説明

選別装置

【課題】搬送帯の交換や搬送帯間の間隔調整などのメンテナンス作業を効率的に行うことができるとともに、作業能率に優れたレイアウト配列とすることができる選別装置を提供する。
【解決手段】回転軸21〜26に掛架した無端状の搬送帯30間に形成される選別対象物載置用の各平行間隙幅Hを、選別サイズ以下の選別対象物が落下する幅H1〜H6に設定した選別用コンベア13a〜13dを順次多段に連結して、回転軸21〜26の少なくとも一の位置を移動させるためのハンドル25c、26cとカム板25b、26bとを有した軸移動手段を備えるように選別装置10を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、果実や野菜等の選別対象物を複数のサイズごとに選別する選別装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、果実等の選別対象物を大中小などのサイズごとに選別する選別装置として、複数列のコンベアベルトなどの搬送帯を互いに間隔をおいて平行配列して、この隣接するコンベアベルト間に挟まれて搬送されるサイズの異なる選別対象物をベルト間隙から振り分けて落下させるようにしたものが知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、対向する一対の回転筒体間に巻回した無端状の搬送帯を所定間隔をあけて複数条平行に配設して、各平行間隙幅を所望する選別サイズ以下の選別対象物が落下する幅にそれぞれ設定した複数の選別用コンベアを順次多段に連結した選別装置が記載されている。すなわち、この選別装置は、左右の搬送帯の上部に選別対象物を順次間隔を開けながら1個ずつ載置すると、搬送帯によって選別対象物を機枠の前側から後側に向けて搬送し、搬送途中において選別対象物のサイズよりも左右の搬送帯間の間隙幅の方が広くなった地点で搬送帯間の間隙から選別対象物を前後に区画した選別室に落下させ、これにより選別対象物を複数のサイズごとに選別するようになっている。
【0004】
また、特許文献2には、同一速度にて走行する数乃至数十列のコンベアベルトの間に、速度の異なる数乃至数十列のコンベアベルトを前記コンベアベルトと交互に同軸配列して同一方向に走行できるようにするとともに、この速度の異なるコンベアベルトの間隙を被選別物の大きさに応じて設定したコンベアを、前記コンベアベルトの間隙の小さなものから大なるものへ順に数段階設けて、被選別物を間隙の小なるものの方向から大なるものの方向へ走行させることにより、前記速度の異なるコンベアベルトの速度差によって生じる被選別物の回転及び方向転換によって、被選別物を前記コンベアベルトの間隙より落下させ、被選別物を大きさ順に選別することを特徴とする里芋等楕円球状果物の大きさ選別機が記載されている。
【特許文献1】特開2004−113889号公報
【特許文献2】特開昭62ー160175号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1や特許文献2に記載の従来の選別装置にあっては、選別対象物を搬送する搬送帯の張力を効果的に緩和調整する手段を備えていないので、搬送帯の交換や搬送帯間の間隔調整などのメンテナンス作業を効率的にできず、その生産性などが阻害されるといった問題があった。
【0006】
また、選別装置の搬送帯が掛架される回転軸は、その両端が選別装置本体の機枠に対して支持されているので、これによって狭い工場スペースなどへの選別機のレイアウトが制約されるとともに、メンテナンスなどの作業能率に優れた配列とすることが困難となるという問題もあった。
【0007】
さらに、従来の選別装置にあっては、長尺状の搬送帯を用いて選別対象物を搬送していたため、選別対象物の重量で搬送帯が中途部で撓み、これにより左右の搬送帯間の間隙幅が広がることがあった。そのため、本来ならば選別対象物のサイズよりも左右の搬送帯間の間隙幅の方が狭い地点で誤って搬送帯間の間隙から選別対象物が選別室に落下してしまい、これによって選別精度が低下するおそれもあった。
【0008】
本発明は、搬送帯の交換や搬送帯間の間隔調整などのメンテナンス作業を効率的に行うことができるとともに、狭い工場スペースなどであっても作業能率に優れたレイアウト配列とすることができる選別装置を提供することを目的とする。また、果実や野菜等の選別対象物を複数のサイズごとに精度よく選別して、その商品価値を損なうことのない選別装置を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記問題点を解決するためになされた本発明の選別装置は、複数の回転軸間に掛架した無端状の搬送帯を、所定間隔をあけて複数条平行に配設して果実や野菜などの選別対象物を載置搬送可能とし、前記複数の搬送帯間に形成される選別対象物載置用の各平行間隙幅を、所定の選別サイズ以下の選別対象物が落下する幅に設定して選別用コンベアを構成するとともに、前記選別対象物載置用の平行間隙幅を、所定幅宛漸次拡幅した複数の選別用コンベアを、順次多段に連結して選別対象物を複数のサイズごとに選別可能とした選別装置において、前記複数の回転軸の少なくとも一の位置を移動させる軸移動手段を備え、この軸移動手段により、対向する回転軸間距離を縮めて前記搬送帯の張力を緩和可能としたことを特徴とする。
