説明

道路標識柱

【課題】標識柱本体部を交換する際の作業時間を短縮化可能な道路標識柱を提供する。
【解決手段】設置面Bに固定される基台部1と、この基台部1の上に載置される標識柱本体部2と、この標識柱本体部2の下部に形成されたフランジ21を基台部1に固定するためのリング状の固定部材3と、を備えた道路標識柱Aであって、固定部材3には上下方向の第1貫通孔31が形成され、フランジ21には上下方向の第2貫通孔22が形成され、基台部1の上面にはインサートナット12が埋設されており、標識柱本体部2と基台部1との間に設けられた位置決め機構によりフランジ21が基台部1の所定の固定位置に位置決めされた状態で、ボルト5が固定部材3の上方から第1貫通孔31及び第2貫通孔22を挿通されてインサートナット12に螺合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設置面に固定される基台部と、この基台部の上に載置される標識柱本体部と、この標識柱本体部の下部に形成されたフランジを前記基台部に固定するためのリング状の固定部材と、を備えた道路標識柱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
かかる道路標識柱は、道路や歩道に設置され、自動車の侵入を防ぐための標識として使用されている(例えば、下記特許文献1)。かかる道路標識柱を道路や歩道等の設置面に取り付ける場合の一般的な取り付け構造を図4に示す。図4は、左下半分が断面図であり、その他の部分が外観図である。
【0003】
道路標識柱Aは、設置面Bに固定される基台部100と、この基台部100の上に載置される標識柱本体部101と、この標識柱本体部101を基台部100に固定するためのリング状の固定部材102と、を備えている。標識柱本体部101の外周部には反射シート103が巻回されて固定されており、道路標識柱Aを夜間に認識しやすいようにしている。標識柱本体部101の下部にはフランジ101aが形成され、このフランジ101aを固定部材102により押えるように固定している。固定部材102は、基台部100の設置面B側からボルト104により締結することで固定される。ボルト104を設置面B側から結合しているのは、外観にボルト104が見えないようにするためである。
【0004】
地中には、アンカー105が埋め込まれており、基台部100の中心に設けられたアンカーボルト106により、道路標識柱Aが設置面Bに固定される。また、道路標識柱Aを設置面Bに固定する方法としては、図4に示す方法以外に、先端を突出させた状態でアンカーボルトを設置面Bに埋設し、基台部100の底面に設けられたナットをアンカーボルトの先端に螺合させる方法がある(ホールインアンカー式)。さらに、アンカーボルトを用いることなく、基台部100の底面を設置面Bに接着剤により接着する方法もある(接着式)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−26946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かかる場合において、標識柱本体部101については外部に露出している面積が大きく、車や自転車が衝突するなどして、破損するケースも多い。その場合、標識柱本体部101を新しいものに交換する作業が必要であるが、図4の取り付け構造の場合、標識柱本体部101を外すためには、ボルト104による結合を解除する必要があり、そのためには、道路標識柱Aの全体をアンカー105から外す必要がある。従って、道路標識柱Aをアンカーボルト106の軸周りに回転させるための治具も必要であり、メンテナンス作業に手間がかかっていた。同様に、上記ホールインアンカー式の場合、道路標識柱Aの全体をアンカーボルトから外す必要がある。また、上記接着式の場合、道路標識柱Aの全体を設置面Bから引き剥がす必要がある。さらに、基台部100が固定される設置面Bは、低い場所にあるため、交換作業がしにくいという問題もあった。
【0007】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その課題は、標識柱本体部を交換する際の作業時間を短縮化可能な道路標識柱を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため本発明に係る道路標識柱は、
設置面に固定される基台部と、
この基台部の上に載置される標識柱本体部と、
この標識柱本体部の下部に形成されたフランジを前記基台部に固定するためのリング状の固定部材と、を備えた道路標識柱であって、
前記固定部材には上下方向の第1貫通孔が形成され、前記フランジには上下方向の第2貫通孔が形成され、前記基台部の上面にはナットが埋設されており、
前記標識柱本体部と前記基台部との間に設けられた位置決め機構により前記フランジが前記基台部の所定の固定位置に位置決めされた状態で、ボルトが前記固定部材の上方から前記第1貫通孔及び前記第2貫通孔を挿通されて前記ナットに螺合されることを特徴とするものである。
