説明

遮光容器

【課題】光変性材料などを取り扱うときに、必要とする光変性材料のみがある部分のみに取出開口が位置するような遮光蓋を備えた遮光容器を提供すること。
【解決手段】遮光容器1は、光を吸収することによって変性するステイン材を収容部7に収容するトレイ2と、収容部7を備えたトレイ面を覆ってステイン材を光から遮断する遮光蓋3とを備えている。遮光蓋3はトレイ面の中心軸Oを軸心としてトレイ面に沿って回動可能に配設され、遮光蓋3の回動に伴う開口8のトレイ面の周方向への移動経路の直下に、収容部7を配置するようにした。収容部7は、中心軸Oを軸心として、同一円周上に複数配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性低粘度レジンのような光変性材料を極力光りから保護することができる遮光容器に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科治療では、歯牙および口腔組織の欠損部の補修や補綴を行う際、歯科医師がコンポジットレジン(以後、CRと表記する)の充填を上記欠損部や補修個所に直接的に行う治療方向(直接法)や、歯科医師が患者口腔内の印象を採得し、その印象に石膏を流して模型を作製し、その模型上で歯科技工士が光硬化型レジンを用いて口腔内欠損部の補綴物を作製し、その補綴物を歯科医師が患者の口腔内に装着する治療方法(間接法)などがある。それらの治療において、患者の審美的な要求に答える為に、歯科医師や歯科技工士は、補綴部位や補綴物の色調を、患者自身の歯牙や口腔組織の色調に近づける。その色調調整方法の一つに、ステイニング法がある。ステイニング法にはセラミックス材料やレジン材料における術式があるが、特に光硬化型レジン材料におけるステイニング法は、様々な色の光硬化性低粘度レジン(ステイン材、歯科充填用色調調整材、高分子系歯冠用着色材料、歯冠用硬質レジンなど)を塗布することで、補綴部位や補綴物の色調を調整する方法である。その材料の使用法は、患者の歯牙の色調に適合させるため、複数色のCRステイン材を練和紙やパレット上に取り出す。そして、そのままの色を用い、または混ぜ合わせることで微妙な調節を行い、筆や探針などを用いて目的部分に塗布する。使用しないときは、遮光性のあるカバーで覆い、CRステイン材を硬化しないようにする。
【0003】
図9に示すように、従来では、シート上の平面パレット51の円形部分に調整した、白を基調とするいくつかの色をひとつの遮光カバー52のみで遮光する方法がとられていた。
また、特許文献1の技術によると、歯科用光重合樹脂材料の収容ケースとして、矩形形状のケース本体の向かい合う長手方向の上側部に沿って、溝状ガイドを設け、該ガイドの延在方向にスライド自在の蓋材を設けたものが開示されている。このようなケースは、遮光性プラスチックで形成され、ケース内に収容された光重合性樹脂は、取出時に蓋材をスライドさせて開放し、ケースの奥にある取出ししない光重合性樹脂は、蓋材によって光りの照射が遮断され、光から保護されるようにしている。
【特許文献1】実開平6−29513号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図4に示すシート状のパレットは、いくつかの色のうち、選択された1つの色を取出しするために遮光カバーを外すと、パレット上の全てのCRステイン材が不必要に環境光にさらされる問題がある。そのため、CRステイン材の使用可能期間が短くなったり、また硬化が早まるため、使用毎に新しいCRステイン材を出さなければならず、材料が無駄に使用されていた。また、再度調節するような場合には、使用毎に微妙な色の調節を行わなければならないので、多くの手間がかかっていた。
