選択的エストロゲン受容体モジュレーター組成物および疾患の治療法
本開示は、新しいクラスの選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)に関する。本開示は、以前に知られていない膜結合エストロゲン受容体の同定も含む。有用な組成物中の開示する新規化合物の薬学的製剤を含む、開示するSERMの調製法および使用法を開示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2007年11月9日提出の、「Selective Estrogen Receptor Modulator Compositions and Methods for Treatment of Disease」なる標題の米国特許出願第11/938,129号の恩典を主張し、その内容は全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
政府助成の言明
本発明は、米国立衛生研究所からの助成金番号DK-57574の下での政府助成を受けて行った。米国政府は本発明において一定の権利を有する。
【0003】
分野
本開示は、選択的エストロゲン受容体モジュレーターおよびそのような選択的エストロゲン受容体モジュレーターの調製法を含む、新規化合物およびそれらの使用法に関する。
【背景技術】
【0004】
背景
エストロゲンは、ヒトにおける基本の性的特徴の発生および維持を刺激する、重要なステロイドホルモン類である。加えて、エストロゲンは様々な異なる生物学的プロセスに影響をおよぼすことが明らかにされている。骨密度の維持、中枢神経系機能および記憶の保存を含む、エストロゲンの付随的作用の多くは正の作用である。しかし、エストロゲンは、乳癌および子宮内膜癌の発生促進を含む、重篤な負の作用を有することも判明している。
【0005】
米国における80年近い平均余命に基づき、女性は人生の約3分の1を閉経後の状態で送ると予想することができる。女性のエストロゲンレベルは閉経期に劇的に低下し、閉経期の女性はしばしばエストロゲン産生の低下に関連する多くの副作用を経験する。これらの状態を治療するために、医師はホルモン補充療法を処方することがよくあり、この治療は主にエストロゲンのプロゲスチンとの組み合わせでの投与からなる。
【0006】
虚血性発作、心筋梗塞、血栓塞栓症、脳血管疾患、および子宮内膜癌のリスク増大を含む、現行のホルモン補充療法に関連するより重篤な副作用を考慮して、有効な非ステロイド性エストロゲンおよび抗エストロゲン化合物を同定するために、著しい量の研究が行われてきた。
【0007】
最も強力なエストロゲンである17β-エストラジオールの作用を模倣または阻止する多数の化合物が記載されている。エストロゲン受容体に結合し、17β-エストラジオールと同じ生物学的作用の多くを刺激する化合物は、「エストロゲン受容体アゴニスト」と呼ばれる。17β-エストラジオールのエストロゲン受容体への結合を阻害する、またはエストロゲン受容体に結合する17β-エストラジオールの作用を妨害する化合物は、「エストロゲン受容体アンタゴニスト」と呼ばれる。異なるエストロゲン受容体に異なる効力で影響をおよぼす化合物は、典型的には選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)と呼ばれる。SERMは、1つまたは複数のエストロゲン受容体を選択的に調節するよう、アゴニストまたはアンタゴニストのいずれかとして作用しうる。特定のSERM化合物はエストロゲン活性および抗エストロゲン活性が混合した活性を有し、いくつかの組織ではエストロゲン受容体アゴニストとして作用し、他の組織ではエストロゲン受容体アンタゴニストとして作用する。
【0008】
17β-エストラジオールなどのエストロゲンは、2つの核内エストロゲン受容体である(ER)αまたは(ER)βの一方に結合することにより、それらの効果を発揮すると考えられてきた。(ER)αおよび(ER)βは異なる組織において見いだされ、異なる生物学的役割を有することが明らかにされているため、研究者らは(ER)αまたは(ER)βのいずれかに選択的に結合することによって反応を行うSERMの発生に焦点を当ててきた。
【0009】
(ER)αおよび(ER)βに対して異なる活性を示す非ステロイド性SERMの2つの例はタモキシフェンおよびラロキシフェンである。タモキシフェンおよびラロキシフェンは、骨粗鬆症、心血管疾患および乳癌の治療および/または予防ならびに様々な他の疾患状態の治療および/または予防のために開発された。いずれの化合物も、血漿コレステロールレベルに対する正の効果および特定の型の癌の大幅な発生率低下と合わせて、骨ミネラル密度に対する骨保護効果を示すことが明らかにされている。残念なことに、タモキシフェンおよびラロキシフェンはいずれも、顔面潮紅などの副作用を誘導し、タモキシフェンは子宮内膜癌などの生命を脅かす障害を促進する。
【0010】
本開示は、ホルモン補充療法または公知の選択的エストロゲン受容体モジュレーターの負の作用を誘導することなく、ホルモン補充療法の所望の作用を誘発する新規非ステロイド性SERMを含む。
【発明の概要】
【0011】
概要
本開示は、新規化合物、組成物ならびに化合物および組成物の調製法および使用法を含む。一般に、開示する化合物は選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)として機能する。一つの局面において、化合物は式1を有し、その水和物ならびに薬学的に許容されるプロドラッグおよび塩を含む。さらに、開示する式のすべてのキラル、ジアステレオおよび幾何異性体が意図される。
【0012】
式1に関して、RはMに対してEまたはZでありえ、かつRはアリール、シクロアルキル、またはフェニル(ヒドロキシまたは低級脂肪族基で置換されていてもよい)を表し;Xはそれぞれの場合に独立に水素、ヒドロキシ、アルコキシ、またはハロゲンであり、ここでn=1〜2であり;Mはケトン、アミドまたはスルホンアミド基を含む。Arは芳香族基を表し、フェニル、ビフェニル、1-ナフチル、2-ナフチルを含むが、それらに限定されるわけではなく、また例としてフラン、チオフェン、ピロール、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピリジン、およびキノリン基などのヘテロアリール基を含む、任意の芳香族基でありうる。Yは、Mに対してオルト、メタまたはパラ位などの、任意の位置に結合しうる。一つの局面において、Yは-O-、-NR1-、または-S-などのヘテロ原子である。開示する式2のSERMの特定の態様において、Yはフェニル基を表す。
【0013】
続いて式1および2に関して、Gは低級アルキル基、低級アルキレニル基、炭化水素鎖、オリゴエチレングリコール鎖などのリンカー基を含む。Gが低級アルキレニル基を含む、式2の一つの態様において、Gはエチル基である。Zは、典型的にはヘテロ原子を含む。特定の態様において、Zは荷電部分、例えば、ボロネート、スルフェート、スルホネート、ホスフェート、ホスホネートまたはカルボキシ基などのアニオン基を含む。Zがカチオン基を含む例において、カチオン基はジメチルアミノまたはピペリジノ基などのアミノ基でありうる。他の例において、Zはヒドロキシル基を含む。式Y-G-Zで表される基の例は、Yが酸素などのヘテロ原子であり、式-G-Zが
の一つを表すが、それらに限定されるわけではないものを含む。
【0014】
式1および2に関して、Mは典型的にはアミドケトンまたはスルホンアミド基の1つであり、より典型的には-C(O)-;-C(O)-NR1-;-(C=S)N-、または-SO2NR1-の1つを表し;ここでR1は水素、低級アルキル基またはアラルキル基である。したがって、そのような化合物の例は式3で表すことができ、式中Qは典型的にはアミドまたはスルホンアミド連結を形成する(Qは-SO2-またはCOを表す)。
【0015】
式3またはその薬学的に許容される塩に関して:
RはHまたは低級アルキルを表し;Wはナフチル(ヒドロキシ、ハロゲン、または低級アルキルで置換されていてもよい)またはフェニル(ヒドロキシ、ハロゲン、または低級アルキルで置換されている)を表し;Mはカルボニル、-(C=O)NR1-、または-(C=S)NR1-を表し;Arは芳香族基を表し;Xはそれぞれの場合に独立にヒドロキシ、アルコキシ、またはハロゲンを表し、ここでn=1〜2であり;Yは-O-、-NR1-、または-S-を表し;Gは連結基を表し;Zはヒドロキシルまたは荷電基を表し;かつR1は水素または低級アルキルを表す。
【0016】
式4またはその薬学的に許容される塩に関して:
Rは水素または低級アルキルを表し;Wはナフチル(ヒドロキシ、ハロゲン、または低級アルキルで置換されていてもよい)またはフェニル(ヒドロキシ、ハロゲン、または低級アルキルで置換されていてもよい)を表し;Mはカルボニル、-(C=O)NR1-、または-(C=S)NR1-を表し;Arは芳香族基を表し;Xはそれぞれの場合に独立にヒドロキシ、アルコキシ、またはハロゲンを表し、ここでn=1〜2であり;Yは-O-、-NR1-、または-S-を表し;Gは連結基を表し;Zはカルボキシル、ヒドロキシまたはアミノ基を表し、ここでアミノ基はアルキルで置換されていてもよく;かつR1は水素または低級アルキルを表す。
【0017】
式5またはその薬学的に許容される塩に関して:
Rはアリール、シクロアルキル、低級アルキル、ヒドロキシルまたは低級脂肪族基で置換されていてもよいフェニルを表し;Wはナフチルまたはフェニル(H、ヒドロキシル、ハロゲン、またはメチルで置換されていてもよい)を表し;Mはカルボニル、-(C=O)NR1-、または-(C=S)NR1-を表し;Arは芳香族基を表し;Xはそれぞれの場合に独立にヒドロキシ、アルコキシ、またはハロゲンを表し、ここでn=1〜2であり;Gは連結基を表し;かつZはヒドロキシを表す。
【0018】
式6またはその薬学的に許容される塩に関して:
Rはアリール、シクロアルキル、低級アルキル、ヒドロキシまたは低級脂肪族基で置換されていてもよいフェニルを表し;Wはナフチル(ヒドロキシ、ハロゲン、または低級アルキルで置換されていてもよい)またはフェニル(ヒドロキシ、ハロゲン、または低級アルキルで置換されていてもよい)を表し;Xはそれぞれの場合に独立にヒドロキシ、アルコキシ、またはハロゲンを表し、ここでn=1〜2であり;Yは-O-、-NR1-、または-S-を表し;Gは連結基を表し;Zはカルボキシル、ヒドロキシまたはアミノ基を表し、ここでアミノ基はアルキルで置換されていてもよく;かつR1は水素または低級アルキルを表す。
【0019】
本開示は、様々な障害、特に卵巣摘出、卵巣機能不全または閉経に関連するものなどのエストロゲン欠乏によって特徴付けられる障害を治療するための方法および組成物も含む。そのような状態および障害には、一般に、自律神経機能不全、認知減退、運動機能不全、気分障害、摂食障害および心血管疾患、ならびに異なる型の障害として記載されるものが含まれる。一つの局面において、開示する化合物は特定の型の損傷に対する予防効果を発揮する。例えば、化合物を神経保護物質として用いることができる。事実、本明細書において同定する膜結合エストロゲン受容体を刺激する化合物は神経保護物質として作用して、虚血性発作に応答しての神経細胞死を低減し、再灌流損傷を阻害する。
【0020】
特定の組成物は、少なくとも1つの式1の化合物ならびに第二の治療化合物を含む。第二の化合物もエストロゲン受容体に結合することができる。例えば、一つの態様において、第二の化合物はSERMであり、別の態様において、第二の化合物は17β-エストラジオールなどのエストロゲン、またはプロゲスチンなどのプロゲステロンである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、ホールセルパッチ、電位固定試験における薬物投与のプロトコルを例示する概略図である。
【図2】図2は、13分間のホールセルパッチクランプ記録後のビオシチンで満たされたニューロンの例を示す画像であり、ビオシチン標識の程度を例示している。
【図3A】図3Aは、ドーパミンニューロンからのバクロフェン(5μM)I/V前および後の関係を示すグラフである。
【図3B】図3Bは、別の細胞における17β-エストラジオール処理後のバクロフェンI/V前および後の関係を示すグラフであり、バクロフェン応答に対する同じ逆電位を示している。
【図4A】図4Aは、エストロゲンに応答した紡錘状弓状ドーパミンニューロンのビオシチン-ストレプトアビジン-Cy2標識を示す画像である。
【図4B】図4Bは、図4Aに画像を示したニューロンにおけるチロシンヒドロキシラーゼ(TH)の免疫細胞化学的染色を示す画像である。
【図4C】図4Cは、小さい椎体弓状POMCニューロンのビオシチン-ストレプトアビジン-Cy2標識を示す画像である。
【図4D】図4Dは、図4Cに画像を示したニューロンにおけるβ-エンドルフィンの免疫細胞化学的染色を示す画像である。
【図5】図5は、ステロイド処置前および後のGABAB応答の代表的トレースを含む。
【図6】図6は、バクロフェン応答に対する17β-エストラジオールおよびSERMの効果をまとめた棒グラフを含む。
【図7】図7Aは、17β-エストラジオールおよび本明細書において開示する例示的SERMによる処置後の子宮サイズを比較しており、17β-エストラジオール処置マウスでは、油媒体処置または本明細書において開示する例示的SERMでの処置と比べて、安息香酸エストラジオール(EB)後に子宮サイズの顕著な増大が見られたことを示している。図7Bは、油およびSERM処置マウスに対してEB処置マウスの子宮重量を記録する棒グラフである(n=3〜5匹のマウス/群)。
【図8】図8は、PKA活性化剤または阻害剤存在下でのバクロフェン応答の代表的トレースを含み、GABAB応答の17β-エストラジオール減弱はタンパク質キナーゼAを必要とすることを示している。
【図9】図9は、バクロフェン応答に対するタンパク質キナーゼA(PKA)薬物の効果をまとめる棒グラフである。
【図10】図10は、PKC阻害剤存在下でのバクロフェン応答の代表的トレースを含む。
【図11】図11は、バクロフェン応答に対するタンパク質キナーゼC(PKC)阻害剤の効果をまとめる棒グラフである。
【図12】図12は、ホスホリパーゼC(PLC)およびGαq阻害剤存在下でのバクロフェン応答の代表的トレースを含む。
【図13】図13は、PLCおよびGαq阻害剤の効果をまとめる棒グラフである。
【図14】図14Aは、単一の弓状ニューロンがTH、GAD、PKCδ、AC VIIおよびGAPDHのmRNAを発現することを示す代表的ゲルである。図14Bは、単一の弓状ニューロンがPOMC、GAD、PKCδ、AC VIIおよびGAPDHのmRNAを発現することを示す代表的ゲルである。
【図15】図15は、視床下部ニューロンにおける膜結合エストロゲン受容体を介しての、神経伝達物質によって調節される、Gタンパク質結合受容体の急速および遅延エストロゲン受容体仲介性調節を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
詳細な説明
以下の用語および方法の説明は、本発明の化合物、組成物および方法をより良く記載し、本開示の実施において当業者を誘導するために提供する。本開示において用いる用語は特定の態様および例を記載するためのものにすぎず、限定を意図するものではないことも理解されるべきである。
【0023】
本明細書は以下の頭字語および略語を含む:
BAPTA:1,2-ビス-(o-アミノフェノキシエタン)-N,N,N',N'-テトラ酢酸
CTX:コレラ毒素
DAG:ジアシルグリセロール
DCM:ジクロロメタン
ddH2O:脱イオン蒸留水
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
EGTA:エチレングリコールテトラ酢酸
EtOAc:酢酸エチル
ERK:細胞外シグナル関連キナーゼ
GIRK:Gタンパク質共役型内向き整流性K+チャネル
Hex:ヘキサン
MAPKまたはMAPキナーゼ:マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ
PLC:ホスホリパーゼC
PKA:タンパク質キナーゼ A
PKC:タンパク質キナーゼ C
POMC:プロオピオメラノコルチン
SERM:選択的エストロゲン受容体モジュレーター
TTX:テトロドトキシン。
【0024】
範囲は本明細書において「約」1つの特定の値から、および/または「約」もう1つの特定の値までとして表すことができる。そのような範囲が表される場合、別の態様は1つの特定の値から、および/または他の特定の値までを含む。同様に、値が修飾語句「約」を用いることによって近似値として表される場合、特定の値は別の態様を形成することが理解されるであろう。それぞれの範囲の終点は、他の終点に関連して、および他の終点とは無関係にの両方で意味があることもさらに理解されるであろう。
【0025】
開示する化合物は、非対称に四置換された炭素原子を含むものなどの、キラル化合物を含む。そのような化合物はラセミ体または光学活性体で単離することができる。当業者には、化合物を光学活性体でどのようにして合成するかは公知である。光学活性化合物を化合物のラセミ混合物の分割によりどのようにして調製するかも周知である。特に記載がないかぎり、開示する構造のすべてのキラル、ジアステレオおよび幾何異性体が意図される。
【0026】
本明細書および添付の特許請求の範囲において、以下の意味を有すると理解されるべきいくつかの用語に言及することになろう。
【0027】
「任意の」または「任意に」とは、続いて記載される事象または状況は起こることができるが、必ずしもその必要はなく、記載は該事象または状況が起こる場合および起こらない場合を含むことを意味する。
【0028】
本開示の全体を通して用いられるR、G、M、Q、X、YおよびZなどの変数は、そうではないとの記載がないかぎり、前に規定したものと同じ変数である。
【0029】
「エストロゲン受容体アゴニスト」なる用語は、エストロゲン受容体で作用し、17β-エストラジオールと同じ生物学的効果の少なくともいくつかを有する化合物を意味する。エストロゲン受容体で17β-エストラジオールの効果を阻止するよう作用する化合物は「エストロゲン受容体アンタゴニスト」と呼ぶ。典型的には、本明細書において開示する化合物は部分的アゴニストまたはアンタゴニストであり、これはそれらの化合物が17β-エストラジオールの効果のいくつかを模倣または阻止するが、他は模倣または阻止しないことを意味する。いくつかの場合に、化合物は混合アゴニスト/アンタゴニスト活性を示し、ここで化合物は特定の組織ではエストロゲン受容体アゴニストとして作用するが、他の組織ではエストロゲン受容体アンタゴニストとして作用する。本明細書において開示するそのような化合物の例は、1つのエストロゲン受容体に他のエストロゲン受容体よりも高い親和性で選択的に結合することにより、部分的アゴニスト活性を示す。そのような選択性を示す化合物は「選択的エストロゲン受容体モジュレーター」または「SERM」と呼ぶ。
【0030】
「ホルモン補充療法」とは、例えば、閉経期に見られるような、対象のエストロゲン産生の低下または機能不全に応じて投与する治療を意味する。ホルモン補充療法は、加齢、卵巣摘出または早期卵巣機能不全に応じて行われることも多い。ホルモン補充療法は、骨粗鬆症、心疾患、顔面潮紅および気分障害などの、エストロゲン欠乏に関連する二次的作用の1つまたは複数の治療を助けるために用いられることも多い。
【0031】
「誘導体」とは、親化合物から誘導される、または理論的に誘導可能な化合物または化合物の一部を意味する。
【0032】
「アルキル基」なる用語は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tーブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル、テトラデシル、ヘキサデシル、エイコシル、テトラコシルなどの、1から24炭素原子の分枝または非分枝飽和炭化水素基を意味する。「低級アルキル」基は、1から10炭素原子を有する飽和分枝または非分枝炭化水素である。
【0033】
「アルケニル基」なる用語は、2から24炭素原子で、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む構造式の炭化水素基を意味する。
【0034】
「アルキニル基」なる用語は、2から24炭素原子で、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含む構造式の炭化水素基を意味する。
【0035】
「ハロゲン化アルキル基」なる用語は、前述のアルキル基に存在する1つまたは複数の水素原子がハロゲン(F、Cl、Br、I)で置換されている、前述のアルキル基を意味する。
【0036】
「シクロアルキル基」なる用語は、少なくとも3つの炭素原子からなる非芳香族の炭素系の環を意味する。シクロアルキル基の例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが含まれるが、それらに限定されるわけではない。「ヘテロシクロアルキル基」なる用語は、環の炭素原子の少なくとも1つが、窒素、酸素、硫黄、またはリンなどであるが、それらに限定されるわけではない、ヘテロ原子で置換されている、前述のシクロアルキル基である。
【0037】
「エチレングリコール鎖」または「オリゴエチレングリコール鎖」なる用語は、反復エチレングリコール単位を有する基を意味する。エチレングリコール鎖は任意の長さでありうるが、典型的には2から約100、より典型的には2から約70のエチレングリコール単位を含む。最も典型的には、オリゴエチレングリコール鎖は約2から約20のエチレングリコール単位を含む。
【0038】
「脂肪族基」なる用語は、前述のアルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン化アルキルおよびシクロアルキル基を含む。「低級脂肪族」基は、1から10炭素原子を有する分枝または非分枝構造である。
【0039】
「アリール基」なる用語は、ベンゼン、ナフタレンなどを含むが、それらに限定されるわけではない、任意の炭素系芳香族基を意味する。「芳香族」なる用語は「ヘテロアリール基」も含み、これは芳香族基の環内に組み込まれた少なくとも1つのヘテロ原子を有する芳香族基を意味する。そのようなヘテロ原子の例には、窒素、酸素、硫黄、およびリンが含まれるが、それらに限定されるわけではない。アリール基は、アルキル、アルキニル、アルケニル、アリール、ハロゲン化物、ニトロ、アミノ、エステル、ケトン、アルデヒド、ヒドロキシ、カルボン酸、もしくはアルコキシを含むが、それらに限定されるわけではない、1つまたは複数の基で置換されていてもよく、またはアリール基は無置換でありうる。
【0040】
「アラルキル」なる用語は、アリール基に連結された前述のアルキル基を有するアリール基を意味する。アラルキル基の例はベンジル基である。
【0041】
「アルキルアミノ」なる用語は、少なくとも1つの水素原子がアミノ基で置き換えられている前述のアルキル基を含む。
【0042】
「ヘテロ原子」なる用語は、当業者によって炭素原子以外の原子を指すと理解される。ヘテロ原子の例には、ホウ素、窒素、酸素、リンおよび硫黄が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0043】
したがって、本明細書において用いられる「炭化水素鎖」なる用語は、典型的には、2から約22炭素原子を典型的に含む、炭素原子の鎖を意味する。鎖は脂肪族およびアリール基を含むことができ、直鎖、分枝鎖および/または環式基を含むことができる。
【0044】
「ヒドロキシル基」なる用語は、式-OHで表される。「アルコキシ基」なる用語は、式-ORで表され、ここでRは前述のアルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、ハロゲン化アルキル、またはヘテロシクロアルキル基で置換されていてもよい、アルキル基でありうる。
【0045】
「ヒドロキシアルキル基」なる用語は、少なくとも1つの水素原子がヒドロキシル基で置換されている、アルキル基を意味する。「アルコキシアルキル基」なる用語は、少なくとも1つの水素原子が前述のアルコキシ基で置換されている、アルキル基を意味する。適用可能な場合には、ヒドロキシアルキル基またはアルコキシアルキル基のアルキル部分はアリール、アラルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシを有しうる。
【0046】
「アミン基」なる用語は、式-NRR'で表され、ここでRおよびR'は独立に水素または前述のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、ハロゲン化アルキル、もしくはヘテロシクロアルキル基でありうる。
【0047】
「アミド基」なる用語は、式-C(O)NRR'で表され、ここでRおよびR'は独立に前述の水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、ハロゲン化アルキル、またはヘテロシクロアルキル基でありうる。
【0048】
「エステル」なる用語は、式-OC(O)Rで表され、ここでRは前述のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、ハロゲン化アルキル、またはヘテロシクロアルキル基でありうる。
【0049】
「カーボネート基」なる用語は、式-OC(O)ORで表され、ここでRは前述のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、ハロゲン化アルキル、またはヘテロシクロアルキル基でありうる。
【0050】
「カルボン酸」なる用語は、式-C(O)OHで表される。
【0051】
「アルデヒド」なる用語は、式-C(O)Hで表される。
【0052】
「ケト基」なる用語は、式-C(O)Rで表され、ここでRは前述のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、ハロゲン化アルキル、またはヘテロシクロアルキル基である。
【0053】
「カルボニル基」なる用語は、式C=Oで表される。
【0054】
「カチオン基」または「カチオン部分」とは、正に荷電している、または正に荷電しうる基を意味する。例えば、カチオン基は生理的に適当なpHでプロトン化可能なアミンでありうる。カチオン基の第二の例は正に荷電した四級アミンである。
【0055】
開示する化合物は、いくつかの塩形成基が存在する場合には、混合塩および/または内部塩を含む、塩も含む。塩は一般に非毒性の薬学的に許容される塩である。塩形成酸性基の例には、適当な塩基と塩を形成することができるカルボキシル基、ホスホン酸基またはボロン酸基が含まれるが、それらに限定されるわけではない。これらの塩は、例えば、元素周期表のIA、IB、IIAおよびIIB族の金属由来の非毒性金属カチオンを含むことができる。一つの態様において、リチウム、ナトリウムもしくはカリウムイオンなどのアルカリ金属カチオン、またはマグネシウムもしくはカルシウムイオンなどのアルカリ土類金属カチオンを用いることができる。塩は亜鉛またはアンモニウムカチオンでもありうる。塩は、無置換もしくはヒドロキシル置換モノ、ジもしくはトリアルキルアミン、特にモノ、ジもしくはトリアルキルアミンなどの適当な有機アミンと、または四級アンモニウム化合物と、例えば、N-メチル-N-エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノ、ビスもしくはトリス-(2-ヒドロキシエチル)アミン、2-ヒドロキシ-tert-ブチルアミンもしくはトリス(ヒドロキシメチル)メチルアミンなどのモノ、ビスもしくはトリス-(2-ヒドロキシ-低級アルキル)アミン、N,N-ジメチル-N-(2-ヒドロキシエチル)アミンもしくはトリ-(2-ヒドロキシエチル)アミンなどのN,N-ジ-低級アルキル-N-(ヒドロキシ-低級アルキル)アミン、またはN-メチル-D-グルカミン、あるいはテトラブチルアンモニウム塩などの四級アンモニウム化合物と形成することもできる。
【0056】
特定の化合物は、無機酸と酸-塩基塩を形成しうる少なくとも1つの塩基性基を有する。塩基性基の例には、アミノ基またはイミノ基が含まれるが、それらに限定されるわけではない。そのような塩基性基と塩を形成しうる無機酸の例には、塩酸、臭化水素酸、硫酸またはリン酸などの鉱酸が含まれるが、それらに限定されるわけではない。塩基性基は、有機カルボン酸、スルホン酸、スルホ酸もしくはホスホ酸またはN-置換スルファミン酸、例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、コハク酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、メチルマレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸、グルカル酸、グルクロン酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、サリチル酸、2-フェノキシ安息香酸、2-アセトキシ安息香酸、エンボン酸、ニコチン酸またはイソニコチン酸と、加えて、アミノ酸、例えば、α-アミノ酸と、ならびにメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシメタンスルホン酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、4-メチルベンゼンスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、2-もしくは3-ホスホグリセレート、グルコース-6-リン酸またはN-シクロヘキシルスルファミン酸(シクラメートの形成を伴う)と、あるいはアスコルビン酸などの他の酸性有機化合物と塩を形成することもできる。
【0057】
「エーテル基」なる用語は、式R(O)R'で表され、ここでRおよびR'は独立に前述のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、ハロゲン化アルキル、またはヘテロシクロアルキル基でありうる。
【0058】
「ハロゲン化物」なる用語は、F、Cl、Br、またはIを意味する。
【0059】
「ウレタン」およびカルバメートなる用語は、式-OC(O)NRR'で表され、ここでRおよびR'は独立に前述の水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、ハロゲン化アルキル、またはヘテロシクロアルキル基でありうる。
【0060】
前述の基は、1つまたは複数の置換基で置換されていてもよい。分子における特定の位置の任意の置換基または変数の定義は、その分子における他所のその定義とは無関係である。適当な置換基の例には、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ヒドロキシ、アルコキシ、オキソ、アルカノイル、アルカノイルオキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、アルカノイルアミノ、アロイルアミノ、アラルカノイルアミノ、置換アルカノイルアミノ、アロイルアミノ、アラルカノイルアミノ、置換アルカノイルアミノ、置換アリールアミノ、置換アラルカノイルアミノ、チオール、スルフィド、チオノ、スルホニル、スルホンアミド、ニトロ、シアノ、カルボキシ、カルバミル、置換カルバミルなどが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0061】
「プロドラッグ」なる用語は、プロドラッグが対象に投与されると、インビボで本発明の活性親薬物を放出する、任意の共有結合された担体を含むことが意図される。プロドラッグは、溶解性およびバイオアベイラビリティなどの、薬剤の性質を増強することが知られているため、本明細書において開示する化合物をプロドラッグ型で送達することができる。したがって、同様に企図されるのは、本発明の特許請求される化合物のプロドラッグ、プロドラッグを送達する方法およびそのようなプロドラッグを含む組成物である。開示する化合物のプロドラッグは、典型的には、改変が日常的操作またはインビボのいずれかで切断されて、親化合物を生じるような様式で、化合物に存在する官能基を改変することにより調製する。プロドラッグには、切断されて対応するヒドロキシル、遊離アミノ、または遊離スルフヒドリル基をそれぞれ生じる、任意の基で官能基化されたヒドロキシ、アミノ、またはスルフヒドリル基を有する化合物が含まれる。プロドラッグの例には、酢酸、ギ酸、および/または安息香酸基でアシル化されたヒドロキシ、アミノおよび/またはスルフヒドリル基を有する化合物が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0062】
開示する化合物の保護された誘導体も企図される。開示する化合物と共に用いるのに適した様々なものが、Greene and Wuts Protective Groups in Organic Synthesis; 3rd Ed.; John Wiley & Sons, New York 1999に開示されている。
【0063】
本明細書に記載の化合物の置換基および置換パターンは、化学的に安定で、当技術分野において公知の技術によって、およびさらに本開示において示す方法によって容易に合成しうる化合物を提供するために、当業者であれば選択しうることが理解される。ここから、本発明の好ましい態様について詳細に言及する。
【0064】
I. 好ましい化合物の選択
エストロゲン受容体を調節するための好ましい化合物は、典型的には、1つまたは複数のエストロゲン受容体を刺激または拮抗する際のそれらの効力および選択性によって選択される。典型的には、開示する化合物は膜結合エストロゲン受容体に選択的に結合し、核内エストロゲン受容体(ER)αおよび(ER)βには結合したとしても親和性は低い。以下の方法および実施例の項に記載するとおり、また一般に知られているとおり、標的エストロゲン受容体に対する特定の化合物の有効性をインビトロで評価することができ、開示するインビトロ法を用いて新規SERMをスクリーニングおよび同定することができる。さらに、閉経に関連する状態および卵巣摘出、卵巣機能不全または閉経に関連するものなどのエストロゲン欠乏によって特徴付けられる他の状態を含む、様々な状態および障害に対して治療または保護するための、特定の化合物を提供する。そのような状態の例には、顔面潮紅、認知減退、骨粗鬆症、うつ、虚血性脳損傷およびアテローム性動脈硬化症が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0065】
開示する化合物の顔面潮紅を阻害または改善する能力を、例えば、モルヒネ中毒ラットがナロキソンを用いてのモルヒネからの急性離脱を経験した際に起こる、尾皮膚温度の上昇を鈍らせる物質の能力を測定する標準的検定において評価することができる。Merchenthaler, et al. The effect of estrogens and antiestrogens in a rat model for hot flush. Maturitas 1998, 30, 307-316を参照されたく、その内容は参照により本明細書に組み入れられる。Berendsen et al. Effect of tibolone and raloxifene on the tail temperature of oestrogen-deficient rats. Eur. J. Pharmacol. 2001, 419, 47-54;およびPan et al. A comparison of oral micronized estradiol with soy phytoestrogen effects on tail skin temperatures of ovariectomized rats. Menopause 2001, 8, 171-174も参照されたい。BerendsenおよびPanの出版物はいずれも参照により本明細書に組み入れられる。
【0066】
特定の開示する化合物は、多発性硬化症の治療のために有用である。多発性硬化症の症状を治療または抑制するための好ましい化合物は、Polanczyk et al. Am. J. Pathol. 2003, 163, 1599-1605によって記載された実験的自己免疫脳脊髄炎マウスモデルを用いて選択することができる。Polanczykの出版物は参照により本明細書に組み入れられる。
【0067】
神経性食欲不振および/または神経性過食症などの、摂食障害を治療するために有用な開示する化合物は、当業者には公知の単純な食餌検定を用いて同定することができる。
【0068】
開示する化合物の学習および記憶に対する効果は、モリス水迷路およびStackman et al. J. Neuroscience 2002, 22, 10163-10171によって記載されたプロトコルに従っての物体認識検定を用いて評価することができる。Stackman et al.の出版物は参照により本明細書に組み入れられる。
【0069】
開示する化合物の神経保護活性も、例えば、グルタミン酸攻撃を用いての標準のインビトロ薬理学的検定において評価することができる。Zaulyanov, et al. Cellular & Molecular Neurobiology 1999, 19: 705-718;およびProkai, et al. Journal of Medicinal Chemistry 2001, 44, 110-114を参照されたい。Zaulyanov et al.およびProkai et al.の出版物はいずれも参照により本明細書に組み入れられる。
【0070】
開示する化合物は、全体の脳虚血に関連する損傷からニューロンを保護するそれらの能力について評価することができる。化合物は、Vogel et al. Anesthesiology 2003, 99, 112-121によって記載された心停止および心肺蘇生検定を用いて、そのような損傷を低減する能力について評価することができる。一つの局面において、化合物は、蘇生術後に投与した場合でさえ、ニューロンへの損傷を低減しうる。Vogel et al.の出版物は参照により本明細書に組み入れられる。
【0071】
神経保護はまた、Dubal et al. in Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 2001, 98, 1952-1957;およびin J. Neurosci. 1999、6385-6393によって記載されたプロトコルに従い、マウスにおける中大脳動脈閉塞法を用いて評価することができる。開示する化合物をエストロゲン欠乏によって特徴付けられる障害の異なるモデルにおいて評価するためのさらなる検定を、以下の方法および実施例の項に記載する。
【0072】
化合物の使用は、エストロゲン欠乏を伴う状態に必ずしも限定されない。そのような状態および障害を治療または予防するための治療薬の有効性を特徴付ける技術および検定は周知であり、例えば、米国特許出願第2003/0171412 A1号および第2003/0181519 A1号においてそれぞれMalamas et al.およびMewshaw et al.によって記載されている。Malamas et al.およびMewshaw et al.の出版物はいずれも参照により本明細書に組み入れられる。
【0073】
II. 薬学的組成物
本開示の別の局面は、対象への投与のために調製される薬学的組成物を包み、この組成物は、現在開示している化合物の1つまたは複数の治療上有効な量を含む。開示する化合物の治療上有効な量は、投与経路、対象である哺乳動物の型、および治療中の対象の身体的特徴に依存することになる。考慮されうる特定の因子には、疾患の重症度および病期、体重、食事ならびに併用薬が含まれる。これらの因子と、開示する化合物の治療上有効な量の決定との関係は、当業者であれば理解される。
【0074】
投与する化合物の治療上有効な量は、所望の効果および前述の因子に依存して変動しうる。典型的には、用量は、対象の体重1kgあたり約0.01mgから100mgの間であり、より典型的には、対象の体重1kgあたり約0.01mgから10mgの間である。一つの局面において、治療上有効な量は、対象の標的組織における治療薬のインビボ濃度がインビトロで有効であると判明した濃度付近となるように選択することができる。
【0075】
一つの態様において、開示するSERMを、本明細書において開示するさらなる化合物、および/または他のSERM、抗癌剤もしくは抗増殖剤などの他の治療薬と組み合わせて用いる。例えば、開示する化合物は、タモキシフェン、タキソール、エポチロン、メトトレキセートなどの化学療法剤とともに使用してもよい。一つの局面において、開示するSERMを、17β-エストラジオールを含むエストロゲン、プロゲステロンなどのステロイドホルモンと組み合わせて用いる。エストロゲンまたはプロゲステロンは、天然または合成エストロゲンまたはプロゲステロンでありうる。異なる治療薬を組み合わせて使用する場合、治療薬は一緒にまたは別々に投与することができる。治療薬は、単独で投与することもできるが、より典型的には、選択した投与経路および標準的な薬学的慣習に基づいて選択される薬学的担体とともに投与する。
【0076】
本明細書に記載の任意のSERMを薬学的に許容される担体と組み合わせて薬学的組成物を形成することができる。薬学的担体は当業者には公知である。これらは、最も典型的には、滅菌水、食塩水、および生理的なpHの緩衝化溶液などの溶液を含む、ヒトに対する組成物投与のための標準的な担体である。組成物はまた、筋肉内、経皮、またはエアロゾルの剤形で投与されうる。他の化合物は、当業者により使用される標準的方法に従って投与することになる。
【0077】
薬学的送達が意図される分子を、薬学的組成物に製剤することができる。薬学的組成物は、選択した分子に加えて、担体、増粘剤、希釈剤、緩衝剤、保存剤、界面活性剤などを含むことができる。薬学的組成物は、抗菌剤、抗炎症剤、麻酔薬などの1つまたは複数のさらなる活性成分を含むこともできる。薬学的製剤は、担体などのさらなる成分を含むことができる。これらの製剤にとって有用な薬学的に許容される担体は通常のものである。Remington's Pharmaceutical Sciences, by E. W. Martin, Mack Publishing Co., Easton, PA, 15th Edition (1975)は、本明細書において開示する化合物の薬学的送達に適した組成物および製剤を記載している。
【0078】
一般に、担体の性質は用いている特定の投与様式に依存することになる。例えば、非経口製剤は、通常は、媒体として水、生理食塩水、平衡塩類溶液、水性デキストロース、グリセロールなどの薬学的および生理的に許容される液体を含む注射可能な液体を含む。固形組成物(例えば、散剤、丸剤、錠剤、またはカプセル剤の剤形)のために、通常の非毒性の固体担体には、例えば、薬学的等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、またはステアリン酸マグネシウムが含まれうる。生物学的に中性の担体に加えて、投与する薬学的組成物は、湿潤剤または乳化剤、保存剤、およびpH緩衝化剤など、例えば、酢酸ナトリウムまたはモノラウリン酸ソルビタンなどの、少量の非毒性の補助剤を含むことができる。
【0079】
いくつかの態様において、開示するSERMの有効量を含む薬学的製剤の持続放出は有益でありうる。徐放性製剤は当業者には公知である。例として、ビス(p-カルボキシフェノキシ)プロパン-セバシン酸などのポリマーまたはレシチン懸濁剤を用いて持続放出を提供することができる。
【0080】
いくつかの態様において、SERM送達が、例えば、DepoFoam(SkyePharma, Inc, San Diego, CA)におけるなどの多小胞リポソームを含む、注射および/または埋込薬物デポーを介することが具体的に企図される(例えば、Chamberlain et al. Arch. Neuro. 1993, 50, 261-264;Katri et al. J. Pharm. Sci. 1998, 87, 1341-1346;Ye et al., J. Control Release 2000, 64, 155-166;およびHowell, Cancer J. 2001, 7, 219-227参照)。
【0081】
III. 開示する化合物の使用法
開示する化合物は、対象のエストロゲン受容体を選択的に調節するために用いることができ、したがってエストロゲン欠乏によって特徴付けられるものを含む、様々な障害を治療するのに有用である。さらに、特定の開示する化合物は1つまたは複数のエストロゲン受容体に対して選択性を示すため、化合物を自律神経機能不全、認知減退、運動機能不全、気分障害、摂食障害および心血管障害、ならびに異なる型の障害として記載されるものを含むが、それらに限定されるわけではない状態を治療するために用いることができる。一般に、化合物は、現行のホルモン補充療法において用いられるステロイドホルモン(エストロゲンまたは合成エストロゲンなど)に関連する重篤な副作用と同一の副作用の発生を誘導せず、ホルモン補充療法にとって有用である。開示する化合物は、現在公知のタモキシフェンまたはラロキシフェンなどのSERMを用いた治療において生じる、顔面潮紅などの副作用も回避する。より具体的には、開示する化合物は、虚血誘導性神経死、頭部外傷、アルツハイマー病、顔面潮紅などの温度調節障害、睡眠周期の乱れ、パーキンソン病、晩発性ジスキネジア、うつ、統合失調症、神経性食欲不振、神経性過食症、心血管疾患、アテローム性動脈硬化症、ロマノ-ワード症候群またはトルサード・ド・ポワンツ症候群などのQTL延長症候群、骨粗鬆症、慢性関節リウマチ、骨関節症、骨折、および多発性硬化症を含むが、それらに限定されるわけではない障害を治療するために用いることができる。一つの態様において、特定の化合物は、ナトリウムまたは塩素イオンの上皮輸送を阻止するなどによる、液体バランスを調節することにより、血管拡張を促進するために用いることができる。理論に限定されるわけではなく、化合物は、Maxi-Kチャンネルを活性化することにより機能すると考えられる。Valverde et al. Science 1999, 285, 1929-1931参照。