【0009】
この構成による道路標識柱の作用効果を説明する。標識柱本体部の下部にはフランジが形成されており、このフランジを固定部材により基台部に固定することで、標識柱本体部は基台部に固定される。固定部材とフランジにはそれぞれ第1貫通孔と第2貫通孔が形成され、基台部の上面にはナットが埋設されているので、ボルトを固定部材の上方から第1貫通孔及び第2貫通孔を通して基台部のナットに螺合させることで、固定部材によりフランジを基台部に固定することができる。この際、本発明の道路標識柱は、位置決め機構によりフランジを基台部の所定の固定位置に位置決めすることができるので、フランジの第2貫通孔と基台部のナットの位置を容易に合わせることができる。
【0010】
一方、標識柱本体部を交換する際には、上方からボルトを外すことで固定部材によるフランジの固定を解除でき、標識柱本体部を基台部から取り外すことができる。この場合、基台部は設置面に固定したままでよいため、標識柱本体部を交換する際の作業時間を短縮化できる。また、新しい標識柱本体部を取り付ける際にも、例えば基台部が固定された設置面が低い場所であっても、前述した位置決め機構によりフランジの第2貫通孔と基台部のナットの位置を容易に合わせることができるため、標識柱本体部を基台部に容易に固定することができる。その結果、標識柱本体部を交換する際の作業時間を短縮化可能な道路標識柱を提供することができる。
【0011】
本発明の道路標識柱において、前記位置決め機構は、前記基台部の上面から先端部が突出した前記ナットと、前記先端部が嵌合する前記第2貫通孔とで構成されていることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、フランジの第2貫通孔を基台部のナットの先端部に嵌合させることで、第2貫通孔とナットの位置を容易に合わせることができるため、標識柱本体部を基台部の所定の固定位置に容易に固定することができる。さらに、新たな部材を追加することなく、位置決め機構を構成することできるため、コストも抑えることができる。
【0013】
本発明の道路標識柱において、前記ナットは、前記基台部の上面に設けられた凹部に埋設されたインサートナットであることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、基台部の上面にナットを容易に埋設することができ、さらに、凹部の深さよりも長いインサートナットを凹部に埋設することで、ナットの先端部を基台部の上面から突出させることも容易である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】道路標識柱の全体を示す一部断面図
【図2】主要部の拡大断面図
【図3】別実施形態の構成を示す図
【図4】従来技術を示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る道路標識柱の好適な実施形態を図面を用いて説明する。図1は、道路標識柱の全体を示す一部断面図であり、左下半分が断面図、その他の部分が外観図である。図2は、主要部の拡大断面図である。道路標識柱Aは、道路や歩道などに設置され、上下車道の中央分離線や、車道と自転車道及び歩行者専用道路との境界線標示用、公園や街路等の車止め仕切り等の標示用として使用されるものである。
【0017】
<道路標識柱の構成>
道路標識柱Aは、設置面Bに固定される基台部1と、この基台部の上に載置される標識柱本体部2と、この標識柱本体部2の下部に形成されたフランジ21を基台部1に固定するためのリング状の固定部材3と、を備えている。標識柱本体部2は、外周面に複数個所、反射シート4が貼り付けられている。反射シート4を設けることで、夜間の視認性を高めている。標識柱本体部2の断面形状は特に限定されるものではないが、全方向からの視認性と製造の簡便性より略円柱状であることが好ましい。
【0018】
基台部1は、上部に突出円筒面10を備えている。この突出円筒面10には、標識柱本体部2の下部の内壁面20が嵌合する。これにより、基台部1の垂直方向の中心位置に標識柱本体部2を安定した状態で位置決めすることができる。
【0019】
基台部1の突出円筒面10の下部には環状部11が一体的に形成されており、この環状部11の上面にはインサートナット12が埋設されている。インサートナット12は、環状部11の上面に設けられた凹部11aに埋設されている。凹部11aの深さよりも長いインサートナット12を凹部11aに埋設することで、環状部11の上面から先端部12aが突出している。先端部12aの突出量は、例えば2〜3mm程度である。この実施形態では、インサートナット12を環状部11に周方向に等間隔に3個埋設しているが、埋設するインサートナット12の個数は特に限定されない。
【0020】
基台部1の内部には、アンカーボルトを結合するためのボルト穴13と、アンカーボルトの六角頭が収容される六角凹部14が形成されている。設置面Bの内部には予めアンカー6が打ち込まれており、アンカーボルト7により、道路標識柱Aの全体を設置面Bに固定することができる。
