還元剤としてのアンモニアの使用下でリーンバーンエンジンの排ガス中の窒素酸化物を還元するための構造化SCR触媒
主としてリーン運転される内燃機関の排ガスからの窒素酸化物の還元除去は、高い酸素含量に基づき困難となる。そのための公知の方法は、還元剤としてのアンモニアまたはアンモニアに分解されうる化合物による窒素酸化物の選択的触媒還元(Selective Catalytic Reduction SCR)による、それに適した触媒(SCR触媒)を用いた方法。従来のSCR触媒に典型的なのは、十分な選択性にて良好な窒素酸化物の変換が達成されうる作動温度ウィンドウが比較的狭いことである。たいていの場合、この作動ウィンドウは350℃〜500℃の温度領域中にある。さらに、その作動ウィンドウが150℃〜350℃の温度領域中にあるSCR触媒配合物が存在する。これらはより高い温度では一般に使用可能ではない。それといのも、それらは350℃より高いと還元剤として必要とされるアンモニアを窒素酸化物に酸化するからである。従って、主としてリーン運転される内燃機関を有する自動車に典型的であり、かつ200℃〜600℃の領域を超えて広がる排ガス温度領域全体をカバーするために、様々な作動温度領域を有する複数の触媒を含有するこれまでたいてい煩雑な排ガス装置システムが必要とされねばならなかった。本発明は、構造化SCR触媒を提供し、この作動領域は明らかにより広範囲の温度ウィンドウにわたって広がり、かつこの助けを借りて煩雑な排ガス装置がコンポーネントの節約下で明らかに簡素化されうる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、還元剤としてのアンモニアまたはアンモニアに分解されうる化合物の使用下での選択的接触還元によって、主としてリーン空燃比で運転される内燃機関の排ガスから窒素酸化物を除去するための構造化触媒に関する。そのような内燃機関は、ディーゼルエンジンおよび直噴ガソリンエンジンである。それらは総称してリーンバーンエンジンと呼ばれる。
【背景技術】
【0002】
リーンバーンエンジンの排ガスは、通常の有害ガスの一酸化炭素CO、炭化水素HCおよび窒素酸化物NOxの他に、比較的高い15体積%までの酸素含量を含む。一酸化炭素および炭化水素は、酸化によって容易に無害にすることができる。窒素酸化物の窒素への還元は、高い酸素含量ゆえにずっと困難である。
【0003】
酸素の存在において排ガスから窒素酸化物を除去するための公知の方法は、例えば尿素といった前駆体化合物からも現場で生成することができるアンモニアを用いた選択的接触還元(SCR法;Selective Catalytic Reduction)の方法である。この方法においては、窒素酸化物とアンモニアとの均化反応が窒素形成下で、SCR触媒と略して称される、適した触媒を用いて行われる。
【0004】
自動車における内燃機関は過渡運転モードにおいて駆動されるので、SCR触媒は、激しく変動する駆動条件に際しても良好な選択性で出来る限り高い窒素酸化物変換率(Stickoxidumsaetze)を保証しなければならない。その際、完全でかつ選択的な窒素酸化物の転化が、例えば全負荷運転に際して生じる、非常に高温の排ガス中での高い窒素酸化物量の選択的でかつ完全な変換と同様、低い温度で確保されなければならない。それに加えて、激しく変動する駆動条件は、理想的には還元されるべき窒素酸化物に対して化学量論比で行われるべきアンモニアの実際の供給に際して困難を引き起こす。その結果、SCR触媒の頑強性に対する高い要求、つまり触媒負荷量が大いに変化しかつ還元剤供給が変動する場合に窒素酸化物を幅広い温度ウィンドウにおいて高い変換率および選択率で窒素に還元することができる該触媒の能力に対する高い要求が生まれる。
【0005】
EP0385164B1は、アンモニアにより窒素酸化物を選択的に還元するためのいわゆる完全触媒を記載し、それは酸化チタンおよびタングステン、ケイ素、ホウ素、アルミニウム、リン、ジルコニウム、バリウム、イットリウム、ランタンおよびセリウムの少なくとも1つの酸化物の他に、バナジウム、ニオブ、モリブデン、鉄および銅の酸化物の群から選択された付加的な成分を含有する。
【0006】
US4,961,917は、アンモニアにより窒素酸化物を還元するための触媒配合物の特許保護を請求し、それは少なくとも10のシリカ:アルミナ比および全ての空間方向で少なくとも7オングストロームの平均動的直径を有する細孔によって結合されている細孔構造を有するゼオライトの他に、鉄および/または銅を助触媒として含有する。EP1495804およびUS6,914,026は、そのようなゼオライトベース系の安定性を熱水老化条件(hydrothermale Alterungsbedingungen)下で改善するための方法を示す。
【0007】
上で挙げられた文献中に記載される現在の従来技術を代表するSCR触媒配合物は、共通して350℃を上回る温度で初めて良好な窒素酸化物の転化を示す。一般に反応は、比較的狭い温度範囲内でしか最適な形で進行しない。この反応最適条件はSCR触媒に典型的であり、かつ触媒の作動方式に基づいている。
【0008】
反応の最適な化学量論比の結果、1:1モルの一酸化窒素NOおよび二酸化窒素NO2のアンモニアによる還元は、純粋な一酸化窒素NOの還元より数倍速く進行する。リーンバーンエンジンの排ガス中に含まれる窒素酸化物NOxは主としてNOから成り、かつ僅かな割合のNO2しか有さない。しかしながら、NOからNO2への酸化は、300℃を下回る温度の場合、酸化触媒によって反応促進されなければならないので、SCR触媒は、それがある程度の酸化力を有していない場合、低温領域中で顕著な変換率を示さない。他方で、350℃を上回る温度における非常に高い酸化力により、アンモニアはリーンバーンエンジンの排ガス中の高い酸素含量によって、低原子価の窒素酸化物、例えば笑気N2Oの形成下で酸化される。そのことによって、一方でSCR反応のために必要とされる還元剤が失われ、他方でNOxが不所望の二次排出物質N2Oの形で生じる。これにより全体で低温SCR触媒の作動ウィンドウは非常に狭い温度領域へと明らかに制限される。例えば貴金属含有SCR触媒は、非常に高いNOx転化率を100℃から250℃の間で示し、その際、触媒が窒素に対して十分な選択性を伴って働く温度領域は、一般に20〜50℃に制限されている。
【0009】
一方で非常に高い酸化力とその結果不足する選択性との間で目的が対立すること、および他方で僅かな酸化力とそのことによって制限される不十分な低温活性との間で目的が対立することが、リーンバーンエンジンの排ガスから窒素酸化物を除去するために、EP0385164B1またはUS4,961,917の中で挙げられた配合物といったSCR触媒が、走行中に生じる200℃から600℃までの全ての作動温度において窒素酸化物の除去を確かなものとするために、前接続された酸化触媒と組み合わせてまたは/かつ窒素酸化物を還元する別の触媒と組み合わせて使用されなければならない理由となる。窒素酸化物の還元を補う触媒は、低温SCR触媒、窒素酸化物貯蔵触媒、HC−DeNOx触媒またはその他の適した還元活性触媒技術か、またはそれらを組み合わせたものであってよい。
【0010】
例えばUS2006/0039843は、相応するシステムソルーションを開示する。段落[0062]の中では、有利な実施態様として、排ガス浄化のためのシステムが記載され、その際、SCR触媒でコーティングされた基体が、還元剤インジェクターとSCR触媒およびアンモニア分解触媒でコーティングされている触媒担体との間に配置される。該SCR触媒配合物は、この文献中の記載に基づき、有利な一実施態様において、第一の触媒が比較的高い運転温度において最適な形で作動し、他方で第二の触媒がむしろ排ガス系の比較的低温の区域内での使用に適したように選択される。
【0011】
DE10360955A1は、内燃機関用の排ガス浄化装置を記載し、その際、SCR反応において還元剤として利用されるアンモニアが流方向において第一の触媒上で、相応する排ガス構成成分から、リッチ排ガス組成物が存在する場合に生成される。流方向において第二の触媒上では、第一の触媒によって生成されたアンモニアが、リッチ排ガス組成物の場合、一時的に貯蔵される。リーン排ガス組成物の場合、排ガス中に含まれた窒素酸化物は、この一時的に貯蔵されたアンモニアの使用下で還元される。第二の触媒の後ろには、第三の貴金属含有触媒が配置されており、それは白金族金属のPt、PdまたはRhの少なくとも1つを担体材料上に含み、その際、該担体材料は、リッチ排ガス組成物の場合、アンモニアを貯蔵し、かつリーン排ガス組成物の場合、アンモニアを放出することができる。この文献の記載に基づき、第二の位置で用いられる標準SCR触媒と貴金属含有触媒の温度活性領域は相互に補い合い、その結果、提案された排ガス浄化装置は、窒素酸化物の変換率を、とりわけ低い温度で顕著に上昇させることに成功する。
【0012】
たしかに、そのようなシステムソルーションは、リーンバーンエンジンの排ガス中に含まれる窒素酸化物がエンジンの過渡運転中に極めて大幅に除去されることを保証する。しかしながら、それは重大な欠点を有する。それというのもまず、必要とされる全ての触媒のために自動車内で構造スペースが提供されなければならないからである。さらに、どの触媒も測定できるほどの排ガス背圧を生み、それは自動車の駆動を可能にするエンジン性能の損失をもたらし、ひいては最終的に燃料消費が高まることにつながる。それ以外に、そのようなシステムソルーションは、自動車の開発段階中、自動車に適用させるための煩雑な試験を要し、それと伴に全ての触媒が変換挙動および選択挙動に関して最適な位置に配置されていることが確保されていなければならない。その際、触媒の最適な位置は、到達しうる運転温度によって決定的に定められ、ひいては一方でエンジンまでの距離間隔によって、かつ他方で排ガス装置中での熱損失によって定められる。当然の事ながら、他のどのコンポーネントも比較的コストが掛かる。
