説明

適用時に調製されるビタミンCを含む組成物、局所使用のためのビタミンCを生成するための酵素の使用、及び化粧方法

【課題】 安定性の問題のない、アスコルビン酸を含有する即時調製用の局所適用組成物を提供する。
【解決手段】 即時調製用の局所適用組成物において、アスコルビン酸と適切な担体を含有させ、該アスコルビン酸が、アスコルビン酸エステル以外の少なくとも一のアスコルビン酸前駆体を該前駆体を転化させることのできる、L-ガラクトノ-1,4-ラクトンデヒドロゲナーゼ、L-ガラクトースデヒドロゲナーゼ等の少なくとも一の酵素に接触させることにより得られるような組成物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酵素的経路により得られるビタミンCを含む組成物と、組成物、特に化粧品組成物の調製におけるある種の酵素の使用と、このような組成物の皮膚への適用を含む化粧方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
ビタミンC、すなわちアスコルビン酸は、特に化粧品において非常に重要な活性成分である。結合組織、特にコラーゲンの成長を促進し、外部からの攻撃に対する皮膚組織の防御を強化することが知られている。また、皮膚のシミ及び色素沈着を取り、傷んだ皮膚の回復を促進するためにも使用される。
しかしながら、この分子の重大な問題はその不安定さにあり、通常の組成物中に処方するのを困難にしている。さらに、このような組成物の適用後に、ビタミンCは急速に劣化する。
従って、アスコルビン酸を含有し、活性成分の安定性の問題を克服できる組成物、特に化粧用又は皮膚用組成物に対する必要性が存在している。
【発明の開示】
【0003】
本発明は、アスコルビン酸と適切な担体を含む即時調製用の局所適用組成物に関し、該アスコルビン酸は、アスコルビン酸エステルを除く少なくとも一のアスコルビン酸前駆体を該前駆体を転化させることのできる少なくとも一の酵素と接触させることによって得られる。
本発明では、ビタミンCは皮膚に適用する間又は直前、又は適用後すぐに、つまりその吸収の直前に直接生成される。
この方法は、ビタミンCを取り巻く処方物のこれまで遭遇していた問題を克服する。
さらに、酵素による前駆体の転換が安定しているある種の実施では、本発明の組成物と方法は皮膚表面での一定で規則的な放出を達成することができ;その結果、インビボ生物学的利用性が向上し、組成物はさらに効果的になる。
【0004】
さらに本発明は、局所使用用のアスコルビン酸の調製のための、L-ガラクトノ-1,4-ラクトンデヒドロゲナーゼ、L-ガラクトースデヒドロゲナーゼ、L-ソルボソンデヒドロゲナーゼ、L-グロノ-1,4-ラクトンオキシダーゼ又はその混合物から選択される一又は複数の酵素、又は該酵素を含む抽出物の使用に関する。
さらに、本発明は前記及び下記の組成物の皮膚への適用のための化粧方法に関する。また、同時に又は連続して、アスコルビン酸前駆体をアスコルビン酸に転化させることのできる少なくとも一の酵素、及びアスコルビン酸エステル以外の少なくとも一のアスコルビン酸前駆体を皮膚に適用することからなる皮膚の化粧方法に関する。
【0005】
本発明で使用される「前駆体」という用語は、アスコルビン酸のあらゆる化学的又は生物学的前駆体を意味する。明らかに、前駆体は少なくとも一の酵素的経路、例えば酸化工程によりビタミンCに転換することのできる、アスコルビン酸エステル以外のあらゆる糖又は基質を含む。
このような前駆体の特別な例は、L-ガラクトノ-1,4-ラクトン、L-グロノ-1,4-ラクトン、D-グルコロノ-1,4-ラクトン、D-グルクロン酸、D-マンノース、D-ガラクツロン酸、D-グルコース、D-ガラクトース、L-ガラクトース又はその混合物を含む任意の糖である。好ましくはL-ガラクトノ-1,4-ラクトンが使用される。
【0006】
本発明で使用される「酵素」という用語は、少なくとも一のビタミンC前駆体をビタミンCに、より特定的には前記の前駆体を転化させることのできるあらゆる酵素又は酵素の混合物を意味し、この又はこれらの酵素は、より一般的には以下に記載する一又は複数の形態で存在している。
このような酵素の特定の例には、L-ガラクトノ-1,4-ラクトンデヒドロゲナーゼ、L-ガラクトースデヒドロゲナーゼ、L-ソルボソンデヒドロゲナーゼ及びL-グロノ-1,4-ラクトンオキシダーゼが含まれる。また、その混合物も使用できる。好ましくはL-ガラクトノ-1,4-ラクトンデヒドロゲナーゼが使用される。
【0007】