【0021】
標識柱本体部2の下端部の側面には、外側に突出するフランジ21が全周に亘って形成されている。フランジ21の最外縁は、上方へ延びる鉤状の断面形状となっており、フランジ21が固定部材3から抜けにくくなっている。フランジ21には、上下方向の第2貫通孔22が形成されている。第2貫通孔22は、基台部1のインサートナット12に対応する位置に形成されている。
【0022】
第2貫通孔22の孔径は、インサートナット12の先端部12aの外径と同程度であり、第2貫通孔22が先端部12aに嵌合する。これにより、第2貫通孔22とインサートナット12の位置を容易に合わせることができる。すなわち、基台部1の上面から先端部12aが突出したインサートナット12と、先端部12aが嵌合する第2貫通孔22とは、標識柱本体部2と基台部1との位置決め機構として機能する。
【0023】
固定部材3は、中央に標識柱本体部2の下部外周面と略同形状の貫通孔を有するリング状をしている。固定部材3には、上下方向の第1貫通孔31が形成されている。第1貫通孔31は、標識柱本体部2の第2貫通孔22及び基台部1のインサートナット12に対応する位置に形成されている。
【0024】
固定部材3の第1貫通孔31、標識柱本体部2の第2貫通孔22、及び基台部1のインサートナット12の位置を合わせた状態で、ボルト5を固定部材3の上方から第1貫通孔31及び第2貫通孔22を挿通させてインサートナット12に螺合させることで、固定部材3により標識柱本体部2のフランジ21を基台部1に固定することができる。ボルト5の形状は、特に限定されないが、頭部が丸みを帯びた形状が好ましく、例えば六角穴付きボタンボルト等が好ましい。また、ボルト5の材質としては、ステンレスが例示される。
【0025】
標識柱本体部2は、好ましくは、熱可塑性エラストマー(TPE)により形成される。熱可塑性エラストマーとしては、公知の熱可塑性エラストマーは特に限定なく使用できる。具体的にはポリエステル系TPE、ポリウレタン系TPE(TPU)、ポリオレフィン系TPE(TPO)、ポリスチレン系TPE(TPS)、ポリアミド系TPE(TPAE)、アイオノマー系TPE、ジエン系TPE、ポリ塩化ビニル系TPE(TPVC)、ポリ塩化ビニル/ポリウレタンポリマーアロイ系TPE、熱可塑性樹脂とゴムとの混合物等が例示される。またこれらの熱可塑性エラストマーにゴムを混合ないし微粒子状で分散した熱可塑性エラストマーも使用可能である。これらのTPEは単独で使用可能であり、必要に応じて2種以上を混合使用してもよい。
【0026】
標識柱本体部2に使用する熱可塑性エラストマーは、硬度がJIS−A硬度にて98以下であることが好ましく、95以下であることがより好ましい。硬度が高すぎると繰返しの屈曲により破損する場合が生じる。
【0027】
基台部1および固定部材3は、例えば熱可塑性樹脂により形成されており、公知の熱可塑性樹脂を限定なく使用可能である。具体的にはPET、PBT、ポリプロピレンテレフタレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールとテレフタル酸のポリエステル等のポリアルキレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンナフタレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールとナフタレンジカルボン酸とのポリエステル等のポリアルキレンナフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンサルファイド、ポリウレタン樹脂、PFA等のフッ素系樹脂、ABS樹脂等並びにこれらの樹脂から選択される樹脂のブレンド樹脂、ポリマーアロイ等が例示される。
【0028】
<道路標識柱の設置>
次に、本発明の道路標識柱Aの設置手順について簡単に説明する。基台部1の六角凹部14にアンカーボルト7の六角頭を圧入し、基台部1にアンカーボルト7を予め固定しておく。基台部1の上に標識柱本体部2を載置する。このとき、標識柱本体部2の内壁面20を基台部1の突出円筒面10に嵌合させるように載置する。また、基台部1の上面から突出したインサートナット12の先端部12aに、標識柱本体部2の第2貫通孔22を嵌合させるようにして、第2貫通孔22とインサートナット12の位置を合わせる。
【0029】
次に、標識柱本体部2の上方から固定部材3を挿入していく。図1及び2に示すように、標識柱本体部2は下部に行くほど大径のテーパ状に形成されているので、挿入はスムーズに行うことができる。このとき、固定部材3の第1貫通孔31と標識柱本体部2の第2貫通孔22の位置が合うように固定部材3を挿入する。これにより、第1貫通孔31、第2貫通孔22、及びインサートナット12の位置を全て合わせることができる。この状態で、ボルト5を第1貫通孔31から挿入し、インサートナット12に螺合させることで、固定部材3により標識柱本体部2を基台部1に固定する。ただし、ボルト5を第1貫通孔31に挿入した状態の固定部材3を、標識柱本体部2の上方から挿入するようにしてもよい。
