説明

遮水構造

【課題】 上部遮水層に漏水が生じるような損傷が生じても、その損傷箇所を介して下方に漏出した汚水を、下部遮水層との境界に留まらせておくことができる遮水構造を提供する。
【解決手段】 遮水対象物10の内面11に敷設される耐熱性、及び遮水性を有する材料からなる下部遮水層2と、該下部遮水層2の上部に敷設される複数の通孔4を有する熱可塑性材料からなる接合層3と、該接合層3の上部に敷設されるととともに、敷設の際に可塑化された前記接合層3と一体化されるアスファルトコンクリートからなる上部遮水層7とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮水構造に関し、特に、上部遮水層の損傷箇所からの漏水を下部遮水層との境界に留めておくことができる機能を備えた遮水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
遮水対象物(例えば、廃棄物最終処分場)の内面を遮水する遮水工は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(一般廃棄物の最終処分場及び産業廃棄物の最終処分場に係る技術上の基準を定める省令)に構造基準が定められているため、「土質遮水層+遮水シート」、「アスファルトコンクリート層+遮水シート」、「二重の遮水シート」の何れかの遮水工を採用する必要がある。
【0003】
しかし、廃棄物最終処分場を新設するに際して、上記の法律による構造基準を満たしていても、建設予定地の地域住民の環境汚染に対する不安を完全に解消することはできない。
【0004】
このため、近年、上記の構造基準よりも厳しい基準の多層遮水工や漏水検知システムが遮水工として採用され、例えば、「アスファルトコンクリート層+二重遮水シート」、「鉄筋コンクリート層+土質遮水層+二重遮水シート」、「土質遮水層+二重遮水シート」等の組み合わせが遮水工として採用されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−202217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、遮水層を多層に重ね合わせた遮水工であっても、遮水層に漏水が発生するような損傷が生じた場合、損傷した部分を通じて廃棄物から浸出した汚水が下層の遮水層との境界に達し、境界を通じて廃棄物処分場の周辺に拡散するおそれがあり、地域住民の環境汚染に対する不安を完全に解消することができない。
【0007】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、上部遮水層に漏水が発生するような損傷が生じ、損傷した部分からの漏水が下部遮水層との境界に漏出しても、その漏水が境界を通じて周辺に拡散するおれがない遮水構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記のような課題を解決するために、本発明は、以下のような手段を採用している。
すなわち、本発明は、遮水対象物の内面に敷設される耐熱性、及び遮水性を有する材料からなる下部遮水層と、該下部遮水層の上部に敷設される複数の通孔を有する熱可塑性材料からなる接合層と、該接合層の上部に敷設されるととともに、敷設の際に可塑化された前記接合層と一体化されるアスファルトコンクリートからなる上部遮水層とを備えていることを特徴とする。
【0009】
本発明の遮水構造によれば、下部遮水層の上部に敷設された熱可塑性材料からなる接合層は、接合層の上部にアスファルトコンクリートを敷設して上部遮水層を構築する際に、アスファルトコンクリートの熱によって可塑化されるとともに、アスファルトコンクリートの冷却によって固化されることにより、接合層の通孔以外の部分がアスファルトコンクリートと一体化されることになる。
従って、アスファルトコンクリートからなる上部遮水層と下部遮水層との間を、接合層の通孔を介して互いに連通することができるとともに、通孔の周囲に形成された可塑化、固化された部分によってその外側から遮断することができる。
この結果、上部遮水層に損傷が生じ、損傷した部分を通じて漏水が下部遮水層との境界に達しても、その漏水を接合層の通孔内に留まらせることができるので、その漏水が境界を通じて周辺に拡散するのを防止できる。
【0010】
