説明

過電流保護回路及び車載用表示装置

【課題】 過電流の発生時に素子の破壊を防止するとともに、許容電流値の低い安価な部品を使用可能にすることで、過電流保護回路のコストダウンを図ることができる過電流保護回路及び車載用電子機器を提供する。
【解決手段】 Ioutの増大により負荷電流検出抵抗Rsにおける電圧降下が予め決められた過電流検出電圧に達すると、第1トランジスタQ1がオンする。ここで、第1トランジスタQ1の出力端と第1抵抗R1とが接続され、当該接続点と主トランジスタQMの制御端とが、第1ダイオードD1を介して接続されている。このため、第1トランジスタQ1のオンにより、主トランジスタQMの制御端に電圧VGlimが印加される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、突入電流等による誤動作がなく、過電流検出時に負荷への通電を停止する過電流保護回路に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、従来の技術による過電流保護回路を示す図である。Rsは負荷電流検出抵抗、QmはPチャネルのMOS型電界効果トランジスタである。これらは電源Bと負荷RLに直列に接続されている。第1トランジスタQ10は、負荷へ供給される電流である負荷電流に応じて負荷電流検出抵抗Rsの両端に生じる電圧降下に従い、オン又はオフ状態にスイッチングされる。
【0003】
電源Bが投入されると、電源Bの電圧は抵抗R100と抵抗R110で分圧されて主トランジスタQmの制御端へ所定の電圧を印加する。主トランジスタQmの制御端へ電圧が印加されると、主トランジスタQmはオンし、負荷RLに所要の電流が供給される。
【0004】
負荷側の回路で地絡が発生すると、負荷抵抗が低下するため、負荷電流検出抵抗Rs及び主トランジスタQmの両素子に過大な電流が流れる。この過電流が素子の許容電流量を超過すると、これら素子が破壊されることとなる。
【0005】
過電流が流れると、負荷電流検出抵抗Rsにおける電圧降下が予め決められた過電流検出電圧に達し、第1トランジスタQ10がオンする。第1トランジスタQ10のオンにより、抵抗R10と抵抗R20とが通電され、第2トランジスタQ20の制御端と出力端との間にバイアス電圧が印加され、第2トランジスタQ20がオンする。また、第2トランジスタQ20のオンにより、抵抗R40と抵抗R50とが通電され、第3トランジスタQ30の制御端と入力端との間にバイアス電圧が印加され、第3トランジスタQ30がオンする。さらに、第3トランジスタQ30がオンすることにより、主トランジスタQmの入力端と制御端との電位差が減少し、主トランジスタQmがオフする。このように、従来の過電流保護回路は、過電流の発生を検出すると、主トランジスタQmがオフすることにより、過電流の通電を停止するよう構成されている。
【0006】
また、第2トランジスタQ20の制御端へ印加される電圧は、抵抗R30とコンデンサC10からなる積分回路の時定数により、上昇する時間が遅延される。このため、起動時の突入電流や外部からのノイズの侵入による瞬時的な過電流が生じた場合であっても、第2トランジスタQ20は直ちにオンすることがない。このように、従来の過電流保護回路は、起動時の突入電流等を地絡と誤検出して通電を停止しないよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−175345
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の過電流保護回路には、以下のような問題点があった。
【0009】
過電流保護回路は、過電流を検出するとコンデンサC10の時定数で規定される規定時間後に通電を停止するが、かかる規定時間の間は過電流の通電が継続されるため、この間に負荷へ接続された過電流検出抵抗Rsや主トランジスタQmが破壊される恐れがあった。
【0010】
このため、両素子には規定時間における過電流に耐え得る許容電流量の高い高価な部品を使用しなければならず、過電流保護回路のコストが増大するという問題点があった。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、過電流による破壊を防止すると共に、許容電流量の低い安価な部品を使用可能にすることで、過電流保護回路のコストダウンを図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、電源と負荷との間に接続され、負荷への過電流を検出する過電流検出素子と、
