説明

遠心圧縮機のための小滴キャッチャ

圧縮機羽根車内に設置される液体小滴捕捉デバイスであって、このデバイスが、羽根車の表面に配置され、液体小滴を受けるように構成されるアパーチャと、アパーチャの下方に配置され、アパーチャに流体連通されるチャネルと、を有し、ここでは、チャネルは、アパーチャから離れて圧縮機羽根車から出るように液体小滴を誘導するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は概して遠心圧縮機に関し、より詳細には、圧縮機環境から液体を除去するための小滴キャッチャ(droplet catcher)に関する。本開示はまた、そのようなデバイスを有する遠心圧縮機、および、それらのデバイスを用いて圧縮機の性能を向上させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮機は、通常、電気機械またはタービンから動力を受けることによりおよび動作流体に圧縮力を加えることにより動作流体の圧力を増大するのに使用される。動作流体は空気、気体または冷却剤などであってよい。圧縮機は、圧縮のために採用される方法に応じて、通常、容積式圧縮機、動圧縮機またはターボ圧縮機に分類される。
【0003】
容積式圧縮機は、通常、容積を減少することにより動作流体の圧力を増大するのに使用される。容積式圧縮機の1つのタイプは遠心圧縮機である。遠心圧縮機は、回転羽根を使用して動作流体(例えば、気体)を加速させて外に出る気体を制限して気体を圧縮することにより、動作する。
【0004】
流入気体中の液体粒子または固体粒子などの汚染物が圧縮機の信頼性に大きな影響を与える可能性がある。多くの事例で、吸気の液体エーロゾル(すなわち、液体小滴)が汚染されることにより、遠心圧縮機の機械的故障を引き起こす可能性がある。気体が圧縮機内の表面に衝突するとき、凝縮により液体小滴が気体の流れの中に蓄積する可能性がある。図1は、従来技術の遠心圧縮機10の一部分と、そのような現行の遠心圧縮機内で見られる気体−液体の小滴流れパターンとを示している。図1で示されるように、小滴12は、最初に羽根車14の表面において、具体的には羽根車の羽根16において、圧縮機に衝突する。小滴12は回転する羽根車14に当たり、互いに接触し、より大きい小滴を形成する。このより大きい小滴の一部分は圧縮機の気体流れ方向に留まる傾向があり、より大きい小滴の残りの部分は回転する羽根車表面に付着する。この時点のこのより大きな小滴は、表面に衝突する新しい小滴に結合しやすい。したがって、小滴がさらに大きくなることから、その蒸発が阻害され、浸食が起こる可能性が増大する。圧縮機内の液相の体積が増大する可能性があり、それに従い圧縮機の効率が低下する。小滴が付着することにより羽根の表面またはケーシングに形成される液膜が不安定になる可能性があり、さらには、大きい小滴を形成する可能性があり、大きい小滴は、浸食の点から見る限りでは非常に有害である。時間の経過と共に、増大する液相の体積およびそれに付随する汚染物により、圧縮機が腐食して破損し、それにより故障につながるか、または少なくとも検査または修理のために頻繁に停止されることになる。
【0005】
無視できない量の水が入口のところの蒸気に含まれる場合は常に、混合気からすべての水分を分離するために、小滴分離デバイスが現行の遠心圧縮機内の第1のステージの上流に設置される。しかし、現行の小滴分離デバイスは、液体小滴が結合してより大きくなる前に液体小滴を捕捉するような分離手法を用いない。このことがより強い中間冷却効果につながり、それにより蒸発が遅れ、液層の局部的な体積割合/体積濃度が上がり、それにより圧縮機の性能が大きな影響を受ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第3,104,964号明細書
【発明の概要】
【0007】
本明細書では、遠心圧縮機から液体小滴を除去するための小滴キャッチャを開示する。一実施形態では、この物品は、圧縮機の羽根車内に設置される液体小滴捕捉デバイスを有する。このデバイスは、羽根車の表面に配置され、液体小滴を受けるように構成されるアパーチャと、アパーチャの下方に配置され、アパーチャに流体連通されるチャネルと、を有し、ここでは、チャネルは、アパーチャから離れて圧縮機羽根車から出るように液体小滴を誘導するように構成される。
【0008】