特許文献1による技術によると、同一種の光重合樹脂を端部から順に取出す場合は、残りの樹脂を光から保護することができる。しかしながら、歯科用のCRステイン材を使用するときは、複数の色彩のCRステイン材がパレットに配置され、必要とするCRステイン材が、パレットの中央に配置されていることが多々ある。このような場合に、それを筆などで取出すときに、スライド方式の蓋材を用いると、蓋材をパレットの中央まで開放すると、当然、端に配置されているCRステイン材が、光の照射を受けることになる。したがって、ある程度の改善はできるものの、材料の無駄や再度の調節などに手間がかかっていた。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、CRステイン材のような光変性材料などを取り扱うときに、必要とする光変性材料のみがある部分のみに取出開口が位置するような遮光蓋を備えた遮光容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、光を吸収することによって変性する光変性材料を収容部に収容する収容トレイと、前記収容部を備えたトレイ面を覆って前記光変性材料を光から遮断する遮光蓋とを備えた遮光容器において、前記遮光蓋は前記トレイ面に対して、該トレイ面上に沿って移動可能に配設され、前記遮光蓋には、前記トレイ面を臨める開口を設け、前記遮光蓋の移動に伴う前記開口の移動経路途上幅内におけるいずれかの部位の直下に前記収容部を配置するようにした。
上記遮光容器は、前記遮光蓋は前記トレイ面の中心軸を軸心として該トレイ面に沿って回動可能に配設され、前記遮光蓋の回動に伴う前記開口の前記トレイ面の周方向への移動経路途上幅内の直下に前記収容部を配置するようにした。
上記遮光容器の前記収容部は、前記中心軸を軸心として、放射方向へかつ前記中心軸の同一円周上に複数配置することができる。
上記遮光容器は、前記遮光蓋の前記開口に、該開口を閉塞して、光を遮断する開閉自在のシャッタを配設することができる。
上記遮光容器は、前記遮光蓋を前記収容トレイに脱着可能に配設することができる。
上記遮光容器の前記光変性材料は、歯科用の光硬化性低粘度レジンとすることができる。
上記遮光容器の前記遮光蓋は、天面壁と該天面壁から垂下する周壁部とからなり、前記天面壁が前記周壁部に対して回動可能に形成することができる。
上記遮光容器は、収容トレイの底部に人の指の周囲に係合可能なリングを取付けるようにした。
【発明の効果】
【0007】
本発明の遮光容器の遮光蓋は、前記トレイ面に対して、該トレイ面上に沿って移動可能に配設され、前記遮光蓋には、前記トレイ面を臨める開口を設け、前記遮光蓋の移動に伴う前記開口の移動経路途上幅内におけるいずれかの部位の直下に前記収容部を配置するようにしたので、光変性材料を使用しないときは、開口を収容部の無い個所に移動させて、光変性材料の光重合を抑制し、光変性材料を使用するときにのみ開口を収容部にセットすることができるので、必要時にのみ光変性材料を光に露出させることができる。
上記遮光容器の前記遮光蓋は、前記トレイ面の中心軸を軸心として該トレイ面に沿って回動可能に配設され、前記遮光蓋の回動に伴う前記開口の前記トレイ面の周方向への移動経路途上幅内の直下に前記収容部を配置するようにし、回転によって収容部と開口の位置合わせを円滑にできるようになった。
上記遮光容器の前記収容部は、前記中心軸を軸心として、放射方向へかつ前記中心軸の同一円周上に複数配置されているので、複数の光変性材料の取り扱いをすることができる。回転方向に収容部を効率良く多数設けることができる。
上記遮光容器は、前記遮光蓋の前記開口に、該開口を閉塞して、光を遮断する開閉自在のシャッタを配設したので、容器蓋を移動(回動)させても、開口のいずれかの位置にも収容部があるような場合に、シャッタを閉じることによって、開口に位置する収容部の光変性材料の光重合を防止できる。
上記遮光容器は、前記遮光蓋を前記収容トレイに脱着可能に配設するようにしたので、遮光容器の洗浄や、遮光蓋を開閉した状態での光変性材料の取り扱いが容易になる。
上記遮光容器の前記光変性材料は、歯科用の光硬化性低粘度レジンであるので、歯科医師または歯科技工士による光硬化性低粘度レジンの取り扱いが容易になり、作業効率が向上する。