前記負荷と前記過電流検出素子との間に接続され、制御端と入力端との間に印加される電圧に応じて前記負荷への通電を制御する主スイッチ素子とを備え、
前記過電流検出素子が負荷への過電流を検出すると、所定時間後に主スイッチ素子が負荷への通電を停止する過電流保護回路において、
出力端が前記主スイッチ素子の制御端へ接続され、前記過電流検出素子が負荷への過電流を検出すると導通する第1スイッチ素子を備えたことを特徴とする過電流保護回路である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、起動時の突入電流や外部からのノイズの侵入による瞬時的な過電流が生じた場合でも、過電流保護回路が地絡と誤検出しないうえ、許容電流量の低い安価な部品を使用可能にすることで、過電流保護回路のコストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】従来の技術による過電流保護回路の構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態を示す過電流保護回路1aの構成図である。
【図3】本発明の第1の実施形態を示す過電流保護回路1aの動作を説明するタイムチャートである。
【図4】本発明の第2の実施形態を示す過電流保護回路1bの構成図である。
【図5】本発明の第3の実施形態を示す過電流保護回路1cの構成図である。
【図6】本発明の第4の実施形態を示す過電流保護回路1dの構成図である。
【図7】本発明の第5の実施形態を示す過電流保護回路1eの構成図である。
【図8】本発明の第6の実施形態を示す車載用表示装置4の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔第1の実施形態〕
以下に、本発明の過電流保護回路について図面を用いて詳細に説明する。
【0016】
図2は本発明の第1の実施形態を示す過電流保護回路1aの構成図である。電源を供給する電源VINと電圧の出力VOUTの先に接続されている負荷(図示せず)との間に、過電流検出抵抗RSと負荷への電源の供給を制御する主トランジスタQMとが直列に接続されている。主トランジスタQMは、たとえばPチャネルのMOS型電界効果トランジスタで構成されるが、スイッチ素子として動作するものであればよい。
【0017】
電源VINと負荷電流検出抵抗RSとの接続点と接地点との間に、第1トランジスタQ1と第1抵抗R1と第2抵抗R2とが直列に接続されている。第1トランジスタQ1は、負荷電流に応じて負荷電流検出抵抗RSの両端に生じる電圧降下に従い、電流を通電する導通状態(以下「オン」という)、通電する電流量を制限する制限状態と、電流を遮断する遮断状態(以下「オフ」という)とのいずれかに制御される。
【0018】
負荷電流検出抵抗RSと主トランジスタQMとの接続点と接地点との間に、第3抵抗R3と第4抵抗R4と第2トランジスタQ2とが直列に接続されている。また、当該接続点と主トランジスタQMの制御端との間に第5抵抗R5が接続されている。
【0019】
主トランジスタQMの制御端と接地点との間に、第6抵抗R6と第3トランジスタQ3とが直列に接続されている。
【0020】
第1抵抗R1と第2抵抗R2との接続点と第2トランジスタQ2の制御端とが接続され、コンデンサC1と第4トランジスタQ4とが第2抵抗R2に対して並列に接続されている。
【0021】
第1トランジスタQ1と第1抵抗R1との接続点が第1ダイオードD1の入力端に接続され、第1ダイオードD1の出力端が主トランジスタQMの制御端と第6抵抗R6との接続点に接続されている。
【0022】
第3トランジスタQ3の制御端には、主トランジスタQMをオンさせるSWon信号が入力され、第4トランジスタQ4の制御端は、過電流保護回路1aを再起動させるRestart信号が入力されるようになっている。
【0023】
なお、主トランジスタQMと第5抵抗R5と第6抵抗R6と第3トランジスタQ3とは、負荷に電源VINを供給するためのスイッチ回路2aを構成する。
【0024】
また、Q1乃至Q4は、たとえばNPN型又は接合型トランジスタで構成されるが、スイッチ素子として動作するものであればよい。
【0025】
