説明

適応可能な閾値を有する検出フィルタを用いる無効化されたラベルの検出を抑制するためのシステムおよび方法

無効化されたタグの検出を抑制するための方法、システム、およびコンピュータプログラム製品。その方法、システム、およびコンピュータプログラム製品は、少なくとも1つのタグから環境雑音を含む信号を受信し、受信した信号から、信号検出エネルギー値を含む信号検出情報を抽出し、受信した信号から、信号無効化エネルギー値を含む信号無効化情報を抽出し、信号無効化エネルギー値で除算した信号検出エネルギー値に対応する無効化の失敗率を判定することを含む。無効化の失敗率が選択可能な閾値未満であり、かつ選択可能な閾値を調節するための雑音指数を発生する場合、アラームイベントの発生は抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に電子セキュリティシステムに関し、特に、セキュリティシステムにおいて無効化されたタグの検出を抑制するための電子式物品監視(EAS:electronic article surveillance)検出フィルタリングおよび方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子式物品監視(EAS)システムは、任意の検出ゾーンの中でマーカー、タグ、またはラベルの識別を可能にする検出システムである。EASシステムには、様々な用途があるが、多くの場合は店舗での万引きまたは事務所ビルにある物品の持ち出しを保護するためにセキュリティシステムとして使用されている。EASシステムには様々な形態があり、幾つかの異なる技術を採用している。
【0003】
典型的なEASシステムは電子検出器、タグ、ラベルおよび/またはマーカー、ならびに取り外し装置または無効化装置を含む。検出器は、例えば台座ユニットとして形成すること、床下に埋め込むこと、壁に取り付けること、および天井から吊るすことが可能である。検出器は一般的に、店舗または事務所ビルの出入り口等の人通りが多い場所に設置される。タグ、ラベルおよび/またはマーカーは特別な特徴を有し、保護する目的のある商品または他の物品へ装着または埋設するように特に設計されるものである。有効タグがタグ検出ゾーンを通ると、EASシステムは、所定場所からタグが持ち出されることを示すために、警報を鳴らしたり、ライトを点灯させたり、および/または他の適切な警報装置を有効化する。
【0004】
一般的なEASシステムは、送受信機(送信および受信を各々行う)、または分離された送信機および受信機のいずれかを使用して、これらの同一の一般原理によって動作する。典型的に送信機は検出ゾーンの一方の端に設置され、受信機は検出ゾーンの反対側に設置される。送信機はタグ検出ゾーン内に所定励磁信号を発生する。店舗の場合は、この検出ゾーンが一般的に出口に形成される。タグが検出ゾーンに入ると、タグは励磁信号に対して検出できる特徴的な応答が生じる。例えば、タグは送信機により送信された信号に対して、単純な半導体接合部、誘導子およびコンデンサからなる同調回路、軟磁気ストリップあるいはワイヤ、または振動磁気音響共振回路を使用することにより応答してもよい。その後、受信機はこの特徴的な応答を検出する。設計により、このタグの特徴的な応答は独特とされ自然な状況で発生するものではない。
【0005】
このようなEASシステムの使用に伴って考慮すべき事項は、誤警報の発生(これは店舗等のEASシステムユーザの顧客を困惑させ、或いは誰も店舗のEASシステムを通っていないとき若しくはタグが適切に無効化されていないときに、騒々しく混乱させる警報信号を発生してしまう)を最小化することである。
【0006】
無効化の失敗(FTD:Failure to deactivate)は、すべてのEAS検出プラットフォームに影響を及ぼす主要な不満要因である。この望ましくない悪影響により、警報を発生する「無効化された」タグに不注意に慣れてしまったために、有効なタグが関与する有効な警報イベントを無視してしまうシステムユーザに重大な信頼問題を引き起こす。この現象は、タグ、またはラベルが適切に無効化されておらず、依然として有効なタグの幾つかの特性、主にスペクトル(周波数)特性を有している場合に発生する。理論上は、有効なタグの固有周波数(特性周波数)は、約58kHzである。結果として、多くの検出プラットフォームは、57.8kHzから58.2kHzに近い動作周波数を有するように設計される。タグが適切に無効化されると、その特性周波数は、通常、60kHz範囲に移動し、所望の周波数検出範囲外にタグを効果的に配置し、したがって、タグは警報イベントを発生させなくなる。しかし、部分的に無効化された、または「損傷した」タグは、59kHz範囲に移動したその特性周波数を有する可能性があり、特に、タグのエネルギーが、その新しいスペクトル(周波数)属性で、十分に大きい場合、潜在的に検出され得る。統計的には、無効化されているタグの約10%〜15%は、完全には無効化されていない、本当にわずかに損傷したタグであり、したがって、システムユーザに対するFTDイベントの比較的高い発生をもたらす。