上記遮光容器は、収容トレイの底部に人の指の周囲に係合可能なリングを取付けるようにしたので、さらに遮光容器の取扱者は、遮光容器のある場所へ行き来することなく、光変性材料の取り扱いと作業の効率化の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の第1の実施形態による遮光容器について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明にかかる遮光容器1の分解斜視図であり、遮光容器は、歯科用の光硬化性低粘度レジン(ステイン材、歯科充填用色調調整材、高分子系歯冠用着色材料、歯冠用硬質レジンなど、本実施形態では、CRステイン材とする)を収容する。遮光容器1は、トレイ2と遮光蓋3とからなり、トレイ2は、基部4とトレイ本体5とからなる。基部4は、略円柱体形状であって、材質は合成樹脂、金属、瀬戸物など、光を通さない材質であればよく、本実施形態では黒色の合成樹脂を使用している。
【0009】
トレイ2の上側表面には、基部4の上縁部に沿って、該上縁部に面一にトレイ本体5が配設されている。トレイ本体5は、本実施形態では合成樹脂で形成され、その中央部には円弧面形状に下側へ窪む中央収容部6が形成されている。該中央収容部6の周囲には、間隔を空けて円弧形状に下側へ窪む複数個(本実施形態では5個)の収容部7a(各収容部7a全体を総称して符合7を付す)が形成されている。図2のAに示すように、各収容部7は、中央収容部6の中心、すなわちトレイ2の中心Oから放射状にかつ各収容部7の中心軸が、中心Oの同心円上に位置するようにし、周方向には等間隔を空けて配置されている。各収容部7の径は、一致させているが、図2のBに示すように、各収容部7の径を変えて異なる径の収容部7a〜7eを形成してもよい。このような収容部7は、収容部7a〜7eの中心軸が同心円上に位置させることが好ましい。また、図2のCに示すように、トレイ本体5に収容部7aのない区域を形成してもよい。また、各収容部7の形状は、四角形などの多角形でもよく、形状は問われない。
【0010】
基部4の外周部上側には、雄ネジ9が形成され、該雄ネジ9には、遮光蓋3が螺着することができる。遮光蓋3は、略逆有底円筒形状であって、天面壁3aと該天面壁3aから垂下する周壁部3bとを備えている。図3に示すように、周壁部3bの内周側面には、上述した基部4の雄ネジ9に螺着する雌ネジ10が形成されている。遮光蓋3の材質については、本実施形態では、基部4と同様に、合成樹脂、金属、瀬戸物など、光を通さない材質を用いる必要があり、本実施形態では黒色の合成樹脂を使用している。遮光蓋3は、台形扇形状の開口8を形成し、該開口8の大きさは、収容部7の形状よりも大きく形成されている。開口8の形状は、収容部7に対応した位置に形成されている。すなわち、遮光蓋3を回動させたときに、開口8の経路途上幅内の直下にいずれの収容部7が位置するようにする。開口8の形状は、台形扇形状としたが、円形でもよく、四角形などの多角形状であってもよい。
開口8の縁部には、遮光蓋3の内部側に下向き(トレイ本体側)の、遮光リブ15を形成してもよい。
【0011】
また、トレイ2と遮光蓋3は雄ネジ9と雌ネジ10で螺着させるようにしたが、これらのネジ9,10を省略して、他の構造によってトレイ2と遮光蓋3とを常時、取外しできるようにしてもよい。
図4のA及びBに示すように、トレイ2の外周部にトレイ2の中心側に窪む環状の凹部16を形成し、それと対応する形状で、遮光蓋3の周壁部の内周側面に、遮光蓋3の半径方向内側に突出する突部17を形成してもよい。凹部16と突部17との嵌合、取り外しが可能となって、遮光蓋3はキャップ状に取外しでき、遮光蓋3の回動も可能となる。ただし、遮光蓋3とトレイ2の少なくとも一方の材料を、合成樹脂材などの弾性のある材料にする必要がある。
また、図5のA及びBに示すように、トレイ2の表面の中心部に中心孔18を形成し、遮光蓋3の天面壁3aの内面側中心部に天面壁3aから垂下する軸状部材19を形成してもよい。トレイ2の中心孔18に軸状部材19を差し込むことによって、遮光蓋3をトレイ2に組み付け、取り外しができ、遮光蓋3の回動も可能となる。
【0012】