【0013】
すでに言及したDE10360955の段落[0021]中では、圧力損失を最小化するために、第三の貴金属含有触媒を第二の触媒の流出側帯域上に施与することが提案され、その際、この帯域は、第二の触媒の全長Lの5〜50%となる。
【0014】
この提案された解決策は、系としての形態によって招かれる問題を限られた形でのみ軽減する。第二の触媒の流出側帯域として取り付けられた第三の触媒は貴金属含有触媒であり、かつ該触媒はその高い酸化力に基づき、250℃を上回る温度の場合、窒素に対して不十分な選択性しか有さないので、この温度を上回ると、N2Oの高い二次排出(Sekundaeremissionen)が見込まれる。
【0015】
ところで本発明の課題は、350℃を下回る温度領域中で良好なSCR活性を有する、アンモニアまたはアンモニアに分解されうる化合物を用いて窒素酸化物を選択的接触還元するための触媒を提供することであり、その際、350℃を上回る温度領域中での通常のSCR活性および選択性が可能な限り完全に保持され続ける。殊に本発明の課題は、活性ウィンドウの拡大にも関わらず、低温領域中で顕著に高まったN2Oの二次排出を招かない触媒活性成分を提供することである。
【0016】
この課題は、排ガスと時間的に連続して接触する、複数の触媒活性材料帯域から構成される構造化SCR触媒によって解決される。これらの材料帯域は、触媒不活性であってよくまたはそれ自体触媒活性材料帯域であってよい担体上に配置されている。該材料帯域は、SCR反応における種々の変換プロフィール(Umsatzprofile)を特徴とする:浄化されるべき排ガスと最初に接触する材料帯域の変換プロフィールは、浄化されるべき排ガスと続いて接触する材料帯域の変換プロフィールより高い温度にある。該触媒は、排ガスと最初に接触する帯域が、鉄交換されたゼオライトを含有し、かつ浄化されるべき排ガスと続いて接触する材料帯域が、遷移金属交換されたゼオライトまたは五酸化バナジウム、三酸化タングステンおよび二酸化チタンまたはそれらの組み合わせ物から成る群から選択された遷移金属酸化物を含有するか、または遷移金属交換されたゼオライトおよび五酸化バナジウム、三酸化タングステンおよび二酸化チタンまたはそれらの組み合わせ物から成る群から選択された遷移金属酸化物を含有することを特徴とする。
【0017】
本発明による触媒は、その有利な実施態様において、白金族金属、殊に白金、パラジウムまたはロジウムを含有しない。
【0018】
本発明を詳細に説明する前に、以下で、本発明にとって重要であるいくつかの概念を定義する。
【0019】
この特許文献の意味における触媒の変換プロフィールは、新鮮な状態のSCR触媒の最適な作動温度ウィンドウ、つまり窒素酸化物の最大転化率が、触媒の選択性に対する最小の要求で達成される温度領域と理解される。この温度領域の境界は、選択された運転条件下で測定された新鮮な触媒の最大転化率により算定される温度依存性の2つの変換値によって規定される。下方の温度領域中では、触媒の活性挙動およびその酸化力が性能を決定付ける。酸化触媒の特性を決めるのに通常用いられ、かつ当業者に良く知られた術語の"活性挙動(Light-Off-Verhaltens)"に類似して、変換プロフィールの下限としてT50値が規定される。これは選択された運転条件下で触媒が特徴として示す最大転化率の50%が達成される温度である。上方の温度領域中では、該変換は特にアンモニアの過酸化から結果生じる窒素酸化物の形成によって制限される。変換プロフィールの上限として、選択された運転条件下で触媒が特徴として示す最大転化率の90%を下回る温度が選択される。高い選択性の要求に鑑みて、かつアンモニアの過酸化から生じる笑気N2Oが不所望の二次排出となる事実を考慮して、変換プロフィールとして定義された温度領域は、触媒通過後に測定されたN2O含量が危険限度を超える場合さらに制限される。本出願人によって実施された試験の場合、選択された運転条件下のものとして25ppmの最大値が許容されうる。
【0020】
具体的に示すために、図1には2つの比較例において記載される2つの慣例のSCR触媒の変換プロフィールが示されている。VK1の変換プロフィールは、(|||)で表示された面で見分けられ、かつ225℃〜>500℃の温度領域を包含する。VK2の変換プロフィールは、(≡)で表示された面によって示され、その上限は触媒通過後に25ppmを超えて上昇するN2O含量によって制限され、かつ175℃〜310℃の温度領域を包含する。
【0021】
この特許文献の意味における触媒活性材料帯域は、触媒中に含まれかつ走査電子顕微鏡において閉じられた帯域として見ることが可能な材料領域と理解される。その際、該材料帯域は、不活性担体の触媒活性コーティングであってよい。このコーティングはまた、それが例えば種々の材料の複数の層から成る場合、複数の触媒活性材料帯域から構成されていてよい。材料帯域の概念をより詳しく理解するために、図2は、触媒活性コーティングを有する不活性ハニカム体から成る、流入された触媒の横断面の走査電子顕微鏡写真からの部分図を示す。符号(3)は、不活性担体として用いられたハニカム体を表す。符号(1)および(2)は、コーティングを構成する様々の触媒活性材料帯域を示す。破線で書き込まれた補助線は、互いの材料帯域の境界を明らかにする。
【0022】
さらに、材料帯域は、1つまたは場合によって複数の材料帯域から成るコーティングが施与されていてよい担体と理解されるが、ただしその前提として、該担体自体はSCR反応において触媒活性を示す。
【0023】
本発明による構造化SCR触媒は複数の触媒活性材料帯域から構成され、その際、浄化されるべき排ガスと最初に接触する材料帯域の変換プロフィールは、浄化されるべき排ガスと続いて接触する材料帯域の変換プロフィールより高い温度にある。
【0024】
本発明の有利な一実施態様において、排ガスと最初に接触する材料帯域の変換プロフィールは350℃から500℃の間にある。そのような変換プロフィールは、鉄交換されたゼオライトを含有するSCR触媒に典型的である。排ガスと続いて接触する材料帯域の変換プロフィールは、有利には100℃〜400℃の温度領域中に、とりわけ有利には200℃〜350℃の温度領域中にある。この材料帯域は、本発明により遷移金属交換されたゼオライトおよび/または五酸化バナジウム、三酸化タングステンおよび二酸化チタンから成る群から選択された遷移金属酸化物を含有する。その際、ゼオライト中に含まれる遷移金属として、銅、マンガン、コバルト、ニッケル、銀および金またはそれらの組み合わせ物の群からの1つが用いられる。極めて有利なのは銅である。
【0025】
その変換プロフィールを特徴とする材料帯域のそのような配置は、350℃を下回る温度領域中で窒素酸化物変換率が明らかに上昇することを保証し、その際、350℃を上回る温度領域中で、アンモニアの過酸化による低原子価の窒素酸化物への選択性はたいして妨害されない。その結果、SCR触媒に典型的な変換プロフィールは、350℃を下回るかなりの温度領域分が付加的に拡張されうる。それゆえ本発明による触媒の変換プロフィールの付加的な拡張は、触媒の運転温度に応じてそのつど材料帯域の1つが窒素酸化物の変換に顕著には寄与せず、しかし同時にまた選択性を台無しにすることなく、むしろいわば不活性に挙動する。
【0026】
本発明による組成物を有する材料帯域の配置は任意によるものではない。浄化されるべき排ガスが比較的低い温度での変換プロフィールを有する材料帯域と最初に接触する材料帯域の逆の配置は目的に合致しない。それというのも、達成可能な変換率が本発明による配置と比較して明らかに減少するからである。
【0027】
材料帯域は互いに水平にも垂直にも配置されていてよい。図3は、本発明による実施態様を示す。その中で、パート図AおよびBは、重なり合った(垂直の)材料帯域の配置を有する実施態様を示す。パート図C〜Fは、水平の配置、すなわち排ガスの流方向において連続した材料帯域の配置を有する実施態様を示す。符号(4)は、排ガスと最初に接触する、比較的高い温度での変換プロフィールを有する材料帯域を表す。符号(5)および(7)は、排ガスと続いて接触する、比較的低い温度での変換プロフィールを有する材料帯域を表し、その際、符号(7)は、続いて接触する材料帯域がSCR反応において触媒活性担体である特別なケースにのみ用いられる。符号(6)は不活性担体を表す。パート図Cの中で破線により輪郭を付けられた2つの三角部によって表される領域(8)は、材料帯域(4)および(5)のオーバーラップ領域を表示する。パート図Eの中の符号(9)で表示された自由面は、不活性担体上の2つの材料帯域間の未コーティングの中間帯域である。
【0028】
図3Bの中で見られるような垂直の配置は、排ガスと続いて接触させられるべき材料帯域(7)として、比較的低い温度での変換プロフィールを有し、同時に担体として比較的高い温度での変換プロフィールを有する別の触媒活性コーティング(4)のために用いられる完全触媒が使用される場合、常に適している。代替的に、不活性担体(6)をまず、比較的低い温度での変換プロフィールを有する触媒活性コーティング(5)でコーティングしてよく、かつそのようにして得られる"低温SCR触媒"を、比較的高い温度で良好なSCR活性およびSCR選択性を示す触媒活性コーティング(4)のための担体として用いてよい。それによって、図3Aで示された実施態様が得られる。
【0029】
層の有利な空間的配置を選択する場合、応用的な観点も考慮されなければならない。図3Aまたは3Bに従って互いに垂直に層が配置される場合、高い温度で材料帯域間のマイナスの相互作用が排除されえないことが考慮されなければならない。例えば、熱誘起によって(5)もしくは(7)から(4)に向かう遷移金属原子の移動は、系の選択性を妨害しうる。それというのも、そのようなイオン移動は、排ガスと最初に接触する材料帯域の酸化力を不所望に高め、結果として、比較的高い温度でアンモニアの過酸化率が高まるからである。
【0030】