【0007】
FTD問題を解決する試みには、TabeiおよびMusicusの技法を使用するデジタル周波数推定器を含むが、これは、非線形の出力応答をもたらす非常に複雑なアルゴリズムである。周波数推定器は、「閾値効果」と称される現象に見舞われる。閾値効果は、周波数推定器が、一部の最小入力信号対雑音比(SNR)より上では満足に実行するが、その最小SNR未満では非常に素早く悪化する際に生じる。この問題は、周波数推定器が、生入力信号で動作しなければならず、低い最小SNRがほぼ一貫性のないゼロ通過点をもたらすという事実によって増幅される。これらのゼロ通過点は、TabeiおよびMusicusの技法の基本であり、最終的には頼りにならない周波数推定につながる。したがって、周波数推定器に基づくFTD基準は信頼できるものではなく、適切に無効化されていないタグによって生じる、高い割合の誤認警報につながる。
【0008】
検出システムにおいては、無効化されたタグの検出を抑制するために使用することができる方法およびシステムが要請される。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、セキュリティシステムにおいて、無効化された電子式物品監視タグの検出を抑制するための方法、システム、およびコンピュータプログラム製品を有益に提供する。一実施形態において、セキュリティシステムにおいて、無効化されたタグの検出を抑制するための方法は、少なくとも1つのタグから環境雑音を含む信号を受信し、受信した信号から信号検出エネルギー値を含む信号検出情報を抽出し、受信した信号から信号無効化エネルギー値を含む信号無効化情報を抽出し、信号無効化エネルギー値で除算された信号検出エネルギー値に対応する無効化の失敗率を判定し、無効化の失敗率が選択可能な閾値未満である場合に条件付けられるアラームイベントの発生を抑制することを含むことができる。
【0010】
別の態様によれば、セキュリティシステムにおいて、無効化されたタグの検出を抑制するためのシステムが提供される。このシステムは、少なくとも1つのタグから環境雑音を含む信号を受信する受信機と、受信した信号から信号検出エネルギー値を含む信号検出情報を抽出する検出周波数フィルタと、受信した信号から信号無効化エネルギー値を含む信号無効化情報を抽出する無効化周波数フィルタと、を含む。このシステムはまた、信号無効化エネルギー値で除算された信号検出エネルギー値に対応する無効化の失敗率を判定し、かつ無効化の失敗率が選択可能な閾値未満の場合に条件付けられる警報イベントの発生を抑制するように、動作するプロセッサを含むことができる。
【0011】
別の態様によると、本発明は、プログラムをコンピュータ上で実行すると、コンピュータが方法を実行する、セキュリティシステムのためのコンピュータが読み込めるプログラムを有するコンピュータで使用可能な媒体を含むコンピュータプログラム製品を提供する。この方法は、少なくとも1つのタグから環境雑音を含む信号を受信し、受信した信号から信号検出エネルギー値を含む信号検出情報を抽出し、受信した信号から信号無効化エネルギー値を含む信号無効化情報を抽出し、信号無効化エネルギー値で除算された信号検出エネルギー値に対応する無効化の失敗率を判定し、無効化の失敗率が選択可能な閾値未満の場合に条件付けられるアラームイベントの発生を抑制することを含む。
【0012】
下記の説明において本発明のさらなる態様の一部が記載され、その一部は、説明を読むと明らかであるか、または本発明を具体的に実現することにより学び得る。本発明の態様は、添付の請求項において特に指摘された要素および組み合せにより実現され達成される。上記の一般的な説明および下記の発明を実施するための形態の両方が例示および説明にすぎず、請求されている本発明を制限するものではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明、ならびにその利点およびその特長は、以下の詳細な説明と共にそれに関連する添付図面を参照することにより容易により完全に理解することができる。
【図1】本発明の原理に従い構成された電子式物品監視検出システムのブロック図である。
