説明

選択的酸化プロセスの酸化物成長速度の改良方法

【課題】半導体デバイスにおいてシリコン含有物質を選択的に酸化する方法を提供する。
【解決手段】一態様において、急速熱処理装置を用いて水素を多く含む雰囲気中で高圧において、インサイチュで水蒸気を生成させて基板を選択的に酸化することができ、基板における金属やバリヤ層のような他の物質を酸化しない。金属又は他層を酸化させずにポリシリコン層とゲート酸化物層のみを選択的に酸化する。最良の選択的酸化条件は、圧力が約150トール〜約800トール、特に約250トール〜600トール、例えば、450トールで、温度が約700℃を超え、特に約800℃〜約1000℃、例えば、950℃で達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明の実施形態は、一般的には、半導体製造の分野に関し、更に詳細には、シリコン/金属複合膜の選択的酸化のための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明
[0002]半導体デバイスの製造において、シリコン含有基板の酸化は、重要な役割を果たしている。例えば、標準的な半導体デバイスにおいて、ゲート酸化物層は、普通は、ソース領域とドレイン領域と介在シリコン又はポリシリコン領域を含有する基板の上に位置する。金属コンタクトは、ソース領域とドレイン領域の上に堆積され、導電層はゲート酸化物の上に堆積される。全体の構造は、層のスタックとしてしばしば示される。ゲート酸化物全体に電圧を印加して電界が基板からゲート酸化物を通って導電層に軸に沿って生じる場合、ソース領域とドレイン領域間の領域の電気特性が変化し、領域間の電子の流れを入れたり、止めたりする。従って、ゲート酸化物層は、半導体デバイスの構造において極めて重要な役割を果たしている。
【0003】
[0003]しばしば、デバイスの特性は、デバイスにおける他の層の堆積によって改良される。ゲート酸化物の誘電特性を低下させる、金属原子のゲート酸化物層への拡散を制御するために、ゲート酸化物と金属層の間にバリヤ層を堆積させることがある。また、ハードマスク層を金属層の上に堆積させることもある。このような層の接着を促進し、それらの表面を平滑にし、拡散に対して強固にするために、バリヤ層又はハードマスク層をプラズマで処理することができる。プラズマ処理は、側面から腐食させるか又はその厚さを減少させることによってゲート酸化物の特性を低下させ得る。同様に、ゲート酸化物層は、典型的には、最新のデバイス製造に関係する、堆積、エッチング、プラズマ処理の繰り返しサイクルによって損傷することがある。この損傷は、層のゲート特性を低下させ、デバイスを作用不能にする。
【0004】
[0004]酸化物層の損傷を修復するために、デバイスを再酸化することが可能である。再酸化はゲート酸化物と下に横たわるシリコン含有層の側面上に酸化物薄層を生成し、エッジ損傷が修復される。トランジスタの他の領域を酸化すると導電性が減少するとともにデバイスが損なわれるために、デバイスにおけるある種の物質だけを酸化することが望まれる。例えば、ゲートの上の金属キャップと、ソース領域とドレイン領域の上の金属コンタクトを酸化するとそれらの導電性が低下する。同様に、或るデバイスは、トランジスタと関連のある金属表面のみではなくそれ以上を含有することがある。選択的な酸化は、他の物質の酸化を避けつつ、シリコンやシリコン酸化物のようなある種の物質を標的にする。
【0005】
[0005]従来の酸素を多く含むプロセスは、望む層だけでなく、金属やバリヤ層のような望まない層も酸化する。ウェットプロセスは、ドライプロセスより速いが、水蒸気酸化ほど酸化物成長を促進させない。図1A−図1Cは、ドライ酸化、ウェット酸化、水蒸気酸化それぞれのシリコンの酸化速度を示す図である。デバイスを低圧で水素ガス(H)を多く含む希釈水蒸気の雰囲気下で加熱すると、金属又はバリヤ層を酸化させずにシリコン含有物質を選択的に酸化させることができる。しかしながら、容易に理解され得るように、高温高圧で水素燃焼チャンバを作動させると、これまで別々の位置で水素燃焼が必要であった。より高圧で浸漬時間が長くなるにつれて、水素ガスはバリヤ層とハードマスク層を攻撃することがあり、これらの有効性が低下し、抵抗率がより高い望まれていない金属シリサイド層が形成する。
【0006】
[0006]従って、バリヤ層又は導電層の特性を低下させずに半導体デバイススタックのシリコン含有層のみを効果的に酸化するインサイチュ水蒸気生成を用いる選択的酸化プロセスが求められている。
【発明の概要】
【0007】