これを防止する一可能性は、遷移金属原子に対して拡散バリヤーとして作用する、材料帯域(5)および(4)もしくは(7)および(4)の間に別のコーティングを配置することである。そのような拡散バリヤーの効果は、使用される材料に応じて、また構造化された自動車排ガス触媒の浄化目的に応じて機械的なまたは化学的な遮断作用に基づいている。有利なのは、化学的な遮断効果を有する拡散バリヤーである。
【0031】
本発明のとりわけ有利な一実施態様において、垂直に重ねて配置された材料帯域(5)および(4)もしくは(7)および(4)(図3Aもしくは3B)の間に、主として交換されなかったゼオライト、いわゆるH−交換ゼオライト、および/またはアンモニウム交換されたゼオライトを含有する化学的な遮断効果を有する拡散バリヤーが配置される。H−ゼオライトの効果は、熱誘起されて触媒活性コーティングからゼオライト遮断層内へと移動する遷移金属原子が、ゼオライトの細孔中に化学的に結合されることに基づく。それに加えて、固体中でイオン交換が行われ、それにより比較的素早く移動する、比較的小さいプロトンの放出が起こる。該遷移金属原子は、プロトンの吸着サイトに化学的にしっかりと結合される。この遷移金属原子の移動はそのようにしてまず止められる。ゼオライト遮断層内の全てのプロトン吸着サイトが遷移金属で交換されて、かつ遮断層内に向かうさらなる移動によって、隣接した触媒活性層の境界面で濃化が起こり、かつ閾値濃度を超えた時に初めて拡散バリヤーはその効果を失う。この点は、拡散バリヤーが触媒活性コーティング内の遷移金属原子の濃度に合わせて寸法決定されることによって防止されうる。
【0032】
遷移金属原子が、隣接した触媒活性コーティングからアンモニウム交換されたゼオライトからの遮断層内に移動する場合、プロトンの他にアンモニアが放出される。これはゼオライトのケージ構造内でまず一時的に貯蔵され、かつ選択的触媒還元において窒素酸化物を還元するために使用されうる。さらに、H−ゼオライトのケージ構造内でも、アンモニウム交換されたゼオライトのケージ構造内でも、排ガスからの炭化水素分子が一時的に貯蔵されうる。これらは、その後で同様に還元剤として使用することができる。
【0033】
材料帯域が水平に、つまり排ガスの流方向に連続して配置される場合(図3C〜3F)、材料帯域の接触面は、それがオーバーラップする(図3C)場合でさえも明らかに減る。そのことによって、遷移金属原子が界面を通って(5)もしくは(7)から(4)に移動する可能性が低くなる。その際、材料帯域(8)のオーバーラップ領域は、触媒の流方向で5ミリメートルの縦伸び(Laengenausdehnung)を超えてはならない。
【0034】
材料帯域のオーバーラップが、図3Dおよび3Eの中で示されているように完全に回避されうる場合、層(5)から層(4)への遷移金属原子の拡散による本発明による触媒の選択性の悪影響を懸念する必要はなくなる。それゆえ、これらの実施態様は、変法3A、3B、3Cおよび3Fに比べて改善された老化安定性を特徴とし、ひいては極めて有利である。その際、材料帯域(9)の間の距離間隔は、効果的に構造スペースを利用するという理由から、触媒の流方向で5ミリメートルの縦伸びを超えるべきではない。
【0035】
材料帯域が流方向で連続して配置される場合、同様に材料帯域の長さ比は、用途によって定められた最適な可能性を表す。本発明による構造化SCR触媒が、ディーゼル車よりむしろ低い燃焼温度を有する自動車における使用のために、またはエンジンから遠く隔たった、排ガス装置中のむしろ低温の位置にポジショニングし、そうして触媒の運転温度が350℃を一般に超えないようにするために準備される場合、浄化されるべき排ガスと続いて接触する材料帯域は、触媒の長さの非常に大きい割合を占めていなければならない。有利なのは、そのような適用において5:95〜45:55の、とりわけ有利には10〜90〜25:75の材料帯域(4):(5)の比を有する配置である。その理由は、有利には鉄交換されたゼオライトを含有する材料帯域(4)が、すでに低い温度でアンモニアを貯蔵し、一方でこれを350℃を下回る温度で再びただゆっくりと放出する点にある。このアンモニア貯蔵体が、排ガスと最初に接触する材料帯域の大きさを超える場合、この温度領域中で浄化の役目を担う下流の材料帯域から、反応に必要とされるアンモニアが抑えられる。この変換率は減じる。
【0036】
本発明による構造化SCR触媒が、比較的高い燃焼温度を有する、例えばリーンバーン運転される、ガソリン直噴エンジンを有する自動車における使用のために、またはエンジンに近い位置に取り付けるために準備されている場合、有利には鉄交換されたゼオライトを含有する材料帯域(4)がコーティングの主要割合を占めていなければならない。そのような使用において例外ではないように、触媒の運転温度が一般に350℃を上回る時、可能な限り僅かなアンモニア−ブレークスルー(Ammoniak-Durchbruchsrate)との組み合わせにおいて第一の材料帯域中での窒素酸物の可能な限り完全な変換が保証されていなければならない。第一の材料帯域を通り抜ける窒素酸化物は、下流の材料帯域中ではその変換プロフィールに基づきもはや満足のいくほど変換されえない。それに加えて、発生するアンモニアは選択性の損失ゆえに別の窒素酸化物へと過酸化されることが想定される。排ガスと二番目に接触する材料帯域の寸法が相応して決定される場合、その酸化力がアンモニア−バリヤー触媒としてプラスに利用されえ、かつそれは排ガス系における別のコンポーネントの節約に寄与しうる。有利なのは、むしろ高温での適用において95:5〜55:45の、とりわけ有利には90:10〜75:25の材料帯域(4):(5)の比を有する配置である。
【0037】
本発明を以下で、2つの比較例、2つの実施例および図1〜7を手がかりにして詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】2つの慣例のSCR触媒の変換プロフィールを示す図
【図2】2つの材料帯域(1)および(2)から成る施与されたコーティングを有する不活性ハニカム体(3)による横断面の走査電子顕微鏡写真からの部分図。
【図3】材料帯域の空間的な配置に関して異なる、本発明による構造化SCR触媒の有利な実施態様を示す図。
【図4】材料帯域の垂直配置を有する2つの新鮮な本発明による構造化SCR触媒の変換プロフィールを示す図。
【図5】材料帯域の垂直配置を有する2つの本発明による構造化SCR触媒および従来のSCR触媒の熱水老化後の窒素酸化物変換率を示す図。
【図6】材料帯域の水平配置を有する新鮮な状態における本発明による構造化SCR触媒の変換プロフィールを示す図。
【図7】材料帯域の水平配置を有する本発明による構造化SCR触媒および従来のSCR触媒の熱水老化後の窒素酸化物変換率を示す図。
【0039】
図3の様々のパーツ図は、本発明による触媒の有利な実施態様を示す。
【0040】
図3は、本発明による触媒の図示された実施態様に関して包括的な性質も排他的な性質も持たない。この描写は例示的なものである。
【0041】
比較例1:
この比較例においては、鉄交換されたゼオライトをベースとする慣例のSCR触媒の変換プロフィールを試験した。そのような触媒は、典型的に300℃を上回る温度で最大変換率を有する変換プロフィールを示す。以下でVK1と称すこの比較触媒を製造するために、鉄交換されたゼオライトから成る触媒活性コーティング6.4gを、不活性のセラミックハニカム体上に施与した。該ハニカム体の体積は0.04lであった。それは、0.17mmの壁厚でcm2当たり62個のセルを有していた。
【0042】
変換プロフィールの試験を、以下のガス濃度を有するモデルガス装置により定置試験において行った:
【表1】
【0043】
アンモニア対窒素酸化物のモル比は、SCR活性の試験の場合、通常はアルファで表される:
【化1】
【0044】
表中に列挙されたガス濃度から、α=0.85のアルファ値が出される。実施したモデルガステストにおける空間速度は30000h-1であった。
【0045】
この試験結果を図1の中で示す。この中で(○)で表示された曲線はVK1に関する結果を示す。この触媒は、新鮮な状態において、350℃〜500℃の温度で70%の窒素酸化物最大変換率に達する。500℃にて変換率の減損はなお確認されえないので、約70%の変換レベルがより高い温度でも維持できることが想定されうる。350℃を下回ると、変換率はゆっくりと、ほぼ線状に温度とともに上昇する。T50は225℃である。アンモニアの過酸化によって生じる触媒通過後のN2O含量は、温度ウィンドウ全体において10ppmを下回っており、それゆえ変換プロフィールの規定において関連性を持たない。
【0046】
それに従って、この特許文献が意味するところのVK1に典型的な変換プロフィールは、(|||)で表示された225℃〜>500℃の温度領域を包含する。
【0047】
比較例2:
この比較例においては、銅交換されたゼオライトをベースとする慣例のSCR触媒の変換プロフィールを試験した。そのような触媒は、本出願人の経験によれば、銅の比較的高い酸化作用に基づき、一般に350℃を下回る温度で変換プロフィールを示す。以下でVK2と称すこの比較触媒を製造するために、銅交換されたゼオライトから成る触媒活性コーティング10gを、不活性のセラミックハニカム体上に施与した。該ハニカム体の体積は0.04lであった。それは、0.17mmの壁厚でcm2当たり62個のセルを有していた。
【0048】
試験を、比較例1と同じ条件下で、モデルガス装置により定置試験において行った。
【0049】
この試験結果を図1の中で示す。この中で(黒塗りされた□)で表示された曲線はVK2に関する結果を示す。この触媒は、新鮮な状態において、175℃でのT50値を通過した後に240℃で74%の窒素酸化物最大変換率に達する。350℃を上回ると、観察された窒素酸化物変換率は明らかに減少し、また380℃からは66%の値を下回る。すでにより低い温度で、アンモニアの過酸化の結果生じるN2O濃度が25ppmを超えるまでに上昇する。