図3は第1の実施形態を示す過電流保護回路1aの動作を説明するタイムチャートである。横軸は時間の経過を表し、縦軸は過電流保護回路1aとスイッチ回路2aとの所定箇所における電圧値と電流値と信号との動きを表す。VOUTは、負荷へ印加される電圧値である。Ioutは主トランジスタQMの入力端と出力端間に通電され、負荷へ出力される電流の値であり、Ilimは後述するようにIoutの所定の電流値を表す。VGは主トランジスタQMの制御端の電位であり、VINの電位からどれだけ低下しているかを表す。VGlimとVGstpとは後述するようにVGの所定電圧値を表す。Q2制御端電流は、Q2の制御端に流れる電流の量を表す。RestartはRestart信号の値を表す。
【0026】
スイッチ回路2aにおいて、SWon信号が投入されると、第3トランジスタQ3にバイアスが与えられ、第3トランジスタQ3がオンする。主トランジスタQMの制御端と接地点とが接続され、電源VINから電圧が印加されるため、主トランジスタQMの入力端と制御端との間に電圧降下が生じ、主トランジスタQMがオンする。これにより、負荷への出力電流Ioutの通電が開始され、時刻t1の状態となる。
【0027】
時刻t2は、負荷で地絡が発生し、出力電流Ioutが増大した時点を示す。Ioutの増大により負荷電流検出抵抗Rsにおける電圧降下が予め決められた過電流検出電圧に達すると、第1トランジスタQ1がオンする。ここで、第1トランジスタQ1の出力端と第1抵抗R1とが接続され、当該接続点と主トランジスタQMの制御端とが、第1ダイオードD1を介して接続されている。このため、第1トランジスタQ1のオンにより、主トランジスタQMの制御端に電圧が印加される。主トランジスタQMの入力端の電位は、第5抵抗R5における電圧降下により制御端の電位よりも高い。したがって、主トランジスタQMの制御端に電圧が印加されると、制御端の電位が高まるため、入力端と制御端との電位差が縮小されることとなる。この場合の主トランジスタQMの制御端の電位をVGlimとする。主トランジスタQMの入力端と制御端との電位差が少なくなると、チャネルが狭くなることにより主トランジスタQMの通電量が低減され、出力電流IoutがIlimの値に制限される。Ilimの値には、後述するように、過電流検出抵抗RS及び主トランジスタQMの許容電流量を超過しない値が与えられる。
【0028】
このように、主トランジスタQMは、負荷への通電を制限する制限手段として機能する。また、主トランジスタQMと第1トランジスタQ1と第3抵抗R3と第1ダイオードD1とは、負荷への通電を制限する制限手段を含む制限回路を構成する。
【0029】
第1トランジスタQ1がオンすると、第1抵抗R1に流れる電流がコンデンサC1へ流入し、コンデンサC1への充電が開始される。コンデンサC1が十分に充電されると、第2トランジスタQ2に所定のバイアスが与えられ、第2トランジスタQ2がオンする。
【0030】
なお、第2トランジスタQ2の制御端へ印加される電圧が所定電圧に達するまでの時間Tdは、第1抵抗R1の大きさとコンデンサC1の容量とに基づく時定数に応じて規定される。当該時間は、コンデンサC1を第1抵抗R1に流れる電流で充電し、コンデンサC1の両端電圧が第2トランジスタQ2をオンさせる電圧になるまでの時間である。このTdのために、地絡による過電流が生じた場合でも、第2トランジスタQ2は直ちにオンせず、主トランジスタQMは通電を停止しない。過電流保護回路1aでは起動時の突入電流や外部からのノイズの侵入による瞬時的な過電流を地絡と誤検出し、負荷電流の通電を停止することがないよう構成されている。
【0031】
このように、コンデンサC1は、過電流の検出から負荷電流の通電を停止するまでの間を規定の遅延時間だけ遅らせる遅延手段として機能する。また、コンデンサC1と第1抵抗R1とは、遅延手段を含む遅延回路を構成する。
【0032】
時刻t3は、地絡による過電流の発生後、遅延時間Tdが経過し、負荷への通電が停止される時点を示す。第2トランジスタQ2がオンすると、第1トランジスタQ1の制御端が接地点へ接続されるため、当該制御端の電流が増加する。第2トランジスタQ2は接地用トランジスタとして機能する。かかる制御端の電流の増加により、第1トランジスタQ1に通電される電流が増幅する。このため、第1トランジスタQ1の出力端に接続される第1ダイオードD1に通電される電流が増加する。当該電流の増加により主トランジスタQMの制御端と第6抵抗R6との接続点の電位VGが上昇してVGstpに達する。なお、VGstpは、主トランジスタQMの入力端の電位と同電位であり、後述の式により与えられる。
【0033】
このため、後述するように、主トランジスタQMの入力端と制御端との電位差がなくなり、主トランジスタQMがオフする。当該オフ変化により、負荷への通電が停止されるため、電源VINと負荷との間に接続される過電流検出抵抗RSと主トランジスタQMとが過電流から保護される。