[0007]本発明は、一般的には、複合基板のシリコン含有物質を選択的に酸化する方法であって、複合基板をチャンバ内に配置するステップと、酸素含有ガスと水素含有ガスを含むガス混合物を水素含有ガスとガス混合物の比率が約65%より大きくなるようにチャンバに導入するステップと、チャンバを約250トール〜約800トールの圧力に加圧するステップと、チャンバを所定の温度に所定の時間加熱して水素含有ガスと酸素含有ガスをチャンバ内部で反応させ、複合基板を選択的に酸化させるステップとを含む、前記方法を提供する。
【0008】
[0008]本発明の一部の実施形態は、複合基板の物質を選択的に酸化する方法であって、複合基板をチャンバ内に配置するステップと、ガス混合物をチャンバに導入するステップであって、ガス混合物が酸素含有ガスと水素含有ガスを含み、水素含有ガスの量がガス混合物の量の約65%を超える、前記ステップと、チャンバを約250トール〜約800トールの圧力に加圧するステップと、チャンバを所定の温度に所定の時間加熱して水素含有ガスと酸素含有ガスをチャンバ内部で反応させ、複合基板を選択的に酸化させるステップとを含む、前記方法を含む。
【0009】
[0009]本発明の他の実施形態は、基板を処理する方法であって、基板を急速熱処理(RTP)チャンバ内に配置するステップと、水素含有ガスの量と酸素含有ガスの量をチャンバに導入してガス混合物を形成するステップであって、ガス混合物が水素を多く含むガス混合物を含む前記ステップと、チャンバを約250トールを超える圧力に加圧するステップと、ガス混合物をチャンバ内部で反応させる処理温度にチャンバを加熱するステップと、基板を選択的に酸化するステップとを含む、前記方法を提供する。
【0010】
[0010]本発明の他の実施形態は、少なくともシリコン含有層と金属層を備える基板をチャンバ内で処理する方法であって、水素を多く含む混合物をチャンバに導入するステップと、チャンバを約250トールを超える圧力に加圧するステップと、水素を多く含むガス混合物をチャンバ内部で反応させて、水蒸気を生成させるステップと、シリコン含有層を選択的に酸化するステップとを含む、前記方法を提供する。
【0011】
[0011]本発明の実施形態は、更に、一つ以上の酸化物層と一つ以上の金属層又はバリヤ層を備える基板を処理する方法であって、基板をチャンバ内に配置するステップと、水素含有ガスの量と酸素含有ガスの量をチャンバに導入してガス混合物の量を生成させるステップであって、水素含有ガスの量がガス混合物の量の約65%〜約85%であるステップ前記と、チャンバを約250トールを超える圧力に加圧するステップと、水素含有ガスと酸素含有ガスをチャンバ内部で反応させて、水蒸気を生成させるステップと、基板上の一つ以上の酸化物層のみを酸化させるステップとを含む、前記方法を提供する。
【0012】
[0012]本発明の上記特徴が詳細に理解され得るように、上で簡単にまとめた本発明のより具体的な説明は、一部が添付の図面に示されている実施形態によって参照することができる。しかしながら、添付の図面が本発明の典型的な実施形態のみを示すので、本発明の範囲を制限するものとしてみなされず、本発明が他の等しく有効な実施形態を許容することができることは留意すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1A】図1Aは、乾燥条件下のシリコン酸化速度のグラフである。
【図1B】図1Bは、湿潤条件下のシリコン酸化速度のグラフである。
【図1C】図1Cは、水蒸気条件下のシリコン酸化速度のグラフである。
【図2】図2は、本発明のプロセスにおいて使用し得る急速熱加熱装置を示す図である。
【図3A】図3Aは、本発明の一実施形態を示すフローチャートである。
【図3B】図3Bは、本発明の他の実施形態を示すフローチャートである。
【図3C】図3Cは、本発明の他の実施形態を示すフローチャートである。
【図4A】図4Aは、本発明の一実施形態の選択的酸化プロセスを適用する前の基板を示す断面図である。
【図4B】図4Bは、本発明の実施形態の選択的酸化プロセスを適用した後の基板を示す断面図である。
【図5】図5は、異なる圧力における反応種の濃度を示すグラフである。
【図6】図6は、本発明の一実施形態の作用可能なプロセス条件を示すプロセスウィンドウダイアグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[0024]本発明は、基板におけるシリコン含有物質を選択的に酸化する方法を記載する。急速熱加熱チャンバ、例えば、カリフォルニア州サンタクララのAppliedMaterials社から入手できるVANTAGETM又はCENTURATMデバイスのいずれもによって本発明を以下に記載するが、本発明が他の製造業者が販売したチャンバを含む他のチャンバで実施されてもよいことは理解されるべきである。図2は、本発明のプロセスを実施するのに使用し得る急速熱加熱装置200を示す図である。装置は、減圧にされても選択されたガスで充填してもよいプロセスチャンバ202と、側壁204と、エンクロージャ底部206を特徴とする。側壁の上部は、ライトパイプアセンブリ208に対して密封され、放射エネルギーがチャンバへ送られる。ライトパイプアセンブリ208は、複数のタングステンハロゲンランプ210を含み、例えば、SylvaniaEYTランプを含み、各々がステンレス鋼、黄銅、アルミニウム、又は他の金属から製造することができるライトパイプ212に取り付けられている。
