説明

道路情報収集システム

【課題】道路の経路位置、車線数、標識などの情報について、車載カメラ装置の映像から効率よく低コストで情報を収集する道路情報収集システムを提供する。
【解決手段】道路情報の収集のみの目的で走行しないタクシー14によって、本業のついでに道路情報を収集してもらう。また、サーバ装置17によって情報価値の高い地域が算出され、タクシー14は当該情報価値の高い地域を優先的に通って道路情報を収集するため、効率的・効果的な道路情報の収集が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路の経路位置、車線数、標識などを、車載カメラ装置の映像から効率よく収集する道路情報収集システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から存在する道路情報収集システムでは、道路情報を収集するセンターと、実際に道路情報の収集を行う車載カメラ装置が搭載されている車両とを地図ベンダが保有しており、車両を道路情報の収集のみの目的で走行させて情報を収集していた。こうした従来技術の一例としては、特許文献1に記載された技術がある。
また、撮影画像から道路標識を認識する技術としては、特許文献2に記載の技術があり、更に収集された映像から道路標識の位置を推定する技術としては非特許文献1に記載の技術がある。
【0003】
【特許文献1】特開平6−215102号公報
【特許文献2】特表2002−530759号公報
【非特許文献1】動画像解析による道路案内標識の自動位置推定(富永裕之他2名、情報処理学会研究報告. ITS, [高度交通システム] Vol.2001,No.(20010906)pp.129-134 社団法人情報処理学会ISSN:09196072)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された発明の場合、実際に道路情報の収集を行う車載カメラ装置が搭載されている車両を、道路情報の収集のみの目的で走行させており、この点で非常にコストのかかるシステムとなっている。また、タクシーなど一般に道路を走行している車両は、事故発生時の証拠用途などで車載カメラ装置を搭載することが有用ではあるが、車載カメラ装置の価格に見合う有効性を見出せるユーザは少ない。
【0005】
こうした点に鑑み、本発明の目的は、道路の経路位置、車線数、標識などの情報について、車載カメラ装置の映像から効率よく低コストで情報を収集する道路情報収集システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1の道路情報収集システムは、道路情報を収集する道路情報収集センターと、道路情報の収集を主目的としていない車両と、前記車両を統括する配車センターとが通信網を介して通信可能に接続されている道路情報収集システムであって、前記車両は、道路情報を収集するための車載カメラと、収集した道路情報を前記配車センターに送信する通信装置とを備え、前記配車センターは、前記車両から送信された道路情報を前記道路情報収集センターへと送信するセンター通信装置と、配車センター全体の動作を制御する配車制御装置とを備え、前記道路情報収集センターは、前記車両によって収集された道路情報と既存の道路情報とを比較して道路情報に変更があるか否かを判定するサーバ装置を備えている。
【0007】
また、請求項2に記載の道路情報収集システムは、請求項1に記載の道路情報収集システムにおいて、前記サーバ装置は、予め設定されている特定のルールで、情報価値の高い地域を算出する機能を有しており、前記配車制御装置は、前記サーバ装置で算出された情報価値の高い地域を通って道路情報を収集するように前記車両に配車指示を出す機能を有する。
また、請求項3に記載の道路情報収集システムは、請求項1又は請求項2に記載の道路情報収集システムにおいて、前記車両は、前記配車センターに現在位置及び本来の優先業務の有無に関する情報を送信する機能を有しており、前記配車制御装置は、前記車両から送信された現在位置及び本来の優先業務の有無に関する情報に基づいて前記車両に対する走行指示を決定する機能を有する。
【0008】
すなわち、本発明は、道路情報収集システムにおいて最も高コストが嵩む部分を、他の「もともと他の用途で道路を走行している車両」に代行してもらうことで、道路情報収集の際の低コスト化を図り得るシステムであるということができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の道路情報収集システムによれば、道路情報の収集を主目的としていない車両によって、本業での走行のついでに道路情報を収集してもらうことで、専用の情報測定車両を使用することなく道路情報の収集が可能となる。したがって、低コストで道路情報を収集することができる。