(2)本発明は前記(1)の選別装置において、前記移動手段は、前記選別用コンベアの側枠に設けられ、前記回転軸を挿通する長孔と、前記回転軸に当接したカム板と、このカム板をカム軸廻りに回転可能としたハンドルとを備えることにも特徴を有している。
(3)本発明は前記(1)又は(2)の選別装置において、前記回転軸を、一側に配設した軸受けにより片持ち支持したことにも特徴を有している。
(4)本発明は前記(3)の選別装置において、前記軸受けで支持された軸端部と反対側の回転軸端部側から、前記搬送帯を前記回転軸に掛架自在並びに当該回転軸から取り外し自在としたことにも特徴を有している。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数の回転軸の少なくとも一の位置を移動させる軸移動手段により対向する回転軸間距離を縮めて搬送帯の張力を緩和可能としているので、搬送帯の交換や搬送帯間の間隔調整などのメンテナンス作業を効率的に行うことができる。
【0011】
さらに、各選別用コンベアにおいて選別対象物を搬送帯によって搬送しながら、選別対象物載置用の平行間隙幅よりもサイズの小さな選別対象物を選別対象物載置用の平行間隙より落下させることによって選別する。他方、選別対象物載置用の平行間隙幅よりもサイズの大きな選別対象物は落下させずにそのまま搬送し、次段の選別用コンベアに引き継がれ、搬送と選別とを繰り返して選別対象物を複数のサイズごとに精度よく選別可能とすることができる。しかも、搬送帯を、所定間隔を保持して複数条平行に配設したことにより、選別対象物を同時に多数搬送可能とするとともに、選別対象物を選別する効率を上げることができ、短時間に多くの選別対象物を複数のサイズに選別できる。
【0012】
例えば、プチトマトや苺などの選別対象物を搬送する際に、搬送帯の上方から制御板を垂下させるように設けることによって、制御板位置において選別対象物は一時滞留するとともに、載置姿勢を常に変えながら搬送され選別対象物と選別対象物載置用の平行間隙との位置関係をいろいろに変化させることができる。こうして、様々な載置姿勢において選別対象物載置用の平行間隙幅より選別がかけられることになり、選別対象物載置用の平行間隙により、選別する選別対象物の形などが不揃いであってもその対象位置を等しくして選別精度の高い選別も可能となる。
【0013】
また、互いに隣接する2本の搬送帯で選別対象物を載置搬送可能とするとともに、2本の搬送帯間に形成した選別対象物載置用の平行間隙を利用して選別対象物をサイズで選別することができるようにしており、しかも、選別対象物を搬送・選別する際、2本の搬送帯で選別対象物を載置搬送することに加え、選別対象物を搬送帯の丸い形状で支持することによって、選別対象物との接触面積を最小限に抑えて選別対象物に傷を発生させることなく選別対象物の商品価値を高く維持することができる。
【0014】
また、本発明は、移動手段は選別用コンベアの側枠に設けられ、回転軸を挿通する長孔と、前記回転軸に当接したカム板と、このカム板をカム軸廻りに回転可能としたハンドルとを備えることもできるので、選別用コンベア毎に配置されたハンドルを操作することによってカム板や長孔を介して支持された回転軸を移動させることで搬送帯間隔の設定作業やメンテナンス作業を選別用コンベア毎に効率よく行うことができる。
【0015】
さらに本発明は、前記回転軸を軸受けにより片持ち支持するように配置することもできるので、非支持側が開放されて他の装置などとの干渉が少なくでき、そのメンテナンス作業を容易に行うことができる。
【0016】
本発明は、片持ち支持された回転軸から搬送帯を掛架自在並びに取り外し自在としているので、かかる構成からも、メンテナンス性が著しく向上し、しかも、狭い工場スペースなどであっても作業能率に優れたレイアウト配列として生産性に優れた選別装置とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明に係る選別装置は、複数の回転軸間に掛架した無端状の搬送帯間に形成される選別対象物載置用の各平行間隙幅を、選別サイズ以下の選別対象物が落下する幅に設定した選別用コンベアを順次多段に連結して、複数の回転軸の少なくとも一の位置を移動させる軸移動手段を備えるように構成されている。