【0082】
別の態様において、開示する化合物は、自己免疫疾患、特に男性よりも女性で頻繁に生ずる自己免疫疾患を治療するために用いることができる。そのような疾患の例には、多発性硬化症、慢性関節リウマチ、グレーヴス病、全身性エリテマトーデスおよび重症筋無力症が含まれるが、それらに限定されるわけではない。別の態様において、開示する化合物は、対象の免疫適格性を維持または増強するよう機能する。さらに、開示する化合物は、特定の型の損傷に対する予防効果を発揮する。例えば、化合物は、神経保護薬として用いることができる。事実、本明細書において同定される膜結合エストロゲン受容体を刺激する化合物は、虚血性発作に応答して神経保護薬として作用し、再灌流損傷を阻害する。
【0083】
さらに、開示する化合物が1つまたは複数の特定の型のエストロゲン受容体を選択的に調節する能力ゆえに、開示する化合物は、異なる生理学的効果を仲介する異なるエストロゲン受容体の寄与を同定するために用いることができる。開示する化合物はまた、これらの薬剤が作用する、特定のクラスの膜結合受容体に結合し、かつこれを同定するために用いることもできる。事実、開示する選択的エストロゲン受容体モジュレーターの実用的態様は、膜結合受容体に対しては、17β-エストラジオールより10倍高い効力を有し、核内エストロゲン受容体である(ER)αおよび(ER)βに対しては、17β-エストラジオールの100万分の1の低い効力を有していた。
【0084】
開示する化合物の別の適用は、アフィニティークロマトグラフィーである。本発明の開示する化合物の例が、新規の膜結合エストロゲン受容体に結合するため、化合物は、受容体を精製するか、または試料から受容体を除去するために用いることができる。化合物を使用するために、これらは典型的には当業者には公知の固形支持体に結合される。化合物は、直接的に結合するか、またはリンカー分子を介して結合することができる。開示する化合物との使用に適した、例示的なアフィニティークロマトグラフィー技術は、Current Protocols in Protein Science, John Wiley & Sons (J.E. Coligan et al., Eds.)に開示されている。
【0085】
IV. 合成
本明細書において開示する化合物、ならびにこの開示を考慮すれば医化学分野の当業者には容易に明らかになるであろうそのような化合物の類縁体は、当業者に周知の技術を用いるいくつかの様式で調製することができる。特定の化合物を調製するための例示的方法を以下に記載する。有機合成の当業者であれば、開示する試薬および反応に鑑み、分子の官能基を考慮すれば、これらの方法は以下に明確に記載していない化合物の合成に対して一般化可能であることが理解される。開示する状態を考慮して、当業者であれば本明細書において開示する特定の状態に適合しない官能基を有しうる類似の化合物を調製するための、代替の方法を理解するであろう。
【0086】
所与の変換において存在する官能基に依存して、変換の間にその基をマスクするための、様々な基に対する保護基が好まれることもある。様々な官能基に適した保護基は、Greene and Wuts Protective Groups in Organic Synthesis; 3rd Ed.; John Wiley & Sons, New York (1999)に記載されている。
【0087】
開示する化合物を合成する方法の一つの態様を以下のスキーム3に例示する。スキーム3に関して、この方法は化合物2を提供し、化合物2を化合物4へと転換することを含む。化合物2は、Weatherman et al. Chemistry & Biology 2001, 8, 427-436によって報告されるプロトコルに従って調製した。実施例において、化合物2をリチウム-ハロゲン交換条件にかけ、続いて、クロロギ酸アリルと反応させて、化合物4を得る。化合物6は、アリルエステル基のパラジウム触媒切断により調製した。実施例において、触媒としてのPd(PPh3)4をPhSiH3と共に用いて、化合物6を生成した。化合物6は、様々なN-置換アクリルアミド誘導体を調製するために用いうる多用途の中間体である。例えば、任意の一級または二級アミンを化合物6とのアミド結合形成反応を介して組み込むことができる。スキーム3において例示する方法は、EおよびZ異性体、すなわちそれぞれ化合物8および9の両方を生成する。
【0088】
さらなるSERMを、スキーム4に従って調製することができる。スキーム4に関して、化合物10をジフェニルアセチレンから調製することができる。様々なアルキル基(エチルに加えて)を様々な技術によりこの段階で導入することができる。化合物10において導入したヨード基を用いて、カルボキシメチルエステル12などのカルボキシ基を導入することができ、このカルボキシ基は対応するカルボン酸7に容易に転換される。カルボン酸7は、様々な一級および二級アミンと反応させて、8および対応するZ異性体9などの対応するアミドを得ることができる。
【0089】
二置換アクリルアミド誘導体を、スキーム5に例示する方法に従って調製することができる。スキーム5に関して、18のビス-アリル化により20を得る。20とベンズアルデヒドとのアルドール反応によって22を得、これは脱離を起こしてEおよびZ異性体の混合物としての24を得る。アリル保護基の切断により26を生じ、続いてアミド結合形成によってEおよびZ異性体、すなわちそれぞれ28および30を形成する。
【0090】
スキーム6は、ビニルケトン由来のSERMを合成するための方法の態様を示す。スキーム6に関して、化合物32のアルキル化は、様々な基を導入するために用いうる多用途の反応である。例えば、Rには、限定を伴うが、ヒドロキシ基、保護ヒドロキシ基、カルボキシ基、保護カルボキシ基、アミンまたは保護アミノ基が含まれうる。実施例において、Rはジメチルアミノ基またはピペリジノ基であった。中間体34を化合物2から調製した化合物のリチウムアニオン(スキーム3)と反応させ、脱保護の後、EおよびZ異性体、すなわちそれぞれ38および40を生成する。
【0091】
V. 方法および実施例
前述の開示を以下の非限定的実施例によってさらに説明する。
【0092】
スキーム7
(E)-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-フェニルペンタ-2-エン酸エチル(2)。DMF(132ml)中の2-ペンチン酸エチル(5.5g、43.6mmol)、1-ヨード-4-(メトキシメトキシ)ベンゼン(23.0g、87.1mmol)、フェニルボロン酸(10.6g、86.9mmol)の混合物に、H2O(33ml)中のK2CO3(12.1g、87.5mmol)を氷冷下で加え、次いで混合物を室温で10分間撹拌した。PdCl2(PhCN)2(167mg、0.435mmol)をAr雰囲気下で加え、混合物を室温で24時間撹拌した。氷冷下、H2Oで反応停止し、全体をEt2Oで抽出した。有機層をH2O、食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:ヘキサン/AcOEt、30:1から10:1)で精製して、2(29%)および位置異性体(24%)を得た。
2:無色油状物;
;位置異性体:
【0093】
(E)-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-フェニルペンタ-2-エン酸(3)。MeOH(85ml)中の2(3.4g、9.99mmol)の溶液に2N NaOH(50ml)を加え、混合物を80℃で15時間撹拌した。冷却後、2N HCl(50ml)を氷冷下で滴加し、全体をAcOEtで抽出し、有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。残渣の固体をヘキサンで粉砕して、3(88%)を得た。
3:無色粉末;
【0094】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-フェニルペンタ-2-エンアミド(4)。方法A;DMF(50ml)中の3(2.50g、8.00mmol)、EDC・HCl(1.84g、9.60mmol)およびHOBt(1.30g、9.62mmol)の混合物に、4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)ベンゼン-アミン2塩酸塩(2.23g、8.81mmol)およびN,N-ジソプロピルエチルアミン(4.13g、32.0mmol)の溶液を氷冷下で加え、混合物を室温で18時間撹拌した。氷冷下、飽和NaHCO3水溶液で反応停止し、全体をAcOEtで抽出し、有機層をH2O×2、食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:AcOEtと、次いでCHCl3/MeOH、10:1)で精製し、AcOEt-ヘキサンから再結晶して、4(43%)を得た。
4:無色粉末;
【0095】
方法B;CH2Cl2(100ml)中の3(2.90g、9.28mmol)、4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)ベンゼンアミン2塩酸塩(2.58g、10.2mmol)、4-ジメチルアミノピリジン(56.7mg、0.464mmol)の混合物に、ヘキサフルオロリン酸O-ベンゾトリアゾイル-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウム(3.87g、10.2mmol)を氷冷下で加え、混合物を0℃で10分間撹拌した。N,N-ジイソプロピルエチルアミン(4.19g、32.4mmol)を氷冷下で加えた。混合物を0℃で5分間と、室温で15時間撹拌した。氷冷下、飽和NaHCO3水溶液で反応停止し、全体をCHCl3で抽出し、有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。Biotage(溶離剤:CH2Cl2からCH2Cl2/MeOH、6:1)で精製して、無色固体を得た。固体をEt2O-ヘキサンで粉砕して、4(65%)を得た。
【0096】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-2-(4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルペンタ-2-エンアミド(5)。方法A;MeOH(4ml)中の4(1.39g、2.93mmol)の懸濁液に、AcOEt中の3N HClの溶液(10ml)を氷冷下で加え、混合物を室温で2時間撹拌した。H2O中のNaHCO3(2.8g)の溶液を反応混合物に氷冷下で注ぎ、全体をAcOEtおよび少量のMeOHで抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。残渣の固体をEt2Oで粉砕して、5(91%)を得た。
5:無色粉末;
【0097】
方法B;MeOH(40ml)中の4(2.89g、6.09mmol)の溶液に、1,4-ジオキサン中の4N HCl(15.2ml)を氷冷下で加え、混合物を室温で2時間撹拌した。H2O中のNaHCO3の溶液を反応混合物に氷冷下で注ぎ、全体をAcOEtで抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。残渣の固体をAcOEtで粉砕して、5(89%)を得た。
【0098】
スキーム7-2
(E)-N-(4-ヒドロキシフェニル)-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-フェニルペンタ-2-エンアミド(6a)。CH2Cl2(2ml)中の3(60mg、0.192mmol)、4-アミノフェノール(23.0mg、 0.211mmol)、4-ジメチルアミノピリジン(1.2mg、0.00982mmol)およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(37.2mg、0.287mmol)の混合物に、ヘキサフルオロリン酸O-ベンゾトリアゾイル-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウム(76.5mg、0.202mmol)を氷冷下で加え、混合物を0℃で5分間と、室温で15時間撹拌した。氷冷下、飽和NaHCO3水溶液で反応停止し、全体をCHCl3で抽出し、有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:ヘキサン/AcOEt、3:1から2:1)で精製して、6a(68%)を得た。
6a:無色粉末;
【0099】
(E)-N-(4-(3-(ジメチルアミノ)プロポキシ)フェニル)-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-フェニルペンタ-2-エンアミド(6b)。CH2Cl2(3ml)中の3(60mg、0.192mmol)、4-(3-(ジメチルアミノ)プロポキシ)ベンゼンアミン2塩酸塩(56.4mg、0.211mmol)、4-ジメチルアミノピリジン(1.2mg、0.00982mmol)の混合物に、ヘキサフルオロリン酸O-ベンゾトリアゾイル-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウム(76.5mg、0.202mmol)を氷冷下で加え、混合物を0℃で10分間撹拌した。次いで、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(86.8mg、0.672mmol)を氷冷下で加えた。混合物を0℃で5分間と、室温で15時間撹拌した。氷冷下、飽和NaHCO3水溶液で反応停止し、全体をCHCl3で抽出し、有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:CHCl3/MeOH、20:1から10:1)で精製して、無色固体(100%)を得た。固体をEt2O-ヘキサンで粉砕して、6b(75%)を得た。
6b:無色粉末;
【0100】
(E)-N-((1r,4r)-4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)シクロヘキシル)-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-フェニルペンタ-2-エンアミド(6c)。CH2Cl2(3ml)中の3(90mg、0.288mmol)、(1r,4r)-4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)シクロヘキサンアミン2塩酸塩(89.6mg、0.346mmol)、4-ジメチルアミノピリジン(1.8mg、0.0147mmol)の混合物に、ヘキサフルオロリン酸O-ベンゾトリアゾイル-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウム(120mg、0.316mmol)を氷冷下で加え、混合物を0℃で10分間撹拌した。次いで、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(130mg、1.01mmol)を氷冷下で加えた。混合物を0℃で5分間と、室温で15時間撹拌した。氷冷下、飽和NaHCO3水溶液で反応停止し、全体をCHCl3で抽出し、有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。Biotage 12M(溶離剤:CH2Cl2からCH2Cl2/MeOH、6:1)で精製して、無色固体(88%)を得た。固体をEt2O-ヘキサンで粉砕して、6c(73%)を得た。
6c:無色粉末;
【0101】
(E)-N,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルペンタ-2-エンアミド(7a)。MeOH(1ml)中の6a(45mg、0.112mmol)の溶液に、ジオキサン中の4N HClの溶液(0.3ml)を氷冷下で加え、混合物を室温で2時間撹拌した。H2Oを反応混合物に氷冷下で注ぎ、全体をAcOEtで抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。残渣をEt2Oで結晶化して、7a(76%)を得た。
7a:無色粉末;
【0102】
(E)-N-(4-(3-(ジメチルアミノ)プロポキシ)フェニル)-2-(4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルペンタ-2-エンアミド(7b)。MeOH(0.5ml)中の6b(55mg、0.113mmol)の溶液に、AcOEt中の3N HCl(0.5ml)を氷冷下で加え、混合物を室温で1時間撹拌した。H2O中のNaHCO3(139mg)の溶液を反応混合物に氷冷下で注ぎ、全体をAcOEtおよび少量のMeOHで抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。残渣をEt2Oで結晶化して、7b(76%)を得た。
7b:無色粉末;
【0103】
(E)-N-((1r,4r)-4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)シクロヘキシル)-2-(4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルペンタ-2-エンアミド(7c)。MeOH(3ml)中の6c(90mg、0.187mmol)の溶液に、1,4-ジオキサン中の4N HCl(0.47ml)を氷冷下で加え、混合物を室温で2時間撹拌した。H2O中のNaHCO3の溶液を反応混合物に氷冷下で注ぎ、全体をAcOEtで抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。残渣をEt2Oで結晶化して、7c(93%)を得た。
7c:無色粉末;
【0104】
スキーム7-3
N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-フェニルペンタ-3-エンアミド(3b)。(副生成物)。
3b:無色粉末;
【0105】
N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-2-(4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルペンタ-3-エンアミド(8)。MeOH(1ml)中の3b(30mg、0.0632mmol)の溶液に、AcOEt中の3N HCl(0.5ml)を氷冷下で加え、混合物を室温で1時間撹拌した。H2O中のNaHCO3(139mg)の溶液を反応混合物に氷冷下で注ぎ、全体をAcOEtで抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。残渣をEt2Oで結晶化して、8(67%)を得た。
8:無色粉末;
【0106】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-N-メチル-3-フェニルペンタ-2-エンアミド(9)。DMF(1.5ml)中の3(60mg、0.126mmol)の溶液に、60%NaH(6.0mg、0.15mmol)を氷冷下で加え、次いで混合物を室温で10分間撹拌した。ヨードメタン(21.5mg、0.151mmol)を氷冷下で加え、混合物を室温で1時間撹拌した。氷冷下、H2Oで反応停止し、全体をAcOEtで抽出した。有機層をH2O、食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:CH2Cl2からCH2Cl2/MeOH、20:1)で精製して、9(100%)を得た。
9:無色粉末;
【0107】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-2-(4-ヒドロキシフェニル)-N-メチル-3-フェニルペンタ-2-エンアミド(10)。化合物10を、化合物8の調製に用いたものと同じ方法により調製した。
10:無色粉末(84%);
【0108】
スキーム8
(ブタ-3-イニルオキシ)トリイソプロピルシラン(1f)。CH2Cl2(8ml)中の3-ブチン-1-オール(2.0g、28.5mmol)およびイミダゾール(2.91g、42.7mmol)の溶液に、CH2Cl2(12ml)中の塩化トリイソプロピルシリル(7.14g、37.0mmol)の溶液を氷冷下で10分かけて加えた。次いで、混合物を室温で17時間撹拌した。H2Oを反応混合物に氷冷下で注ぎ、全体をCHCl3で抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:ヘキサンからヘキサン/AcOEt、100:1)で精製して、2(87%)を得た。
2:無色粉末;
【0109】
4-メチルペンタ-2-イン酸エチル(2b)。Ar雰囲気下で、THF(15ml)中の3-メチルブチン(1.5g、22.0mmol)の混合物に、ヘキサン中の2.5M n-BuLiの溶液(9.68ml、24.2mmol)を-78℃で15分かけて加え、次いで混合物を-78℃で5分と、-5〜-10℃で30分間撹拌した。クロロギ酸エチル(2.63g、24.2mmol)を-78℃で滴加し、次いで混合物を0℃で1時間撹拌した。氷冷下、飽和NH4Cl水溶液で反応停止し、全体をEt2Oで抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。クーゲルロール蒸留(1〜3mmHg、70〜80℃)で精製して、2b(59%)を得た。
2b:無色油状物;
【0110】
3-シクロペンチルプロピオル酸エチル(2c)。化合物2cを、2bの調製に用いたものと同じ方法により調製した。クーゲルロール蒸留(1〜3mmHg、110〜115℃)で精製(73%)。
2c:無色油状物;
【0111】
3-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)プロピオル酸エチル(2e)。Ar雰囲気下で、DMF(10ml)中の1-ヨード-4-(メトキシメトキシ)ベンゼン(500mg、1.89mmol)、プロピオル酸エチル(371mg、3.78mmol)および酸化銅(I)(270mg、1.89mmol)の混合物を110℃で16時間加熱した。冷却後、H2Oを反応混合物に氷冷下で注ぎ、全体をAcOEtで抽出した。有機層をH2O、食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:ヘキサン/AcOEt、15:1)で精製して、2e(52%)を得た。
2e:無色油状物;
【0112】
5-トリイソプロピルシリルオキシペンタ-2-イン酸エチル(2f)。化合物2fを、2bの調製に用いたものと同じ方法により調製した。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:ヘキサン/AcOEt、30:1)で精製して、2f(96%)を得た。
2f:黄色油状物;
【0113】
(E)-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-フェニルヘキサ-2-エン酸エチル(3a)。DMF(6ml)-H2O(1.5ml)中の2-ヘキシン酸エチル(250mg、1.78mmol)、1-ヨード-4-(メトキシメトキシ)ベンゼン(940mg、3.56mmol)、フェニルボロン酸(434mg、3.56mmol)およびK2CO3(492mg、3.56mmol)の混合物を室温で10分間撹拌した。次いで、PdCl2(PhCN)2(6.8mg、0.0177mmol)をAr雰囲気下で加え、混合物を室温で24時間撹拌した。氷冷下、H2Oで反応停止し、全体をEt2Oで抽出した。有機層をH2O、食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:ヘキサン/AcOEt、30:1から15:1)で精製して、3a(29%)を得た。
3a:無色油状物;
【0114】
化合物3b〜fを、3aの調製に用いたものと同じ方法により調製した。
【0115】
(E)-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-4-メチル-3-フェニルペンタ-2-エン酸エチル(3b)。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:ヘキサン/AcOEt、30:1から10:1)で精製して、3b(38%)を得た。
3b:無色油状物;
【0116】
(E)-3-シクロペンチル-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-フェニルアクリル酸エチル(3c)。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:ヘキサン/AcOEt、30:1から10:1)で精製して、3c(29%)を得た。
3c:無色油状物;
【0117】
2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3,3-ジフェニルアクリル酸エチル(3d)。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:ヘキサン/AcOEt、30:1から5:1)で精製して、3d(62%)を得た。
3d:無色粉末;
【0118】
(Z)-2,3-ビス(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-フェニルアクリル酸エチル(3e)。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:ヘキサン/AcOEt、10:1から5:1)で精製して、3e(70%)を得た。
3e:無色粉末;
【0119】
(E)-5-トリイソプロピルシリオキシ-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-フェニルペンタ-2-エン酸エチル(3f)。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:ヘキサン/AcOEt、30:1から20:1)で精製して、3f(37%)を得た。
3f:黄色油状物;
【0120】
(E)-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-フェニルヘキサ-2-エン酸(4a)。MeOH(5ml)中の3a(140mg、0.395mmol)の溶液に2N NaOH(2ml)を加え、混合物を80℃で15時間撹拌した。冷却後、2N HCl(2ml)を氷冷下で滴加し、全体をAcOEtで抽出し、有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。残渣の固体をヘキサンで粉砕して、4a(78%)を得た。
4a:無色粉末;
【0121】
化合物4b〜fを、4aの調製に用いたものと同じ方法により調製した。
【0122】
(E)-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-4-メチル-3-フェニルペンタ-2-エン酸(4b)。
4b:無色粉末(84%);
【0123】
(E)-3-シクロペンチル-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-フェニルアクリル酸(4c)。
無色粉末(90%);
【0124】
2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3,3-ジフェニルアクリル酸(4d)。
無色粉末(93%);
【0125】
(Z)-2,3-ビス(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-フェニルアクリル酸(4e)。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:ヘキサン/AcOEt、3:1からAcOEt)で精製して、無色固体(84%)を得た。固体をヘキサンで粉砕して、4e(56%)を得た。
4e:無色粉末;
【0126】
(E)-5-トリイソプロピルシリルオキシ-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-フェニルペンタ-2-エン酸(4f)。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:ヘキサン/AcOEt、3:1から1:1)で精製して、4f(27%)を得た。
4f:無色油状物;
【0127】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-フェニルヘキサ-2-エンアミド(5a)。CH2Cl2(2ml)中の4a(50mg、0.153mmol)、4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)ベンゼンアミン2塩酸塩(42.6mg、0.168mmol)、4-ジメチルアミノピリジン(0.9mg、0.00736mmol)の混合物に、ヘキサフルオロリン酸O-ベンゾトリアゾイル-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウム(60.9mg、0.161mmol)を氷冷下で加え、混合物を0℃で10分間撹拌した。次いで、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(69.2mg、0.534mmol)を氷冷下で加えた。混合物を0℃で5分間と、室温で15時間撹拌した。氷冷下、飽和NaHCO3水溶液で反応停止し、全体をCHCl3で抽出し、有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:AcOEtからCHCl3/MeOH、10:1)で精製して、無色固体(100%)を得た。固体をEt2O-ヘキサンで粉砕して、5a(84%)を得た。
5a:無色粉末;
【0128】
化合物5b〜fを、5aの調製に用いたものと同じ方法により調製した。
【0129】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-4-メチル-3-フェニルペンタ-2-エンアミド(5b)。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:CH2Cl2からCH2Cl2/MeOH、5:1)で精製して、無色固体(92%)を得た。固体をヘキサンで粉砕して、5b(70%)を得た。
5b:無色粉末;
【0130】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-3-シクロペンチル-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-フェニルアクリルアミド(5c)。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:AcOEtからCHCl3/MeOH、5:1)で精製して、無色固体(89%)を得た。固体をEt2O-ヘキサンで粉砕して、5c(55%)を得た。
5c:無色粉末;
【0131】
N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3,3-ジフェニルアクリルアミド(5d)。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:AcOEtからCHCl3/MeOH、10:1)で精製して、無色固体(79%)を得た。固体をEt2Oで粉砕して、5d(68%)を得た。
5d:無色粉末;
【0132】
(Z)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-2,3-ビス(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-フェニルアクリルアミド(5e)。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:AcOEtからCHCl3/MeOH、5:1)で精製して、無色固体(61%)を得た。固体をEt2Oで粉砕して、5e(39%)を得た。
5e:無色粉末;
【0133】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-5-トリイソプロピルシリルオキシ-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-フェニルペンタ-2-エンアミド(5f)。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:AcOEtからCHCl3/MeOH、10:1)で精製して、5f(65%)を得た。
5f:無色粉末;
【0134】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-5-ヒドロキシ-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-フェニルペンタ-2-エンアミド(5g)。THF(2ml)中の5f(95mg、0.147mmol)の溶液に、THF中のフッ化テトラブチルアンモニウムの1M溶液(0.18ml)を氷冷下で加え、混合物を室温で30分間撹拌した。H2Oを反応混合物に氷冷下で加え、全体をAcOEtで抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:AcOEtからCHCl3/MeOH、5:1)で精製して、5g(90%)を得た。
5g:無色油状物;
【0135】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-2-(4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルヘキサ-2-エンアミド(6a)。MeOH(1ml)中の5a(45mg、0.0921mmol)の溶液に、AcOEt中の3N HCl(0.5ml)を氷冷下で加え、混合物を室温で1時間撹拌した。H2O中のNaHCO3(139mg)の溶液を反応混合物に氷冷下で注ぎ、全体をAcOEtおよび少量のMeOHで抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。残渣をEt2Oで結晶化して、6a(83%)を得た。
6a:無色粉末;
【0136】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-2-(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチル-3-フェニルペンタ-2-エンアミド(6b)。MeOH(3ml)中の5b(90mg、0.184mmol)の溶液に、1,4-ジオキサン中の4N HCl(0.5ml)を氷冷下で加え、混合物を室温で2時間撹拌した。H2O中のNaHCO3の溶液を反応混合物に氷冷下で注ぎ、全体をAcOEtで抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。残渣をEt2Oで結晶化して、6b(84%)を得た。
6b:無色粉末;
【0137】
化合物6c〜eを、6a、6bの調製に用いたものと同じ方法により調製した。
【0138】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-3-シクロペンチル-2-(4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルアクリルアミド(6c)。
6c:無色粉末(AcOEt、87%);
【0139】
N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-2-(4-ヒドロキシフェニル)-3,3-ジフェニルアクリルアミド(6d)。
6d:無色粉末(Et2O、80%);
【0140】
(Z)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-2,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルアクリルアミド(6e)。
6e:無色粉末(AcOEt-ヘキサン、74%);
【0141】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-5-ヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルペンタ-2-エンアミド(6f)。CH2Cl2(3ml)中の5g(60mg、0.122mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(39.4mg、0.305mmol)の溶液に、無水酢酸(24.9mg、0.243mmol)を氷冷下で加え、混合物を室温で2時間撹拌した。H2Oを反応混合物に氷冷下で注ぎ、全体をCHCl3で抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。AcOEt(2ml)中の残渣の溶液に、1,4-ジオキサン中の4N HCl(0.4ml)およびMeOH(0.5ml)を氷冷下で加え、混合物を室温で1時間撹拌した。H2O中のNaHCO3の溶液を反応混合物に氷冷下で注ぎ、全体をAcOEtで抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。MeOH(3ml)中の残渣の溶液に、2N NaOH(0.171ml)を氷冷下で加え、混合物を室温で40分間撹拌した。2N HCl(0.170ml)を氷冷下で加え、次いでH2O中のNaHCO3を反応混合物に注いだ。全体をAcOEtで抽出し、有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。残渣をAcOEtで結晶化して、6f(48%)を得た。
6f:無色粉末;
【0142】
スキーム9
3-シクロプロピルプロピオル酸エチル(2)。Ar雰囲気下、THF(10ml)中のエチニルシクロプロパン(1.00g、15.1mmol)の混合物に、ヘキサン中の2.5M n-BuLiの溶液(6.60ml、16.5mmol)を-78℃で15分かけて加え、次いで混合物を-78℃で5分間と、-10℃で30分間撹拌した。クロロギ酸エチル(1.89g、16.6mmol)を-78℃で滴加し、次いで混合物を0℃で1時間撹拌した。氷冷下、飽和NH4Cl水溶液で反応停止し、全体をEt2Oで抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。クーゲルロール蒸留(5〜8mmHg、100〜110℃)で精製(77%)。
2:無色油状物;
【0143】
(E)-3-シクロプロピル-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-フェニルアクリル酸エチル(3)および(E)-3-シクロプロピル-3-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-2-フェニルアクリル酸エチル(4)。DMF(10ml)-H2O(2.5ml)中の2(215mg、1.56mmol)、ヨードベンゼン(637mg、3.12mmol)、4-(メトキシメトキシ)フェニルボロン酸(568mg、3.12mmol)およびK2CO3(431mg、3.12mmol)の混合物を室温で10分間撹拌した。次いで、PdCl2(PhCN)2(6.0mg、0.0156mmol)をAr雰囲気下で加え、混合物を室温で24時間撹拌した。氷冷下、H2Oで反応停止し、全体をEt2Oで抽出した。有機層をH2O、食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:ヘキサンからヘキサン/AcOEt、10:1)で精製して、3(24%)および4(28%)を得た。
3:無色油状物;
4:無色油状物;
【0144】
(E)-3-シクロプロピル-3-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-2-フェニルアクリル酸エチル(5)。DMF(8.5ml)-H2O(2.2ml)中の2(385mg、2.79mmol)、1-ヨード-4-(メトキシメトキシ)ベンゼン(1.47g、5.57mmol)、フェニルボロン酸(680mg、5.58mmol)およびK2CO3(771mg、5.58mmol)の混合物を室温で10分間撹拌した。次いで、PdCl2(PhCN)2(10.7mg、0.0279mmol)をAr雰囲気下で加え、混合物を室温で24時間撹拌した。氷冷下、H2Oで反応停止し、全体をEt2Oで抽出した。有機層をH2O、食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:ヘキサン/AcOEt、30:1から10:1)で精製して、5(29%)を得た。
5:無色油状物;
【0145】
(E)-3-シクロプロピル-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-フェニルアクリル酸(7)。MeOH(3ml)中の3(105mg、0.298mmol)の溶液に2N NaOH(1.5ml)を加え、混合物を80℃で24時間撹拌した。冷却後、2N HCl(1.5ml)を氷冷下で滴加し、全体をAcOEtで抽出し、有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。残渣の固体をヘキサンで粉砕して、7(75%)を得た。
7:無色粉末;
【0146】
化合物10、13を、7の調製に用いたものと同じ方法により調製した。
【0147】
(Z)-3-シクロプロピル-3-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-2-フェニルアクリル酸(10)。
無色粉末(58%);
【0148】
(E)-3-シクロプロピル-3-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-2-フェニルアクリル酸(13)。
無色粉末(84%);
【0149】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-3-シクロプロピル-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-フェニルアクリルアミド(8)。CH2Cl2(3ml)中の7(65mg、0.200mmol)、4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)ベンゼンアミン2塩酸塩(42.6mg、0.168mmol)、4-ジメチルアミノピリジン(1.2mg、0.00982mmol)の混合物に、ヘキサフルオロリン酸O-ベンゾトリアゾイル-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウム(83.4mg、0.220mmol)を氷冷下で加え、混合物を0℃で10分間撹拌した。次いで、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(90.4mg、0.701mmol)を氷冷下で加えた。混合物を0℃で5分間と、室温で15時間撹拌した。氷冷下、飽和NaHCO3水溶液で反応停止し、全体をCHCl3で抽出し、有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:CH2Cl2からCH2Cl2/MeOH、6:1)で精製して、無色固体(100%)を得た。固体をヘキサンで粉砕して、8(80%)を得た。
8:無色粉末;
【0150】
化合物11、14を、8の調製に用いたものと同じ方法により調製した。
【0151】
(Z)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-3-シクロプロピル-3-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-2-フェニルアクリルアミド(11)。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:CH2Cl2からCH2Cl2/MeOH、6:1)で精製して、無色固体(94%)を得た。固体をEt2O-ヘキサンで粉砕して、11(67%)を得た。
11:無色粉末;
【0152】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-3-シクロプロピル-3-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-2-フェニルアクリルアミド(14)。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:AcOEtからCHCl3/MeOH、5:1)で精製して、無色固体(94%)を得た。固体をEt2O-ヘキサンで粉砕して、14(72%)を得た。
