説明

遠隔制御用作業機械の画像表示方法

【課題】遠隔制御操作を行うオペレータが、前進後進の操作時にディスプレイの画像表示に余計な神経を使うことなく、画像を見て、常に走行方向が把握できるような技術を提供しようとするものである。
【解決手段】車両前方側を撮像する前方カメラ10,11(ただし、いずれか一方。以下同じ)と、後方側を撮像する後方カメラ12とが、遠隔制御される作業機械2に取り付けられ、それらカメラが撮像する画像が、遠隔操作側のディスプレイ4に表示され、該ディスプレイ4の表示として、前方カメラ10,11または後方カメラ12のいずれか一方の画像を大きく、他方の画像を小さくして、同時に表示させる遠隔制御用作業機械の画像表示方法である。そして、作業機械2の前後進操作の切り替えと同時に、前記ディスプレイ4に表示させている大きな画像と小さな画像を、大小逆に切り替えさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、遠隔制御用作業機械の画像表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
作業現場で稼働する作業機械(例えば、ブルドーザやダンプトラック、油圧ショベルなど)は、建設工事現場や改修作業現場等といった土砂が多かったり足場が悪かったりといった危険を伴う場所で使用されることが多い。そのため、従来から、作業機械にカメラを取り付けて、遠隔制御により作業機械を動かすことが行われている。通常、カメラは、運転席のオペレータの視線に合わせた位置や遠くを見渡せる上方等の車両前方に設置されるが、作業は前後に移動して行われるため、後方にもカメラが設置されることが多い。
【0003】
これらカメラにより撮像された画像は、遠隔地の操作側のディスプレイに表示されることになる。そして、表示される画像は、オペレータが手動で切り替えるのが一般的であるが、作業機械にあっては、アームやショベル等を操作しながら車両を前後に動かす必要があるため、画像を手動で切り替えると、手間や煩雑さが生じる。そこで、機能の向上を図り、作業機械の前後走行の切替操作時に、その操作を検知し、ディスプレイの画像も他方のカメラの画像に切り替える技術が開示されている(特許文献1)。
【0004】
また、複数のカメラで撮像された画像を、ディスプレイを半分に区分けして同時に表示させる技術も提供されており(特許文献2)、その技術を利用して前方後方の画像を同時に表示させれば画像を切り替える必要がなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−371594号公報(図1)
【特許文献2】特開2009−7860号公報(図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示された技術では、ディスプレイに、前方か後方のいずれかの撮像手段の画像しか表示されないので、車両の前進時にも後方の画像を見たいとき(逆の場合も同じ)には、やはり手動で画像を切り替える必要があった。
【0007】
一方、特許文献2を用いた技術では、同時に前方後方の画像が表示できるので、特許文献1のような問題は生じないが、同時に表示される画像は、ディスプレイを左右に分けて同じ大きさで表示されることから、その時点で車両がどちらの画像の方向を向いているのか不明となるという問題がある。
【0008】
この発明は、従来技術の以上のような問題に鑑み創案されたもので、遠隔制御操作を行うオペレータが、前進後進の操作時にディスプレイの画像表示に余計な神経を使うことなく、画像を見て、常に走行方向が把握できるような技術を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このため、この発明に係る遠隔制御用作業機械の画像表示方法は、車両前方側を撮像する前方カメラと、後方側を撮像する後方カメラとが、遠隔制御される作業機械に取り付けられ、それらカメラが撮像する画像が、遠隔操作側のディスプレイに表示され、該ディスプレイの表示として、前方カメラまたは後方カメラのいずれか一方の画像を大きく、他方の画像を小さくして、同時に表示させる遠隔制御用作業機械の画像表示方法であって、作業機械の前後進操作の切り替えと同時に、前記ディスプレイに表示させている大きな画像と小さな画像を、大小逆に切り替えさせることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、遠隔操作側のオペレータが、作業機械の前後進操作の切り替えを行えば、同時にディスプレイの大小の画像も逆に切り替わるので、オペレータは画像切替の操作がまったく不要になる。