このような、遮光容器1は、遮光蓋3を外した状態、若しくは遮光蓋3を閉じて開口8と収容部7aのいずれかの位置を一致させた状態で、収容部7aに歯科用のCRステイン材を載せる。ステイン材の微妙な調整を必要とする場合は、患者の歯牙の色に近い種類のステイン材を適宜選択し、複数のステイン材を使用する数に合わせて各収容部7に載せる。そして、トレイ2に遮光蓋3を被せた状態で、必要なステイン材が載せてある収容部7に適宜、遮光蓋3の開口8を合わせ、ステイン材の微妙な調整を行う。このとき、作業中の収容部7aのみが開口8から光を受けるので、いずれの収容部7に収容されているステイン材は、必要な時にのみ開口8が開かれて、最小量の光に照らされるだけである。よって、ステイン材が必要時以外に光が照射されず、光重合によって硬化することが抑制される。また、開口8の縁部には、遮光リブ15を形成しているので、さらに光の侵入を最小限に抑制することができる。
【0013】
図2のCは、トレイ本体5に部分的に収容部7aを形成しない部分を設け、遮光蓋3には、中央部の中央収容部6の対応する位置に、中央開口12を形成している。このように、部分的に収容部7aを形成しない部分11を設けることによって、待機中に各収容部7の全体に光が当たらないようにすることができる。また、中央開口12を設け、中央収容部6において、患者の歯牙の色に最も近いステイン材を調整するようにし、他の収容部7aに調整用の他のステイン材を収容するようにしてもよい。
図6は、遮光蓋3の開口8にシャッタ14を設けている。シャッタ14は、遮光蓋3に形成した図示しないガイド部に沿って、スライドすることができ、開口8を開閉自在にすることができる。シャッタ14には、上方へ突出するノブ14aを設け、歯科医師または歯科技工士はノブ14aを把持して開口8の開閉をすることができる。作業を中断するようなときに、ノブ14aを把持して、シャッタ14を閉塞してステイン材の光重合を抑制することができる。
また、同図6に示すように、開口8の大きさを広角度にして、2個の収容部7aを開口から露出できるようにして、2個の収容部7aを開放してステイン材を調整するようにしてもよい。
このように、本実施形態では、開口8を設けることによって、待機中の収容部7aに収容されているステイン材の光重合による硬化を抑制することができる。遮光容器1の使用後は、遮光蓋3を外して遮光容器1の収容部7などの洗浄を容易に行うことができる。
【0014】
次に、本発明の第2の実施形態について、図7を参照しながら説明する。
本実施形態では、遮光容器21は、トレイ22、遮光蓋23及び支持部材であるリング31とからなる。トレイ22は、円形の平板形状であって、材質は上記実施形態と同じ材質の光を通さない素材であればよい。トレイ22の上側表面には、収容部27a(各収容部27a全体を総称して符合27を付す)が形成されている。各収容部27は、トレイ22の中心Oから放射状に、各収容部27の中心が、中心Oの同心円上に位置するようにし、かつ、周方向に等間隔を空けて配置されている。各収容部27の径は、一致させているが、上記第1の実施形態のように、適宜形状、大きさを変化させてもよい。
【0015】
トレイ22には、遮光蓋23が被せられる。遮光蓋23は、略逆有底円筒形状であって、天面壁23aと該天面壁23aから垂下する周壁部23bとを備えている。遮光蓋23の素材については、本実施形態では、合成樹脂、金属、瀬戸物など、光を通さない材料を用いる必要がある。遮光蓋23には、台形扇形状の開口30を形成し、該開口30の大きさは、収容部27の形状よりも大きく形成されている。開口30の形状は、収容部27に対応した位置に形成されている。すなわち、遮光蓋23を回動させたときに、開口30の経路途上幅内の直下にいずれの収容部27が位置するようにする。開口30の形状は、台形扇形状としたが、上記実施形態の開口8のように、適宜大きさ、形状を変えてもよい。
開口30の縁部には、遮光蓋23の内部側にトレイ本体側へ向く、図示しない遮光リブを形成してもよい。本実施形態では、トレイ22と遮光蓋23を螺着せずに、常時、取外しできるようにしている。
【0016】
トレイ22の底部には、リング31が設けられている。トレイ22とリング31は、リング31の半径方向外側に突出するように支持軸32が取付けられ、該支持軸32によって、トレイ22が支持されている。リング31は帯状の板材から形成され、端部31a,31bは自由端となっている。
