。または、例えば土壌、果物、または野菜の消毒などのためにドライ真空ポンプ[25]を用いてもよく、この場合は蒸気が気相の用途[26]に用いられる。
【0053】
凝縮器
冷水を冷媒として用いる凝縮器[15]は、蒸留塔[14]の上部からの蒸気の全部または一部を凝縮する。凝縮物は留出物受器[16]へとドレーンされ、そこからその一部が還流[17]として蒸留塔上部へと駆出され、残余はデイドラム[18]へと駆出され、そこから必要に応じて最終用途へと駆出されるかまたは補助的使用もしくはシャットダウン後の始動用に蓄積される。
【0054】
コントローラ
方法および用途は、好ましくは、図1、図2、および図3に示す入力/出力(I/O)チャネル[13]、[28]、[29]、[30]、および[31]が方法モジュールに対して情報を送受信する、コンピュータ化されたコントローラ[27]によって管理される。方法モジュールは、化学物質前駆体およびリアクタ、蒸留機材およびPAA産物、ならびに用途を含む。コントローラは、コンピュータまたはPLC、およびヒューマンマシンインターフェース(HMI)[27]を含み、ここで全方法の操作が維持される。aq-PAAの生産は、各方法モデルの設計仕様の範囲内で望ましい速度に調節される。
【0055】
連続ポットリアクタ
図2に示す連続ポット(CP)の態様は、より低い生産速度に特に好適である。この実施例において、前駆体化学物質は、酢酸[1]、過酸化水素[2]、硫酸[3]、および脱イオン水[4](通常はまたは主として、過酸化水素および/または酢酸とともに加えられる)を含む。最初に、CPリアクタとして機能する蒸留塔基部[5]に、予想されるポットの定常状態組成を近似するのに必要な各化学物質の量が装填される。真空が望ましいレベルで適用され、ポットの内容物が正常な反応温度まで加熱される。次に過酸化水素、酢酸、および硫酸(通常は酢酸とプレミックスされる)の供給が開始される。望ましい一定の蒸発速度を実現するため、ジャケットを通して循環される低圧スチームもしくは温水によって、または、電気式ポットヒーターによって、リアクタに熱が適用される。蒸発速度はポット中でそのレベルを維持し、同時に少量の液体パージ流またはブローダウンをポットから除去する。
【0056】
少なくとも3〜6つの理論段を提供する蒸留塔[14]がCPリアクタ[5]の上部に直接取り付けられ、一方、蒸留塔上部は凝縮器[15]に接続され、そこで蒸留塔上部からの蒸気が全面的に凝縮される。凝縮物の一部は蒸留塔上部に戻されて、CPリアクタ[5]を出た蒸気の精留に必要な還流[17]を提供し、一方、留出物の残余は留出物受器[16]からデイドラム[18]へと移される。留出物の典型的な分析結果は、25%の過酢酸、1%未満の過酸化水素、4%未満の酢酸、および残余水である。ポットからの沸騰蒸気混合物は、40〜60℃の範囲、より好ましくは45〜55℃の範囲の温度、および、30〜200トールの範囲、より好ましくは50〜100トールの範囲の圧力で、蒸留塔[14]の底部に移される。
【0057】
図1の好ましい態様のように、蒸留塔の上部からの蒸気の一部を、処理される水流の中へと抽出することによって凝縮せずに用いてもよく(この場合抽出システムは必要な真空を提供する)、またはドライ真空ポンプを通して引き出してもよい;蒸留塔上部からの蒸気の残余は凝縮されて、必要な還流、および少量の追加の液体過酢酸溶液を提供する。
【0058】
触媒のレベルを制御し且つ有害となり得るレベルの汚染物質の蓄積を防ぐため、定期的に、リアクタブローダウンまたはCPリアクタ[5]内の混合物のパージ流がレベルポット[6]へと除去される。生産速度を変更する際にパージ速度の何らかの調整が必要になる可能性もある。多くの場合、パージした混合物を最終用途に加えることが実用的である可能性があり、このことにより副次的な廃棄物処分要件が回避される。他の場合において、パージ流を中和後に下水へと排出することが必要である可能性もある。
【0059】
真空ポンプ[20]、抽出システム[22]、コントローラ[27]、および他の構成部品を含む、図2のCPリアクタの態様の他の特徴は、図1のPLの態様を参照した上記の説明と同様であってもよい。
【0060】
最終用途
図3に示す、次に続く最終用途[50]〜[77]に比例する速度での、過酢酸水のオンサイト且つオンデマンド生産を参照しながら本発明を説明する。商業的に特に重要であるのは、公共下水道廃水処理場(WWTP)の排水の処理および消毒である。本発明はまた、aq-PAAの生産;幅広い種々の水、廃水、産業廃水、食品および飲料の処理;ならびに化合物および中間体の製造にも有用である。最終用途の非限定的な実施例を、以下の各産業に関する例によって説明する:
公共廃水の処理[50]
公共廃水の消毒
合流式下水道の溢流の消毒
産業分野[53]
産業廃水の処理
石油の脱硫
冷却水の処理[56]
漂白[59]
脱インキ
パルプおよび紙の漂白
織物の漂白
施設の洗濯物の漂白
水処理[62]
飲用水の消毒
プロセス水の衛生化
食品および飲料用の機材の衛生化[66]
化学処理[69]
【0061】
PAAを用いる用途は、従来、かなりの量の反応物(すなわちH2O2、HOAc、および硫酸)が平衡産物中に残留する平衡PAAを用いている。上記の用途は一般的に、eq-PAAと比較してaq-PAAを用いるほうが運転のコストが大幅に低くなる。なぜならば、全ての前駆体化学物質がaq-PAAへと反応し、一方、硫酸触媒がリアクタからパージされるためである。前駆体化学物質がバルクパッケージ(例えばトラック1台分の量)で顧客に配達され、aq-PAAがバルク化学物質の価格でオンサイト生産される場合、運転コストはさらに低くなる。比較すると、現在、eq-PAAは300ガロン未満のパッケージ量で配達されなければならず、このことは、化学物質の価格、取り扱い要件、および運転コストを大幅に増大させる。