本発明の組成物において、使用される酵素は、未精製の抽出物、精製された酵素の溶液、マトリックス上に、特にゾル-ゲルマトリックス上に固定された酵素の形態で、固体又は液体形態で、場合によっては凍結乾燥されて、放出制御体(徐放性デバイス)に入れられて、リポソームに又はそれらがそれらの適用の直前又は同時に接触するように一又は複数の酵素及び基質が互いに分離されているあらゆる他の形態にカプセル化され又は含有されている。
酵素は、動物、植物又は昆虫、又は微生物、特に遺伝子修飾の前又は後にインビボ又はインビトロで得られた分化又は脱分化細胞に由来することができる。
多くの植物は酵素の適切な供給源と考えられる。挙げられる例は、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、バラ(Rosa sp.)、及びエンドウ豆(Pea seedlin)である。適した酵素を発現することのできる微生物の例は、好気性菌(Aerobacter sp.)である。
【0008】
酵素を含む抽出物はあらゆる物質、特に細胞から調製された抽出物であり得、該物質はインビボ培養により得られたものである。細胞のインビトロ培養は、インビボ培養とは対照的に一年中入手可能な標準化された物質を生成することができる。
「インビボ培養」という用語は、人為的に生物(器官)を生産することのできる当業者に既知のあらゆる技術を意味する。
植物の分野において、インビトロ培養の利点は、特に植物が季節に影響されず、一年中入手でき、よって生産の量的需要を満たし、温度、pH及び培地の完全に制御された状態で培養が行なわれるので完全に再生可能な条件下であり、よって工業的品質基準を満たすことである。
【0009】
例として、本発明に基づくと、抽出物は、インビトロ培養により得られた少なくとも一の植物の根、茎、葉、花、花弁、果実のような器官、又はその器官の細胞、インビトロ培養で得られた少なくとも一の植物の細胞からの抽出物、又はさらに脱分化細胞の抽出物でありうる。
好ましくは、本発明に基づくと、脱分化植物細胞が使用される。
「脱分化植物細胞」という用語は、自立してかつ他の細胞とは独立して生存できる特定の特殊化特性を持たないあらゆる植物細胞を意味する。必要ならば、誘導の後、これらの脱分化植物細胞は、それらのゲノムにより可能になるあらゆる分化を受けることができる。
【0010】
選択した培養方法、特に選択した培地によっては、単一の外植片を異なる性質を有する脱分化植物細胞を生成するのに使用することができる(「Plant Propagation by Tissue culture」、George E. F. 及びSherrington P. D., 1984, Exegetics Limited)。
さらに、国際特許出願WO-A-98/02830に記載されている供給源を、クローン化された酵素の供給源として示すことができる。
本発明の組成物において、アスコルビン酸は少なくとも一の酵素、又は少なくとも一の酵素を含む抽出物を、少なくとも一の基質と接触させることにより調製される。第1の変形例では、一又は複数の酵素及び前駆体(類)は、好ましくは使用の前に調製される、単一の組成物に導入される。
【0011】
第2の変形例では、一又は複数の酵素と、さらには前駆体は、それらが使用前に互いに接触しないように包装される。
例としては、それらは適用の時に混合されるか又は連続して適用されるか、2つの異なる組成物中に取り込まれるか、又は経時的に分離されうる。
これらの組成物は2つの分離された区画に配されうる;しかしながら、その区画は一般的な管路により連通させることができる;組成物はそこで混合され、及び/又は管路を出て、肌への適用前に又はその間に同時に混合されうる。
このタイプの2区画式包装装置は、例えば仏国特許FR-A-2045559、FR-A-2105332、FR-A-2258319、FR-A-2293375、FR-A-2586913及びFR-A-2643615に記載されている。
【0012】
さらに、またカプセル化した形態で、及び/又は適切な小胞体に、例えば他の組成物に組み入れることのできるマイクロカプセル又は微粒剤の形態の、少なくとも一の組成物を生産することができる。
酵素及び/又は前駆体はカプセル化した形態であるか又はリポソームに含有され、マイクロカプセル又は微粒剤の形態でありうる。
マイクロカプセル又は微粒剤又はリポソームは、適用の時に、又は組成物がその包装物から取り出された時に、例えば皮膚上で剪断又は摩擦により押しつぶされ、酵素(類)及び前駆体(類)が適用の時に混合され、皮膚上にビタミンCを直接生成する。
【0013】