14:無色粉末;
【0153】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-3-シクロプロピル-2-(4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルアクリルアミド(9)。MeOH(3ml)中の8(70mg、0.144mmol)の溶液に、1,4-ジオキサン中の4N HCl(0.4ml)を氷冷下で加え、混合物を室温で3時間撹拌した。H2O中のNaHCO3の溶液を反応混合物に氷冷下で注ぎ、全体をAcOEtで抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。残渣の固体をEt2Oで結晶化して、9(88%)を得た。
9:無色粉末;
【0154】
化合物12、15を、9の調製に用いたものと同じ方法により調製した。
【0155】
(Z)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-3-シクロプロピル-3-(4-ヒドロキシフェニル)-2-フェニルアクリルアミド(12)。
無色粉末(AcOEt、78%);
【0156】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-3-シクロプロピル-3-(4-ヒドロキシフェニル)-2-フェニルアクリルアミド(15)。
無色粉末(AcOEt、80%);
【0157】
スキーム10
(E)-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-o-トリルペンタ-2-エン酸エチル(2a)。DMF(8.5ml)-H2O(2.2ml)中の2-ペンチン酸エチル(350mg、2.77mmol)、1-ヨード-4-(メトキシメトキシ)ベンゼン(1.46g、5.53mmol)、2-メチルフェニルボロン酸(753mg、5.53mmol)およびK2CO3(766mg、5.54mmol)の混合物を室温で10分間撹拌した。次いで、PdCl2(PhCN)2(10.6mg、0.0276mmol)をAr雰囲気下で加え、混合物を室温で24時間撹拌した。氷冷下、H2Oで反応停止し、全体をEt2Oで抽出した。有機層をH2O、食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:ヘキサン/AcOEt、30:1)で精製して、2a(27%)を得た。
2a:無色油状物;
【0158】
化合物2b〜eを、2aの調製に用いたものと同じ方法により調製した。
【0159】
(E)-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-m-トリルペンタ-2-エン酸エチル(2b)。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:ヘキサン/AcOEt、30:1)で精製して、2b(18%)を得た。
2b:無色油状物;
【0160】
(E)-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-p-トリルペンタ-2-エン酸エチル(2c)。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:ヘキサン/AcOEt、30:1)で精製して、2c(29%)を得た。
2c:無色油状物;
【0161】
(E)-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-(ナフタレン-1-イル)ペンタ-2-エン酸エチル(2d)。Biotage 40M(溶離剤:ヘキサンからヘキサン/AcOEt、10:1)で精製して、2d(24%)を得た。
2d:無色油状物;
【0162】
(E)-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-(ナフタレン-2-イル)ペンタ-2-エン酸エチル(2e)。Biotage 40M(溶離剤:ヘキサンからヘキサン/AcOEt、10:1)で精製して、2e(29%)を得た。
2e:無色油状物;
【0163】
(E)-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-o-トリルペンタ-2-エン酸(3a)。MeOH(7ml)中の2a(240mg、0.677mmol)の溶液に2N NaOH(3.4ml)を加え、混合物を80℃で18時間撹拌した。冷却後、2N HCl(3.4ml)を氷冷下で滴加し、全体をAcOEtで抽出し、有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。残渣の固体をヘキサンで粉砕して、3a(79%)を得た。
3a:無色粉末;
【0164】
化合物3b〜eを、3aの調製に用いたものと同じ方法により調製した。
【0165】
(E)-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-m-トリルペンタ-2-エン酸(3b)。
3b:無色粉末(71%);
【0166】
(E)-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-p-トリルペンタ-2-エン酸(3c)。
3c:無色粉末(84%);
【0167】
(E)-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-(ナフタレン-1-イル)ペンタ-2-エン酸(3d)。
3e:無色粉末(83%);
【0168】
(E)-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-(ナフタレン-2-イル)ペンタ-2-エン酸(3e)。
3e:無色粉末(80%);
【0169】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-o-トリルペンタ-2-エンアミド(4a)。CH2Cl2(3ml)中の3a(90mg、0.276mmol)、4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)ベンゼンアミン2塩酸塩(76.9mg、0.304mmol)、4-ジメチルアミノピリジン(1.7mg、0.00139mmol)の混合物に、ヘキサフルオロリン酸O-ベンゾトリアゾイル-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウム(110mg、0.290mmol)を氷冷下で加え、混合物を0℃で10分間撹拌した。次いで、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(125mg、0.965mmol)を氷冷下で加えた。混合物を0℃で5分間と、室温で15時間撹拌した。氷冷下、飽和NaHCO3水溶液で反応停止し、全体をCHCl3で抽出し、有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:AcOEtからCHCl3/MeOH、10:1)で精製して、無色固体(97%)を得た。固体をEt2O-ヘキサンで粉砕して、4a(70%)を得た。
4a:無色粉末;
【0170】
化合物4b〜eを、4aの調製に用いたものと同じ方法により調製した。
【0171】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-m-トリルペンタ-2-エンアミド(4b)。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:AcOEtからCHCl3/MeOH、10:1)で精製して、無色固体(90%)を得た。固体をEt2O-ヘキサンで粉砕して、4b(65%)を得た。
4b:無色粉末;
【0172】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-p-トリルペンタ-2-エンアミド(4c)。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:AcOEtからCHCl3/MeOH、5:1)で精製して、無色固体(91%)を得た。固体をEt2O-ヘキサンで粉砕して、4c(63%)を得た。
4c:無色粉末;
【0173】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-(ナフタレン-1-イル)ペンタ-2-エンアミド(4d)。Biotage(溶離剤:CH2Cl2からCH2Cl2/MeOH、6:1)で精製して、無色固体(94%)を得た。固体をEt2O-ヘキサンで粉砕して、4d(68%)を得た。
4d:無色粉末;
【0174】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-(ナフタレン-2-イル)ペンタ-2-エンアミド(4e)。Biotage(溶離剤:CH2Cl2からCH2Cl2/MeOH、6:1)で精製して、無色固体(89%)を得た。固体をEt2O-ヘキサンで粉砕して、4d(76%)を得た。
4d:無色粉末;
【0175】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-2-(4-ヒドロキシフェニル)-3-o-トリルペンタ-2-エンアミド(5a)。MeOH(2ml)中の4a(75mg、0.153mmol)の溶液に、1,4-ジオキサン中の4N HCl(0.4ml)を氷冷下で加え、混合物を室温で2時間撹拌した。H2O中のNaHCO3の溶液を反応混合物に氷冷下で注ぎ、全体をAcOEtで抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。残渣をAcOEtで結晶化して、5a(74%)を得た。
5a:無色粉末;
【0176】
化合物5b〜eを、5aの調製に用いたものと同じ方法により調製した。
【0177】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-2-(4-ヒドロキシフェニル)-3-m-トリルペンタ-2-エンアミド(5b)。
5b:無色粉末(AcOEt、86%);
【0178】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-2-(4-ヒドロキシフェニル)-3-p-トリルペンタ-2-エンアミド(5c)。
5c:無色粉末(AcOEt、74%);
【0179】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-2-(4-ヒドロキシフェニル)-3-(ナフタレン-1-イル)ペンタ-2-エンアミド(5d)。
5c:無色粉末(AcOEt-ヘキサン、77%);
【0180】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-2-(4-ヒドロキシフェニル)-3-(ナフタレン-2-イル)ペンタ-2-エンアミド(5e)。
5e:無色粉末(AcOEt-ヘキサン、83%);
【0181】
スキーム11
(E)-2,3-ビス(4-(メトキシメトキシ)フェニル)ペンタ-2-エン酸エチル(2a)。DMF(12ml)中の2-ペンチン酸エチル(250mg、1.98mmol)、1-ヨード-4-(メトキシメトキシ)ベンゼン(1.05g、3.98mmol)、4-(メトキシメトキシ)フェニルボロン酸(721mg、3.96mom)の混合物に、H2O(3ml)中のK2CO3(547mg、3.96mom)の溶液を氷冷下で加え、次いで混合物を室温で10分間撹拌した。PdCl2(PhCN)2(7.6mg、0.0198mmol)をAr雰囲気下で加え、混合物を室温で24時間撹拌した。氷冷下、H2Oで反応停止し、全体をEt2Oで抽出した。有機層をH2O、食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:ヘキサン/AcOEt、20:1から10:1)で精製して、2a(59%)を得た。
2a:無色油状物;
【0182】
(E)-2,3-ビス(4-フルオロフェニル)ペンタ-2-エン酸エチル(2b)。化合物2bを、2aの調製に用いたものと同じ方法により調製した。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:ヘキサン/AcOEt、30:1)で精製して、2b(43%)を得た。
2b:無色油状物;
【0183】
(E)-2,3-ビス(4-(メトキシメトキシ)フェニル)ペンタ-2-エン酸(3a)。MeOH(10ml)中の2a(420mg、1.05mmol)の溶液に2N NaOH(5.3ml)を加え、混合物を80℃で15時間撹拌した。冷却後、2N HCl(5.3ml)を氷冷下で滴加し、全体をAcOEtで抽出し、有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。残渣の固体をヘキサンで粉砕して、3a(86%)を得た。
3a:無色粉末;
【0184】
(E)-2,3-ビス(4-フルオロフェニル)ペンタ-2-エン酸(3b)。化合物3bを、3aの調製に用いたものと同じ方法により調製した。
3b:無色粉末(86%);
【0185】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-2,3-ビス(4-(メトキシメトキシ)フェニル)ペンタ-2-エンアミド(4a)。CH2Cl2(5ml)中の3a(150mg、0.403mmol)、4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)ベンゼンアミン2塩酸塩(112mg、0.442mmol)、4-ジメチルアミノピリジン(2.5mg、0.0205mmol)の混合物に、ヘキサフルオロリン酸O-ベンゾトリアゾイル-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウム(160mg、0.422mmol)を氷冷下で加え、混合物を0℃で10分間撹拌した。次いで、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(182mg、1.41mmol)を氷冷下で加えた。混合物を0℃で5分間と、室温で15時間撹拌した。氷冷下、飽和NaHCO3水溶液で反応停止し、全体をCHCl3で抽出し、有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:AcOEtからCHCl3/MeOH、10:1)で精製して、無色固体(84%)を得た。固体をEt2O-ヘキサンで粉砕して、4a(77%)を得た。
4a:無色粉末;
【0186】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-2,3-ビス(4-フルオロフェニル)ペンタ-2-エンアミド(4b)。化合物4bを、4aの調製に用いたものと同じ方法により調製した。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:CHCl3/MeOH、20:1)で精製して、無色油状物(94%)を得た。残渣をEt2O-ヘキサンで結晶化して、4b(65%)を得た。
4b:無色粉末;
【0187】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-2,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタ-2-エンアミド(5)。MeOH(1ml)中の4a(45mg、0.0842mmol)の溶液に、AcOEt中の3N HCl(0.5ml)を氷冷下で加え、混合物を室温で2時間撹拌した。H2O中のNaHCO3(126mg)の溶液を反応混合物に氷冷下で注ぎ、全体をAcOEtおよび少量のMeOHで抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。残渣の固体をEt2Oで結晶化して、5(68%)を得た。
5:無色粉末;
【0188】
スキーム12
(E)-2-(3-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-フェニルペンタ-2-エン酸エチル(2a)。DMF(8ml)-H2O(2ml)中の2-ペンチン酸エチル(350mg、2.77mmol)、1-ヨード-3-(メトキシメトキシ)ベンゼン(1.46g、5.53mmol)、フェニルボロン酸(675mg、5.54mmol)およびK2CO3(766mg、5.54mmol)の混合物を室温で10分間撹拌した。次いで、PdCl2(PhCN)2(10.6mg、0.0276mmol)をAr雰囲気下で加え、混合物を室温で24時間撹拌した。氷冷下、H2Oで反応停止し、全体をEt2Oで抽出した。有機層をH2O、食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。Biotage HPFC(溶離剤:ヘキサンからヘキサン/AcOEt、10:1)で精製して、2a(25%)を得た。
2a:無色油状物;
【0189】
化合物2b〜cを、2aの調製に用いたものと同じ方法により調製した。
【0190】
(E)-2-(4-(メトキシメトキシ)-2-メチルフェニル)-3-フェニルペンタ-2-エン酸エチル(2b)。Biotage HPFC(溶離剤:ヘキサンからヘキサン/AcOEt、10:1)で精製して、2b(16%)を得た。
2b:無色油状物;
【0191】
(E)-2-(3-フルオロ-4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-フェニルペンタ-2-エン酸エチル(2c)。Biotage HPFC(溶離剤:ヘキサン/CH2Cl2、1:1からCH2Cl2)で精製して、2c(21%)を得た。
2c:無色油状物;
【0192】
(E)-2-(3-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-フェニルペンタ-2-エン酸(3a)。MeOH(6ml)中の2a(195mg、0.573mmol)の溶液に2N NaOH(3ml)を加え、混合物を80℃で15時間撹拌した。冷却後、2N HCl(3ml)を氷冷下で滴加し、全体をAcOEtで抽出し、有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。残渣の固体をヘキサンで粉砕して、3a(69%)を得た。
3a:無色粉末;
【0193】
化合物3b〜cを、3aの調製に用いたものと同じ方法により調製した。
【0194】
(E)-2-(4-(メトキシメトキシ)-2-メチルフェニル)-3-フェニルペンタ-2-エン酸(3b)。
3b:無色粉末(60%);
【0195】
(E)-2-(3-フルオロ-4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-フェニルペンタ-2-エン酸(3c)。
3c:無色粉末(82%);
【0196】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-2-(3-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-フェニルペンタ-2-エンアミド(4a)。CH2Cl2(3ml)中の3a(70mg、0.224mmol)、4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)ベンゼンアミン2塩酸塩(62.4mg、0.246mmol)、4-ジメチルアミノピリジン(1.4mg、0.0115mmol)の混合物に、ヘキサフルオロリン酸O-ベンゾトリアゾイル-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウム(93.4mg、0.246mmol)を氷冷下で加え、混合物を0℃で10分間撹拌した。次いで、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(101mg、0.781mmol)を氷冷下で加えた。混合物を0℃で5分間と、室温で15時間撹拌した。氷冷下、飽和NaHCO3水溶液で反応停止し、全体をCHCl3で抽出し、有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。Biotage HPFC(溶離剤:CH2Cl2からCH2Cl2/MeOH、6:1)で精製して、無色固体(99%)を得た。固体をEt2O-ヘキサンで粉砕して、4a(65%)を得た。
4a:無色粉末;
【0197】
化合物4b〜cを、4aの調製に用いたものと同じ方法により調製した。
【0198】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-2-(4-(メトキシメトキシ)-2-メチルフェニル)-3-フェニルペンタ-2-エンアミド(4b)。Biotage HPFC(溶離剤:CH2Cl2からCH2Cl2/MeOH、6:1)で精製して、無色固体(86%)を得た。固体をEt2O-ヘキサンで粉砕して、4b(68%)を得た。
4b:無色粉末;
【0199】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-2-(3-フルオロ-4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-フェニルペンタ-2-エンアミド(4c)。Biotage HPFC(溶離剤:CH2Cl2からCH2Cl2/MeOH、6:1)で精製して、淡黄色固体(89%)を得た。固体をヘキサンで粉砕して、4c(70%)を得た。
4c:無色粉末;
【0200】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-2-(3-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルペンタ-2-エンアミド(5a)。MeOH(2ml)中の4a(50mg、0.105mmol)の溶液に、1,4-ジオキサン中の4N HCl(0.26ml)を氷冷下で加え、混合物を室温で3時間撹拌した。H2O中のNaHCO3の溶液を反応混合物に氷冷下で注ぎ、全体をAcOEtで抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。残渣をAcOEtで結晶化して、5a(73%)を得た。
5a:無色粉末;
【0201】
化合物5b〜cを、5aの調製に用いたものと同じ方法により調製した。
【0202】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-2-(4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)-3-フェニルペンタ-2-エンアミド(5b)。
5b:無色粉末(AcOEt-Et2O、80%);
【0203】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-2-(3-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルペンタ-2-エンアミド(5c)。
5c:無色粉末(AcOEt、71%);
【0204】
【0205】
実施例22
本実施例は、以前に同定されていない膜結合エストロゲン受容体の同定および特徴づけ、ならびにSERMの同定および評価のための検定を記載する。
【0206】
SERM検定およびスクリーニングのための一般的方法
Oregon Health Sciences Universityの飼育施設で飼育された雌Topekaモルモット(400g〜600g)および雌の多色モルモット(400g〜500g、Elm Hill, MA)を用いた。モルモットを一定の温度(26℃)および光の下に維持した(06:30〜20:30の間)。動物を個々に収容し、食物および水は無制限に提供した。実験の5〜7日前に、ケタミン/キシラジン麻酔(それぞれ、33mg/kgおよび6mg/kg;皮下)下で卵巣を摘出し、実験の24時間前にゴマ油媒体(0.1mL、皮下)を与えた。血清エストロゲン濃度を、実験日に収集した体幹血液からラジオイムノアッセイによりもとめ(Wagner et al., J Neurosci 21: 2085-2093, 2001)、10pg/mL未満であった。さらなる群の動物(n=6)を卵巣摘出し、1週間後の屠殺の24時間前に、油媒体、安息香酸エストラジオール(油中25μg)または化合物8(実施例4、油中25μg)を注射した。
【0207】
これらの試験において、野生型C57BL/6マウスをJackson Laboratoriesから得た。すべての動物を、制御温度(25℃)および光周期の条件(14時間点灯、10時間消灯;07:00〜21:00の間点灯)下で維持し、食物および水を無制限に提供した。マウス成獣をイソフルラン麻酔下で卵巣摘出し、1週間回復させた。この時点で、動物に油媒体、安息香酸エストラジオール(EB;1μg)または化合物8(2μgまたは5μg)を1日1回2日間注射し、麻酔し、24時間後に断頭により屠殺した。後の組織検査のために、子宮を回収し、秤量し、4%パラホルムアルデヒドで固定した(データは示していない)。
【0208】
市販薬物:
薬物は、特に記載がないかぎり、Calbiochem(LaJolla, CA, USA)より購入した。テトロドトキシン(TTX;Alomone, Jerusalem, Israel)をMilli-Q H2Oに溶解し、0.1%酢酸でさらに希釈した(最終濃度1mM;pH4〜5)。17β-エストラジオール(17β-エストラジオール)をSteraloids(Wilton, NH, USA)より購入し、再結晶して純度を確保し、100%エタノールに溶解して保存液濃度を1mMとした。17α-エストラジオール(1mM、Steraloids)、抗エストロゲン:ICI 182, 780(10mM, Tocris Cookson, Ballwin, MO)、および選択的エストロゲン受容体モジュレーターである4-OH-タモキシフェン(10mM、Steraloids)、ラロキシフェン(10mM、Eli Lilly, Indianapolis, IN)ならびに化合物8(10mM)も100%エタノールに溶解した。17-ヘミコハク酸17β-エストラジオール:BSA(17β-エストラジオール-BSA、1mM、Steraloids)をH2O中に溶解した。タンパク質キナーゼA阻害剤であるH-89 2塩酸塩(10mM)、タンパク質キナーゼA活性化剤であるフォルスコリン(50mM)、タンパク質キナーゼC阻害剤である塩酸ビスインドリルマレイミドI(BIS、100μM)、Go6976(2mM)、およびロットレリン(10mM)、ホスホリパーゼC阻害剤であるU73122(20mM)、より活性の低い類縁体U73343(20mM)、ならびにMEK1阻害剤であるPD98059(50mM)をDMSOに溶解した。タンパク質キナーゼA阻害ペプチドである6-22アミド(1mM)、タンパク質キナーゼA阻害剤:Rp-cAMPS(50mM)およびコレラ毒素Aサブユニット(1μg/μL)をH2Oに溶解した。Gq αサブユニットのC末端を模倣するように設計されたGq結合タンパク質、およびGs αサブユニットのC末端を模倣するように設計されたGs α結合タンパク質は、PeptidoGenic Research(Livermore, CA)が合成した。Gqペプチドのペプチド配列は、Ac-LGLNLKEYNLV-OHであり、Gsペプチドのペプチド配列は、CRMHLRQYELLであった。これらのペプチドもH2Oに溶解した。BAPTA 4ナトリウム塩(1,2-ビス-(o-アミノフェノキシエタン)-N,N,N',N'-4酢酸)を10mMの濃度で内液に溶解した。保存溶液の一定量を、必要とされるまで適宜保存した。
【0209】
統計分析
群間の比較のための統計分析を一元分散分析(および事後(Newman-Keuls)対分析)を用いて行った。誤差の可能性が5%未満である場合、差を統計的有意であると考えた。
【0210】
組織の調製:
実験日に、動物を断頭し、その脳を頭蓋から取り出し、視床下部を摘出した。得られた視床下部のブロックを、プラスチックの切断プラットフォーム上に載せ、次いでこれを、氷冷し、酸素化(95%O2、5%CO2)人工脳脊髄液(aCSF、NaCl、124mM;NaHCO3、26mM;デキストロース、10mM;HEPES、10mM;KCl、5mM;NaH2PO4、2.6mM;MgSO4、2mM;CaCl2、1mM)を十分に満たしたビブラトーム中に固定した。弓状を通して4つの冠状スライス(350μm)を切断した。スライスを酸素化aCSFを含むマルチウェル補助チャンバーに移し、約2時間後の電気生理学的記録までそこに維持した。
【0211】
電気生理学:
電位固定法におけるホールセルパッチ記録を、以前に記載されたとおりに行った(Wagner et al., J Neurosci 21: 2085-2093, 2001)。簡単に言えば、CaCl2以外は同じ成分および各々の濃度を含み、CaCl2は2mMに上げた、暖かい(35℃)、酸素化aCSFで灌流したチャンバー中でスライスを維持した。人工CSF(aCSF)およびすべての薬物溶液を、蠕動ポンプにより1.5mL/分の速度で灌流した。薬物溶液を20mLシリンジ中で、適当な保存溶液をaCSFで希釈することにより調製し、流れを三方コックで制御した。
【0212】
ホールセル記録のために、電極をホウケイ酸ガラスで作成した(World Precision Instruments, Inc., Sarasota, FL, USA;外径1.5mm)。次いで、作成した電極に、0.5%ビオシチンを含み、グルコン酸K+、128mM;NaCl、10mM;MgCl2、1mM;EGTA、11mM;HEPES、10mM;ATP、1.2mM;GTP、0.4mMからなり;pHを1N KOHで7.3〜7.4に調節し;272〜315mOsmの内液を満たした。Axopatch 1D前置増幅器(Axon Instruments, Union City, CA)を用いて、電位パルスを増幅し、電極を通過させた。生じた電流偏位をデジタルオシロスコープ(Tektronix 2230, Beaverton, OR, USA)を用いてモニターした。電流偏位の低下後、シール(>1GΩ)を形成するために、ポリエチレンチューブで電極に接続された5mLのシリンジを介して陰圧をかけた。シールの形成後、吸入により細胞内アクセスを達成し、続いて1μM TTXにより少なくとも4〜6分間灌流して、自然発火およびシナプス電位を阻止し、その後GABAB受容体アゴニストであるバクロフェンを適用した(図1)。バクロフェンに対するすべての応答を、電位固定法において外向き電流として測定し(Vhold=-60mV)、記録の間中アクセス抵抗(20〜30MΩの範囲のアクセス抵抗)における10%未満の変化を示した細胞のみを本試験に含めた。膜電流は、pClamp7.0(Axon Instruments, Union City, CA)に結合したDigidata 1200インターフェースを介してアナログ-デジタル変換を受けた。電流のローパスフィルタリングを、2KHzの周波数で行った。液体接合部電位は-10mVで、後のデータ分析のために較正した。
【0213】
視床下部弓状ニューロンの事後同定:
電気的生理学的記録に続いて、スライスをセーレンセンリン酸緩衝液(pH7.4)中4%パラホルムアルデヒドで120分間固定し、セーレンセンリン酸緩衝液に溶解した20%スクロース中に終夜浸漬し、次いでO.C.T.包埋媒質中で凍結し、以前に記載されたとおり免疫細胞化学のために調製した(Kelly et al., Methods in Neurosciences: Pulsatility in Neuroendocrine Systems, pp 47-67. San Diego: Academic Press, Inc, 1994.)。簡単に言うと、冠状切片(20μm)をクリオスタット(Leitz Model 1720 Digital Cryostat)上で切断し、Fisher SuperFrost Plusスライド上に載せた。切片を0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)で5分間洗浄し、次いでストレプトアビジン-Cy2(Jackson ImmunoResearch Laboratories, PA)(1:1000)を2時間適用した。反応を緩衝液で洗浄することにより停止した。スライスをNikon Eclipse 800蛍光顕微鏡(Nikon Instruments, Melville, NY)を用いて、注入ニューロンについてスキャンした。ビオシチンを満たしたニューロンの位置確認の後、適当な切片を含むスライドを、以前に記載されたとおり、蛍光免疫組織化学を用いてチロシンヒドロキシラーゼ(TH)またはβ-エンドルフィンの存在について分析した(Kelly et al., Methods in Neurosciences: Pulsatility in Neuroendocrine Systems, pp 47-67. San Diego: Academic Press, Inc, 1994.)。簡単に言うと、ビオシチン同定ニューロン有する切片をモノクローナルTH抗体と1:10,000で(Diasorin, Stillwater, MN)、またはポリクローナルβ-エンドルフィン抗体と1:5,000で(Dave et al., Endocrinology 117: 1389-1396, 1985.)終夜インキュベートし、0.1Mリン酸緩衝液で洗浄し、続いて、それぞれヤギ抗マウスIgG-Cy3と1:500で、またはロバ抗ウサギIgG-Cy3と1:500で(Jackson ImmunoResearch Laboratories, PA)インキュベートした。切片をリン酸ナトリウム緩衝液で洗浄し、5%N-プロピル没食子酸塩を含むグリセロールグリシン緩衝液を用いてカバーガラスを適用した。免疫染色した細胞をNikon顕微鏡を用いて撮影した。図2参照。
【0214】
エストロゲン受容体結合検定:
エストロゲン受容体(ER)αおよび(ER)βに対する化合物の相対結合親和性を、市販の全長型の(ER)αおよび(ER)β(PanVera Corp, Madison, WI, USA)の両方と一緒にスピンカラムアッセイを用いて評価した。10mMトリス、pH7.5、10%グリセロール、2mM DTTおよび1mg/mL BSAならびに3nM [2,4,6,7,16,17-3H]エストラジオールを含む溶液に、受容体を最終濃度15nMとなるように4℃で加えた。この溶液の100μLを、エタノール中のリガンド1μLに加え、ピペッティングにより穏やかに混合し、4℃で終夜インキュベートした。次いで、混合物を、製造者の指示に従って結合緩衝液(トリチウム化エストラジオールは含まない)で平衡化した、G-25 Sephadex(Harvard Apparatus Inc.)を含むミクロスピンカラムに吸着させた。結合したエストラジオールを室温、2000×gで4分間スピンすることにより、遊離リガンドから分離した。次いで、ろ液を2.5mLのシンチラントに加え、液体シンチレーションカウンターで計数した。結合曲線を、Prism(GraphPad Software, San Diego, CA)統計分析ソフトウェアパッケージで単結合部位競合モデルを用いてあてはめた。標準偏差を、EC50値から0.2 log unit未満であると決定した。次いで、相対結合親和性パーセントを、未標識のエストラジオールについてもとめたIC50を、リガンドのIC50で除し、100を乗じることにより決定した。
【0215】
分散単一細胞RT-PCR:
モルモットの350μmの冠状視床下部スライスを、尾側から頭側へとビブラトーム上で切断し、酸素化aCSFを含む補助チャンバー内に置いた。スライスを、分散前にチャンバー内で1〜2時間回復させた。視床下部の弓状核を顕微解剖し、1mg/mLのプロテアーゼXIV(Sigma, St. Louis, MO)を含むハンクス液(HBSS;DEPC-処理水中のCaCl2、1.26mM;MgSO4、1mM;KCl、5.37mM;KH2PO4、0.44mM;NaCl、136.89mM;Na2HPO4、0.34mM;D-グルコース、5.55mM;Hepes、15mM(pH7.3、300mOsm)2〜3mL中、37℃で約15分間インキュベートした。次いで、組織を1倍量の低カルシウムaCSFで4回と、HBSSで2回洗浄した。細胞を、熱処理により先端を滑らかにしたパスツールピペットで粉砕して分離し、皿上に分散し、HBSSで1.5mL/nの速度で灌流した。細胞をNikon倒立顕微鏡を用いて可視化し、個々のニューロンをパッチし、陰圧をかけてパッチピペット内に回収した。ピペットの中身を、0.5μLの10×緩衝液(100mMトリス-HCl、500mM KCl、1%トリトン-X 100;Promega, Madison, WI)、15UのRNasin(Promega)、0.5μLの100mM DTTおよびDEPC-処理水の溶液5μLを含む、シリコン化微量遠心チューブに放出した。
【0216】
加えて、視床下部の組織をホモジナイズし、全RNAを製造者のプロトコルに従ってRNeasyキット(Qiagen, Valencia, CA)を用いて抽出した。1μL中の回収した細胞溶液および25ngの視床下部全RNAを、65℃で5分間変性させ、氷上で5分間冷却し、次いで50UのMuLV逆転写酵素(Applied Biosystems, Foster City, CA)、1.5μLの10×緩衝液、2mM MgCl2、0.2μLのデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)、15UのRNasin、10mM DTT、100ngのランダムヘキサマーおよびDEPC処理水を最終量が20μLまで加えることにより、一本鎖cDNAを細胞RNAから合成した。陰性対照として使用する細胞および組織RNAを、前述のとおりであるが、逆転写酵素は加えずに処理した。反応混合物を42℃で60分間インキュベートし、99℃で5分間変性させ、氷上で5分間冷却した。
【0217】
PCRを、各RT反応からのcDNAテンプレート3μLを用い、下記を含むPCR反応量30μLで実施した:3μLの10×緩衝液、2.4μLのMgCl2(TH、POMC、GABAB-R2、PKCδ、アデニル酸シクラーゼVIIおよびGAPDHのために最終濃度2mM)または3.6μLのMgCl2(GADのために最終濃度3mM)、0.2mM dNTP、0.2μM順方向および逆方向プライマー、2ユニットのTaq DNAポリメラーゼ(Promega)、ならびに0.22μgのTaqStart Antibody(Clontech, Palo Alto, CA)。Taq DNAポリメラーゼおよびTaqStart Antibodyを合わせ、室温で5分間インキュベートし、反応内容物の残りをチューブに加え、94℃で2分間インキュベートした。次いで、各反応を以下のプロトコルに従い、60サイクル(GAPDHに関しては35サイクル)の増幅を行った:94℃、45秒;55℃(GAD)、57℃(PKCδ)、58℃(GABAB-R2)、60℃(THおよびアデニル酸シクラーゼVII)、61℃(POMC)、63℃(GAPDH)45秒;72℃、1分10秒;最終72℃で5分間伸張。10マイクロリットルのPCR生成物を1.5%アガロースゲル上で臭化エチジウムにより可視化した。
【0218】
プライマーはすべて、Invitrogen(Carlsbad, CA)が合成し、以下の通りであった;
。
【0219】
17β-エストラジオールおよびSERMは視床下部ドーパミンニューロンおよびプロオピオメラノコルチン(POMC)ニューロンにおいてGABAB応答を急速に減弱させる
以下のデータは、17β-エストラジオールおよびSERMが視床下部ニューロンにおいてバクロフェン誘導性GABAB応答を急速に減弱させることを示し、これはこれらの化合物が非転写事象を通して神経伝達に影響することを示す。ホールセル記録を、卵巣摘出した雌モルモットからの弓状ニューロン(n=195)で行った。図1は、ホールセルパッチ、電位固定試験(Vhold=-60mV)における薬物投与のプロトコルを例示する図である。シールを形成し、ホールセルコンフィギュレーションが得られた後、スライスをTTX(1μM)で5分間灌流した。GABABアゴニストのバクロフェン(EC50濃度5μMで)を定常状態の外向き電流が得られるまで(第1の応答、R1)灌流することにより、第1のGABAB受容体仲介性応答が生じた。バクロフェンのウォッシュアウト後、電流は薬物投与前の静止レベルに戻った。次いで、細胞を17β-エストラジオールおよび/または他の薬物で15分間処理し、バクロフェン(5μM)で再度灌流し、第2の応答(R2)を測定した。17β-エストラジオールおよび/または他の薬物のバクロフェン応答に対する効果を、R2/R1のパーセントとして表す。これらのニューロンのサブグループ(n=55)を、二重標識免疫細胞化学を用いて同定した(データおよび画像は示していない)。これにより細胞の41%がTH陽性(すなわちドーパミンニューロン)であり、39%がβ-エンドルフィン陽性(すなわちPOMCニューロン)であることが判明した。さらに、GAD65の二重免疫細胞化学的染色およびインサイチューハイブリダイゼーションに基づき、弓状ドーパミンニューロンのサブグループはGABAを同時発現し(Ronnekleiv、未公開の知見)、これはscRT-PCRデータにより実証された(以下を参照)。電気生理学的分析のために、ギガオーム以上のシールを有する細胞のみを本試験に含めた。平均静止膜電位は0pAの保持電流で-54.3±0.4mVであり、平均入力抵抗は1.9±0.3GΩであった。さらに、A12ドーパミンニューロンの50%はT型Ca2+電流および過分極活性化されたカチオン電流(Ih)を示した(Loose et al., J Neurosci 10: 3627-3634, 1990.)。POMCニューロンの71%がIhおよび一時的な外向きK+電流(IA)を示した(Kelly et al., Neuroendo 52: 268-275, 1990.)。したがって、ホールセルパッチ記録により測定される受動的膜特性は、単一電極の電位固定記録を用いて得られる結果とほぼ同等である(Loose et al., J Neurosci 10: 3627-3634, 1990.;Kelly et al., Neuroendo 52: 268-275, 1990.)。
【0220】
ホールセル記録法を用いて、GABAB受容体アゴニストのバクロフェンによる、17β-エストラジオールのGタンパク質共役型内向き整流性K+チャネル(GIRK)のコンダクタンスの活性化に対する急速な効果を測定した。17β-エストラジオールは、視床下部弓状ニューロンにおいて、μ-オピオイドおよびGABAB受容体仲介性応答の両方を急速に減弱させる(Lagrange et al., 1994;Lagrange et al., 1996;Lagrange et al., 1997)。したがって、GABAB応答の17β-エストラジオール調節を測定するために、図1に示すプロトコルに従って、バクロフェンのEC50濃度(5μM)を用いた。バクロフェンに応答して強い外向き電流が測定され、これはウォッシュアウト後に弱まった(図5グラフAおよび図6)。20分後にバクロフェンを適用すると、同様の強い応答が誘発され、これは脱感作および減弱が5μMバクロフェンの連続適用に応答して起こらないことを示唆している。しかし、17β-エストラジオール(100nM)を合間に(すなわち、バクロフェンの最初の適用のウォッシュアウト後)適用した場合、バクロフェンの第2の適用に応答して41%の有意な減少が見られた(p<0.005)(図5グラフBおよび図6)。100nM 17β-エストラジオール適用前および適用中に生じた電流/電圧の関係は、このステロイドがバクロフェン仲介性応答に対する逆の電位を変化させないことを示した:対照Eバクロフェン=-88.8±3.6mV、n=13;これに対し17β-エストラジオール適用後のEバクロフェン=-85.4±3.9mV、n=12(図3Aおよび図3B)。17β-エストラジオールの作用は立体特異的であり、したがって生物学的に不活性な立体異性体である17β-エストラジオール(100nM)はバクロフェン応答に対して効果がなかった(図5グラフCおよび図6)。さらに、抗エストロゲンICI 182,780を17β-エストラジオールとともに灌流した場合、17β-エストラジオールの作用は阻止された(図6)。ICI 182,780単独での処置では、バクロフェン応答に対して効果がなかった(データは示していない)。
【0221】
この以前に同定されていないエストロゲン受容体を、膜不透過性エストロゲン結合体である17β-エストラジオール-BSAを用いることにより、膜結合していると決定した。17β-エストラジオール-BSA(100nM)はバクロフェン応答を阻害するのに十分に有効であって、これはこのエストロゲン受容体仲介性の応答が原形質膜で開始されることを示している(図5グラフDおよび図6)。17β-エストラジオール-BSA調製物の完全性を、スライス灌流液の17β-エストラジオールのラジオイムノアッセイを行うことにより立証した。未結合の17β-エストラジオールは媒質中には検出されず(データは示していない)、これは17β-エストラジオール-BSA結合体が遊離17β-エストラジオール不純物を含まないことを示した。
【0222】