別の実施形態では、遠心圧縮機は遠心羽根車を有する。遠心羽根車は、ルート部分および先端部分を各々が有する複数の回転一体羽根であって、これらの複数の回転一体羽根が遠心重力場内の空気を圧縮するように構成される、複数の回転一体羽根と、複数の回転一体羽根に配置される複数の液体小滴捕捉デバイスであって、液体小滴捕捉デバイスが、羽根車の表面に配置され、液体小滴を受けるように構成されるアパーチャを有する、液体小滴捕捉デバイスと、複数の回転一体羽根内でアパーチャの下方に配置され、アパーチャに流体連通されるチャネルであって、チャネルが、アパーチャから離れて遠心圧縮機から出るように液体小滴を誘導するように構成される、チャネルと、を有する。
【0009】
液体小滴を除去することにより遠心圧縮機の性能を向上させる方法が、遠心羽根車に衝突する箇所で液体小滴を捕捉するのに有効である液体小滴捕捉デバイスを遠心羽根車の一部分に配置するステップであって、液体小滴捕捉デバイスが、遠心羽根車の表面に配置されるアパーチャ、および、遠心羽根車内でアパーチャの下方に配置され、アパーチャに流体連通されるチャネルを有する、ステップと、液体小滴捕捉デバイスのアパーチャ内で液体小滴を捕捉するステップと、液体小滴を液体小滴捕捉デバイスのアパーチャからチャネルまで誘導することにより遠心圧縮機から液体小滴を除去するステップと、を含む。
【0010】
以下の図および詳細な記述により、上記の特徴および別の特徴が例示される。
【0011】
ここで、同様の部品には同様の参照符号が付されている図を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】液体小滴流れパターンを示している従来技術の遠心羽根車を示す図である。
【図2】従来の産業用圧縮機の遠心ステージ(centrifugal stage)を示す概略断面図である。
【図3】従来のガスタービンエンジンを示す概略断面図である。
【図4】図3のガスタービンエンジンと共に使用される遠心羽根車を示す概略断面図である。
【図5】本明細書で開示される液体小滴捕捉デバイスを組み込む遠心羽根車の例示の実施形態を示す概略断面図である。
【図6】図5の例示の小滴捕捉デバイスのうちの1つを拡大して詳細に示す図である。
【図7】スロットタイプの小滴キャッチャの例示の実施形態を示す概略断面図である。
【図8】適宜のストライピングまたはグルービングを示している、図3の羽根車を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示は、遠心圧縮機から液体小滴を除去するための液体小滴捕捉デバイス(以下では、「小滴キャッチャ」と称される)に関する。本明細書で説明する小滴キャッチャは液体小滴を効率的に集めることを可能にして液体小滴をチャネル内に誘導し、さらにそのチャネルにより、液体小滴が圧縮機から出るように誘導される。現行の小滴分離器の考え方は、概して、圧縮機のシュラウドの外側円周に配置されるキャッチャまたはフィルタに基づく。これらの分離器の欠点の1つは、小滴が、羽根車から圧縮機の外側円周まで移動する前に結合して拡大する時間を有することである。この時間的猶予により、液体の全体の体積割合が圧縮機内で増大することが可能となる。このような分離器の別の欠点は、圧縮機表面上で拡大する液膜が分裂することで大きい小滴が分離してしまうことである。本明細書で開示される小滴キャッチャは、結合が起こる前に、予想される羽根車表面との衝突箇所において液体小滴を除去する。付着している小滴が小滴キャッチャにより表面から迅速に除去されることから、液体が圧縮機の周りで加速されて新しい小滴を再び形成することはない。その結果、圧縮機内の液相の全体の体積割合が許容される最小範囲で維持され、それにより圧縮機に対して企図される条件に近い運転条件が維持される。
【0014】
言及したように、本明細書で開示される小滴キャッチャは、気体流体を圧縮するように適合された任意の遠心圧縮機で使用され得る。このような圧縮機の例は、例えば、ガスタービンエンジンシステムまたは産業用圧縮機システム内で見られる。図の全体を参照して、また、図5を詳細に参照して、これらの図が本明細書で開示される小滴キャッチャの特定の実施形態を説明することを目的としており、その特定の実施形態のみに限定されることを意図しないこと理解されたい。
【0015】
