説明

避妊及びホルモン補充のためのノルエルゲストロミンを含む経皮治療システム

本発明は、活性成分ノルエルゲストロミンを、場合によりエストロゲンと組み合わせて皮膚上に適用するための経皮治療システムに関する。さらに、ホルモン避妊及びホルモン補充療法のためのこのようなシステムの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、場合によりエストロゲンと組み合わせて活性成分ノルエルゲストロミンを皮膚に投与するための経皮治療システムに関する。さらに、本発明は、ホルモン避妊法、及びホルモン補充療法のためのこのようなシステムの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
活性成分ノルエルゲストロミン(17−デアシル−ノルゲスティメート;13−エチル−17−ヒドロキシ−18,19−ジノル−17−アルファ−プレグン−4−エン−20−イン−3−オンオキシム)は、性ホルモンとしてプロゲストゲンの種類に属する。ノルエルゲストロミンは、黄体形成ホルモン(LH)の放出を阻害し、そのため排卵阻害活性を有する。ノルエルゲストロミンの1つの利点は、そのアンドロゲン効果がプロドラッグノルゲスティメート又はその他の代謝物、例えば3−ケトノルゲスティメート及びレボノルゲストレルのそれより低いということである。エストロゲンは、卵胞刺激ホルモン(FSH)の分泌を阻害し、従って排卵を阻害する。エストロゲンには、例えば17−ベータ−エストラジオール及びエチニルエストラジオールが含まれる。ノルエルゲストロミンを含む製品、並びにノルエルゲストロミン及びエチニルエストラジオールを含む組み合わせ製品は、女性における避妊及びホルモン補充療法に使用される。
【0003】
避妊は、つまり、生命にかかわる又は治療が必要な病的状態を治療するのに役立たないため、通常の感覚では障害でない。従って、多くの女性は、慎重なやり方で投与することができ、そして、必要に応じて、経口避妊薬により、可能ならば、毎日の使用を回避する医薬品形態があることを望んでいる。従って、避妊の領域では、インプラント、膣リングが見られるが、実質的に目立たない投与を可能にする経皮システムも見られる。
【0004】
例えばインプラント、膣リングなどのような多くの新規な投与形態の不都合な効果は、錠剤とは対照的に、医薬品形態が適切に投与されたと確信することができないため、使用者がこのような医薬品形態に信頼が不十分であることが多いということである。この信頼性の感覚は、特に避妊治療では使用者にとって非常に重要であり、そしてコンプライアンスにかなり影響を与える。
【0005】
経皮システムは、きわめて慎重な使用、そしてさらに使用期間中に正確な投与を視覚によりチェックすることができる。Ortho EvraTM TCSの成功(経皮的避妊薬システム、ノルエルゲストロミン/−エチニルエストラジオール)は、女性がこのタイプの投与を十分に受け入れることを示す。
【0006】
これらの活性成分を投与するための多数の経皮治療システム(TTS)は、最新技術ですでに知られている。このようなTTSは、典型的に医用物質に対して不浸透性(impermeable)である支持体層、医用物質を含むレザバー層及び皮膚に付着するための感圧粘着層(pressure−sensitive adhesive layer)で構成された構造を有し、後者は、医用物質を含むレザバー層と同一であることが可能である。また、医用物質を含む層は、さらなる成分、例えば可塑剤、粘着付与剤、可溶化剤、安定剤、充填剤、担体及び浸透促進剤を含むことができる。この目的に適切な医薬上許容しうる物質は、原則として当業者に知られている。
【0007】
経皮治療システムは、原則的に剤形として知られているが、TTSとしての特定の活性成分の製剤、例えばノルエルゲストロミンは挑戦を意味する。種々の問題が生じることがある。従って、TTSは、治療上使用しうるためには、皮膚を通して十分に高い活性成分の流動を可能にしなければならない。また、それは、良好な安定性を示さなければならず、そして特に保存中になんらかの変化を受けてはならない。活性成分レザバーにとって適切なポリマーの選択は、問題があることがわかっており、それは、これらのポリマーがそれぞれの活性成分と適合しなければならないからである。さらに、本発明のTTSは、妥当な費用で製造できることが必要である。
【0008】
例えば、このようなシステムは、US 6,071,531に記載されている。その中に記載された製剤は、非アクリレートベースのポリマー、エンハンサー及び溶媒からなり、ここでエンハンサーは、脂肪族アルコールのC12−C18基本構造を有する乳酸エステル、モノラウリン酸プロピレングリコール及びこれらの物質の組み合わせの群からなる。世界の多くの国で商業的に入手可能であるOrtho EvraTM TCSは、例えばこの特許の教示を使用している。
【0009】
WO 2005/120470 A1は、ノルエルゲストロミン単独で又はエストロゲン、特にエチニルエストラジオールと組み合わせたマトリックス制御された経皮治療システムを開示している。熱溶融性接着剤、特にスチレンブロックコポリマーが、マトリックス(matrix)に使用される。
【0010】
市場で入手可能なシステム(Ortho EvraTM TCS)の欠点は、20cm2のその比較的大きい適用領域であり、それが使用を困難にしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、記載した先行技術の欠点を回避し、そしてノルエルゲストロミンを、場合によりエストロゲンと組み合わせて投与するための経皮治療システムを提供することであり、これは活性成分の高められた送達速度のため、避妊又はホルモン補充療法にとってより良好に適している。さらに、より単純で、より信頼できる適用方法を通して患者の改善されたコンプライアンスを達成することを意図する。さらに、使用は、できる限り慎重でなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、本発明によりノルエルゲストロミンを含有する、シリコーンポリマーベースの少なくとも単層の活性成分レザバーを含む、請求項1に記載された経皮治療システム(TTS)によって達成される。驚くべきことに、特にノルエルゲストロミン及びエチニルエストラジオールと、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ブタンジオール又は1,2−プロピレングリコールのような物質又は物質の組み合わせとの組み合わせにより、市場で入手可能なOrtho EvraTM TCSと比較して、皮膚を通しての実質的により高い浸透を達成することができる。本発明の製剤は、72時間の所定の期間にわたってヒト皮膚表皮を通しての浸透について明らかにより高いレベルを示す。さらに、TTS製剤は、ノルエルゲストロミン及びエチニルエストラジオールの異なる含量を有する。