【0018】
搬送帯は、プーリ状やローラ状に形成された複数の回転軸に巻き回されて周回走行するその断面が円形状の無端ベルトであって、ゴム素材やプラスチック素材、チェーン状の金属材あるいはこれらを組み合わせた複合材などによって形成することができる。なお、無端ベルトの断面は円形状が好ましいが、必ずしも円形に限定されるものではなく、ベルトは、例えば平板状であってもよい。搬送帯となる無端ベルトの断面が平板状にした場合、その幅を変えることで、隣接配置される搬送帯間の平行間隙幅を所定値に設定することもできる。
【0019】
回転軸は、選別装置本体の機枠にその一端もしくは両端が回転自在に支持され、無端状の搬送帯に対して、少なくとも2以上が配置されるローラ状部材である。このローラ状部材の円筒状表面には、複数の搬送帯を周回させるための溝部が等間隔で形成され、隣接する搬送帯間の平行間隙幅が所定値に固定されるようにしている。回転軸には、電動モータなどからその動力が伝達される動力用回転軸と、搬送帯を介して搬送される選別対象物などを直接支持するための搬送用回転軸とがある。搬送用回転軸はその選別対象物の搬送面が、これら複数の搬送用回転軸を互いにその高さが少しずつ異なる凹凸状や、全体が上流側から下流側に向かって上昇又は下降する傾斜状に設定することもできる。これら搬送面の状態を組み合わせて複数の回転軸を配列することによって、例えば、中途に設けたローラ状部材に選別対象物を軽く衝突させて向きを変化させたり、あるいは、搬送帯を介して上流側から下流側に搬送される選別対象物の動きを上下方向などに変化させることで搬送帯間の平行間隙にサイズ以下の選別対象物を効率的に落下させることができ、その選別精度を高めることができる。
【0020】
なお、回転軸を選別装置本体の機枠の一側に配設した軸受けにより片持ち支持することで、他の装置などとの干渉を少なくして、搬送体の取替えなどのメンテナンス作業を容易に行うことができるようにすることが好ましい。このように、軸受けで支持された軸端部と反対側の回転軸端部側から、搬送帯を回転軸に掛架自在並びに当該回転軸から取り外し自在とすることで、狭い工場スペースなどであっても作業能率に優れたレイアウト配列とすることもできる。
【0021】
選別用コンベアは、これら複数の搬送帯を互いに所定の平行間隙幅を有して配列して構成したものであり、走行する搬送帯を介して搬送される平行間隙幅以下の選別対象物が隣接する搬送帯間に落下して下部に配置された回収部にシュータなどを介して収納されるようになっている。搬送コンベアは上流側から下流側に向かって複数のものが多段に連結配置され、各搬送コンベアにおける搬送帯の平行間隙幅がその段毎に順次段階的に拡大するように設定されている。これによって、各搬送コンベアの下部に設けられた回収部を介してその収容箱にそれぞれ所望の大きさに選別された選別対象物が収納される。
【0022】
軸移動手段は、選別用コンベアにおける複数の回転軸の少なくとも一の位置を移動させることで回転軸間距離を縮めて搬送帯の張力を緩和させるための手動又は電動機構などである。手動機構からなる軸移動手段は、例えば、選別用コンベアの側枠に設けられ回転軸を挿通して移動自在に支持するための長孔と、この長孔に支持された回転軸に当接するカム板をカム軸廻りに回転可能としたハンドルとを備えるようにして構成することができる。
【0023】
選別装置は、前後方向に向けて伸延させた矩形箱枠状の機枠を形成し、同機枠の前端部に複数の選別対象物を収容することができる供給部を配設し、同供給部の後方に選別対象物を搬送しながらそれぞれのサイズごとに選別するための複数の選別用コンベアが配設され、各選別用コンベアの下方に複数のサイズごとに選別された選別対象物をそれぞれ回収するための回収部が配設されたものである。
【0024】
各選別用コンベアC1、C2、C3・・は、選別対象物をそれぞれ所望のサイズ、例えば、S・M・L・LL等のように大きさの異なるサイズごとにそれぞれ選別可能とする平行間隙幅H1、H2、H3・・・が隣接する搬送帯間に形成されている。そして、これらの選別用コンベアをSサイズの選別対象物を選別する選別用コンベアから順次多段に連結して全体が構成されている。
【0025】
すなわち、複数の回転軸間に巻回した無端状の搬送帯を選別用コンベアC1、C2、C3・・毎にそれぞれ漸次広がるように異なる平行間隙幅H1、H2、H3・・をあけて複数条平行に配設して、これらの選別用コンベアC1、C2、C3・・・を順次連結して選別装置の選別部が構成される。こうして、サイズの異なる選別対象物を複数のサイズごとに各選別用コンベアの下部にそれぞれ設けられた回収部に選別可能としている。