図2は、通常の産業用圧縮機の遠心ステージの概略断面図である。具体的には、この図は、産業用圧縮機内の遠心区間100を通る気体流れ経路を示している。入口102からの空気がディフューザ104を通って移動する。この空気はディフューザを通して前方に運ばれ、遠心羽根車108に向かうリターンチャネル106を通って蛇行する。羽根車の羽根が空気を外側に移動させ、燃焼領域(図示せず)に入る前に空気をさらに圧縮する。遠心羽根車108では、この空気量が羽根車自体および遠心ステージスリーブ110によって閉じ込められる。後でより詳細に考察するように、産業用圧縮機の遠心羽根車108は、液体小滴を効率的に集めることを可能にしさらには液体小滴が羽根車の羽根において結合して可能性として圧縮機の効率を低下させるのを防止するために、有利には、本明細書で開示される小滴キャッチャを組み込むことができる。
【0016】
図3は、本明細書で説明される小滴キャッチャが有利に使用され得る別の用途を示している。図3では、例示のガスタービンエンジンの概略断面図が示されている。これ以降、本明細書では、ガスタービンエンジンシステム内で使用される遠心圧縮機の使用について参照する。しかし、圧縮機、さらにそれに従い、本明細書で開示される小滴キャッチャが、圧縮機システム内に液体小滴が存在することが効率および/または運転寿命にとって有害であるような例えば上述した産業用圧縮機などの任意のシステムまたは処理で有利に使用され得る、ことを理解されたい。
【0017】
図3は、従来の軸方向の遠心圧縮機20を備えるガスタービンエンジン18の中央部分を通る気体流れ経路を示している。入口21からの空気が回転羽根24および固定されたステータ22の一連の軸方向ステージを通って移動する。これらの回転する軸方向ステージは空気を前方に運び、それにより効率的に空気を圧縮する。空気が圧縮機20の軸方向区間を通過した後、遠心羽根車26が空気を外側に移動させ、ディフューザ28および燃料領域30に入る前に空気をさらに圧縮する。遠心羽根車26では、この空気量が羽根車自体および羽根車シュラウド23によって閉じ込められる。圧縮空気は燃焼領域内で加熱されてタービンノズル32および回転するタービンロータ34を通って移動する。回転するタービンロータ34では、仕事は高温高圧の気体によって回復される。
【0018】
図4は、図3を描く断面に示されるような従来の遠心羽根車26の斜視図である。回転一体羽根38は、遠心重力場内の空気を圧縮するように設計された捻れたシートとして説明され得る。大きい連続する羽根38の一部分の形態であるスプリッタ羽根40が、空気チャネルのサイズが増大しさらに空気入口42から出口44までの羽根車の円周が増大するにつれて気体流れが過度に拡散するのを防止する。現在の羽根車が概して一部品で機械加工されていることに留意されたい。
【0019】
空気が軸方向入口領域42内の遠心羽根車26に入る。入口のところの入ってくる空気は、遠心羽根車の上流にある軸方向圧縮機ステージによって圧縮されている。したがって、空気は入口のところでは回転軸に平行な方向に移動することになり、既に大幅に圧縮されている。羽根車内の空気の内部流れ経路は羽根車ハブ27によって形成される。空気自体は前方に運ばれて、羽根のルート29から羽根の先端31までのすべての羽根領域において羽根車の羽根38によって圧縮される。空気が遠心羽根車を通って前進すると、流れ方向が、すべての方向において、回転軸に平行な方向から回転軸に対して垂直な方向へと変化する。空気は、出口44に到達するまで回転軸から主として外側に移動し、回転軸に沿って移動することはない。この時点での流れ場は遠心的流れ場(centrifugal flow field)として説明され得、すなわち、遠心羽根車の出口44での空気な主な方向は接線に沿っている。
【0020】
次に図5を参照すると、本開示の小滴キャッチャ60を組み込む遠心羽根車50の断面図が示されている。羽根車50は、従来の羽根車26の代わりに、または、従来の小滴分離器を有する現行の羽根車の代わりに、図2の遠心圧縮機内に設置され得る。さらに、別の実施形態では、小滴キャッチャ60が、現行のシュラウド型キャッチャまたはフィルタを有する圧縮機との組み合わせで羽根車上に配置され得る。小滴キャッチャ60は羽根車50の表面に沿ったいかなる場所にも配置され得る。例示の実施形態では、小滴キャッチャ60は、羽根車50の各羽根52の上の、液体小滴が衝突すると予想される場所に配置される。液体が衝突すると予想される場所は、例えば、圧縮機の速度、羽根車のサイズ、各羽根のサイズ、羽根車の羽根の角度、圧縮機内で凝結している液体(例えば、水)など、の多くの変数によって決定され得る。