【0050】
それに従って、この特許文献が意味するところのVK2に典型的な変換プロフィールは、(≡)で表示された175℃〜310℃の温度領域を包含する。
【0051】
図1は、慣例のSCR触媒に典型的な作動領域の制限を非常に明らかに示し、それは一方でNOからNO2への効果的な前酸化に少なくとも必要とされる酸化力と、他方で還元剤として使用されるアンモニアの過酸化を防止するために、なんとか許容され得る最大利用可能な酸化力との間の目的の対立によって起こる。
【0052】
実施例1:
垂直の材料帯域配置を有する、2つの本発明による構造化SCR触媒の変換プロフィールおよび老化挙動を試験した。該触媒を製造するために、2つの材料帯域から成る触媒活性コーティングを、不活性セラミックハニカム担体上に施与した。このために、該ハニカム体にまず、比較例2からの触媒VK2に相当する銅交換されたゼオライトからの材料帯域を備え付け、かつ該コーティングの接着をより良好なものとするために500℃で2時間のあいだ空気中で焼成した。引き続き、比較例1からのVK1に相当する鉄交換されたゼオライトから成る別の材料帯域を施与した。このように、図3Aに相当する垂直の材料帯域配置を有し、かつ0.04lの触媒体積を有する2つの本発明による触媒を製造した。両触媒は、cm2当たり62個のセルのセル数および0.17mmの壁厚を有していた。この2つの本発明による触媒の本質的な違いは、次の表中に記載された材料帯域の量比にあった。
【0053】
【表2】
【0054】
そのような材料帯域の配置の場合、浄化されるべき排ガスはまず、鉄交換されたゼオライトから成る、比較的高い温度での変換プロフィールを特徴とする材料帯域を通って拡散する。そこでは350℃を上回る運転温度でSCR反応が起こる。この上方の材料帯域を貫通した後、下に位置する、銅交換されたゼオライトを含有する層に達し、該層内では、場合によって未反応の窒素酸化物が未反応のアンモニアと反応する。殊にこれは、触媒の運転温度がなお350℃を下回っている場合に起こる。
【0055】
この2つの本発明による触媒の変換プロフィールを、新鮮な状態で、定置モデルガステストにおいて試験した。選択した試験条件は、ちょうど比較例1の中で列挙した条件に対応させた。図4は、この試験結果を示す。
【0056】
2つの本発明による触媒は、比較例1および2からの比較触媒より幅を広くもつかあるいは大きい、目的とする作動ウィンドウをカバーする変換プロフィールの領域を有する。V1は180℃のT50値を有し、低温領域中での窒素酸化物変換率の上昇が160℃のT50を有するV2よりいくらかゆっくりであることを示す。最大転化率は、V1に関しては290℃で76%であり、V2に関しては240℃で78%の転化率を示す。その結果生じるV1における転化率68%もしくはV2における転化率70%の変換領域の上限は、490℃(V1)もしくは425℃(V2)である。触媒通過後に25ppmを超えるN2O含量は観察されない。
【0057】
測定したデータから、V1に関しては、(|||)で印された180℃〜490℃の変換プロフィールがもたらされる。(≡)で表示されたV2の変換プロフィールは、160℃〜425℃の温度領域を包含する。
【0058】
現在の従来技術を代表する2つの比較例からの選択された比較触媒と比べて、2つの本発明による触媒は、明らかにより低い温度に向かって延びたもしくは拡大した変換プロフィールを示した。VK2と比べて、変換プロフィールの顕著な広がりが得られる。VK1と比べて、V1は、使用に関連性を持つ測定された温度領域中での変換プロフィールの広がりを得る。
【0059】
新鮮な状態での変換プロフィールに加えて、これらの2つの触媒に関して、熱水老化後の性能挙動を試験した。そのために触媒V1およびV2を、窒素中で酸素10%および水蒸気10%から成る雰囲気を占める700℃に熱した炉の中で48時間のあいだ人工老化に供した。引き続き、2つの触媒を新たに、比較例1の中で挙げた条件下でモデルガス装置によりテストした。従来のSCR触媒と比較するために、VK1を同じ処理およびテストに供した。この試験結果を図5の中で示す。
【0060】
本発明による触媒は、熱水老化後、期待通りに、殊に350℃より下で窒素酸化物変換率の著しい損失を示す。この挙動は、VK1が示すように従来のSCR触媒から公知であり、これまでまだ未解決の一般的な問題である。とは言っても、本発明による触媒の観察された性能の低下は、慣例の触媒よりも非常に激しい。これは、2つの材料帯域間のマイナスの相互作用、おそらくは選択性を台無しにする遷移金属原子の制御されなかった移動に起因するものとみなすことができる。そのような相互作用は、材料帯域間の接触面を小さくすることによってかなり最小化することができる。
【0061】
それに従って、材料帯域の水平配置が本発明の有利な実施態様であるのは、殊に触媒が、排ガス中での温度および水蒸気含量が非常に高い場合に使用される時である。
【0062】
実施例2:
この実施例においては、図3Dの中で示されているように、材料帯域の水平配置を有する本発明による触媒を試験した。そのために、0.17mmの壁厚を有し、0.04lの体積およびcm2当たり62個のセルのセル数を有する不活性セラミックハニカム体に、2つの材料帯域から成るコーティングを備え付けた。まずそれに、鉄交換されたゼオライトから成る材料帯域を慣例の浸漬法において不活性担体の長さの半分まで施与した。その後にまだ未コーティングの半分に、銅交換されたゼオライトから成る材料帯域を備え付け、そうして2つの材料帯域がオーバーラップ帯域を持たずに接した。
【0063】
定置モデルガステストにおいて、そのようにして製造した触媒H1を試験した。その際、比較例1の中で記載した同じテスト条件を選択した。該触媒を、鉄交換されたゼオライトを含有しかつ比較的高い温度にある変換プロフィールを有する材料帯域が、貫流するモデルガスと最初に接触しなければならないようにモデルガス反応器中に取り付けた。この測定結果を図6の中で示す。
【0064】
材料帯域の水平配置を有する本発明による触媒H1は、180℃の温度から40%を超える窒素酸化物変換率に達する。81%の最大変換率には、300℃から79〜80%の変換水平域を通過した後に440℃で達する。その後に変換率はやや減少するが、その際、500℃までの試験を行った温度領域中で72%を下回る減少は観察されない。触媒通過後に測定した笑気濃度は、一般に10ppm未満である。
【0065】
この結果より、測定した触媒に関して、細線を引いた面で表示された180℃〜>500℃の変換プロフィールが生まれる。これは従来のSCR触媒に比べて、殊に低温領域に向けて変換プロフィールがかなり拡大したことを意味する。
【0066】
新鮮な状態における変換プロフィール分析を終えた後、本発明による触媒H1を、比較例1により製造した触媒VK1'と一緒に炉の中で熱水条件下において人工老化に供した。老化の継続時間は48時間で、温度は650℃であった。炉の中の雰囲気は、窒素中で酸素10体積%および水蒸気10体積%から成っていた。老化後、2つの触媒を定置モデルガステストにおいて試験し、その際、新たに、比較例1の中で記載した試験条件を用いた。一方で触媒H1の取り付け方向は、モデルガスがまず、鉄交換されたゼオライトを含有する材料帯域を貫流しなければならないように選択した。
【0067】
この試験結果を図7の中で示す。実施例1において示された結果と同様、水平の材料帯域配置を有する本発明による触媒H1についても、VK1'のような従来の触媒からも公知である、低温領域中での窒素酸化物変換率の明らかな低下が観察される。実施例1からの本発明による構造化SCR触媒V1およびV1と異なって、300℃を上回る温度領域中でのVK'の変換レベルは、しかしながらH1により維持されうるかもしくはやや優れることもある。300℃を上回った時、H1は老化後に慣例のSCR触媒と比較して変換率が明らかに改善する。材料帯域の水平配置によって、つまり新鮮状態における拡大した変換プロフィールに加えて、熱水条件下での老化安定性の改善も得られる。
【符号の説明】
【0068】
(1)および(2) 材料帯域
(3) 不活性ハニカム体
(4) 排ガスと最初に接触する比較的高い温度での変換プロフィールを有する材料帯域
(5) SCR反応において触媒活性担体でない場合に、排ガスと続いて接触する比較的低い温度での変換プロフィールを有する材料帯域
(6) 不活性担体
(7) 排ガスと続いて接触する比較的低い温度での変換プロフィールを有する材料帯域としてのSCR反応における触媒活性担体
(8) 材料帯域のオーバーラップ領域
(9) 未コーティングの中間帯域
AおよびB 2つの材料帯域の可能な垂直配置
C オーバーラップ領域を有する不活性担体上での2つの材料帯域の水平配置
DおよびE オーバーラップ領域を持たない不活性担体上での2つの材料帯域の水平配置
F 排ガスと続いて接触する材料帯域がSCR反応における触媒活性担体である時の、部分的なオーバーラップ領域を有する2つの材料帯域の水平配置
【技術分野】
【0001】
本発明は、還元剤としてのアンモニアまたはアンモニアに分解されうる化合物の使用下での選択的接触還元によって、主としてリーン空燃比で運転される内燃機関の排ガスから窒素酸化物を除去するための構造化触媒に関する。そのような内燃機関は、ディーゼルエンジンおよび直噴ガソリンエンジンである。それらは総称してリーンバーンエンジンと呼ばれる。
【背景技術】
【0002】
リーンバーンエンジンの排ガスは、通常の有害ガスの一酸化炭素CO、炭化水素HCおよび窒素酸化物NOxの他に、比較的高い15体積%までの酸素含量を含む。一酸化炭素および炭化水素は、酸化によって容易に無害にすることができる。窒素酸化物の窒素への還元は、高い酸素含量ゆえにずっと困難である。
【0003】