【0062】
公共廃水の処理[50](参照:消毒用溜め枡[51])
おそらく、aq-PAAの最大の用途は、例えば塩素ベースの消毒などの代替としての、公共廃水の消毒[50]である。受け取り側分水界への排出の消毒基準を満たすため、Aq-PAAは、通常は約0.5〜25 mg/L、より好ましくは約5〜15 mg/Lの範囲の濃度で、廃水の最終段階に適用される。古い建設仕様において、追加の設備改良を伴うことなく既存の消毒用溜め枡[51]にaq-PAAを直接適用してもよく、非限定的な例としては、従来の塩素ベースの消毒方法に以前用いられていた、プラグ流れ特性を示す典型的な溜め枡がある。塩素消毒にもともと用いられている溜め枡のサイズは、最低30分の接触時間に基づいているが、aq-PAA消毒に必要な時間は5〜7分程度である。既存の消毒用溜め枡の余分の能力がaq-PAAの性能を制限することはない。新しい建設仕様において、aq-PAAを用いた消毒用溜め枡は、従来の塩素処理と比較して、必要とする設置面積および体積がはるかに小さく、且つ、滞留時間がはるかに短い。したがって、aq-PAA消毒を用いることによって資本コストおよび運転コストがさらに低減される。
【0063】
1972年のClean Water Actに公表されている環境規制および排水許可は、受け取り側分水界に排出される廃水中の残留塩素を制限している。これらの指針を満たすには、残留塩素をなくすための脱塩素が必要である。典型的な脱塩素方法では、気体の二酸化硫黄または重亜硫酸ナトリウム溶液を、排出前に脱塩素用溜め枡に加える。消毒用溜め枡は、塩素処理槽および脱塩素槽の両方を含むように改変および建設されている。aq-PAA消毒の使用は、排出前になんらの追加処理も必要としない。残留aq-PAAは、いずれの排出パラメータにも有意な影響を及ぼすことなく酢酸、水、および酸素に変換する。排出パラメータの非限定的な例としては、TOC、COD、BOD、および毒性などがある。
【0064】
典型的な酸化用溜め枡の設計を用いた(ただし、それに限定されるわけではない)消毒用溜め枡[51]はaq-PAAの用途に好適である。消毒は、PLC、および消毒方法全体にわたって配置された電子センサーによってモニターおよび制御される。非限定的なコントロールとしては、酸化還元電位(ORP)およびイオン選択性プローブ(ISP)などがある。用途の性能がPLCによって評価され、需要を満たすようにaq-PAAの生産および品質が調節される。使用場所の自動化の程度に応じて、不要なコントロールおよびセンサーを減らすためユーザーのコントローラをaq-PAA方法PLCとインターフェースさせてもよい。
【0065】
合流式下水道の溢流[50](参照:消毒槽[51])
近代世界の全体において、公共廃水処理場(WWTP)は、嵐の活動が活発な時および洪水の時には、水圧による流出から施設を保護するため、流入する下水をバイパスさせる権限を有している(これを合流式下水道の溢流(CSO)という)。バイパス事象の際には、違反または罰則を伴うことなく、排水許可制限および報告義務量を超えることがある(消毒を行わないなど)。しかし、連邦当局が公表した新しい規制は、消毒を伴わないCSOの排出を禁じている。aq-PAAは、消毒剤としても、従来の塩素処理および脱塩素の実施法と比較して費用対効果が高い。従来の塩素処理および脱塩素の実施法には、それぞれ、次亜塩素酸ナトリウム(「次亜塩素酸」という)処理および重亜硫酸ナトリウム(「重亜硫酸」という)処理が含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0066】
次亜塩素酸塩ベースの消毒プログラムは、CSO事象時の処理要件を満たすため、大きな化学物質貯蔵タンクおよび大きな消毒槽を必要とする。CSO事象の間の長期間(例えば3ヵ月を超える期間)にわたって貯蔵されている次亜塩素酸塩は、利用できる活性塩素のかなりの量を失う。次亜塩素酸塩の半減期は1年未満である可能性もあり、このことから、貯蔵期間が長くなるとCSO事象時に利用できる活性塩素の量が十分でなくなることが示唆される。偶発性として大きな容量のタンクを設置しなければならず、そしてそのようなタンクはさらなる安全上の懸念およびハザードリスクプロフィールを有する。塩素処理消毒槽および脱塩素消毒槽のサイズは、予測されるCSO流入率によって異なり、最低30分間の接触時間が必要である。
【0067】
既存の技術に対する本発明の利点は、aq-PAAがオンサイトで生産され、且つ前駆体化学物質の保管寿命または貯蔵寿命にかかわらずaq-PAAを最大強度且つオンデマンドで利用できることである。例えば、H2O2だけは貯蔵寿命に制限があると考えられる可能性があるが、予測される分解は1年当たり<1%であり、且つ、いかなる損失も必要時のaq-PAAの生産または使用に影響を与えない。
【0068】
典型的な酸化用溝の設計を用いた(ただし、それに限定されるわけではない)典型的な消毒用溜め枡[51]はaq-PAAの用途に好適である。消毒は、PLC、および消毒方法全体にわたって配置された電子センサーによってモニターおよび制御される。非限定的なコントロールとしては、ORPおよびISPなどがある。用途の性能がPLCによって評価され、需要を満たすようにaq-PAAの生産および品質が調節される。使用場所の自動化の程度に応じて、不要なコントロールおよびセンサーを減らすためユーザーの既存のコントローラをaq-PAA方法PLCとインターフェースさせてもよい。
【0069】
産業廃水[53](参照:プラグ流れ式リアクタ[54])