また、道路情報の収集を主目的としていない車両への車載カメラ装置の搭載費用の一部または全部を道路情報収集センター側が負担することで、本来の価格よりも安価に車載カメラ装置を搭載することができ、走行する車両側にもメリットのあるシステムとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を適用した道路情報収集システムの一実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態における道路情報収集システムは、道路情報収集センター11、道路情報収集センター11が保有する複数の情報測定車両12、道路情報を収集する用途以外で道路を走行している車両であるタクシーを統括する配車センター13、道路情報の収集を主目的としていない車両としての複数のタクシー14からなる。
道路情報収集センター11、情報測定車両12、配車センター13は、それぞれインターネット等の通信網15で通信可能に接続されている。また、配車センター13及びタクシー14についても、同じく通信網16により相互に通信することが可能である。
【0011】
道路情報収集センター11は、収集した情報を管理する機能を有しており、情報が未収集である地域を算出したり、道路情報収集センター11の動作制御を実行したりするためのサーバ装置17、収集した情報を格納する記録装置18、車両や配車センターとの通信を行う通信装置19を備える。記録装置18には道路情報データベース20が登録されている。
情報測定車両12は、道路の情報を収集するための車載カメラ21、カメラ映像の情報を蓄積する記録装置22、通信装置23を備える。通信装置23は、道路情報収集センター11から動作指示に関する情報を受信したり、収集した道路情報を道路情報収集センター11等に送信したりする機能を有する。
【0012】
配車センター13は、配車制御装置24、記録装置25、センター通信装置26、車両通信装置27を備える。配車制御装置24は、配車センター13全体の動作を制御する機能を有する。記録装置25には、タクシー14によって収集された情報が蓄積される。センター通信装置26は、道路情報収集センター11と通信する機能を有する。車両通信装置27は、配車センター13の管理下にあるタクシー14と通信する機能を有する。
【0013】
タクシー14は、情報測定車両12と同様に、車載カメラ28、カメラ映像を蓄積する記録装置29、通信装置30を備える。通信装置30は、配車センター13から情報収集に関する指示を受信する機能や、車載カメラ28によって収集された道路情報を配車センター13に送信する機能を有する。
【0014】
次に、道路情報収集センター11で扱う道路情報データベース20の一例について説明する。
図2に示すように、道路情報収集センター11における記憶装置18に登録されている道路情報データベース20には、記録の対象である道路の道路ID、道路の収集情報、当該収集情報の収集日時、情報を収集した収集車の収集車IDを1組のデータとして登録されている。
【0015】
道路IDは、道路情報収集センター11が管理する対象地域の道路について一意に割り振られたIDであって、道路データベースに紐付けられている。道路データベースには、道路形状や道路に付帯する属性、標識の座標と標識種別などが格納されている。これをもとに、どの道路についての情報であるかを区別することができる。
【0016】
また、収集車IDは実際の収集車やその管理者情報と紐付けられており、道路情報収集の対価の支払いなどに利用される。
道路の収集情報は、情報測定車両12やタクシー14によって収集した道路情報を道路情報収集センター11が分析して格納する領域である。例えば、道路が工事中であるといった情報や、信号機が新たに設置されたといた各種情報が格納される。こうした分析には例えば特許文献2や非特許分権1に記載されている各種画像解析技術が用いられる。これにより、任意に指定した道路について収集した情報の履歴を管理し、最新の情報を速やかに取り出すことができる。
【0017】
次に、実施形態における道路情報収集システムによって実行される道路情報収集の方法について説明する。
・(例1)
この例では、道路情報収集センター11と、配車センター13と、タクシー14とが何れも受動的に動作する。
【0018】
図3に示すように、まずタクシー14が、本来の業務走行などのついでに、道路情報を車載カメラ28によって収集する(ステップS31)。タクシー14によって収集された道路情報は、通信装置30によって配車センター13へと送信される(ステップS32)。次に、配車センター13では、センター通信装置26によって、タクシー14から集められた道路情報が道路情報収集センター11へと送信される(ステップS33)。
【0019】