【図2】本発明の原理に従って構成された、雑音追跡器を有する図1の電子式物品監視検出システムの検出フィルタリングおよび無効化フィルタリングの実施形態のブロック図である。
【図3】本発明の原理に従う、無効化されたラベルの検出を抑制するための例示的なプロセスのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
同様の参照符号が同様の要素を示す図面を参照すると、図1には、本発明の原理に従って構成され、全体的に符号「100」で示される例示的システムの概略図が示される。電子式物品監視(EAS)検出システム100は、電子タグから通信信号を受信するように構成された送受信機装置102と、受信した電子タグ信号を処理するように、送受信機装置102と連通したフロントエンドプロセッサ104と、検出周波数フィルタ106と、フロントエンドプロセッサ104から受信した電子タグ信号のサンプルを受信するためのフロントエンドプロセッサ104と連通する無効化の失敗(FTD)検出器108と、を含む。検出システム100は、閾値計算機110と、検出基準モジュール112と、アラーム決定モジュール114と、をさらに含むことができる。
【0015】
送受信機装置102は、関連する送信および受信回路と組み合わせた、通信信号を送信および受信する1つ以上のアンテナを含む。送受信機装置102は、電子タグから通信信号を受信し、これらの受信した信号をフロントエンドプロセッサ104に提供する。フロントエンドプロセッサ104は、例えば、1つ以上の帯域通過フィルタと連通する復調器と、アナログ/デジタル変換器と、デジタル信号プロセッサと、種々のタイプの記憶メモリと、を含むことができる。フロントエンドプロセッサ104は、送受信機装置102から通信信号を受信し、受信した通信信号を処理して、受信した通信信号のサンプルを検出周波数フィルタ106およびFTD検出器108に提供する。
【0016】
検出周波数フィルタ106は、特定の周波数、または例えば、57,800Hzから58,200Hzの検出周波数範囲の周波数で、信号情報を抽出するための1つ以上の検出直交整合フィルタ(QMF)を含む。FTD検出器108は、例えば、59,000Hzから59,300HzのFTD周波数範囲の特定の周波数で、信号情報を抽出する、例えば、202、204、および206(図2に図示)といった1つ以上のFTD QMFフィルタを含む。
【0017】
閾値計算機110は、既定閾値、または選択可能な閾値の確立、およびその既定閾値、または選択可能な閾値の修正を行うが、この閾値計算機110は、FTD検出器108およびアラーム決定モジュール114にこの閾値を供給する。閾値計算機110は、QMFフィルタ、加算器、除算器等を含むことができる。検出基準モジュール112は、信号情報、例えば、検出周波数フィルタ106およびFTD検出器108を通過した受信した信号の振幅、エネルギーレベル、および位相を検出することができる。アラーム決定モジュール114は、検出基準モジュール112から信号情報を受信し、この信号情報を処理して、警報を発生するか抑制するかを判定する。
【0018】
本発明の一時的な態様を、信号および雑音が測定されている間の単一のタイムスロットを参照して説明する。動作中、問い合わせ信号が送信ウィンドウ(Tx)の間に送信される。一旦問い合わせ信号が送信されると、問い合わされたタグの応答が見込まれ、測定される間にタグウィンドウが提供される。信号環境を安定化させる同期期間は、タグウィンドウの後に提供される。通信環境の雑音成分を測定することができるように、通信環境が問い合わせおよび応答信号を有していないことが見込まれる間、タイムスロットの残りの部分は、雑音ウィンドウである。
【0019】
図2は、図1の電子式物品監視検出システム100の検出フィルタリングおよび無効化フィルタリングの実施形態300のブロック図である。システム300は、タグウィンドウの間有効であるタグ検出システム200と、雑音ウィンドウの間有効である雑音追跡システム302と、を含む。したがって、雑音追跡システム302およびタグ検出システム200は、異なる源(それぞれ外部環境雑音およびタグ情報)からデータを取得し、異なる時間でも同様に行う。
【0020】