酸素の存在において排ガスから窒素酸化物を除去するための公知の方法は、例えば尿素といった前駆体化合物からも現場で生成することができるアンモニアを用いた選択的接触還元(SCR法;Selective Catalytic Reduction)の方法である。この方法においては、窒素酸化物とアンモニアとの均化反応が窒素形成下で、SCR触媒と略して称される、適した触媒を用いて行われる。
【0004】
自動車における内燃機関は過渡運転モードにおいて駆動されるので、SCR触媒は、激しく変動する駆動条件に際しても良好な選択性で出来る限り高い窒素酸化物変換率(Stickoxidumsaetze)を保証しなければならない。その際、完全でかつ選択的な窒素酸化物の転化が、例えば全負荷運転に際して生じる、非常に高温の排ガス中での高い窒素酸化物量の選択的でかつ完全な変換と同様、低い温度で確保されなければならない。それに加えて、激しく変動する駆動条件は、理想的には還元されるべき窒素酸化物に対して化学量論比で行われるべきアンモニアの実際の供給に際して困難を引き起こす。その結果、SCR触媒の頑強性に対する高い要求、つまり触媒負荷量が大いに変化しかつ還元剤供給が変動する場合に窒素酸化物を幅広い温度ウィンドウにおいて高い変換率および選択率で窒素に還元することができる該触媒の能力に対する高い要求が生まれる。
【0005】
EP0385164B1は、アンモニアにより窒素酸化物を選択的に還元するためのいわゆる完全触媒を記載し、それは酸化チタンおよびタングステン、ケイ素、ホウ素、アルミニウム、リン、ジルコニウム、バリウム、イットリウム、ランタンおよびセリウムの少なくとも1つの酸化物の他に、バナジウム、ニオブ、モリブデン、鉄および銅の酸化物の群から選択された付加的な成分を含有する。
【0006】
US4,961,917は、アンモニアにより窒素酸化物を還元するための触媒配合物の特許保護を請求し、それは少なくとも10のシリカ:アルミナ比および全ての空間方向で少なくとも7オングストロームの平均動的直径を有する細孔によって結合されている細孔構造を有するゼオライトの他に、鉄および/または銅を助触媒として含有する。EP1495804およびUS6,914,026は、そのようなゼオライトベース系の安定性を熱水老化条件(hydrothermale Alterungsbedingungen)下で改善するための方法を示す。
【0007】
上で挙げられた文献中に記載される現在の従来技術を代表するSCR触媒配合物は、共通して350℃を上回る温度で初めて良好な窒素酸化物の転化を示す。一般に反応は、比較的狭い温度範囲内でしか最適な形で進行しない。この反応最適条件はSCR触媒に典型的であり、かつ触媒の作動方式に基づいている。
【0008】
反応の最適な化学量論比の結果、1:1モルの一酸化窒素NOおよび二酸化窒素NO2のアンモニアによる還元は、純粋な一酸化窒素NOの還元より数倍速く進行する。リーンバーンエンジンの排ガス中に含まれる窒素酸化物NOxは主としてNOから成り、かつ僅かな割合のNO2しか有さない。しかしながら、NOからNO2への酸化は、300℃を下回る温度の場合、酸化触媒によって反応促進されなければならないので、SCR触媒は、それがある程度の酸化力を有していない場合、低温領域中で顕著な変換率を示さない。他方で、350℃を上回る温度における非常に高い酸化力により、アンモニアはリーンバーンエンジンの排ガス中の高い酸素含量によって、低原子価の窒素酸化物、例えば笑気N2Oの形成下で酸化される。そのことによって、一方でSCR反応のために必要とされる還元剤が失われ、他方でNOxが不所望の二次排出物質N2Oの形で生じる。これにより全体で低温SCR触媒の作動ウィンドウは非常に狭い温度領域へと明らかに制限される。例えば貴金属含有SCR触媒は、非常に高いNOx転化率を100℃から250℃の間で示し、その際、触媒が窒素に対して十分な選択性を伴って働く温度領域は、一般に20〜50℃に制限されている。
【0009】
一方で非常に高い酸化力とその結果不足する選択性との間で目的が対立すること、および他方で僅かな酸化力とそのことによって制限される不十分な低温活性との間で目的が対立することが、リーンバーンエンジンの排ガスから窒素酸化物を除去するために、EP0385164B1またはUS4,961,917の中で挙げられた配合物といったSCR触媒が、走行中に生じる200℃から600℃までの全ての作動温度において窒素酸化物の除去を確かなものとするために、前接続された酸化触媒と組み合わせてまたは/かつ窒素酸化物を還元する別の触媒と組み合わせて使用されなければならない理由となる。窒素酸化物の還元を補う触媒は、低温SCR触媒、窒素酸化物貯蔵触媒、HC−DeNOx触媒またはその他の適した還元活性触媒技術か、またはそれらを組み合わせたものであってよい。
【0010】
例えばUS2006/0039843は、相応するシステムソルーションを開示する。段落[0062]の中では、有利な実施態様として、排ガス浄化のためのシステムが記載され、その際、SCR触媒でコーティングされた基体が、還元剤インジェクターとSCR触媒およびアンモニア分解触媒でコーティングされている触媒担体との間に配置される。該SCR触媒配合物は、この文献中の記載に基づき、有利な一実施態様において、第一の触媒が比較的高い運転温度において最適な形で作動し、他方で第二の触媒がむしろ排ガス系の比較的低温の区域内での使用に適したように選択される。
【0011】
DE10360955A1は、内燃機関用の排ガス浄化装置を記載し、その際、SCR反応において還元剤として利用されるアンモニアが流方向において第一の触媒上で、相応する排ガス構成成分から、リッチ排ガス組成物が存在する場合に生成される。流方向において第二の触媒上では、第一の触媒によって生成されたアンモニアが、リッチ排ガス組成物の場合、一時的に貯蔵される。リーン排ガス組成物の場合、排ガス中に含まれた窒素酸化物は、この一時的に貯蔵されたアンモニアの使用下で還元される。第二の触媒の後ろには、第三の貴金属含有触媒が配置されており、それは白金族金属のPt、PdまたはRhの少なくとも1つを担体材料上に含み、その際、該担体材料は、リッチ排ガス組成物の場合、アンモニアを貯蔵し、かつリーン排ガス組成物の場合、アンモニアを放出することができる。この文献の記載に基づき、第二の位置で用いられる標準SCR触媒と貴金属含有触媒の温度活性領域は相互に補い合い、その結果、提案された排ガス浄化装置は、窒素酸化物の変換率を、とりわけ低い温度で顕著に上昇させることに成功する。
【0012】
たしかに、そのようなシステムソルーションは、リーンバーンエンジンの排ガス中に含まれる窒素酸化物がエンジンの過渡運転中に極めて大幅に除去されることを保証する。しかしながら、それは重大な欠点を有する。それというのもまず、必要とされる全ての触媒のために自動車内で構造スペースが提供されなければならないからである。さらに、どの触媒も測定できるほどの排ガス背圧を生み、それは自動車の駆動を可能にするエンジン性能の損失をもたらし、ひいては最終的に燃料消費が高まることにつながる。それ以外に、そのようなシステムソルーションは、自動車の開発段階中、自動車に適用させるための煩雑な試験を要し、それと伴に全ての触媒が変換挙動および選択挙動に関して最適な位置に配置されていることが確保されていなければならない。その際、触媒の最適な位置は、到達しうる運転温度によって決定的に定められ、ひいては一方でエンジンまでの距離間隔によって、かつ他方で排ガス装置中での熱損失によって定められる。当然の事ながら、他のどのコンポーネントも比較的コストが掛かる。
【0013】
すでに言及したDE10360955の段落[0021]中では、圧力損失を最小化するために、第三の貴金属含有触媒を第二の触媒の流出側帯域上に施与することが提案され、その際、この帯域は、第二の触媒の全長Lの5〜50%となる。
【0014】
この提案された解決策は、系としての形態によって招かれる問題を限られた形でのみ軽減する。第二の触媒の流出側帯域として取り付けられた第三の触媒は貴金属含有触媒であり、かつ該触媒はその高い酸化力に基づき、250℃を上回る温度の場合、窒素に対して不十分な選択性しか有さないので、この温度を上回ると、N2Oの高い二次排出(Sekundaeremissionen)が見込まれる。
【0015】
ところで本発明の課題は、350℃を下回る温度領域中で良好なSCR活性を有する、アンモニアまたはアンモニアに分解されうる化合物を用いて窒素酸化物を選択的接触還元するための触媒を提供することであり、その際、350℃を上回る温度領域中での通常のSCR活性および選択性が可能な限り完全に保持され続ける。殊に本発明の課題は、活性ウィンドウの拡大にも関わらず、低温領域中で顕著に高まったN2Oの二次排出を招かない触媒活性成分を提供することである。
【0016】
この課題は、排ガスと時間的に連続して接触する、複数の触媒活性材料帯域から構成される構造化SCR触媒によって解決される。これらの材料帯域は、触媒不活性であってよくまたはそれ自体触媒活性材料帯域であってよい担体上に配置されている。該材料帯域は、SCR反応における種々の変換プロフィール(Umsatzprofile)を特徴とする:浄化されるべき排ガスと最初に接触する材料帯域の変換プロフィールは、浄化されるべき排ガスと続いて接触する材料帯域の変換プロフィールより高い温度にある。該触媒は、排ガスと最初に接触する帯域が、鉄交換されたゼオライトを含有し、かつ浄化されるべき排ガスと続いて接触する材料帯域が、遷移金属交換されたゼオライトまたは五酸化バナジウム、三酸化タングステンおよび二酸化チタンまたはそれらの組み合わせ物から成る群から選択された遷移金属酸化物を含有するか、または遷移金属交換されたゼオライトおよび五酸化バナジウム、三酸化タングステンおよび二酸化チタンまたはそれらの組み合わせ物から成る群から選択された遷移金属酸化物を含有することを特徴とする。
【0017】
本発明による触媒は、その有利な実施態様において、白金族金属、殊に白金、パラジウムまたはロジウムを含有しない。
【0018】
本発明を詳細に説明する前に、以下で、本発明にとって重要であるいくつかの概念を定義する。