【0026】
このように、選別部を構成する各選別用コンベアは、対向する一組の回転筒体間に無端状の搬送帯を巻回して構成される。しかも、各選別用コンベアにおける隣接する複数条の搬送帯は、選別幅に合わせた所定間隔をあけて平行に配設されており、搬送帯間に形成された間隙に選別対象物を載置可能とし、回転軸を回転させることによって搬送帯を周回させ、搬送帯上及び隣接する搬送帯間に載置した選別対象物を搬送可能としている。
【0027】
しかも、選別用コンベアの搬送帯を、断面視形状が円形の丸帯とすることにより、搬送帯と選別対象物との接触面積を小さくすることができ、搬送時において選別対象物と搬送帯とが接触することによって選別対象物が傷ついてその品質が劣化するのを最小限に留めることができる。
【0028】
また、選別部は上述したように、選別対象物載置用の平行間隙幅を所定幅宛漸次拡幅した複数の選別用コンベアを順次多段に連結して構成している。なお、搬送帯間に形成される選別対象物載置用の平行間隙幅H1、H2,H3・・(但しH1<H2<H3<・・の順)は、例えば、各選別用コンベアにおける搬送帯の配置数を異ならせたり、搬送帯の幅を増減させたりすることでそれぞれの選別用コンベア毎に設定することができる。
【0029】
そして、実際に選別対象物を選別するにあたっては、搬送帯間に形成される平行間隙幅Hが最も小さい1段目の選別用コンベアから選別対象物を供給する。こうして供給された選別対象物は、周回する搬送帯によって搬送されるわけであるが、この時、搬送帯間に形成された平行間隙幅Hよりも小さいサイズの選別対象物は間隙を通り抜けることができるので間隙より落下して選別される。一方、平行間隙幅Hよりも大きい選別対象物は、間隙を通り抜けることができないので選別されることなく周回する搬送帯によって引き続き搬送され、次段の選別用コンベアに引き継がれる。
【0030】
したがって、各選別用コンベアにおける搬送帯間に形成される間隙、すなわち選別対象物載置用の平行間隙幅Hを、それぞれ所望するサイズ(S,M,L,LLなど)以下の選別対象物を落下させる幅に設定することによって、前記選別対象物載置用の平行間隙幅よりも小さいサイズの選別対象物は、選別対象物載置用の平行間隙を通り抜けて搬送帯から落下し、選別されることになる。
【0031】
一方、前記選別対象物載置用の平行間隙幅よりも大きいサイズの選別対象物は、選別対象物載置用の平行間隙を通り抜けることができないため、ここでは選別されることなく周回する搬送帯によって引き続き搬送され、次段の選別用コンベアに引き継がれ、引き継がれた2段目の選別用コンベアにおいて再度選別される。
【0032】
すなわち、2段目の選別用コンベアに設定された選別対象物載置用の平行間隙幅により、1段目の選別用コンベアの間隙幅よりも大きく、2段目の選別用コンベアの間隙幅よりもサイズが小さい選別対象物は落下選別されるのである。そして、それ以外の選別対象物は、引き続き搬送されて次段の選別用コンベアに引き継がれる。
【0033】
このように本実施の形態に係る選別装置によれば、多段に連結したそれぞれの選別用コンベアC1、C2、C3・・において搬送と選別を繰り返しながら、最後段の選別用コンベアにおける搬送を終了するまでに、選別用対象物を複数のサイズごとに選別することができる。
【0034】
また、各選別用コンベアによって、それぞれのサイズごとに選別された選別対象物は回収部に引き渡される。回収部は各選別用コンベア毎に設けたシュータと、各シュータの下方に配置した収容箱とから構成されており、選別された選別対象物は前記シュータにより案内されて収容箱へ確実に収容される。このようにして、各選別用コンベアにおける選別対象物載置用の平行間隙によって所望するサイズごとに選別された選別対象物を、それぞれサイズごとにその下部に設けられた収容箱にそれぞれ収容することができる。
【0035】
また、上記構成では、多段に設けられた各選別用コンベア毎に搬送帯を巻回しているので、搬送帯は短くてよく、搬送帯に撓みを生じることを防止することができる。
【0036】
上述してきた実施の形態における選別装置では、選別対象物として球状の野菜や果実に好適に用いることができるが、例えば、苺等のように形に偏りを有する選別対象物を選別する場合には、前記選別用コンベアに代えて、選別対象物載置用の平行間隙を形成する一対の搬送帯の搬送速度を相互に異ならせた選別用コンベアを用いることもできる。
【0037】
すなわち、選別対象物載置用の平行間隙を形成する一対の搬送帯の搬送速度を相互に異ならせることにより、搬送される選別対象物の載置姿勢を矯正可能として、選別対象物と選別対象物載置用の平行間隙との位置関係をいろいろに変化させることができるため、選別対象物載置用の平行間隙により選別する選別対象物の対象位置を全ての選別対象物について等しくして選別精度の高い選別を可能とするのである。