【0011】
また、ディスプレイの大小の画像が前後進操作と同時に切り替わるので、オペレータは、その時の画像状態によって、車両の走行方向が把握できることになる。
【0012】
したがって、これら効果により、オペレータは安心して作業に集中できるので、作業の効率化が図れ、生産性の向上につながる。もちろん、大小画像といっても、同時に前後のカメラの画像が確認できるので、作業や走行時に前後の両方の確認ができ、安全に作業が行える。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る具体的な実施形態例の装置構成図である。
【図2】図2(a)は車両が前進走行しているときのディスプレイの状態を示す図、同(b)は車両が後進走行しているときのディスプレイの状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明が実施される具体的装置形態の一例を図1、図2に基づき説明する。本形態例は、作業機械2が、遠隔制御操作室1からの操作によって制御される、いわゆる遠隔制御システムを前提としている。なお、以下に示す形態例は、遠隔制御システムの構造も含めて、あくまで本発明の一例であって、それらに本発明が限定されないことは当然である。
【0015】
1は遠隔制御側の操作室を示し、該操作室1には、遠隔操作ユニット3及びディスプレイ4が設置される。遠隔操作ユニット3は、作業機械の走行部や作業部の操作指令を出力する操作レバーやスイッチ等の操作器具が備えられるとともに、操作指令出力を送信するための送信機能も備えている。なお、本形態例の遠隔操作ユニット3は、それ単体で持ち運ぶことのできるモバイル型となっているが、例えば後述するディスプレイ4と一体的に設置される固定型であっても良い。ディスプレイ4は、後述する作業機械に取り付けられるカメラの画像を表示する手段であり、その画像信号を受信する受信機5からの出力ラインが接続される。
【0016】
2は作業機械を示し、該作業機械2は、車両コントローラ6、受信機7、画像制御コントローラ8、送信機9を備えているとともに、車両前方に、オペレータの視線に合わせたカメラ10(以下、「オペ視線用カメラ10」という)と、車両上方に設置されたカメラ11(以下、「俯瞰用カメラ11」という)の2台と、車両後方に、後方カメラ12を設置している。
【0017】
車両コントローラ6は、遠隔制御操作室1からの操作指令信号に基づき、建設機械2の走行及び動作を制御する手段であり、そのため前記遠隔操作ユニット3から送信される操作指令信号を受信する受信機7からの出力ラインが接続される。また、車両コントーラ6は、その操作指令信号のうち、前後進操作指令信号については、後述する画像制御コントローラ8に出力する。
【0018】
該画像制御コントローラ8は、前記した3台のカメラの画像を任意に選択・編集・切替等する画像制御と、送信機9を介して送信する制御を行う手段であり、そのため3台のカメラの出力ラインと、送信機9の入力ラインとが接続される。この画像制御コントローラ8の画像制御は、次のとおりとなる。まず前方カメラ10,11のうち1台のカメラの画像13と、後方カメラ12の画像14とを選択し、いずれか一方の画像を大きな画像(親画像という)、他方の画像を小さい画像(子画像という)となるような指令出力をし、送信先の前記ディスプレイ4上、前後のカメラ画像13,14でいわば親子画像となるような制御指令を出力する。さらに、前記車両コントローラ6からの走行指令出力が前進走行指令であるときは、大きな画像指令出力として前方カメラ10又は11の画像13を、小さい画像指令出力として後方カメラ12の画像14をそれぞれ選択し、一方、後進走行指令であるときは、大きな画像指令出力として後方カメラ12の画像14を、小さな画像指令出力として前方カメラ10又は11の画像13を選択する。このような画像制御により、後述するように、作業機械2の走行が前後で切り替わったときには、それと同時に、ディスプレイ4に表示される親子画像の大小画像も切り替わることになる。なお、前方カメラは2台あるが、そのうちのいずれの画像を選択するかは、適宜予め設定しておけば良く、その選択もスイッチ等で任意に切り替え自在に設定すれば良い。これら制御によって選択された画像は、出力信号として、送信機9を介して、遠隔制御操作室1の受信機5に送信される。
【0019】