多くの種類の産業廃水[53]は、高い負荷特性(例えばTOC、COD、およびBOD)ならびに毒性(例えば難溶性化合物およびフェノール系化合物)のため、従来の生物学的な廃水処理場への廃棄に適用できない。前処理用途としては、毒性に寄与する前駆体を破壊し、難溶性化合物を生物学的処理方法[55]で容易に同化される産物に変換するための化学酸化が含まれる。選択的な化学酸化剤が必要な場合、aq-PAAは、他の酸化プログラムでは酸化されない物質を酸化する。Aq-PAAが最も効率的となる濃度範囲は、典型的な用途については約10〜250 mg/L、高度に難溶性の化合物については最大約100〜10,000 mg/Lである。
【0070】
任意の長さのパイプまたは同様のコンジット(ただしそれに限定されるわけではない)を含むプラグ流れ式リアクタの設計[54]は、産業廃水の前処理に好適である。産業廃水方法は、PLC、および産業廃水処理方法全体にわたって配置された電子センサーによってモニターおよび制御される。非限定的なコントロールとしては、ORP、ISP、pH、および自動滴定装置などがある。用途の性能がPLCによって評価され、需要を満たすようにaq-PAAの生産および品質が調節される。使用場所の自動化の程度に応じて、不要なコントロールおよびセンサーを減らすためユーザーのコントローラをaq-PAA方法PLCとインターフェースさせてもよい。
【0071】
石油の脱硫[53](参照:プラグ流れ式リアクタ[54])
硫黄含有量が少ない燃料を要求する世界的な指針により、より新しい基準を満たすため硫黄化合物を酸化および除去するためのaq-PAAの適用が促進されている。硫化物およびチオール(メルカプタン)の酸化による石油の脱硫は、完成品のガソリン、灯油、およびディーゼル燃料において濃度範囲1〜5,000 mg/L、より好ましくは 50〜500 mg/Lのaq-PAAを用いるが、それに限定されるわけではない。
【0072】
任意の長さのパイプまたは同様のコンジット(ただしそれに限定されるわけではない)を含むプラグ流れ式リアクタの設計[54]は、石油産物の前処理に好適である。脱硫方法は、PLC、および脱硫方法全体にわたって配置された電子センサーによってモニターおよび制御される。非限定的なコントロールとしては、ISPおよび自動インライン硫黄分析装置などがある。用途の性能がPLCによって評価され、需要を満たすようにaq-PAAの生産および品質が調節される。使用場所の自動化の程度に応じて、不要なコントロールおよびセンサーを減らすためユーザーのコントローラをaq-PAA方法PLCとインターフェースさせてもよい。
【0073】
冷却水[56](参照:冷却水回路[57])
製造工場、産業工場、および発電所全体で用いられている冷却水回路[56]は、生物学的な増殖および微生物の影響による大きな困難を抱えている。aq-PAAは、生物学的な増殖を制御し冷却水回路中に生じる有害な効果を制限するのに有効である。大多数の用途において、aq-PAAが有効である濃度は0.5〜100 mg/Lであり、より好ましくは2〜25 mg/Lである。aq-PAAは、既存の設備に対して何らの設備改良を行うことなく、冷却水回路に直接適用してもよい。
【0074】
冷却水の質は、PLC、および冷却水回路全体にわたって配置された電子センサーによってモニターおよび制御される。非限定的なコントロールとしては、ORPおよびISPなどがある。用途の性能がPLCによって評価され、需要を満たすようにaq-PAAの生産および品質が調節される。使用場所の自動化の程度に応じて、不要なコントロールおよびセンサーを減らすためユーザーの既存のコントローラをaq-PAA方法PLCとインターフェースさせてもよい。
【0075】
脱インキ[59](参照:漂白用機材[60])
紙製品のリサイクルでは、得られるパルプが、元の材料に含まれている色を含んでいないことが要求される。Aq-PAAはこれら製品の脱インキ[53]に特に有効である。大多数の用途において、aq-PAAが有効である濃度は1〜5,000 mg/Lであり、より好ましくは100〜1,000 mg/Lである。aq-PAAは、既存の設備に対する設備改良をほとんどまたは全く伴わずに、脱インキ方法に直接適用してもよい。
【0076】
脱インキ方法は、PLC、および脱インキ方法全体にわたって配置された電子センサーによってモニターされる。非限定的なコントロールとしては、ORP、ISP、および白色度測定値などがある。用途の性能がPLCによって評価され、需要を満たすようにaq-PAAの生産および品質が調節される。使用場所の自動化の程度に応じて、不要なコントロールおよびセンサーを減らすためユーザーの既存のコントローラをaq-PAA方法PLCとインターフェースさせてもよい。
【0077】
パルプおよび紙の漂白および脱リグニン[59](漂白用機材[60])
セルロースパルプの漂白および脱リグニン[59]の結果は、塩素または過酸化水素をベースとする従来の方法と比較してaq-PAAを用いたほうが良好である。aq-PAAが有効である濃度は、用途によって、100〜1,000 mg/Lおよび最大1〜5%である。aq-PAAは、既存の設備に対する広範な設備改良を行うことなく、従来の漂白槽中の製造回路に直接適用してもよい。
【0078】
漂白および脱リグニンの方法は、PLC、および漂白および脱リグニンの方法全体にわたって配置された電子センサーによってモニターおよび制御される。非限定的なコントロールとしては、ORP、ISP、自動滴定装置、および白色度測定値などがある。用途の性能がPLCによって評価され、需要を満たすようにaq-PAAの生産および品質が調節される。使用場所の自動化の程度に応じて、不要なコントロールおよびセンサーを減らすためユーザーの既存のコントローラをaq-PAA方法PLCとインターフェースさせてもよい。
【0079】
織物[59](参照:漂白用機材[60])