【0015】
[0025]基板214は、基板のエッジ部に接触する支持リング216によってプロセスチャンバ200内部に支持される。支持リング216は、不純物を基板に与えずに炭化シリコンのような高温を耐えることができる物質から製造される。支持リング216は、回転シリンダ218上に取り付けられるのがよい。一実施形態において、支持リングとその上の基板を回転することができる石英回転シリンダを用いてもよい。基板の回転は一様な温度分布を促進させる。
【0016】
[0026]プロセスガスは、代表的なポータル220を通ってチャンバに加えることができ、代表的なポータル222を通って真空排気することができる。一部の実施形態において、複数のガス供給部と排気ポータルを用いることができる。温度コントローラ224は、パイロメーター226から測定結果を受け取り、ランプ210への電力を調整して一様な加熱を得る。
【0017】
[0027]図3Aは、本発明に従って基板を選択的に酸化する方法を示すフローチャートである。プロセス310の第一ステップは、チャンバからあらゆる反応性ガスをパージすることである。パージすることにより、温度と圧力を上げることがある場合に、酸化処理の予備段階で基板上に望まれていないいかなる化学反応をも避けられる。本発明の目的は、シリコン含有層と金属層とを備え、所望によりバリヤ層又はキャップ層を備えてもよい複合基板のシリコン含有層のみを酸化することである。この目的を達成するために、高温又は高圧を特徴とするいかなるプロセスステップでもプロセスチャンバ内のガスの組成を制御するのがよい。パージは、チャンバから全てのガスをポンプで送り、その後、非反応性ガスをチャンバへ流して、プロセスチャンバ内に非反応性ガス雰囲気を生成することによって達成される。非反応性ガスは処理中いかなる基板物質とも反応しない。本発明のプロセスにおいて非反応性ガスであるガスとしては、窒素ガス(N)、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)、ネオン(Ne)、キセノン(Xe)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0018】
[0028]シリコン含有物質、金属、所望によるバリヤ層又はキャップ層の複数の層を有する基板は、プロセス312の次のステップにおいてチャンバ内に配置される。層は、基板上にトランジスタのようなデバイス構造を形成するためにパターン形成されてもよい。図4Aは、典型的なゲートトランジスタ構造400を示す図である。ドープされたシリサイド領域402は、基板のポリシリコンドメイン404内に配置される。ドープされたシリサイド領域402は、トランジスタのソース領域とドレイン領域を形成する。ドープされたシリサイド領域402の上に、ポリシリコン406と、ゲート酸化物408と、バリヤ物質410と、金属コンタクト412と、保護物質又はハードマスク物質414の多層を堆積させることができる。更に、図示していないが、バリヤ層又は核形成層を間に含むか又は含まずに、ドープされたシリサイド領域の上に金属コンタクトを直接堆積させることができる。本発明のプロセスは、基板の他のシリコン含有領域に沿って、金属又は他層を酸化させずにポリシリコン層とゲート酸化物層のみを選択的に酸化する。
【0019】
[0029]基板は、プロセスチャンバ内のスリットバルブを通ってチャンバへ導入することができる。処理クラスタ又はプラットフォームの一部として構成される搬送ロッドはチャンバへ基板を装着するために用いることができる。或いは、トレイローダが一定の速さで複数の基板を装脱着するためにカートリッジデバイスと用いることができる。更に、基板をプロセスチャンバの内外に搬送するためにカルーセル装置を回転処理クラスタの一部として用いてもよく、ライナ処理アセンブリを用いてもよい。
【0020】