【0038】
また、サクランボのように果梗を有する選別対象物を選別する場合には、互いに連結される選別用コンベア間や各選別用コンベアの搬送帯にその下端が垂下して、選別対象物の向きを所定方向に矯正するための矯正パネルを配設して用いると良い。かかる矯正パネルを用いると、選別対象物が搬送される際、選別対象物の本体部分が搬送帯と矯正パネル下端との幅内に限定され、選別対象物の果梗は搬送帯間に挟持されることはなく重力によって選別対象物載置用の平行間隙間に垂れ下がることになる。
【0039】
したがって、選別対象物の果梗が搬送帯間に挟持されることを防止して、選別対象物の果梗が選別に支障をきたして正確な選別を阻止することをなくし、安定して正確な選別を可能とするとともに、選別対象物から果梗がとれることを防止して選別対象物の商品価値を高く維持することができる。
【0040】
以下、本発明に係る選別装置10の一実施形態を図面に基づき、より具体的に説明する。図1は選別装置の平面図、図2は同正面図、図3は同背面図、図4は同側面図、図5は軸移動手段の説明図である。
【0041】
本実施形態に係る選別装置10は、前後方向に向けて伸延させた矩形箱枠状の機枠11の一側端部(図1においては右側端部)に多数の選別対象物Bを収容することができる供給部12を配設している。選別対象物Bとしては、すもも、トマト、ミカン、キンカンなどの球状の果実や野菜を選別に好適な対象物とすることができるが、ここではプチトマトを例にして説明する。
【0042】
機枠11内には、選別対象物Bを搬送しながら複数のサイズに選別するための4基の選別用コンベア13a〜13dからなる選別部13を配設するとともに、選別部13の下方に選別された選別対象物Bを複数のサイズごとに回収するための回収部14を配設している。機枠11は、その下面の四隅にキャスタ11aを配設して、適宜移動可能としている。
【0043】
供給部12は、機枠11の一側端部に連設した箱体12aと、箱体12a内に配置された供給用コンベア12bとからなり、箱体12aは底壁を前低後高の傾斜面に形成するとともに、上方及び機枠11側を開口し、この開口部を選別部13に連通連結している。
【0044】
選別部13は、選別対象物Bを搬送しながら所定のサイズに選別するための4基の選別用コンベア13a〜13dと、これらを駆動させるための電動モータ13eとを有した駆動機構とにより構成されている。選別部13の選別用コンベア13a〜13dは、最小のSサイズの選別対象物Bを選別する選別用コンベア13aから、最大のLLサイズの選別対象物Bを選別する選別用コンベア13dまでを順次多段に連結して配列している。このようにして、選別対象物Bを所望のサイズ、すなわち、S・M・L・LLなどの大きさの異なるサイズにそれぞれ選別可能としている。
【0045】
各選別用コンベア13a〜13dは、図2〜図4に示すように、機枠11の左右側部間に上段に4本、下段に2本となる回転ローラ20が機枠11の片側に設けた軸受け11bにより片持ち支持される6本の回転軸21〜26を備え、これら回転軸21〜26にオーリング状の搬送帯30を複数条巻回し、しかも、各搬送帯30は回転ローラ20上に所定の平行間隙幅Hを有して平行になるように配設されている。
【0046】
回転ローラ20を保持する回転軸21〜26は、機枠11の片側に配設した軸受け11bにより片持ち支持されている。これによって、図4に示すように、選別装置10のメンテナンス作業などにおいて、軸受け11bで支持された軸端部と反対側の回転軸端部側からオーリング状の搬送帯30が、回転ローラ20に掛架自在並びに当該回転ローラ20から取り外し自在となっている。
【0047】
上段側に略水平に配置された4基の回転軸21〜24は、左右両端の回転軸21、24に対してその中間に配置された回転軸22、23の支持位置が少し高くなるように配置される。このように選別対象物Bが搬送される搬送面を凹凸状に形成することによって、選別対象物Bの動きに上下方向の変化を付加することができ、選別精度を向上させることができるようにしている。
【0048】
なお、選別用コンベア13a〜13dの各連結位置には、図2及び図4に示すように、搬送帯30により形成される搬送面にその下端が所定間隔をおいて垂下する矯正パネル31が機枠11上部の取付部材32に取り付けられている。矯正パネル31は、プラスチック材などの可撓性素材からなる板状材であり、搬送帯30上を搬送される選別対象物にその下端が撓みながらソフトに当接して、選別対象物の動きを規制して選別対象物載置用の平行間隙間に選別対象物Bを効果的に落下させる機能を有している。なお、矯正パネルは、各選別用コンベア13a〜13dの境界のみならず、各選別用コンベア内の所定位置に適宜設けることもできる。