織物の漂白[59]は、塩素または過酸化水素をベースとする従来の方法と比較して、aq-PAAを用いたほうが良好な特性を示す。aq-PAAが有効である濃度は、用途によって、約100〜1,000 mg/Lおよび最大約1〜5%である。aq-PAAは、既存の設備に対する広範な設備改良を行うことなく、従来の機材中の製造回路に直接適用してもよい。
【0080】
織物の方法は、PLC、および織物の方法全体にわたって配置された電子センサーによってモニターおよび制御される。非限定的なコントロールとしては、ORP、ISP、自動滴定装置、および白色度測定値などがある。用途の性能がPLCによって評価され、需要を満たすようにaq-PAAの生産および品質が調節される。使用場所の自動化の程度に応じて、不要なコントロールおよびセンサーを減らすためユーザーの既存のコントローラをaq-PAAプロセスPLCとインターフェースさせてもよい。
【0081】
施設の洗濯物[59](参照:漂白用機材[60])
施設の洗濯物[59]における衣服および他の布地に対する、色落ちしない漂白は、塩素または過酸化物をベースとする従来の方法と比較して、aq-PAAを用いたほうが良好な特性を示す。aq-PAAが有効であるのは、洗濯される品目によって、約50〜10,000 mg/L、より好ましくは約100〜500 mg/Lである。
【0082】
洗濯の方法は、PLC、および方法全体にわたって配置された電子センサーによってモニターおよび制御される。非限定的なコントロールとしては、ORP、ISP、および白色度測定値などがある。用途の性能がPLCによって評価され、需要を満たすようにaq-PAAの生産および品質が調節される。使用場所の自動化の程度に応じて、不要なコントロールおよびセンサーを減らすためユーザーの既存のコントローラをaq-PAA方法PLCとインターフェースさせてもよい。
【0083】
飲用水の処理[62](参照:リアクタおよびクラリファイア[63])
飲用水[62]の完全無塩素(TFC)消毒プログラムを推進するという運動が、特に米国環境保護局(EPA)を拠点として、かなり活発になっている。aq-PAAは接触処理[63]中の消毒に有効であるうえ、使用時点(POU)[64]までの分配システム全体または「蛇口」における後処理消毒薬としても同程度に重要である。接触処理中にaq-PAAが有効である濃度は約0.5〜5 mg/Lであり、配水網中の陽性残留物は約0.25〜2 mg/Lである。aq-PAAは、広範な設備改良を行うことなく、既存の取水、貯水、水処理、および配水のシステムに直接適用してもよい。生じるスラッジ[65]もまた消毒してよい。
【0084】
飲用水のプロセスは、PLC、およびプロセス[63]全体にわたって配置された電子センサーによってモニターおよび制御される。非限定的なコントロールとしては、ORP、pH、およびISPの測定値などがある。用途の性能がPLCによって評価され、需要を満たすようにaq-PAAの生産および品質が調節される。
【0085】
飲用水の配水網[64]
飲用水の処理後、配水網および配管内の残留aq-PAAはPLCおよび電子センサーによってモニターおよび制御される。非限定的なコントロールとしては、ORP、pH、およびISPの測定値などがある。配水網からのデータはPLCに戻され、そこで配水システムの性能が評価され、需要を満たすようにaq-PAAの生産および品質が調節される。使用場所の自動化の程度に応じて、不要なコントロールおよびセンサーを伴うことなく、ユーザーのコントローラをaq-PAA方法PLCとインターフェースさせてもよい。
【0086】
プロセス水の処理[62](参照:リアクタおよびクラリファイア[63])
例えば河川および湖などの水面貯水から得られたプロセス水[62]は、コロイド懸濁、微生物、および植物性物質などのため、施設の運転において特定の問題を生じる。aq-PAAは、その酸化特性および消毒特性により、最小限の追加の水処理添加剤によって浄化産物を得るうえで特に有用である。aq-PAAが有効であるのは、水の初期品質によって、約0.5〜50 mg/L、より好ましくは約5〜25 mg/Lである。aq-PAAは、広範な設備改良を行うことなく、既存のプロセス水回路に直接適用してもよい。
【0087】
プロセス水の品質は、PLC、および方法全体にわたって配置された電子センサーによってモニターおよび制御される。非限定的なコントロールとしては、ORP、pH、およびISPなどがある。用途の性能がPLCによって評価され、需要を満たすようにaq-PAAの生産および品質が調節される。使用場所の自動化の程度に応じて、不要なコントロールおよびセンサーを減らすためユーザーの既存のコントローラをaq-PAA方法PLCとインターフェースさせてもよい。
【0088】
食品、飲料、および発酵用機材の衛生化[66](参照:食品および飲料用の機材[67])
食品、飲料、および発酵の産業[66]においては、塩素ベースの衛生化プログラムが従来採用されており、その非限定的な例としては、食品加工工場、果物および野菜の輸送、ならびに処理バット(アルコール飲料、清涼飲料の生産、および発酵により生産される化学物質を含む)などがある[67]。有効な代替物としてeq-PAAが導入されたが、eq-PAA中の活性を有する衛生化成分はPAAであることが公知である。aq-PAAのオンサイト・オンデマンド生産は、従来のeq-PAAと比較して、費用対効果が高く且つ取り扱ううえで安全である。aq-PAAが有効であるのは、機材の初期汚染状態によって、0.5〜1,000 mg/L、より好ましくは100〜250 mg/Lである。aq-PAAは、広範な設備改良を行うことなく、既存の機材に直接適用してもよい。
【0089】