道路情報収集センター11では、収集された道路情報が、サーバ装置17によって既存の道路情報と比較されて(ステップS34)、道路情報に変更があるか否かが判定される。そして、「収集日時の間隔の大きいもの」や「既存の道路情報とは有意な差が認められるもの」など予め設定されている特定のルールに従って収集された道路情報の価値の大きさが判定されるとともに(ステップS35)、その価値の大きさによって、配車センター13に対して報酬が支払われる(ステップS36)。なお、収集された経路の道路情報と既存の道路情報とに差異がある場合、当該情報が、道路情報データベース20における道路の収集情報の欄に格納される。
【0020】
・(例2)
この例では、配車センター13が能動的に配車を計画して、情報価値の高い地域を優先的に情報収集する。
図4に示すように、まず道路情報収集センター11のサーバ装置17において、「収集日時の間隔の大きいもの」や「工事したという情報を得た地域」など予め設定されている特定のルールで、「収集されたら価値が高い」と想定される地域が算出される(ステップS41)。そして、地域ごとの情報価値が道路情報収集センター11から配車センター13に通信装置19を介して配信される(ステップS42)。
【0021】
配車センター13の配車制御装置24では、本来の業務の配車計画に、道路情報収集センター11から配信された地域ごとの情報価値を加味して配車計画が検討される(ステップS43)。そして、配車制御装置24は、本業のついでに情報価値の高い地域を通って道路情報を収集するよう車両通信装置27を介してタクシー14に配車指示を出す(ステップS44)。この配車指示は、タクシー14が本来の業務の際に通る経路の道路情報を業務のついでに収集する場合や、本来の業務が空きの場合に道路情報を収集することを主目的に走行する場合も考慮することができる。
【0022】
タクシー14は配車センター13から送信された配車指示に従って、車載カメラ28で経路の道路情報を収集する(ステップS45)。これ以降の処理は例1と同様に、タクシー14によって収集された道路情報が道路情報収集センター11によって収集されるとともに(ステップS46、ステップS47)、各々の情報価値がサーバ装置17によって算出されて(ステップS48、ステップS49)、その価値に応じた報酬が配車センター13側に支払われる(ステップS410)。なお、収集された経路の道路情報と既存の道路情報とに差異がある場合、当該情報が、道路情報データベース20における道路の収集情報の欄に格納される。
【0023】
・(例3)
この例では、タクシー14から送信された現在位置情報に従って配車センター13が受動的に配車を計画して、情報価値の高い地域を優先的に情報収集する。
図5に示すように、まず道路情報収集センター11のサーバ装置17において、「収集日時の間隔の大きいもの」や「工事したという情報を得た地域」など予め設定されている特定のルールで、「収集されたら価値が高い」と想定される地域が算出される(ステップS51)。そして、地域ごとの情報価値が道路情報収集センター11から配車センター13に通信装置19を介して配信される(ステップS52)。
【0024】
ここで、タクシー14は、現在位置及び本来の優先業務の有無に関する情報を、通信装置30を介して配車センター13に送信する(ステップS53)。配車センター13の配車制御装置24は、車両位置と優先業務内容に、地域ごとの情報価値を加味して走行計画を検討する(ステップS54)。そして配車制御装置24は情報価値の高い地域を通って道路情報を収集する走行指示を決定するとともに、当該走行指示をタクシー14に出す(ステップS55)。この指示は、本来の業務の際に通る経路の道路情報を業務のついでに収集する場合と、本来の業務が空きの場合に道路情報を収集することを主目的に走行する場合も考慮することができる。
【0025】
タクシー14は配車センター13から出された指示に従って道路情報を収集する(ステップS56)。これ以降の処理は例1と同様に、タクシー14によって収集された道路情報が道路情報収集センター11によって収集されるとともに(ステップS57、ステップS58)、各々の情報価値がサーバ装置17によって算出されて(ステップS59、ステップS510)、その価値に応じた報酬が配車センター13側に支払われる(ステップS511)。なお、収集された経路の道路情報と既存の道路情報とに差異がある場合、当該情報が、道路情報データベース20における道路の収集情報の欄に格納される。
【0026】
以上のように、本実施形態の道路情報収集システムによれば次のような効果がある。
・道路情報の収集を主目的としていないタクシー14によって、本業での走行のついでに道路情報を収集してもらうことで、専用の情報測定車両12を使用することなく道路情報の収集が可能となる。したがって、低コストで道路情報を収集することができる。
・また、サーバ装置17によって情報価値の高い地域が算出され、タクシー14が当該情報価値の高い地域を優先的に通って道路情報を収集するため、効率的・効果的な道路情報の収集が可能である。
【0027】