【0049】
選別用コンベア13a〜13dの下段側にそれぞれ配置した左右一対の回転軸25、26は、その回転ローラ20を水平前後方向に移動可能とするための軸移動手段を介して支持されている。この軸支持手段は、図5の詳細図に示されるように各選別用コンベアの側枠に設けられた回転軸25、26がそれぞれ挿通される長孔25a、26aと、回転軸25,26に当接したカム板25b、26bと、このカム板をカム軸廻りに回転可能としたハンドル25c、26cとを備える。この軸移動手段のハンドル25c、26cを把持して回動させることにより、対向する回転軸間の距離を縮めて搬送帯30の張力を緩和可能することができる。こうして、搬送帯30を回転ローラ20から取り外す際のメンテナンス作業を容易にするとともに、搬送帯30にテンションをかける場合には、対向する回転ローラ20間が離隔する方向に移動させることによって搬送帯30に適度な張りを与えるようにしている。
【0050】
したがって、選別対象物Bの重さが搬送帯30に加わっても、搬送帯30が撓まないようにして、搬送帯30間に形成される間隔を常時一定に保つことができる。なお、選別装置10の不使用時には、搬送帯30の劣化を防ぐために緩めておくことが好ましい。本実施例では、搬送帯30を選別対象物Bの搬送方向に対して全体が下り勾配となるように傾斜させているが、全体が上り勾配や、略水平となるようにして配設してもよい。
【0051】
各搬送帯30は、円形断面を有するオーリング状の無端ベルトとしており、搬送帯30を回転ローラ20の外周面に所定間隔をあけて刻設した溝部20aに係入している。そして、回転ローラ20に搬送帯30を4本巻回した選別用コンベア13aから、回転ローラ20に搬送帯30を3本巻回した選別用コンベア13dまで、搬送帯30の本数を減らしたり、搬送帯30の幅長を調整したりして、各選別用コンベア13a〜13dにおける搬送帯30間の平行間隙幅をH1、H2、H3、H4のように漸次増加させている。
【0052】
すなわち、上記搬送選別機構は、各選別用コンベア13a〜13dの平行に隣接する搬送帯30間に形成される平行間隙幅Hを異ならせ、平行間隙幅Hが狭い選別用コンベア13aから広い選別用コンベア13dまで順次4段連結することによって、選別対象物Bを、大きさの異なるS・M・L・LLの4段階に選別可能としている。
【0053】
また、各選別用コンベア13a〜13dを駆動させるための駆動機構は、図2及び図3に示すように、機枠11の後端右下部に電動モータ13eを取り付けるとともに、電動モータ13eに各選別用コンベア13a〜13dをスプロケットやチェーンなどを介して連結している。そして、選別用コンベア13a〜13dに設けたチェーンを電動モータ13eのスプロケットに懸架して、電動モータ13eの駆動力によって各選別用コンベア13a〜13dが連動して駆動されるようにしている。
【0054】
かかる構成により、選別用コンベア13a〜13dを具備する選別部13は、電動モータ13eを駆動することによって搬送帯30が周回し、搬送帯30間に形成された平行間隙に載置した選別対象物Bを搬送しながら、大きさごとに選別できるようにしている。
【0055】
また、図示するように、回収部14には機枠11の左側方に収容箱載置台14aを配置し、同収容箱載置台14aの上部に選別対象物Bをそれぞれのサイズごとに収容する5個の収容箱を前後に間隔をあけて載置している。前側4個の収容箱と選別用コンベア13a〜13dとをそれぞれシュータ14bを介して連通連結されている。
【0056】
シュータ14bは全体を略漏斗状に形成するとともに、その底壁を機枠11の右側面から左側面に向けて下り勾配に傾斜させており、底壁にはクッション体などを敷設して、選別対象物Bが衝撃などで痛んだりすることを防止している。
【0057】
以上のように構成される選別装置10を用いて、選別対象物Bを選別する方法について説明する。まず、多数の選別対象物Bを供給部12に収容する。供給部12内には供給用コンベア12bが設けられ、選別対象物Bは供給部12から選別部13の一段目となる選別用コンベア13a、すなわち、搬送帯30間に形成された平行間隙が一番狭い選別用コンベア13aへと連続して案内供給される。
【0058】
そして、選別用コンベア13aに供給された選別対象物Bは、搬送帯30によって次段の選別用コンベア13bに向けて搬送されるが、搬送帯30間に形成された平行間隙幅H1よりもサイズが小さい選別対象物Bは、間隙を通り抜け落下することによって選別される。
【0059】