衛生化のプロセスは、PLC、およびプロセス[67]全体にわたって配置された電子センサーによってモニターおよび制御される。非限定的なコントロールとしては、ORPおよびISPの測定値などがある。用途[68]の性能がPLCによって評価され、需要を満たすようにaq-PAAの生産および品質が調節される。使用場所の自動化の程度に応じて、不要なコントロールおよびセンサーを減らすためユーザーの既存のコントローラをaq-PAA方法PLCとインターフェースさせてもよい。
【0090】
化学処理[69](参照:化学リアクタ[70])
化合物および中間体の製造[69]には、オレフィン材料(天然油、炭化水素など)のエポキシ化およびヒドロキシル化などの酸化用としてのaq-PAAの使用が含まれるが、それに限定されるわけではない。従来、これらのエポキシ化合物および他の酸化生成物は、そのままで、または反応性の中間体として、塗料およびコーティング、接着剤、プラスチック添加剤、潤滑剤および燃料の添加剤、パーソナルケア、ならびに油田加工産業に用いられている。オレフィン化合物のエポキシ化およびヒドロキシル化には歴史的にeq-PAAが用いられており、この場合、残留したH2O2, HOAc、および硫酸は利用されずしたがって廃棄される。または、それはこれら反応物からPAAをオンサイト生産することによって実施されている。しかし、エポキシ化化学反応の利用においては、硫酸、さらには酢酸と、エポキシ化または酸化生成物との反応から生じる副産物の形成を止めることが非常に困難である。本発明の1つの好ましい特徴は、反応物の著明な損失または廃棄を伴うことなく全ての反応物がaq-PAAに変換されるというaq-PAAの生産である。したがって本発明は、活性単位あたりコストが実質的に少ない状態でPAAを生産し、且つ、eq-PAAと比較して実質的にコストの低い完成産物を生産する。本発明により生産されるaq-PAAの利用可能性を、aq-PAAのみから合成される産物[71]の様々な化学処理[69]に利用してもよい。当業者に認識されるであろうとおり、反応の化学量論組成および反応用機材[70]の詳細は、合成の種類および産物の仕様などの要因によって異なる。
【0091】
化学物質製造の方法は、製造機材からのI/Oチャネルを含むPLCによってモニターされる。用途[71]の性能がPLCによって評価され、需要を満たすようにaq-PAAの生産および品質が調節される。使用場所の自動化の程度に応じて、不要なコントロールおよびセンサーを減らすためユーザーの既存のコントローラをaq-PAA方法PLCとインターフェースさせてもよい。
【0092】
穀物の滅菌[72](参照:穀物の滅菌[73])
現在の臭化メチルガス滅菌技術の代替として、蒸気状のPAAを穀物の滅菌[72]に用いてもよい。aq-PAAを気体状の産物[26]として直接適用してもよく、非限定的な例としては穀物サイロまたは他の収容場所[73]への適用などがある。
【0093】
用途[74]の性能がPLCによって評価され、需要を満たすようにaq-PAAの生産および品質が調節される。使用場所の自動化の程度に応じて、不要なコントロールおよびセンサーを減らすためユーザーの既存のコントローラをaq-PAA方法PLCとインターフェースさせてもよい。
【0094】
土壌の滅菌[75](参照:土壌の滅菌[76])
本発明の別の態様は、他の土壌滅菌技術の代替として、蒸気PAAを土壌の滅菌[75]に適用することである。aq-PAAを気体状の産物[26]として土層[76]に直接適用してもよい。いくつかの用途において、aq-PAAを水溶液[75]として適用してもよい。
【0095】
用途[77]の性能がPLCによって評価され、需要を満たすようにaq-PAAの生産および品質が調節される。使用場所の自動化の程度に応じて、不要なコントロールおよびセンサーを減らすためユーザーの既存のコントローラをaq-PAA方法PLCとインターフェースさせてもよい。
【0096】
以上、本発明を実施する現時点での好ましい様式を含む具体的な実施例に関連して本発明を説明したが、当業者には、上述のシステムおよび技術に対する多数のバリエーションおよび置換が存在することが理解されるものと思われる。したがって、本発明の精神および範囲は、添付の特許請求の範囲が示すように広く解釈されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0097】
図面の簡単な説明
本発明およびその利点のより完全な理解は、添付の図面を考慮しながら上記の説明を参照することによって得られる可能性がある。添付の図面において、同様の参照番号は同様の特徴を示す。
【図1】図1は、本発明の1つの態様による、連続モジュール式装置を用いて過酢酸水を生産するためのプロセスフロー図である。
【図2】図2は、本発明の別の態様による、連続モジュール式装置を用いて過酢酸水を生産するためのプロセスフロー図である。
【図3】図3は、本発明によりオンサイト且つオンデマンドで生産された過酢酸水の種々の可能な最終用途を示した略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下流操作における過酢酸の需要に適合する制御された速度で過酢酸水をオンサイト且つオンデマンドで生産するための連続した方法であって、以下の段階を含む方法:
(a)酢酸、過酸化水素、酸性触媒、および水をパイプラインリアクタに供給して反応媒質を形成する段階;
(b)そこから産物が留出物または流出液として取り出される蒸留塔基部に該反応媒質から蒸気を供給する段階;
(c)過酢酸が生産される速度が下流操作における過酢酸の需要と適合するように、該蒸留塔から排出される過酢酸の速度を制御する段階。
【請求項2】
流出液流が水溶液中の過酢酸を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
流出液流が気相の過酢酸を含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