[0030]図3Aをもう一度参照すると、非反応性ガス雰囲気下でプロセスチャンバ内の支持リング上に支持された基板を、次に、温度と圧力の上昇ステップ314に供する。温度と圧力を上昇させる前に、水素含有ガスをプロセスチャンバに送ってもよい。或いは、上昇中、プロセスチャンバ内外に非反応性ガスを流すことによって非反応性ガス雰囲気を維持してもよい。チャンバ内の圧力を正確に制御することができ、基板を避けることがあるいかなるわずかな放出物も温度が上昇する流動ガスによって除去される。温度と圧力は、同時に又は引き続いて、所望される所定のプロセス条件までいかなるパターンでも傾斜させることができる。温度傾斜は、基板の種々の層をアニールする追加の効果をもたらすように設計することができる。最良の選択的酸化条件は、約150トール〜約800トール、特に約250トール〜600トール、例えば、450トールで得られることが分かった。最良の選択的酸化条件が約700℃を超え、特に約800℃〜約1000℃、例えば、950℃の温度で達成されることも分かった。
【0021】
[0031]再び図3Aを参照すると、温度と圧力の上昇前か又は後に水素含有ガスをプロセスチャンバに送ることができる。水素(H)ガスが好ましいが、アンモニア(NH)のような酸化した場合に水蒸気を生成することができる他のガスを用いてもよい。水素含有ガスの所望の流量に達し、動作条件が設定されたときに、ステップ318で酸素含有ガスをプロセスチャンバに送ってガス混合物を生成する。酸素(O)ガスが好ましいが、亜酸化窒素(NO)のような他の酸化ガスを用いることができる。反応が開始するように温度と圧力と流れ制御が応答することを可能にする設定点まで酸素含有ガスの流量を増加させる。水素含有ガスと酸素含有ガスが反応し、インサイチュで水蒸気を生成させ、基板上に選択的酸化反応を推進させる。水分子がシリコン含有物質に血漿ネットワークを拡散させ、Si-Si又はSi-SiO結合で水素を遊離させることが考えられる。処理は、ステップ320で所定の終点に達する、例えば、ある量の時間まで続ける。ステップ322で、温度を下げ、チャンバを減圧して、反応種を除去する。ステップ324で、非反応性ガスをもう一度チャンバに充填して、プロセスを完了し、ステップ326で基板を除去する。
【0022】
[0032]図3Bと図3Cは、本発明のプロセスの別の実施形態を示す図である。図3Bは、ステップ336で水素含有ガスを加える前に、ステップ334で非反応性ガスをチャンバ動作圧を設定するために用いる態様を示す図である。ステップ338に示すように、水素含有ガスを充填した後に温度を設定することができ、その後、ステップ340で酸素含有ガスを充填する。図3Cは、最初にステップ354で酸素含有ガス充填し、続いてステップ356で加圧し、ステップ358で水素含有ガスを充填し、ステップ360で温度を設定する態様を示す図である。
【0023】
[0033]別の実施形態において、チャンバが所望の温度と圧力に達した後に、水素含有ガスと酸素含有ガスを共に増加させることができ、利点は単一流の混乱によって望まれていない反応を促進させないことである。他の別の実施形態において、所望の温度と圧力点に達する前に水素含有ガスをチャンバへ導入することができ、基板上のいかなる金属層も不動態化することが潜在的な利点であり、更に金属の酸化可能性が減少する。他の実施形態において、非反応性ガス又はキャリヤガスを水素含有ガス又は酸素含有ガス、又はそれらの双方と用いることができ、別々に又はいずれかのガスと送られてもよい。ガスは反応チャンバの外部で混合しても、個々にチャンバに送られてもよい。非反応性ガスの使用は、混合と選択性を促進させるが、酸化速度も低下させるようである。
【0024】
[0034]反応ゾーンにおいて温度と圧力が反応を推進させる。熱い基板からの対流や酸化反応から放出されるエネルギーが反応ゾーンを加熱させる。従って、反応を推進させるのに必要とされる温度は、基板表面のすぐ近くで見出される。一部の実施形態において、反応は、基板表面から1cmまでのゾーンに限定されるのがよい。通常は700℃を超える温度が、選択的酸化反応を促進させるのに有効である。温度は、チャンバ内に配置されたセンサによって制御され、ヒートランプへ電力を変える温度コントローラに接続される。
【0025】
[0035]流量、温度、圧力の効果的な制御が成功した選択的酸化プロセスに寄与する。ガス混合物において酸素が多すぎる場合には、酸素ラジカル種が優勢であり、望まれていない酸化反応が引き起こされる。図5は、従来の酸素を多く含む酸化反応のガス混合物特性に対して異なる圧力で酸化種の相対濃度を示す反応種のダイアグラムである。それは、圧力が高くなるにつれて望ましくない酸化種が減少する原則を示している。これらのサイズのために、酸素ラジカル種は水分子よりも金属の結晶構造内に良好に拡散することができる。従って、酸素ラジカル種のより高い濃度によって、シリコン含有物質の選択性が低くなる。より高いチャンバ圧によって、酸素ラジカルが水素含有化学種によって急速に除去されることからラジカル種が少なくなる。