【0030】
以上のように組み立てられた道路標識柱Aの底部からはアンカーボルト7が突出している。このアンカーボルト7にアンカー6を螺合させ、道路標識柱Aとアンカー6を一体とする。予め、設置面Bにアンカー6よりも大きな穴を開けておき、アンカー6を接着剤により設置面Bに固定することで、道路標識柱Aの設置面Bへの設置が完了する。
【0031】
なお、本発明は、上記の設置手順に限定されるものではない。例えば、予め、設置面Bにアンカー6を埋め込んでおき、このアンカー6にアンカーボルト7を挿入し、道路標識柱Aの全体を回転させていくことで、道路標識柱Aをアンカー6に固定することができる。なお、道路標識柱Aを回転させる時には、不図示の治具等を用いて行うことができる。
【0032】
さらに、本発明は、上記の組み立て手順に限定されるものではない。例えば、先に基台部1のみをアンカーボルト7により設置面Bに固定しておき、その後、標識柱本体部2を固定部材3により基台部1に固定するような手順を採用してもよい。
【0033】
<標識柱本体部の交換時>
メンテナンスのため標識柱本体部2を交換する際には、ボルト5を緩めて取り外す。これにより、固定部材3を基台部1から外すことができ、同時に標識柱本体部2も外すことができる。このとき、基台部1は設置面Bに固定したまま行うことができる。従って、標識柱本体部2の交換作業を簡素化することができ、短時間で作業を行うことができる。
【0034】
<別実施形態>
(1)前述の実施形態では、位置決め機構が、基台部1の上面から先端部12aが突出したインサートナット12と、先端部12aが嵌合する第2貫通孔22とで構成されている例を示したが、これに限られるものではない。例えば、標識柱本体部2のフランジ21と基台部1の環状部11の外周面にそれぞれ予め位置決め用マークを付けておき、目視で位置決めするようにしてもよい。また、基台部1に埋設したインサートナット12と標識柱本体部2のパーティクルラインとを利用して位置決めするようにしてもよい。
【0035】
インサートナット12の先端部12aを位置決め機構として機能させない場合には、先端部12aを基台部1の上面から突出させる必要はない。この場合、インサートナット12として、図3に示すような鍔付きのものを使用することもできる。
【0036】
(2)前述の実施形態では、インサートナット12の先端部12aを第2貫通孔22の下部のみに嵌合させたが、先端部12aの突出量を大きくして、第2貫通孔22の全体に嵌合させてもよい。
【0037】
(3)前述の実施形態では、ボルト5の頭部は、固定部材3の上面に露出しているが、第1貫通孔31を座ぐり穴として、ボルト5の頭部を固定部材3に埋め込むようにしてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 基台部
2 標識柱本体部
3 固定部材
4 反射シート
5 ボルト
6 アンカー
7 アンカーボルト
10 突出円筒面
11 環状部
11a 凹部
12 インサートナット
12a 先端部
21 フランジ
22 第2貫通孔
31 第1貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置面に固定される基台部と、
この基台部の上に載置される標識柱本体部と、
この標識柱本体部の下部に形成されたフランジを前記基台部に固定するためのリング状の固定部材と、を備えた道路標識柱であって、
前記固定部材には上下方向の第1貫通孔が形成され、前記フランジには上下方向の第2貫通孔が形成され、前記基台部の上面にはナットが埋設されており、
前記標識柱本体部と前記基台部との間に設けられた位置決め機構により前記フランジが前記基台部の所定の固定位置に位置決めされた状態で、ボルトが前記固定部材の上方から前記第1貫通孔及び前記第2貫通孔を挿通されて前記ナットに螺合されることを特徴とする道路標識柱。
【請求項2】
前記位置決め機構は、前記基台部の上面から先端部が突出した前記ナットと、前記先端部が嵌合する前記第2貫通孔とで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の道路標識柱。
【請求項3】
前記ナットは、前記基台部の上面に設けられた凹部に埋設されたインサートナットであることを特徴とする請求項1又は2に記載の道路標識柱。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−19212(P2013−19212A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154820(P2011−154820)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】