【0021】
この特定の実施形態では、各小滴キャッチャ60は各羽根50のルート部分54上に配置されて示されている。キャッチャ60はまた、羽根自体に接してその上を延在していてよく、また、ルート部分に近傍の隣接するハブ表面の一部分を組み込んでいてよい。小滴キャッチャ60は、羽根車50上の予想される衝突箇所に、スロット形状を有するアパーチャ62を有する。スロットアパーチャ62は、流れている液体小滴が入るのを可能にするのに有効である。これにより、小滴を効率的に集めることが可能となり、小滴が小滴キャッチャ60のチャネル(図示せず)内に誘導されるようになり、さらにそのチャネルにより、液体小滴が圧縮機から出るように誘導される。
【0022】
図6は小滴キャッチャ60のうちの1つをより詳細に示している。例示の実施形態の小滴キャッチャ60は3つの分離したスロットアパーチャ62を有する。別の実施形態では、3つより多いまたは3つより少ないスロットアパーチャが存在してよい。例えば、一部の実施形態では、所与の小滴キャッチャ上に複数のスロットアパーチャが存在していてよい。別の実施形態では、各小滴キャッチャで必要となるスロットアパーチャは1つのみである。スロットアパーチャ62は、小滴キャッチャ60の本体および/または羽根車の羽根50自体の中でアパーチャの下方に配置されるチャネル64に流体連通される。スロットアパーチャは、特定のシステムでは、小滴が羽根車表面上で可能性として結合する前の最初の衝突時に液体小滴を捕捉するのに適する任意のサイズ、形状、数および寸法を有してよい。これらのスロットのパラメータ(例えば、サイズ、形状、数、寸法)は、小滴キャッチャが配置されている圧縮機の流れパラメータおよび運転条件によって決定される。スロットのパラメータは、小滴を効率的に集めることが実現されるように、また、小滴がチャネル内に誘導されてそこで蓄積された液体が圧縮機システムから外に誘導されるように、設計されるべきである。スロットアパーチャのパラメータを決定する際に考慮するべき重要なファクタには、限定しないが、羽根車のサイズ、羽根のデザイン、小滴キャッチャの位置、圧縮機のサイズ、圧縮機の速度、液体小滴の構成などが含まれる。さらに、チャネルの深さは、小滴がスロットアパーチャ62から離れてキャッチャ60に入って圧縮機から出るときに、液体が羽根車表面まで戻るように逆流することがないように小滴を運ぶことができるくらいの十分な深さである。チャネルは、旋回する羽根車の遠心力がチャネル64に沿って小滴をスロット入口62から引き込んで圧縮機シュラウドの外に出すのに有効となるように、構成される。
【0023】
図7は、適宜の実施形態の小滴キャッチャ80を示している。小滴キャッチャ80はスロットタイプのキャッチャであり、これは羽根表面から直接に液滴を除去するのに有効である。図7に示されるように、小滴キャッチャ80は、タービン羽根84の表面内にあるスロット状のアパーチャ82であってよい。矢印は羽根84を横切る流体(例えば、水)の流れの方向を示している。キャッチャ80の入口側(すなわち、上流端部)が下方向に湾曲しておりかつ羽根84の表面の下方でその表面から離れるように下方向に延びており、しがたって、矢印の方向に移動する液体小滴はキャッチャのこの湾曲部に沿って移動して羽根の表面から除去される。小滴キャッチャ80は、具体的には、形成されたばかりの膜をタービン表面から排出するのに適している。したがって、小滴キャッチャ80は小滴の衝突領域の下流側に配置されてよい。最適な効率の差異に応じて、このスロットタイプの小滴キャッチャ80は、有利には、上述した小滴キャッチャ60との組み合わせで使用され得る。小滴キャッチャ60は小滴の衝突位置のところに直接に配置されてよい。というのは、そうすることにより、小滴キャッチャ60の単純な開口部が小滴を除去するのにより有効となり得、同時に、スロットタイプの小滴キャッチャ80が、小滴キャッチャ60の下流側の捕捉されていないすなわち接触していない小滴から形成されたばかりの液体膜を排出するのに有効であるような、小滴キャッチャ60の下流側の領域に配置され得るからである。圧縮機内の液体小滴の流れパターン56を示すために図5には黒色ドットが含まれる。上述したように、小滴キャッチャ60は、羽根車との予想される衝突場所において液体小滴を捕捉するように位置決めされる。
【0024】