リング31は、歯科医師または歯科技工士の指に差し込むために設けられており、その大きさは人の指の大きさ程度に形成されている。しかしながら、指の大きさには個人差があるため、端部31a,31bを巻き込んだり、拡げたりすることでその径を、適宜変更できるように形成されている。
このような遮光容器21は、リング31を歯科医師または歯科技工士の指に差し込むことによって、上述したCRステイン材を調整することができる。調整方法については、上記実施形態と同じ手順ですることができる。歯科医師または歯科技工士は、遮光容器21を身近に備えることによって、効率良く、CRステイン材の調整作業ができる。その他、CRステイン材の光重合を抑制する効果は、上記第1の実施形態と同じである。
【0017】
図8は、本発明の第3の実施形態による遮光蓋の斜視図である。
上記第1及び第2の実施形態においては、遮光容器1のトレイ2,22及び遮光蓋3,23を円形に形成したが、本実施形態では、四角形状に形成した。
図8に示すように、遮光容器41は、トレイ42、遮光蓋43とからなる。遮光容器41は、一方向へ長く延在し、トレイ42の材料は、上記第1の実施形態と同じように光を通さない材料であればよい。平面形状のトレイ42の上部の長手方向中央部には、該長手方向に等間隔を空けて、複数個(本実施形態では5個)の収容部47aが(各収容部全体を総称して符合47を付す)が形成されている。各収容部47は、下方に窪む円弧面形状で複数の各収容部47の径は、一致させているが、上記第1の実施形態のように、適宜形状、大きさを変化させてもよい。トレイ42の上部の長手方向の向かい合う辺には、該辺に沿って溝形状のガイドレール45が形成されている。
【0018】
遮光容器41には、トレイ42の形状に対応させた長四角形状の遮光蓋43が配設されている。遮光蓋43の材質については、本実施形態では、上記実施形態と同様に、合成樹脂、金属、瀬戸物など、光を通さない材質を用いる必要がある。遮光蓋43は、トレイ42のガイドレール45の溝形状に対応させた被ガイド部46を形成し、ガイドレール45に被ガイド部46を嵌合させて、遮光蓋43をトレイ42の長手方向へ摺動可能に形成している。
遮光蓋43の長手方向の中央部には、四角形状の開口48が形成されている。開口48は、収容部47の形状よりも大きく形成されている。遮光蓋43が摺動すると、開口48が各収容部47上に、順次移動することができる。開口48の形状は、本実施形態では、四角形状に形成したが、上記実施形態のように円形でも、その他形状であってもよい。また、開口48には、遮蔽リブを形成してもよい(図示せず)。
このように、遮光蓋43は円形以外の形状であっても、効果的に収容部47に収容されたCRステイン材の光重合を、上記各実施形態と同様に抑制することができる。
なお、本実施形態の場合、開口48を移動させるため遮光蓋を摺動させた際には、収容容器41内にはある程度の量の光が侵入してしまう。したがって、収容部47に収容する光変性材料が高度な光の遮蔽性が求められるものの場合には、前記第1及び第2の実施形態における、遮光容器のトレイ及び遮光蓋を円形する方が、本実施形態のようにこれを四角形状にするよりも好ましい。
【0019】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明の技術的思想に基づいて、勿論、本発明は種々の変形又は変更が可能である。
例えば、上記実施形態では、遮光蓋3,23については、天面壁3a,23aと周壁3b,23bを一体に形成したが、周壁3b,23bに対して天面壁3a,23aを別体に設け、周壁3b,23bに天面壁3a,23aのガイド部を形成し、天面壁3a,23aのみをトレイ2,22に対して回転できるようにしてもよい。
例えば、上記実施形態では、遮光蓋、トレイについて、光を透過しない材料を使用したが、光を透過するものでも、ある特定の波長を遮断するもの、例えば、光変性材料が、紫外線のみに変性するものであれば、紫外線防止フィルタのように、紫外線の透過を抑制するものであれば、透明な材料を使用してもよい。
