説明

道路車両において自発的な非常制動を正確に実行する方法

道路車両(1)において事故の厳しさを減少するため自発的な非常制動を正確に実行する方法が提案され、自発的な非常制動中に車両(1)の速度が求められる。この方法によれば、車両の車輪回転数とは無関係な付加的な速度検出が行われる。これにより、自発的な強い制動のため車両速度が車輪回転数により高い場合においても、車両速度を十分正確に求めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の道路車両において自発的な非常制動を正確に実行する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路車両特に商用車両における自発的な制動とは、運転者の関与なしに自動的に開始される制動過程を意味する。これにより、事故特に追突事故が完全に防止されるか、又はその結果が和らげられる(CMS衝突緩和システム)。このような公知のシステム(ドイツ連邦共和国の特許出願公開第3637165号明細書及び第102008034229号明細書)は、センサ例えばレーダ又はビデオカメラにより、システムを備えた車両の前の空間を検出する。車輪回転数により求められる既知の自己車両速度及び先行車両の速度、及びレーダセンサにより検出される間隔データに基づいて、危険の可能性が求められる。両方の車両の間隔が急速に減少し、間隔が種々の閾値以下にあると、危険度が特に高い。更に危険の可能性のために天候又は道路の滑らかさを考慮することも公知である(ドイツ連邦共和国特許出願公開第102004022289号明細書)。
【0003】
前記の危険の可能性が特定の閾値を越える場合、車両において警報音が発生されて、場合によっては不注意な運転者に、現在存在する危険を通報する。
【0004】
危険の可能性が別の閾値を越える場合、車両の自発的な部分制動を開始することができる。これは、運転者の助力なしに車両の制動機が中間の力で操作されることを意味する。
【0005】
求められた危険の可能性が最高段階を越えた場合、自発的な全制動が開始され(ドイツ連邦共和国特許出願公開第102008034229号明細書)、運転者の助力なしに車両の制動機が最大の力で操作される。これにより目前に迫った事故をもはや防止できない時にも、自己車両の運動エネルギの減少により事故の結果が著しく弱められる。
【0006】
このような自発制動の際、特に強い減速値又は不利な天候状態従って滑らかな道路の場合、自己車両の車輪が滑り状態になることがある。その場合車両にあるABS(ロック防止システム)も動作して、個々の車輪から一時的に制動圧力を軽減することができる。いずれにせよこの状態の結果、もはや車輪速度を介して正確な車両速度を求めることができない。なぜならば、滑りのため車輪速度はもはや車両速度に一致しないからである。しかしそれにより、間隔センサ(大抵の場合レーダセンサ)により間隔を測定される先行車両の速度も、もはや正確には求められない。自己車両及び先行車両の速度を求めるため、車輪速度ではなく変速機出力回転数を利用するときにも、同じことが当てはまる。
【0007】
車両速度の上述した誤りにより、場合によっては事故の危険の誤評価が起こり、それにより、自己車両の速度が誤って小さすぎるとして測定される時、非常制動介入の誤った早すぎる終了が起こる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って本発明の基礎になっている課題は、非常制動介入が行われている間にも、自己車両及び先行車両の速度を正確に求めることができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、請求項1に含まれる発明によって解決される。
【0010】
従属請求項は目的に適った展開を含んでいる。
【0011】
本発明が図面により以下に詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】 道路表面上を動く道路車両及びその前にある先行車両を概略図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
車両1は後輪10及び前輪11を持っている。これらの車輪は公知のように車輪回転数センサ14,15を備えており、これらのセンサがその信号を車両電子装置例えばABSへ送る(図示せず)。全部で4つの車輪回転数センサのうち、ここでは2つだけが示されている。
【0014】
図示された車両1はさらにCMS電子装置7を持っている。危険な走行状況が確認され、運転者が十分速やかに反応しない場合、このCMS電子装置7が、公知のようにこのような状況を確認して車両1を自発的に制動するために用いられる(衝突緩和システムCMS)。
【0015】
このためCMSは特に間隔センサ4を持ち、この間隔センサが先行車両2との間隔を確認して、電子装置7へ通報する。間隔センサとして、例えばレーダ又はライダのような適当な公知のセンサシステムを使用することができる。
【0016】
先行車両2又は他の障害物の冗長な確認のために、更に前窓ガラス13の後ろに設けられているビデオカメラ3が用いられる。ビデオカメラ3の信号も同様のCMSの電子装置7へ伝送される。電子装置7は、場合によってはビデオカメラ3及び間隔センサ4の信号を、適当なプログラムにより公知のように組合わせて評価することができる(センサ融合)。
【0017】
車両1の速度を確認するため、CMS電子装置7へ、前輪11及び後輪10の上述した車輪速度信号が供給される。これらの車輪速度信号は公知のように車輪回転数センサ14,15により検出される。
【0018】
上述したように、不利な状態では、車輪速度は車両速度を十分正確に表さないので、本発明によれば、付加的に車輪回転数とは無関係な方法によって車両速度が求められる。
【0019】