繰り返しになるが、適宜の実施形態では、追加の小滴キャッチャが予想される衝突箇所の下流にさらに配置され得る。例えば、図7に示される小滴キャッチャなどのスロットタイプの小滴キャッチャが、小滴キャッチャ60のとの組み合わせでその下流で使用され得る。この流れパターンは、羽根車との衝突時にスロットアパーチャ62内で捕捉される液体小滴の一部を示している。しかし、小滴キャッチャ60はすべての液体小滴を捕捉して集めるわけではない。この流れパターンは、小滴キャッチャ60の外側の羽根車の領域に衝突する一部の小滴56を示している。これらの小滴は遠心力により羽根車50の外側周辺部まで運ばれる。小滴キャッチャ60が接近してくる多くの小滴56を捕捉することから、流れない液滴が壁の上に蓄積して膜を形成する可能性が低下する。したがって、このような残った小滴は羽根車から離れて移動することができ、圧縮機シュラウド上に装着されるキャッチャまたはフィルタなどの、適宜の現行の小滴分離器デバイスによって捕捉され得る。別法として、多段遠心圧縮機の場合、残った小滴56は、次のステージの羽根車上に配置される第2のセットの小滴キャッチャによって捕捉され得る。このようにして、液体小滴がステージ間を移動するにつれて、多段圧縮機内の液相の全体の体積割合減少していき、圧縮機の出口では最小の量の液体が存在することになる。各圧縮機ステージの小滴キャッチャは寸法および装着位置が同じであってよく、または、これらのキャッチャは羽根の異なる部分に配置されて、ステージごとに異なる寸法を有してもよい。例えば、液体小滴の量がステージごとに減少していくにつれて、より後にあるステージの小滴キャッチャのサイズおよび寸法は、液体小滴が最も重くかつ圧縮機内の汚染物が最も多い初期のステージのサイズおよび寸法より小さくてよい。
【0025】
ここで再び図4を参照すると、遠心羽根車26は、適宜、水を集めるのを補助するために羽根38上に配置されるストライピングすなわち彫られた溝90をさらに有してよい。図8は、溝90を示している羽根車26の区間の拡大図である。ストライピングすなわち溝90は、小滴キャッチャのスロットに向かうように、または、別の小滴回収デバイスが配置され得る別の羽根車ケーシングに向かうように、羽根車の羽根表面の下方向に水を排出するように構成され得る。また、図8に示される遠心羽根車は、適宜、それぞれの小滴キャッチャ60から液体小滴の流れを集めるように構成される排出ラインをさらに有することができる。排出ラインは、小滴キャッチャの下方すなわち羽根車の羽根表面の下方に配置されてよく、したがってこの図では確認できない。排出ラインは、トラフ、チューブまたはパイプなどの、液体を集めるための任意適当な形状を有することができる。排出ラインはまた、圧縮機の運転中に、集められた液体を回収して定期的に廃棄するために、圧縮機ハウジングの外側に配置される容器に接続され得る。
【0026】
運転において、遠心圧縮機から液体および汚染物を除去する方法が、羽根車表面に小滴キャッチャを配置するステップを含むことができ、このステップでは、小滴キャッチャは、羽根車表面の衝突箇所で液体小滴を捕捉するのに有効である位置に配置される。小滴キャッチャは、液体小滴を受けるように構成されるスロットアパーチャと、スロットアパーチャから離れて圧縮機から出るように液体小滴を誘導するように構成される、スロットパーチャに流体連通されるチャネルと、を有することができる。
【0027】
本明細書で説明される小滴キャッチャは、現行の小滴分離器に対して、具体的には圧縮機の外側円周に配置される小滴分離器に対して、明確な利点を有する。開示される小滴キャッチャは液体小滴を効率的に集めることを可能にして液体小滴をチャネル内に誘導し、さらにそのチャネルにより、液体小滴は、結合して拡大するようになる前に、圧縮機から外に誘導される。本明細書で開示される小滴キャッチャは、結合が起こる前に、予想される羽根車表面との衝突箇所において液体小滴を除去し、したがって、小滴はこれらの表面から迅速に除去されることから、液体が圧縮機の周りで加速されて新しい小滴を再び形成することはない。その結果、圧縮機内の液相の全体の体積割合が許容される最小範囲で維持され、それにより圧縮機に対して企図される条件に近い運転条件が維持され、破損が減少され、効率が向上し、圧縮機の寿命が維持される。
【0028】
