説明

道路用標示体

【課題】車両の排気ガス等の汚れが付着しても視認性が低下しにくい道路用標示体を提供する。
【解決手段】ベース部を介して路面に設置するポール部1の外面に再帰性反射層5を形成し、該再帰性反射層5を、シリコーン樹脂系塗料による塗膜上に再帰反射性を有するガラスビーズ6を散布して形成し、且つ前記ガラスビーズ6の表面に光触媒含有層7を形成しているため、ポール部にガラスビーズ6を後付けしてポール部1を形成することができ、既存のポール部を用いて再帰反射性を具備させることができ、またガラスビーズ6の表面に車両の排気ガス等の汚れが付着しても、ガラスビーズ6の表面に形成した光触媒含有層7に含有される光触媒の作用により、ガラスビーズ6の表面に付着した汚れが分解され、雨水等により洗い流されて、ガラスビーズ6の再帰反射性を保持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車線のセンターライン標示、車線誘導標示或いは交通規制誘導標示等を目的として、舗装路面に固定し配列した状態で用いる道路用標示体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、道路用標示体の外面にガラスビーズを付着させて再帰反射性を高めたものとしては、例えば特許文献1において、柱状基体表面の一部又は全部に再帰反射塗装を施した道路標識柱であって、その再帰反射塗膜が、柱状基体表面に形成された金属粉顔料を含有する透明樹脂からなる厚み20〜80μmの反射層と、該反射層上に形成された透明又は着色剤入り樹脂からなる厚み10〜50μmの定着層と、粒径70〜150μmで屈折率1.8〜2.0のガラスビーズを、その一部が前記反射層及び定着層内に埋没・固着しかつ一部が定着層外に露出するように、略一層に密に敷きつめて形成されたガラスビーズ層とからなることを特徴とする高視認性道路標識柱である道路用標示体が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2000−160522号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の道路用標示体では、設置後暫くの間は効果的に車線のセンターライン標示、車線誘導標示或いは交通規制誘導標示等を行うことができるものの、設置後通過する車両の台数が増加するに連れて、車両から排出される排気ガスがその表面に付着し、ガラスビーズを覆ってしまうため、再帰反射性が低下してしまい、本来の誘導機能を発現しなくなってしまう問題があった。
【0005】
そこで本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、車両の排気ガス等の汚れが付着しても視認性が低下しにくい道路用標示体を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は次のような構成としている。すなわち、本発明に係る道路用標示体は、ベース部を介して路面に設置するポール部の外面に再帰性反射層が形成され、該再帰性反射層はシリコーン樹脂系塗料による塗膜上に再帰反射性を有するガラスビーズが散布されて形成され、且つ前記ガラスビーズの表面に光触媒含有層が形成されていることを特徴とするものである。
【0007】
また本発明に係る道路用標示体は、予めガラスビーズの全表面に光触媒含有層が形成され、該ガラスビーズがシリコーン樹脂系塗料による塗膜に散布されて、再帰性反射層が形成されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ベース部を介して路面に設置するポール部の外面に再帰性反射層を形成し、該再帰性反射層を、シリコーン樹脂系塗料による塗膜上に再帰反射性を有するガラスビーズを散布して形成し、且つ前記ガラスビーズの表面に光触媒含有層を形成しているため、ポール部にガラスビーズを後付けしてポール部を形成することができ、既存のポール部を用いて再帰反射性を具備させることが可能となる。そして、ガラスビーズの表面に車両の排気ガス等の汚れが付着しても、ガラスビーズの表面に形成した光触媒含有層に含有される光触媒の作用により、ガラスビーズの表面に付着した汚れが分解され、雨水等により洗い流されて、ガラスビーズの再帰反射性を保持することができると共に、光触媒による再帰性反射層の劣化を抑制できる。
【0009】
また本発明において、予めガラスビーズの全表面に光触媒含有層を形成し、該ガラスビーズをシリコーン樹脂系塗料による塗膜に散布して、再帰性反射層を形成するようにしてもよい。かようにすれば、既存の設備を用いて、ポール部にシリコーン樹脂系塗料を塗布し、ガラスビーズを散布するだけで、外面に光触媒機能を備えた道路用標識体を形成することができるので、製造コストの増加を抑えることができる。また表面に光触媒含有層を具備しないガラスビーズを、シリコーン樹脂系塗料を外面に塗布したポール部に散布し硬化させた後、その外面に光触媒を含有する塗料を塗布して硬化させる場合と比べて、ポール部にかかる熱履歴が軽減されるため、耐久性を保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に係る実施の形態について、図面に基づき以下に具体的に説明する。