また、本発明において、前記上部遮水層は、アスファルトコンクリートからなるアスファルトコンクリート層と、該アスファルトコンコンクリート層の上部に積層される遮水性を有する材料からなる遮水シート層とを有することとしてもよい。
【0011】
さらに、本発明において、前記下部遮水層は、ベントナイト又はベントナイト混合土からなることとしてもよい。
【0012】
本発明の遮水構造によれば、接合層の通孔の下端を、接合層の下方のベントナイト又はベントナイト混合土からなる下部遮水層によって遮水できるので、上部遮水層からの漏水を通孔内に留めておくことができる。
【0013】
さらに、本発明において、前記下部遮水層は、導電性を有する材料からなるとともに、前記遮水対象物と前記下部遮水層とに、前記上部遮水層の漏水箇所を電気的に検知する漏水検知システムが設けられていることとしてもよい。
【0014】
本発明の遮水構造によれば、上部遮水層に漏水が生じるような損傷が生じた場合、その損傷から漏水が下部遮水層との境界に達しても、接合層の通孔の周囲には、可塑化、固化されて上部遮水層と一体化された部分が設けられ、この部分によって通孔内に漏水を留まらせることができる。そして、上部遮水層の損傷した部分を漏水検知システムによって電気的に検知し、損傷した部分を修理することにより、遮水構造の遮水性能を維持することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上、説明したように、本発明の遮水構造によれば、下部遮水層の上部に敷設された熱可塑性材料からなる接合層は、接合層の上部に上部遮水層を敷設する際に、アスファルトコンクリートの熱によって可塑化されるとともに、アスファルトコンクリートの冷却によって固化されることにより、接合層の通孔以外の部分が上部遮水層と一体化される。従って、接合層の通孔の周囲に、上部遮水層と一体化された部分を設けることができ、この部分によって通孔をその外側から遮断することができるので、上部遮水層の損傷部分を通じて漏出した漏水を接合層の通孔内に留まらせることができ、漏水が下部遮水層との境界を通じて周辺に拡散するのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明による遮水構造一実施の形態の全体を示した概略断面図である。
【図2】図1の部分拡大図である。
【図3】本発明による遮水構造の評価試験に用いる供試体を示した概略図である。
【図4】供試体の解体状況を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。図1及び図2には、本発明による遮水構造の一実施の形態が示されている。本実施の形態の遮水構造1は、一般廃棄物や産業廃棄物を埋め立て処分する廃棄物最終処分場の表面遮水工に適用したものである。
【0018】
すなわち、本実施の形態の遮水構造1は、山間部の谷間等を利用して造成し、或いは地盤を掘削することによって造成した凹状の廃棄物処分場(以下、処分場10という。)の内面11に積層される下部遮水層2と、下部遮水層2の上部に積層される接合層3と、接合層3の上部に積層される上部遮水層7とを備えている。
【0019】
なお、必要に応じて、処分場10の内面11に砕石等を敷設することにより、処分場10の内面に所定の厚さの砕石層(図示せず)を積層し、この砕石層の上部に下部遮水層2を積層するように構成してもよい。
【0020】
下部遮水層2は、導電性、耐熱性、及び遮水性(止水性)を有する材料からなるものであって、本実施の形態においては、下部遮水層2の材料にベントナイト又はベントナイト混合土を用いている。
【0021】
なお、下部遮水層2を構成する材料は、ベントナイト又はベントナイト混合土に限らず、導電性、耐熱性、及び遮水性(止水性)を有するものであればよく、例えば、高分子系の材料等によって下部遮水層2を構成してもよい。
【0022】
接合層3は、複数の通孔4を有する熱可塑性材料からなる所定の厚さの袋状の部材からなるものであって、この袋状の部材の内部に下部遮水層2を構成する材料(ベントナイト又はベントナイト混合土)を充填することにより、下部遮水層2及び接合層3を処分場10の内面に敷設している。
【0023】
接合層3を構成する袋状の部材は、接合層3の上部に敷設される後述する上部遮水層7の水密アスファルトコンクリート8aの撒出しの際の熱(140〜160℃)によって可塑化可能な材料であって、例えば、各種の熱可塑性樹脂材(ポリエチレン、EVA樹脂、ポリプロピレン、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、塩化ビニル樹脂、メタクリル樹脂等)、ゴム等の高分子材等から構成されている。なお、本実施の形態においては、ポリプロピレン製の織布又は不織布によって接合層3を構成している。