「局所適用に適した担体又は媒体」という用語は、あらゆる化粧品的に及び/又は皮膚科学的に許容可能な媒体、つまり皮膚及び/又は毛髪に適合性のあるものを意味する。これらの媒体は、通常水又は水と脂肪性物質の混合物又は脂肪性物質の混合物を含む。
本発明で使用できる脂肪性物質としては、鉱物性油(ワセリン、鉱物油)、植物性油及びそれらの水添誘導体、動物性油、合成油、シリコーン油(ジメチコン、シクロメチコン)及びフッ化油が挙げられる。他の脂肪性物質としては、脂肪アルコール、脂肪酸及びワックスが挙げられる。
【0014】
特に、組成物は、イオン性及び/又は非イオン性脂質を含む小胞体分散物の形態又はエアロゾルの形態で発泡しうるものであってもよい、クリーム又はゲルの外観を有する、水性、アルコール性又は水性アルコール性溶液、親水性又は親油性ゲル、マイクロエマルジョン、油中水型エマルジョン又は水中油型エマルジョン又は水中油中水型又は油中水中油型エマルジョンの形態でありうる。これらの生薬形態は当該分野における常法を使用して調製される。
よく知られているように、本発明における局所適用に適した媒体は、化粧又は皮膚科学産業において一般的である補助的な物質、例えば親水性又は親油性ゲル化剤、界面活性剤、親水性又は親油性活性成分、保存料、酸化防止剤、溶剤、香料、フィラー、フィルター類及び着色料もまた含むことができる。
【0015】
本発明の組成物の種々の成分の量は、当該分野で常套的に用いられる量である。
本発明の組成物において、酵素は、全組成物重量に対して0.05重量%から30重量%、好ましくは0.1重量%から10重量%の量である。前駆体は全組成物重量に対して0.01重量%から50重量%、好ましくは0.1重量%から10重量%の量である。
本発明の組成物は、顔、首、手、又は体の保護、処理又はケアのための製品に使用することができ;日焼け用製品又は毛髪ケア製品、特に頭皮ケア製品に、例えばトリートメントローション、クリームまたはゲルの形態で使用することができる。
【実施例】
【0016】
以下の実施例は、本発明のより具体的に示すために例として提供するもので、本発明を決して限定するものではない。示した量は重量パーセントである。
実施例1:スキンケアクリーム
油相:
トリセテアレス-4ホスフェート/C14−C17 6%
アルキルsecスルホン酸ナトリウム(Hoechst
Celanese社販売のHostacerin CG)(界面活性剤)
ワセリン 2%
鉱物油 4%
ジメチコン 3%
シクロメチコン 3%
ジメチコンポリオール(界面活性剤) 1%
トリクロサン(保存料) 0.1%
L-ガラクトノ-1,4-ラクトン 1%
水相:
プロピレングリコール(保湿剤) 2%
PEG−20(感触改良剤) 1%
L-ガラクトノ-1,4-ラクトンデヒドロゲナーゼ 1%
フェノキシエタノール(保存料) 0.4%
水 100%になる量
L-ガラクトノ-1,4-ラクトンデヒドロゲナーゼを、アテロコラーゲン及びグリコサミノグリカンをまた含むマイクロカプセル中にカプセル化した形態で水相に入れる。
これらのマイクロカプセルをエマルジョンを調製した後に残りの成分に入れる。
【0017】
実施例2:クリーム
油相:
トリセテアレス-4ホスフェート/C14−C17 6%
アルキルsecスルホン酸ナトリウム(Hoechst
Celanese社販売のHostacerin CG)(界面活性剤)
ワセリン 2%
鉱物油 4%
ジメチコン 3%
シクロメチコン 3%
ジメチコンポリオール(界面活性剤) 1%
トリクロサン(保存料) 0.1%
L-グロノ-1,4-ラクトン 2%
水相:
プロピレングリコール(保湿剤) 2%
PEG−20(感触改良剤) 1%
L-グロノ-1,4-ラクトンデヒドロゲナーゼ 2%
フェノキシエタノール(保存料) 0.4%
水 100%になる量
L-グロノ-1,4-ラクトンを、アテロコラーゲンとグリコサミノグリカンをまた含むミクロスフィアの形態で組成物中に入れる。
これらのミクロスフィアをエマルジョンを調製した後に残りの成分に入れる。
【0018】
実施例3:トリートメントエマルジョン
A.前駆体を含むエマルジョン
油相:
ステアレス−2(界面活性剤) 3%
ステアレス−21(界面活性剤) 2%
PPG−15ステアリルエーテル(界面活性剤) 29.5%
L-ガラクトノ-1,4-ラクトン 0.5%
水相:
フェノキシエタノール(保存料) 0.5%
水 100%になる量
B.酵素を含むエマルジョン
油相:
ステアレス−2(界面活性剤) 3%
ステアレス−21(界面活性剤) 2%
PPG−15ステアリルエーテル(界面活性剤) 29.5%