上記各実施形態では、収容部6,7の形状を円弧面形状としたが、収容部6,7は、窪みではなく、単なる平面であってもよく、この場合は光変性材料が該平面に載せられた箇所が収容部となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施形態による遮光容器のトレイと遮光蓋の分解斜視図である。
【図2】図2のAは、図1の遮光容器の平面図、Bは変形例による遮光容器の平面図、Cは他の変形例の平面図である。
【図3】図1の遮光容器のトレイに遮光蓋が被せられたときの断面図である。
【図4】Aは、本発明の第1の実施形態の別の態様であって、ネジに代えて環状の凹部と環状突部によるはめ込み式の回転部を備えた遮光蓋の分解斜視図、Bは断面図である。
【図5】Aは、本発明の第2の実施形態の別の態様であって、ネジに変えて軸状部材と孔による回転部を備えた遮光蓋の分解斜視図、Bは断面図である。
【図6】本発明の第1の実施形態の遮光容器のさらに他の変形例による遮光容器の分解斜視図である。
【図7】本発明の第2の実施形態の遮光容器の分解斜視図である。
【図8】本発明の第3の実施形態による四角形状の遮光容器であり、Aは遮光蓋が初期位置にある状態の斜視図、Bは遮光蓋をスライドさせた状態の斜視図である。
【図9】従来例による遮光容器の斜視図である。
【符号の説明】
【0021】
1,21,41 遮光容器
2,22 トレイ
3,23 遮光蓋
5 トレイ本体
6 中央収容部
7 収容部
8,12,30,48 開口
14 シャッタ
31 リング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を吸収することによって変性する光変性材料を収容部に収容する収容トレイと、前記収容部を備えたトレイ面を覆って前記光変性材料を光から遮断する遮光蓋とを備えた遮光容器において、
前記遮光蓋は前記トレイ面に対して、該トレイ面上に沿って移動可能に配設され、前記遮光蓋には、前記トレイ面を臨める開口を設け、前記遮光蓋の移動に伴う前記開口の移動経路途上幅内におけるいずれかの部位の直下に前記収容部を配置するようにしたことを特徴とする遮光容器。
【請求項2】
前記遮光蓋は前記トレイ面の中心軸を軸心として該トレイ面に沿って回動可能に配設され、前記遮光蓋の回動に伴う前記開口の前記トレイ面の周方向への移動経路途上幅内の直下に前記収容部を配置するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の遮光容器。
【請求項3】
前記収容部は、前記中心軸を軸心として、放射方向へかつ前記中心軸の同一円周上に複数配置されていることを特徴とする請求項2に記載の遮光容器。
【請求項4】
前記遮光蓋の前記開口に、該開口を閉塞して、光を遮断する開閉自在のシャッタを配設したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の遮光容器。
【請求項5】
前記遮光蓋を前記収容トレイに脱着可能に配設するようにしたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の遮光容器。
【請求項6】
前記光変性材料は、歯科用の光硬化性低粘度レジンであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の遮光容器。
【請求項7】
前記遮光蓋は、天面壁と該天面壁から垂下する周壁部とからなり、前記天面壁が前記周壁部に対して回動可能に形成するようにしたことを特徴とする請求項2〜6のいずれかに記載の遮光容器。
【請求項8】
収容トレイの底部に人の指の周囲に係合可能なリングを取付けるようにしたことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の遮光容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−190782(P2009−190782A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−36134(P2008−36134)
【出願日】平成20年2月18日(2008.2.18)
【出願人】(391003576)株式会社トクヤマデンタル (222)
【Fターム(参考)】