【0024】
ポリプロピレン製の織布又は不織布によって接合層3を構成し、この接合層3の内部に下部遮水層2のベントナイト又はベントナイト混合土を収納することにより、下部遮水層2の上部に積層される接合層3の上面側の部分(上側の接合層3a)の、織布又は不織布の繊維によって囲まれる網目状の部分に、織布の表裏面を貫通する通孔4を形成することができ、この通孔4を介して下部遮水層2と上部遮水層7とを互いに連通させることができる。
なお、ここで、通孔4とは、上部遮水層7からの漏水を通水させることが可能な大きさ、形状の孔、隙間、又は開口を意味する。
【0025】
ポリプロピレン製の織布又は不織布は、通孔4の周囲を囲む繊維が接合層3(上側の接合層3a)の上部に敷設される上部遮水層7の水密アスファルトコンクリート8aの熱によって可塑化されることにより、水密アスファルトコンクリート8aと接合されるとともに、水密アスファルトコンクリート8aが冷却されることによって固化され、水密アスファルトコンクリート8aと一体化される。
【0026】
なお、本実施の形態においては、下部遮水層2及び接合層3として、ポリプロピレン製の袋状の部材の内部にベントナイトを収納したベントナイトマット(商品名;ボルクレイ・マット、セトコ社(アメリカ合衆国))を使用し、このベントナイトマットを処分場10の内面11の全体に隙間なく敷設することにより、処分場10の内面11に下部遮水層2を敷設し、その上部及び下部に接合層3(上側の接合層3a、下側の接合層3b)を敷設している。
【0027】
下部遮水層2及び接合層3にベントナイトマットを使用することにより、処分場10の内面11に下部遮水層2と接合層3とを同時に敷設することができるので、下部遮水層2と接合層3とを別個に施工する場合に比べて、処分場10への遮水工の施工効率を高めることができる。また、ベントナイトマットは、6mm程度の厚さの袋状の部材なので、処分場10の内面11に敷設しても処分場10の容積を圧迫するようなことはない。
【0028】
なお、ベントナイトマットを使用せずに、処分場10の内面11に、ベントナイト又はベントナイト混合土を敷設することにより下部遮水層2を積層し、下部遮水層2の上部に、ポリプロピレン製のシート状の部材を敷設することにより、下部遮水層2の上部に接合層3を積層するように構成してもよい。
【0029】
上部遮水層7は、水密アスファルトコンクリート8aからなるものであって、上側の接合層3a(以下、接合層3aという。)の上部に水密アスファルトコンクリート8aを140〜160℃の温度で撒き出し、敷き均し、転圧することによって所定の厚さに形成される。
【0030】
上部遮水層7の水密アスファルトコンクリート8aの撒き出しの際の熱(140〜160℃)により接合層3aの繊維が可塑化され、上部遮水層7の水密アスファルトコンクリート8aと接合されるとともに、水密アスファルトコンクリート8aの冷却によって可塑化された繊維が固化され、接合層3aの繊維と上部遮水層7の水密アスファルトコンクリート8aとが一体化される。
【0031】
上部遮水層7と接合層3aの繊維とが一体化されることにより、接合層3aの通孔4の周囲が可塑化、固化され、その部分に通孔4をその外側から遮断する遮断部5が形成される。この遮断部5により、上部遮水層7から漏出した汚水が上部遮水層7と接合層3aとの境界6、及び接合層3aと下部遮水層2との境界13に達した場合に、その汚水を通孔4の内部に留めておくことができ、汚水が通孔4の外側に拡散するのを防止できる。
【0032】
上部遮水層7は、水密アスファルトコンクリート層8のみによって構成してもよいし、水密アスファルトコンクリート層8の上部に遮水性を有する材料(各種の合成樹脂材、ゴム等)からなる遮水シート9aを敷設し、水密アスファルトコンクリート層8と遮水シート層9の二重遮水構造としてもよい。
【0033】
本実施の形態の遮水構造1は、上部遮水層7の漏水箇所を電気的に検知する漏水検知システム(図示ぜず)を備えており、また、下部遮水層2は、導電性を有する材料から構成されているので、上部遮水層7に漏水が生じるような損傷が生じた場合、上部遮水層7と下部遮水層2との間での通電の有無を検知することにより、上部遮水層7の損傷箇所を検知することができる。漏水検知システムとしては、特開2000−351541号に記載されている漏水検知システム等、公知の各種の漏水検知システムを使用することができる。