道路車両1の車両速度を付加的に求めるために、光センサ5が設けられて車両1の下に取付けられ、無接触で道路表面12を走査する。このようなセンサは、例えば欧州特許のドイツ語翻訳第602004009422号明細書、欧州特許出願公開第1964736号明細書及びドイツ連邦共和国特許第4444223号明細書から公知である。このようなセンサは道路表面を例えばレーザ光線によって照らし、反射される光を評価する。前記センサは、一方では道路表面が乾いているか、濡れているか雪に埋もれているか又は凍っているかについて、道路表面を確認することができる。しかしセンサは、道路表面12に対する車両1の速度も求めることができる。
【0020】
更に車両速度は、GPSセンサ6により有利に求めることができる。このGPSセンサにより、車両の位置従ってその速度も求められる。GPSセンサ6の信号も同様に電子装置7へ供給される。
【0021】
GPSセンサによる速度算定は通常十分正確でも速くもないので、電子装置7によりGPSの搬送周波数の移相も評価すると有利である。このような方法は、例えばGNSS2004,GNSS/GPSについての国際シンポジウムにおいて提出された論文“On the relativistic Doppler Effects and high accuracy velocity detemination using GPS”に記載されている。
【0022】
車両速度はビデオカメラ3の画像からも有利に求めることができる。このため適当な評価プログラムにより、静止物体例えば車線標識又は道路限界柱に属する画像細部が確認されて評価される。
【0023】
間隔センサ4の信号からも、車両速度を更に有利に求めることができる。この場合例えばレーダセンサにおいて適当なプログラムにより、静止物体例えば道路縁に立つ樹木又は車道限界柱から発生するレーダエコーが評価される。
【0024】
CMS電子装置7において、上述した付加的なセンサ3,5,6の入力信号が公知のように評価され、それから車両速度が計算される。その際信頼できる信号を得るために、種々のセンサの信号を組合わせることもできる(センサ融合)。
【0025】
センサデータから、上述したようにCMS電子装置7内で、危険の可能性が計算される。危険の可能性が特定の閾値を上回る場合、運転室にある警報表示器8が操作され、場合によっては不注意な運転者に危険な走行状況を気付かせる。その際警報は光、音又は触覚で行うことができる。
【0026】
追突事故を防止するため運転者の適時の反応がもはや行われないか、又はもはや不可能である場合、同時に又は続いて車両の制動システム9が始動される。制動システムは、自発的に即ち運転者による制動ペダルの操作なしに車両1を制動することができる。これは部分制動又は全制動であってもよい。
【0027】
本発明による方法は、車輪速度信号を援助するため車両速度が車輪回転数とは無関係な別のセンサによっても付加的に監視される。これにより車両速度は、不利な状態においても、自発的な制動中に確実に求められる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路車両(1)において追突事故を防止するか又は事故の厳しさを減少するため自発的な非常制動を正確に実行する方法であって、自発的な非常制動中に車両(1)の速度が車輪センサ(14,15)により検出され、車両(1)の前の空間が少なくとも1つの間隔センサ(4)により監視されるものにおいて、車輪回転数とは無関係な付加的な速度検出が行われることを特徴とする、方法。
【請求項2】
間隔センサ(4)としてレーダセンサが使用されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
間隔センサ(4)としてライダセンサが使用されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
車両(1)の前の空間が付加的にビデオカメラ(3)により監視されることを特徴とする、請求項1〜3の1つに記載の方法。
【請求項5】
付加的な速度検出が、車両(1)に設けられて無接触で道路表面(6)を走査する光センサ(5)により行われることを特徴とする、請求項1〜4の1つに記載の方法。
【請求項6】
付加的な速度検出がGPSセンサ(7)により行われることを特徴とする、請求項1〜5も1つに記載の方法。
【請求項7】
GPSの搬送周波数の移相が評価されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
付加的な速度検出がビデオカメラ(3)の画像の評価によって行われることを特徴とする、請求項4〜7の1つに記載の方法。
【請求項9】
付加的な速度検出が間隔センサ(4)の信号の評価によって行われることを特徴とする、請求項1〜8の1つに記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜9の1つに記載の方法を使用することを特徴とする、道路車両(1)。

【図1】
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【公表番号】特表2012−532060(P2012−532060A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518767(P2012−518767)
【出願日】平成22年5月3日(2010.5.3)
【国際出願番号】PCT/EP2010/002670
【国際公開番号】WO2011/003487
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(596055475)ヴアブコ・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング (47)
【氏名又は名称原語表記】WABCO GmbH
【Fターム(参考)】