タグ検出システム200は、例えば、QMF−1、QMF−2、およびQMF−3といった検出QMFフィルタ202、204、および206を含み、これらは、フロントエンドプロセッサ104からサンプリングされた信号を受信し、例えば、実質的に57,800Hz、58,000Hz、および58,200Hzの検出周波数範囲の特定の周波数で、信号情報を抽出する。例えば、QMF FTDのような別のQMFフィルタ208は、フロントエンドプロセッサ104から受信した信号を受信し、例えば、実質的に59,300Hzのような無効化周波数で信号情報を抽出する。MAX計算機210は、検出QMFフィルタ202、204、および206の出力を受信する。MAX計算機210は、QMFフィルタ202、204、および206の3つの信号検出出力の信号検出エネルギー値と比較することにより、最良のQMF値212を判定する。MAX計算機210は、最良のQMF値212をエネルギー比較モジュール214に送る。エネルギー比較モジュール214は、最良のQMF値212を、QMF FTD208のエネルギー値で除算して、FTD率216を判定する。
【0021】
FTD率比較器218は、FTD率216を受信し、雑音指数326(以下に説明)によって調節された後、選択可能な既定閾値220と比較する。FTD率216が選択可能な既定閾値220を上回る場合、警報イベントが発生される。FTD率216が、選択可能な既定閾値220未満である場合、タグは無効化されたタグであると判定され、警報イベントは抑制される。図2に図示されるタグウィンドウ実施形態200は、3つの検出QMFフィルタ202、204、および206を含むが、より多くのまたはより少ない検出QMFフィルタを、他の実施形態において使用することができることが想定される。
【0022】
システム300には、雑音追跡システム302が含まれる。検出システム300は、雑音追跡システム302を採用する必要はなく、かつタグ検出ウィンドウ200の間有効であるタグ検出システムの使用のみによって、上記のようにFTD率を既定閾値と比較することにより、警報を抑制するか、展開するかを判定することができるが、雑音追跡システム302は、選択可能な既定閾値220を動的に調節することによって、展開された検出システム300の環境における過剰な雑音を補うように機能する。雑音追跡システム302において、雑音指数326が生成され、乗算器328を介して選択可能な既定閾値220に直接投入され、展開環境において、永続的または半永続的な雑音源に反応する動的閾値330を提供する。雑音追跡システム302は、例えば、QMF−1、QMF−2、およびQMF−3等の雑音検出QMFフィルタ304、306、および308、ならびに、例えば、QMFFTDのようなQMF FTDフィルタ310を含む。雑音追跡システム302は、最良のQMF値314等の検出周波数フィルタ出力を生成するMAX計算機312と、例えば、フィルタされた最良のQMF値318を生成する20タップのLPF等のローパスフィルタ(LPF)316と、エネルギー比較器320と、フィルタされたFTD値324をもたらす、例えば、20タップのLPFのようなLPF322と、雑音指数326と、乗算器328と、をさらに含む。
【0023】
MAX計算機312は、最良のQMF値314を、フィルタリングのために20タップのLPF316に送る。20タップのLPF316フィルタは、瞬間スパイクが、雑音指数326を直ちに変更またはそれに影響を及ぼさないように、例えば、受信したタグ信号のような受信した検出信号を遅延させる。同様に、20タップのLPF322は、瞬間スパイクが、雑音指数326を直ちに変更またはそれに影響を及ぼさないように、例えば、受信したタグ信号のような受信した無効化信号を遅延させる。代わりに、永続的または半永続的な雑音源のみが、雑音指数326に徐々に影響を及ぼすことができ、順次、選択可能な既定閾値220を調節する。
【0024】
例えば、59,300Hzの無効化周波数帯域で、高い雑音が存在する際、FTD基準が、正当なタグ警報を不当に阻止しないように、フィルタされたQMF値318およびフィルタされたFTD値324をエネルギー比較器320に入力することにより、有利に、選択可能な既定閾値220を動的に調節することが可能となる。本実施形態において、20個のデータのフレームにわたる、雑音および受信した信号の加重平均である、雑音指数326を提供するように、20タップのLPFを選択する。より多くの、またはより少ないタップを有するローパスフィルタが、検出システム300において使用され得ることが想定される。
【0025】