【0034】
なお、上部遮水層7の漏水箇所を検知する必要がない場合には、漏水検知システムを設置する必要はなく、また、下部遮水層2を導電性を有する材料で構成する必要もない。
【0035】
上記のように構成した本実施の形態の遮水構造1は、上部遮水層7に漏水が生じるような損傷が生じた場合、廃棄物12から浸出した汚水が損傷した部分を通じて下方に漏出し、上部遮水層7と接合層3aとの境界6に達するとともに、接合層3aの通孔4を通じて接合層3aと下部遮水層2との境界13に達する。
【0036】
そして、境界6、及び境界13に達した汚水は、遮水性を有する下部遮水層2によって下方への漏出が阻止されるため、境界6、及び境界13を通じて処分場10の周辺に拡散しようとするが、接合層3aの通孔4の周囲には、上部遮水層7の水密アスファルトコンクリート8aによって可塑化、固化され、上部遮水層7と一体化された遮断部5が形成されているので、この遮断部5によって汚水を通孔4内に留めることができる。また、汚水が通孔4を通じて境界13まで達しても、その汚水を下部遮水層2のベントナイトが膨潤することによって吸水できるので、汚水が境界13を通じて処分場10の周辺に拡散するのを防止できる。
【0037】
そして、通孔4内に汚水を留まらせた状態で、漏水検知システムを作動させ、上部遮水層7の損傷箇所(漏水箇所)を電気的に検知し、損傷箇所を修理することにより、上部遮水層7の遮水性能を回復することができ、境界6及び境界13を通じて汚水を処分場10の周辺に拡散させることなく、処分場10を遮水する遮水工としての機能を維持することができる。
【0038】
以下に、本発明による遮水構造の評価試験の結果を示す。なお、この評価試験においては、下部遮水層2及び接合層3にベントナイトマットを使用している。
(1)供試体作製及び試験方法
水密アスファルトコンクリート(以下、水密アスコンという。)下にベントナイトマットが敷設されている場合、水密アスコンの遮水性へ及ぼす影響を評価するために、ベントナイトマットの敷設の有無による転圧後のひび割れ状態、及び密度、たわみ性を比較した。
試験に用いる供試体は、図3に示すように、鋼製型枠15内に砕石層16を95%の締固度で転圧した上にベントナイトマット17を敷設した状態、敷設しない状態で、遮水性を確保するために必要な密度に相当する量の水密アスコン8aを敷き均して、ローラコンパクタ試験機で転圧して作製した。
【0039】
アスファルトには改質II型を使用した。ベントナイトマットを敷設した場合において、ベントナイトマットの重ね合わせ部の有無の双方に対して供試体を作製した。たわみ性評価のために、ベントナイトマット敷設無しの供試体、ベントナイトマットを敷設した供試体(重ね合わせ部無し)と、比較のために別途作製した密粒度アスコンに対して曲げ試験を実施した。曲げ試験は、舗装調査・試験法便覧「B005曲げ試験方法」に従い実施した。
【0040】
(2)供試体作製後の目視観察結果
ベントナイトマットが敷設された場合の水密アスコンの表面は、ベントナイトが敷設されていない場合と同様に、ひび割れ等の不具合は認められず良好な表面性状であった。また、ベントナイトマットの重なりにより、水密アスコン下面に段差が生じている部分においても、水密アスコンはベントナイトマットの形状に充填されており、ベントナイトマットと水密アスコン層の間は完全に密着した状態になっていた。また、ベントナイトマットと水密アスコンの接着状態も良好であり、ベントナイトマット自体の変状もみられなかった。
【0041】
(3)供試体の密度測定結果
ベントナイトマットが敷設された場合とされない場合の水密アスコンの密度の違いを把握するため、コアボーリングによりコアを採取して密度の測定を行った。密度測定結果を表1に示す。また、ベントナイトマットを敷設した場合の供試体の密度は、敷設しない場合の供試体の密度と比べてわずかに低い締め固め度となっており、1%程度の締め固め度の差が生じていたが、透水性には全く問題がなかった。なお、ベントナイトマットの重ね合わせ部と一般部に水密アスコンの密度の差異は認められない。
【0042】
【表1】

【0043】