【0034】
ここで、VGstpは以下の(1)式により与えられる。なお、VCE(Q1)は第1トランジスタQ1の制御端と出力端間の電圧であり、VF(D1)は第1ダイオードD1の両端の電圧である。
VGstp=VCE(Q1)+VF(D1) ・・・(1)
また、VGlimの値は、0からVGstpまでの値であり、負荷検出抵抗RSと主トランジスタQMとが破壊されない程度のIlimを通電するよう主トランジスタQMの特性に基づき設定すればよい。
【0035】
VGstpをVCE(Q1)+VF(D1)に設定した場合に、主トランジスタQMの入力端と制御端との電位差がなくなるのは、当該両端の電圧であるVGSが0[v]となる場合である。VGSは、以下の式により与えられる。なお、IlimはVBE(Q1)/RSである。
VGS=VGstp−RS×Ilim
(1)式より、
VGS=VCE(Q1)+VF(D1)−RS×Ilim
Ilim=VBE(Q1)/RSより、
VGS=VCE(Q1)+VF(D1)−VBE(Q1) ・・・(2)
ここで、VF(D1)とVBE(Q1)との値は、ダイオードの一般的な電圧降下の特性に従い、約0.6[v]が該当すると考えられ、(3)式が導出される。
VGS=VCE(Q1) ・・・(3)
また、VCE(Q1)の値は、第1トランジスタQ1が十分に導通した場合には、第1トランジスタQ1の入力端と出力端間における電圧降下も十分に小さいため、0[v]と近似できる。第1トランジスタQ1が十分に導通した場合のVCE(Q1)をVCEsat(Q1)とすると、(3)式より、
VGS≒VCEsat(Q1)
VGS≒0
となり、主トランジスタQMの制御端と入力端間の電圧VGSは0[v]となる。
【0036】
このように、主トランジスタQMは負荷への通電を停止する停止手段として機能する。また、主トランジスタQMと第3抵抗R3と第4抵抗R4と第2トランジスタQ2とは、負荷への通電を停止する停止手段を含む停止回路を構成する。
【0037】
また、主トランジスタQMによる通電が停止された状態において、第1トランジスタQ1は第3抵抗R3を介して、また第2トランジスタQ2は第1トランジスタQ1と第1抵抗R1とを介して継続的にバイアスが与えられる。このため、両トランジスタはオン状態が保持され、主トランジスタQMの入力端と制御端との間に電位差が生じない状態が保持され、以後、負荷への通電が継続的に停止される。
【0038】
このように、第1トランジスタQ1は、第2トランジスタQ2のオン状態を保持する保持手段として機能する。また、第1トランジスタQ1と第1抵抗R1と第2抵抗R2と第3抵抗R3とは、第2トランジスタQ2のオン状態を保持する保持手段を含む保持回路を構成する。
【0039】
時刻t4は、負荷への通電が停止され、地絡が解消されていない状態において、Restart信号が出力された時点を示す。Restart信号が出力されると、第4トランジスタQ4へバイアスが与えられ、第4トランジスタQ4がオンする。これにより、第1抵抗R1とコンデンサC1との接続点が接地点に接続されるため、コンデンサC1が放電され、第2トランジスタQ2がオフする。すなわち、Restart信号は、第2トランジスタQ2のオン状態と主トランジスタQMでの通電の停止が保持された状態とを解消する信号である。ただし、第1トランジスタQ1は、第2トランジスタQ2がオフしても、地絡が解消されていない場合には過電流検出抵抗RSの両端に生じる電圧降下により、一定のバイアスが与えられるためオフ変化しない。このため、上述の通り主トランジスタQMの制御端の電位はVGlimとなり、出力電流IoutはIlimの値に制限される。
【0040】
なお、時刻t4において地絡が解消されている場合には、Ioutは時刻t1と同様の正常な電流値となる。
【0041】
なお、Restart信号は、例えば負荷への通電が停止された後の所定時間後に、図示しないマイクロコンピュータにより出力される。また、過電流保護回路1aが車両に搭載される場合には、車載用電子機器や原動機の起動に応じて出力されるよう構成してもよい。
【0042】
時刻t5は、Restart信号の出力が停止された時点を示す。Restart信号の出力が停止されると、第4トランジスタQ4へバイアスが与えられないため第4トランジスタQ4がオフする。これにより、第1抵抗R1に流れる電流がコンデンサC1へ流入し、コンデンサC1への充電が開始される。以後、前述の通り、遅延時間Tdの間に出力電流の通電が制限され、Tdの経過後である時刻t6において通電が停止される。
【0043】