過酢酸の生産速度が、新鮮な酢酸、過酸化水素、触媒、および水を導入する前に再循環ラインからパイプラインリアクタへと反応媒質の一部をパージすることにより触媒濃度を上昇または低下させることによって制御される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
過酢酸の生産速度が、パイプラインリアクタへの熱エネルギー入力を増加または減少させることによって制御される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
過酢酸の生産速度が、気相の形成を防ぐためにパイプラインリアクタ内の背圧を上昇または低下させることによって制御される、請求項1記載の方法。
【請求項7】
過酢酸の生産速度が、パイプラインリアクタ内の温度を制御することによって制御される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
触媒が、硫酸;リン酸;ホスホン酸;スルホン酸;硫酸、タングステン、およびリン酸塩のうち少なくとも1つを含む超酸;タングステンおよびリン酸塩のうち少なくとも1つを含む硫化ジルコニア化合物を含む超酸;ならびにこれらの混合物からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項9】
過酸化水素が酸性触媒とプレミックスされ、次に酢酸と接触して過酢酸を形成する、請求項1記載の方法。
【請求項10】
超酸触媒が固体シリカおよびジルコニアのうち少なくとも1つを含む支持体へと焼成され、且つ、過酸化水素、ペルオキシ酸前駆体の混合物、またはその両方が通過するカラムの中に該支持体が置かれる、請求項1記載の方法。
【請求項11】
微量金属汚染物の蓄積を防ぐため、新鮮な酢酸、過酸化水素、触媒、および水を導入する前に反応媒質の一部が再循環ラインからパージされる、請求項1記載の方法。
【請求項12】
リアクタおよびレベルポット(level pot)内で集められた余剰の酸または不純物が下流操作へと排出される、請求項11記載の方法。
【請求項13】
流出物がその中で凝縮される凝縮器の排出端に接続された真空ポンプによってシステム内の真空が作られる、請求項1記載の方法。
【請求項14】
真空ポンプが液封真空ポンプであり、該真空ポンプからの封液排出および/または真空排出が捕捉されて下流操作へと供給される、請求項13記載の方法。
【請求項15】
複数のパイプラインリアクタおよび蒸留塔が並列で運転される、請求項1記載の方法。
【請求項16】
反応システムに供給される過酸化水素と酢酸とのモル比が約0.5:1〜約10:1である、請求項1記載の方法。
【請求項17】
過酸化水素と酢酸とのモル比が約1:1〜約5:1である、請求項16記載の方法。
【請求項18】
過酸化水素と酢酸とのモル比が約1:1〜約3:1である、請求項17記載の方法。
【請求項19】
リアクタ内の濃度を約1〜約50 wt%にするため鉱質酸性触媒が酢酸とプレミックスされる、請求項1記載の方法。
【請求項20】
リアクタ内の濃度を約5〜20 wt%にするため鉱質酸性触媒が酢酸とプレミックスされる、請求項19記載の方法。
【請求項21】
蒸留塔内の圧力が約3〜27 KPaである、請求項1記載の方法。
【請求項22】
蒸留塔内の圧力が約5〜17 KPaである、請求項21記載の方法。
【請求項23】
パイプラインリアクタ内の温度が約40〜約100℃の範囲である、請求項5記載の方法。
【請求項24】
パイプラインリアクタ内の温度が約60〜約80℃の範囲である、請求項23記載の方法。
【請求項25】
公共廃水処理場の排水を消毒するため、これに流出液流中の過酢酸を約0.5〜約100 mg/Lの過酢酸濃度で接触させる段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項26】
過酢酸の濃度が約3〜約25 mg/Lである、請求項25記載の方法。
【請求項27】
合流式下水道の溢流を消毒するため、これに流出液流中の過酢酸を約0.1〜約500 mg/Lの過酢酸濃度で接触させる段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項28】
過酢酸の濃度が約5〜約100 mg/Lである、請求項27記載の方法。
【請求項29】
流入または流出する産業廃水流に、流出液流中の過酢酸を約0.1〜約100,000 mg/Lの過酢酸濃度で接触させる段階であって、その中の望ましくない有機物および無機物の濃度を低下させる効果を伴う段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項30】
過酢酸の濃度が約10〜約1,000 mg/Lである、請求項29記載の方法。
【請求項31】
硫化物、メルカプタン、および同様の類似体を酸化させるため、流出液流中の過酢酸を約1〜約5,000 mg/Lの過酢酸濃度で石油製品に接触させる段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項32】
過酢酸の濃度が約50〜約500 mg/Lである、請求項31記載の方法。
【請求項33】
流出液流中の過酢酸を約0.5〜100 mg/Lの過酢酸濃度で冷却水に接触させる段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項34】
過酢酸の濃度が約2〜約25 mg/Lである、請求項33記載の方法。
【請求項35】
脱インクのため、リサイクルされた紙製品に接触している媒質に、流出液流中の過酢酸を、該接触媒質中に存在する過酢酸濃度の範囲約1〜約5,000 mg/Lで接触させる段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項36】
