説明

道路付属物及び道路付属物を用いた温度観測システム

【課題】設置容易であって、車両の走行が少ない道路でも温度を観測可能な道路付属物を提供する。
【解決手段】太陽電池11と、太陽電池11で発生した電気を蓄電する蓄電部12と、周囲の温度を計測する温度センサ14と、温度センサ14に接続され、蓄電部12を電源として作動するICタグ10とを備え、ICタグ10は、無線送信部16と識別情報を保持する識別情報保持部15とを備えて、温度センサ14により取得した温度データを識別情報と共に無線送信部16により送信するように構成された道路付属物1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路鋲、デリネータ等の道路付属物を用いた温度観測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、自稼発電機と温度センサと通信手段とを道路鋲に内装し、温度データ等のデータを道路鋲からITS中継器に送信して、データセンターで処理するシステムが開示されている(同文献の段落0025、図9等参照)。このシステムの道路鋲に内装された自稼発電機は、車両の走行に伴って発生する振動を電気エネルギーに変換して電気を蓄電する。
【特許文献1】特表2007−536446号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記道路鋲に内装された自稼発電機は、振動を拾うため上下の長さをある程度必要とし、道路鋲の埋設深さが深くなって、設置が容易でなく、また、車両の走行が少ない道路では発電量が不十分で観測不能となる虞があった。
【0004】
本発明は、上述した問題を解決するものであり、設置容易であって、車両の走行が少ない道路でも温度を観測可能な道路付属物、及び、道路付属物を用いた温度観測システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の道路付属物は、太陽電池と、前記太陽電池で発生した電気を蓄電する蓄電部と、周囲の温度を計測する温度センサと、前記温度センサに接続され、または、前記温度センサを備えて、前記蓄電部を電源として作動するICタグと、を備え、前記ICタグは、無線送信部と識別情報を保持する識別情報保持部とを備えて、前記温度センサにより取得した温度データを前記識別情報と共に前記無線送信部により送信するように構成されたことを特徴とする。
【0006】
これによれば、無線で通信するため通信回線を道路に埋設する必要がないこと、及び、道路付属物を薄く構成できて道路付属物の埋設深さが浅くて済むことから、道路付属物の設置が容易である。そして、太陽電池で発電するとともに、消費電力が少ないICタグを用いるため、車両の走行が少ない道路でも温度を観測可能である。さらに、識別情報を温度データと共に送信するため、受信側では、どの道路付属物がどの温度データを発信したかが分かり、観測範囲の各部分の温度状況を把握可能である。
【0007】
本発明の道路付属物を用いた温度観測システムは、複数の本発明の道路付属物と、前記道路付属物から前記識別情報と前記温度データとを受信するアンテナを備えて、前記アンテナで受信した前記識別情報と前記温度データとを転送する転送装置と、前記転送装置から前記識別情報と前記温度データとを受信して処理するコンピュータと、を備えたことを特徴とする。
【0008】
これによれば、本発明の道路付属物を用いていることから、道路付属物の設置が容易であり、車両の走行が少ない道路でも温度を観測可能である。さらに、各道路付属物の識別情報を温度データと共に収集できるため、観測範囲の各部分の温度状況を把握可能である。
【0009】
ここで、前記各道路付属物を道路鋲またはデリネータとすれば、従来から道路の路面や道路端に複数設置されている道路鋲やデリネータを用いるため、設置後に違和感がない。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、温度観測に用いる道路付属物の設置が容易であり、車両の走行が少ない道路でも温度を観測可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1に示すように、温度観測システムSは、道路付属物として道路鋲1を用いるものであり、道路8のセンターライン9に埋設された複数の道路鋲1と、複数の転送装置2と、インターネット7を含む通信回線を介して各転送装置2に接続された管理サーバ5とから構成されている。各転送装置2は、アンテナ3とアンテナ3に接続された制御ボックス4とから構成され、道路8の縁部に立設された電柱6に取着されている。