以前に同定されていない、膜結合エストロゲン受容体を、いくつかのSERMを用いることにより特徴付けた。タモキシフェン(1μM)は不活性(対照に対してp>0.05)であり、GIRKのバクロフェン活性化における17β-エストラジオールの効果を減弱させなかった(17β-エストラジオールのR2/R1:58.6±3.4%、n=10;これに対しタモキシフェン+17β-エストラジオール:60.4±6.6%、n=5)。しかし、4-OHタモキシフェン(1μM)は、バクロフェン応答を25%阻止することにより、17β-エストラジオールの作用を部分的に模倣した(図6)。図6に関して、17β-エストラジオール(100nM)はGABAB受容体仲介性外向き電流を41%減弱させた。17β-エストラジオールのバクロフェン応答に対する阻害作用は、エストロゲン受容体アンタゴニストICI 182,780(1μM)により阻止された。ウシ血清アルブミン結合エストロゲン(17β-エストラジオール-BSA、100nM)、4-OHタモキシフェン(1μM)、ラロキシフェン(1μM)、GW5638(1μM)および化合物8(10nM)もバクロフェン応答を阻害したが、17α-エストラジオール(1μM)は効果がなかった。バーは群ごとに試験した4〜11個の細胞の平均±S.E.M.を表す(媒体対照群に対して、***p<0.005、**p<0.01、*p<0.05)。4-OHタモキシフェンは常にオレフィン異性体のE/Z混合物として存在するため(Katzenellenbogen et al., J Steroid Biochem 22: 589-596, 1985.)、これらの異性体の一方だけがこの新規エストロゲン応答を仲介するのに活性である可能性がある。ヒドロキシル化された芳香環を有する別のSERMであるラロキシフェン(1μM)は、バクロフェン応答の抑制における有効性に関して17β-エストラジオールの作用を完全に模倣した(図6)。これに対して、ヒドロキシル化されていないSERMであるGW-5638は、構造的にタモキシフェンのトリフェニルエチレン核に類似し、バクロフェンによるGIRKチャンネル活性化を阻害するのに17β-エストラジオールよりも有意に有効であることが判明した(図6)。
【0223】
化合物8は急速な応答を選択的に減弱させる核内ER活性を欠くSERMである:
前述の化合物はすべて核内エストロゲン受容体に対する親和性の高いリガンドであり、このことは観察された薬理学の解釈を複雑にし、核内エストロゲン受容体に対する役割をはっきりと排除することを困難にしている。しかし、化合物8(実施例4)は、核内エストロゲン受容体(ER)αまたはERβに対する結合親和性が17β-エストラジオールに比べて約100万分の1である(表1)。さらに、4-OHタモキシフェンとは異なり、化合物8は幾何的に安定であり、E/Zオレフィン異性体の混合物としては存在しない。加えて、化合物8は17β-エストラジオールの用量の5倍でも向子宮作用がまったくなく(図6Aおよび図6B)、8が核内エストロゲン受容体により仲介される4-OHタモキシフェン様エストロゲン活性を有していないことがインビボで確認される。しかし、ホールセル電気生理学的検定において、GABAB応答を減弱させるのに10nMの8は100nMの17β-エストラジオールと同程度に有効であった(図6)。
【0224】
(表1) 全長(ER)αまたは(ER)βに対するリガンドの相対結合親和性(RBA)*
*相対結合親和性は17β-エストラジオールの効力のパーセンテージで表す。実施例22に記載の条件下で、17β-エストラジオールは(ER)αに対してIC50=5nM、(ER)βに対してIC50=3nMを有することが判明した。
【0225】
17β-エストラジオールのGABAB応答に対する急速な効果はタンパク質キナーゼA(PKA)に関与する:
GABABの17β-エストラジオール仲介性調節における特定のシグナル伝達タンパク質の関与を、異なる経路を遮断することにより評価した。例えば、PKA経路の活性化が関与する場合、17β-エストラジオールのGABAB応答に対する効果は、PKAの阻害により阻止され、PKAの刺激により模倣されるはずである。したがって、選択的なPKA阻害剤および活性化剤を用いて、PKAが関与していることを示した。例えば、図8グラフAおよび図9に示すとおり、フォルスコリン(10μM)は17β-エストラジオールの作用を模倣して、GABAB応答を減弱させうる。他方で、特異的PKA阻害剤H89(10μM)は、17β-エストラジオールが誘導するGABAB応答の抑制を阻止した(図8グラフBおよび図9)。
【0226】
GABAB応答の17β-エストラジオール調節におけるPKAの関与を、ニューロン上でのPKAの活性化を阻止する特異的PKA阻害性ペプチドPKI(タンパク質キナーゼA阻害剤である6-22アミド、20μM)または加水分解不可能なcAMP類縁体であるRp-cAMP(200μM)の作用によりさらに確認した。PKIまたはRp-cAMPでの約15分の透析後に、17β-エストラジオール誘導性のGABAB応答の低減が消失した(図8グラフCおよび図9)。コレラ菌(vibrio cholerae)により分泌される細菌外毒素であるコレラ毒素(CTX)は、Gタンパク質GsをADP-リボシル化し、それにより明らかに不可逆的な様式でアデニル酸シクラーゼ活性を刺激することによって、様々な組織における細胞内cAMPレベルを高める。CTXの活性ユニットの個々の細胞への細胞内透析は、GABAB応答のエストロゲンによる急速な阻害を妨害した(図8グラフDおよび図9)。これらの結果は、GABAB応答の17β-エストラジオールによる抑制は、PKAの活性化を必要とすることを示している。図9は、試験したPKA薬物の効果の概要を示している。PKA活性化剤のフォルスコリンは17β-エストラジオールの効果を模倣することができ、特異的PKA阻害剤であるH89(10μM)、Rp-cAMPSおよびPKAIはこの効果を阻止することができた。CTX-Aは17β-エストラジオールによるバクロフェン応答の減弱を妨害することができたが、変性CTX-Aはできなかった。バーは群ごとに試験した4〜11個の細胞の平均±S.E.M.を表す(媒体対照群に対して、***p<0.005、*および#p<0.05;CTX-A+17β-エストラジオール対変性CTX-A+17β-エストラジオール、p<0.05)。
【0227】
GABAB応答の減弱はタンパク質キナーゼC□(PKCδ)□に関与する:
いくつかの選択的PKC阻害剤の効果によって示されるとおり、PKCもGABAB応答の17β-エストラジオール調節に関与している。第1の阻害剤、ビスインドリルマレイミド(BIS)は、PKCの通常のイソ型、新規のイソ型、および異常なイソ型を区別しない、PKCの選択的阻害剤である。第2のGo6976は、通常のPKCイソ型の選択的阻害剤である(Martiny-Baron et al., J Biol Chem 268: 9194-9197, 1993.;Way et al., Trends Pharmacol Sci 21: 181-187, 2000)。BISを用いたニューロンの処置により、17β-エストラジオールの効果はほぼ除去された(図10グラフAおよび図11)。これに対して、Go6976の処置は効果がなかった(図11)。事実、細胞内EGTAを、EGTAと同様のCa2+親和性を有するが速度がはるかに速いカルシウム緩衝液である、10mM 1,2-ビス-(o-アミノフェノキシエタン)-N,N,N',N'-四酢酸(BAPTA)で置き換えた後でも、GABAB応答のエストロゲン阻害が観察された(図10グラフBおよび図11)。PKCの通常のイソ型はこのレベルのカルシウム緩衝化では活性である可能性が低いため、これらの結果はエストロゲンの効果を仲介する際の、Ca2+非依存性の新規PKCイソ型の役割をさらに支持する。最後に、選択的PKCδ阻害剤であるロッテリン(5μM)は、17β-エストラジオールの視床下部ニューロンにおけるGABAB応答を阻害する能力を完全に阻止した(図10、グラフCおよび図11)。図11は、試験したPKC阻害剤の効果の概要を示している。バーは群ごとに試験した4〜11個の細胞の平均±S.E.M.を表す(媒体対照群に対して、***p<0.005、**p<0.01、*p<0.05)。
【0228】
17β-エストラジオールによるGABAB応答の阻害はGαqに関与する:
さらなる結果は、17β-エストラジオールによるバクロフェン誘導性GABAB応答の阻害はメッセンジャータンパク質Gαqに関与することを示している。特異的PKC阻害剤であるBISは17β-エストラジオールの作用を阻止したが、フォルスコリン(10μM)はBIS阻止の存在下でエストロゲンの効果を模倣することが判明した(図10グラフDおよび図11)。したがって、PKCの作用はPKAの活性化の上流である。事実、GABAB応答のエストロゲン受容体仲介性阻害は、GαqのC末端結合部位を模倣するペプチド(11アミノ酸)で弓状ニューロンを処置することにより示されるとおり、Gαqの活性化に依存していた(Akhter et al., Science 280: 574-577, 1998.)。このペプチドは、Gタンパク質共役型受容体とGαqタンパク質との相互作用を阻止する。このペプチド(200μM)で透析した細胞(図12グラフAおよび図13)では、GαsのC末端ドメインを模倣する対照ペプチド(11アミノ酸)で透析した細胞(図12グラフBおよび図13)と比較して、GABAB応答の17β-エストラジオール仲介性の低減が有意に阻止された。したがって、Gαqは17β-エストラジオール仲介性の急速な阻害において主要な役割を果たす。
【0229】
さらに、周知のGαqエフェクターである、ホスホリパーゼC(PLC)の活性化も役割を果たす。事実、PLCβの活性化は、広域PLC阻害剤であるU73122(10μM)を用いたニューロンの処置により示されるとおり、GABAB応答のエストロゲン誘導性阻害に必要とされている。U73122(10μM)を細胞外浴媒質中で灌流した場合、GABAB応答のエストロゲン仲介性の低減が阻止された(図12グラフCおよび図13)が、より活性の低いPLC阻害剤であるU73343は、同じ濃度でまったく効果がなかった(図12グラフDおよび図13)。図13に関して、バーは群ごとに試験した4〜11個の細胞の平均±S.E.M.を表す(媒体対照群に対して、***p<0.005、**p<0.01;U73122+17β-エストラジオール対U73343+17β-エストラジオール、p<0.05;Gqペプチド+17β-エストラジオール対Gsペプチド+17β-エストラジオール、p<0.05)。
【0230】
GABAB応答の減弱はマイトジェン活性化タンパク質(MAP)キナーゼに関与しない:
MAPキナーゼ活性の阻害は、バクロフェン応答のエストロゲン調節を妨害しない。最近の研究により、初代ニューロン皮質培養物および器官型大脳皮質移植片培養物において、17β-エストラジオールがMAPキナーゼ経路を急速に活性化することが明らかにされている(Watters et al., Endocrinology 138: 4030-4033, 1997;Singh et al., J Neurosci 19: 1179-1188, 1999;Singh et al., J Neurosci 20: 1694-1700, 2000)。しかし、MAPキナーゼの阻害剤であるPD98059(10μM、ピペット中)またはU0126(5μM)による処理は、バクロフェン応答の17β-エストラジオール阻害に影響しなかった(17β-エストラジオールのR2/R1;58.6±3.4%、n=10;これに対してPD98059+17β-エストラジオール:66.1±11.8%、n=5)。
【0231】
弓状(GABA、ドーパミンおよびPOMC)ニューロンにおけるGABAB受容体、PKCδおよびアデニル酸シクラーゼVII転写物の発現:
弓状ニューロンにおけるGABAB受容体、PKCδおよびアデニル酸シクラーゼVII転写物の発現を、75の急性的に分散した弓状ニューロンからの単一細胞RT-PCRを用いて評価した。結果から、TH発現およびPOMC発現ニューロンを含む、ニューロンの90%がGAD65転写物を発現することが判明した(データは示していない)。最も重要なことには、ニューロンの92%がGABAB R2転写物を発現し、これはバクロフェンに対する90%の応答率に相関する。さらに、単一細胞RT-PCRの結果により、ドーパミンおよびPOMCニューロンはPKCδおよびアデニル酸シクラーゼVII転写物を発現することが判明している。一つの細胞群(n=22)において、PKCδおよびアデニル酸シクラーゼVII転写物は、GAD65を同時発現するものを含む、THニューロンの大多数(70%)で発現された(図14A)。THおよびGADはこのニューロン集団の60%において共存していた。個々のニューロンに由来するcDNAの量が限られているため、POMCの発現を別の細胞群(n=29)で評価し、PKCδおよびアデニル酸シクラーゼVII転写物が、GAD65を同時発現するものを含む、POMCニューロンの大多数(75%)で発現されることが示された(図14B)。POMCおよびGADはこのニューロン集団の28%において共存していた。したがって、単一細胞RT-PCRのデータにより、ドーパミンおよびPOMCニューロンが急速なエストロゲンシグナル伝達のための重要な転写物を発現するという電気生理学的知見が確認される。GAPDH転写物を、逆転写酵素(RT)反応の内部対照と同じ細胞で分析した。一つの細胞は陰性対照(-RT)としてRTを含まなかった。基底視床下部組織RNAもRT存在下(組織対照、+)で逆転写された。RTなし(-)の組織対照を各試験に含めた。加えて、以下の対照を含めた:分散した細胞環境からのハンクス液(HBSS)および水ブランク、これらはいずれもRT-PCR後に陰性であった(データは示していない)。
【0232】
独特の膜エストロゲン受容体は17β-エストラジオールの急速効果を仲介する:
前述の結果は、膜エストロゲン受容体が同定されたことを示している。例えば、エストロゲンはGABAB受容体アゴニストであるバクロフェンの作用を抑制して、GABA、POMC、およびドーパミンニューロンにおけるGIRKチャンネルを活性化する。この17β-エストラジオールの効果は急速であり、17β-エストラジオールの添加の数分間以内に測定可能な抑制が生ずる。この応答の動態は、転写調節により作用する古典的核内エストロゲン受容体(ER)αまたは(ER)βの一つではなく、膜17β-エストラジオール受容体による応答の仲介を示している。
【0233】
この急速なエストロゲン応答について観察される薬理学は、新規膜貫通エストロゲン受容体の関与をさらに支持する。膜不透過性17β-エストラジオール-BSA結合体は、受容体のホルモン結合部位が原形質膜の細胞外表面から接近可能である膜結合受容体に対して予期されているとおり、遊離17β-エストラジオールに対して同じ応答を示す。17β-エストラジオール応答は、D環のヒドロキシル基の立体配置に関して立体特異的であり;17β-エストラジオールは急速な応答を誘発する一方で、17α-エストラジオールは不活性である。これは、17α-エストラジオールは17β-エストラジオールと比較して効力がわずかに低いにもかかわらず、核内エストロゲン受容体のアゴニストとして機能するため、注目に値する(Barkhem et al., Mol Pharm 54: 105-112, 1998.)。SERM 4-OHタモキシフェン、ラロキシフェン、およびGW-5638はすべて、この応答を仲介する際に17β-エストラジオールのように振舞う一方、ステロイド性抗エストロゲンICI-182,780は17β-エストラジオール応答に拮抗する。最も重要なことに、核内エストロゲン受容体とのエストロゲン(または抗エストロゲン)活性を欠く新規SERM 8は、17β-エストラジオールと比べて10分の1の濃度でも、この急速な17β-エストラジオール応答のより強い活性化剤である。さらに、この膜ERは、薬理学的(Schild)分析により示されるとおり、エストロゲンに対してナノモル濃度未満の親和性を有する(Lagrange et al., 1997)。これらの結果は、この急速な応答の薬理学が異なり、8の場合には、核内エストロゲン受容体のものと分離可能であることを示している(Razandi et al., Mol Endo 13: 307-319, 1999;Levin, J Appl Physiol 91: 1860-1867, 2001;Chambliss et al., Endocr Rev 23: 665-686, 2002.)。
【0234】
最近、Toran-Allerandら(Toran-Allerand et al., J Neurosci 22: 8391-8401, 2002)は、発生中の新皮質ニューロンにおけるカベロア(caveloar)様ミクロドメインに結合する、高親和性の飽和可能なエストロゲン受容体「ERX」を同定した。この膜結合受容体は、ニューロンの発生および生存にとって重要と思われる、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)、細胞外シグナル関連キナーゼ(ERK)1およびERK2の活性化と連関している(Watters et al., Endocrinology 138: 4030-4033, 1997;Singh et al., J Neurosci 19: 1179-1188, 1999;Singh et al., J Neurosci 20: 1694-1700, 2000;Ferin et al., Recent Prog Horm Res 40: 441-485, 1984.)。ERXはまた、MAPキナーゼ経路を活性化するのに17α-エストラジオールが17β-エストラジオールと効力が等しいという点で、異なる薬理学を有する(Toran-Allerand et al., J Neurosci 22: 8391-8401, 2002;Wade et al., Endocrinology 142: 2336-2342, 2001)。しかし、本明細書において示すとおり、17α-エストラジオールにはGABAB応答、または視床下部ニューロンにおけるGIRKチャンネルの同じファミリーに連関しているμ-オピオイド応答に対する効力は観察されなかっ(Lagrange et al., 1997)。同様に、GuおよびMoss(Gu et al., J Neurosci 16: 3620-3629, 1996.)は、17α-エストラジオールが、海馬における17β-エストラジオールの、CA1錐体ニューロンにおいてグルタミン酸(カイニン酸)仲介性電流を増強する作用を模倣しないことを発見した。同様に、Mermelstein et al., J Neurosci 16: 595-604, 1996は、17α-エストラジオールが、新線条体ニューロンにおいてL型カルシウム電流を低減する上で、17β-エストラジオールよりもはるかに有効性が低いことを発見した。したがって、PKC-PKA経路を介してニューロンにおけるチャンネル活性を調節する膜エストロゲン受容体は、成長および生存を促進するERK1/2の活性化に連関している受容体とは薬理学的に異なる。
【0235】
17β-エストラジオールはPKCδおよびPKAを活性化して、視床下部ニューロンにおけるGPCRとK+チャンネルとの連関を変化させる:
本明細書において詳述するデータは、視床下部ニューロンにおけるエストロゲンへの急速な応答のためのシグナル伝達経路が、図15に記載のものに従うことを示す。図15に関して、事象の順序は以下のとおりである:(1)17β-エストラジオールが新規の膜貫通エストロゲン受容体に結合する;(2)リガンド結合がGαqを活性化する;(3)活性化Gαqが次いでPLCを活性化する;(4)活性化PLCがDAGを遊離させる;(5)遊離DAGがPKCδを刺激する;(6)PKCδがアデニル酸シクラーゼ(VII)を活性化する;(7)cAMPレベルが上昇する;(8)cAMPがPKAを刺激する;(9)PKAがK+チャンネル機能にとって重要な膜標的をリン酸化する。
【0236】
タンパク質キナーゼ経路がCNSニューロンにおけるGABAB受容体仲介性シグナル伝達に影響するという、図15に示す経路についてのさらなる裏付けが発見されている。タンパク質キナーゼCの活性化は、海馬のCA1錐体ニューロンにおけるGIRKチャンネルのGABAB受容体活性化を抑制し(Dutar et al., Neuron 1: 585-591, 1988.)、小脳スライスからのノルエピネフリン放出のGABAB受容体仲介性阻害を減弱させる(Taniyama et al., J Neurochem 58: 1239-1245, 1992)。
【0237】
現在、PKCファミリーの12の公知のメンバーが存在する(Way et al., Trends Pharmacol Sci 21: 181-187, 2000)。ファミリーは配列相同性および生化学的調節に基づき3群に分類される。クラスA、すなわち通常のPKC(PKCα、βI、βIIおよびγ)は周知のCa2+依存的PKCである。クラスB、すなわち新規のPKC(PKCδ、ε、θおよびη)はCa2+非依存性である。最後に、クラスCのPKC、すなわち異型PKC(PKCζおよびτ/λ)は最も多岐にわたるクラスである。異型PKCもCa2+非依存性であり、活性化のためにジアシルグリセロールを必要としない(Way et al., Trends Pharmacol Sci 21: 181-187, 2000)。視床下部ニューロンにおけるエストロゲンの急速なGABAB抑制作用は、広域PKC阻害剤であるBISに感受性であったが、Go6976には感受性でなく、通常のPKCクラスに属していないPKCの関与を暗示している。加えて、GABAB応答のエストロゲンの阻害は、細胞内記録パッチピペットに10mM BAPTAを含んでいても変わることはなく、Ca2+依存性の通常のPKCが関与していないことを確認するものである。しかし、選択的PKCδ阻害剤であるロッテリンは17β-エストラジオールの作用を阻止し、この新規のクラスのPKCが急速な17β-エストラジオール応答のメディエーターであることを示唆している。さらに、本明細書において記載する弓状ニューロンにおけるPKCδ転写物の発現に関するscRT-PCRのデータは、GABAB応答の17β-エストラジオール仲介性阻害にPKCδを関係づけるものである。同様に、PKCδは、K+チャンネルのエストロゲン仲介性阻害および雌の遠位結腸上皮細胞における液体の保持に関与しているが、上流のシグナル伝達経路は知られていない(Doolan et al., 2000)。
【0238】
PKC活性化はPKA活性化の上流である:
GABABの17β-エストラジオール仲介性阻害におけるPKC活性化は、PKA活性化の上流である。例えば、BISの内部灌流は17β-エストラジオールによるバクロフェン応答の阻害を完全に阻止したが、浴灌流により適用したフォルスコリンによるバクロフェン応答の阻害を減弱させなかった。PKCはアデニル酸シクラーゼを活性化することが公知であり(Jacobowitz et al., J Biol Chem 268: 3829-3832, 1993.;Yoshimura et al., J Biol Chem 268: 4604-4607, 1993;Lin et al., Br J Pharmacol 125: 1601-1609, 1998);さらに、アデニル酸シクラーゼ(AC)がGαsでもフォルスコリンでもなくPKCにより活性化される場合、アデニル酸シクラーゼはGαiによる阻害に抵抗性である(Pieroni et al., Curr Opin Neurobiol 3: 345-351, 1993.)。今日まで、9つのACイソ酵素(ACのI型〜IX型)がクローン化されている。注目すべきことに、AC VIIは、他のアデニル酸シクラーゼの配列には存在しない、PKCδに結合する可能性がある部位を有しており、これはPKCδがAC VIIを直接リン酸化するのを可能にする(Nelson et al., J Biol Chem 278: 4552-4560, 2003.)。皮質、海馬、線条および小脳におけるGABAニューロンはAC VIIに対して免疫反応性であり(Mons et al., Brain Res 788: 251-261, 1998.)、本明細書において開示するとおり、視床下部のGABA、THおよびPOMCニューロンはAC VII転写物を発現する。
【0239】
GαqはPLCを通じて17β-エストラジオールによるGABAB応答の阻害を仲介する:
本明細書において記載する結果は、膜ERがメッセンジャーGαqと特異的に連結していること、およびこのメッセンジャータンパク質が17β-エストラジオールによるGABAB応答の阻害に関与していることを示している。この結論は、Gαqのペプチド断片による細胞内透析がGタンパク質との受容体相互作用を阻止した場合に観察される結果によって確認される。このGαqペプチドは、皮質錐体ニューロンにおけるGαqシグナル伝達経路を遮断するために用いられている(Carr et al., J Neurosci 22: 6846-6855, 2002.)。加えて、GABAB応答のエストロゲン仲介性の低減は、より活性の低い阻害剤であるU73343と共に灌流した細胞と比較して、ホスホリパーゼC阻害剤であるU73122により有意に低減した。したがって、メッセンジャーGαqは17β-エストラジオールによるGABAB応答の阻害に関与している。
【0240】
ほとんどのPKCはジアシルグリセロールにより活性化され、Ca2+の存在を必要とするものもある。したがって、PKCはホスホリパーゼC(PLC)-イノシトール三リン酸/ジアシルグリセロールシグナル伝達カスケードの下流である。異なる形のPLCがGαq、Gβγ(PLCβ)、およびチロシンキナーゼ(PLCγ)を含む様々なメッセンジャーによって活性化されうるため、PKCファミリーは多様な一連のシグナル伝達カスケードに関与している(Tanaka et al., Annu Rev Neurosci 17: 551-567, 1994;Battaini et al., Pharmacol Res 44: 353-361, 2001.)。
【0241】
実施例23
本実施例は、Schild分析を用いたエストロゲン受容体アンタゴニストの同定およびアンタゴニストの効力の評価を記載する。この分析の一般的プロトコルは、Lagrange et al., 1997に開示されている。累積濃度-反応曲線を、前述のホールセル電気生理的検定における選択的エストロゲン受容体アゴニストである化合物8の漸増濃度を適用することにより生成する。バクロフェンの漸増濃度を、薬物誘導性外向き電流が新しい定常レベルに到達するまで適用する。バクロフェンおよび化合物8の両方のEC50値を、SigmaPlot(Jandel Scientific, Costa Madre, CA)ソフトウェアを用いて算出し、ロジスティック式に最もうまくあてはめる。次いで、細胞をエストロゲン受容体アンタゴニストの可能性がある化合物の1nM溶液で灌流する。次いで、化合物8の漸増濃度(前述の最初の濃度-反応曲線の生成において適用したとおり)を適用し、第2の反応曲線を生成する。次いで、細胞をアンタゴニストの可能性がある化合物の2nm溶液で処理し、濃度反応曲線を繰り返す。このプロセスを、アンタゴニストの可能性がある化合物の漸増濃度で繰り返して、複数の濃度反応曲線を生成する。化合物8および提唱されるアンタゴニストが本明細書において開示する以前に同定されてない膜結合エストロゲン受容体に結合する場合、データを線形回帰にあてはめて{log(用量比-1)対-log[アンタゴニスト濃度]}-1.0の傾きが得られる。
【0242】
実施例24
本実施例は、開示する化合物の心臓保護活性の評価を記載し、新規な心臓保護性の選択的エストロゲン受容体モジュレーターを同定するための方法を提供する。4〜7週齢のアポリポタンパク質E欠損C57/B1J(apo E KO)マウス(Taconic Farmsより入手可能)の卵巣を摘出する。動物を体重により無作為化して群に分ける(1群あたりn=12〜15匹のマウス)。マウスを、その体重に基づき、消費量を週単位で測定し、それにしたがって用量を調節するプロトコルを用いて、飼料中の開示する化合物または硫酸17β-エストラジオール(1mg/kg/日)で処置する。用いる飼料は、Purinaにより調製され、0.50%コレステロール、20%ラードおよび25IU/KGのビタミンEを含む、Western式飼料(57U5)である。マウスにこのパラダイムを用いて12週間投薬/給餌する。対照群の動物にはWestern式の飼料を与え、化合物は与えない。試験期間終了時に、動物を安楽死させ、血漿試料を得る。心臓を、まず食塩水と、次いで中性緩衝化10%ホルマリン溶液を用いて、インサイチューで灌流する。
【0243】
総コレステロールおよびトリグリセリドを、それぞれBoehringer MannheimおよびWako Biochemicalsから市販されているキットによる酵素的方法を用いて定量する。血漿リポタンパク質の分離および定量を行い、各リポタンパク質画分を総コレステロール値にそれぞれのクロマトグラムのピーク面積の相対的パーセントを乗ずることにより定量する。
【0244】
大動脈のアテローム性動脈硬化を、大動脈を注意深く単離し、処理の前に血管をホルマリン固定液中に48〜72時間放置することにより定量する。アテローム性動脈硬化病変を、Oil Red O染色を用いて同定する。血管を短時間脱色し、次いで撮像する。病変を大動脈弓に沿った正面を向いて定量し、血管、特に腕頭動脈の近位端から左鎖骨下動脈の遠位端までの大動脈弓内に含まれる領域についての病原評価を行う。大動脈アテローム性動脈硬化のデータは、この規定された管腔領域内に厳密に波及する尿編のパーセントで表すことができる。
【0245】
実施例25
本実施例は、酸素欠乏/再灌流に応答しての、開示する化合物を用いての予防的神経保護の評価を記載し、新規な神経保護性の選択的エストロゲン受容体モジュレーターを同定するための方法を提供する。馴化後の雌スナネズミ(例えば、Charles River Laboratories, Kingston, NYから入手可能)をイソフルランで麻酔し、卵巣を摘出する(第0日)。翌朝(第1日)から始めて、スナネズミを媒体(10%EtOH/トウモロコシ油)、17β-エストラジオール(1mg/kg、皮下)または本明細書に開示する化合物のいずれかで皮下処置する。第6日の前に、スナネズミを終夜絶食させ(一貫した虚血性損傷を促進するため)、次いで全体の虚血性手術を行う。手術は、スナネズミをイソフルランで麻酔し、正中頚部切開により総頚動脈を可視化し、同時に両動脈を微小動脈瘤クリップで5分間閉塞させることにより進める。閉塞の後に、クリップを取り除き、脳の再灌流を可能にし、頚部切開を創傷クリップで閉鎖する。第12日に、スナネズミを致死量のCO2に曝露し、脳をドライアイスで凍結し、-80℃で保存する。
【0246】
神経保護の程度を、ニューログラニンmRNAのインサイチューハイブリダイゼーション分析により評価する。簡単に言うと、ゼラチンコーティングしたスライド上に20μM冠状クリオスタット切片を収集し、乾燥し、-80℃で保存する。処理の際に、乾燥したスライドボックスを室温まで温め、スライドを4%パラホルムアルデヒドで後固定し、無水酢酸で処理し、次いでクロロホルムおよびエタノールで脱脂および脱水する。次いで、処理した切片を載せたスライドを、50%ホルムアルデヒドハイブリダイゼーションミックス中のニューログラニンのアンチセンスまたはセンス(対照)リボプローブ(35S-UTP標識NG-241;塩基99〜340)200μL(6×106 DPM/スライド)とハイブリダイズし、加湿したスライドチャンバー中、カバースリップなしで55℃で終夜インキュベートする。翌朝、スライドをラック内に集め、2×SSC(0.3M NaCl、0.03Mクエン酸ナトリウム;pH7.0)/10mM DTTに浸漬し、RNアーゼA(20μg/ml)で処理し、0.1×SSC中、67℃で洗浄(2×30分)して、非特異的標識を除去する。脱水後、スライドをBioMax(BMR-1;Kodak)X線フィルムに終夜対向させる。
【0247】
損傷後のCA1領域の神経損失の程度を定量的に評価し、17β-エストラジオールおよび開示する化合物の有効性を評価するために、ニューログラニンハイブリダイゼーションシグナルのレベルを用いる。ニューログラニンmRNAは、CA1を含む海馬ニューロンにおいて高度に発現されるが、この脳領域のグリア細胞および他の細胞型には存在しないため、ニューログラニンmRNAをこれらの研究のために選択する。したがって、存在するニューログラニンmRNAの量の測定値は生存ニューロンを表す。ニューログラニンハイブリダイゼーションシグナルの相対光学密度の測定値は、コンピューターに基づく画像分析システム(C-Imaging Inc., Pittsburgh, Pa.)を用いてのフィルムオートラジオグラムより得る。動物1匹あたり6切片(40μm、個別)からの結果を平均し、統計的に評価する。数値を平均±S.E.M.として報告する。一元分散分析を用いてニューログラニンmRNAのレベルにおける差を試験し、得られた切片に差がないという場合はすべて、p>0.05であることを意味する。
【0248】
実施例26
本実施例は、開示する化合物を用いて達成される認知増強の評価を記載する。卵巣摘出したラット(n=50)を各々5日間連続で10分間、8方向放射状迷路に慣らす。慣らしおよび試験の前に、動物を水欠乏状態にする。迷路の各アームの端に置いた100μLの水は強化としての役割をする。放射状迷路におけるウィン-シフト課題の習得を、動物を一つの餌付きアームに出入り可能にすることにより達成する。飲水後、動物はアームから出て、中央のコンパ−トメントに再度入り、ここで動物は以前に訪れたアームまたは新規のアームに出入りすることができる。動物が新規のアームに入ることを選択すれば、正しい応答を記録する。各動物は1日5回の試行を3日間行う。最終の習得試行後、動物を以下の4群のうちの1つに割り当てる;(1)陰性対照:10%DMSO/ゴマ油媒体を1日1回6日間(1μg/kg、皮下)注射する。(2)陽性対照:安息香酸17β-エストラジオールを2日間注射し、2回目の注射後、4日間試験する(安息香酸17β-エストラジオールを、ラット1匹あたり10μg/0.1mL)。(3)17β-エストラジオールを1日1回6日間注射する(20μg/kg、皮下)。(4)試験化合物:1日1回6日間注射する(用量は変動し得る)。注射はすべて習得の最終日の試験後に開始する。第1、3、および4群の最終の注射は、作業記憶を試験する2時間前に行う。
【0249】
作業記憶についての試験は、15秒、30秒、または60秒の遅延を利用する遅延非見本合わせ課題(DNMS)である。この課題は習得課題の変形であり、ラットを中央のアレーナに置き、前と同様に一つのアームに入らせる。ラットがいったん第1のアームの途中まで移動すれば第2のアームを開き、再度ラットはこのアームを選択することが要求される。ラットがこの第2のアームを途中まで移動すると、両方のドアを閉め、遅延を開始する。遅延が終了すれば、もとの2つのドア、および第3の新規のドアを同時に開く。動物が第3の新規のアームを途中まで通過すれば、正しい応答を記録する。動物が第1または第2のいずれかのアームを途中まで移動すれば、誤った応答を記録する。各動物に3つの遅延間隔それぞれで5回の試行を行い、1匹あたり合計15回の試行を行う。
【0250】
本開示の範囲または精神から逸脱することなく、様々な改変および変形が本発明の化合物、組成物および方法においてなされることが、当業者には明白であろう。化合物、組成物および方法の他の態様は、本明細書の考察および本明細書において開示する方法の実施から当業者には明らかであろう。本明細書および実施例は例示として考えられるにすぎず、本発明の真の範囲および精神は添付の特許請求の範囲によって示されることが意図される。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2007年11月9日提出の、「Selective Estrogen Receptor Modulator Compositions and Methods for Treatment of Disease」なる標題の米国特許出願第11/938,129号の恩典を主張し、その内容は全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
政府助成の言明
本発明は、米国立衛生研究所からの助成金番号DK-57574の下での政府助成を受けて行った。米国政府は本発明において一定の権利を有する。
【0003】
分野
本開示は、選択的エストロゲン受容体モジュレーターおよびそのような選択的エストロゲン受容体モジュレーターの調製法を含む、新規化合物およびそれらの使用法に関する。
【背景技術】
【0004】
背景
エストロゲンは、ヒトにおける基本の性的特徴の発生および維持を刺激する、重要なステロイドホルモン類である。加えて、エストロゲンは様々な異なる生物学的プロセスに影響をおよぼすことが明らかにされている。骨密度の維持、中枢神経系機能および記憶の保存を含む、エストロゲンの付随的作用の多くは正の作用である。しかし、エストロゲンは、乳癌および子宮内膜癌の発生促進を含む、重篤な負の作用を有することも判明している。
【0005】
米国における80年近い平均余命に基づき、女性は人生の約3分の1を閉経後の状態で送ると予想することができる。女性のエストロゲンレベルは閉経期に劇的に低下し、閉経期の女性はしばしばエストロゲン産生の低下に関連する多くの副作用を経験する。これらの状態を治療するために、医師はホルモン補充療法を処方することがよくあり、この治療は主にエストロゲンのプロゲスチンとの組み合わせでの投与からなる。
【0006】
虚血性発作、心筋梗塞、血栓塞栓症、脳血管疾患、および子宮内膜癌のリスク増大を含む、現行のホルモン補充療法に関連するより重篤な副作用を考慮して、有効な非ステロイド性エストロゲンおよび抗エストロゲン化合物を同定するために、著しい量の研究が行われてきた。
【0007】
最も強力なエストロゲンである17β-エストラジオールの作用を模倣または阻止する多数の化合物が記載されている。エストロゲン受容体に結合し、17β-エストラジオールと同じ生物学的作用の多くを刺激する化合物は、「エストロゲン受容体アゴニスト」と呼ばれる。17β-エストラジオールのエストロゲン受容体への結合を阻害する、またはエストロゲン受容体に結合する17β-エストラジオールの作用を妨害する化合物は、「エストロゲン受容体アンタゴニスト」と呼ばれる。異なるエストロゲン受容体に異なる効力で影響をおよぼす化合物は、典型的には選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)と呼ばれる。SERMは、1つまたは複数のエストロゲン受容体を選択的に調節するよう、アゴニストまたはアンタゴニストのいずれかとして作用しうる。特定のSERM化合物はエストロゲン活性および抗エストロゲン活性が混合した活性を有し、いくつかの組織ではエストロゲン受容体アゴニストとして作用し、他の組織ではエストロゲン受容体アンタゴニストとして作用する。
【0008】
17β-エストラジオールなどのエストロゲンは、2つの核内エストロゲン受容体である(ER)αまたは(ER)βの一方に結合することにより、それらの効果を発揮すると考えられてきた。(ER)αおよび(ER)βは異なる組織において見いだされ、異なる生物学的役割を有することが明らかにされているため、研究者らは(ER)αまたは(ER)βのいずれかに選択的に結合することによって反応を行うSERMの発生に焦点を当ててきた。
【0009】
(ER)αおよび(ER)βに対して異なる活性を示す非ステロイド性SERMの2つの例はタモキシフェンおよびラロキシフェンである。タモキシフェンおよびラロキシフェンは、骨粗鬆症、心血管疾患および乳癌の治療および/または予防ならびに様々な他の疾患状態の治療および/または予防のために開発された。いずれの化合物も、血漿コレステロールレベルに対する正の効果および特定の型の癌の大幅な発生率低下と合わせて、骨ミネラル密度に対する骨保護効果を示すことが明らかにされている。残念なことに、タモキシフェンおよびラロキシフェンはいずれも、顔面潮紅などの副作用を誘導し、タモキシフェンは子宮内膜癌などの生命を脅かす障害を促進する。
【0010】
本開示は、ホルモン補充療法または公知の選択的エストロゲン受容体モジュレーターの負の作用を誘導することなく、ホルモン補充療法の所望の作用を誘発する新規非ステロイド性SERMを含む。
【発明の概要】
【0011】
概要
本開示は、新規化合物、組成物ならびに化合物および組成物の調製法および使用法を含む。一般に、開示する化合物は選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)として機能する。一つの局面において、化合物は式1を有し、その水和物ならびに薬学的に許容されるプロドラッグおよび塩を含む。さらに、開示する式のすべてのキラル、ジアステレオおよび幾何異性体が意図される。
【0012】
式1に関して、RはMに対してEまたはZでありえ、かつRはアリール、シクロアルキル、またはフェニル(ヒドロキシまたは低級脂肪族基で置換されていてもよい)を表し;Xはそれぞれの場合に独立に水素、ヒドロキシ、アルコキシ、またはハロゲンであり、ここでn=1〜2であり;Mはケトン、アミドまたはスルホンアミド基を含む。Arは芳香族基を表し、フェニル、ビフェニル、1-ナフチル、2-ナフチルを含むが、それらに限定されるわけではなく、また例としてフラン、チオフェン、ピロール、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピリジン、およびキノリン基などのヘテロアリール基を含む、任意の芳香族基でありうる。Yは、Mに対してオルト、メタまたはパラ位などの、任意の位置に結合しうる。一つの局面において、Yは-O-、-NR1-、または-S-などのヘテロ原子である。開示する式2のSERMの特定の態様において、Yはフェニル基を表す。
【0013】
続いて式1および2に関して、Gは低級アルキル基、低級アルキレニル基、炭化水素鎖、オリゴエチレングリコール鎖などのリンカー基を含む。Gが低級アルキレニル基を含む、式2の一つの態様において、Gはエチル基である。Zは、典型的にはヘテロ原子を含む。特定の態様において、Zは荷電部分、例えば、ボロネート、スルフェート、スルホネート、ホスフェート、ホスホネートまたはカルボキシ基などのアニオン基を含む。Zがカチオン基を含む例において、カチオン基はジメチルアミノまたはピペリジノ基などのアミノ基でありうる。他の例において、Zはヒドロキシル基を含む。式Y-G-Zで表される基の例は、Yが酸素などのヘテロ原子であり、式-G-Zが
の一つを表すが、それらに限定されるわけではないものを含む。
【0014】
式1および2に関して、Mは典型的にはアミドケトンまたはスルホンアミド基の1つであり、より典型的には-C(O)-;-C(O)-NR1-;-(C=S)N-、または-SO2NR1-の1つを表し;ここでR1は水素、低級アルキル基またはアラルキル基である。したがって、そのような化合物の例は式3で表すことができ、式中Qは典型的にはアミドまたはスルホンアミド連結を形成する(Qは-SO2-またはCOを表す)。
【0015】
式3またはその薬学的に許容される塩に関して:
RはHまたは低級アルキルを表し;Wはナフチル(ヒドロキシ、ハロゲン、または低級アルキルで置換されていてもよい)またはフェニル(ヒドロキシ、ハロゲン、または低級アルキルで置換されている)を表し;Mはカルボニル、-(C=O)NR1-、または-(C=S)NR1-を表し;Arは芳香族基を表し;Xはそれぞれの場合に独立にヒドロキシ、アルコキシ、またはハロゲンを表し、ここでn=1〜2であり;Yは-O-、-NR1-、または-S-を表し;Gは連結基を表し;Zはヒドロキシルまたは荷電基を表し;かつR1は水素または低級アルキルを表す。
【0016】
式4またはその薬学的に許容される塩に関して:
Rは水素または低級アルキルを表し;Wはナフチル(ヒドロキシ、ハロゲン、または低級アルキルで置換されていてもよい)またはフェニル(ヒドロキシ、ハロゲン、または低級アルキルで置換されていてもよい)を表し;Mはカルボニル、-(C=O)NR1-、または-(C=S)NR1-を表し;Arは芳香族基を表し;Xはそれぞれの場合に独立にヒドロキシ、アルコキシ、またはハロゲンを表し、ここでn=1〜2であり;Yは-O-、-NR1-、または-S-を表し;Gは連結基を表し;Zはカルボキシル、ヒドロキシまたはアミノ基を表し、ここでアミノ基はアルキルで置換されていてもよく;かつR1は水素または低級アルキルを表す。
【0017】
式5またはその薬学的に許容される塩に関して:
Rはアリール、シクロアルキル、低級アルキル、ヒドロキシルまたは低級脂肪族基で置換されていてもよいフェニルを表し;Wはナフチルまたはフェニル(H、ヒドロキシル、ハロゲン、またはメチルで置換されていてもよい)を表し;Mはカルボニル、-(C=O)NR1-、または-(C=S)NR1-を表し;Arは芳香族基を表し;Xはそれぞれの場合に独立にヒドロキシ、アルコキシ、またはハロゲンを表し、ここでn=1〜2であり;Gは連結基を表し;かつZはヒドロキシを表す。
【0018】
式6またはその薬学的に許容される塩に関して:
Rはアリール、シクロアルキル、低級アルキル、ヒドロキシまたは低級脂肪族基で置換されていてもよいフェニルを表し;Wはナフチル(ヒドロキシ、ハロゲン、または低級アルキルで置換されていてもよい)またはフェニル(ヒドロキシ、ハロゲン、または低級アルキルで置換されていてもよい)を表し;Xはそれぞれの場合に独立にヒドロキシ、アルコキシ、またはハロゲンを表し、ここでn=1〜2であり;Yは-O-、-NR1-、または-S-を表し;Gは連結基を表し;Zはカルボキシル、ヒドロキシまたはアミノ基を表し、ここでアミノ基はアルキルで置換されていてもよく;かつR1は水素または低級アルキルを表す。
【0019】