【0013】
本発明のTTSは、皮膚に適用した後、長期間、例えば7日まで同じ場所に残存することができ、そしてこの間に制御されたやり方で皮膚に活性成分を送達する。経口避妊薬の場合のような、毎日投与する必要性は、このやり方で回避される。必要に応じて、皮膚からTTSを除去することによる単純なやり方で治療を終了又は中断することができる。
【0014】
特定の利点は、このやり方で、Ortho EvraTM TCSの適用領域と比較して、同一の浸透速度で約17%、好ましくは約36%、特に好ましくは約48%、明らかにより小さな適用領域を有するTTSを使用できるということである。それと共により容易な操作及び改善された着用の快適性が伴う。
【0015】
前記物質の添加は、シリコーンマトリックスと活性成分との間で可溶化をもたらす効果を有する。ジエチレングリコールモノエチルエーテルの使用は、好ましい。マトリックス質量に基づく物質の比率が、1質量%から80質量%まで、好ましくは5質量%と40質量%の間のときに、特に有益であることがわかった。
【0016】
使用される適切なシリコーンポリマーは、それ自体、感圧粘着性を有するシリコーン、ポリシロキサン又はシリコーンである。感圧性シリコーン粘着剤は、例えばポリジメチルシロキサン構造又はポリジメチルジフェニル−シロキサン構造に基づく感圧粘着剤を意味する。例えばDow Corning CorporationからのBIO PSAのような商業的に入手可能な感圧性シリコーン粘着剤は、特に適切である。BIO−PSA Q7−4302は、好ましく使用される。
【0017】
TTSは、通常、活性成分不浸透性の裏張り層、1つ又はそれ以上の活性成分を含むマトリックス層、場合により活性成分の放出を制御する膜、及び取り外し可能な保護層を含み、マトリックス層は、自己粘着性であるか又は皮膚側に感圧粘着層をさらに設けることが可能である。
【0018】
活性成分レザバーは、好ましくは活性成分ノルエルゲストロミン及び場合によりさらなる活性成分、例えばエストラジオール、エチニルエストラジオール又はエストリオールを含む少なくとも単層の高分子マトリックスで構成される。都合よくは、エストラジオール受容体上でアゴニスト効果を有するさらなる活性成分が存在することが可能である。また、経皮治療システムは、その組成及び/又は活性成分含量が異なっていてもよい複数の活性成分を含むマトリックス層からなることもできる。
【0019】
活性成分マトリックスは、前記ポリマー及び活性成分の他に、原則として当業者に知られているさらなる賦形剤、例えば可塑剤、粘着付与剤、可溶化剤、安定剤、充填剤、担体、浸透促進剤をさらに含む。
【0020】
また、さらなる好ましい実施態様において本明細書に記載しうる例は、活性成分マトリックス中の1つ又はそれ以上の脂肪酸塩、好ましくはラウリン酸ナトリウム又はさらなるポリマー、例えばエチル、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、トラガカント、ベントナイト、ラクトース、コロイド状二酸化ケイ素である。量は、1質量%から50質量%まで、好ましくは2質量%と15質量%との間である。
【0021】
本発明のさらなる好ましい賦形剤は、例えばシリコーン油、水素化された樹脂酸のグリセロールエステル、ヒドロアビエチン酸アルコール樹脂エステル、ヒドロアビエチン酸樹脂エステル、水素化されたテルペンチン樹脂のメチルエステル、部分的に水素化されたテルペンチン樹脂のエステル、テルペンチン樹脂のエステルである。
【0022】
また、代替物の可能性は、安定化又は保存中に活性成分の分解を最小限にするために抗酸化剤、例えばトコフェロール、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、没食子酸エステル、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、パルミチン酸アスコルビル、ステアリン酸アルコルビル、を使用することである。
【0023】
裏張り層として特に適切なのは、ポリエステル、例えば好ましくはポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリブチレンテレフタレートであり、それらは特に強度に優れている。さらに、他のいずれかの実質的に適合しうるプラスチック、例えばポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル、酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セルロース誘導体又は異なるフィルムの組み合わせは、適切である。
【0024】
特に好ましい本発明の活性成分の貼付剤は、それらは、活性成分を含むマトリックス及び上部に裏張り層で構成されたものであり、ここで得られたTTSは、皮膚に適用した後、透明又は少なくとも半透明である。
【0025】
また、さらに支持層、例えば不織布を使用することは、TTSの機械的安定化に役立つ可能性があり、溶媒中に溶解又は懸濁された活性成分が都合よく不織布に適用される。適切な不織布材料は、当業者に知られており、好ましくはポリエチレンテレフタレート、セルロース、再生セルロース、ニトロセルロース又はポリエチレンである。
