説明

道路用発光標示体

【課題】正面以外の方向からも視認しやすい道路用発光標示体を提供する。
【解決手段】内装させた発光体からの光を外方に放射させる発光部を備え、前記発光部の前方にはカバー体を設け、このカバー体に多数の再帰反射領域と、その周囲に設けた再帰反射性を有しない隙間領域とを備えさせ、前記隙間領域を入射した光が拡散させて透過するように設け、前記発光体からの光を前記カバー体の裏面側から隙間領域を透過させて外部に放射させると共に、水平方向からの外光を前記再帰反射領域に再帰反射させるようにする。
前記隙間領域を透過した光は拡散されて発光部の前方以外の場所からもよく視認されるようになされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路周辺に設置される道路用発光標示体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路を通行する歩行者や車両のドライバーに対して、発光体の発する光によって視線誘導や注意喚起を行うための道路用発光標示体については、多くの発明が開示されている。
【0003】
例えば特許文献1には、少なくとも1列、かつ1列につき3個以上、直線的に配列された発光素子と、これらの発光素子の周囲を取り囲むマイクロプリズム反射シートと、このマイクロプリズム反射シートのうちの各前記発光素子に対応する位置にそれぞれ設けられた窓部と、前記発光素子および前記マイクロプリズム反射シートの周囲を取り囲む透明または透光性の外側カバーと、各前記発光素子を、配列順に比較的に短い一定期間ずつ順次周期的に点滅させる制御回路とを有してなり、

前記マイクロプリズム反射シートのうちの前記窓部以外の部分は、プリズム層を有することにより、外部から前記外側カバーを通して入射する光は外部へ再帰反射するが、内部の前記発光素子から発せられた光は散乱して外部へ透過する特性を有する一方、前記窓部は、前記プリズム層を有さず、前記プリズム層を介することなく光を透過するようになっている工事灯、が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−112085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の如き工事灯は、ライトを点灯させている車両からの視認性や、発光素子からの光が放射される方向からの視認性は良好であるが、正面以外の場所にいるライトを点灯させていない車両や歩行者等からは、再帰反射光は視認されず、発光素子からの光も視認しにくいものとなる恐れがあった。
【0006】
そこで本発明は、正面以外の方向からも視認しやすい道路用発光標示体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は以下のような構成としている。
すなわち本発明に係る道路用発光標示体は、内装された発光体からの光を外方に放射させる発光部を備えた道路用発光標示体であって、
前記発光部の前方にはカバー体が設けられ、
該カバー体は多数の再帰反射領域と、
該各再帰反射領域の周囲に設けられた再帰反射性を有しない隙間領域とを備え、
前記隙間領域は入射した光を拡散させて透過させるようになされており、
前記発光部は前記発光体からの光を前記カバー体の裏面側から隙間領域を透過させて外部に放射させると共に、
水平方向からの外光を前記再帰反射領域にて再帰反射させるようになされていることを特徴としている。
【0008】
本発明に係る道路用発光標示体によれば、前記発光部の前方にカバー体を設け、
該カバー体は多数の再帰反射領域を備え、外方からの光を前記再帰反射領域にて再帰反射させるので、ライトを点灯させている車両からの視認性が良好なものとなされる。
また、前記カバー体は、前記各再帰反射領域の周囲に設けられた再帰反射性を有しない隙間領域を備え、
前記隙間領域は入射した光を拡散させて透過させるようになされ、前記発光部は前記発光体からの光を前記カバー体の隙間領域を透過させて外部に放射させるので、前記隙間領域を透過した光が拡散されて発光部の前方以外の場所からもよく視認されるようになされる。
【0009】
また、プリズム構造の再帰反射領域が全体に均一に形成され、プリズム構造が形成されていない領域が前記隙間領域となされたプリズム型の再帰反射性シートを前記カバー体とすれば、その均一に形成された再帰反射領域で外方からの光を再帰反射させ、その視認性が良好なものとなされるので、好ましい。
また、カバー体全体に均一に形成された再帰反射領域の周囲に設けられた前記隙間領域が前記発光部からの光を拡散させて透過させるので、カバー体が全体的に面発光し、その視認性が良好なものとなされ、好ましい。
また、前記カバー体を再帰反射性シートで形成させれば、前記カバー体を撓めて容易に曲面形状に形成させることができるので、より広範囲へ光を再帰反射できるように形成できるとともに、発光体からの光によって面発光させたカバー体をより広範囲から視認できるように形成できるので、好ましい。
【0010】
また、前記道路用発光標示体が路側に設置された自発光道路鋲であれば、これを正面から視認する車両のドライバーからの視認性が良好であると共に、設置された自発光道路鋲の脇を通る歩行者などからも良好に視認できるので、好ましい。
また、前記カバー体の再帰反射面を水平方向に向けて設ければ、水平方向から照射される車両のライトの光を効率よく再帰反射できるとともに、カバー体の面発光させた面が水平方向からよく視認できるようになされるので、好ましい。