本開示は、様々な障害、特に卵巣摘出、卵巣機能不全または閉経に関連するものなどのエストロゲン欠乏によって特徴付けられる障害を治療するための方法および組成物も含む。そのような状態および障害には、一般に、自律神経機能不全、認知減退、運動機能不全、気分障害、摂食障害および心血管疾患、ならびに異なる型の障害として記載されるものが含まれる。一つの局面において、開示する化合物は特定の型の損傷に対する予防効果を発揮する。例えば、化合物を神経保護物質として用いることができる。事実、本明細書において同定する膜結合エストロゲン受容体を刺激する化合物は神経保護物質として作用して、虚血性発作に応答しての神経細胞死を低減し、再灌流損傷を阻害する。
【0020】
特定の組成物は、少なくとも1つの式1の化合物ならびに第二の治療化合物を含む。第二の化合物もエストロゲン受容体に結合することができる。例えば、一つの態様において、第二の化合物はSERMであり、別の態様において、第二の化合物は17β-エストラジオールなどのエストロゲン、またはプロゲスチンなどのプロゲステロンである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、ホールセルパッチ、電位固定試験における薬物投与のプロトコルを例示する概略図である。
【図2】図2は、13分間のホールセルパッチクランプ記録後のビオシチンで満たされたニューロンの例を示す画像であり、ビオシチン標識の程度を例示している。
【図3A】図3Aは、ドーパミンニューロンからのバクロフェン(5μM)I/V前および後の関係を示すグラフである。
【図3B】図3Bは、別の細胞における17β-エストラジオール処理後のバクロフェンI/V前および後の関係を示すグラフであり、バクロフェン応答に対する同じ逆電位を示している。
【図4A】図4Aは、エストロゲンに応答した紡錘状弓状ドーパミンニューロンのビオシチン-ストレプトアビジン-Cy2標識を示す画像である。
【図4B】図4Bは、図4Aに画像を示したニューロンにおけるチロシンヒドロキシラーゼ(TH)の免疫細胞化学的染色を示す画像である。
【図4C】図4Cは、小さい椎体弓状POMCニューロンのビオシチン-ストレプトアビジン-Cy2標識を示す画像である。
【図4D】図4Dは、図4Cに画像を示したニューロンにおけるβ-エンドルフィンの免疫細胞化学的染色を示す画像である。
【図5】図5は、ステロイド処置前および後のGABAB応答の代表的トレースを含む。
【図6】図6は、バクロフェン応答に対する17β-エストラジオールおよびSERMの効果をまとめた棒グラフを含む。
【図7】図7Aは、17β-エストラジオールおよび本明細書において開示する例示的SERMによる処置後の子宮サイズを比較しており、17β-エストラジオール処置マウスでは、油媒体処置または本明細書において開示する例示的SERMでの処置と比べて、安息香酸エストラジオール(EB)後に子宮サイズの顕著な増大が見られたことを示している。図7Bは、油およびSERM処置マウスに対してEB処置マウスの子宮重量を記録する棒グラフである(n=3〜5匹のマウス/群)。
【図8】図8は、PKA活性化剤または阻害剤存在下でのバクロフェン応答の代表的トレースを含み、GABAB応答の17β-エストラジオール減弱はタンパク質キナーゼAを必要とすることを示している。
【図9】図9は、バクロフェン応答に対するタンパク質キナーゼA(PKA)薬物の効果をまとめる棒グラフである。
【図10】図10は、PKC阻害剤存在下でのバクロフェン応答の代表的トレースを含む。
【図11】図11は、バクロフェン応答に対するタンパク質キナーゼC(PKC)阻害剤の効果をまとめる棒グラフである。
【図12】図12は、ホスホリパーゼC(PLC)およびGαq阻害剤存在下でのバクロフェン応答の代表的トレースを含む。
【図13】図13は、PLCおよびGαq阻害剤の効果をまとめる棒グラフである。
【図14】図14Aは、単一の弓状ニューロンがTH、GAD、PKCδ、AC VIIおよびGAPDHのmRNAを発現することを示す代表的ゲルである。図14Bは、単一の弓状ニューロンがPOMC、GAD、PKCδ、AC VIIおよびGAPDHのmRNAを発現することを示す代表的ゲルである。
【図15】図15は、視床下部ニューロンにおける膜結合エストロゲン受容体を介しての、神経伝達物質によって調節される、Gタンパク質結合受容体の急速および遅延エストロゲン受容体仲介性調節を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
詳細な説明
以下の用語および方法の説明は、本発明の化合物、組成物および方法をより良く記載し、本開示の実施において当業者を誘導するために提供する。本開示において用いる用語は特定の態様および例を記載するためのものにすぎず、限定を意図するものではないことも理解されるべきである。
【0023】
本明細書は以下の頭字語および略語を含む:
BAPTA:1,2-ビス-(o-アミノフェノキシエタン)-N,N,N',N'-テトラ酢酸
CTX:コレラ毒素
DAG:ジアシルグリセロール
DCM:ジクロロメタン
ddH2O:脱イオン蒸留水
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
EGTA:エチレングリコールテトラ酢酸
EtOAc:酢酸エチル
ERK:細胞外シグナル関連キナーゼ
GIRK:Gタンパク質共役型内向き整流性K+チャネル
Hex:ヘキサン
MAPKまたはMAPキナーゼ:マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ
PLC:ホスホリパーゼC
PKA:タンパク質キナーゼ A
PKC:タンパク質キナーゼ C
POMC:プロオピオメラノコルチン
SERM:選択的エストロゲン受容体モジュレーター
TTX:テトロドトキシン。
【0024】
範囲は本明細書において「約」1つの特定の値から、および/または「約」もう1つの特定の値までとして表すことができる。そのような範囲が表される場合、別の態様は1つの特定の値から、および/または他の特定の値までを含む。同様に、値が修飾語句「約」を用いることによって近似値として表される場合、特定の値は別の態様を形成することが理解されるであろう。それぞれの範囲の終点は、他の終点に関連して、および他の終点とは無関係にの両方で意味があることもさらに理解されるであろう。
【0025】
開示する化合物は、非対称に四置換された炭素原子を含むものなどの、キラル化合物を含む。そのような化合物はラセミ体または光学活性体で単離することができる。当業者には、化合物を光学活性体でどのようにして合成するかは公知である。光学活性化合物を化合物のラセミ混合物の分割によりどのようにして調製するかも周知である。特に記載がないかぎり、開示する構造のすべてのキラル、ジアステレオおよび幾何異性体が意図される。
【0026】
本明細書および添付の特許請求の範囲において、以下の意味を有すると理解されるべきいくつかの用語に言及することになろう。
【0027】
「任意の」または「任意に」とは、続いて記載される事象または状況は起こることができるが、必ずしもその必要はなく、記載は該事象または状況が起こる場合および起こらない場合を含むことを意味する。
【0028】
本開示の全体を通して用いられるR、G、M、Q、X、YおよびZなどの変数は、そうではないとの記載がないかぎり、前に規定したものと同じ変数である。
【0029】
「エストロゲン受容体アゴニスト」なる用語は、エストロゲン受容体で作用し、17β-エストラジオールと同じ生物学的効果の少なくともいくつかを有する化合物を意味する。エストロゲン受容体で17β-エストラジオールの効果を阻止するよう作用する化合物は「エストロゲン受容体アンタゴニスト」と呼ぶ。典型的には、本明細書において開示する化合物は部分的アゴニストまたはアンタゴニストであり、これはそれらの化合物が17β-エストラジオールの効果のいくつかを模倣または阻止するが、他は模倣または阻止しないことを意味する。いくつかの場合に、化合物は混合アゴニスト/アンタゴニスト活性を示し、ここで化合物は特定の組織ではエストロゲン受容体アゴニストとして作用するが、他の組織ではエストロゲン受容体アンタゴニストとして作用する。本明細書において開示するそのような化合物の例は、1つのエストロゲン受容体に他のエストロゲン受容体よりも高い親和性で選択的に結合することにより、部分的アゴニスト活性を示す。そのような選択性を示す化合物は「選択的エストロゲン受容体モジュレーター」または「SERM」と呼ぶ。
【0030】
「ホルモン補充療法」とは、例えば、閉経期に見られるような、対象のエストロゲン産生の低下または機能不全に応じて投与する治療を意味する。ホルモン補充療法は、加齢、卵巣摘出または早期卵巣機能不全に応じて行われることも多い。ホルモン補充療法は、骨粗鬆症、心疾患、顔面潮紅および気分障害などの、エストロゲン欠乏に関連する二次的作用の1つまたは複数の治療を助けるために用いられることも多い。
【0031】
「誘導体」とは、親化合物から誘導される、または理論的に誘導可能な化合物または化合物の一部を意味する。
【0032】
「アルキル基」なる用語は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tーブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル、テトラデシル、ヘキサデシル、エイコシル、テトラコシルなどの、1から24炭素原子の分枝または非分枝飽和炭化水素基を意味する。「低級アルキル」基は、1から10炭素原子を有する飽和分枝または非分枝炭化水素である。
【0033】
「アルケニル基」なる用語は、2から24炭素原子で、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む構造式の炭化水素基を意味する。
【0034】
「アルキニル基」なる用語は、2から24炭素原子で、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含む構造式の炭化水素基を意味する。
【0035】
「ハロゲン化アルキル基」なる用語は、前述のアルキル基に存在する1つまたは複数の水素原子がハロゲン(F、Cl、Br、I)で置換されている、前述のアルキル基を意味する。
【0036】
「シクロアルキル基」なる用語は、少なくとも3つの炭素原子からなる非芳香族の炭素系の環を意味する。シクロアルキル基の例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが含まれるが、それらに限定されるわけではない。「ヘテロシクロアルキル基」なる用語は、環の炭素原子の少なくとも1つが、窒素、酸素、硫黄、またはリンなどであるが、それらに限定されるわけではない、ヘテロ原子で置換されている、前述のシクロアルキル基である。
【0037】
「エチレングリコール鎖」または「オリゴエチレングリコール鎖」なる用語は、反復エチレングリコール単位を有する基を意味する。エチレングリコール鎖は任意の長さでありうるが、典型的には2から約100、より典型的には2から約70のエチレングリコール単位を含む。最も典型的には、オリゴエチレングリコール鎖は約2から約20のエチレングリコール単位を含む。
【0038】
「脂肪族基」なる用語は、前述のアルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン化アルキルおよびシクロアルキル基を含む。「低級脂肪族」基は、1から10炭素原子を有する分枝または非分枝構造である。
【0039】
「アリール基」なる用語は、ベンゼン、ナフタレンなどを含むが、それらに限定されるわけではない、任意の炭素系芳香族基を意味する。「芳香族」なる用語は「ヘテロアリール基」も含み、これは芳香族基の環内に組み込まれた少なくとも1つのヘテロ原子を有する芳香族基を意味する。そのようなヘテロ原子の例には、窒素、酸素、硫黄、およびリンが含まれるが、それらに限定されるわけではない。アリール基は、アルキル、アルキニル、アルケニル、アリール、ハロゲン化物、ニトロ、アミノ、エステル、ケトン、アルデヒド、ヒドロキシ、カルボン酸、もしくはアルコキシを含むが、それらに限定されるわけではない、1つまたは複数の基で置換されていてもよく、またはアリール基は無置換でありうる。
【0040】
「アラルキル」なる用語は、アリール基に連結された前述のアルキル基を有するアリール基を意味する。アラルキル基の例はベンジル基である。
【0041】
「アルキルアミノ」なる用語は、少なくとも1つの水素原子がアミノ基で置き換えられている前述のアルキル基を含む。
【0042】
「ヘテロ原子」なる用語は、当業者によって炭素原子以外の原子を指すと理解される。ヘテロ原子の例には、ホウ素、窒素、酸素、リンおよび硫黄が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0043】
したがって、本明細書において用いられる「炭化水素鎖」なる用語は、典型的には、2から約22炭素原子を典型的に含む、炭素原子の鎖を意味する。鎖は脂肪族およびアリール基を含むことができ、直鎖、分枝鎖および/または環式基を含むことができる。
【0044】
「ヒドロキシル基」なる用語は、式-OHで表される。「アルコキシ基」なる用語は、式-ORで表され、ここでRは前述のアルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、ハロゲン化アルキル、またはヘテロシクロアルキル基で置換されていてもよい、アルキル基でありうる。
【0045】
「ヒドロキシアルキル基」なる用語は、少なくとも1つの水素原子がヒドロキシル基で置換されている、アルキル基を意味する。「アルコキシアルキル基」なる用語は、少なくとも1つの水素原子が前述のアルコキシ基で置換されている、アルキル基を意味する。適用可能な場合には、ヒドロキシアルキル基またはアルコキシアルキル基のアルキル部分はアリール、アラルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシを有しうる。
【0046】
「アミン基」なる用語は、式-NRR'で表され、ここでRおよびR'は独立に水素または前述のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、ハロゲン化アルキル、もしくはヘテロシクロアルキル基でありうる。
【0047】
「アミド基」なる用語は、式-C(O)NRR'で表され、ここでRおよびR'は独立に前述の水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、ハロゲン化アルキル、またはヘテロシクロアルキル基でありうる。
【0048】
「エステル」なる用語は、式-OC(O)Rで表され、ここでRは前述のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、ハロゲン化アルキル、またはヘテロシクロアルキル基でありうる。
【0049】
「カーボネート基」なる用語は、式-OC(O)ORで表され、ここでRは前述のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、ハロゲン化アルキル、またはヘテロシクロアルキル基でありうる。
【0050】
「カルボン酸」なる用語は、式-C(O)OHで表される。
【0051】
「アルデヒド」なる用語は、式-C(O)Hで表される。
【0052】
「ケト基」なる用語は、式-C(O)Rで表され、ここでRは前述のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、ハロゲン化アルキル、またはヘテロシクロアルキル基である。
【0053】
「カルボニル基」なる用語は、式C=Oで表される。
【0054】
「カチオン基」または「カチオン部分」とは、正に荷電している、または正に荷電しうる基を意味する。例えば、カチオン基は生理的に適当なpHでプロトン化可能なアミンでありうる。カチオン基の第二の例は正に荷電した四級アミンである。
【0055】
開示する化合物は、いくつかの塩形成基が存在する場合には、混合塩および/または内部塩を含む、塩も含む。塩は一般に非毒性の薬学的に許容される塩である。塩形成酸性基の例には、適当な塩基と塩を形成することができるカルボキシル基、ホスホン酸基またはボロン酸基が含まれるが、それらに限定されるわけではない。これらの塩は、例えば、元素周期表のIA、IB、IIAおよびIIB族の金属由来の非毒性金属カチオンを含むことができる。一つの態様において、リチウム、ナトリウムもしくはカリウムイオンなどのアルカリ金属カチオン、またはマグネシウムもしくはカルシウムイオンなどのアルカリ土類金属カチオンを用いることができる。塩は亜鉛またはアンモニウムカチオンでもありうる。塩は、無置換もしくはヒドロキシル置換モノ、ジもしくはトリアルキルアミン、特にモノ、ジもしくはトリアルキルアミンなどの適当な有機アミンと、または四級アンモニウム化合物と、例えば、N-メチル-N-エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノ、ビスもしくはトリス-(2-ヒドロキシエチル)アミン、2-ヒドロキシ-tert-ブチルアミンもしくはトリス(ヒドロキシメチル)メチルアミンなどのモノ、ビスもしくはトリス-(2-ヒドロキシ-低級アルキル)アミン、N,N-ジメチル-N-(2-ヒドロキシエチル)アミンもしくはトリ-(2-ヒドロキシエチル)アミンなどのN,N-ジ-低級アルキル-N-(ヒドロキシ-低級アルキル)アミン、またはN-メチル-D-グルカミン、あるいはテトラブチルアンモニウム塩などの四級アンモニウム化合物と形成することもできる。
【0056】
特定の化合物は、無機酸と酸-塩基塩を形成しうる少なくとも1つの塩基性基を有する。塩基性基の例には、アミノ基またはイミノ基が含まれるが、それらに限定されるわけではない。そのような塩基性基と塩を形成しうる無機酸の例には、塩酸、臭化水素酸、硫酸またはリン酸などの鉱酸が含まれるが、それらに限定されるわけではない。塩基性基は、有機カルボン酸、スルホン酸、スルホ酸もしくはホスホ酸またはN-置換スルファミン酸、例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、コハク酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、メチルマレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸、グルカル酸、グルクロン酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、サリチル酸、2-フェノキシ安息香酸、2-アセトキシ安息香酸、エンボン酸、ニコチン酸またはイソニコチン酸と、加えて、アミノ酸、例えば、α-アミノ酸と、ならびにメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシメタンスルホン酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、4-メチルベンゼンスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、2-もしくは3-ホスホグリセレート、グルコース-6-リン酸またはN-シクロヘキシルスルファミン酸(シクラメートの形成を伴う)と、あるいはアスコルビン酸などの他の酸性有機化合物と塩を形成することもできる。
【0057】
「エーテル基」なる用語は、式R(O)R'で表され、ここでRおよびR'は独立に前述のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、ハロゲン化アルキル、またはヘテロシクロアルキル基でありうる。
【0058】
「ハロゲン化物」なる用語は、F、Cl、Br、またはIを意味する。
【0059】
「ウレタン」およびカルバメートなる用語は、式-OC(O)NRR'で表され、ここでRおよびR'は独立に前述の水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、ハロゲン化アルキル、またはヘテロシクロアルキル基でありうる。
【0060】
前述の基は、1つまたは複数の置換基で置換されていてもよい。分子における特定の位置の任意の置換基または変数の定義は、その分子における他所のその定義とは無関係である。適当な置換基の例には、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ヒドロキシ、アルコキシ、オキソ、アルカノイル、アルカノイルオキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、アルカノイルアミノ、アロイルアミノ、アラルカノイルアミノ、置換アルカノイルアミノ、アロイルアミノ、アラルカノイルアミノ、置換アルカノイルアミノ、置換アリールアミノ、置換アラルカノイルアミノ、チオール、スルフィド、チオノ、スルホニル、スルホンアミド、ニトロ、シアノ、カルボキシ、カルバミル、置換カルバミルなどが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0061】
「プロドラッグ」なる用語は、プロドラッグが対象に投与されると、インビボで本発明の活性親薬物を放出する、任意の共有結合された担体を含むことが意図される。プロドラッグは、溶解性およびバイオアベイラビリティなどの、薬剤の性質を増強することが知られているため、本明細書において開示する化合物をプロドラッグ型で送達することができる。したがって、同様に企図されるのは、本発明の特許請求される化合物のプロドラッグ、プロドラッグを送達する方法およびそのようなプロドラッグを含む組成物である。開示する化合物のプロドラッグは、典型的には、改変が日常的操作またはインビボのいずれかで切断されて、親化合物を生じるような様式で、化合物に存在する官能基を改変することにより調製する。プロドラッグには、切断されて対応するヒドロキシル、遊離アミノ、または遊離スルフヒドリル基をそれぞれ生じる、任意の基で官能基化されたヒドロキシ、アミノ、またはスルフヒドリル基を有する化合物が含まれる。プロドラッグの例には、酢酸、ギ酸、および/または安息香酸基でアシル化されたヒドロキシ、アミノおよび/またはスルフヒドリル基を有する化合物が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0062】
開示する化合物の保護された誘導体も企図される。開示する化合物と共に用いるのに適した様々なものが、Greene and Wuts Protective Groups in Organic Synthesis; 3rd Ed.; John Wiley & Sons, New York 1999に開示されている。
【0063】
本明細書に記載の化合物の置換基および置換パターンは、化学的に安定で、当技術分野において公知の技術によって、およびさらに本開示において示す方法によって容易に合成しうる化合物を提供するために、当業者であれば選択しうることが理解される。ここから、本発明の好ましい態様について詳細に言及する。
【0064】
I. 好ましい化合物の選択
エストロゲン受容体を調節するための好ましい化合物は、典型的には、1つまたは複数のエストロゲン受容体を刺激または拮抗する際のそれらの効力および選択性によって選択される。典型的には、開示する化合物は膜結合エストロゲン受容体に選択的に結合し、核内エストロゲン受容体(ER)αおよび(ER)βには結合したとしても親和性は低い。以下の方法および実施例の項に記載するとおり、また一般に知られているとおり、標的エストロゲン受容体に対する特定の化合物の有効性をインビトロで評価することができ、開示するインビトロ法を用いて新規SERMをスクリーニングおよび同定することができる。さらに、閉経に関連する状態および卵巣摘出、卵巣機能不全または閉経に関連するものなどのエストロゲン欠乏によって特徴付けられる他の状態を含む、様々な状態および障害に対して治療または保護するための、特定の化合物を提供する。そのような状態の例には、顔面潮紅、認知減退、骨粗鬆症、うつ、虚血性脳損傷およびアテローム性動脈硬化症が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0065】
開示する化合物の顔面潮紅を阻害または改善する能力を、例えば、モルヒネ中毒ラットがナロキソンを用いてのモルヒネからの急性離脱を経験した際に起こる、尾皮膚温度の上昇を鈍らせる物質の能力を測定する標準的検定において評価することができる。Merchenthaler, et al. The effect of estrogens and antiestrogens in a rat model for hot flush. Maturitas 1998, 30, 307-316を参照されたく、その内容は参照により本明細書に組み入れられる。Berendsen et al. Effect of tibolone and raloxifene on the tail temperature of oestrogen-deficient rats. Eur. J. Pharmacol. 2001, 419, 47-54;およびPan et al. A comparison of oral micronized estradiol with soy phytoestrogen effects on tail skin temperatures of ovariectomized rats. Menopause 2001, 8, 171-174も参照されたい。BerendsenおよびPanの出版物はいずれも参照により本明細書に組み入れられる。
【0066】
特定の開示する化合物は、多発性硬化症の治療のために有用である。多発性硬化症の症状を治療または抑制するための好ましい化合物は、Polanczyk et al. Am. J. Pathol. 2003, 163, 1599-1605によって記載された実験的自己免疫脳脊髄炎マウスモデルを用いて選択することができる。Polanczykの出版物は参照により本明細書に組み入れられる。
【0067】
神経性食欲不振および/または神経性過食症などの、摂食障害を治療するために有用な開示する化合物は、当業者には公知の単純な食餌検定を用いて同定することができる。
【0068】
開示する化合物の学習および記憶に対する効果は、モリス水迷路およびStackman et al. J. Neuroscience 2002, 22, 10163-10171によって記載されたプロトコルに従っての物体認識検定を用いて評価することができる。Stackman et al.の出版物は参照により本明細書に組み入れられる。
【0069】
開示する化合物の神経保護活性も、例えば、グルタミン酸攻撃を用いての標準のインビトロ薬理学的検定において評価することができる。Zaulyanov, et al. Cellular & Molecular Neurobiology 1999, 19: 705-718;およびProkai, et al. Journal of Medicinal Chemistry 2001, 44, 110-114を参照されたい。Zaulyanov et al.およびProkai et al.の出版物はいずれも参照により本明細書に組み入れられる。
【0070】
開示する化合物は、全体の脳虚血に関連する損傷からニューロンを保護するそれらの能力について評価することができる。化合物は、Vogel et al. Anesthesiology 2003, 99, 112-121によって記載された心停止および心肺蘇生検定を用いて、そのような損傷を低減する能力について評価することができる。一つの局面において、化合物は、蘇生術後に投与した場合でさえ、ニューロンへの損傷を低減しうる。Vogel et al.の出版物は参照により本明細書に組み入れられる。
【0071】
神経保護はまた、Dubal et al. in Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 2001, 98, 1952-1957;およびin J. Neurosci. 1999、6385-6393によって記載されたプロトコルに従い、マウスにおける中大脳動脈閉塞法を用いて評価することができる。開示する化合物をエストロゲン欠乏によって特徴付けられる障害の異なるモデルにおいて評価するためのさらなる検定を、以下の方法および実施例の項に記載する。
【0072】
化合物の使用は、エストロゲン欠乏を伴う状態に必ずしも限定されない。そのような状態および障害を治療または予防するための治療薬の有効性を特徴付ける技術および検定は周知であり、例えば、米国特許出願第2003/0171412 A1号および第2003/0181519 A1号においてそれぞれMalamas et al.およびMewshaw et al.によって記載されている。Malamas et al.およびMewshaw et al.の出版物はいずれも参照により本明細書に組み入れられる。
【0073】
II. 薬学的組成物
本開示の別の局面は、対象への投与のために調製される薬学的組成物を包み、この組成物は、現在開示している化合物の1つまたは複数の治療上有効な量を含む。開示する化合物の治療上有効な量は、投与経路、対象である哺乳動物の型、および治療中の対象の身体的特徴に依存することになる。考慮されうる特定の因子には、疾患の重症度および病期、体重、食事ならびに併用薬が含まれる。これらの因子と、開示する化合物の治療上有効な量の決定との関係は、当業者であれば理解される。
【0074】
投与する化合物の治療上有効な量は、所望の効果および前述の因子に依存して変動しうる。典型的には、用量は、対象の体重1kgあたり約0.01mgから100mgの間であり、より典型的には、対象の体重1kgあたり約0.01mgから10mgの間である。一つの局面において、治療上有効な量は、対象の標的組織における治療薬のインビボ濃度がインビトロで有効であると判明した濃度付近となるように選択することができる。
【0075】
一つの態様において、開示するSERMを、本明細書において開示するさらなる化合物、および/または他のSERM、抗癌剤もしくは抗増殖剤などの他の治療薬と組み合わせて用いる。例えば、開示する化合物は、タモキシフェン、タキソール、エポチロン、メトトレキセートなどの化学療法剤とともに使用してもよい。一つの局面において、開示するSERMを、17β-エストラジオールを含むエストロゲン、プロゲステロンなどのステロイドホルモンと組み合わせて用いる。エストロゲンまたはプロゲステロンは、天然または合成エストロゲンまたはプロゲステロンでありうる。異なる治療薬を組み合わせて使用する場合、治療薬は一緒にまたは別々に投与することができる。治療薬は、単独で投与することもできるが、より典型的には、選択した投与経路および標準的な薬学的慣習に基づいて選択される薬学的担体とともに投与する。
【0076】
本明細書に記載の任意のSERMを薬学的に許容される担体と組み合わせて薬学的組成物を形成することができる。薬学的担体は当業者には公知である。これらは、最も典型的には、滅菌水、食塩水、および生理的なpHの緩衝化溶液などの溶液を含む、ヒトに対する組成物投与のための標準的な担体である。組成物はまた、筋肉内、経皮、またはエアロゾルの剤形で投与されうる。他の化合物は、当業者により使用される標準的方法に従って投与することになる。
【0077】
薬学的送達が意図される分子を、薬学的組成物に製剤することができる。薬学的組成物は、選択した分子に加えて、担体、増粘剤、希釈剤、緩衝剤、保存剤、界面活性剤などを含むことができる。薬学的組成物は、抗菌剤、抗炎症剤、麻酔薬などの1つまたは複数のさらなる活性成分を含むこともできる。薬学的製剤は、担体などのさらなる成分を含むことができる。これらの製剤にとって有用な薬学的に許容される担体は通常のものである。Remington's Pharmaceutical Sciences, by E. W. Martin, Mack Publishing Co., Easton, PA, 15th Edition (1975)は、本明細書において開示する化合物の薬学的送達に適した組成物および製剤を記載している。
【0078】
一般に、担体の性質は用いている特定の投与様式に依存することになる。例えば、非経口製剤は、通常は、媒体として水、生理食塩水、平衡塩類溶液、水性デキストロース、グリセロールなどの薬学的および生理的に許容される液体を含む注射可能な液体を含む。固形組成物(例えば、散剤、丸剤、錠剤、またはカプセル剤の剤形)のために、通常の非毒性の固体担体には、例えば、薬学的等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、またはステアリン酸マグネシウムが含まれうる。生物学的に中性の担体に加えて、投与する薬学的組成物は、湿潤剤または乳化剤、保存剤、およびpH緩衝化剤など、例えば、酢酸ナトリウムまたはモノラウリン酸ソルビタンなどの、少量の非毒性の補助剤を含むことができる。
【0079】
いくつかの態様において、開示するSERMの有効量を含む薬学的製剤の持続放出は有益でありうる。徐放性製剤は当業者には公知である。例として、ビス(p-カルボキシフェノキシ)プロパン-セバシン酸などのポリマーまたはレシチン懸濁剤を用いて持続放出を提供することができる。
【0080】
いくつかの態様において、SERM送達が、例えば、DepoFoam(SkyePharma, Inc, San Diego, CA)におけるなどの多小胞リポソームを含む、注射および/または埋込薬物デポーを介することが具体的に企図される(例えば、Chamberlain et al. Arch. Neuro. 1993, 50, 261-264;Katri et al. J. Pharm. Sci. 1998, 87, 1341-1346;Ye et al., J. Control Release 2000, 64, 155-166;およびHowell, Cancer J. 2001, 7, 219-227参照)。
【0081】
III. 開示する化合物の使用法
開示する化合物は、対象のエストロゲン受容体を選択的に調節するために用いることができ、したがってエストロゲン欠乏によって特徴付けられるものを含む、様々な障害を治療するのに有用である。さらに、特定の開示する化合物は1つまたは複数のエストロゲン受容体に対して選択性を示すため、化合物を自律神経機能不全、認知減退、運動機能不全、気分障害、摂食障害および心血管障害、ならびに異なる型の障害として記載されるものを含むが、それらに限定されるわけではない状態を治療するために用いることができる。一般に、化合物は、現行のホルモン補充療法において用いられるステロイドホルモン(エストロゲンまたは合成エストロゲンなど)に関連する重篤な副作用と同一の副作用の発生を誘導せず、ホルモン補充療法にとって有用である。開示する化合物は、現在公知のタモキシフェンまたはラロキシフェンなどのSERMを用いた治療において生じる、顔面潮紅などの副作用も回避する。より具体的には、開示する化合物は、虚血誘導性神経死、頭部外傷、アルツハイマー病、顔面潮紅などの温度調節障害、睡眠周期の乱れ、パーキンソン病、晩発性ジスキネジア、うつ、統合失調症、神経性食欲不振、神経性過食症、心血管疾患、アテローム性動脈硬化症、ロマノ-ワード症候群またはトルサード・ド・ポワンツ症候群などのQTL延長症候群、骨粗鬆症、慢性関節リウマチ、骨関節症、骨折、および多発性硬化症を含むが、それらに限定されるわけではない障害を治療するために用いることができる。一つの態様において、特定の化合物は、ナトリウムまたは塩素イオンの上皮輸送を阻止するなどによる、液体バランスを調節することにより、血管拡張を促進するために用いることができる。理論に限定されるわけではなく、化合物は、Maxi-Kチャンネルを活性化することにより機能すると考えられる。Valverde et al. Science 1999, 285, 1929-1931参照。
【0082】
別の態様において、開示する化合物は、自己免疫疾患、特に男性よりも女性で頻繁に生ずる自己免疫疾患を治療するために用いることができる。そのような疾患の例には、多発性硬化症、慢性関節リウマチ、グレーヴス病、全身性エリテマトーデスおよび重症筋無力症が含まれるが、それらに限定されるわけではない。別の態様において、開示する化合物は、対象の免疫適格性を維持または増強するよう機能する。さらに、開示する化合物は、特定の型の損傷に対する予防効果を発揮する。例えば、化合物は、神経保護薬として用いることができる。事実、本明細書において同定される膜結合エストロゲン受容体を刺激する化合物は、虚血性発作に応答して神経保護薬として作用し、再灌流損傷を阻害する。
【0083】
さらに、開示する化合物が1つまたは複数の特定の型のエストロゲン受容体を選択的に調節する能力ゆえに、開示する化合物は、異なる生理学的効果を仲介する異なるエストロゲン受容体の寄与を同定するために用いることができる。開示する化合物はまた、これらの薬剤が作用する、特定のクラスの膜結合受容体に結合し、かつこれを同定するために用いることもできる。事実、開示する選択的エストロゲン受容体モジュレーターの実用的態様は、膜結合受容体に対しては、17β-エストラジオールより10倍高い効力を有し、核内エストロゲン受容体である(ER)αおよび(ER)βに対しては、17β-エストラジオールの100万分の1の低い効力を有していた。
【0084】
開示する化合物の別の適用は、アフィニティークロマトグラフィーである。本発明の開示する化合物の例が、新規の膜結合エストロゲン受容体に結合するため、化合物は、受容体を精製するか、または試料から受容体を除去するために用いることができる。化合物を使用するために、これらは典型的には当業者には公知の固形支持体に結合される。化合物は、直接的に結合するか、またはリンカー分子を介して結合することができる。開示する化合物との使用に適した、例示的なアフィニティークロマトグラフィー技術は、Current Protocols in Protein Science, John Wiley & Sons (J.E. Coligan et al., Eds.)に開示されている。
【0085】
IV. 合成
本明細書において開示する化合物、ならびにこの開示を考慮すれば医化学分野の当業者には容易に明らかになるであろうそのような化合物の類縁体は、当業者に周知の技術を用いるいくつかの様式で調製することができる。特定の化合物を調製するための例示的方法を以下に記載する。有機合成の当業者であれば、開示する試薬および反応に鑑み、分子の官能基を考慮すれば、これらの方法は以下に明確に記載していない化合物の合成に対して一般化可能であることが理解される。開示する状態を考慮して、当業者であれば本明細書において開示する特定の状態に適合しない官能基を有しうる類似の化合物を調製するための、代替の方法を理解するであろう。
【0086】
所与の変換において存在する官能基に依存して、変換の間にその基をマスクするための、様々な基に対する保護基が好まれることもある。様々な官能基に適した保護基は、Greene and Wuts Protective Groups in Organic Synthesis; 3rd Ed.; John Wiley & Sons, New York (1999)に記載されている。
【0087】
開示する化合物を合成する方法の一つの態様を以下のスキーム3に例示する。スキーム3に関して、この方法は化合物2を提供し、化合物2を化合物4へと転換することを含む。化合物2は、Weatherman et al. Chemistry & Biology 2001, 8, 427-436によって報告されるプロトコルに従って調製した。実施例において、化合物2をリチウム-ハロゲン交換条件にかけ、続いて、クロロギ酸アリルと反応させて、化合物4を得る。化合物6は、アリルエステル基のパラジウム触媒切断により調製した。実施例において、触媒としてのPd(PPh3)4をPhSiH3と共に用いて、化合物6を生成した。化合物6は、様々なN-置換アクリルアミド誘導体を調製するために用いうる多用途の中間体である。例えば、任意の一級または二級アミンを化合物6とのアミド結合形成反応を介して組み込むことができる。スキーム3において例示する方法は、EおよびZ異性体、すなわちそれぞれ化合物8および9の両方を生成する。
【0088】
さらなるSERMを、スキーム4に従って調製することができる。スキーム4に関して、化合物10をジフェニルアセチレンから調製することができる。様々なアルキル基(エチルに加えて)を様々な技術によりこの段階で導入することができる。化合物10において導入したヨード基を用いて、カルボキシメチルエステル12などのカルボキシ基を導入することができ、このカルボキシ基は対応するカルボン酸7に容易に転換される。カルボン酸7は、様々な一級および二級アミンと反応させて、8および対応するZ異性体9などの対応するアミドを得ることができる。
【0089】
二置換アクリルアミド誘導体を、スキーム5に例示する方法に従って調製することができる。スキーム5に関して、18のビス-アリル化により20を得る。20とベンズアルデヒドとのアルドール反応によって22を得、これは脱離を起こしてEおよびZ異性体の混合物としての24を得る。アリル保護基の切断により26を生じ、続いてアミド結合形成によってEおよびZ異性体、すなわちそれぞれ28および30を形成する。
【0090】
スキーム6は、ビニルケトン由来のSERMを合成するための方法の態様を示す。スキーム6に関して、化合物32のアルキル化は、様々な基を導入するために用いうる多用途の反応である。例えば、Rには、限定を伴うが、ヒドロキシ基、保護ヒドロキシ基、カルボキシ基、保護カルボキシ基、アミンまたは保護アミノ基が含まれうる。実施例において、Rはジメチルアミノ基またはピペリジノ基であった。中間体34を化合物2から調製した化合物のリチウムアニオン(スキーム3)と反応させ、脱保護の後、EおよびZ異性体、すなわちそれぞれ38および40を生成する。
【0091】
V. 方法および実施例
前述の開示を以下の非限定的実施例によってさらに説明する。
【0092】
スキーム7
(E)-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-フェニルペンタ-2-エン酸エチル(2)。DMF(132ml)中の2-ペンチン酸エチル(5.5g、43.6mmol)、1-ヨード-4-(メトキシメトキシ)ベンゼン(23.0g、87.1mmol)、フェニルボロン酸(10.6g、86.9mmol)の混合物に、H2O(33ml)中のK2CO3(12.1g、87.5mmol)を氷冷下で加え、次いで混合物を室温で10分間撹拌した。PdCl2(PhCN)2(167mg、0.435mmol)をAr雰囲気下で加え、混合物を室温で24時間撹拌した。氷冷下、H2Oで反応停止し、全体をEt2Oで抽出した。有機層をH2O、食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:ヘキサン/AcOEt、30:1から10:1)で精製して、2(29%)および位置異性体(24%)を得た。
2:無色油状物;
;位置異性体:
【0093】
(E)-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-フェニルペンタ-2-エン酸(3)。MeOH(85ml)中の2(3.4g、9.99mmol)の溶液に2N NaOH(50ml)を加え、混合物を80℃で15時間撹拌した。冷却後、2N HCl(50ml)を氷冷下で滴加し、全体をAcOEtで抽出し、有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。残渣の固体をヘキサンで粉砕して、3(88%)を得た。
3:無色粉末;
【0094】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-フェニルペンタ-2-エンアミド(4)。方法A;DMF(50ml)中の3(2.50g、8.00mmol)、EDC・HCl(1.84g、9.60mmol)およびHOBt(1.30g、9.62mmol)の混合物に、4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)ベンゼン-アミン2塩酸塩(2.23g、8.81mmol)およびN,N-ジソプロピルエチルアミン(4.13g、32.0mmol)の溶液を氷冷下で加え、混合物を室温で18時間撹拌した。氷冷下、飽和NaHCO3水溶液で反応停止し、全体をAcOEtで抽出し、有機層をH2O×2、食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:AcOEtと、次いでCHCl3/MeOH、10:1)で精製し、AcOEt-ヘキサンから再結晶して、4(43%)を得た。
4:無色粉末;
【0095】
方法B;CH2Cl2(100ml)中の3(2.90g、9.28mmol)、4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)ベンゼンアミン2塩酸塩(2.58g、10.2mmol)、4-ジメチルアミノピリジン(56.7mg、0.464mmol)の混合物に、ヘキサフルオロリン酸O-ベンゾトリアゾイル-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウム(3.87g、10.2mmol)を氷冷下で加え、混合物を0℃で10分間撹拌した。N,N-ジイソプロピルエチルアミン(4.19g、32.4mmol)を氷冷下で加えた。混合物を0℃で5分間と、室温で15時間撹拌した。氷冷下、飽和NaHCO3水溶液で反応停止し、全体をCHCl3で抽出し、有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。Biotage(溶離剤:CH2Cl2からCH2Cl2/MeOH、6:1)で精製して、無色固体を得た。固体をEt2O-ヘキサンで粉砕して、4(65%)を得た。