エネルギー比較器ブロック320は、フィルタされた最良のQMF値318を、フィルタされたQMF FTD値324で除算して、雑音指数326を判定する。乗算器328は、選択可能な既定閾値220を、雑音指数326で乗算して、動的閾値330を生成する。FTD率比較器218は、FTD率216を受信し、それを動的閾値330と比較する。FTD率216が動的閾値330を上回る場合、警報が発生する。FTD率216が、動的閾値330未満である場合、タグは無効化されたタグであり、警報が抑制される。図2に図示される実施形態は3つの検出QMFフィルタ304、306、および308を含むが、より多くの、またはより少ない検出QMFフィルタを他の実施形態において使用することが可能であることが想定される。さらに、分離されたQMFフィルタ、比較器、および最大値計算機等の分離された要素が、タグ検出システム200および雑音検出システム302に示されているが、このような図示は、本発明の理解を支援するためのみのものであり、これらの要素が、異なる時間に、異なるシステム(タグ検出システム200および雑音検出システム302)によって使用される同一の物理要素であることが可能であることを理解されたい。これは、タグ検出システム200および雑音検出システム302は、測定タイムスロット内の異なる期間の間、有効であり、これにより、構成部品を再使用することが可能となるからである。
【0026】
図3は、本発明の原理に従う、無効化されたラベルの検出を抑制するための例示的なプロセスである。送受信機102が初期化され(ステップS402)、検出システム100、200、または300の展開場所での雑音干渉を最初に得る(ステップS404)。この情報を使用して、既定閾値、または動的閾値の最初の開始点を確立することができる。最初の測定は、例えば、雑音の加重平均を複数のタイムスロットに提供する雑音検出システム302を使用して、複数のフレームにわたり環境をサンプリングすることにより行うことができる。タグウィンドウの間、例えば、検出振幅、検出エネルギーレベル、および検出周波数位相のような信号検出情報を、検出フィルタ202、204、および206を使用して、受信した信号から抽出する(ステップS406)。例えば、無効化振幅、無効化エネルギーレベル、および無効化周波数位相のような信号無効化情報を、QMF FTDフィルタ208および/または310を使用して、受信した信号から抽出する(ステップS408)。無効化の失敗率216は、最良のQMF値212を、QMF FTDフィルタ208のエネルギー値で除算することにより判定される(ステップS410)。
【0027】
選択的なステップとして、雑音指数326を、雑音ウィンドウの間に得られた雑音データに基づいて算出する(ステップS412)。例えば、1つ以上の20タップのローパスフィルタ316、322は、例えば、20のタイムスロットのような複数のタイムスロットにわたる、雑音および受信した信号の加重平均を提供するように選択される。本実施形態において、エネルギー比較ブロック320は、フィルタされた最良のQMF318エネルギー値をフィルタされたQMF FTD324エネルギー値で除算することにより、雑音指数326を算出または生成し、その出力を、最良のQMF314として指定する。最良のQMF314は、20タップのLPF316に送られ、これは、最良のQMF314をフィルタし、信号および雑音スパイクを円滑化する。20タップのLPF316はまた、瞬間スパイクが、雑音指数326を直ちに変更またはそれに影響を及ぼさないように、例えば、受信したタグ信号のような受信した検出信号を遅延させ、加重平均を提供することができる。同様に、20タップのLPF322は、無効化QMF FTD310の出力を処理して、フィルタされたQMF FTD324を、エネルギー比較ブロック320に提供する。雑音指数326を、選択可能な既定閾値220と組み合わせて、動的閾値330を生成することができる。
【0028】
FTD率比較器332は、FTD率216を動的閾値330と比較する(ステップS414)。FTD率216の値が動的閾値330の値を超過する場合、警報が発生する(ステップS416)。換言すると、無効化QMF FTDフィルタエネルギーレベルに対する検出QMFフィルタエネルギーレベルの比が、動的閾値330の値を上回る場合、タグは有効なタグであるはずであるから、システムは警報イベントを発生すべきである。そうでない場合、例えば、59,300Hzのような無効化周波数でのエネルギーは、例えば、58,000Hzのような検出周波数でのエネルギーを上回るはずであり、これは、タグが「損傷した」タグであることを示し、警報イベントが抑制されるべきである(ステップS418)。
【0029】
本発明は、エネルギーレベル検出を使用して、無効化されたEASタグまたはラベルによって生じる警報イベントを抑制するためのシステムを有利に提供する。このシステムは、環境雑音の効果を低減する、適応閾値動的雑音追跡器をさらに提供する。
【0030】
本発明は、ハードウェア、ソフトウェア、またはハードウェアとソフトウェアの組み合せにより実現することができる。本発明の方法およびシステムの実装は、1つのコンピュータシステムによる集中的な方法により、または異なる要素がいくつかの相互接続コンピュータシステムにわたる分散的な方法により、実現することができる。本明細書に記載された方法を行うために適合された、いかなるコンピュータシステム、または他の機器は、本明細書に記載された機能を実行するために適切である。