また、前記カバー体の再帰反射面を斜め上方向に向けて設ければ、歩行者などが上から道路用発光標示体を見下ろしたときに、カバー体の面発光させた面がよく視認できるようになされるので、好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る道路用発光標示体によれば、正面以外の方向からも視認しやすいものとできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る道路用発光標示体の実施の一形態を示す、(イ)は平面図であり、(ロ)は正面図であり、(ハ)は側面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1のB−B断面図である。
【図4】図1のカバー体の表面を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態を図面に基づき具体的に説明する。
図面において、1は道路用発光標示体である。
本実施形態の道路用発光標示体1は路側に設置された自発光道路鋲として用いるものであり、前面のみ曲面に形成された略矩形の箱体に形成され、具体的には前面が左右方向両端に近づく程後方へ後退して両側の側面の端縁に至るように形成されている。
【0014】
道路用発光標示体1は中空箱体のケース11を備え、その前面には透明蓋体2に塞がれた開口部分が設けられており、この透明蓋体2を透過させて内装された発光部3からの光を外部に放射させるように設けられている。
また、ケース11の上面には、透明な太陽電池カバー41に塞がれた開口部分が設けられており、この真下には受光面を上方に向けた太陽電池4が内装されている。
本実施形態のケース11はアルミニウム鋳物で形成させているが、これに限るものではなく、他の金属や、合成樹脂などを好適に用いることができる。
また、本実施形態の透明蓋体2及び太陽電池カバー41はポリカーボネート樹脂で形成させているが、これに限るものではなく、アクリル樹脂など他の透光性樹脂や、ガラスなどの透明な材質のものを好適に用いることができる。
【0015】
図2は図1のA−A断面図であり、図3は図1のB−B断面図である。
ケース11には、発光体31、反射体32、制御基板33、を備えた発光部3と、蓄電池6とが内装されており、前記太陽電池4によって生起された電力は蓄電池6に蓄えられる。この蓄えられた電力は、制御基板33を通じて発光体31に供給され、これを発光させる。発光体31は制御基板33によって点灯、消灯を制御され、あらかじめプログラムされた発光パターンに基づいて発光させるようになされている。
【0016】
本実施形態の発光部3の構成を具体的に説明すると、ケース11の前面に設けられた透明蓋体2から内側方向に、チップ型の発光ダイオードである発光体31が制御基板33に取り付けられて内装されている。発光体31の光軸は透明蓋体2が配置された方向に向けられている。
【0017】
発光体31の周囲には、発光体31を囲うように反射体32が設けられている。反射体32は四角錐の漏斗形状に形成されており、一方の端がケース11の前面の開口部分の縁に沿った形状に形成され、前記発光体31を囲う他方の端へ収束するように形成されている。反射体32は、鏡面体や白色の光反射性の高い材料で形成されており、発光体31からの光が無駄なくケース11前面の開口部分へ導かれるように設けられている。
【0018】
透明蓋体2の内側面には、反射体32に囲われるようにしてシート状のカバー体5が取り付けられている。カバー体5は発光体31の発した光を拡散させて透過させて、透明蓋体2を通して外方へ放射させるようになされている。反射体32に囲われて無駄なく導かれた発光体31からの光を、カバー体5で拡散させて放射させることで、透明蓋体2から放射される光がカバー体5全体を面発光させるようになされ、正面からのみならずあらゆる方向からの視認性を向上させることができる。
【0019】
本実施形態の発光体31はチップ型の発光ダイオードを用いているが、これに限るものでは無く、砲弾型の発光ダイオードや電球、冷極陰管や、その他の発光部材を用いることができる。しかし、発光体31にチップ型の発光ダイオードを用いることで、発光の視野角が砲弾型のものよりはるかに大きい80〜160゜となすことができ、光源に砲弾型の発光ダイオードのような視野角20〜40゜程度のものを用いた場合と比較してあらゆる方向からの視認性が高められるようになされている。
【0020】
本実施形態のカバー体5は、透光性を有する再帰反射性シートを用いており、より具体的にはシート内部にキューブコーナープリズムのプリズム素子を形成させたプリズム型の再帰反射性シートを用いている。
図4は図1のカバー体5の表面を示す拡大図である。
本実施形態のカバー体5には、プリズム素子を形成させた再帰反射領域51と、その周囲に設けられた再帰反射性を有しない隙間領域52とが、全体に均一に設けられている。具体的には、上下方向及び左右方向へ規則的に多数並設された菱形形状の再帰反射領域51の間に、隙間領域52が網目模様を形成するように設けられている。
【0021】
前記再帰反射領域51がカバー体5全体に均一に形成されることで、ケース11の外方から照射された光が再帰反射性領域51で反射されて、カバー体5全体で光源の方向へ再帰反射させるので、ライトを点灯させた車両のドライバーなどからの視認性が良好なものとなされる。