【0026】
本発明の経皮治療システムは、ホルモン避妊法、及びホルモン補充療法に使用される。
【0027】
本発明を、以下の実施例によってさらに詳細に説明するが、本発明の範囲がそれらに制限されるわけではない。
【0028】
製剤を実験室規模で製造し、そしてそのヒト皮膚浸透について研究した:
マトリックスに基づく組成物 質量%
ノルエルゲストロミン 3.50%
エチニルエストラジオール 0.50%
DL−α−トコフェロール 0.40%
BIO PSA Q7−4302 82.60%
Kollidon 90 F USP 3.00%
ラウリン酸ナトリウム 2.00%
ジエチレングリコールモノエチルエーテル 8.00%
【0029】
ヒト皮膚の表皮を通してのノルエルゲストロミンの浸透を、図1に示す。
【0030】
ヒト皮膚の全層皮膚を通してのエチニルエストラジオールの浸透を、図2に示す。
【0031】
製剤は、市場で入手可能なOrtho EvraTM TCSより約2倍良好な浸透結果を示した。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】ヒト皮膚の表皮を通してのノルエルゲストロミンの浸透を示す。
【図2】ヒト皮膚の全層皮膚を通してのエチニルエストラジオールの浸透を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性成分の不浸透性裏張り層、少なくとも1つの活性成分を含むマトリックス層、場合により取り外し可能な保護層を含む、ノルエルゲストロミンを投与するための経皮治療システムであって、
ここで、マトリックス層は少なくとも:
a) 治療上有効な用量のノルエルゲストロミン、
b) 1つ又はそれ以上のシリコーンポリマー、
c) ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ブタンジオール及び1,2−プロパンジオールからなる群より選ばれる1つ又はそれ以上の物質
を含む、上記経皮治療システム。
【請求項2】
エストラジオール、エチニルエストラジオール、エストリオールからなる群より選ばれる活性成分又はその誘導体をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の経皮治療システム。
【請求項3】
エストラジオール受容体上でアゴニスト効果を有する活性成分をさらに含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の経皮治療システム。
【請求項4】
1つ又はそれ以上の脂肪酸塩、好ましくはラウリン酸ナトリウムをさらに含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の経皮システム。
【請求項5】
エチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン及びラクトースを含む群から選ばれるポリマー又はこのようなポリマーの組み合わせをさらに含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の経皮システム。
【請求項6】
シリコーン油、水素化された樹脂酸のグリセロールエステル、ヒドロアビエチン酸アルコール樹脂エステル、ヒドロアビエチン酸樹脂エステル、テルペンチン樹脂の水素化されたメチルエステル、部分的に水素化されたテルペンチン樹脂のエステル及びテルペンチン樹脂のエステルを含む群から選ばれる、1つ若しくはそれ以上の物質又はそれらの組み合わせをさらに含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の経皮システム。
【請求項7】
トラガカント、ベントナイト、ラクトース、コロイド状二酸化ケイ素を含む群から選ばれる物質又はこのような物質の組み合わせをさらに含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の経皮システム。
【請求項8】
1つ又はそれ以上の抗酸化剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の経皮システム。
【請求項9】
透明又は半透明であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項10】
不織布支持層をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の経皮システム。
【請求項11】
溶媒中に溶解又は懸濁された活性成分、又は活性成分の組み合わせを不織布に適用することを特徴とする、請求項10に記載の経皮システム。
【請求項12】
不織布は、ポリエチレンテレフタレート、セルロース、再生セルロース、ニトロセルロース又はポリエチレンからなることを特徴とする、請求項10又は11に記載の経皮システム。
【請求項13】
それらの組成及び/又は活性成分含量が異なる複数の層からなることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項14】
ホルモン避妊法のための、請求項1〜13のいずれか1項に記載の経皮治療システムの使用。
【請求項15】
ホルモン補充のための、請求項1〜14のいずれか1項に記載の経皮治療システムの使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−507601(P2010−507601A)
【公表日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−533687(P2009−533687)
【出願日】平成19年10月10日(2007.10.10)
【国際出願番号】PCT/EP2007/008797
【国際公開番号】WO2008/049516
【国際公開日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(300005035)エルテーエス ローマン テラピー−ジステーメ アーゲー (128)
【Fターム(参考)】