なお、SWon信号の投入直後において、出力電流Ioutは負荷に備えられた図示しないコンデンサへ突入電流として流入する。突入電流は負荷電流検出抵抗Rsと主トランジスタQMとに対し過大な電流であり、両素子を破壊される恐れがあるとともに、負荷の起動に必要な電流である。本発明における過電流保護回路1aは、突入電流による過電流を検出した場合、前述の時刻t2の動作と同様に、第1トランジスタQ1がオン変化し、主トランジスタQMの制御端へ電圧を印加し、当該制御端の電位をVGlimとする。これにより、主トランジスタQMは負荷への通電を制限する。また、本発明における過電流保護回路1aは、電源VINと負荷の間に接続された負荷電流検出抵抗Rsと主トランジスタQMとを突入電流による過電流から保護するとともに、負荷への電流の供給を停止しないため、負荷の起動に必要な一定の電流を供給することができる。
【0044】
〔第2の実施形態〕
図4は本発明の第2の実施形態を示す過電流保護回路1bの構成図である。
【0045】
過電流保護回路1bは、図2に示した過電流保護回路1aにおけるスイッチ回路2に第2ダイオードD2を付加した回路である。2ダイオードD2は、スイッチ回路2bに設けられる。なお、図2に示した過電流保護回路1aの構成要素と同様の構成要素については、同じ参照符を付して、説明は省略する。
【0046】
図2に示した過電流保護回路1aは、主トランジスタQMの制御端の電位VGを上昇させ、主トランジスタQMの入力端と制御端との電位差をなくすことにより、主トランジスタQMをオフさせる。当該制御は、ダイオードの特性に基づき、VBE(Q1)=VF(D1)であることを前提とする。
【0047】
しかし、第1トランジスタQ1と第1ダイオードD1は半導体の性質上、温度の影響を受け、導通する電流や印加される電圧の値に変動を生じ易い。かかる温度変化により、VBE(Q1)の値が VF(D1)より大きくなる場合も生じる。かかる場合には、上記(2)式は以下の通りとなる。
VGS=VCE(Q1)+VF(D1)−VBE(Q1)
VGS> 0
すなわち、VGSは0より大きい値となり、主トランジスタQMの入力端と制御端との電位差がなくならない。この場合、主トランジスタQMがオフせず、負荷への通電が停止されないため、不要な電流が出力され続けることが問題となる。
【0048】
そこで、過電流保護回路1bは、第2ダイオードD2を備えることで、かかる問題を解決する。第2ダイオードD2は、入力端が主トランジスタQMの制御端と第5抵抗R5との接続点に接続され、出力端が第1ダイオードD1の出力端に接続される。
【0049】
第2ダイオードD2は、ダイオードの性質上、所定の電圧降下を生じさせるため、直列に接続される主トランジスタQMの入力端と制御端との端子間の電圧を低減させる。このため、VGSは0により接近した値となり、チャネルがより狭くなり主トランジスタQMの通電量が低減される。
【0050】
このように、過電流保護回路1bは、温度変化により、主トランジスタQMの入力端と制御端との端子間の電圧が0とならない場合であっても、当該電圧値を低減させるため、主トランジスタQMの通電量を低減させることができる。これにより、不要な電流の出力を低減させることができる。
【0051】
なお、第2ダイオードD2は抵抗素子でもよく、主トランジスタQMの入力端と制御端との間の電圧を低下させるよう機能する素子であればよい。
【0052】
また、過電流保護回路1bは、図2に示した過電流保護回路1aに第2ダイオードD2を付加した回路であるが、当該第2ダイオードD2は過電流保護回路1aへ付加されるだけでなく、以下に示す本発明の他の実施形態における過電流保護回路へ付加することもできる。この場合、当該第2ダイオードD2が付加された過電流保護回路は前述したのと同様の作用及び効果を生じさせる。
【0053】
〔第3の実施形態〕
図5は本発明の第3の実施形態を示す過電流保護回路の構成図である。
【0054】
過電流保護回路1cは、図2に示した過電流保護回路1aに第3ダイオードD3と第4ダイオードD4と第7抵抗R7とを付加した回路である。なお、図2に示した過電流保護回路1aの構成要素と同様の構成要素については、同じ参照符を付して、説明は省略する。
【0055】
電源VINから出力される電圧は、レギュレータを介す前の電圧であるため変動を生じやすい。VINの電圧が減少すると、コンデンサC1への充電電流も減少するため、前述の遅延時間が延長される。この結果、過電流検出抵抗RSや主トランジスタQMに過電流が通電される時間も延長され、両素子が破壊される恐れが増すことが問題となる。
【0056】