【0012】
各道路鋲1は、図2に示すように、太陽電池11と、太陽電池11に接続されたコンデンサーまたはバッテリーからなる蓄電部12と、LED(発光ダイオード)を備えたLED発光部13と、温度センサ14と、温度センサ14に接続されたICタグ10とを備えている。LED発光部13、温度センサ14、及び、ICタグ10は、いずれも蓄電部12に接続されて、蓄電部12を電源とする。
【0013】
ICタグ10は、不揮発性メモリから構成された識別情報保持部15と、揮発性メモリ(図示せず。)と、CPU等からなる制御部(図示せず。)と、無線送信部16とを備え、識別情報保持部15には、その道路鋲1の識別情報(すなわち、道路鋲1毎に異なるように定められた識別情報)が保持されている。
【0014】
各制御ボックス4は、CPU、メモリ、通信装置等から構成され、図2に示すように、アンテナ3に接続された無線受信部41と、無線受信部41に接続され、メモリカード等から構成されたデータ蓄積部42と、データ蓄積部42に接続されたデータ転送部43とを備えている。
【0015】
管理サーバ5は、転送装置2から道路鋲1の識別情報と温度データとを受信して処理する、データセンター等に設けられた汎用的なコンピュータであり、CPU、メモリ、ハードディスク、通信装置等からなるデータ集計部51と、ディスプレイ装置、印刷装置等からなる出力部52と、キーボード、マウス等からなる入力部(図示せず。)とを備えている。
【0016】
次に、図3〜6に基づいて、道路鋲1について詳説する。図3、5に示すように、道路鋲1は、有底の略円筒状で上方に開口したケース17を備え、ケース17の上方開口部は、透明(着色透明を含む。)乃至半透明の合成樹脂製カバー18で覆われている。カバー18にはボルト孔19が設けられ、ボルト孔19にボルトを挿入することにより、カバー18はケース17に固定される。
【0017】
図4は、図3においてカバー18を取り除いた状態を示す。図4に示すように、道路鋲1は、内部に太陽電池11と複数のLED発光部13とを備え、太陽電池11及び各LED発光部13は、ケース17内に設けられた機器固定ケース20に固定されている。
【0018】
図5に示すように、機器固定ケース20内にはコントローラ部21が設けられ、図5には図示しないが、コントローラ部21には、蓄電部12、温度センサ14、及び、ICタグ10が配設されている。なお、図5では、太陽電池11及びLED発光部13も省略されている。
【0019】
また、図6に示すように、ケース17の周壁にはリブ22が突設され、リブ22にはアンカーピン23が挿通されて、アンカーピン23により、道路鋲1が道路8に埋設されたときの抜脱が防止される。
【0020】
以上のように構成された道路鋲1及び温度観測システムSの動作について、次に説明する。
【0021】
太陽電池11は、太陽光により電気を発生し、この電気は蓄電部12に蓄電される。LED発光部13は、蓄電部12から電気の供給を受けてLEDを発光させる。したがって、道路鋲1は、センターライン9の位置を示す通常の道路鋲としても機能する。
【0022】
また、温度センサ14は、蓄電部12から電気の供給を受けて周囲すなわちケース17内の温度を計測する。ケース17内の温度は周囲の道路8の温度に追従するので、温度センサ14により、道路8の路面付近の温度データを取得可能である。
【0023】
ICタグ10は蓄電部12から電気の供給を受けて動作し、ICタグ10の制御部は、所定時間毎に、温度センサ14から温度データを取得して、識別情報保持部15から読込んだ識別情報と共に、無線送信部16により無線送信する。
【0024】
制御ボックス4の無線受信部41は、アンテナ3を介して、ICタグ10が送信した温度データ及び識別情報を受信する。データ蓄積部42は、無線受信部41が受信した温度データ及び識別情報を蓄積する。データ転送部43は、データ蓄積部42に蓄積された温度データ及び識別情報を、所定時間毎に管理サーバ5に転送し、転送した温度データ及び識別情報をデータ蓄積部42から削除する。
【0025】