・タクシー14は、事故発生時の証拠用途などで車載カメラ装置を搭載することが有用であるものの、コストが嵩むという点で普及が進んでいない。本発明により、車載カメラ28のコストの一部または全部を道路情報収集システムが負担することも可能であるし、あるいは車載カメラ28が収集した情報を道路情報収集システムに提供して報酬を受け取ることで、車載カメラ28のコスト回収に充てることができる。また、本業以外の更なる利益を得ることもできる。さらに、タクシー14への車載カメラ28の普及も促進し得る。
【0028】
なお、上記実施の形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・道路情報を収集する用途以外で道路を走行している車両は、タクシー14以外でもよいことはいうまでもない。例えば、宅配便や引越しのトラック、自家用車等であってもよい。
・配車管理用の通信網16は、道路情報収集センター11の通信網15と共通の通信網として構築するようにしてもよい。
・本発明は、道路情報の収集のみの目的で走行しない車両によって、本業のついでに道路情報を収集してもらうことに特徴があるため、道路情報収集センター11が保有する複数の情報測定車両12は存在しなくてもよい。
【0029】
・情報測定車両12は、記録装置22を搭載することなく車載カメラ21で撮影したカメラ映像を通信装置23で直接道路情報収集センター11に送信するようにしてもよい。また、通信装置23を搭載することなく情報測定車両12が道路情報収集センター11に戻った際に通信網15を介さずに、記録装置22を道路情報収集センター11のサーバ装置17または記録装置18に接続して情報を収集するようにしてもよい。
・タクシー14が収集した情報を直接道路情報収集センター11に送信するようにしてもよい。この場合、記録装置29を省略することもできる。
【0030】
・タクシー14は、記録装置29を搭載することなく車載カメラ28で撮影したカメラ映像を通信装置30で直接配車センター13に送信するようにしてもよい。また、通信装置30を搭載することなくタクシー14が配車センター13に戻った際に通信網16を介さずに、記録装置29を配車センター13の記録装置25に接続して情報を収集するようにしてもよい。
道路情報を収集する過程においては、配車センター13を経由することなく、タクシー14から直接道路情報収集センター11へと道路情報を送信してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施形態における道路情報収集システムの全体構成図。
【図2】道路情報データベース。
【図3】道路情報収集シーケンスの例1。
【図4】道路情報収集シーケンスの例2。
【図5】道路情報収集シーケンスの例3。
【符号の説明】
【0032】
11…道路情報収集センター、13…配車センター、14…道路情報の収集を主目的としていない車両、15,16…通信網、17…サーバ装置、24…配車制御装置、26…センター通信装置、28…車載カメラ、30…通信装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路情報を収集する道路情報収集センターと、道路情報の収集を主目的としていない車両と、前記車両を統括する配車センターとが通信網を介して通信可能に接続されている道路情報収集システムであって、
前記車両は、道路情報を収集するための車載カメラと、収集した道路情報を前記配車センターに送信する通信装置とを備え、
前記配車センターは、前記車両から送信された道路情報を前記道路情報収集センターへと送信するセンター通信装置と、配車センター全体の動作を制御する配車制御装置とを備え、
前記道路情報収集センターは、前記車両によって収集された道路情報と既存の道路情報とを比較して道路情報に変更があるか否かを判定するサーバ装置を備えている道路情報収集システム。
【請求項2】
前記サーバ装置は、予め設定されている特定のルールで、情報価値の高い地域を算出する機能を有しており、
前記配車制御装置は、前記サーバ装置で算出された情報価値の高い地域を通って道路情報を収集するように前記車両に配車指示を出す機能を有する請求項1に記載の道路情報収集システム。
【請求項3】
前記車両は、前記配車センターに現在位置及び本来の優先業務の有無に関する情報を送信する機能を有しており、
前記配車制御装置は、前記車両から送信された現在位置及び本来の優先業務の有無に関する情報に基づいて前記車両に対する走行指示を決定する機能を有する請求項1又は請求項2に記載の道路情報収集システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−75858(P2009−75858A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−244156(P2007−244156)
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(000233055)日立ソフトウエアエンジニアリング株式会社 (1,610)
【Fターム(参考)】