そこで、過電流保護回路1cは、第3ダイオードD3と第4ダイオードD4と第7抵抗R7とを備えることで、かかる問題を解決する。第7抵抗R7は一端が第1抵抗R1に接続され、他端が第2抵抗R2とコンデンサC1との接続点に接続される。第3ダイオードD3は、入力端が第1抵抗R1と第7抵抗R7との接続点に接続され、出力端が第4ダイオードD4の入力端に接続される。第4ダイオードD4は、入力端が第3ダイオードD3の出力端に接続され、出力端が接地点に接続される。
【0057】
第3ダイオードD3と第4ダイオードD4とは、ダイオードの作用により一定の電圧降下を生じさせる、いわゆるクランプ素子として機能する。本回路においては両素子による電圧降下の合計は約1.2[v]である。これは、電源VINから出力される電圧の変動に係わらずほぼ一定となる。コンデンサC1と第7抵抗R7とは、第3ダイオードD3と第4ダイオードD4とに並列に接続されるため、コンデンサC1と第7抵抗R7とに生じる電圧降下の合計は、約1.2[v]で一定となる。かかる電圧降下はダイオードの作用に基づくため、電源VINから出力される電圧の変動に係わらず、コンデンサC1と第7抵抗R7とには安定的に電圧が印加される。この結果、VINの電圧が減少した場合であっても、コンデンサC1への充電電流は一定し、前述の遅延時間が延長されることはない。
【0058】
このように、過電流保護回路1cは、電源VINの出力に変動があった場合であっても、過電流検出抵抗RSや主トランジスタQMに過電流が通電される時間が延長されず、両素子が破壊される恐れが増すのを防止する。また、温度変化により第1トランジスタQ1の出力電流に変動が生じた場合であっても、同様に、コンデンサC1と第7抵抗R7とには安定的に電圧が印加され、コンデンサC1への充電電流を一定させることができる。
【0059】
なお、第3ダイオードD3と第4ダイオードD4とは、ダイオードに限定されず、電源VINの出力の変動に係わらず、一定の電圧降下を生じさせる素子であればよい。
【0060】
また、過電流保護回路1cは、図2に示した過電流保護回路1aに第3ダイオードD3と第4ダイオードD4と第7抵抗R7の各素子を付加した回路であるが、当該各素子は過電流保護回路1aへ付加されるだけでなく、以下に示す本発明の他の実施形態における過電流保護回路へ付加することもできる。この場合、当該各素子が付加された過電流保護回路は前述したのと同様の作用及び効果を生じさせる。
【0061】
〔第4の実施形態〕
図6は本発明の第4の実施形態を示す過電流保護回路の構成図である。
【0062】
過電流保護回路1dは、図2に示した過電流保護回路1aにマイクロコンピュータ2と第8抵抗R8と第5ダイオードD5とを付加した回路であり、マイクロコンピュータ2がSWon信号とRestart信号とを出力する回路を示す。なお、図2に示した過電流保護回路1aの構成要素と同様の構成要素については、同じ参照符を付して、説明は省略する。
【0063】
図2に示した過電流保護回路1aは、負荷への通電が停止された後の所定時間後に、マイクロコンピュータによりRestart信号が出力される。しかし、負荷への通電は、地絡による過電流の発生によるもののほか、負荷の稼働状況に応じて停止される場合もある。Restart信号は、過電流の発生により負荷への通電が停止された場合に、過電流保護回路による通電停止状態を解消する信号である。このため、過電流保護回路1aでは、Restart信号を出力するために、過電流の発生による負荷への通電の停止をどのように検知するか問題となる。
【0064】
そこで、過電流保護回路1dは、マイクロコンピュータ2と第8抵抗R8と第5ダイオードD5とを備えることで、かかる問題を解決する。過電流保護回路1dに接続されたマイクロコンピュータ2は、第3トランジスタQ3の制御端にSWon信号が出力され、第4トランジスタQ4の制御端にRestart信号が出力される。また、マイクロコンピュータ2が第5ダイオードD5の入力端に接続され、第5ダイオードD5の出力端が第4抵抗R4と第2トランジスタQ2の入力端との接続点に接続される。マイクロコンピュータ2は、電源VDDにより電源が与えられる。第8抵抗R8は、一端が電源VDDに接続され、他端が第5ダイオードD5の入力端とマイクロコンピュータ2との接続点に接続される。
【0065】