【0026】
[0036]選択的酸化反応の速度を最大にすることは望ましいが、不適切な反応種の混合物が用いられる場合には、酸化反応と燃焼反応が爆発性であり得る。約65%を超える水素ガス(H)と酸素ガス(O)の混合物が最も有利な反応条件を生じることが分かった。水素を多く含むガス混合物によって、通常、許容され得る酸化速度と高い選択性が得られる。図6は、本発明のプロセスに関する反応速度ダイアグラムを示す図である。領域1は、選択的酸化プロセスに現在用いられている動作窓を示す図である。領域2は、水素と酸素ガスの混合物の大爆発の可能性を示し、避けなければならない組成を示す図である。領域3は、本発明の目標動作窓を示す図である。酸素中約65%〜約95%の水素、特に約75%〜約90%、例えば、酸素中約85%の水素の混合物で好ましい結果が得られた。これらの条件で、反応チャンバ内部での組成物のわずかな変動により、かなりの温度変動につながり得る。同様に、反応種の流量のわずかな変動が反応混合物を爆発限界に近づけさせ得る。インターロックは、酸素含有ガスの流量が許容され得る範囲の安全性で制御限界の下にとどまることを確実にするために用いられる。リアクタに送られる酸素含有ガスの量は、酸素含有ガス流量と水素含有ガス流量との割合を指定することによって、又は双方と非反応性ガス又はキャリヤガスとの割合を指定することによって、又はガス混合物中の反応性ガスの割合を制御するように設計される他のいずれの方法によっても制御することができる。
【0027】
[0037]反応は、一定時間進行する。基板のシリコン含有物質上での酸化物成長の薄膜が望まれる。これらのプロセス条件で、約1〜約5分間が20〜50オングストローム厚の新しい酸化物層を生成するのに充分である。図4Bは、選択的酸化が行われた後のデバイス構造420を示す図である。酸化物層416は、構造のシリコン含有層へ隣接して成長している。終点に達したときに、温度を下げてもよく、反応チャンバをポンプで排出させるとともに非反応性ガスを充填するのがよい。チャンバを簡単にパージして、潜在的反応ガスが基板を劣化させないままであることを確実にすることができ、その後、基板を処理のためにチャンバから取り出す。
【0028】
[0038]上記プロセスは、基板上の多くのシリコン含有物質を選択的に酸化するために用いることができる。このようなシリコン含有物質としては、ポリシリコン(又は多結晶シリコン)、ドープされたシリコン、ミクロクリスタリンシリコン、ドープされたミクロクリスタリンシリコン、アモルファスシリコン、ドープされたアモルファスシリコン、汎用シリコン、ドープされた又はドープされていない、前者のラベルのいずれにも適合しないもの、二酸化シリコン(SiO)をかなり含む部分的に酸化されたシリコン物質、及びこれらの組合わせが挙げられるがこれらに限定されない。同様に、多くの有名な金属導体やバリヤ層又は保護層は、このプロセスに安全にさらされることができる。このような条件下で酸化されない金属層組成物としては、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、タングステン(W)、窒化タングステン(WN)、チタン(Ti)、窒化チタン(TiN)、タンタル(Ta)、窒化タンタル(TaN)、炭窒化タンタル(TaCN)、及びこれらの組合わせが挙げられるがこれらに限定されない。
【0029】
[0039]本発明の実施形態に従って行われる選択的酸化処理の実施例を以下の表1に示す。以下の実施形態は、反応種として水素ガスと酸素ガスを用いてシリコンとタングステン金属の選択的酸化を示す。しかしながら、上述のように、アンモニアのような他の水素含有ガスを用いることができ、亜酸化窒素のような他の酸素含有ガスが本発明の他の実施形態を示すプロセスを行うために用いることができる。また上述のように、表1に特に示した以外の本発明の実施形態は、タングステン以外の金属に相対して選択的酸化を達成する。
【0030】
【表1】

【0031】
結論
[0040]シリコン/金属複合膜の選択的酸化の方法及び装置に関する本発明の実施形態を記載してきた。半導体デバイスにおけるシリコン含有物質は、高圧インサイチュ水蒸気生成によって、金属層のようなデバイスの他の層を酸化させずに急速に酸化させる。上記は本発明の実施形態に関するが、本発明の他の多くの実施形態が本発明の基本的範囲から逸脱することなく構成されてもよい。本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によって決定される。
【符号の説明】
【0032】