図1は本発明に係る道路用標識体の形成を示す説明図、図2は図1に示した道路用標示体の詳細を示すもので、(イ)は図1のA−A断面を示す断面図、(ロ)は(イ)の更に詳細を示す部分拡大断面図、(ハ)はガラスビーズの拡大断面図である。
【0011】
1は円筒状の中空体であるポール部であり、上端からキャップ部2の挿入部21が挿入され、下端からはベース部3から上方に突出された補強材31が挿入されて、ポール部1にキャップ部2及びベース部3が取付けられて、該ベース部3を介して道路用標示体が路面に設置されるようになされている。
【0012】
キャップ部2及びベース部3の取付けに当たっては、接着や超音波等による融着でもよいが、回転融着を行うことで融着部が目立つことなく強固な融着ができ好ましい。キャップ部2については挿入部21とポール部1の内面とが密着され、ベース部3についてはポール部1の下端がベース部3に設けられた取付溝(図示せず)に挿入されて密着され、両方又はいずれか一方が回転されることで密着された部位において摩擦熱により融着がなされる。
【0013】
ポール部1の上方には、間隔をあけて3ヶ所にポール部1の全周に亘って反射シートである反射体R1が貼着されて、夜間における視認性を向上させている。本実施形態において、反射体R1は融着前にポール部1に貼着されているが、融着後に貼着するものであってもよい。またベース部3にもガラスビーズを埋設した反射体R2が巻着されて更に夜間における視認性を高めるようになされている。
【0014】
4はポール部1を構成する円筒状の中空体であるポール本体であり、該ポール本体4の表面に全面にわたって形成された再帰性反射層5に、ガラスビーズ6が少なくとも一部分を再帰性反射層5の外方に露出して埋設されて、ポール部1が構成されている。かかる構造となすことにより、ガラスビーズ6の再帰反射性が発揮され、ポール部1は再帰反射性が具備されたものとなり得る。
【0015】
ポール本体4を形成する材料は、成形が比較的容易で車両の衝突や踏み付けに対する復元性、耐久性等の高いポリウレタン樹脂が好適に用いられるが、特に限定されるものではなく、車両の衝突等によって曲がり且つ復元するポールが形成できるものであればよく、成形の容易さ及び復元性、耐久性等の高い熱可塑性合成樹脂である熱可塑性の軟質ポリオレフィン、ポリオレフィン系やスチレン系等各種エラストマー等を用いることができる。
【0016】
またキャップ部2及びベース部3の形成に用いられる材料についても、ポール本体4と同様に成形の容易さ及び復元性、耐久性等に優れる熱可塑性合成樹脂を好適に用いることができるが、特に限定されるものではなく適宜の材料を用いてよい。またポール本体4と融着により一体化するにおいては、ポール本体4の形成に用いられるものと相溶性を有するものを用いるのが好ましく、また同種類のものを用いれば、外力や温度変化に対する耐性を高めることができ、より好ましい。
【0017】
再帰性反射層5を形成する材料は、ポール本体4及びガラスビーズ6との密着性が高く、且つガラスビーズ6の表面に形成した光触媒含有層7により劣化されにくいシリコーン樹脂系塗料が好適に用いられる。このシリコーン樹脂系塗料をポール本体4に、刷毛塗り、スプレー、ディッピング、フローコーター等により塗布した後、硬化前の充分流動性を持った状態のシリコーン樹脂系塗料にガラスビーズ6を散布して、再帰性反射層5を形成するのである。そして、後記のように用いるガラスビーズ6の粒径は60〜150μm程度が好適であるため、再帰性反射層5の厚みを30μm〜100μm程度とすることにより、ガラスビーズ6の少なくとも一部分を再帰性反射層5の外方に露出させることができ好ましい。
【0018】
またガラスビーズ6の全表面に、太陽光により励起され、排気ガス等の汚れを分解する機能を有する二酸化チタン等の光触媒を含有する光触媒含有層7を形成するには、二酸化チタン等の粉末を溶融させて吹き付ける溶射法、化学反応を介して二酸化チタンを析出させるCVD(化学的製膜法)、二酸化チタン等をスパッタ蒸発させて沈着させるスパッタ蒸着法、真空蒸着法等の適宜方法によって形成してもよいが、バインダーに二酸化チタン等を分散させて塗料組成物とし、それをディッピングやスプレー、フローコーター等により塗布すれば、均一且つ平滑な塗膜が形成されるので好ましい。
【0019】