マイクロコンピュータ2は、電源VDDに接続された第8抵抗R8を介して所定の電圧が印加される。当該電圧の値は、電源VDDと第8抵抗R8との値に基づいて規定され、電源VDDが安定して与えられる間、一定した値となる。すなわち、マイクロコンピュータ2は、電源VDDによりハイレベルの信号が入力される。過電流検出抵抗RSにより過電流が検出されると、前述の遅延時間後に第2トランジスタQ2がオンする。これにより、第8抵抗R8とマイクロコンピュータ2の入力端子との接続点も接地点に接続される。当該入力端子との接続点が接地点に接続されると、第8抵抗R8を流れる電流が接地点に流入するため、マイクロコンピュータ2に印加される電圧が急減する。すなわち、マイクロコンピュータ2へローレベルの信号が入力される。マイクロコンピュータ2は当該電圧のハイレベルからローレベルへの変化を検出することで、過電流の発生による負荷への通電の停止を検知することができる。マイクロコンピュータ2は通電の停止を検知した後に所定のタイミングでRestart信号を出力する。
【0066】
このように、過電流保護回路1dは、マイクロコンピュータ2と接続され、過電流の発生による負荷への通電の停止を検知することができ、負荷への通電が停止された後に、マイクロコンピュータ2よりRestart信号を出力することができる。
【0067】
〔第5の実施形態〕
図7は本発明の第5の実施形態を示す過電流保護回路の構成図である。
【0068】
過電流保護回路1eは、図2に示した過電流保護回路1aから第4トランジスタQ4を削減した回路である。なお、図2に示した過電流保護回路1aの構成要素と同様の構成要素については、同じ参照符を付して、説明は省略する。
【0069】
図2に示した過電流保護回路1aは、SWon信号とRestart信号との出力回路を各別に設ける。過電流保護回路1eは、両出力回路を単一の回路で構成することで、過電流保護回路のコスト削減を図る。
【0070】
過電流保護回路1eは、回路1aにおいて、第2トランジスタQ2の出力端とコンデンサC1の負極端子と第2抵抗R2の接地側端子を各々接地点に接続せず、スイッチトランジスタQSWの入力端に接続する。また、過電流保護回路1eは、第4トランジスタQ4を含むRestart信号の出力回路を削減して構成される。主トランジスタQMと第5抵抗R5と第6抵抗R6とスイッチトランジスタQSWとでスイッチ回路2eを構成する。
【0071】
スイッチトランジスタQSWの制御端にSWon信号が継続して入力されると、スイッチトランジスタQSWにバイアスが与えられ、スイッチトランジスタQSWが継続してオンする。スイッチトランジスタQSWがオンすると、主トランジスタQMの制御端と接地点とが接続され、電源VINから電圧が印加されるため、主トランジスタQMの入力端と制御端との間に電圧降下が生じ、主トランジスタQMがオンする。これにより、出力電流Ioutの通電が開始される。すなわち、スイッチトランジスタQSWの制御端への信号の入力は、過電流保護回路1aにおけるSWon信号の入力と同様の作用を生じさせる。
【0072】
過電流検出抵抗RSにより過電流が検出されると、前述の手順により第2トランジスタQ2がオンする。これにより、過電流検出抵抗RSと主トランジスタQMとの接続点がスイッチトランジスタQSWを介して接地点に接続され、主トランジスタQMの入力端に電流が流入せず、主トランジスタQMはオフして通電を停止する。スイッチトランジスタQSWがオンである間は、主トランジスタQMはオフの状態を継続するため、通電は継続して停止される。
【0073】
スイッチトランジスタQSWの制御端への信号入力を停止すると、過電流保護回路1eは接地点と切断され、電流が流入しない。このため、第1トランジスタQ1はオフされ、コンデンサC1が放電する。コンデンサC1の放電により第2トランジスタQ2がオフされ、過電流検出抵抗RSと主トランジスタQMとの接続点が接地点と切断される。これにより、スイッチトランジスタQSWの入力端に信号が再度入力されると、主トランジスタQMがオン状態となる。すなわち、スイッチトランジスタQSWの制御端への信号の停止は、過電流保護回路1aにおけるRestart信号の入力と同様の作用を生じさせる。
【0074】
このように、過電流保護回路1eは、スイッチトランジスタQSWの制御端に入力される信号がSWon信号とRestart信号とを兼ねる。これにより、過電流保護回路1eは、両出力回路が単一の回路で構成され、過電流保護回路のコスト削減を図ることができる。
【0075】
〔第6の実施形態〕
図8は本発明の第6の実施形態を示す車載用表示装置4の構成図である。
【0076】
車載用表示装置4は、図2に示した過電流保護回路1aを備えた装置である。図8における過電流保護回路1fは図2に示した過電流保護回路1aに相当する。なお、図2に示した過電流保護回路1aの構成要素と同様の構成要素については、同じ参照符を付して、説明は省略する。