本明細書で開示される範囲は包括的であり、組み合わせ可能である(例えば、「最大約25wt%、または、より具体的には約5wt%から約20wt%の範囲」は、「約5wt%から約25wt%」の範囲の終点およびすべての中間値を包含する)。「組み合わせ」は、ブレンド、混合気、合金、反応生成物などを包含する。また、「第1の」および「第2の」などの用語は、本明細書では、順序、量または重要度を一切示すものではなく、ある要素を別の要素と区別するのに使用されるものであり、また、本明細書の「a」および「an」は量を限定することを示しておらず、参照される項目が少なくとも1つ存在することを示している。量に関連して使用される修飾語「約」は述べられる値を包含し、文脈によって決定される意味を有する(例えば、特定の量の測定値に付随する誤差を含む)。本明細書で使用される接尾辞「(複数可)」は、この接尾辞が修正する用語の単数形および複数形の両方を含むことを意図し、したがって、その用語の1つまたは複数を含むことを意図する(例えば、着色材(複数可)は1つまたは複数の着色材を含む)。本明細書を通して参照する「一実施形態」、「別の実施形態」および「実施形態」などは、その実施形態に関連して説明される特定の要素(例えば、特徴、構造および/または性質)が本明細書で説明される少なくとも1つの実施形態に含まれ、別の実施形態では存在していても存在していなくてもよいことを意味する。さらに、説明される要素が種々の実施形態において任意適当な手法で組み合わされ得ることを理解されたい。
【0029】
好適な実施形態を参照して本発明を説明してきたが、本発明の範囲から逸脱することなく、種々の変更がなされ得、また、その好適な実施形態の要素に対して均等物が代用される得ることを理解されたい。さらに、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく、特定の状況および材料を本発明の教示に適合させるために多くの修正がなされ得る。したがって、本発明が本発明を実施するために企図される最良の形態として開示される特定の実施形態のみに限定されないこと、および、本発明が添付の特許請求の範囲内にあるすべての実施形態を含むこと、が意図される。
【符号の説明】
【0030】
18 ガスタービンエンジン
20 遠心圧縮機
21、102 入口
22 ステータ
23 羽根車シュラウド
26、50、108 遠心羽根車
28、104 ディフューザ
29 羽根のルート
30 燃料領域
31 羽根の先端
32 タービンノズル
34 タービンロータ
38 回転一体羽根
40 スプリッタ羽根
42 空気入口
44 出口
52、84 羽根
54 羽根のルート部分
56 液体小滴の流れパターン
60、80 小滴キャッチャ
62 スロットアパーチャ
64 チャネル
82 スロット状のアパーチャ
84 タービン羽根
90 溝
100 遠心区間
106 リターンチャネル
110 遠心ステージスリーブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機羽根車内に設置される液体小滴捕捉デバイスであって、
前記羽根車の表面に配置され、液体小滴を受けるように構成される第1のアパーチャと、
前記アパーチャの下方に配置され、前記アパーチャに流体連通されるチャネルであって、前記チャネルが、前記第1のアパーチャから離れて前記圧縮機羽根車から出るように液体小滴を誘導するように構成される、チャネルと
を有する、液体小滴捕捉デバイス。
【請求項2】
前記羽根車の前記表面が、液体小滴を前記第1のアパーチャに向かうように誘導するように構成される、その上に配置される複数の溝をさらに有する、請求項1記載のデバイス。
【請求項3】
前記第1のアパーチャがスロット形状を有する、請求項1記載のデバイス。
【請求項4】
前記第1のアパーチャの下流に配置される第2のアパーチャをさらに有するデバイスであって、前記第2のアパーチャが上流端部および下流端部を有し、前記上流端部のところの前記羽根車の前記表面が下方に湾曲して前記下流端部のところの前記羽根車の前記表面の下方で延びており、それにより前記第2のアパーチャが形成され、前記第2のアパーチャが、液体膜を前記羽根車表面の前記湾曲部の下方に誘導して前記第2のアパーチャを通過するように誘導するように構成される、請求項1記載のデバイス。
【請求項5】
前記第1のアパーチャが小滴衝突領域のところの前記羽根車表面の位置に配置される、請求項1記載のデバイス。
【請求項6】
前記第1のアパーチャが前記圧縮機羽根車の羽根のルート部分のところに配置される、請求項1記載のデバイス。