【0019】
この特許文献の意味における触媒の変換プロフィールは、新鮮な状態のSCR触媒の最適な作動温度ウィンドウ、つまり窒素酸化物の最大転化率が、触媒の選択性に対する最小の要求で達成される温度領域と理解される。この温度領域の境界は、選択された運転条件下で測定された新鮮な触媒の最大転化率により算定される温度依存性の2つの変換値によって規定される。下方の温度領域中では、触媒の活性挙動およびその酸化力が性能を決定付ける。酸化触媒の特性を決めるのに通常用いられ、かつ当業者に良く知られた術語の"活性挙動(Light-Off-Verhaltens)"に類似して、変換プロフィールの下限としてT50値が規定される。これは選択された運転条件下で触媒が特徴として示す最大転化率の50%が達成される温度である。上方の温度領域中では、該変換は特にアンモニアの過酸化から結果生じる窒素酸化物の形成によって制限される。変換プロフィールの上限として、選択された運転条件下で触媒が特徴として示す最大転化率の90%を下回る温度が選択される。高い選択性の要求に鑑みて、かつアンモニアの過酸化から生じる笑気N2Oが不所望の二次排出となる事実を考慮して、変換プロフィールとして定義された温度領域は、触媒通過後に測定されたN2O含量が危険限度を超える場合さらに制限される。本出願人によって実施された試験の場合、選択された運転条件下のものとして25ppmの最大値が許容されうる。
【0020】
具体的に示すために、図1には2つの比較例において記載される2つの慣例のSCR触媒の変換プロフィールが示されている。VK1の変換プロフィールは、(|||)で表示された面で見分けられ、かつ225℃〜>500℃の温度領域を包含する。VK2の変換プロフィールは、(≡)で表示された面によって示され、その上限は触媒通過後に25ppmを超えて上昇するN2O含量によって制限され、かつ175℃〜310℃の温度領域を包含する。
【0021】
この特許文献の意味における触媒活性材料帯域は、触媒中に含まれかつ走査電子顕微鏡において閉じられた帯域として見ることが可能な材料領域と理解される。その際、該材料帯域は、不活性担体の触媒活性コーティングであってよい。このコーティングはまた、それが例えば種々の材料の複数の層から成る場合、複数の触媒活性材料帯域から構成されていてよい。材料帯域の概念をより詳しく理解するために、図2は、触媒活性コーティングを有する不活性ハニカム体から成る、流入された触媒の横断面の走査電子顕微鏡写真からの部分図を示す。符号(3)は、不活性担体として用いられたハニカム体を表す。符号(1)および(2)は、コーティングを構成する様々の触媒活性材料帯域を示す。破線で書き込まれた補助線は、互いの材料帯域の境界を明らかにする。
【0022】
さらに、材料帯域は、1つまたは場合によって複数の材料帯域から成るコーティングが施与されていてよい担体と理解されるが、ただしその前提として、該担体自体はSCR反応において触媒活性を示す。
【0023】
本発明による構造化SCR触媒は複数の触媒活性材料帯域から構成され、その際、浄化されるべき排ガスと最初に接触する材料帯域の変換プロフィールは、浄化されるべき排ガスと続いて接触する材料帯域の変換プロフィールより高い温度にある。
【0024】
本発明の有利な一実施態様において、排ガスと最初に接触する材料帯域の変換プロフィールは350℃から500℃の間にある。そのような変換プロフィールは、鉄交換されたゼオライトを含有するSCR触媒に典型的である。排ガスと続いて接触する材料帯域の変換プロフィールは、有利には100℃〜400℃の温度領域中に、とりわけ有利には200℃〜350℃の温度領域中にある。この材料帯域は、本発明により遷移金属交換されたゼオライトおよび/または五酸化バナジウム、三酸化タングステンおよび二酸化チタンから成る群から選択された遷移金属酸化物を含有する。その際、ゼオライト中に含まれる遷移金属として、銅、マンガン、コバルト、ニッケル、銀および金またはそれらの組み合わせ物の群からの1つが用いられる。極めて有利なのは銅である。
【0025】
その変換プロフィールを特徴とする材料帯域のそのような配置は、350℃を下回る温度領域中で窒素酸化物変換率が明らかに上昇することを保証し、その際、350℃を上回る温度領域中で、アンモニアの過酸化による低原子価の窒素酸化物への選択性はたいして妨害されない。その結果、SCR触媒に典型的な変換プロフィールは、350℃を下回るかなりの温度領域分が付加的に拡張されうる。それゆえ本発明による触媒の変換プロフィールの付加的な拡張は、触媒の運転温度に応じてそのつど材料帯域の1つが窒素酸化物の変換に顕著には寄与せず、しかし同時にまた選択性を台無しにすることなく、むしろいわば不活性に挙動する。
【0026】
本発明による組成物を有する材料帯域の配置は任意によるものではない。浄化されるべき排ガスが比較的低い温度での変換プロフィールを有する材料帯域と最初に接触する材料帯域の逆の配置は目的に合致しない。それというのも、達成可能な変換率が本発明による配置と比較して明らかに減少するからである。
【0027】
材料帯域は互いに水平にも垂直にも配置されていてよい。図3は、本発明による実施態様を示す。その中で、パート図AおよびBは、重なり合った(垂直の)材料帯域の配置を有する実施態様を示す。パート図C〜Fは、水平の配置、すなわち排ガスの流方向において連続した材料帯域の配置を有する実施態様を示す。符号(4)は、排ガスと最初に接触する、比較的高い温度での変換プロフィールを有する材料帯域を表す。符号(5)および(7)は、排ガスと続いて接触する、比較的低い温度での変換プロフィールを有する材料帯域を表し、その際、符号(7)は、続いて接触する材料帯域がSCR反応において触媒活性担体である特別なケースにのみ用いられる。符号(6)は不活性担体を表す。パート図Cの中で破線により輪郭を付けられた2つの三角部によって表される領域(8)は、材料帯域(4)および(5)のオーバーラップ領域を表示する。パート図Eの中の符号(9)で表示された自由面は、不活性担体上の2つの材料帯域間の未コーティングの中間帯域である。
【0028】
図3Bの中で見られるような垂直の配置は、排ガスと続いて接触させられるべき材料帯域(7)として、比較的低い温度での変換プロフィールを有し、同時に担体として比較的高い温度での変換プロフィールを有する別の触媒活性コーティング(4)のために用いられる完全触媒が使用される場合、常に適している。代替的に、不活性担体(6)をまず、比較的低い温度での変換プロフィールを有する触媒活性コーティング(5)でコーティングしてよく、かつそのようにして得られる"低温SCR触媒"を、比較的高い温度で良好なSCR活性およびSCR選択性を示す触媒活性コーティング(4)のための担体として用いてよい。それによって、図3Aで示された実施態様が得られる。
【0029】
層の有利な空間的配置を選択する場合、応用的な観点も考慮されなければならない。図3Aまたは3Bに従って互いに垂直に層が配置される場合、高い温度で材料帯域間のマイナスの相互作用が排除されえないことが考慮されなければならない。例えば、熱誘起によって(5)もしくは(7)から(4)に向かう遷移金属原子の移動は、系の選択性を妨害しうる。それというのも、そのようなイオン移動は、排ガスと最初に接触する材料帯域の酸化力を不所望に高め、結果として、比較的高い温度でアンモニアの過酸化率が高まるからである。
【0030】
これを防止する一可能性は、遷移金属原子に対して拡散バリヤーとして作用する、材料帯域(5)および(4)もしくは(7)および(4)の間に別のコーティングを配置することである。そのような拡散バリヤーの効果は、使用される材料に応じて、また構造化された自動車排ガス触媒の浄化目的に応じて機械的なまたは化学的な遮断作用に基づいている。有利なのは、化学的な遮断効果を有する拡散バリヤーである。
【0031】
本発明のとりわけ有利な一実施態様において、垂直に重ねて配置された材料帯域(5)および(4)もしくは(7)および(4)(図3Aもしくは3B)の間に、主として交換されなかったゼオライト、いわゆるH−交換ゼオライト、および/またはアンモニウム交換されたゼオライトを含有する化学的な遮断効果を有する拡散バリヤーが配置される。H−ゼオライトの効果は、熱誘起されて触媒活性コーティングからゼオライト遮断層内へと移動する遷移金属原子が、ゼオライトの細孔中に化学的に結合されることに基づく。それに加えて、固体中でイオン交換が行われ、それにより比較的素早く移動する、比較的小さいプロトンの放出が起こる。該遷移金属原子は、プロトンの吸着サイトに化学的にしっかりと結合される。この遷移金属原子の移動はそのようにしてまず止められる。ゼオライト遮断層内の全てのプロトン吸着サイトが遷移金属で交換されて、かつ遮断層内に向かうさらなる移動によって、隣接した触媒活性層の境界面で濃化が起こり、かつ閾値濃度を超えた時に初めて拡散バリヤーはその効果を失う。この点は、拡散バリヤーが触媒活性コーティング内の遷移金属原子の濃度に合わせて寸法決定されることによって防止されうる。
【0032】
遷移金属原子が、隣接した触媒活性コーティングからアンモニウム交換されたゼオライトからの遮断層内に移動する場合、プロトンの他にアンモニアが放出される。これはゼオライトのケージ構造内でまず一時的に貯蔵され、かつ選択的触媒還元において窒素酸化物を還元するために使用されうる。さらに、H−ゼオライトのケージ構造内でも、アンモニウム交換されたゼオライトのケージ構造内でも、排ガスからの炭化水素分子が一時的に貯蔵されうる。これらは、その後で同様に還元剤として使用することができる。
【0033】
材料帯域が水平に、つまり排ガスの流方向に連続して配置される場合(図3C〜3F)、材料帯域の接触面は、それがオーバーラップする(図3C)場合でさえも明らかに減る。そのことによって、遷移金属原子が界面を通って(5)もしくは(7)から(4)に移動する可能性が低くなる。その際、材料帯域(8)のオーバーラップ領域は、触媒の流方向で5ミリメートルの縦伸び(Laengenausdehnung)を超えてはならない。