過酢酸の濃度が約50〜約1,000 mg/Lである、請求項35記載の方法。
【請求項37】
パルプ製品または紙製品の流れを漂白もしくは脱リグニンするかまたはその両方を行うため、これに流出液流中の過酢酸を約10〜約100,000 mg/Lの過酢酸濃度で接触させる段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項38】
過酢酸の濃度が約100〜約10,000 mg/Lである、請求項37記載の方法。
【請求項39】
織物を漂白するため、これに流出液流中の過酢酸を約10〜約10,000 mg/Lの過酢酸濃度で接触させる段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項40】
過酢酸の濃度が約50〜約1,000 mg/Lである、請求項39記載の方法。
【請求項41】
施設の洗濯物を漂白するため、これに流出液流中の過酢酸を約50〜約10,000 mg/Lの濃度で接触させる段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項42】
過酢酸の濃度が約100〜約1,000 mg/Lである、請求項41記載の方法。
【請求項43】
飲用水を処理および消毒するため、これに流出液流中の過酢酸を約0.5〜約5 mg/Lの過酢酸濃度で接触させる段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項44】
プロセス水を処理および消毒するため、これに流出液流中の過酢酸を約0.5〜約1,000 mg/Lの過酢酸濃度で接触させる段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項45】
過酢酸の濃度が約3〜約100 mg/Lである、請求項44記載の方法。
【請求項46】
食品および飲料の取り扱い機材を消毒および衛生化するため、これに流出液流中の過酢酸を約0.5〜約1,000 mg/Lの過酢酸濃度で接触させる段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項47】
過酢酸の濃度が約3〜約100 mg/Lである、請求項46記載の方法。
【請求項48】
アルキル、油、および脂肪のうち少なくとも1つをエポキシ化およびヒドロキシル化するため、過酢酸とアルキル、油、および脂肪とのモル比約0.5:1〜約5:1で、流出液流中の過酢酸を化学処理流に接触させる段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項49】
過酢酸とアルキル、油、および脂肪とのモル比が約1:1〜約2:1である、請求項49記載の方法。
【請求項50】
下流操作に接続された電子的または機械的な機器によって過酢酸の生産速度が制御され、信号がコントローラに送られて過酢酸の生産速度を上昇または低下させる、請求項1記載の方法。
【請求項51】
下流操作における過酢酸の需要に適合する制御された速度で過酢酸水をオンサイト且つオンデマンドで生産するための連続した方法であって、以下の段階を含む方法:
(a)酢酸、過酸化水素、触媒、および水を連続ポットリアクタに供給して反応媒質を形成する段階;
(b)そこから産物が留出物または流出液として取り出される蒸留塔基部に該反応媒質から蒸気を供給する段階;
(c)過酢酸が生産される速度が下流操作における過酢酸の需要と適合するように、該蒸留塔から排出される過酢酸の速度を制御する段階。
【請求項52】
流出液流が水溶液中の過酢酸を含む、請求項51記載の方法。
【請求項53】
流出液流が気相の過酢酸を含む、請求項51記載の方法。
【請求項54】
過酢酸の生産速度が、レベルポットへと反応媒質の一部をパージすることにより触媒濃度を上昇または低下させることによって制御される、請求項51記載の方法。
【請求項55】
過酢酸の生産速度が、連続ポットリアクタへの熱エネルギー入力を増加または減少させることによって制御される、請求項51記載の方法。
【請求項56】
触媒が、硫酸;リン酸;ホスホン酸;スルホン酸;硫酸、タングステン、およびリン酸塩のうち少なくとも1つを含む超酸;タングステンおよびリン酸塩のうち少なくとも1つを含む硫化ジルコニア化合物を含む超酸;ならびにこれらの混合物からなる群より選択される、請求項51記載の方法。
【請求項57】
超酸触媒が固体シリカおよびジルコニアのうち少なくとも1つを含む支持体へと焼成され、且つ、ペルオキシ酸前駆体の混合物が通過するカラムの中に該支持体が置かれる、請求項51記載の方法。
【請求項58】
過酸化水素が酸性触媒とプレミックスされ、次に酢酸と接触して過酢酸を形成する、請求項51記載の方法。
【請求項59】
微量金属汚染物の蓄積を防ぐため、反応媒質の一部がポットリアクタからパージされる、請求項51記載の方法。
【請求項60】
連続ポットリアクタおよびリサイクルドラム内で集められた余剰の酸または不純物が下流操作へと排出される、請求項59記載の方法。
【請求項61】
流出物がその中で凝縮される凝縮器の排出端に接続された真空ポンプによってシステム内の真空が作られる、請求項51記載の方法。
【請求項62】
真空ポンプが液封真空ポンプであり、該真空ポンプからの封液および/または真空排出が捕捉されて下流操作へと供給される、請求項61記載の方法。
【請求項63】
複数の連続ポットリアクタおよび蒸留塔が並列で運転される、請求項51記載の方法。
【請求項64】
反応システムに供給される過酸化水素と酢酸とのモル比が約0.5:1〜約10:1である、請求項51記載の方法。
【請求項65】
過酸化水素と酢酸とのモル比が約1:1〜約5:1である、請求項64記載の方法。
【請求項66】
過酸化水素と酢酸とのモル比が約1:1〜約3:1である、請求項65記載の方法。