【請求項7】
前記圧縮機羽根車が産業用圧縮機内に配置される、請求項1記載のデバイス。
【請求項8】
前記圧縮機羽根車がガスタービンエンジン内に配置される、請求項1記載のデバイス。
【請求項9】
遠心羽根車を有する遠心圧縮機であって、前記遠心羽根車が、
複数の回転一体羽根であって、前記複数の回転一体羽根の各々がルート部分および先端部分を有し、前記複数の回転一体羽根が遠心重力場内で空気を圧縮するように構成される、複数の回転一体羽根と、
前記複数の回転一体羽根に配置される複数の液体小滴捕捉デバイスであって、前記液体小滴捕捉デバイスが、前記羽根車の表面に配置され、液体小滴を受けるように構成されるアパーチャと、前記複数の回転一体羽根内で前記アパーチャの下方に配置され、前記アパーチャに流体連通されるチャネルと、を有し、前記チャネルが、前記アパーチャから離れて前記遠心圧縮機から出るように液体小滴を誘導するように構成される、複数の液体小滴捕捉デバイスと
を有する、遠心圧縮機。
【請求項10】
前記小滴捕捉デバイスが前記チャネルに流体連通される排出ラインをさらに有する、請求項9記載の圧縮機。
【請求項11】
前記液体小滴捕捉デバイスのうちの1つまたは複数が前記複数の回転一体羽根の各々の表面上に配置される、請求項9記載の圧縮機。
【請求項12】
前記複数の回転一体羽根の前記表面の各々が、液体小滴を前記アパーチャに向かうように誘導するように構成される、その上に配置される複数の溝をさらに有する、請求項11記載の圧縮機。
【請求項13】
前記アパーチャがスロット形状を有する、請求項9記載の圧縮機。
【請求項14】
前記第1のアパーチャの下流に配置される第2のアパーチャをさらに有するデバイスであって、前記第2のアパーチャが上流端部および下流端部を有し、前記上流端部のところの前記羽根車の前記表面が下方に湾曲して前記下流端部のところの前記羽根車の前記表面の下方で延びており、それにより前記第2のアパーチャが形成され、前記第2のアパーチャが、液体膜を前記羽根車表面の前記湾曲部の下方に誘導して前記第2のアパーチャを通過するように誘導するように構成される、請求項9記載の圧縮機。
【請求項15】
前記複数の液体小滴捕捉デバイスが小滴衝突領域のところに配置される、請求項9記載の圧縮機。
【請求項16】
前記複数の液体小滴捕捉デバイスが前記複数の回転一体羽根の前記ルート部分のところに配置される、請求項15記載の圧縮機。
【請求項17】
請求項9の前記遠心圧縮機を有するガスタービンエンジン。
【請求項18】
液体小滴を除去することにより遠心圧縮機の性能を向上させる方法であって、前記方法が、
遠心羽根車に衝突する箇所で液体小滴を捕捉するのに有効である液体小滴捕捉デバイスを前記遠心羽根車の一部分に配置するステップであって、前記液体小滴捕捉デバイスが、前記遠心羽根車の表面に配置されるアパーチャと、前記遠心羽根車内で前記アパーチャの下方に配置され、前記アパーチャに流体連通されるチャネルと、を有する、ステップと、
前記液体小滴捕捉デバイスの前記アパーチャ内で液体小滴を捕捉するステップと、
液体小滴を前記液体小滴捕捉デバイスの前記アパーチャから前記チャネルまで誘導することにより前記遠心圧縮機から液体小滴を除去するステップと
を含む、方法。
【請求項19】
前記液体小滴捕捉デバイスの上流の前記遠心羽根車の表面上に配置される溝を配置するステップをさらに含み、前記溝が液体小滴を前記アパーチャまで誘導するように構成される、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記遠心圧縮機内の液相の全体の体積割合を減少させるステップをさらに含む、請求項18記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公表番号】特表2013−508618(P2013−508618A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−536769(P2012−536769)
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【国際出願番号】PCT/US2009/062205
【国際公開番号】WO2011/053278
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】