【0031】
典型的なハードウェアおよびソフトウェアの組み合せは、一つ以上の処理要素を有する専用または汎用コンピュータシステムと、読み込まれ実行された時に本明細書に記載された方法を行うようにコンピュータシステムを制御する記憶媒体に保存されたコンピュータプログラムとにしてもよい。本発明は、本明細書に記載された方法の実現を可能にする全ての機能を含み、コンピュータシステムに読み込めばこれらの方法を行えるコンピュータプログラム製品に組み込まれてもよい。記憶媒体は、任意の揮発性または不揮発性の記憶デバイスを指すものとする。
【0032】
本明細書の文脈において、コンピュータプログラムまたはアプリケーションとは、情報処理能力を有するシステムに、直接あるいは(a)別の言語、コード、または表記法への変換と、(b)異なる材料形態での復元と、の一方または両方の後に特定の機能を行わせるように意図された命令セットのいかなる言語、コード、または表記法によるいかなる表現をも意味する。さらに、上述に相容れないことが記述されていない限り、全ての添付図面は原寸に比例していないことに留意すべきである。重要なことには、本発明はその目的または本質的な特性から逸脱することなく他の特定の形態として実現することができるので、本発明の範囲を示すものとしては、上述の明細書よりも以下の請求項を参照すべきである。
【0033】
当業者には、本発明は上記に特に図示されて説明されたものに限定されるものではないことが理解されよう。上記の教示を踏まえると、その目的または本質的な特性から逸脱することなく様々な修正および変更が可能であるから、本発明の範囲を示すものとしては、上述の明細書よりも以下の請求項を参照すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無効化された電子式物品監視タグの検出を抑制する方法であって、
少なくとも1つのタグから信号を受信し、その信号は環境雑音を含み、
前記受信した信号から信号検出情報を抽出し、その受信した信号情報は、信号検出エネルギー値を含み、
前記受信した信号から信号無効化情報を抽出し、前記受信した信号情報は信号無効化エネルギー値を含み、
無効化の失敗率を判定し、その無効化の失敗率は、前記信号無効化エネルギー値で除算した前記信号検出エネルギー値に対応し、
前記無効化の失敗率が選択可能な閾値未満である場合に条件付けられるアラームイベントの発生を抑制することを含む方法。
【請求項2】
1つ以上の検出周波数フィルタの出力から、最高のエネルギー値を有する前記信号検出エネルギー値を選択することをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記信号無効化情報の抽出は、タイムスロットのタグウィンドウ部分の間に、複数のフィルタを使用して、前記受信した信号をフィルタリングすることを含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記複数のフィルタは、直交整合フィルタである請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記選択可能な閾値は、動的に調節可能である請求項1に記載の方法。
【請求項6】
複数の受信した信号データフレームをサンプリングして、雑音指数を確立することをさらに含み、その雑音指数は、前記動的に調節可能で選択可能な閾値を調節するために使用される請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記雑音指数の確立は、
前記複数の受信した信号のタイムスロットにわたる最高の検出信号振幅を平均化して、加重平均を生成し、
ローパスフィルタを用いて前記加重平均をフィルタリングすることを含む請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記雑音は、タイムスロット雑音ウィンドウの間に測定される請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記雑音指数で前記選択可能な既定閾値を乗算することにより、前記動的に調節可能で選択可能な閾値を判定することをさらに含む請求項6に記載の方法。
【請求項10】
無効化されたタグの検出を抑制するためのシステムであって、
少なくとも1つのタグから環境雑音を含む信号を受信する受信機と、