200…急速熱加熱プロセスチャンバ、202…プロセスチャンバ、204…側壁、206…エンクロージャ底部、208…ライトパイプアセンブリ、210…ランプ、212…ライトパイプ、214…基板、216…支持リング、218…回転シリンダ、220…代表的なポータル、222…代表的なポータル、224…温度コントローラ、226…パイロメータ、310…プロセス、312…プロセス、314…圧力上昇ステップ、318…ステップ、320…ステップ、322…ステップ、324…ステップ、326…ステップ、334…ステップ、336…ステップ、338…ステップ、340…ステップ、354…ステップ、356…ステップ、358…ステップ、360…ステップ、400…ゲートトランジスタ構造、402…ドープされたシリコン領域、404…ポリシリコンドメイン、406…ポリシリコン層、408…ゲート酸化物、410…バリヤ物質、412…金属コンタクト、414…ハードマスク物質、416…酸化物層、420…デバイス構造。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともシリコン含有層と金属層を備える基板をチャンバ内で処理する方法であって、
少なくとも約65%の水素ガスを含む水素が豊富なガス混合物をチャンバに導入するステップと、
チャンバを約250トールを超える圧力に加圧するステップと、
水素が豊富なガス混合物をチャンバ内で反応させて水蒸気を生成させるステップと、
シリコン含有層を選択的に酸化するステップと、
を含む、前記方法。
【請求項2】
水素が豊富なガス混合物が、酸素含有ガスと非反応性ガスを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
シリコン含有層を選択的に酸化するステップが、金属層を酸化することなく、シリコン含有層を酸化することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
酸素含有ガスが酸素ガスであり、水素ガスが水素が豊富なガス混合物の約65%から約95%の間である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
非反応性ガスが、ヘリウム(He)、窒素ガス(N)、アルゴン(Ar)、ネオン(Ne)、キセノン(Xe)、又はそれらの組合せを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
水素ガスが、水素が豊富なガス混合物の約65%から約95%の間である、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
基板近傍の温度が約700℃以上に維持される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
基板を処理する方法であって、
基板をチャンバ内で少なくとも約700℃の温度に加熱するステップと、
基板をガス混合物、酸素ガス及び非反応性ガスの約65%から約95%の間の濃度で水素ガスを含むガス混合物に基板をさらすステップと、
チャンバ内を少なくとも約250トールの圧力に維持するステップと、
チャンバ内で水蒸気を生成するステップと、
を含む、前記方法。
【請求項9】
酸素ガスに対する水素ガスの比率を制御するステップを更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ガス混合物が、水素が豊富なガス混合物である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
ガス混合物が、チャンバの外で形成される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
水素ガスの濃度が、約70%から約90%の間である、請求項11に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−44192(P2012−44192A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−201340(P2011−201340)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【分割の表示】特願2008−244684(P2008−244684)の分割
【原出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【出願人】(390040660)アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド (1,346)
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【Fターム(参考)】