かかる方法により光触媒含有層7を形成する場合は、バインダーとしてシリコーン系化合物を用いるのが好ましい。シリコーン系化合物を用いることにより、得られる光触媒含有層7は表面硬度が高くなって傷付きにくくなり、またシロキサン結合によって耐薬品性、耐汚染性に優れるために活性化された二酸化チタン等によっても劣化されにくく、また汚染物質も付着しにくくなる。
【0020】
光触媒含有層7は透明で薄膜なもので、且つガラスビーズ6の屈折率と近似されていることで、ガラスビーズ6への光の正常な出入射を妨げることがなく、ガラスビーズ6の再帰反射性を損なうことがない。そして、その膜厚は0.01μm〜3.0μmとするのが好ましい。それより薄過ぎると二酸化チタン等の光触媒粒子の量が少なくなり、汚染物質の分解効率が低下し、厚過ぎると透明性が低下するためである。
【0021】
尚、バインダーとしてシリコーン系化合物を用いて光触媒含有層7を形成する場合は、例えば一例として、オルガノポリシロキサン又はテトラエトキシシラン等のアルコキシシランの加水分解物とチタニアゾルとの混合物とからなる塗料組成物を塗布し、50℃〜200℃で加熱することにより形成することができる。
【0022】
ガラスビーズ6については、石英ガラス、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、鉛ガラス等をビーズ状に成形したものを用いることができ、その粒径は60μm〜150μm程度、その屈折率は1.8〜2.0程度のものが用いられる。
【0023】
また、ポール本体4の表面の色彩と近似する色彩に着色したガラスビーズ6を用いることにより、道路用標示体の再帰反射性を確保しつつ、誘目性を向上させることができる。そして、ガラスビーズ6の着色方法については、ガラスビーズ6成形時に所定の色彩の顔料を混入して有色透明のガラスビーズ6を形成してもよいし、また透明のガラスビーズ6を形成した後に、その表面に形成する光触媒含有層7を着色することにより形成してもよい。
【0024】
更に、再帰性反射層5にポール本体4の表面の色彩と近似する色彩の顔料又は染料を配合して、道路用標示体の色彩を強調することにより、誘目性を向上させてもよい。また、かようにして再帰性反射層5を着色することにより、道路用標示体の誘目性が向上すると共に、ガラスビーズ6の側面から光が散乱するのを防ぐことにより、外方に露出したガラスビーズ6前面から入射する光がガラスビーズ6の側面側から散乱して道路用標示体が白く見える状態(白浮き現象)を回避することができ、好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明に係る道路用標示体は、ベース部を介して路面に設置するポール部の外面に再帰性反射層を形成し、該再帰性反射層を、シリコーン樹脂系塗料による塗膜上に再帰反射性を有するガラスビーズを散布して形成し、且つ前記ガラスビーズの表面に光触媒含有層を形成しているため、ポール部にガラスビーズを後付けしてポール部を形成することができ、既存のポール部を用いて再帰反射性を具備させることができ、ガラスビーズの表面に車両の排気ガス等の汚れが付着しても、ガラスビーズの表面に形成した光触媒含有層に含有される光触媒の作用により、ガラスビーズの表面に付着した汚れが分解され、雨水等により洗い流されて、ガラスビーズの再帰反射性を保持することができる道路用標示体として好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る道路用標識体の形成を示す説明図である。
【図2】(イ)は図1のA−A断面を示す断面図、(ロ)は(イ)の詳細を示す部分拡大断面図、(ハ)はガラスビーズの拡大断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 ポール部
2 キャップ部
3 ベース部
4 ポール本体
5 再帰性反射層
6 ガラスビーズ
7 光触媒含有層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部を介して路面に設置するポール部の外面に再帰性反射層が形成され、該再帰性反射層はシリコーン樹脂系塗料による塗膜上に再帰反射性を有するガラスビーズが散布されて形成され、且つ前記ガラスビーズの表面に光触媒含有層が形成されていることを特徴とする道路用標示体。
【請求項2】
予めガラスビーズの全表面に光触媒含有層が形成され、該ガラスビーズがシリコーン樹脂系塗料による塗膜に散布されて、再帰性反射層が形成されたことを特徴とする請求項1に記載の道路用標示体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−277935(P2007−277935A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−105771(P2006−105771)
【出願日】平成18年4月7日(2006.4.7)
【出願人】(000002462)積水樹脂株式会社 (781)
【Fターム(参考)】