前記受信した信号から信号検出情報を抽出し、その受信した信号情報は信号検出エネルギー値を含む検出周波数フィルタと、
前記受信した信号から信号無効化情報を抽出し、その受信した信号情報は信号無効化エネルギー値を含む無効化周波数フィルタと、
プロセッサとを備え、そのプロセッサは、
無効化の失敗率を判定し、前記無効化の失敗率は、前記信号無効化エネルギー値で除算した前記信号検出エネルギー値に対応し、
かつ前記無効化の失敗率が選択可能な閾値未満である場合に条件付けられるアラームイベントの発生を抑制するように動作するシステム。
【請求項11】
前記プロセッサはさらに、1つ以上の検出周波数フィルタから最高のエネルギー値を有する前記信号検出エネルギー値を選択するように動作する請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記検出周波数フィルタおよび前記無効化周波数フィルタは、1つ以上の直交整合フィルタから構成される請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
前記選択可能な閾値は、動的に調節可能である請求項10に記載のシステム。
【請求項14】
前記プロセッサはさらに、複数の受信した信号のデータフレームをサンプリングして、雑音指数を確立するように動作し、前記雑音指数は、前記動的に調節可能な選択可能な閾値を調節するために使用される請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記プロセッサはさらに、
前記複数の受信した信号のデータフレームにわたる最良の検出信号振幅を平均化して、加重平均を生成すると共に、
ローパスフィルタを用いて前記加重平均をフィルタリングすることにより、前記雑音指数を確立するように動作する請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記プロセッサはさらに、前記選択可能な既定閾値を前記雑音指数で乗算することによって、前記動的に調節可能で選択可能な閾値を決定するように動作する請求項14に記載のシステム。
【請求項17】
前記検出周波数フィルタは、特定の周波数および周波数範囲のうちの1つにおいて信号情報を抽出し、前記無効化周波数フィルタは、既定の周波数において信号情報を抽出する請求項10に記載のシステム。
【請求項18】
前記既定の無効化周波数は、実質的に59,300Hzである請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
セキュリティシステムにおけるコンピュータが読み込み可能なプログラムを有するコンピュータ使用可能な媒体を含むコンピュータプログラム製品であって、前記プログラムをコンピュータ上で実行すると、前記コンピュータは、
少なくとも1つのタグから信号を受信し、その信号は環境雑音を含み、
前記受信した信号から信号検出情報を抽出し、その受信した信号情報は、信号検出エネルギー値を含み、
前記受信した信号から信号無効化情報を抽出し、その受信した信号情報は信号無効化エネルギー値を含み、
無効化の失敗率を判定し、その無効化の失敗率は、前記信号無効化エネルギー値で除算した前記信号検出エネルギー値に対応し、
前記無効化の失敗率が選択可能な閾値未満である場合に条件付けられるアラームイベントの発生を抑制することを含む方法を実行するコンピュータプログラム製品。
【請求項20】
1つ以上の検出周波数フィルタの出力から、最高のエネルギー値を有する前記信号検出エネルギー値を選択することをさらに含み、前記選択可能な閾値は動的に調節可能であり、前記動的調節は雑音指数に基づく請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−530099(P2010−530099A)
【公表日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−511157(P2010−511157)
【出願日】平成20年5月20日(2008.5.20)
【国際出願番号】PCT/US2008/006480
【国際公開番号】WO2009/011732
【国際公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(592192642)センサーマティック・エレクトロニクス・コーポレーション (92)
【氏名又は名称原語表記】SENSORMATIC ELECTORONICS CORPORATION
【住所又は居所原語表記】6600 Congress Avenue,Boca Raton,Florida 33487,United State of America
【Fターム(参考)】