すなわち、選別用コンベア13a〜13dの搬送帯30間に形成される平行間隙幅Hを所望する選別サイズに設定することによって、搬送帯30によって搬送される選別対象物Bのうち、選別対象物載置用の平行間隙幅Hよりもサイズの小さな選別対象物Bは選別対象物載置用の平行間隙から落下し、一方、選別対象物載置用の平行間隙幅Hよりもサイズの大きい選別対象物Bは、選別対象物載置用の平行間隙から落下せずに搬送される。こうして選別用コンベア13aでは、先ずSサイズの選別対象物Bが選別されることになる。
【0060】
そして、前段の選別用コンベア13aにおいて落下せずに次段の選別用コンベア13bに搬送された選別対象物Bは、選別用コンベア13aにおける平行間隙幅H1よりもさらに広がった平行間隙幅H2によって更なる選別が行われる。
【0061】
このように、選別装置10は、4段に連結した選別用コンベア13a〜13dで搬送・選別を繰り返し行うことで、4段目の選別用コンベア13dの搬送・選別が終了するまでには、選別対象物BをS,M,L,LLの4段階のサイズごとに選別することができる。
【0062】
さらに、4段目の選別用コンベア13dによって搬送されてくる選別対象物B、すなわち、連結された選別用コンベア13a〜13dにおいて選別されなかったサイズを一番大きなXLサイズとして、4段目の選別用コンベア13dの下流側後方に設けられた回収部14の収容箱14cに収納するようにしている。
【0063】
こうして、各選別用コンベア13a〜13dにおいて選別対象物載置用の平行間隙から落下することによってそれぞれのサイズごとに選別された選別対象物Bは、選別対象物載置用の平行間隙の下方に漏斗状に形成したシュータ14bによって誘導され、選別対象物Bを速やかに収容箱に回収することができる。この時、収容箱の底壁にはクッション体を敷設しているため、選別対象物Bが底壁に衝突して損傷するのを防止している。
【0064】
選別対象物載置用の平行間隙から落下することによって選別された選別対象物Bを所定の収容箱へ案内するためのシュータ14bを、各選別用コンベア13a〜13dにそれぞれ設けているので、各選別用コンベア13a〜13dによって所望するサイズごとに選別された選別対象物Bをそのまま所定の収容箱へ収容することができる。なお、収容箱として商品を梱包する段ボールなどからなるケースを用いれば、回収後すぐに出荷することができる。
【0065】
このように、それぞれの選別用コンベア13a〜13dにおける選別対象物載置用の平行間隙により選別された選別対象物Bが各収容箱に収容されることによって、大きさが様々であった選別対象物Bを、複数のサイズごとに選別回収することができる。すなわち、1段目の選別用コンベア13aの平行間隙幅H1によってSサイズの選別対象物Bが選別され、2段目の選別用コンベア13bの平行間隙幅H2によってMサイズの選別対象物Bが選別され、3段目の選別用コンベア13cの平行間隙幅H3によってLサイズの選別対象物Bが選別され、4段目の選別用コンベア13dの平行間隙幅H4によってLLサイズの選別対象物Bが選別され、さらには、4段目の選別用コンベア13dによって選別されなかった選別対象物BがXLサイズに選別されるのである。
【0066】
以上に説明したように、本実施例に係る選別装置10は、複数の回転軸21〜26間に掛架した無端状の搬送帯30を所定間隔をあけて複数条平行に配設して果実や野菜などの選別対象物を載置搬送可能とし、前記複数の搬送帯30間に形成される選別対象物載置用の各平行間隙幅H1〜H4を、所望する選別サイズ以下の選別対象物が落下する幅に設定して選別用コンベア13a〜13dを構成するとともに、前記選別対象物載置用の平行間隙幅H1〜H4を所定幅宛漸次拡幅した複数の選別用コンベア13a〜13dを、順次多段に連結して選別対象物を複数のサイズごとに選別可能とした選別装置10において、前記複数の回転軸21〜26の少なくとも一の位置を移動させる軸移動手段を備え、この軸移動手段により対向する回転軸25、26間距離を縮めて前記搬送帯30の張力を緩和可能としたものである。これによって、搬送帯30の交換や搬送帯間の間隔調整などのメンテナンス作業を効率的に行うことができるとともに、狭い工場スペースなどであっても作業能率に優れたレイアウト配列とすることができる。また、果実や野菜等の選別対象物を複数のサイズごとに精度よく選別して、しかも、その商品価値を損なうことない選別装置を提供することができる。
【0067】
さらに、各選別用コンベア13a〜13dに設定された選別対象物載置用の平行間隙幅H1〜H4による選別と搬送とを繰り返して行い、選別対象物Bを複数のサイズごとに選別することができる。
【0068】
また、選別用コンベア13a〜13dは、搬送帯30を所定間隔を保持して複数条平行に配設しているため、選別対象物Bを搬送・選別する間隙が複数形成されており、これにより、複数の選別対象物Bを同時に搬送及び選別することができるので選別作業に要する時間を短縮することができる。