【0096】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-2-(4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルペンタ-2-エンアミド(5)。方法A;MeOH(4ml)中の4(1.39g、2.93mmol)の懸濁液に、AcOEt中の3N HClの溶液(10ml)を氷冷下で加え、混合物を室温で2時間撹拌した。H2O中のNaHCO3(2.8g)の溶液を反応混合物に氷冷下で注ぎ、全体をAcOEtおよび少量のMeOHで抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。残渣の固体をEt2Oで粉砕して、5(91%)を得た。
5:無色粉末;
【0097】
方法B;MeOH(40ml)中の4(2.89g、6.09mmol)の溶液に、1,4-ジオキサン中の4N HCl(15.2ml)を氷冷下で加え、混合物を室温で2時間撹拌した。H2O中のNaHCO3の溶液を反応混合物に氷冷下で注ぎ、全体をAcOEtで抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。残渣の固体をAcOEtで粉砕して、5(89%)を得た。
【0098】
スキーム7-2
(E)-N-(4-ヒドロキシフェニル)-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-フェニルペンタ-2-エンアミド(6a)。CH2Cl2(2ml)中の3(60mg、0.192mmol)、4-アミノフェノール(23.0mg、 0.211mmol)、4-ジメチルアミノピリジン(1.2mg、0.00982mmol)およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(37.2mg、0.287mmol)の混合物に、ヘキサフルオロリン酸O-ベンゾトリアゾイル-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウム(76.5mg、0.202mmol)を氷冷下で加え、混合物を0℃で5分間と、室温で15時間撹拌した。氷冷下、飽和NaHCO3水溶液で反応停止し、全体をCHCl3で抽出し、有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:ヘキサン/AcOEt、3:1から2:1)で精製して、6a(68%)を得た。
6a:無色粉末;
【0099】
(E)-N-(4-(3-(ジメチルアミノ)プロポキシ)フェニル)-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-フェニルペンタ-2-エンアミド(6b)。CH2Cl2(3ml)中の3(60mg、0.192mmol)、4-(3-(ジメチルアミノ)プロポキシ)ベンゼンアミン2塩酸塩(56.4mg、0.211mmol)、4-ジメチルアミノピリジン(1.2mg、0.00982mmol)の混合物に、ヘキサフルオロリン酸O-ベンゾトリアゾイル-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウム(76.5mg、0.202mmol)を氷冷下で加え、混合物を0℃で10分間撹拌した。次いで、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(86.8mg、0.672mmol)を氷冷下で加えた。混合物を0℃で5分間と、室温で15時間撹拌した。氷冷下、飽和NaHCO3水溶液で反応停止し、全体をCHCl3で抽出し、有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:CHCl3/MeOH、20:1から10:1)で精製して、無色固体(100%)を得た。固体をEt2O-ヘキサンで粉砕して、6b(75%)を得た。
6b:無色粉末;
【0100】
(E)-N-((1r,4r)-4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)シクロヘキシル)-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-フェニルペンタ-2-エンアミド(6c)。CH2Cl2(3ml)中の3(90mg、0.288mmol)、(1r,4r)-4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)シクロヘキサンアミン2塩酸塩(89.6mg、0.346mmol)、4-ジメチルアミノピリジン(1.8mg、0.0147mmol)の混合物に、ヘキサフルオロリン酸O-ベンゾトリアゾイル-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウム(120mg、0.316mmol)を氷冷下で加え、混合物を0℃で10分間撹拌した。次いで、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(130mg、1.01mmol)を氷冷下で加えた。混合物を0℃で5分間と、室温で15時間撹拌した。氷冷下、飽和NaHCO3水溶液で反応停止し、全体をCHCl3で抽出し、有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。Biotage 12M(溶離剤:CH2Cl2からCH2Cl2/MeOH、6:1)で精製して、無色固体(88%)を得た。固体をEt2O-ヘキサンで粉砕して、6c(73%)を得た。
6c:無色粉末;
【0101】
(E)-N,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルペンタ-2-エンアミド(7a)。MeOH(1ml)中の6a(45mg、0.112mmol)の溶液に、ジオキサン中の4N HClの溶液(0.3ml)を氷冷下で加え、混合物を室温で2時間撹拌した。H2Oを反応混合物に氷冷下で注ぎ、全体をAcOEtで抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。残渣をEt2Oで結晶化して、7a(76%)を得た。
7a:無色粉末;
【0102】
(E)-N-(4-(3-(ジメチルアミノ)プロポキシ)フェニル)-2-(4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルペンタ-2-エンアミド(7b)。MeOH(0.5ml)中の6b(55mg、0.113mmol)の溶液に、AcOEt中の3N HCl(0.5ml)を氷冷下で加え、混合物を室温で1時間撹拌した。H2O中のNaHCO3(139mg)の溶液を反応混合物に氷冷下で注ぎ、全体をAcOEtおよび少量のMeOHで抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。残渣をEt2Oで結晶化して、7b(76%)を得た。
7b:無色粉末;
【0103】
(E)-N-((1r,4r)-4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)シクロヘキシル)-2-(4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルペンタ-2-エンアミド(7c)。MeOH(3ml)中の6c(90mg、0.187mmol)の溶液に、1,4-ジオキサン中の4N HCl(0.47ml)を氷冷下で加え、混合物を室温で2時間撹拌した。H2O中のNaHCO3の溶液を反応混合物に氷冷下で注ぎ、全体をAcOEtで抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。残渣をEt2Oで結晶化して、7c(93%)を得た。
7c:無色粉末;
【0104】
スキーム7-3
N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-フェニルペンタ-3-エンアミド(3b)。(副生成物)。
3b:無色粉末;
【0105】
N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-2-(4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルペンタ-3-エンアミド(8)。MeOH(1ml)中の3b(30mg、0.0632mmol)の溶液に、AcOEt中の3N HCl(0.5ml)を氷冷下で加え、混合物を室温で1時間撹拌した。H2O中のNaHCO3(139mg)の溶液を反応混合物に氷冷下で注ぎ、全体をAcOEtで抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。残渣をEt2Oで結晶化して、8(67%)を得た。
8:無色粉末;
【0106】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-N-メチル-3-フェニルペンタ-2-エンアミド(9)。DMF(1.5ml)中の3(60mg、0.126mmol)の溶液に、60%NaH(6.0mg、0.15mmol)を氷冷下で加え、次いで混合物を室温で10分間撹拌した。ヨードメタン(21.5mg、0.151mmol)を氷冷下で加え、混合物を室温で1時間撹拌した。氷冷下、H2Oで反応停止し、全体をAcOEtで抽出した。有機層をH2O、食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:CH2Cl2からCH2Cl2/MeOH、20:1)で精製して、9(100%)を得た。
9:無色粉末;
【0107】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-2-(4-ヒドロキシフェニル)-N-メチル-3-フェニルペンタ-2-エンアミド(10)。化合物10を、化合物8の調製に用いたものと同じ方法により調製した。
10:無色粉末(84%);
【0108】
スキーム8
(ブタ-3-イニルオキシ)トリイソプロピルシラン(1f)。CH2Cl2(8ml)中の3-ブチン-1-オール(2.0g、28.5mmol)およびイミダゾール(2.91g、42.7mmol)の溶液に、CH2Cl2(12ml)中の塩化トリイソプロピルシリル(7.14g、37.0mmol)の溶液を氷冷下で10分かけて加えた。次いで、混合物を室温で17時間撹拌した。H2Oを反応混合物に氷冷下で注ぎ、全体をCHCl3で抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:ヘキサンからヘキサン/AcOEt、100:1)で精製して、2(87%)を得た。
2:無色粉末;
【0109】
4-メチルペンタ-2-イン酸エチル(2b)。Ar雰囲気下で、THF(15ml)中の3-メチルブチン(1.5g、22.0mmol)の混合物に、ヘキサン中の2.5M n-BuLiの溶液(9.68ml、24.2mmol)を-78℃で15分かけて加え、次いで混合物を-78℃で5分と、-5〜-10℃で30分間撹拌した。クロロギ酸エチル(2.63g、24.2mmol)を-78℃で滴加し、次いで混合物を0℃で1時間撹拌した。氷冷下、飽和NH4Cl水溶液で反応停止し、全体をEt2Oで抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。クーゲルロール蒸留(1〜3mmHg、70〜80℃)で精製して、2b(59%)を得た。
2b:無色油状物;
【0110】
3-シクロペンチルプロピオル酸エチル(2c)。化合物2cを、2bの調製に用いたものと同じ方法により調製した。クーゲルロール蒸留(1〜3mmHg、110〜115℃)で精製(73%)。
2c:無色油状物;
【0111】
3-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)プロピオル酸エチル(2e)。Ar雰囲気下で、DMF(10ml)中の1-ヨード-4-(メトキシメトキシ)ベンゼン(500mg、1.89mmol)、プロピオル酸エチル(371mg、3.78mmol)および酸化銅(I)(270mg、1.89mmol)の混合物を110℃で16時間加熱した。冷却後、H2Oを反応混合物に氷冷下で注ぎ、全体をAcOEtで抽出した。有機層をH2O、食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:ヘキサン/AcOEt、15:1)で精製して、2e(52%)を得た。
2e:無色油状物;
【0112】
5-トリイソプロピルシリルオキシペンタ-2-イン酸エチル(2f)。化合物2fを、2bの調製に用いたものと同じ方法により調製した。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:ヘキサン/AcOEt、30:1)で精製して、2f(96%)を得た。
2f:黄色油状物;
【0113】
(E)-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-フェニルヘキサ-2-エン酸エチル(3a)。DMF(6ml)-H2O(1.5ml)中の2-ヘキシン酸エチル(250mg、1.78mmol)、1-ヨード-4-(メトキシメトキシ)ベンゼン(940mg、3.56mmol)、フェニルボロン酸(434mg、3.56mmol)およびK2CO3(492mg、3.56mmol)の混合物を室温で10分間撹拌した。次いで、PdCl2(PhCN)2(6.8mg、0.0177mmol)をAr雰囲気下で加え、混合物を室温で24時間撹拌した。氷冷下、H2Oで反応停止し、全体をEt2Oで抽出した。有機層をH2O、食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:ヘキサン/AcOEt、30:1から15:1)で精製して、3a(29%)を得た。
3a:無色油状物;
【0114】
化合物3b〜fを、3aの調製に用いたものと同じ方法により調製した。
【0115】
(E)-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-4-メチル-3-フェニルペンタ-2-エン酸エチル(3b)。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:ヘキサン/AcOEt、30:1から10:1)で精製して、3b(38%)を得た。
3b:無色油状物;
【0116】
(E)-3-シクロペンチル-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-フェニルアクリル酸エチル(3c)。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:ヘキサン/AcOEt、30:1から10:1)で精製して、3c(29%)を得た。
3c:無色油状物;
【0117】
2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3,3-ジフェニルアクリル酸エチル(3d)。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:ヘキサン/AcOEt、30:1から5:1)で精製して、3d(62%)を得た。
3d:無色粉末;
【0118】
(Z)-2,3-ビス(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-フェニルアクリル酸エチル(3e)。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:ヘキサン/AcOEt、10:1から5:1)で精製して、3e(70%)を得た。
3e:無色粉末;
【0119】
(E)-5-トリイソプロピルシリオキシ-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-フェニルペンタ-2-エン酸エチル(3f)。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:ヘキサン/AcOEt、30:1から20:1)で精製して、3f(37%)を得た。
3f:黄色油状物;
【0120】
(E)-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-フェニルヘキサ-2-エン酸(4a)。MeOH(5ml)中の3a(140mg、0.395mmol)の溶液に2N NaOH(2ml)を加え、混合物を80℃で15時間撹拌した。冷却後、2N HCl(2ml)を氷冷下で滴加し、全体をAcOEtで抽出し、有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。残渣の固体をヘキサンで粉砕して、4a(78%)を得た。
4a:無色粉末;
【0121】
化合物4b〜fを、4aの調製に用いたものと同じ方法により調製した。
【0122】
(E)-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-4-メチル-3-フェニルペンタ-2-エン酸(4b)。
4b:無色粉末(84%);
【0123】
(E)-3-シクロペンチル-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-フェニルアクリル酸(4c)。
無色粉末(90%);
【0124】
2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3,3-ジフェニルアクリル酸(4d)。
無色粉末(93%);
【0125】
(Z)-2,3-ビス(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-フェニルアクリル酸(4e)。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:ヘキサン/AcOEt、3:1からAcOEt)で精製して、無色固体(84%)を得た。固体をヘキサンで粉砕して、4e(56%)を得た。
4e:無色粉末;
【0126】
(E)-5-トリイソプロピルシリルオキシ-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-フェニルペンタ-2-エン酸(4f)。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:ヘキサン/AcOEt、3:1から1:1)で精製して、4f(27%)を得た。
4f:無色油状物;
【0127】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-フェニルヘキサ-2-エンアミド(5a)。CH2Cl2(2ml)中の4a(50mg、0.153mmol)、4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)ベンゼンアミン2塩酸塩(42.6mg、0.168mmol)、4-ジメチルアミノピリジン(0.9mg、0.00736mmol)の混合物に、ヘキサフルオロリン酸O-ベンゾトリアゾイル-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウム(60.9mg、0.161mmol)を氷冷下で加え、混合物を0℃で10分間撹拌した。次いで、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(69.2mg、0.534mmol)を氷冷下で加えた。混合物を0℃で5分間と、室温で15時間撹拌した。氷冷下、飽和NaHCO3水溶液で反応停止し、全体をCHCl3で抽出し、有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:AcOEtからCHCl3/MeOH、10:1)で精製して、無色固体(100%)を得た。固体をEt2O-ヘキサンで粉砕して、5a(84%)を得た。
5a:無色粉末;
【0128】
化合物5b〜fを、5aの調製に用いたものと同じ方法により調製した。
【0129】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-4-メチル-3-フェニルペンタ-2-エンアミド(5b)。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:CH2Cl2からCH2Cl2/MeOH、5:1)で精製して、無色固体(92%)を得た。固体をヘキサンで粉砕して、5b(70%)を得た。
5b:無色粉末;
【0130】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-3-シクロペンチル-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-フェニルアクリルアミド(5c)。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:AcOEtからCHCl3/MeOH、5:1)で精製して、無色固体(89%)を得た。固体をEt2O-ヘキサンで粉砕して、5c(55%)を得た。
5c:無色粉末;
【0131】
N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3,3-ジフェニルアクリルアミド(5d)。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:AcOEtからCHCl3/MeOH、10:1)で精製して、無色固体(79%)を得た。固体をEt2Oで粉砕して、5d(68%)を得た。
5d:無色粉末;
【0132】
(Z)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-2,3-ビス(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-フェニルアクリルアミド(5e)。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:AcOEtからCHCl3/MeOH、5:1)で精製して、無色固体(61%)を得た。固体をEt2Oで粉砕して、5e(39%)を得た。
5e:無色粉末;
【0133】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-5-トリイソプロピルシリルオキシ-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-フェニルペンタ-2-エンアミド(5f)。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:AcOEtからCHCl3/MeOH、10:1)で精製して、5f(65%)を得た。
5f:無色粉末;
【0134】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-5-ヒドロキシ-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-フェニルペンタ-2-エンアミド(5g)。THF(2ml)中の5f(95mg、0.147mmol)の溶液に、THF中のフッ化テトラブチルアンモニウムの1M溶液(0.18ml)を氷冷下で加え、混合物を室温で30分間撹拌した。H2Oを反応混合物に氷冷下で加え、全体をAcOEtで抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:AcOEtからCHCl3/MeOH、5:1)で精製して、5g(90%)を得た。
5g:無色油状物;
【0135】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-2-(4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルヘキサ-2-エンアミド(6a)。MeOH(1ml)中の5a(45mg、0.0921mmol)の溶液に、AcOEt中の3N HCl(0.5ml)を氷冷下で加え、混合物を室温で1時間撹拌した。H2O中のNaHCO3(139mg)の溶液を反応混合物に氷冷下で注ぎ、全体をAcOEtおよび少量のMeOHで抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。残渣をEt2Oで結晶化して、6a(83%)を得た。
6a:無色粉末;
【0136】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-2-(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチル-3-フェニルペンタ-2-エンアミド(6b)。MeOH(3ml)中の5b(90mg、0.184mmol)の溶液に、1,4-ジオキサン中の4N HCl(0.5ml)を氷冷下で加え、混合物を室温で2時間撹拌した。H2O中のNaHCO3の溶液を反応混合物に氷冷下で注ぎ、全体をAcOEtで抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。残渣をEt2Oで結晶化して、6b(84%)を得た。
6b:無色粉末;
【0137】
化合物6c〜eを、6a、6bの調製に用いたものと同じ方法により調製した。
【0138】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-3-シクロペンチル-2-(4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルアクリルアミド(6c)。
6c:無色粉末(AcOEt、87%);
【0139】
N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-2-(4-ヒドロキシフェニル)-3,3-ジフェニルアクリルアミド(6d)。
6d:無色粉末(Et2O、80%);
【0140】
(Z)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-2,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルアクリルアミド(6e)。
6e:無色粉末(AcOEt-ヘキサン、74%);
【0141】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-5-ヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルペンタ-2-エンアミド(6f)。CH2Cl2(3ml)中の5g(60mg、0.122mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(39.4mg、0.305mmol)の溶液に、無水酢酸(24.9mg、0.243mmol)を氷冷下で加え、混合物を室温で2時間撹拌した。H2Oを反応混合物に氷冷下で注ぎ、全体をCHCl3で抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。AcOEt(2ml)中の残渣の溶液に、1,4-ジオキサン中の4N HCl(0.4ml)およびMeOH(0.5ml)を氷冷下で加え、混合物を室温で1時間撹拌した。H2O中のNaHCO3の溶液を反応混合物に氷冷下で注ぎ、全体をAcOEtで抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。MeOH(3ml)中の残渣の溶液に、2N NaOH(0.171ml)を氷冷下で加え、混合物を室温で40分間撹拌した。2N HCl(0.170ml)を氷冷下で加え、次いでH2O中のNaHCO3を反応混合物に注いだ。全体をAcOEtで抽出し、有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。残渣をAcOEtで結晶化して、6f(48%)を得た。
6f:無色粉末;
【0142】
スキーム9
3-シクロプロピルプロピオル酸エチル(2)。Ar雰囲気下、THF(10ml)中のエチニルシクロプロパン(1.00g、15.1mmol)の混合物に、ヘキサン中の2.5M n-BuLiの溶液(6.60ml、16.5mmol)を-78℃で15分かけて加え、次いで混合物を-78℃で5分間と、-10℃で30分間撹拌した。クロロギ酸エチル(1.89g、16.6mmol)を-78℃で滴加し、次いで混合物を0℃で1時間撹拌した。氷冷下、飽和NH4Cl水溶液で反応停止し、全体をEt2Oで抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。クーゲルロール蒸留(5〜8mmHg、100〜110℃)で精製(77%)。
2:無色油状物;
【0143】
(E)-3-シクロプロピル-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-フェニルアクリル酸エチル(3)および(E)-3-シクロプロピル-3-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-2-フェニルアクリル酸エチル(4)。DMF(10ml)-H2O(2.5ml)中の2(215mg、1.56mmol)、ヨードベンゼン(637mg、3.12mmol)、4-(メトキシメトキシ)フェニルボロン酸(568mg、3.12mmol)およびK2CO3(431mg、3.12mmol)の混合物を室温で10分間撹拌した。次いで、PdCl2(PhCN)2(6.0mg、0.0156mmol)をAr雰囲気下で加え、混合物を室温で24時間撹拌した。氷冷下、H2Oで反応停止し、全体をEt2Oで抽出した。有機層をH2O、食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:ヘキサンからヘキサン/AcOEt、10:1)で精製して、3(24%)および4(28%)を得た。
3:無色油状物;
4:無色油状物;
【0144】
(E)-3-シクロプロピル-3-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-2-フェニルアクリル酸エチル(5)。DMF(8.5ml)-H2O(2.2ml)中の2(385mg、2.79mmol)、1-ヨード-4-(メトキシメトキシ)ベンゼン(1.47g、5.57mmol)、フェニルボロン酸(680mg、5.58mmol)およびK2CO3(771mg、5.58mmol)の混合物を室温で10分間撹拌した。次いで、PdCl2(PhCN)2(10.7mg、0.0279mmol)をAr雰囲気下で加え、混合物を室温で24時間撹拌した。氷冷下、H2Oで反応停止し、全体をEt2Oで抽出した。有機層をH2O、食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:ヘキサン/AcOEt、30:1から10:1)で精製して、5(29%)を得た。
5:無色油状物;
【0145】
(E)-3-シクロプロピル-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-フェニルアクリル酸(7)。MeOH(3ml)中の3(105mg、0.298mmol)の溶液に2N NaOH(1.5ml)を加え、混合物を80℃で24時間撹拌した。冷却後、2N HCl(1.5ml)を氷冷下で滴加し、全体をAcOEtで抽出し、有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。残渣の固体をヘキサンで粉砕して、7(75%)を得た。
7:無色粉末;
【0146】
化合物10、13を、7の調製に用いたものと同じ方法により調製した。
【0147】
(Z)-3-シクロプロピル-3-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-2-フェニルアクリル酸(10)。
無色粉末(58%);
【0148】
(E)-3-シクロプロピル-3-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-2-フェニルアクリル酸(13)。
無色粉末(84%);
【0149】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-3-シクロプロピル-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-フェニルアクリルアミド(8)。CH2Cl2(3ml)中の7(65mg、0.200mmol)、4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)ベンゼンアミン2塩酸塩(42.6mg、0.168mmol)、4-ジメチルアミノピリジン(1.2mg、0.00982mmol)の混合物に、ヘキサフルオロリン酸O-ベンゾトリアゾイル-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウム(83.4mg、0.220mmol)を氷冷下で加え、混合物を0℃で10分間撹拌した。次いで、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(90.4mg、0.701mmol)を氷冷下で加えた。混合物を0℃で5分間と、室温で15時間撹拌した。氷冷下、飽和NaHCO3水溶液で反応停止し、全体をCHCl3で抽出し、有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:CH2Cl2からCH2Cl2/MeOH、6:1)で精製して、無色固体(100%)を得た。固体をヘキサンで粉砕して、8(80%)を得た。
8:無色粉末;
【0150】
化合物11、14を、8の調製に用いたものと同じ方法により調製した。
【0151】
(Z)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-3-シクロプロピル-3-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-2-フェニルアクリルアミド(11)。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:CH2Cl2からCH2Cl2/MeOH、6:1)で精製して、無色固体(94%)を得た。固体をEt2O-ヘキサンで粉砕して、11(67%)を得た。
11:無色粉末;
【0152】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-3-シクロプロピル-3-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-2-フェニルアクリルアミド(14)。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:AcOEtからCHCl3/MeOH、5:1)で精製して、無色固体(94%)を得た。固体をEt2O-ヘキサンで粉砕して、14(72%)を得た。
14:無色粉末;
【0153】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-3-シクロプロピル-2-(4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルアクリルアミド(9)。MeOH(3ml)中の8(70mg、0.144mmol)の溶液に、1,4-ジオキサン中の4N HCl(0.4ml)を氷冷下で加え、混合物を室温で3時間撹拌した。H2O中のNaHCO3の溶液を反応混合物に氷冷下で注ぎ、全体をAcOEtで抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。残渣の固体をEt2Oで結晶化して、9(88%)を得た。
9:無色粉末;
【0154】
化合物12、15を、9の調製に用いたものと同じ方法により調製した。
【0155】
(Z)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-3-シクロプロピル-3-(4-ヒドロキシフェニル)-2-フェニルアクリルアミド(12)。
無色粉末(AcOEt、78%);
【0156】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-3-シクロプロピル-3-(4-ヒドロキシフェニル)-2-フェニルアクリルアミド(15)。
無色粉末(AcOEt、80%);
【0157】
スキーム10
(E)-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-o-トリルペンタ-2-エン酸エチル(2a)。DMF(8.5ml)-H2O(2.2ml)中の2-ペンチン酸エチル(350mg、2.77mmol)、1-ヨード-4-(メトキシメトキシ)ベンゼン(1.46g、5.53mmol)、2-メチルフェニルボロン酸(753mg、5.53mmol)およびK2CO3(766mg、5.54mmol)の混合物を室温で10分間撹拌した。次いで、PdCl2(PhCN)2(10.6mg、0.0276mmol)をAr雰囲気下で加え、混合物を室温で24時間撹拌した。氷冷下、H2Oで反応停止し、全体をEt2Oで抽出した。有機層をH2O、食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:ヘキサン/AcOEt、30:1)で精製して、2a(27%)を得た。
2a:無色油状物;
【0158】
化合物2b〜eを、2aの調製に用いたものと同じ方法により調製した。
【0159】
(E)-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-m-トリルペンタ-2-エン酸エチル(2b)。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:ヘキサン/AcOEt、30:1)で精製して、2b(18%)を得た。
2b:無色油状物;
【0160】
(E)-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-p-トリルペンタ-2-エン酸エチル(2c)。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:ヘキサン/AcOEt、30:1)で精製して、2c(29%)を得た。
2c:無色油状物;
【0161】
(E)-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-(ナフタレン-1-イル)ペンタ-2-エン酸エチル(2d)。Biotage 40M(溶離剤:ヘキサンからヘキサン/AcOEt、10:1)で精製して、2d(24%)を得た。
2d:無色油状物;
【0162】
(E)-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-(ナフタレン-2-イル)ペンタ-2-エン酸エチル(2e)。Biotage 40M(溶離剤:ヘキサンからヘキサン/AcOEt、10:1)で精製して、2e(29%)を得た。
2e:無色油状物;
【0163】
(E)-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-o-トリルペンタ-2-エン酸(3a)。MeOH(7ml)中の2a(240mg、0.677mmol)の溶液に2N NaOH(3.4ml)を加え、混合物を80℃で18時間撹拌した。冷却後、2N HCl(3.4ml)を氷冷下で滴加し、全体をAcOEtで抽出し、有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。残渣の固体をヘキサンで粉砕して、3a(79%)を得た。
3a:無色粉末;
【0164】
化合物3b〜eを、3aの調製に用いたものと同じ方法により調製した。
【0165】
(E)-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-m-トリルペンタ-2-エン酸(3b)。
3b:無色粉末(71%);
【0166】
(E)-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-p-トリルペンタ-2-エン酸(3c)。
3c:無色粉末(84%);
【0167】
(E)-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-(ナフタレン-1-イル)ペンタ-2-エン酸(3d)。
3e:無色粉末(83%);
【0168】
(E)-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-(ナフタレン-2-イル)ペンタ-2-エン酸(3e)。
3e:無色粉末(80%);
【0169】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-o-トリルペンタ-2-エンアミド(4a)。CH2Cl2(3ml)中の3a(90mg、0.276mmol)、4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)ベンゼンアミン2塩酸塩(76.9mg、0.304mmol)、4-ジメチルアミノピリジン(1.7mg、0.00139mmol)の混合物に、ヘキサフルオロリン酸O-ベンゾトリアゾイル-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウム(110mg、0.290mmol)を氷冷下で加え、混合物を0℃で10分間撹拌した。次いで、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(125mg、0.965mmol)を氷冷下で加えた。混合物を0℃で5分間と、室温で15時間撹拌した。氷冷下、飽和NaHCO3水溶液で反応停止し、全体をCHCl3で抽出し、有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:AcOEtからCHCl3/MeOH、10:1)で精製して、無色固体(97%)を得た。固体をEt2O-ヘキサンで粉砕して、4a(70%)を得た。
4a:無色粉末;
【0170】
化合物4b〜eを、4aの調製に用いたものと同じ方法により調製した。
【0171】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-m-トリルペンタ-2-エンアミド(4b)。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:AcOEtからCHCl3/MeOH、10:1)で精製して、無色固体(90%)を得た。固体をEt2O-ヘキサンで粉砕して、4b(65%)を得た。
4b:無色粉末;
【0172】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-p-トリルペンタ-2-エンアミド(4c)。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:AcOEtからCHCl3/MeOH、5:1)で精製して、無色固体(91%)を得た。固体をEt2O-ヘキサンで粉砕して、4c(63%)を得た。
4c:無色粉末;
【0173】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-(ナフタレン-1-イル)ペンタ-2-エンアミド(4d)。Biotage(溶離剤:CH2Cl2からCH2Cl2/MeOH、6:1)で精製して、無色固体(94%)を得た。固体をEt2O-ヘキサンで粉砕して、4d(68%)を得た。
4d:無色粉末;
【0174】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-2-(4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-(ナフタレン-2-イル)ペンタ-2-エンアミド(4e)。Biotage(溶離剤:CH2Cl2からCH2Cl2/MeOH、6:1)で精製して、無色固体(89%)を得た。固体をEt2O-ヘキサンで粉砕して、4d(76%)を得た。
4d:無色粉末;
【0175】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-2-(4-ヒドロキシフェニル)-3-o-トリルペンタ-2-エンアミド(5a)。MeOH(2ml)中の4a(75mg、0.153mmol)の溶液に、1,4-ジオキサン中の4N HCl(0.4ml)を氷冷下で加え、混合物を室温で2時間撹拌した。H2O中のNaHCO3の溶液を反応混合物に氷冷下で注ぎ、全体をAcOEtで抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。残渣をAcOEtで結晶化して、5a(74%)を得た。
5a:無色粉末;
【0176】
化合物5b〜eを、5aの調製に用いたものと同じ方法により調製した。
【0177】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-2-(4-ヒドロキシフェニル)-3-m-トリルペンタ-2-エンアミド(5b)。
5b:無色粉末(AcOEt、86%);
【0178】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-2-(4-ヒドロキシフェニル)-3-p-トリルペンタ-2-エンアミド(5c)。