【0022】
また、前記隙間領域52は乳白色の半透明に設けられており、裏面側から入射した光を拡散させて表面側へ透過させるように設けられている。このように設けられた隙間領域52がカバー体5全体に均一に形成されることで、発光部3によるカバー体5の発光をより均一な面発光にすることができ、道路用発光標示体1の正面からのみならずあらゆる方向からの視認性を向上させることができる。
【0023】
本実施形態のカバー体5は、曲面に形成された透明蓋体2の内側面に沿って取り付けられており、道路用発光標示体1の正面側のみならず、側面側からも視認できるように設けられている。このため、カバー体5に設けられた再帰反射領域51により再帰反射された光や、隙間領域52を利用した面発光の光を、道路用発光標示体1の側面からも視認できるので、その視認性が良好なものとなされる。
【0024】
また、本実施形態のカバー体5は、透光性を有する再帰反射性シートで形成させているが、これに限るものではなく、射出成形などによって形成させたシート状以外の再帰反射体等を用いてもよい。カバー体5に前記の如き隙間領域52を設けることで、発光部3の光を拡散させて透過させることができ、その視認性を向上させることができる。
【0025】
また、本実施形態の道路用発光標示体1は、その前面を道路を走行する車両に向けて路側に設置し自発光道路鋲として利用するものであるが、主に正面から視認することになる車両のドライバーだけでなく、道路脇を通行する歩行者などからも面発光の光が視認でき、その視認性が良好なものとなされる。
【0026】
尚、本実施形態の道路用発光標示体1はケース11を箱形に形成させて、発光部3からの光を透過させて放射させるカバー体5及び透明蓋体2を前面側に1カ所設けているが、これに限るものではなく、発光部3、カバー体5、透明蓋体2とをそれぞれ複数設けてもよく、例えば、前面側と後面側とにそれぞれ1カ所づつ合計2カ所設けてもよく、また、左右の側面にもそれぞれ1カ所づつ、合計4カ所設けてもよく、その他の数を設けてもよい。
又、ケース11を円筒形状や円錐台形状等に形成させ、その周側面の全周に亘ってカバー体5及び透明蓋体2が設けられるように発光部3、カバー体5、及び透明蓋体2を取り付けて、道路用発光標示体1の周側面全体が再帰反射性と面発光を行うように設ければ、周囲の全ての方向からの視認性を良好なものとすることができる。
【0027】
また、本実施形態の道路用発光標示体1は、その設置面に当接させるケース11の下面に対して、カバー体5が垂直となるように設けて、カバー体5の再帰反射性を有する表面が水平方向に向けられるようになされているが、これに限るものではなく、カバー体5の表面が水平方向より若干上方の斜め上方向へ向けられるようにしてもよい。このように設けることで、例えば道路用発光標示体1を車道と歩道との間の路面に設置させた場合に、車道を走行する車両のドライバーからの視認性は図1の実施形態と同様に良好なものとなされるとともに、歩道を通行する歩行者などが道路用発光標示体1を見下ろしたときにもカバー体5の表面が視認しやすくなされ、その視認性が良好なものとすることができる。
この場合、透明蓋体2の表面が斜め上方向に向けられるように構成させ、その内側面にカバー体5を沿わせて取り付けるようにすれば、容易にカバー体5の再帰反射面を斜め上方向に向けて固定させることができる。
【符号の説明】
【0028】
1 道路用発光標示体
11 ケース
2 透明蓋体
3 発光部
31 発光体
32 反射体
33 制御基板
4 太陽電池
41 太陽電池カバー
5 カバー体
51 再帰反射領域
52 隙間領域
6 蓄電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内装された発光体からの光を外方に放射させる発光部を備えた道路用発光標示体であって、
前記発光部の前方にはカバー体が設けられ、
該カバー体は多数の再帰反射領域と、
該各再帰反射領域の周囲に設けられた再帰反射性を有しない隙間領域とを備え、
前記隙間領域は入射した光を拡散させて透過させるようになされており、
前記発光部は前記発光体からの光を前記カバー体の裏面側から隙間領域を透過させて外部に放射させると共に、
外方からの光を前記再帰反射領域にて再帰反射させるようになされていることを特徴とする道路用発光標示体。
【請求項2】
前記カバー体は、プリズム構造の再帰反射領域が全体に均一に形成され、プリズム構造が形成されていない領域が前記隙間領域となされたプリズム型の再帰反射性シートであることを特徴とする請求項1に記載の道路用発光標示体。
【請求項3】
前記道路用発光標示体が路側に設置された自発光道路鋲であり、前記カバー体の再帰反射面が水平方向又は斜め上方向に向けて設けられたことを特徴とする請求項1又は2に記載の道路用発光標示体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−226112(P2011−226112A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−95637(P2010−95637)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【出願人】(000002462)積水樹脂株式会社 (781)
【Fターム(参考)】