【請求項67】
リアクタ内の濃度を約1〜約50 wt%にするため鉱質酸性触媒が酢酸とプレミックスされる、請求項51記載の方法。
【請求項68】
リアクタ内の濃度を約5〜20 wt%にするため鉱質酸性触媒が酢酸とプレミックスされる、請求項67記載の方法。
【請求項69】
蒸留塔内の圧力が約3〜27 KPaである、請求項51記載の方法。
【請求項70】
蒸留塔内の圧力が約5〜17 KPaである、請求項69記載の方法。
【請求項71】
連続ポットリアクタ内の温度が約40〜約65℃の範囲である、請求項51記載の方法。
【請求項72】
連続ポットリアクタ内の温度が約45〜約55℃の範囲である、請求項71記載の方法。
【請求項73】
公共廃水処理場の排水を消毒するため、これに流出液流中の過酢酸を約0.5〜約100 mg/Lの過酢酸濃度で接触させる段階をさらに含む、請求項51記載の方法。
【請求項74】
過酢酸の濃度が約3〜約25 mg/Lである、請求項73記載の方法。
【請求項75】
合流式下水道の溢流を消毒するため、これに流出液流中の過酢酸を約1〜約100 mg/Lの過酢酸濃度で接触させる段階をさらに含む、請求項51記載の方法。
【請求項76】
過酢酸の濃度が約3〜約25 mg/Lである、請求項75記載の方法。
【請求項77】
流入または流出する産業水流に、流出液流中の過酢酸を約1〜約100,000 mg/Lの過酢酸濃度で接触させる段階であって、その中の望ましくない有機物および無機物の濃度を低下させる効果を伴う段階をさらに含む、請求項51記載の方法。
【請求項78】
過酢酸の濃度が約10〜約1,000 mg/Lである、請求項77記載の方法。
【請求項79】
硫化物、メルカプタン、および同様の類似体を酸化させるため、流出液流中の過酢酸を約1〜約5,000 mg/Lの過酢酸濃度で石油製品に接触させる段階をさらに含む、請求項51記載の方法。
【請求項80】
過酢酸の濃度が約50〜約500 mg/Lである、請求項79記載の方法。
【請求項81】
流出液流中の過酢酸を約0.5〜100 mg/Lの過酢酸濃度で冷却水に接触させる段階をさらに含む、請求項51記載の方法。
【請求項82】
過酢酸の濃度が約2〜約25 mg/Lである、請求項81記載の方法。
【請求項83】
脱インクのため、リサイクルされた紙製品に接触している媒質に、流出液流中の過酢酸を、該接触媒質中の過酢酸濃度の範囲約1〜約5,000 mg/Lで接触させる段階をさらに含む、請求項51記載の方法。
【請求項84】
過酢酸の濃度が約50〜約1,000 mg/Lである、請求項83記載の方法。
【請求項85】
パルプ製品または紙製品の流れを漂白および脱リグニンするため、これに流出液流中の過酢酸を約10〜約100,000 mg/Lの過酢酸濃度で接触させる段階をさらに含む、請求項51記載の方法。
【請求項86】
過酢酸の濃度が約100〜約10,000 mg/Lである、請求項85記載の方法。
【請求項87】
織物を漂白するため、これに流出液流中の過酢酸を約10〜約10,000 mg/Lの過酢酸濃度で接触させる段階をさらに含む、請求項51記載の方法。
【請求項88】
過酢酸の濃度が約50〜約1,000 mg/Lである、請求項87記載の方法。
【請求項89】
施設の洗濯物を漂白するため、これに流出液流中の過酢酸を約50〜約10,000 mg/Lの濃度で接触させる段階をさらに含む、請求項51記載の方法。
【請求項90】
過酢酸の濃度が約100〜約1,000 mg/Lである、請求項89記載の方法。
【請求項91】
飲用水を処理および消毒するため、これに流出液流中の過酢酸を約0.5〜約5 mg/Lの過酢酸濃度で接触させる段階をさらに含む、請求項51記載の方法。
【請求項92】
過酢酸の濃度が約3〜約50 mg/Lである、請求項91記載の方法。
【請求項93】
プロセス水を処理および消毒するため、これに流出液流中の過酢酸を約0.5〜約1,000 mg/Lの過酢酸濃度で接触させる段階をさらに含む、請求項51記載の方法。
【請求項94】
過酢酸の濃度が約3〜約100 mg/Lである、請求項93記載の方法。
【請求項95】
食品および飲料の取り扱い機材を消毒および衛生化するため、これに流出液流中の過酢酸を約0.5〜約1,000 mg/Lの過酢酸濃度で接触させる段階をさらに含む、請求項51記載の方法。
【請求項96】
過酢酸の濃度が約3〜約100 mg/Lである、請求項95記載の方法。
【請求項97】
アルキル、油、および脂肪のうち少なくとも1つをエポキシ化およびヒドロキシル化するため、過酢酸とアルキル、油、および脂肪とのモル比約0.5:1〜約5:1で、流出液流中の過酢酸を化学処理流に接触させる段階をさらに含む、請求項51記載の方法。
【請求項98】
過酢酸とアルキル、油、および脂肪とのモル比が約1:1〜約2:1である、請求項97記載の方法。
【請求項99】
下流操作に接続された電子的または機械的な機器によって過酢酸の生産速度が制御され、信号がコントローラに送られて過酢酸の生産速度を上昇または低下させる、請求項51記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−508290(P2008−508290A)
【公表日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−523729(P2007−523729)
【出願日】平成17年7月27日(2005.7.27)
【国際出願番号】PCT/US2005/026497
【国際公開番号】WO2006/014959
【国際公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(507009272)ペラジェン システムズ インコーポレーティッド (1)
【Fターム(参考)】