【0034】
材料帯域のオーバーラップが、図3Dおよび3Eの中で示されているように完全に回避されうる場合、層(5)から層(4)への遷移金属原子の拡散による本発明による触媒の選択性の悪影響を懸念する必要はなくなる。それゆえ、これらの実施態様は、変法3A、3B、3Cおよび3Fに比べて改善された老化安定性を特徴とし、ひいては極めて有利である。その際、材料帯域(9)の間の距離間隔は、効果的に構造スペースを利用するという理由から、触媒の流方向で5ミリメートルの縦伸びを超えるべきではない。
【0035】
材料帯域が流方向で連続して配置される場合、同様に材料帯域の長さ比は、用途によって定められた最適な可能性を表す。本発明による構造化SCR触媒が、ディーゼル車よりむしろ低い燃焼温度を有する自動車における使用のために、またはエンジンから遠く隔たった、排ガス装置中のむしろ低温の位置にポジショニングし、そうして触媒の運転温度が350℃を一般に超えないようにするために準備される場合、浄化されるべき排ガスと続いて接触する材料帯域は、触媒の長さの非常に大きい割合を占めていなければならない。有利なのは、そのような適用において5:95〜45:55の、とりわけ有利には10〜90〜25:75の材料帯域(4):(5)の比を有する配置である。その理由は、有利には鉄交換されたゼオライトを含有する材料帯域(4)が、すでに低い温度でアンモニアを貯蔵し、一方でこれを350℃を下回る温度で再びただゆっくりと放出する点にある。このアンモニア貯蔵体が、排ガスと最初に接触する材料帯域の大きさを超える場合、この温度領域中で浄化の役目を担う下流の材料帯域から、反応に必要とされるアンモニアが抑えられる。この変換率は減じる。
【0036】
本発明による構造化SCR触媒が、比較的高い燃焼温度を有する、例えばリーンバーン運転される、ガソリン直噴エンジンを有する自動車における使用のために、またはエンジンに近い位置に取り付けるために準備されている場合、有利には鉄交換されたゼオライトを含有する材料帯域(4)がコーティングの主要割合を占めていなければならない。そのような使用において例外ではないように、触媒の運転温度が一般に350℃を上回る時、可能な限り僅かなアンモニア−ブレークスルー(Ammoniak-Durchbruchsrate)との組み合わせにおいて第一の材料帯域中での窒素酸物の可能な限り完全な変換が保証されていなければならない。第一の材料帯域を通り抜ける窒素酸化物は、下流の材料帯域中ではその変換プロフィールに基づきもはや満足のいくほど変換されえない。それに加えて、発生するアンモニアは選択性の損失ゆえに別の窒素酸化物へと過酸化されることが想定される。排ガスと二番目に接触する材料帯域の寸法が相応して決定される場合、その酸化力がアンモニア−バリヤー触媒としてプラスに利用されえ、かつそれは排ガス系における別のコンポーネントの節約に寄与しうる。有利なのは、むしろ高温での適用において95:5〜55:45の、とりわけ有利には90:10〜75:25の材料帯域(4):(5)の比を有する配置である。
【0037】
本発明を以下で、2つの比較例、2つの実施例および図1〜7を手がかりにして詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】2つの慣例のSCR触媒の変換プロフィールを示す図
【図2】2つの材料帯域(1)および(2)から成る施与されたコーティングを有する不活性ハニカム体(3)による横断面の走査電子顕微鏡写真からの部分図。
【図3】材料帯域の空間的な配置に関して異なる、本発明による構造化SCR触媒の有利な実施態様を示す図。
【図4】材料帯域の垂直配置を有する2つの新鮮な本発明による構造化SCR触媒の変換プロフィールを示す図。
【図5】材料帯域の垂直配置を有する2つの本発明による構造化SCR触媒および従来のSCR触媒の熱水老化後の窒素酸化物変換率を示す図。
【図6】材料帯域の水平配置を有する新鮮な状態における本発明による構造化SCR触媒の変換プロフィールを示す図。
【図7】材料帯域の水平配置を有する本発明による構造化SCR触媒および従来のSCR触媒の熱水老化後の窒素酸化物変換率を示す図。
【0039】
図3の様々のパーツ図は、本発明による触媒の有利な実施態様を示す。
【0040】
図3は、本発明による触媒の図示された実施態様に関して包括的な性質も排他的な性質も持たない。この描写は例示的なものである。
【0041】
比較例1:
この比較例においては、鉄交換されたゼオライトをベースとする慣例のSCR触媒の変換プロフィールを試験した。そのような触媒は、典型的に300℃を上回る温度で最大変換率を有する変換プロフィールを示す。以下でVK1と称すこの比較触媒を製造するために、鉄交換されたゼオライトから成る触媒活性コーティング6.4gを、不活性のセラミックハニカム体上に施与した。該ハニカム体の体積は0.04lであった。それは、0.17mmの壁厚でcm2当たり62個のセルを有していた。
【0042】
変換プロフィールの試験を、以下のガス濃度を有するモデルガス装置により定置試験において行った:
【表1】
【0043】
アンモニア対窒素酸化物のモル比は、SCR活性の試験の場合、通常はアルファで表される:
【化1】
【0044】
表中に列挙されたガス濃度から、α=0.85のアルファ値が出される。実施したモデルガステストにおける空間速度は30000h-1であった。
【0045】
この試験結果を図1の中で示す。この中で(○)で表示された曲線はVK1に関する結果を示す。この触媒は、新鮮な状態において、350℃〜500℃の温度で70%の窒素酸化物最大変換率に達する。500℃にて変換率の減損はなお確認されえないので、約70%の変換レベルがより高い温度でも維持できることが想定されうる。350℃を下回ると、変換率はゆっくりと、ほぼ線状に温度とともに上昇する。T50は225℃である。アンモニアの過酸化によって生じる触媒通過後のN2O含量は、温度ウィンドウ全体において10ppmを下回っており、それゆえ変換プロフィールの規定において関連性を持たない。
【0046】
それに従って、この特許文献が意味するところのVK1に典型的な変換プロフィールは、(|||)で表示された225℃〜>500℃の温度領域を包含する。
【0047】
比較例2:
この比較例においては、銅交換されたゼオライトをベースとする慣例のSCR触媒の変換プロフィールを試験した。そのような触媒は、本出願人の経験によれば、銅の比較的高い酸化作用に基づき、一般に350℃を下回る温度で変換プロフィールを示す。以下でVK2と称すこの比較触媒を製造するために、銅交換されたゼオライトから成る触媒活性コーティング10gを、不活性のセラミックハニカム体上に施与した。該ハニカム体の体積は0.04lであった。それは、0.17mmの壁厚でcm2当たり62個のセルを有していた。
【0048】
試験を、比較例1と同じ条件下で、モデルガス装置により定置試験において行った。
【0049】
この試験結果を図1の中で示す。この中で(黒塗りされた□)で表示された曲線はVK2に関する結果を示す。この触媒は、新鮮な状態において、175℃でのT50値を通過した後に240℃で74%の窒素酸化物最大変換率に達する。350℃を上回ると、観察された窒素酸化物変換率は明らかに減少し、また380℃からは66%の値を下回る。すでにより低い温度で、アンモニアの過酸化の結果生じるN2O濃度が25ppmを超えるまでに上昇する。
【0050】
それに従って、この特許文献が意味するところのVK2に典型的な変換プロフィールは、(≡)で表示された175℃〜310℃の温度領域を包含する。
【0051】
図1は、慣例のSCR触媒に典型的な作動領域の制限を非常に明らかに示し、それは一方でNOからNO2への効果的な前酸化に少なくとも必要とされる酸化力と、他方で還元剤として使用されるアンモニアの過酸化を防止するために、なんとか許容され得る最大利用可能な酸化力との間の目的の対立によって起こる。
【0052】
実施例1:
垂直の材料帯域配置を有する、2つの本発明による構造化SCR触媒の変換プロフィールおよび老化挙動を試験した。該触媒を製造するために、2つの材料帯域から成る触媒活性コーティングを、不活性セラミックハニカム担体上に施与した。このために、該ハニカム体にまず、比較例2からの触媒VK2に相当する銅交換されたゼオライトからの材料帯域を備え付け、かつ該コーティングの接着をより良好なものとするために500℃で2時間のあいだ空気中で焼成した。引き続き、比較例1からのVK1に相当する鉄交換されたゼオライトから成る別の材料帯域を施与した。このように、図3Aに相当する垂直の材料帯域配置を有し、かつ0.04lの触媒体積を有する2つの本発明による触媒を製造した。両触媒は、cm2当たり62個のセルのセル数および0.17mmの壁厚を有していた。この2つの本発明による触媒の本質的な違いは、次の表中に記載された材料帯域の量比にあった。
【0053】
【表2】
【0054】
そのような材料帯域の配置の場合、浄化されるべき排ガスはまず、鉄交換されたゼオライトから成る、比較的高い温度での変換プロフィールを特徴とする材料帯域を通って拡散する。そこでは350℃を上回る運転温度でSCR反応が起こる。この上方の材料帯域を貫通した後、下に位置する、銅交換されたゼオライトを含有する層に達し、該層内では、場合によって未反応の窒素酸化物が未反応のアンモニアと反応する。殊にこれは、触媒の運転温度がなお350℃を下回っている場合に起こる。
【0055】
この2つの本発明による触媒の変換プロフィールを、新鮮な状態で、定置モデルガステストにおいて試験した。選択した試験条件は、ちょうど比較例1の中で列挙した条件に対応させた。図4は、この試験結果を示す。
【0056】