水相:
フェノキシエタノール(保存料) 0.5%
L-ガラクトノ-1,4-ラクトンデヒドロゲナーゼ 1%
水 100%になる量
エマルジョンAとBを2つの分離された区画に入れ、皮膚に適用する時に混合する。
【0019】
実施例4:日焼用クリーム
A.ジヒドロキシアセトンエステルを含むエマルジョン
油相:
ステアレス−2(界面活性剤) 3%
ステアレス−21(界面活性剤) 2%
PPG−15ステアリルエーテル(界面活性剤) 29.5%
L-ガラクトース 10%
水相:
フェノキシエタノール(保存料) 0.5%
水 100%になる量
B.リパーゼを含むエマルジョン
油相:
ステアレス−2(界面活性剤) 3%
ステアレス−21(界面活性剤) 2%
PPG−15ステアリルエーテル(界面活性剤) 29.5%
水相:
フェノキシエタノール(保存料) 0.5%
L-ガラクトースデヒドロゲナーゼ 10%
水 100%になる量
エマルジョンを2つの分離された区画に入れ、皮膚に適用する時に混合する。
【0020】
実施例5:スキンケアクリーム
油相:
トリセテアレス-4ホスフェート/C14−C17 5%
アルキルsecスルホン酸ナトリウム(Hoechst
Celanese社販売のHostacerin CG)(界面活性剤)
ステアリルアルコール 1%
ワセリン 2%
鉱物油 4%
フェニルトリメチコン 4%
ジメチコン/ジメチコノル(界面活性剤) 2%
トリクロサン(保存料) 0.1%
L-ガラクトノ-1,4-ラクトン 0.6%
水相:
プロピレングリコール(保湿剤) 2%
PEG−20(感触改良剤) 1%
L-ガラクトノ-1,4-ラクトンデヒドロゲナーゼ 0.5%
フェノキシエタノール(保存料) 0.2%
クロロフェネシン 0.2%
ポリアクリルアミド/C13-C14イソパラフィン 0.6%
/ラウレス-7(Seppic社販売のSepigel305)(ゲル化剤)
水 100%になる量
L-ガラクトノ-1,4-ラクトンを、アテロコラーゲンとコンドロイチン硫酸ナトリウムをまた含むミクロスフィアの形態で組成物に入れる。
これらのミクロスフィアをエマルジョンを調製した後に残りの成分に入れる。
【0021】
実施例6:美白クリーム
A.前駆体を含むエマルジョン
油相:
ステアレス−2(界面活性剤) 3%
ステアレス−21(界面活性剤) 2%
PPG−15ステアリルエーテル(界面活性剤) 9%
セチルアルコール 2%
ワセリン 5%
トリクロサン(保存料) 0.2%
L-ガラクトノ-1,4-ラクトン 1%
水相:
プロピレングリコール(保湿剤) 4%
PEG−20(感触改良剤) 5%
フェノキシエタノール(保存料) 0.5%
水 100%になる量
B.酵素を含むエマルジョン
油相:
ステアレス−2(界面活性剤) 3%
ステアレス−21(界面活性剤) 2%
PPG−15ステアリルエーテル(界面活性剤) 9%
セチルアルコール 2%
ワセリン 5%
トリクロサン(保存料) 0.2%
水相:
プロピレングリコール(保湿剤) 4%
PEG−20(感触改良剤) 5%
フェノキシエタノール(保存料) 0.5%
L-ガラクトノ-1,4-ラクトンデヒドロゲナーゼ 1%
水 100%になる量
エマルジョンAとBを2つの分離された区画に入れ、皮膚に適用する時に混合する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスコルビン酸及び適した担体を含む即時調製用の局所適用組成物であって、
該アスコルビン酸が、L-ガラクトノ-1,4-ラクトン、L-グロノ-1,4-ラクトン、D-グルコロノ-1,4-ラクトン、D-グルクロン酸、D-マンノース、D-ガラクツロン酸、D-グルコース、D-ガラクトース、L-ガラクトース又はその混合物から選択される少なくとも一のアスコルビン酸前駆体を、該前駆体を転化させることのできる少なくとも一の酵素又は少なくとも一の酵素を含む抽出物と接触させることにより調製されることを特徴とする組成物。

【公開番号】特開2006−96767(P2006−96767A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−338496(P2005−338496)
【出願日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【分割の表示】特願2002−41725(P2002−41725)の分割
【原出願日】平成14年2月19日(2002.2.19)
【出願人】(391023932)ロレアル (950)
【Fターム(参考)】