5c:無色粉末(AcOEt、74%);
【0179】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-2-(4-ヒドロキシフェニル)-3-(ナフタレン-1-イル)ペンタ-2-エンアミド(5d)。
5c:無色粉末(AcOEt-ヘキサン、77%);
【0180】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-2-(4-ヒドロキシフェニル)-3-(ナフタレン-2-イル)ペンタ-2-エンアミド(5e)。
5e:無色粉末(AcOEt-ヘキサン、83%);
【0181】
スキーム11
(E)-2,3-ビス(4-(メトキシメトキシ)フェニル)ペンタ-2-エン酸エチル(2a)。DMF(12ml)中の2-ペンチン酸エチル(250mg、1.98mmol)、1-ヨード-4-(メトキシメトキシ)ベンゼン(1.05g、3.98mmol)、4-(メトキシメトキシ)フェニルボロン酸(721mg、3.96mom)の混合物に、H2O(3ml)中のK2CO3(547mg、3.96mom)の溶液を氷冷下で加え、次いで混合物を室温で10分間撹拌した。PdCl2(PhCN)2(7.6mg、0.0198mmol)をAr雰囲気下で加え、混合物を室温で24時間撹拌した。氷冷下、H2Oで反応停止し、全体をEt2Oで抽出した。有機層をH2O、食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:ヘキサン/AcOEt、20:1から10:1)で精製して、2a(59%)を得た。
2a:無色油状物;
【0182】
(E)-2,3-ビス(4-フルオロフェニル)ペンタ-2-エン酸エチル(2b)。化合物2bを、2aの調製に用いたものと同じ方法により調製した。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:ヘキサン/AcOEt、30:1)で精製して、2b(43%)を得た。
2b:無色油状物;
【0183】
(E)-2,3-ビス(4-(メトキシメトキシ)フェニル)ペンタ-2-エン酸(3a)。MeOH(10ml)中の2a(420mg、1.05mmol)の溶液に2N NaOH(5.3ml)を加え、混合物を80℃で15時間撹拌した。冷却後、2N HCl(5.3ml)を氷冷下で滴加し、全体をAcOEtで抽出し、有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。残渣の固体をヘキサンで粉砕して、3a(86%)を得た。
3a:無色粉末;
【0184】
(E)-2,3-ビス(4-フルオロフェニル)ペンタ-2-エン酸(3b)。化合物3bを、3aの調製に用いたものと同じ方法により調製した。
3b:無色粉末(86%);
【0185】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-2,3-ビス(4-(メトキシメトキシ)フェニル)ペンタ-2-エンアミド(4a)。CH2Cl2(5ml)中の3a(150mg、0.403mmol)、4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)ベンゼンアミン2塩酸塩(112mg、0.442mmol)、4-ジメチルアミノピリジン(2.5mg、0.0205mmol)の混合物に、ヘキサフルオロリン酸O-ベンゾトリアゾイル-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウム(160mg、0.422mmol)を氷冷下で加え、混合物を0℃で10分間撹拌した。次いで、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(182mg、1.41mmol)を氷冷下で加えた。混合物を0℃で5分間と、室温で15時間撹拌した。氷冷下、飽和NaHCO3水溶液で反応停止し、全体をCHCl3で抽出し、有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:AcOEtからCHCl3/MeOH、10:1)で精製して、無色固体(84%)を得た。固体をEt2O-ヘキサンで粉砕して、4a(77%)を得た。
4a:無色粉末;
【0186】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-2,3-ビス(4-フルオロフェニル)ペンタ-2-エンアミド(4b)。化合物4bを、4aの調製に用いたものと同じ方法により調製した。シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離剤:CHCl3/MeOH、20:1)で精製して、無色油状物(94%)を得た。残渣をEt2O-ヘキサンで結晶化して、4b(65%)を得た。
4b:無色粉末;
【0187】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-2,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタ-2-エンアミド(5)。MeOH(1ml)中の4a(45mg、0.0842mmol)の溶液に、AcOEt中の3N HCl(0.5ml)を氷冷下で加え、混合物を室温で2時間撹拌した。H2O中のNaHCO3(126mg)の溶液を反応混合物に氷冷下で注ぎ、全体をAcOEtおよび少量のMeOHで抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。残渣の固体をEt2Oで結晶化して、5(68%)を得た。
5:無色粉末;
【0188】
スキーム12
(E)-2-(3-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-フェニルペンタ-2-エン酸エチル(2a)。DMF(8ml)-H2O(2ml)中の2-ペンチン酸エチル(350mg、2.77mmol)、1-ヨード-3-(メトキシメトキシ)ベンゼン(1.46g、5.53mmol)、フェニルボロン酸(675mg、5.54mmol)およびK2CO3(766mg、5.54mmol)の混合物を室温で10分間撹拌した。次いで、PdCl2(PhCN)2(10.6mg、0.0276mmol)をAr雰囲気下で加え、混合物を室温で24時間撹拌した。氷冷下、H2Oで反応停止し、全体をEt2Oで抽出した。有機層をH2O、食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。Biotage HPFC(溶離剤:ヘキサンからヘキサン/AcOEt、10:1)で精製して、2a(25%)を得た。
2a:無色油状物;
【0189】
化合物2b〜cを、2aの調製に用いたものと同じ方法により調製した。
【0190】
(E)-2-(4-(メトキシメトキシ)-2-メチルフェニル)-3-フェニルペンタ-2-エン酸エチル(2b)。Biotage HPFC(溶離剤:ヘキサンからヘキサン/AcOEt、10:1)で精製して、2b(16%)を得た。
2b:無色油状物;
【0191】
(E)-2-(3-フルオロ-4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-フェニルペンタ-2-エン酸エチル(2c)。Biotage HPFC(溶離剤:ヘキサン/CH2Cl2、1:1からCH2Cl2)で精製して、2c(21%)を得た。
2c:無色油状物;
【0192】
(E)-2-(3-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-フェニルペンタ-2-エン酸(3a)。MeOH(6ml)中の2a(195mg、0.573mmol)の溶液に2N NaOH(3ml)を加え、混合物を80℃で15時間撹拌した。冷却後、2N HCl(3ml)を氷冷下で滴加し、全体をAcOEtで抽出し、有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。残渣の固体をヘキサンで粉砕して、3a(69%)を得た。
3a:無色粉末;
【0193】
化合物3b〜cを、3aの調製に用いたものと同じ方法により調製した。
【0194】
(E)-2-(4-(メトキシメトキシ)-2-メチルフェニル)-3-フェニルペンタ-2-エン酸(3b)。
3b:無色粉末(60%);
【0195】
(E)-2-(3-フルオロ-4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-フェニルペンタ-2-エン酸(3c)。
3c:無色粉末(82%);
【0196】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-2-(3-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-フェニルペンタ-2-エンアミド(4a)。CH2Cl2(3ml)中の3a(70mg、0.224mmol)、4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)ベンゼンアミン2塩酸塩(62.4mg、0.246mmol)、4-ジメチルアミノピリジン(1.4mg、0.0115mmol)の混合物に、ヘキサフルオロリン酸O-ベンゾトリアゾイル-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウム(93.4mg、0.246mmol)を氷冷下で加え、混合物を0℃で10分間撹拌した。次いで、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(101mg、0.781mmol)を氷冷下で加えた。混合物を0℃で5分間と、室温で15時間撹拌した。氷冷下、飽和NaHCO3水溶液で反応停止し、全体をCHCl3で抽出し、有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。Biotage HPFC(溶離剤:CH2Cl2からCH2Cl2/MeOH、6:1)で精製して、無色固体(99%)を得た。固体をEt2O-ヘキサンで粉砕して、4a(65%)を得た。
4a:無色粉末;
【0197】
化合物4b〜cを、4aの調製に用いたものと同じ方法により調製した。
【0198】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-2-(4-(メトキシメトキシ)-2-メチルフェニル)-3-フェニルペンタ-2-エンアミド(4b)。Biotage HPFC(溶離剤:CH2Cl2からCH2Cl2/MeOH、6:1)で精製して、無色固体(86%)を得た。固体をEt2O-ヘキサンで粉砕して、4b(68%)を得た。
4b:無色粉末;
【0199】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-2-(3-フルオロ-4-(メトキシメトキシ)フェニル)-3-フェニルペンタ-2-エンアミド(4c)。Biotage HPFC(溶離剤:CH2Cl2からCH2Cl2/MeOH、6:1)で精製して、淡黄色固体(89%)を得た。固体をヘキサンで粉砕して、4c(70%)を得た。
4c:無色粉末;
【0200】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-2-(3-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルペンタ-2-エンアミド(5a)。MeOH(2ml)中の4a(50mg、0.105mmol)の溶液に、1,4-ジオキサン中の4N HCl(0.26ml)を氷冷下で加え、混合物を室温で3時間撹拌した。H2O中のNaHCO3の溶液を反応混合物に氷冷下で注ぎ、全体をAcOEtで抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、次いで濃縮した。残渣をAcOEtで結晶化して、5a(73%)を得た。
5a:無色粉末;
【0201】
化合物5b〜cを、5aの調製に用いたものと同じ方法により調製した。
【0202】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-2-(4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)-3-フェニルペンタ-2-エンアミド(5b)。
5b:無色粉末(AcOEt-Et2O、80%);
【0203】
(E)-N-(4-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)フェニル)-2-(3-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルペンタ-2-エンアミド(5c)。
5c:無色粉末(AcOEt、71%);
【0204】
【0205】
実施例22
本実施例は、以前に同定されていない膜結合エストロゲン受容体の同定および特徴づけ、ならびにSERMの同定および評価のための検定を記載する。
【0206】
SERM検定およびスクリーニングのための一般的方法
Oregon Health Sciences Universityの飼育施設で飼育された雌Topekaモルモット(400g〜600g)および雌の多色モルモット(400g〜500g、Elm Hill, MA)を用いた。モルモットを一定の温度(26℃)および光の下に維持した(06:30〜20:30の間)。動物を個々に収容し、食物および水は無制限に提供した。実験の5〜7日前に、ケタミン/キシラジン麻酔(それぞれ、33mg/kgおよび6mg/kg;皮下)下で卵巣を摘出し、実験の24時間前にゴマ油媒体(0.1mL、皮下)を与えた。血清エストロゲン濃度を、実験日に収集した体幹血液からラジオイムノアッセイによりもとめ(Wagner et al., J Neurosci 21: 2085-2093, 2001)、10pg/mL未満であった。さらなる群の動物(n=6)を卵巣摘出し、1週間後の屠殺の24時間前に、油媒体、安息香酸エストラジオール(油中25μg)または化合物8(実施例4、油中25μg)を注射した。
【0207】
これらの試験において、野生型C57BL/6マウスをJackson Laboratoriesから得た。すべての動物を、制御温度(25℃)および光周期の条件(14時間点灯、10時間消灯;07:00〜21:00の間点灯)下で維持し、食物および水を無制限に提供した。マウス成獣をイソフルラン麻酔下で卵巣摘出し、1週間回復させた。この時点で、動物に油媒体、安息香酸エストラジオール(EB;1μg)または化合物8(2μgまたは5μg)を1日1回2日間注射し、麻酔し、24時間後に断頭により屠殺した。後の組織検査のために、子宮を回収し、秤量し、4%パラホルムアルデヒドで固定した(データは示していない)。
【0208】
市販薬物:
薬物は、特に記載がないかぎり、Calbiochem(LaJolla, CA, USA)より購入した。テトロドトキシン(TTX;Alomone, Jerusalem, Israel)をMilli-Q H2Oに溶解し、0.1%酢酸でさらに希釈した(最終濃度1mM;pH4〜5)。17β-エストラジオール(17β-エストラジオール)をSteraloids(Wilton, NH, USA)より購入し、再結晶して純度を確保し、100%エタノールに溶解して保存液濃度を1mMとした。17α-エストラジオール(1mM、Steraloids)、抗エストロゲン:ICI 182, 780(10mM, Tocris Cookson, Ballwin, MO)、および選択的エストロゲン受容体モジュレーターである4-OH-タモキシフェン(10mM、Steraloids)、ラロキシフェン(10mM、Eli Lilly, Indianapolis, IN)ならびに化合物8(10mM)も100%エタノールに溶解した。17-ヘミコハク酸17β-エストラジオール:BSA(17β-エストラジオール-BSA、1mM、Steraloids)をH2O中に溶解した。タンパク質キナーゼA阻害剤であるH-89 2塩酸塩(10mM)、タンパク質キナーゼA活性化剤であるフォルスコリン(50mM)、タンパク質キナーゼC阻害剤である塩酸ビスインドリルマレイミドI(BIS、100μM)、Go6976(2mM)、およびロットレリン(10mM)、ホスホリパーゼC阻害剤であるU73122(20mM)、より活性の低い類縁体U73343(20mM)、ならびにMEK1阻害剤であるPD98059(50mM)をDMSOに溶解した。タンパク質キナーゼA阻害ペプチドである6-22アミド(1mM)、タンパク質キナーゼA阻害剤:Rp-cAMPS(50mM)およびコレラ毒素Aサブユニット(1μg/μL)をH2Oに溶解した。Gq αサブユニットのC末端を模倣するように設計されたGq結合タンパク質、およびGs αサブユニットのC末端を模倣するように設計されたGs α結合タンパク質は、PeptidoGenic Research(Livermore, CA)が合成した。Gqペプチドのペプチド配列は、Ac-LGLNLKEYNLV-OHであり、Gsペプチドのペプチド配列は、CRMHLRQYELLであった。これらのペプチドもH2Oに溶解した。BAPTA 4ナトリウム塩(1,2-ビス-(o-アミノフェノキシエタン)-N,N,N',N'-4酢酸)を10mMの濃度で内液に溶解した。保存溶液の一定量を、必要とされるまで適宜保存した。
【0209】
統計分析
群間の比較のための統計分析を一元分散分析(および事後(Newman-Keuls)対分析)を用いて行った。誤差の可能性が5%未満である場合、差を統計的有意であると考えた。
【0210】
組織の調製:
実験日に、動物を断頭し、その脳を頭蓋から取り出し、視床下部を摘出した。得られた視床下部のブロックを、プラスチックの切断プラットフォーム上に載せ、次いでこれを、氷冷し、酸素化(95%O2、5%CO2)人工脳脊髄液(aCSF、NaCl、124mM;NaHCO3、26mM;デキストロース、10mM;HEPES、10mM;KCl、5mM;NaH2PO4、2.6mM;MgSO4、2mM;CaCl2、1mM)を十分に満たしたビブラトーム中に固定した。弓状を通して4つの冠状スライス(350μm)を切断した。スライスを酸素化aCSFを含むマルチウェル補助チャンバーに移し、約2時間後の電気生理学的記録までそこに維持した。
【0211】
電気生理学:
電位固定法におけるホールセルパッチ記録を、以前に記載されたとおりに行った(Wagner et al., J Neurosci 21: 2085-2093, 2001)。簡単に言えば、CaCl2以外は同じ成分および各々の濃度を含み、CaCl2は2mMに上げた、暖かい(35℃)、酸素化aCSFで灌流したチャンバー中でスライスを維持した。人工CSF(aCSF)およびすべての薬物溶液を、蠕動ポンプにより1.5mL/分の速度で灌流した。薬物溶液を20mLシリンジ中で、適当な保存溶液をaCSFで希釈することにより調製し、流れを三方コックで制御した。
【0212】
ホールセル記録のために、電極をホウケイ酸ガラスで作成した(World Precision Instruments, Inc., Sarasota, FL, USA;外径1.5mm)。次いで、作成した電極に、0.5%ビオシチンを含み、グルコン酸K+、128mM;NaCl、10mM;MgCl2、1mM;EGTA、11mM;HEPES、10mM;ATP、1.2mM;GTP、0.4mMからなり;pHを1N KOHで7.3〜7.4に調節し;272〜315mOsmの内液を満たした。Axopatch 1D前置増幅器(Axon Instruments, Union City, CA)を用いて、電位パルスを増幅し、電極を通過させた。生じた電流偏位をデジタルオシロスコープ(Tektronix 2230, Beaverton, OR, USA)を用いてモニターした。電流偏位の低下後、シール(>1GΩ)を形成するために、ポリエチレンチューブで電極に接続された5mLのシリンジを介して陰圧をかけた。シールの形成後、吸入により細胞内アクセスを達成し、続いて1μM TTXにより少なくとも4〜6分間灌流して、自然発火およびシナプス電位を阻止し、その後GABAB受容体アゴニストであるバクロフェンを適用した(図1)。バクロフェンに対するすべての応答を、電位固定法において外向き電流として測定し(Vhold=-60mV)、記録の間中アクセス抵抗(20〜30MΩの範囲のアクセス抵抗)における10%未満の変化を示した細胞のみを本試験に含めた。膜電流は、pClamp7.0(Axon Instruments, Union City, CA)に結合したDigidata 1200インターフェースを介してアナログ-デジタル変換を受けた。電流のローパスフィルタリングを、2KHzの周波数で行った。液体接合部電位は-10mVで、後のデータ分析のために較正した。
【0213】
視床下部弓状ニューロンの事後同定:
電気的生理学的記録に続いて、スライスをセーレンセンリン酸緩衝液(pH7.4)中4%パラホルムアルデヒドで120分間固定し、セーレンセンリン酸緩衝液に溶解した20%スクロース中に終夜浸漬し、次いでO.C.T.包埋媒質中で凍結し、以前に記載されたとおり免疫細胞化学のために調製した(Kelly et al., Methods in Neurosciences: Pulsatility in Neuroendocrine Systems, pp 47-67. San Diego: Academic Press, Inc, 1994.)。簡単に言うと、冠状切片(20μm)をクリオスタット(Leitz Model 1720 Digital Cryostat)上で切断し、Fisher SuperFrost Plusスライド上に載せた。切片を0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)で5分間洗浄し、次いでストレプトアビジン-Cy2(Jackson ImmunoResearch Laboratories, PA)(1:1000)を2時間適用した。反応を緩衝液で洗浄することにより停止した。スライスをNikon Eclipse 800蛍光顕微鏡(Nikon Instruments, Melville, NY)を用いて、注入ニューロンについてスキャンした。ビオシチンを満たしたニューロンの位置確認の後、適当な切片を含むスライドを、以前に記載されたとおり、蛍光免疫組織化学を用いてチロシンヒドロキシラーゼ(TH)またはβ-エンドルフィンの存在について分析した(Kelly et al., Methods in Neurosciences: Pulsatility in Neuroendocrine Systems, pp 47-67. San Diego: Academic Press, Inc, 1994.)。簡単に言うと、ビオシチン同定ニューロン有する切片をモノクローナルTH抗体と1:10,000で(Diasorin, Stillwater, MN)、またはポリクローナルβ-エンドルフィン抗体と1:5,000で(Dave et al., Endocrinology 117: 1389-1396, 1985.)終夜インキュベートし、0.1Mリン酸緩衝液で洗浄し、続いて、それぞれヤギ抗マウスIgG-Cy3と1:500で、またはロバ抗ウサギIgG-Cy3と1:500で(Jackson ImmunoResearch Laboratories, PA)インキュベートした。切片をリン酸ナトリウム緩衝液で洗浄し、5%N-プロピル没食子酸塩を含むグリセロールグリシン緩衝液を用いてカバーガラスを適用した。免疫染色した細胞をNikon顕微鏡を用いて撮影した。図2参照。
【0214】
エストロゲン受容体結合検定:
エストロゲン受容体(ER)αおよび(ER)βに対する化合物の相対結合親和性を、市販の全長型の(ER)αおよび(ER)β(PanVera Corp, Madison, WI, USA)の両方と一緒にスピンカラムアッセイを用いて評価した。10mMトリス、pH7.5、10%グリセロール、2mM DTTおよび1mg/mL BSAならびに3nM [2,4,6,7,16,17-3H]エストラジオールを含む溶液に、受容体を最終濃度15nMとなるように4℃で加えた。この溶液の100μLを、エタノール中のリガンド1μLに加え、ピペッティングにより穏やかに混合し、4℃で終夜インキュベートした。次いで、混合物を、製造者の指示に従って結合緩衝液(トリチウム化エストラジオールは含まない)で平衡化した、G-25 Sephadex(Harvard Apparatus Inc.)を含むミクロスピンカラムに吸着させた。結合したエストラジオールを室温、2000×gで4分間スピンすることにより、遊離リガンドから分離した。次いで、ろ液を2.5mLのシンチラントに加え、液体シンチレーションカウンターで計数した。結合曲線を、Prism(GraphPad Software, San Diego, CA)統計分析ソフトウェアパッケージで単結合部位競合モデルを用いてあてはめた。標準偏差を、EC50値から0.2 log unit未満であると決定した。次いで、相対結合親和性パーセントを、未標識のエストラジオールについてもとめたIC50を、リガンドのIC50で除し、100を乗じることにより決定した。
【0215】
分散単一細胞RT-PCR:
モルモットの350μmの冠状視床下部スライスを、尾側から頭側へとビブラトーム上で切断し、酸素化aCSFを含む補助チャンバー内に置いた。スライスを、分散前にチャンバー内で1〜2時間回復させた。視床下部の弓状核を顕微解剖し、1mg/mLのプロテアーゼXIV(Sigma, St. Louis, MO)を含むハンクス液(HBSS;DEPC-処理水中のCaCl2、1.26mM;MgSO4、1mM;KCl、5.37mM;KH2PO4、0.44mM;NaCl、136.89mM;Na2HPO4、0.34mM;D-グルコース、5.55mM;Hepes、15mM(pH7.3、300mOsm)2〜3mL中、37℃で約15分間インキュベートした。次いで、組織を1倍量の低カルシウムaCSFで4回と、HBSSで2回洗浄した。細胞を、熱処理により先端を滑らかにしたパスツールピペットで粉砕して分離し、皿上に分散し、HBSSで1.5mL/nの速度で灌流した。細胞をNikon倒立顕微鏡を用いて可視化し、個々のニューロンをパッチし、陰圧をかけてパッチピペット内に回収した。ピペットの中身を、0.5μLの10×緩衝液(100mMトリス-HCl、500mM KCl、1%トリトン-X 100;Promega, Madison, WI)、15UのRNasin(Promega)、0.5μLの100mM DTTおよびDEPC-処理水の溶液5μLを含む、シリコン化微量遠心チューブに放出した。
【0216】
加えて、視床下部の組織をホモジナイズし、全RNAを製造者のプロトコルに従ってRNeasyキット(Qiagen, Valencia, CA)を用いて抽出した。1μL中の回収した細胞溶液および25ngの視床下部全RNAを、65℃で5分間変性させ、氷上で5分間冷却し、次いで50UのMuLV逆転写酵素(Applied Biosystems, Foster City, CA)、1.5μLの10×緩衝液、2mM MgCl2、0.2μLのデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)、15UのRNasin、10mM DTT、100ngのランダムヘキサマーおよびDEPC処理水を最終量が20μLまで加えることにより、一本鎖cDNAを細胞RNAから合成した。陰性対照として使用する細胞および組織RNAを、前述のとおりであるが、逆転写酵素は加えずに処理した。反応混合物を42℃で60分間インキュベートし、99℃で5分間変性させ、氷上で5分間冷却した。
【0217】
PCRを、各RT反応からのcDNAテンプレート3μLを用い、下記を含むPCR反応量30μLで実施した:3μLの10×緩衝液、2.4μLのMgCl2(TH、POMC、GABAB-R2、PKCδ、アデニル酸シクラーゼVIIおよびGAPDHのために最終濃度2mM)または3.6μLのMgCl2(GADのために最終濃度3mM)、0.2mM dNTP、0.2μM順方向および逆方向プライマー、2ユニットのTaq DNAポリメラーゼ(Promega)、ならびに0.22μgのTaqStart Antibody(Clontech, Palo Alto, CA)。Taq DNAポリメラーゼおよびTaqStart Antibodyを合わせ、室温で5分間インキュベートし、反応内容物の残りをチューブに加え、94℃で2分間インキュベートした。次いで、各反応を以下のプロトコルに従い、60サイクル(GAPDHに関しては35サイクル)の増幅を行った:94℃、45秒;55℃(GAD)、57℃(PKCδ)、58℃(GABAB-R2)、60℃(THおよびアデニル酸シクラーゼVII)、61℃(POMC)、63℃(GAPDH)45秒;72℃、1分10秒;最終72℃で5分間伸張。10マイクロリットルのPCR生成物を1.5%アガロースゲル上で臭化エチジウムにより可視化した。
【0218】
プライマーはすべて、Invitrogen(Carlsbad, CA)が合成し、以下の通りであった;
。
【0219】
17β-エストラジオールおよびSERMは視床下部ドーパミンニューロンおよびプロオピオメラノコルチン(POMC)ニューロンにおいてGABAB応答を急速に減弱させる
以下のデータは、17β-エストラジオールおよびSERMが視床下部ニューロンにおいてバクロフェン誘導性GABAB応答を急速に減弱させることを示し、これはこれらの化合物が非転写事象を通して神経伝達に影響することを示す。ホールセル記録を、卵巣摘出した雌モルモットからの弓状ニューロン(n=195)で行った。図1は、ホールセルパッチ、電位固定試験(Vhold=-60mV)における薬物投与のプロトコルを例示する図である。シールを形成し、ホールセルコンフィギュレーションが得られた後、スライスをTTX(1μM)で5分間灌流した。GABABアゴニストのバクロフェン(EC50濃度5μMで)を定常状態の外向き電流が得られるまで(第1の応答、R1)灌流することにより、第1のGABAB受容体仲介性応答が生じた。バクロフェンのウォッシュアウト後、電流は薬物投与前の静止レベルに戻った。次いで、細胞を17β-エストラジオールおよび/または他の薬物で15分間処理し、バクロフェン(5μM)で再度灌流し、第2の応答(R2)を測定した。17β-エストラジオールおよび/または他の薬物のバクロフェン応答に対する効果を、R2/R1のパーセントとして表す。これらのニューロンのサブグループ(n=55)を、二重標識免疫細胞化学を用いて同定した(データおよび画像は示していない)。これにより細胞の41%がTH陽性(すなわちドーパミンニューロン)であり、39%がβ-エンドルフィン陽性(すなわちPOMCニューロン)であることが判明した。さらに、GAD65の二重免疫細胞化学的染色およびインサイチューハイブリダイゼーションに基づき、弓状ドーパミンニューロンのサブグループはGABAを同時発現し(Ronnekleiv、未公開の知見)、これはscRT-PCRデータにより実証された(以下を参照)。電気生理学的分析のために、ギガオーム以上のシールを有する細胞のみを本試験に含めた。平均静止膜電位は0pAの保持電流で-54.3±0.4mVであり、平均入力抵抗は1.9±0.3GΩであった。さらに、A12ドーパミンニューロンの50%はT型Ca2+電流および過分極活性化されたカチオン電流(Ih)を示した(Loose et al., J Neurosci 10: 3627-3634, 1990.)。POMCニューロンの71%がIhおよび一時的な外向きK+電流(IA)を示した(Kelly et al., Neuroendo 52: 268-275, 1990.)。したがって、ホールセルパッチ記録により測定される受動的膜特性は、単一電極の電位固定記録を用いて得られる結果とほぼ同等である(Loose et al., J Neurosci 10: 3627-3634, 1990.;Kelly et al., Neuroendo 52: 268-275, 1990.)。
【0220】
ホールセル記録法を用いて、GABAB受容体アゴニストのバクロフェンによる、17β-エストラジオールのGタンパク質共役型内向き整流性K+チャネル(GIRK)のコンダクタンスの活性化に対する急速な効果を測定した。17β-エストラジオールは、視床下部弓状ニューロンにおいて、μ-オピオイドおよびGABAB受容体仲介性応答の両方を急速に減弱させる(Lagrange et al., 1994;Lagrange et al., 1996;Lagrange et al., 1997)。したがって、GABAB応答の17β-エストラジオール調節を測定するために、図1に示すプロトコルに従って、バクロフェンのEC50濃度(5μM)を用いた。バクロフェンに応答して強い外向き電流が測定され、これはウォッシュアウト後に弱まった(図5グラフAおよび図6)。20分後にバクロフェンを適用すると、同様の強い応答が誘発され、これは脱感作および減弱が5μMバクロフェンの連続適用に応答して起こらないことを示唆している。しかし、17β-エストラジオール(100nM)を合間に(すなわち、バクロフェンの最初の適用のウォッシュアウト後)適用した場合、バクロフェンの第2の適用に応答して41%の有意な減少が見られた(p<0.005)(図5グラフBおよび図6)。100nM 17β-エストラジオール適用前および適用中に生じた電流/電圧の関係は、このステロイドがバクロフェン仲介性応答に対する逆の電位を変化させないことを示した:対照Eバクロフェン=-88.8±3.6mV、n=13;これに対し17β-エストラジオール適用後のEバクロフェン=-85.4±3.9mV、n=12(図3Aおよび図3B)。17β-エストラジオールの作用は立体特異的であり、したがって生物学的に不活性な立体異性体である17β-エストラジオール(100nM)はバクロフェン応答に対して効果がなかった(図5グラフCおよび図6)。さらに、抗エストロゲンICI 182,780を17β-エストラジオールとともに灌流した場合、17β-エストラジオールの作用は阻止された(図6)。ICI 182,780単独での処置では、バクロフェン応答に対して効果がなかった(データは示していない)。
【0221】
この以前に同定されていないエストロゲン受容体を、膜不透過性エストロゲン結合体である17β-エストラジオール-BSAを用いることにより、膜結合していると決定した。17β-エストラジオール-BSA(100nM)はバクロフェン応答を阻害するのに十分に有効であって、これはこのエストロゲン受容体仲介性の応答が原形質膜で開始されることを示している(図5グラフDおよび図6)。17β-エストラジオール-BSA調製物の完全性を、スライス灌流液の17β-エストラジオールのラジオイムノアッセイを行うことにより立証した。未結合の17β-エストラジオールは媒質中には検出されず(データは示していない)、これは17β-エストラジオール-BSA結合体が遊離17β-エストラジオール不純物を含まないことを示した。
【0222】
以前に同定されていない、膜結合エストロゲン受容体を、いくつかのSERMを用いることにより特徴付けた。タモキシフェン(1μM)は不活性(対照に対してp>0.05)であり、GIRKのバクロフェン活性化における17β-エストラジオールの効果を減弱させなかった(17β-エストラジオールのR2/R1:58.6±3.4%、n=10;これに対しタモキシフェン+17β-エストラジオール:60.4±6.6%、n=5)。しかし、4-OHタモキシフェン(1μM)は、バクロフェン応答を25%阻止することにより、17β-エストラジオールの作用を部分的に模倣した(図6)。図6に関して、17β-エストラジオール(100nM)はGABAB受容体仲介性外向き電流を41%減弱させた。17β-エストラジオールのバクロフェン応答に対する阻害作用は、エストロゲン受容体アンタゴニストICI 182,780(1μM)により阻止された。ウシ血清アルブミン結合エストロゲン(17β-エストラジオール-BSA、100nM)、4-OHタモキシフェン(1μM)、ラロキシフェン(1μM)、GW5638(1μM)および化合物8(10nM)もバクロフェン応答を阻害したが、17α-エストラジオール(1μM)は効果がなかった。バーは群ごとに試験した4〜11個の細胞の平均±S.E.M.を表す(媒体対照群に対して、***p<0.005、**p<0.01、*p<0.05)。4-OHタモキシフェンは常にオレフィン異性体のE/Z混合物として存在するため(Katzenellenbogen et al., J Steroid Biochem 22: 589-596, 1985.)、これらの異性体の一方だけがこの新規エストロゲン応答を仲介するのに活性である可能性がある。ヒドロキシル化された芳香環を有する別のSERMであるラロキシフェン(1μM)は、バクロフェン応答の抑制における有効性に関して17β-エストラジオールの作用を完全に模倣した(図6)。これに対して、ヒドロキシル化されていないSERMであるGW-5638は、構造的にタモキシフェンのトリフェニルエチレン核に類似し、バクロフェンによるGIRKチャンネル活性化を阻害するのに17β-エストラジオールよりも有意に有効であることが判明した(図6)。
【0223】
化合物8は急速な応答を選択的に減弱させる核内ER活性を欠くSERMである:
前述の化合物はすべて核内エストロゲン受容体に対する親和性の高いリガンドであり、このことは観察された薬理学の解釈を複雑にし、核内エストロゲン受容体に対する役割をはっきりと排除することを困難にしている。しかし、化合物8(実施例4)は、核内エストロゲン受容体(ER)αまたはERβに対する結合親和性が17β-エストラジオールに比べて約100万分の1である(表1)。さらに、4-OHタモキシフェンとは異なり、化合物8は幾何的に安定であり、E/Zオレフィン異性体の混合物としては存在しない。加えて、化合物8は17β-エストラジオールの用量の5倍でも向子宮作用がまったくなく(図6Aおよび図6B)、8が核内エストロゲン受容体により仲介される4-OHタモキシフェン様エストロゲン活性を有していないことがインビボで確認される。しかし、ホールセル電気生理学的検定において、GABAB応答を減弱させるのに10nMの8は100nMの17β-エストラジオールと同程度に有効であった(図6)。
【0224】
(表1) 全長(ER)αまたは(ER)βに対するリガンドの相対結合親和性(RBA)*
*相対結合親和性は17β-エストラジオールの効力のパーセンテージで表す。実施例22に記載の条件下で、17β-エストラジオールは(ER)αに対してIC50=5nM、(ER)βに対してIC50=3nMを有することが判明した。
【0225】
17β-エストラジオールのGABAB応答に対する急速な効果はタンパク質キナーゼA(PKA)に関与する:
GABABの17β-エストラジオール仲介性調節における特定のシグナル伝達タンパク質の関与を、異なる経路を遮断することにより評価した。例えば、PKA経路の活性化が関与する場合、17β-エストラジオールのGABAB応答に対する効果は、PKAの阻害により阻止され、PKAの刺激により模倣されるはずである。したがって、選択的なPKA阻害剤および活性化剤を用いて、PKAが関与していることを示した。例えば、図8グラフAおよび図9に示すとおり、フォルスコリン(10μM)は17β-エストラジオールの作用を模倣して、GABAB応答を減弱させうる。他方で、特異的PKA阻害剤H89(10μM)は、17β-エストラジオールが誘導するGABAB応答の抑制を阻止した(図8グラフBおよび図9)。
【0226】
GABAB応答の17β-エストラジオール調節におけるPKAの関与を、ニューロン上でのPKAの活性化を阻止する特異的PKA阻害性ペプチドPKI(タンパク質キナーゼA阻害剤である6-22アミド、20μM)または加水分解不可能なcAMP類縁体であるRp-cAMP(200μM)の作用によりさらに確認した。PKIまたはRp-cAMPでの約15分の透析後に、17β-エストラジオール誘導性のGABAB応答の低減が消失した(図8グラフCおよび図9)。コレラ菌(vibrio cholerae)により分泌される細菌外毒素であるコレラ毒素(CTX)は、Gタンパク質GsをADP-リボシル化し、それにより明らかに不可逆的な様式でアデニル酸シクラーゼ活性を刺激することによって、様々な組織における細胞内cAMPレベルを高める。CTXの活性ユニットの個々の細胞への細胞内透析は、GABAB応答のエストロゲンによる急速な阻害を妨害した(図8グラフDおよび図9)。これらの結果は、GABAB応答の17β-エストラジオールによる抑制は、PKAの活性化を必要とすることを示している。図9は、試験したPKA薬物の効果の概要を示している。PKA活性化剤のフォルスコリンは17β-エストラジオールの効果を模倣することができ、特異的PKA阻害剤であるH89(10μM)、Rp-cAMPSおよびPKAIはこの効果を阻止することができた。CTX-Aは17β-エストラジオールによるバクロフェン応答の減弱を妨害することができたが、変性CTX-Aはできなかった。バーは群ごとに試験した4〜11個の細胞の平均±S.E.M.を表す(媒体対照群に対して、***p<0.005、*および#p<0.05;CTX-A+17β-エストラジオール対変性CTX-A+17β-エストラジオール、p<0.05)。
【0227】
GABAB応答の減弱はタンパク質キナーゼC□(PKCδ)□に関与する:
いくつかの選択的PKC阻害剤の効果によって示されるとおり、PKCもGABAB応答の17β-エストラジオール調節に関与している。第1の阻害剤、ビスインドリルマレイミド(BIS)は、PKCの通常のイソ型、新規のイソ型、および異常なイソ型を区別しない、PKCの選択的阻害剤である。第2のGo6976は、通常のPKCイソ型の選択的阻害剤である(Martiny-Baron et al., J Biol Chem 268: 9194-9197, 1993.;Way et al., Trends Pharmacol Sci 21: 181-187, 2000)。BISを用いたニューロンの処置により、17β-エストラジオールの効果はほぼ除去された(図10グラフAおよび図11)。これに対して、Go6976の処置は効果がなかった(図11)。事実、細胞内EGTAを、EGTAと同様のCa2+親和性を有するが速度がはるかに速いカルシウム緩衝液である、10mM 1,2-ビス-(o-アミノフェノキシエタン)-N,N,N',N'-四酢酸(BAPTA)で置き換えた後でも、GABAB応答のエストロゲン阻害が観察された(図10グラフBおよび図11)。PKCの通常のイソ型はこのレベルのカルシウム緩衝化では活性である可能性が低いため、これらの結果はエストロゲンの効果を仲介する際の、Ca2+非依存性の新規PKCイソ型の役割をさらに支持する。最後に、選択的PKCδ阻害剤であるロッテリン(5μM)は、17β-エストラジオールの視床下部ニューロンにおけるGABAB応答を阻害する能力を完全に阻止した(図10、グラフCおよび図11)。図11は、試験したPKC阻害剤の効果の概要を示している。バーは群ごとに試験した4〜11個の細胞の平均±S.E.M.を表す(媒体対照群に対して、***p<0.005、**p<0.01、*p<0.05)。
【0228】
17β-エストラジオールによるGABAB応答の阻害はGαqに関与する:
さらなる結果は、17β-エストラジオールによるバクロフェン誘導性GABAB応答の阻害はメッセンジャータンパク質Gαqに関与することを示している。特異的PKC阻害剤であるBISは17β-エストラジオールの作用を阻止したが、フォルスコリン(10μM)はBIS阻止の存在下でエストロゲンの効果を模倣することが判明した(図10グラフDおよび図11)。したがって、PKCの作用はPKAの活性化の上流である。事実、GABAB応答のエストロゲン受容体仲介性阻害は、GαqのC末端結合部位を模倣するペプチド(11アミノ酸)で弓状ニューロンを処置することにより示されるとおり、Gαqの活性化に依存していた(Akhter et al., Science 280: 574-577, 1998.)。このペプチドは、Gタンパク質共役型受容体とGαqタンパク質との相互作用を阻止する。このペプチド(200μM)で透析した細胞(図12グラフAおよび図13)では、GαsのC末端ドメインを模倣する対照ペプチド(11アミノ酸)で透析した細胞(図12グラフBおよび図13)と比較して、GABAB応答の17β-エストラジオール仲介性の低減が有意に阻止された。したがって、Gαqは17β-エストラジオール仲介性の急速な阻害において主要な役割を果たす。
【0229】
さらに、周知のGαqエフェクターである、ホスホリパーゼC(PLC)の活性化も役割を果たす。事実、PLCβの活性化は、広域PLC阻害剤であるU73122(10μM)を用いたニューロンの処置により示されるとおり、GABAB応答のエストロゲン誘導性阻害に必要とされている。U73122(10μM)を細胞外浴媒質中で灌流した場合、GABAB応答のエストロゲン仲介性の低減が阻止された(図12グラフCおよび図13)が、より活性の低いPLC阻害剤であるU73343は、同じ濃度でまったく効果がなかった(図12グラフDおよび図13)。図13に関して、バーは群ごとに試験した4〜11個の細胞の平均±S.E.M.を表す(媒体対照群に対して、***p<0.005、**p<0.01;U73122+17β-エストラジオール対U73343+17β-エストラジオール、p<0.05;Gqペプチド+17β-エストラジオール対Gsペプチド+17β-エストラジオール、p<0.05)。
【0230】
GABAB応答の減弱はマイトジェン活性化タンパク質(MAP)キナーゼに関与しない:
MAPキナーゼ活性の阻害は、バクロフェン応答のエストロゲン調節を妨害しない。最近の研究により、初代ニューロン皮質培養物および器官型大脳皮質移植片培養物において、17β-エストラジオールがMAPキナーゼ経路を急速に活性化することが明らかにされている(Watters et al., Endocrinology 138: 4030-4033, 1997;Singh et al., J Neurosci 19: 1179-1188, 1999;Singh et al., J Neurosci 20: 1694-1700, 2000)。しかし、MAPキナーゼの阻害剤であるPD98059(10μM、ピペット中)またはU0126(5μM)による処理は、バクロフェン応答の17β-エストラジオール阻害に影響しなかった(17β-エストラジオールのR2/R1;58.6±3.4%、n=10;これに対してPD98059+17β-エストラジオール:66.1±11.8%、n=5)。
【0231】
弓状(GABA、ドーパミンおよびPOMC)ニューロンにおけるGABAB受容体、PKCδおよびアデニル酸シクラーゼVII転写物の発現:
弓状ニューロンにおけるGABAB受容体、PKCδおよびアデニル酸シクラーゼVII転写物の発現を、75の急性的に分散した弓状ニューロンからの単一細胞RT-PCRを用いて評価した。結果から、TH発現およびPOMC発現ニューロンを含む、ニューロンの90%がGAD65転写物を発現することが判明した(データは示していない)。最も重要なことには、ニューロンの92%がGABAB R2転写物を発現し、これはバクロフェンに対する90%の応答率に相関する。さらに、単一細胞RT-PCRの結果により、ドーパミンおよびPOMCニューロンはPKCδおよびアデニル酸シクラーゼVII転写物を発現することが判明している。一つの細胞群(n=22)において、PKCδおよびアデニル酸シクラーゼVII転写物は、GAD65を同時発現するものを含む、THニューロンの大多数(70%)で発現された(図14A)。THおよびGADはこのニューロン集団の60%において共存していた。個々のニューロンに由来するcDNAの量が限られているため、POMCの発現を別の細胞群(n=29)で評価し、PKCδおよびアデニル酸シクラーゼVII転写物が、GAD65を同時発現するものを含む、POMCニューロンの大多数(75%)で発現されることが示された(図14B)。POMCおよびGADはこのニューロン集団の28%において共存していた。したがって、単一細胞RT-PCRのデータにより、ドーパミンおよびPOMCニューロンが急速なエストロゲンシグナル伝達のための重要な転写物を発現するという電気生理学的知見が確認される。GAPDH転写物を、逆転写酵素(RT)反応の内部対照と同じ細胞で分析した。一つの細胞は陰性対照(-RT)としてRTを含まなかった。基底視床下部組織RNAもRT存在下(組織対照、+)で逆転写された。RTなし(-)の組織対照を各試験に含めた。加えて、以下の対照を含めた:分散した細胞環境からのハンクス液(HBSS)および水ブランク、これらはいずれもRT-PCR後に陰性であった(データは示していない)。
【0232】
独特の膜エストロゲン受容体は17β-エストラジオールの急速効果を仲介する:
前述の結果は、膜エストロゲン受容体が同定されたことを示している。例えば、エストロゲンはGABAB受容体アゴニストであるバクロフェンの作用を抑制して、GABA、POMC、およびドーパミンニューロンにおけるGIRKチャンネルを活性化する。この17β-エストラジオールの効果は急速であり、17β-エストラジオールの添加の数分間以内に測定可能な抑制が生ずる。この応答の動態は、転写調節により作用する古典的核内エストロゲン受容体(ER)αまたは(ER)βの一つではなく、膜17β-エストラジオール受容体による応答の仲介を示している。
【0233】
この急速なエストロゲン応答について観察される薬理学は、新規膜貫通エストロゲン受容体の関与をさらに支持する。膜不透過性17β-エストラジオール-BSA結合体は、受容体のホルモン結合部位が原形質膜の細胞外表面から接近可能である膜結合受容体に対して予期されているとおり、遊離17β-エストラジオールに対して同じ応答を示す。17β-エストラジオール応答は、D環のヒドロキシル基の立体配置に関して立体特異的であり;17β-エストラジオールは急速な応答を誘発する一方で、17α-エストラジオールは不活性である。これは、17α-エストラジオールは17β-エストラジオールと比較して効力がわずかに低いにもかかわらず、核内エストロゲン受容体のアゴニストとして機能するため、注目に値する(Barkhem et al., Mol Pharm 54: 105-112, 1998.)。SERM 4-OHタモキシフェン、ラロキシフェン、およびGW-5638はすべて、この応答を仲介する際に17β-エストラジオールのように振舞う一方、ステロイド性抗エストロゲンICI-182,780は17β-エストラジオール応答に拮抗する。最も重要なことに、核内エストロゲン受容体とのエストロゲン(または抗エストロゲン)活性を欠く新規SERM 8は、17β-エストラジオールと比べて10分の1の濃度でも、この急速な17β-エストラジオール応答のより強い活性化剤である。さらに、この膜ERは、薬理学的(Schild)分析により示されるとおり、エストロゲンに対してナノモル濃度未満の親和性を有する(Lagrange et al., 1997)。これらの結果は、この急速な応答の薬理学が異なり、8の場合には、核内エストロゲン受容体のものと分離可能であることを示している(Razandi et al., Mol Endo 13: 307-319, 1999;Levin, J Appl Physiol 91: 1860-1867, 2001;Chambliss et al., Endocr Rev 23: 665-686, 2002.)。
【0234】
最近、Toran-Allerandら(Toran-Allerand et al., J Neurosci 22: 8391-8401, 2002)は、発生中の新皮質ニューロンにおけるカベロア(caveloar)様ミクロドメインに結合する、高親和性の飽和可能なエストロゲン受容体「ERX」を同定した。この膜結合受容体は、ニューロンの発生および生存にとって重要と思われる、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)、細胞外シグナル関連キナーゼ(ERK)1およびERK2の活性化と連関している(Watters et al., Endocrinology 138: 4030-4033, 1997;Singh et al., J Neurosci 19: 1179-1188, 1999;Singh et al., J Neurosci 20: 1694-1700, 2000;Ferin et al., Recent Prog Horm Res 40: 441-485, 1984.)。ERXはまた、MAPキナーゼ経路を活性化するのに17α-エストラジオールが17β-エストラジオールと効力が等しいという点で、異なる薬理学を有する(Toran-Allerand et al., J Neurosci 22: 8391-8401, 2002;Wade et al., Endocrinology 142: 2336-2342, 2001)。しかし、本明細書において示すとおり、17α-エストラジオールにはGABAB応答、または視床下部ニューロンにおけるGIRKチャンネルの同じファミリーに連関しているμ-オピオイド応答に対する効力は観察されなかっ(Lagrange et al., 1997)。同様に、GuおよびMoss(Gu et al., J Neurosci 16: 3620-3629, 1996.)は、17α-エストラジオールが、海馬における17β-エストラジオールの、CA1錐体ニューロンにおいてグルタミン酸(カイニン酸)仲介性電流を増強する作用を模倣しないことを発見した。同様に、Mermelstein et al., J Neurosci 16: 595-604, 1996は、17α-エストラジオールが、新線条体ニューロンにおいてL型カルシウム電流を低減する上で、17β-エストラジオールよりもはるかに有効性が低いことを発見した。したがって、PKC-PKA経路を介してニューロンにおけるチャンネル活性を調節する膜エストロゲン受容体は、成長および生存を促進するERK1/2の活性化に連関している受容体とは薬理学的に異なる。
【0235】
17β-エストラジオールはPKCδおよびPKAを活性化して、視床下部ニューロンにおけるGPCRとK+チャンネルとの連関を変化させる:
本明細書において詳述するデータは、視床下部ニューロンにおけるエストロゲンへの急速な応答のためのシグナル伝達経路が、図15に記載のものに従うことを示す。図15に関して、事象の順序は以下のとおりである:(1)17β-エストラジオールが新規の膜貫通エストロゲン受容体に結合する;(2)リガンド結合がGαqを活性化する;(3)活性化Gαqが次いでPLCを活性化する;(4)活性化PLCがDAGを遊離させる;(5)遊離DAGがPKCδを刺激する;(6)PKCδがアデニル酸シクラーゼ(VII)を活性化する;(7)cAMPレベルが上昇する;(8)cAMPがPKAを刺激する;(9)PKAがK+チャンネル機能にとって重要な膜標的をリン酸化する。
【0236】
タンパク質キナーゼ経路がCNSニューロンにおけるGABAB受容体仲介性シグナル伝達に影響するという、図15に示す経路についてのさらなる裏付けが発見されている。タンパク質キナーゼCの活性化は、海馬のCA1錐体ニューロンにおけるGIRKチャンネルのGABAB受容体活性化を抑制し(Dutar et al., Neuron 1: 585-591, 1988.)、小脳スライスからのノルエピネフリン放出のGABAB受容体仲介性阻害を減弱させる(Taniyama et al., J Neurochem 58: 1239-1245, 1992)。
【0237】
現在、PKCファミリーの12の公知のメンバーが存在する(Way et al., Trends Pharmacol Sci 21: 181-187, 2000)。ファミリーは配列相同性および生化学的調節に基づき3群に分類される。クラスA、すなわち通常のPKC(PKCα、βI、βIIおよびγ)は周知のCa2+依存的PKCである。クラスB、すなわち新規のPKC(PKCδ、ε、θおよびη)はCa2+非依存性である。最後に、クラスCのPKC、すなわち異型PKC(PKCζおよびτ/λ)は最も多岐にわたるクラスである。異型PKCもCa2+非依存性であり、活性化のためにジアシルグリセロールを必要としない(Way et al., Trends Pharmacol Sci 21: 181-187, 2000)。視床下部ニューロンにおけるエストロゲンの急速なGABAB抑制作用は、広域PKC阻害剤であるBISに感受性であったが、Go6976には感受性でなく、通常のPKCクラスに属していないPKCの関与を暗示している。加えて、GABAB応答のエストロゲンの阻害は、細胞内記録パッチピペットに10mM BAPTAを含んでいても変わることはなく、Ca2+依存性の通常のPKCが関与していないことを確認するものである。しかし、選択的PKCδ阻害剤であるロッテリンは17β-エストラジオールの作用を阻止し、この新規のクラスのPKCが急速な17β-エストラジオール応答のメディエーターであることを示唆している。さらに、本明細書において記載する弓状ニューロンにおけるPKCδ転写物の発現に関するscRT-PCRのデータは、GABAB応答の17β-エストラジオール仲介性阻害にPKCδを関係づけるものである。同様に、PKCδは、K+チャンネルのエストロゲン仲介性阻害および雌の遠位結腸上皮細胞における液体の保持に関与しているが、上流のシグナル伝達経路は知られていない(Doolan et al., 2000)。
【0238】
PKC活性化はPKA活性化の上流である:
GABABの17β-エストラジオール仲介性阻害におけるPKC活性化は、PKA活性化の上流である。例えば、BISの内部灌流は17β-エストラジオールによるバクロフェン応答の阻害を完全に阻止したが、浴灌流により適用したフォルスコリンによるバクロフェン応答の阻害を減弱させなかった。PKCはアデニル酸シクラーゼを活性化することが公知であり(Jacobowitz et al., J Biol Chem 268: 3829-3832, 1993.;Yoshimura et al., J Biol Chem 268: 4604-4607, 1993;Lin et al., Br J Pharmacol 125: 1601-1609, 1998);さらに、アデニル酸シクラーゼ(AC)がGαsでもフォルスコリンでもなくPKCにより活性化される場合、アデニル酸シクラーゼはGαiによる阻害に抵抗性である(Pieroni et al., Curr Opin Neurobiol 3: 345-351, 1993.)。今日まで、9つのACイソ酵素(ACのI型〜IX型)がクローン化されている。注目すべきことに、AC VIIは、他のアデニル酸シクラーゼの配列には存在しない、PKCδに結合する可能性がある部位を有しており、これはPKCδがAC VIIを直接リン酸化するのを可能にする(Nelson et al., J Biol Chem 278: 4552-4560, 2003.)。皮質、海馬、線条および小脳におけるGABAニューロンはAC VIIに対して免疫反応性であり(Mons et al., Brain Res 788: 251-261, 1998.)、本明細書において開示するとおり、視床下部のGABA、THおよびPOMCニューロンはAC VII転写物を発現する。
【0239】
GαqはPLCを通じて17β-エストラジオールによるGABAB応答の阻害を仲介する:
本明細書において記載する結果は、膜ERがメッセンジャーGαqと特異的に連結していること、およびこのメッセンジャータンパク質が17β-エストラジオールによるGABAB応答の阻害に関与していることを示している。この結論は、Gαqのペプチド断片による細胞内透析がGタンパク質との受容体相互作用を阻止した場合に観察される結果によって確認される。このGαqペプチドは、皮質錐体ニューロンにおけるGαqシグナル伝達経路を遮断するために用いられている(Carr et al., J Neurosci 22: 6846-6855, 2002.)。加えて、GABAB応答のエストロゲン仲介性の低減は、より活性の低い阻害剤であるU73343と共に灌流した細胞と比較して、ホスホリパーゼC阻害剤であるU73122により有意に低減した。したがって、メッセンジャーGαqは17β-エストラジオールによるGABAB応答の阻害に関与している。
【0240】
ほとんどのPKCはジアシルグリセロールにより活性化され、Ca2+の存在を必要とするものもある。したがって、PKCはホスホリパーゼC(PLC)-イノシトール三リン酸/ジアシルグリセロールシグナル伝達カスケードの下流である。異なる形のPLCがGαq、Gβγ(PLCβ)、およびチロシンキナーゼ(PLCγ)を含む様々なメッセンジャーによって活性化されうるため、PKCファミリーは多様な一連のシグナル伝達カスケードに関与している(Tanaka et al., Annu Rev Neurosci 17: 551-567, 1994;Battaini et al., Pharmacol Res 44: 353-361, 2001.)。
【0241】
実施例23
本実施例は、Schild分析を用いたエストロゲン受容体アンタゴニストの同定およびアンタゴニストの効力の評価を記載する。この分析の一般的プロトコルは、Lagrange et al., 1997に開示されている。累積濃度-反応曲線を、前述のホールセル電気生理的検定における選択的エストロゲン受容体アゴニストである化合物8の漸増濃度を適用することにより生成する。バクロフェンの漸増濃度を、薬物誘導性外向き電流が新しい定常レベルに到達するまで適用する。バクロフェンおよび化合物8の両方のEC50値を、SigmaPlot(Jandel Scientific, Costa Madre, CA)ソフトウェアを用いて算出し、ロジスティック式に最もうまくあてはめる。次いで、細胞をエストロゲン受容体アンタゴニストの可能性がある化合物の1nM溶液で灌流する。次いで、化合物8の漸増濃度(前述の最初の濃度-反応曲線の生成において適用したとおり)を適用し、第2の反応曲線を生成する。次いで、細胞をアンタゴニストの可能性がある化合物の2nm溶液で処理し、濃度反応曲線を繰り返す。このプロセスを、アンタゴニストの可能性がある化合物の漸増濃度で繰り返して、複数の濃度反応曲線を生成する。化合物8および提唱されるアンタゴニストが本明細書において開示する以前に同定されてない膜結合エストロゲン受容体に結合する場合、データを線形回帰にあてはめて{log(用量比-1)対-log[アンタゴニスト濃度]}-1.0の傾きが得られる。
【0242】
実施例24
本実施例は、開示する化合物の心臓保護活性の評価を記載し、新規な心臓保護性の選択的エストロゲン受容体モジュレーターを同定するための方法を提供する。4〜7週齢のアポリポタンパク質E欠損C57/B1J(apo E KO)マウス(Taconic Farmsより入手可能)の卵巣を摘出する。動物を体重により無作為化して群に分ける(1群あたりn=12〜15匹のマウス)。マウスを、その体重に基づき、消費量を週単位で測定し、それにしたがって用量を調節するプロトコルを用いて、飼料中の開示する化合物または硫酸17β-エストラジオール(1mg/kg/日)で処置する。用いる飼料は、Purinaにより調製され、0.50%コレステロール、20%ラードおよび25IU/KGのビタミンEを含む、Western式飼料(57U5)である。マウスにこのパラダイムを用いて12週間投薬/給餌する。対照群の動物にはWestern式の飼料を与え、化合物は与えない。試験期間終了時に、動物を安楽死させ、血漿試料を得る。心臓を、まず食塩水と、次いで中性緩衝化10%ホルマリン溶液を用いて、インサイチューで灌流する。
【0243】
総コレステロールおよびトリグリセリドを、それぞれBoehringer MannheimおよびWako Biochemicalsから市販されているキットによる酵素的方法を用いて定量する。血漿リポタンパク質の分離および定量を行い、各リポタンパク質画分を総コレステロール値にそれぞれのクロマトグラムのピーク面積の相対的パーセントを乗ずることにより定量する。
【0244】
大動脈のアテローム性動脈硬化を、大動脈を注意深く単離し、処理の前に血管をホルマリン固定液中に48〜72時間放置することにより定量する。アテローム性動脈硬化病変を、Oil Red O染色を用いて同定する。血管を短時間脱色し、次いで撮像する。病変を大動脈弓に沿った正面を向いて定量し、血管、特に腕頭動脈の近位端から左鎖骨下動脈の遠位端までの大動脈弓内に含まれる領域についての病原評価を行う。大動脈アテローム性動脈硬化のデータは、この規定された管腔領域内に厳密に波及する尿編のパーセントで表すことができる。
【0245】
実施例25
本実施例は、酸素欠乏/再灌流に応答しての、開示する化合物を用いての予防的神経保護の評価を記載し、新規な神経保護性の選択的エストロゲン受容体モジュレーターを同定するための方法を提供する。馴化後の雌スナネズミ(例えば、Charles River Laboratories, Kingston, NYから入手可能)をイソフルランで麻酔し、卵巣を摘出する(第0日)。翌朝(第1日)から始めて、スナネズミを媒体(10%EtOH/トウモロコシ油)、17β-エストラジオール(1mg/kg、皮下)または本明細書に開示する化合物のいずれかで皮下処置する。第6日の前に、スナネズミを終夜絶食させ(一貫した虚血性損傷を促進するため)、次いで全体の虚血性手術を行う。手術は、スナネズミをイソフルランで麻酔し、正中頚部切開により総頚動脈を可視化し、同時に両動脈を微小動脈瘤クリップで5分間閉塞させることにより進める。閉塞の後に、クリップを取り除き、脳の再灌流を可能にし、頚部切開を創傷クリップで閉鎖する。第12日に、スナネズミを致死量のCO2に曝露し、脳をドライアイスで凍結し、-80℃で保存する。
【0246】
神経保護の程度を、ニューログラニンmRNAのインサイチューハイブリダイゼーション分析により評価する。簡単に言うと、ゼラチンコーティングしたスライド上に20μM冠状クリオスタット切片を収集し、乾燥し、-80℃で保存する。処理の際に、乾燥したスライドボックスを室温まで温め、スライドを4%パラホルムアルデヒドで後固定し、無水酢酸で処理し、次いでクロロホルムおよびエタノールで脱脂および脱水する。次いで、処理した切片を載せたスライドを、50%ホルムアルデヒドハイブリダイゼーションミックス中のニューログラニンのアンチセンスまたはセンス(対照)リボプローブ(35S-UTP標識NG-241;塩基99〜340)200μL(6×106 DPM/スライド)とハイブリダイズし、加湿したスライドチャンバー中、カバースリップなしで55℃で終夜インキュベートする。翌朝、スライドをラック内に集め、2×SSC(0.3M NaCl、0.03Mクエン酸ナトリウム;pH7.0)/10mM DTTに浸漬し、RNアーゼA(20μg/ml)で処理し、0.1×SSC中、67℃で洗浄(2×30分)して、非特異的標識を除去する。脱水後、スライドをBioMax(BMR-1;Kodak)X線フィルムに終夜対向させる。
【0247】
損傷後のCA1領域の神経損失の程度を定量的に評価し、17β-エストラジオールおよび開示する化合物の有効性を評価するために、ニューログラニンハイブリダイゼーションシグナルのレベルを用いる。ニューログラニンmRNAは、CA1を含む海馬ニューロンにおいて高度に発現されるが、この脳領域のグリア細胞および他の細胞型には存在しないため、ニューログラニンmRNAをこれらの研究のために選択する。したがって、存在するニューログラニンmRNAの量の測定値は生存ニューロンを表す。ニューログラニンハイブリダイゼーションシグナルの相対光学密度の測定値は、コンピューターに基づく画像分析システム(C-Imaging Inc., Pittsburgh, Pa.)を用いてのフィルムオートラジオグラムより得る。動物1匹あたり6切片(40μm、個別)からの結果を平均し、統計的に評価する。数値を平均±S.E.M.として報告する。一元分散分析を用いてニューログラニンmRNAのレベルにおける差を試験し、得られた切片に差がないという場合はすべて、p>0.05であることを意味する。
【0248】
実施例26
本実施例は、開示する化合物を用いて達成される認知増強の評価を記載する。卵巣摘出したラット(n=50)を各々5日間連続で10分間、8方向放射状迷路に慣らす。慣らしおよび試験の前に、動物を水欠乏状態にする。迷路の各アームの端に置いた100μLの水は強化としての役割をする。放射状迷路におけるウィン-シフト課題の習得を、動物を一つの餌付きアームに出入り可能にすることにより達成する。飲水後、動物はアームから出て、中央のコンパ−トメントに再度入り、ここで動物は以前に訪れたアームまたは新規のアームに出入りすることができる。動物が新規のアームに入ることを選択すれば、正しい応答を記録する。各動物は1日5回の試行を3日間行う。最終の習得試行後、動物を以下の4群のうちの1つに割り当てる;(1)陰性対照:10%DMSO/ゴマ油媒体を1日1回6日間(1μg/kg、皮下)注射する。(2)陽性対照:安息香酸17β-エストラジオールを2日間注射し、2回目の注射後、4日間試験する(安息香酸17β-エストラジオールを、ラット1匹あたり10μg/0.1mL)。(3)17β-エストラジオールを1日1回6日間注射する(20μg/kg、皮下)。(4)試験化合物:1日1回6日間注射する(用量は変動し得る)。注射はすべて習得の最終日の試験後に開始する。第1、3、および4群の最終の注射は、作業記憶を試験する2時間前に行う。
【0249】
作業記憶についての試験は、15秒、30秒、または60秒の遅延を利用する遅延非見本合わせ課題(DNMS)である。この課題は習得課題の変形であり、ラットを中央のアレーナに置き、前と同様に一つのアームに入らせる。ラットがいったん第1のアームの途中まで移動すれば第2のアームを開き、再度ラットはこのアームを選択することが要求される。ラットがこの第2のアームを途中まで移動すると、両方のドアを閉め、遅延を開始する。遅延が終了すれば、もとの2つのドア、および第3の新規のドアを同時に開く。動物が第3の新規のアームを途中まで通過すれば、正しい応答を記録する。動物が第1または第2のいずれかのアームを途中まで移動すれば、誤った応答を記録する。各動物に3つの遅延間隔それぞれで5回の試行を行い、1匹あたり合計15回の試行を行う。
【0250】
本開示の範囲または精神から逸脱することなく、様々な改変および変形が本発明の化合物、組成物および方法においてなされることが、当業者には明白であろう。化合物、組成物および方法の他の態様は、本明細書の考察および本明細書において開示する方法の実施から当業者には明らかであろう。本明細書および実施例は例示として考えられるにすぎず、本発明の真の範囲および精神は添付の特許請求の範囲によって示されることが意図される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式の化合物、またはその薬学的に許容される塩:
式中、
Rはアリール、シクロアルキル、またはフェニル(ヒドロキシまたは低級脂肪族基で置換されていてもよい)であり;
Wはナフチル(ヒドロキシ、ハロゲン、または低級アルキルで置換されていてもよい)またはフェニル(ヒドロキシ、ハロゲン、または低級アルキルで置換されていてもよい)であり;
Mはカルボニル、-(C=O)N-、または-(C=S)N-であり;
Arは芳香族基であり;
Xはそれぞれの場合に独立に水素、ヒドロキシ、アルコキシ、またはハロゲンであり、n=1〜2であり;
Yは-O-、-NR1-、または-S-であり;
Gは連結基であり;
Zはヒドロキシまたは荷電基であり;かつ
R1は水素または低級アルキルである。
【請求項2】
式:
を有する、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
式:
を有する、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
式:
を有する、請求項3記載の化合物。
【請求項5】
Arがフェニレニル基である、請求項1記載の化合物。
【請求項6】
式:
を有する、請求項1記載の化合物。
【請求項7】
式:
を有する、請求項1記載の化合物。
【請求項8】
Mが-(C=O)N-である、請求項1記載の化合物。
【請求項9】
Gが低級アルキレニル基である、請求項1記載の化合物。
【請求項10】
Zが-COO、または-NR2R3R4+であり、R2、R3、およびR4がそれぞれ独立にH、メチル、またはエチルである、請求項1記載の化合物。
【請求項11】
Yが酸素であり、かつ-G-Zが
からなる群より選択される式を有する、請求項1記載の化合物。
【請求項12】
Xが独立にヒドロキシまたはフッ素の1つまたは複数である、請求項1記載の化合物。
【請求項13】
式:
を有する、請求項1記載の化合物。
【請求項14】
Wが、ヒドロキシルで置換されていてもよいフェニルである、請求項1記載の化合物。
【請求項15】
Rが、シクロアルキルまたはヒドロキシルで置換されていてもよいフェニルである、請求項1記載の化合物。
【請求項16】
式:
を有する、請求項1記載の化合物。
【請求項17】
以下の式の化合物、またはその薬学的に許容される塩:
式中、
RはHまたは低級アルキルであり;
Wはナフチル(ヒドロキシ、ハロゲン、または低級アルキルで置換されていてもよい)またはフェニル(ヒドロキシ、ハロゲン、または低級アルキルで置換されている)であり;
Mはカルボニル、-(C=O)NR1-、または-(C=S)NR1-であり;
Arは芳香族基であり;
Xはそれぞれの場合に独立にヒドロキシ、アルコキシ、またはハロゲンであり、n=1〜2であり;
Yは-O-、-NR1-、または-S-であり;
Gは連結基であり;
Zはヒドロキシルまたは荷電基であり;かつ
R1は水素または低級アルキルである。
【請求項18】
以下の式を有する、請求項17記載の化合物:
式中、R1は水素、低級アルキル、またはアラルキル基である。
【請求項19】
式:
を有する、請求項18記載の化合物。
【請求項20】
Arがフェニレニル基である、請求項17記載の化合物。
【請求項21】
式:
を有する、請求項17記載の化合物。
【請求項22】
Mが-(C=O)N-である、請求項17記載の化合物。
【請求項23】
Gが低級アルキレニル基である、請求項17記載の化合物。
【請求項24】
Zが-COO、または-NR2R3R4+であり、R2、R3、およびR4がそれぞれ独立にH、メチル、またはエチルである、請求項17記載の化合物。
【請求項25】
Yが酸素であり、かつ-G-Zが
からなる群より選択される式を有する、請求項19記載の化合物。
【請求項26】
Xが独立にヒドロキシまたはフッ素の1つまたは複数である、請求項17記載の化合物。
【請求項27】
Wがナフチルまたはフェニル(ヒドロキシルまたはフッ素で置換されていてもよい)である、請求項17記載の化合物。
【請求項28】
式:
を有する、請求項17記載の化合物。
【請求項29】
以下の式の化合物、またはその薬学的に許容される塩:
式中、
Rは水素または低級アルキルであり;
Wはナフチル(ヒドロキシ、ハロゲン、または低級アルキルで置換されていてもよい)またはフェニル(ヒドロキシ、ハロゲン、または低級アルキルで置換されていてもよい)であり;
Mはカルボニル、-(C=O)NR1-、または-(C=S)NR1-であり;
Arは芳香族基であり;
Xはそれぞれの場合に独立にヒドロキシ、アルコキシ、またはハロゲンであり、n=1〜2であり;
Yは-O-、-NR1-、または-S-であり;
Gは連結基であり;
Zはカルボキシル、ヒドロキシまたはアミノ基であり、アミノ基はアルキルで置換されていてもよく;かつ
R1は水素または低級アルキルである。
【請求項30】
式:
を有する、請求項29記載の化合物。
【請求項31】
Arがフェニレニル基である、請求項29記載の化合物。
【請求項32】
Mが-(C=O)N-である、請求項29記載の化合物。
【請求項33】
Gが低級アルキレニル基である、請求項29記載の化合物。
【請求項34】
Zが-COO、または-NR2R3R4+であり、R2、R3、およびR4がそれぞれ独立にH、メチル、またはエチルである、請求項29記載の化合物。
【請求項35】
Yが酸素であり、かつ-G-Zが
からなる群より選択される式を有する、請求項29記載の化合物。
【請求項36】
以下の式の化合物、またはその薬学的に許容される塩:
式中、
Rはアリール、シクロアルキル、低級アルキル、ヒドロキシルまたは低級脂肪族基で置換されていてもよいフェニルであり;
Wはナフチルまたはフェニル(H、ヒドロキシル、ハロゲン、またはメチルで置換されていてもよい)であり;
Mはカルボニル、-(C=O)NR1-、または-(C=S)NR1-であり;
Arは芳香族基であり;
Xはそれぞれの場合に独立にヒドロキシ、アルコキシ、またはハロゲンであり、n=1〜2であり;
Gは連結基であり;
Zはヒドロキシである。
【請求項37】
式:
を有する、請求項36記載の化合物。
【請求項38】
Arがフェニレニル基である、請求項36記載の化合物。
【請求項39】
Mが-(C=O)N-である、請求項36記載の化合物。
【請求項40】
Zが-OHである、請求項38記載の化合物。
【請求項41】
以下の式の化合物、またはその薬学的に許容される塩:
式中、
Rはヒドロキシまたは低級脂肪族基で置換されていてもよいアリール、シクロアルキル、低級アルキル、フェニルであり;
Wはナフチル(ヒドロキシ、ハロゲン、または低級アルキルで置換されていてもよい)またはフェニル(ヒドロキシ、ハロゲン、または低級アルキルで置換されていてもよい)であり;
Xはそれぞれの場合に独立にヒドロキシ、アルコキシ、またはハロゲンであり、n=1〜2であり;
Yは-O-、-NR1-、または-S-であり;
Gは連結基であり;
Zはカルボキシル、ヒドロキシまたはアミノ基であり、アミノ基はアルキルで置換されていてもよく;かつ
R1は水素または低級アルキルである。
【請求項42】
式:
を有する、請求項41記載の化合物。
【請求項43】
Gが低級アルキレニル基である、請求項41記載の化合物。
【請求項44】
Zが-COO、または-NR2R3R4+であり、R2、R3、およびR4がそれぞれ独立にH、メチル、またはエチルである、請求項41記載の化合物。
【請求項45】
Yが酸素であり、かつ-G-Zが
からなる群より選択される式を有する、請求項41記載の化合物。
【請求項46】
式:
の化合物。
【請求項47】
請求項1、17、29、36、41、または46記載の化合物の薬学的に有効な量を含む組成物。
【請求項48】
膜結合エストロゲン受容体を刺激する方法であって、該受容体を請求項1、17、29、36、41、または46記載の化合物と接触させる段階を含む方法。
【請求項49】
膜結合エストロゲン受容体に拮抗する方法であって、該受容体を請求項1、17、29、36、41、または46記載の化合物と接触させる段階を含む方法。
【請求項50】
対象のエストロゲン欠乏によって特徴付けられる状態の治療法であって、請求項1、17、29、36、41、または46記載の化合物の有効量を対象に投与する段階を含む方法。
【請求項51】
エストロゲン欠乏によって特徴付けられる状態が卵巣機能不全または閉経である、請求項50記載の方法。
【請求項52】
状態が自律神経機能不全、睡眠周期の乱れ、認知障害、運動機能不全、気分障害、摂食障害または心血管障害を含む、請求項48または49記載の方法。
【請求項53】
状態が虚血誘導性神経死、頭部外傷、アルツハイマー病、顔面潮紅、パーキンソン病、晩発性ジスキネジア、うつ、統合失調症、神経性食欲不振、神経性過食症、心血管疾患、アテローム性動脈硬化症、QTL延長症候群、ロマノ-ワード症候群もしくはトルサード・ド・ポワンツ症候群、骨粗鬆症、慢性関節リウマチ、骨関節症、骨折、多発性硬化症またはそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項48または49記載の方法。
【請求項54】
第二の化合物の有効量を対象に投与する段階をさらに含む方法であって、第二の化合物がステロイドホルモンであり、かつ第二の化合物が、請求項58において投与する化合物との組み合わせで治療効果を提供する、請求項48または49記載の方法。
【請求項55】
ホルモン補充療法を提供する方法であって、少なくとも請求項1、17、29、36、41、または46記載の第一の化合物の有効量を対象に投与する段階を含む方法。
【請求項1】
以下の式の化合物、またはその薬学的に許容される塩:
式中、
Rはアリール、シクロアルキル、またはフェニル(ヒドロキシまたは低級脂肪族基で置換されていてもよい)であり;
Wはナフチル(ヒドロキシ、ハロゲン、または低級アルキルで置換されていてもよい)またはフェニル(ヒドロキシ、ハロゲン、または低級アルキルで置換されていてもよい)であり;
Mはカルボニル、-(C=O)N-、または-(C=S)N-であり;
Arは芳香族基であり;
Xはそれぞれの場合に独立に水素、ヒドロキシ、アルコキシ、またはハロゲンであり、n=1〜2であり;
Yは-O-、-NR1-、または-S-であり;
Gは連結基であり;
Zはヒドロキシまたは荷電基であり;かつ
R1は水素または低級アルキルである。
【請求項2】
式:
を有する、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
式:
を有する、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
式:
を有する、請求項3記載の化合物。
【請求項5】
Arがフェニレニル基である、請求項1記載の化合物。
【請求項6】
式:
を有する、請求項1記載の化合物。
【請求項7】
式:
を有する、請求項1記載の化合物。
【請求項8】
Mが-(C=O)N-である、請求項1記載の化合物。
【請求項9】
Gが低級アルキレニル基である、請求項1記載の化合物。
【請求項10】
Zが-COO、または-NR2R3R4+であり、R2、R3、およびR4がそれぞれ独立にH、メチル、またはエチルである、請求項1記載の化合物。
【請求項11】
Yが酸素であり、かつ-G-Zが
からなる群より選択される式を有する、請求項1記載の化合物。
【請求項12】
Xが独立にヒドロキシまたはフッ素の1つまたは複数である、請求項1記載の化合物。
【請求項13】
式:
を有する、請求項1記載の化合物。
【請求項14】
Wが、ヒドロキシルで置換されていてもよいフェニルである、請求項1記載の化合物。
【請求項15】
Rが、シクロアルキルまたはヒドロキシルで置換されていてもよいフェニルである、請求項1記載の化合物。
【請求項16】
式:
を有する、請求項1記載の化合物。
【請求項17】
以下の式の化合物、またはその薬学的に許容される塩:
式中、
RはHまたは低級アルキルであり;
Wはナフチル(ヒドロキシ、ハロゲン、または低級アルキルで置換されていてもよい)またはフェニル(ヒドロキシ、ハロゲン、または低級アルキルで置換されている)であり;
Mはカルボニル、-(C=O)NR1-、または-(C=S)NR1-であり;
Arは芳香族基であり;
Xはそれぞれの場合に独立にヒドロキシ、アルコキシ、またはハロゲンであり、n=1〜2であり;
Yは-O-、-NR1-、または-S-であり;
Gは連結基であり;
Zはヒドロキシルまたは荷電基であり;かつ
R1は水素または低級アルキルである。
【請求項18】
以下の式を有する、請求項17記載の化合物:
式中、R1は水素、低級アルキル、またはアラルキル基である。
【請求項19】
式:
を有する、請求項18記載の化合物。
【請求項20】
Arがフェニレニル基である、請求項17記載の化合物。
【請求項21】
式:
を有する、請求項17記載の化合物。
【請求項22】
Mが-(C=O)N-である、請求項17記載の化合物。
【請求項23】
Gが低級アルキレニル基である、請求項17記載の化合物。
【請求項24】
Zが-COO、または-NR2R3R4+であり、R2、R3、およびR4がそれぞれ独立にH、メチル、またはエチルである、請求項17記載の化合物。
【請求項25】
Yが酸素であり、かつ-G-Zが
からなる群より選択される式を有する、請求項19記載の化合物。
【請求項26】
Xが独立にヒドロキシまたはフッ素の1つまたは複数である、請求項17記載の化合物。
【請求項27】
Wがナフチルまたはフェニル(ヒドロキシルまたはフッ素で置換されていてもよい)である、請求項17記載の化合物。
【請求項28】
式:
を有する、請求項17記載の化合物。
【請求項29】
以下の式の化合物、またはその薬学的に許容される塩:
式中、
Rは水素または低級アルキルであり;
Wはナフチル(ヒドロキシ、ハロゲン、または低級アルキルで置換されていてもよい)またはフェニル(ヒドロキシ、ハロゲン、または低級アルキルで置換されていてもよい)であり;
Mはカルボニル、-(C=O)NR1-、または-(C=S)NR1-であり;
Arは芳香族基であり;
Xはそれぞれの場合に独立にヒドロキシ、アルコキシ、またはハロゲンであり、n=1〜2であり;
Yは-O-、-NR1-、または-S-であり;
Gは連結基であり;
Zはカルボキシル、ヒドロキシまたはアミノ基であり、アミノ基はアルキルで置換されていてもよく;かつ
R1は水素または低級アルキルである。
【請求項30】
式:
を有する、請求項29記載の化合物。
【請求項31】
Arがフェニレニル基である、請求項29記載の化合物。
【請求項32】
Mが-(C=O)N-である、請求項29記載の化合物。
【請求項33】
Gが低級アルキレニル基である、請求項29記載の化合物。
【請求項34】
Zが-COO、または-NR2R3R4+であり、R2、R3、およびR4がそれぞれ独立にH、メチル、またはエチルである、請求項29記載の化合物。
【請求項35】
Yが酸素であり、かつ-G-Zが
からなる群より選択される式を有する、請求項29記載の化合物。
【請求項36】
以下の式の化合物、またはその薬学的に許容される塩:
式中、
Rはアリール、シクロアルキル、低級アルキル、ヒドロキシルまたは低級脂肪族基で置換されていてもよいフェニルであり;
Wはナフチルまたはフェニル(H、ヒドロキシル、ハロゲン、またはメチルで置換されていてもよい)であり;
Mはカルボニル、-(C=O)NR1-、または-(C=S)NR1-であり;
Arは芳香族基であり;
Xはそれぞれの場合に独立にヒドロキシ、アルコキシ、またはハロゲンであり、n=1〜2であり;
Gは連結基であり;
Zはヒドロキシである。
【請求項37】
式:
を有する、請求項36記載の化合物。
【請求項38】
Arがフェニレニル基である、請求項36記載の化合物。
【請求項39】
Mが-(C=O)N-である、請求項36記載の化合物。
【請求項40】
Zが-OHである、請求項38記載の化合物。
【請求項41】
以下の式の化合物、またはその薬学的に許容される塩:
式中、
Rはヒドロキシまたは低級脂肪族基で置換されていてもよいアリール、シクロアルキル、低級アルキル、フェニルであり;
Wはナフチル(ヒドロキシ、ハロゲン、または低級アルキルで置換されていてもよい)またはフェニル(ヒドロキシ、ハロゲン、または低級アルキルで置換されていてもよい)であり;
Xはそれぞれの場合に独立にヒドロキシ、アルコキシ、またはハロゲンであり、n=1〜2であり;
Yは-O-、-NR1-、または-S-であり;
Gは連結基であり;
Zはカルボキシル、ヒドロキシまたはアミノ基であり、アミノ基はアルキルで置換されていてもよく;かつ
R1は水素または低級アルキルである。
【請求項42】
式:
を有する、請求項41記載の化合物。
【請求項43】
Gが低級アルキレニル基である、請求項41記載の化合物。
【請求項44】
Zが-COO、または-NR2R3R4+であり、R2、R3、およびR4がそれぞれ独立にH、メチル、またはエチルである、請求項41記載の化合物。
【請求項45】
Yが酸素であり、かつ-G-Zが
からなる群より選択される式を有する、請求項41記載の化合物。
【請求項46】
式:
の化合物。
【請求項47】
請求項1、17、29、36、41、または46記載の化合物の薬学的に有効な量を含む組成物。
【請求項48】
膜結合エストロゲン受容体を刺激する方法であって、該受容体を請求項1、17、29、36、41、または46記載の化合物と接触させる段階を含む方法。
【請求項49】
膜結合エストロゲン受容体に拮抗する方法であって、該受容体を請求項1、17、29、36、41、または46記載の化合物と接触させる段階を含む方法。
【請求項50】
対象のエストロゲン欠乏によって特徴付けられる状態の治療法であって、請求項1、17、29、36、41、または46記載の化合物の有効量を対象に投与する段階を含む方法。
【請求項51】
エストロゲン欠乏によって特徴付けられる状態が卵巣機能不全または閉経である、請求項50記載の方法。
【請求項52】
状態が自律神経機能不全、睡眠周期の乱れ、認知障害、運動機能不全、気分障害、摂食障害または心血管障害を含む、請求項48または49記載の方法。
【請求項53】
状態が虚血誘導性神経死、頭部外傷、アルツハイマー病、顔面潮紅、パーキンソン病、晩発性ジスキネジア、うつ、統合失調症、神経性食欲不振、神経性過食症、心血管疾患、アテローム性動脈硬化症、QTL延長症候群、ロマノ-ワード症候群もしくはトルサード・ド・ポワンツ症候群、骨粗鬆症、慢性関節リウマチ、骨関節症、骨折、多発性硬化症またはそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項48または49記載の方法。
【請求項54】
第二の化合物の有効量を対象に投与する段階をさらに含む方法であって、第二の化合物がステロイドホルモンであり、かつ第二の化合物が、請求項58において投与する化合物との組み合わせで治療効果を提供する、請求項48または49記載の方法。
【請求項55】
ホルモン補充療法を提供する方法であって、少なくとも請求項1、17、29、36、41、または46記載の第一の化合物の有効量を対象に投与する段階を含む方法。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2011−503100(P2011−503100A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−533291(P2010−533291)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【国際出願番号】PCT/US2008/082865
【国際公開番号】WO2009/062082
【国際公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(508070909)オレゴン ヘルス アンド サイエンス ユニバーシティ (2)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【国際出願番号】PCT/US2008/082865
【国際公開番号】WO2009/062082
【国際公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(508070909)オレゴン ヘルス アンド サイエンス ユニバーシティ (2)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】
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