以上の遠隔制御システムによる具体的操作の状態を説明する。オペレータが遠隔制御操作室1において、遠隔操作ユニット3により作業機械2のスイッチを入れると、その信号が作業機械2の車両コントローラ6に送信される。作業機械2のスイッチ起動時は、前進走行状態となるので、車両コントローラ6は前進走行指令を走行部に指令するとともに、画像制御コントローラ8にも出力する。画像制御コントローラ8では、その指令に基づき、前方側のオペ視線用カメラ10又は俯瞰用カメラ11の画像13を親画像、後方カメラ12の画像14を子画像に選択する指令を画像信号とともに、送信機9に出力し、該送信機9から遠隔制御操作室1内の受信機5に送信させる。遠隔制御操作室1側では、受信機5が受信した指令信号に基づき、ディスプレイ4には、前方カメラ10又は11の画像13を親画像、後方カメラ12の画像14を子画像とした親子画像が表示される(図2(a))。本形態例では、親画像はディスプレイ全体に表示され、子画像はディスプレイの右上にディスプレイ全体の16分の1程度の大きさで表示される。前方カメラとしてオペ視線用カメラ10と俯瞰用カメラ11のどちらの画像を表示させるかは、オペレータが遠隔操作ユニット3のスイッチを手動で切り替える。なお、図2に示す形態例では、前方カメラとしてオペ視線用カメラ10を選択している。
【0020】
一方、オペレータが遠隔操作ユニット3を操作して、車両を後進するように操作した場合、車両コントローラ6の制御により作業機械2が後進すると同時に、その後進指令が画像制御コントローラ8に出力され、同コントローラ8の制御によって、当初、親画像として表示されていた前方カメラ画像13が子画像に、子画像として表示されていた後方カメラ画像14が親画像に自動的に切り替わる(図2(b))。
【0021】
このように、本形態例の装置構成を用いれば、ディスプレイ4上に同時に前方カメラ及び後方カメラで撮像された画像13,14が表示されることになり、オペレータは車両を動かさなくても、常に車両の前後の状況が確認でき、安心して車両を操作できることになる。そして、大きく表示された進行方向の画像をみながら、それとは逆方向の画像も確認でき利便性が上がる。また、車両を前後に操作することによって、ディスプレイ4に表示される親子画像が自動で切り替わることになるので、作業の効率化が図れる上、オペレータは作業に集中でき、生産性の向上にもつながる。
【0022】
なお、本発明が以上の形態に限定されないことは上述したとおりであり、遠隔制御装置を搭載できれば、適用する作業機械としてどのような車両を用いても良い。また、カメラの台数は前方及び後方に少なくとも1台以上設置されていれば、適宜増減できる。いずれにせよ、特許請求の範囲の構成を満足させる形態であれば、上記形態を適宜変更しても当然にその技術的範囲に属するものである。
【産業上の利用可能性】
【0023】
この発明は、遠隔制御される作業機械に適用可能である。
【符号の説明】
【0024】
1 遠隔制御操作室
2 作業機械
3 遠隔操作ユニット
4 ディスプレイ
6 車両コントローラ
8 画像制御コントローラ
10、11 オペ視線用カメラ、俯瞰用カメラ(前方カメラ)
12 後方カメラ
13 前方カメラの画像
14 後方カメラの画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前方側を撮像する前方カメラと、後方側を撮像する後方カメラとが、遠隔制御される作業機械に取り付けられ、それらカメラが撮像する画像が、遠隔操作側のディスプレイに表示され、該ディスプレイの表示として、前方カメラまたは後方カメラのいずれか一方の画像を大きく、他方の画像を小さくして、同時に表示させる遠隔制御用作業機械の画像表示方法であって、作業機械の前後進操作の切り替えと同時に、前記ディスプレイに表示させている大きな画像と小さな画像を、大小逆に切り替えさせる遠隔制御用作業機械の画像表示方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−9823(P2011−9823A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148435(P2009−148435)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【出願人】(000190297)キャタピラージャパン株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】