室内試験結果では、ベントナイトマット上に水密アスコンを敷設して転圧しても混合物層の表面にはひび割れ等の不具合は認められなかったことから、施工中のベントナイトマットのズレ等がない限り、マットの有無による水密アスコンの仕上がり面への影響ないものと考えられる。しかし、水密アスコンは、ベントナイトマットが敷設されたことにより、わずかに締め固密度が低くなる傾向が認められたが、空隙率は2%以下となっているため、締め固めの作業を確実に行えば、ベントナイトマット上の水密アスコンには大きな問題はないものと判断できる。
【0044】
(4)曲げ試験の結果
砕石層上に敷設したベントナイトマット上で締め固めた水密アスコンのたわみ性を検証するために、低温時における曲げ試験を行った。比較のために、一般的な密粒度アスコンに対しても実施した。曲げ試験結果を表2に示す。曲げ破断ひずみは、3種類ともほぼ同程度となり、たわみ性に関して、ベントナイトマットの影響は受けていない結果が得られた。
【0045】
【表2】

【0046】
(5)水密アスコン敷設後のベントナイトマットの性能
高温の水密アスコンが敷設された後のベントナイトマットの遮水性に影響がないか検証するために、試験後に供試体を解体して、ベントナイトマット内のベントナイトの膨潤性能等を確認した。ベントナイトマットの規格値と試験後の試験結果を表3に示す。
【0047】
【表3】

【0048】
図4に示す解体状況から、水密アスコンとベントナイトマットは密着していることがわかる。水密アスコン敷設後のベントナイトマット内のベントナイトはすべて規格値内で変質は認められなかった。
【0049】
さらに、解体したベントナイトマットに対して透水試験を実施した。透水試験は、試験装置にベントナイトマットを一週間放置して飽和させた後に実施した。試験開始90分後に測定された透水係数は平均値でk=1.3×10−9cm/sであり、ベントナイトマットの透水性能に変化は認められなかった。
【0050】
上記の評価試験の結果から、水密アスコン下にベントナイトマットが採用された場合に、その上に施工される水密アスコンに締め固め不足等の不具合が生じるか、また、150〜160℃のアスコンがベントナイトマット上で締め固められることにより、マットの遮水性能が低下しないか室内試験より評価したが、両者の遮水性能は変化しないことが確認できた。
【0051】
なお、前記の説明においては、本発明の遮水構造を廃棄物処分場に適用したが、その他の遮水対象物に本発明の遮水構造を適用してもよいものであり、その場合にも、同様の作用効果を奏する。
【符号の説明】
【0052】
1 遮水構造
2 下部遮水層
3 接合層
4 通孔
5 遮断部
6 境界
7 上部遮水層
8 水密アスファルトコンクリート層
8a 水密アスファルトコンクリート
9 遮水シート層
9a 遮水シート
10 処分場
11 内面
12 廃棄物
15 鋼製型枠
16 砕石層
17 ベントナイトマット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮水対象物の内面に敷設される耐熱性、及び遮水性を有する材料からなる下部遮水層と、該下部遮水層の上部に敷設される複数の通孔を有する熱可塑性材料からなる接合層と、該接合層の上部に敷設されるととともに、敷設の際に可塑化された前記接合層と一体化されるアスファルトコンクリートからなる上部遮水層とを備えていることを特徴とする遮水構造。
【請求項2】
前記上部遮水層は、アスファルトコンクリートからなるアスファルトコンクリート層と、該アスファルトコンクリート層の上部に積層される遮水性を有する材料からなる遮水シート層とを有することを特徴とする請求項1に記載の遮水構造。
【請求項3】
前記下部遮水層は、ベントナイト又はベントナイト混合土からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の遮水構造。
【請求項4】
前記下部遮水層は、導電性を有する材料からなるとともに、前記遮水対象物と前記下部遮水層とに、前記上部遮水層の漏水箇所を電気的に検知する漏水検知システムが設けられていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の遮水構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−17594(P2012−17594A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−155067(P2010−155067)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】