管理サーバ5は、制御ボックス4から転送された温度データ及び識別情報を、その受信時刻と共にデータ集計部51に蓄積し、集計する。そして、出力部52により集計結果を出力する。集計方法としては、例えば、識別情報毎に(すなわち、道路鋲1毎に)、所定時間毎(例えば、1時間毎)の温度の平均を算出する方法や、観測範囲を幾つかのブロックに分割して、各ブロック内に配置されている道路鋲1の識別情報を管理サーバ5に記憶させておいて、ブロック毎に、所定時間毎の温度の平均を算出する方法等がある。
【0026】
温度観測システムSは、各道路鋲1が固有の識別情報を有しているので、管理サーバ5に、識別情報とその識別情報を有する道路鋲1の位置とを対応付けて記憶させておけば、各道路鋲1の位置における温度状況が把握でき、観測範囲のどこがどのような温度であるのかといった、観測範囲の各部分の温度状況を把握できることとなる。そして、例えば道路8の凍結が予想される範囲では注意情報を発すること等が可能となる。
【0027】
また、ICタグ10は消費電力が小さいため、太陽電池11を電源としても十分に作動し、車両の走行が少ない道路でも観測可能である。
【0028】
さらに、道路鋲1は無線で通信を行うため、通信回線を道路8に埋設する必要がないのみならず、太陽電池11及びICタグ10は小さく薄いものであるため、道路鋲1の上下方向の厚みを薄くでき、埋設深さが浅くて済む。このため、道路鋲1は容易に設置でき、設置コストも低額となる。そして、ICタグ10は安価であることから、道路鋲1も安価に作製できるため、温度観測システムSは低コストで導入できる。
【0029】
なお、実施形態では、温度センサ14をICタグ10と別体としたが、温度センサ14をICタグ10に組み込んだ形態としてもよい。すなわち、ICタグ10を、温度センサ14を備えた所謂センサ付きICタグとしてもよい。
【0030】
また、本発明が適用される道路付属物は道路鋲1に限らず、例えば、デリネータ(リフレクタ)や、ガードレールの支柱等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態に係る温度観測システムの概略を示す図である。
【図2】同温度観測システムの構成を示すブロック図である。
【図3】同温度観測システムに用いる道路鋲の平面図である。
【図4】図2の道路鋲においてカバーを取り除いた状態の平面図である。
【図5】図2の道路鋲の内部構成を省略した断面図である。
【図6】図2の道路鋲の側面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 道路鋲
2 転送装置
3 アンテナ
5 管理サーバ(コンピュータ)
10 ICタグ
11 太陽電池
12 蓄電部
14 温度センサ
15 識別情報保持部
16 無線送信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池と、
前記太陽電池で発生した電気を蓄電する蓄電部と、
周囲の温度を計測する温度センサと、
前記温度センサに接続され、または、前記温度センサを備えて、前記蓄電部を電源として作動するICタグと、
を備え、前記ICタグは、無線送信部と識別情報を保持する識別情報保持部とを備えて、前記温度センサにより取得した温度データを前記識別情報と共に前記無線送信部により送信するように構成されたことを特徴とする道路付属物。
【請求項2】
複数の請求項1記載の道路付属物と、
前記道路付属物から前記識別情報と前記温度データとを受信するアンテナを備えて、前記アンテナで受信した前記識別情報と前記温度データとを転送する転送装置と、
前記転送装置から前記識別情報と前記温度データとを受信して処理するコンピュータと、
を備えたことを特徴とする道路付属物を用いた温度観測システム。
【請求項3】
前記各道路付属物が、道路鋲またはデリネータであることを特徴とする請求項2記載の道路付属物を用いた温度観測システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−71955(P2010−71955A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−243051(P2008−243051)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(000159021)株式会社キクテック (42)
【Fターム(参考)】