【0077】
車載用表示装置4は、発光LED5を制御するLEDドライバ6を備え、発光LED5を光源とし乗車者に地図等の所定の情報を表示する。車載用表示装置4は、車両内に設置されるため、車両走行中は走行による振動が継続的に加えられる。この振動は内部回路の配線に支障を来たし、地絡が発生する要因となる。また、車載用表示装置4は、複数の発光LED5を光源とするため、発光による熱を放出するための複数の通気口が設けられる。通気口から装置内部へ侵入した埃が、LEDドライバ6や発光LED5の回路に接触すると地絡が発生する要因となる。
【0078】
そこで、車載用表示装置4へ電源を供給する回路に過電流保護回路1fが接続される。LEDドライバ6と電源VINの間に主トランジスタQMと過電流検出抵抗RSとが接続され、発光LED5への電源の供給を行う。LEDドライバ6で地絡が発生した場合には、過電流保護回路1fが作動し、前述の手順で主トランジスタQMと過電流検出抵抗RSとが過電流から保護される。
【0079】
このように、車載用表示装置4は、振動等により地絡が発生しやすいため、過電流保護回路1fを備えることが有用である。
【0080】
なお、車載用表示装置は、表示装置に限定されるものではなく、車載用オーディオ装置や車載用ナビゲーション装置でもよく、車載用電子機器であればよい。また、車載用に限定されるものではなく、家庭用や移動体用でもよい。
【符号の説明】
【0081】
1a〜1e 過電流保護回路
2,2b,2e 電源スイッチ回路
3 マイクロコンピュータ
4 車載用表示装置
5 発光LED
6 LEDドライバ
QM 電界効果トランジスタ
Q1〜Q4,QSW 接合型トランジスタ
R1〜R8,RS 抵抗
C1 コンデンサ
D1〜D5 ダイオード
VIN,VDD 電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源と負荷との間に接続され、負荷への過電流を検出する過電流検出素子と、
前記負荷と前記過電流検出素子との間に接続され、制御端と入力端との間に印加される電圧に応じて前記負荷への通電を制御する主スイッチ素子とを備え、
前記過電流検出素子が負荷への過電流を検出すると、所定時間後に主スイッチ素子が負荷への通電を停止する過電流保護回路において、
出力端が前記主スイッチ素子の制御端へ接続され、前記過電流検出素子が負荷への過電流を検出すると導通する第1スイッチ素子を備えたことを特徴とする過電流保護回路。
【請求項2】
前記第1スイッチ素子と接地点との間に接続された容量素子と、
前記容量素子と制御端が接続された第2スイッチ素子と、
前記容量素子と並列に接続され、出力端が接地点に接続された第3スイッチ素子と、
前記第2スイッチ素子のオン変化を検知すると、前記第3スイッチ素子の制御端へ信号を出力する出力回路を備え、
前記出力回路が前記信号を出力すると、前記容量素子が前記接地点へ放電することにより、前記第3スイッチ素子がオフ変化することを特徴とする請求項1に記載の過電流保護回路。
【請求項3】
前記主スイッチ素子の制御端と、前記第2スイッチ素子の出力端と、前記容量素子の一端とが入力端と直列に接続され、出力端が接地点に接続された接地用スイッチ素子を備え、
前記接地用スイッチ素子は制御端に信号が入力されるとオン変化し、前記接地点と導通することを特徴とする、請求項1又は2に記載の過電流保護回路。
【請求項4】
前記主スイッチ素子の制御端と前記接続端とが接続される接続線に、出力端を前記接続端へ向けて設けられた整流素子を備えたことを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の過電流保護回路。
【請求項5】
前記容量素子にクランプ素子が並列に接続されていることを特徴とする、請求項2から4のいずれかに記載の過電流保護回路。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の過電流保護回路を備え、
前記負荷が車載用表示装置であることを特徴とする車載用表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−78235(P2011−78235A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−228214(P2009−228214)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】