【0069】
また、搬送帯30をオーリング状となる丸帯としているため、搬送帯30と選別対象物Bとの接触面積が小さくなり、搬送帯30と選別対象物Bとの接触による選別対象物Bの損傷を防止することができる。
【0070】
しかも、搬送帯30を回転ローラ20に形成した溝部に係入しているので、搬送帯30の周回位置を固定することができ、搬送帯30間に形成される選別対象物載置用の平行間隙幅Hを常に一定に保持でき、安定して高精度な選別を行うことができる。
【0071】
なお、選別用コンベア13a〜13dの搬送帯30間に形成される選別対象物載置用の平行間隙幅H1〜H4を変更することにより、選別対象物Bを、所望のサイズごとに選別することができる。また、選別対象物Bの大きさに合わせて選別対象物載置用の平行間隙幅Hを容易に設定することができ、様々な大きさの選別対象物Bを選別可能とすることができる。さらに、連結する選別用コンベアの段数を増減することによって、選別サイズを何段階に選別するかを自由に設定することもできる。
【0072】
以上説明したように本発明は、複数の回転軸の少なくとも一の位置を移動させる軸移動手段により、対向する回転軸間距離を縮めて搬送帯の張力を緩和可能としたことを要旨とするものであり、これに該当するものは本発明の権利範囲に属する。例えば、本実施の形態では、軸移動手段として回転軸間の長さを調整するための左右一対のカム板を機枠側部に設けたハンドルによりそれぞれ手動回転操作するようにしたが、片側一方にのみカム板とハンドルを設けて操作するようにしてもよい。また、各選別用コンベアにおける回転軸の数やその配置構成は実施形態のものに限定されるものではなく、その使用環境に応じて適宜変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明に係る選別装置の一実施形態の平面図である。
【図2】本発明に係る選別装置の一実施形態の正面図である。
【図3】本発明に係る選別装置の一実施形態の背面図である。
【図4】本発明に係る選別装置の一実施形態の側面図である。
【図5】本発明に係る選別装置の軸移動手段の説明図である。
【符号の説明】
【0074】
10 選別装置
11 機枠
11a キャスタ
11b 軸受け
12 供給部
12a 箱体
12b 供給用コンベア
13 選別部
13a〜13d 選別用コンベア
13e 電動モータ
14 回収部
14a 収容箱載置台
14b シュータ
14c 収容箱
20 回転ローラ
20a 溝部
21〜26 回転軸
25a、26a 長孔
25b、26b カム板
25c、26c ハンドル
30 搬送帯
31 矯正パネル
32 取付部材
B 選別対象物
H1〜H4 平行間隙幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の回転軸間に掛架した無端状の搬送帯を、所定間隔をあけて複数条平行に配設して果実や野菜などの選別対象物を載置搬送可能とし、前記複数の搬送帯間に形成される選別対象物載置用の各平行間隙幅を、所定の選別サイズ以下の選別対象物が落下する幅に設定して選別用コンベアを構成するとともに、前記選別対象物載置用の平行間隙幅を、所定幅宛漸次拡幅した複数の選別用コンベアを、順次多段に連結して選別対象物を複数のサイズごとに選別可能とした選別装置において、
前記複数の回転軸の少なくとも一の位置を移動させる軸移動手段を備え、この軸移動手段により、対向する回転軸間距離を縮めて前記搬送帯の張力を緩和可能としたことを特徴とする選別装置。
【請求項2】
前記移動手段は、前記選別用コンベアの側枠に設けられ、前記回転軸を挿通する長孔と、前記回転軸に当接したカム板と、このカム板をカム軸廻りに回転可能としたハンドルとを備えることを特徴とする請求項1記載の選別装置。
【請求項3】
前記回転軸を、一側に配設した軸受けにより片持ち支持したことを特徴とする請求項1又は2に記載の選別装置。
【請求項4】
前記軸受けで支持された軸端部と反対側の回転軸端部側から、前記搬送帯を前記回転軸に掛架自在並びに当該回転軸から取り外し自在としたことを特徴とする請求項3記載の選別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−73663(P2008−73663A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−258920(P2006−258920)
【出願日】平成18年9月25日(2006.9.25)
【出願人】(593170539)重松工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】