2つの本発明による触媒は、比較例1および2からの比較触媒より幅を広くもつかあるいは大きい、目的とする作動ウィンドウをカバーする変換プロフィールの領域を有する。V1は180℃のT50値を有し、低温領域中での窒素酸化物変換率の上昇が160℃のT50を有するV2よりいくらかゆっくりであることを示す。最大転化率は、V1に関しては290℃で76%であり、V2に関しては240℃で78%の転化率を示す。その結果生じるV1における転化率68%もしくはV2における転化率70%の変換領域の上限は、490℃(V1)もしくは425℃(V2)である。触媒通過後に25ppmを超えるN2O含量は観察されない。
【0057】
測定したデータから、V1に関しては、(|||)で印された180℃〜490℃の変換プロフィールがもたらされる。(≡)で表示されたV2の変換プロフィールは、160℃〜425℃の温度領域を包含する。
【0058】
現在の従来技術を代表する2つの比較例からの選択された比較触媒と比べて、2つの本発明による触媒は、明らかにより低い温度に向かって延びたもしくは拡大した変換プロフィールを示した。VK2と比べて、変換プロフィールの顕著な広がりが得られる。VK1と比べて、V1は、使用に関連性を持つ測定された温度領域中での変換プロフィールの広がりを得る。
【0059】
新鮮な状態での変換プロフィールに加えて、これらの2つの触媒に関して、熱水老化後の性能挙動を試験した。そのために触媒V1およびV2を、窒素中で酸素10%および水蒸気10%から成る雰囲気を占める700℃に熱した炉の中で48時間のあいだ人工老化に供した。引き続き、2つの触媒を新たに、比較例1の中で挙げた条件下でモデルガス装置によりテストした。従来のSCR触媒と比較するために、VK1を同じ処理およびテストに供した。この試験結果を図5の中で示す。
【0060】
本発明による触媒は、熱水老化後、期待通りに、殊に350℃より下で窒素酸化物変換率の著しい損失を示す。この挙動は、VK1が示すように従来のSCR触媒から公知であり、これまでまだ未解決の一般的な問題である。とは言っても、本発明による触媒の観察された性能の低下は、慣例の触媒よりも非常に激しい。これは、2つの材料帯域間のマイナスの相互作用、おそらくは選択性を台無しにする遷移金属原子の制御されなかった移動に起因するものとみなすことができる。そのような相互作用は、材料帯域間の接触面を小さくすることによってかなり最小化することができる。
【0061】
それに従って、材料帯域の水平配置が本発明の有利な実施態様であるのは、殊に触媒が、排ガス中での温度および水蒸気含量が非常に高い場合に使用される時である。
【0062】
実施例2:
この実施例においては、図3Dの中で示されているように、材料帯域の水平配置を有する本発明による触媒を試験した。そのために、0.17mmの壁厚を有し、0.04lの体積およびcm2当たり62個のセルのセル数を有する不活性セラミックハニカム体に、2つの材料帯域から成るコーティングを備え付けた。まずそれに、鉄交換されたゼオライトから成る材料帯域を慣例の浸漬法において不活性担体の長さの半分まで施与した。その後にまだ未コーティングの半分に、銅交換されたゼオライトから成る材料帯域を備え付け、そうして2つの材料帯域がオーバーラップ帯域を持たずに接した。
【0063】
定置モデルガステストにおいて、そのようにして製造した触媒H1を試験した。その際、比較例1の中で記載した同じテスト条件を選択した。該触媒を、鉄交換されたゼオライトを含有しかつ比較的高い温度にある変換プロフィールを有する材料帯域が、貫流するモデルガスと最初に接触しなければならないようにモデルガス反応器中に取り付けた。この測定結果を図6の中で示す。
【0064】
材料帯域の水平配置を有する本発明による触媒H1は、180℃の温度から40%を超える窒素酸化物変換率に達する。81%の最大変換率には、300℃から79〜80%の変換水平域を通過した後に440℃で達する。その後に変換率はやや減少するが、その際、500℃までの試験を行った温度領域中で72%を下回る減少は観察されない。触媒通過後に測定した笑気濃度は、一般に10ppm未満である。
【0065】
この結果より、測定した触媒に関して、細線を引いた面で表示された180℃〜>500℃の変換プロフィールが生まれる。これは従来のSCR触媒に比べて、殊に低温領域に向けて変換プロフィールがかなり拡大したことを意味する。
【0066】
新鮮な状態における変換プロフィール分析を終えた後、本発明による触媒H1を、比較例1により製造した触媒VK1'と一緒に炉の中で熱水条件下において人工老化に供した。老化の継続時間は48時間で、温度は650℃であった。炉の中の雰囲気は、窒素中で酸素10体積%および水蒸気10体積%から成っていた。老化後、2つの触媒を定置モデルガステストにおいて試験し、その際、新たに、比較例1の中で記載した試験条件を用いた。一方で触媒H1の取り付け方向は、モデルガスがまず、鉄交換されたゼオライトを含有する材料帯域を貫流しなければならないように選択した。
【0067】
この試験結果を図7の中で示す。実施例1において示された結果と同様、水平の材料帯域配置を有する本発明による触媒H1についても、VK1'のような従来の触媒からも公知である、低温領域中での窒素酸化物変換率の明らかな低下が観察される。実施例1からの本発明による構造化SCR触媒V1およびV1と異なって、300℃を上回る温度領域中でのVK'の変換レベルは、しかしながらH1により維持されうるかもしくはやや優れることもある。300℃を上回った時、H1は老化後に慣例のSCR触媒と比較して変換率が明らかに改善する。材料帯域の水平配置によって、つまり新鮮状態における拡大した変換プロフィールに加えて、熱水条件下での老化安定性の改善も得られる。
【符号の説明】
【0068】
(1)および(2) 材料帯域
(3) 不活性ハニカム体
(4) 排ガスと最初に接触する比較的高い温度での変換プロフィールを有する材料帯域
(5) SCR反応において触媒活性担体でない場合に、排ガスと続いて接触する比較的低い温度での変換プロフィールを有する材料帯域
(6) 不活性担体
(7) 排ガスと続いて接触する比較的低い温度での変換プロフィールを有する材料帯域としてのSCR反応における触媒活性担体
(8) 材料帯域のオーバーラップ領域
(9) 未コーティングの中間帯域
AおよびB 2つの材料帯域の可能な垂直配置
C オーバーラップ領域を有する不活性担体上での2つの材料帯域の水平配置
DおよびE オーバーラップ領域を持たない不活性担体上での2つの材料帯域の水平配置
F 排ガスと続いて接触する材料帯域がSCR反応における触媒活性担体である時の、部分的なオーバーラップ領域を有する2つの材料帯域の水平配置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
還元剤としてのアンモニアまたはアンモニアに分解されうる化合物の使用下で内燃機関のリーン排ガス中の窒素酸化物を還元するための、場合により触媒不活性担体上に施与されており、かつ排ガスと時間的に連続して接触する複数の触媒活性材料帯域から構成される構造化SCR触媒であって、その際、該材料帯域は、SCR反応の様々の変換プロフィールを示し、その際、浄化されるべき排ガスと最初に接触する材料帯域の変換プロフィールは、浄化されるべき排ガスと続いて接触する材料帯域の変換プロフィールより高い温度にある、前記構造化SCR触媒において、浄化されるべき排ガスと最初に接触する帯域が、鉄交換されたゼオライトを含有し、かつ浄化されるべき排ガスと続いて接触する材料帯域が、遷移金属交換されたゼオライトまたは五酸化バナジウム、三酸化タングステンおよび二酸化チタンまたはそれらの組み合わせ物から成る群から選択された遷移金属酸化物を含有するか、または遷移金属交換されたゼオライトおよび五酸化バナジウム、三酸化タングステンおよび二酸化チタンまたはそれらの組み合わせ物から成る群から選択された遷移金属酸化物を含有することを特徴とする、還元剤としてのアンモニアまたはアンモニアに分解されうる化合物の使用下で内燃機関のリーン排ガス中の窒素酸化物を還元するための構造化SCR触媒。
【請求項2】
白金族金属を含有しないことを特徴とする、請求項1記載の構造化SCR触媒。
【請求項3】
浄化されるべき排ガスと最初に接触する材料帯域の変換プロフィールが350℃〜500℃の温度領域中にあることを特徴とする、請求項2記載の構造化SCR触媒。
【請求項4】
浄化されるべき排ガスと続いて接触する材料帯域の変換プロフィールが100℃〜400℃の温度領域中にあることを特徴とする、請求項2記載の構造化SCR触媒。
【請求項5】
遷移金属交換されたゼオライトが、銅、マンガン、コバルト、ニッケル、銀および金またはそれらの組み合わせ物から成る群から選択された遷移金属を含有することを特徴とする、請求項4記載の構造化SCR触媒。
【請求項6】
遷移金属交換されたゼオライトが銅を含有することを特徴とする、請求項5記載の構造化SCR触媒。
【請求項7】
材料帯域が垂直に重ねて配置されており、その際、上の層が、浄化されるべき排ガスと最初に接触する材料帯域であることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の構造化SCR触媒。
【請求項8】
浄化されるべき排ガスと続いて接触する材料帯域が、上の層と、担体として用いられるハニカム体との間に配置されていることを特徴とする、請求項7記載の構造化SCR触媒。
【請求項9】
浄化されるべき排ガスと続いて接触する材料帯域が、担体として用いられるハニカム体と同一物であることを特徴とする、請求項7記載の構造化SCR触媒。
【請求項10】
材料帯域の間に、遷移金属原子に対して拡散バリヤーとして作用する別のコーティングが配置されていることを特徴とする、請求項7から9までのいずれか1項記載の構造化SCR触媒。
【請求項11】
コーティングが主として、交換されなかったゼオライト("H−ゼオライト")またはアンモニウム交換されたゼオライトまたはその組み合わせ物を含有することを特徴とする、請求項10記載の構造化SCR触媒。
【請求項12】
材料帯域が、排ガスの流方向に連続して配置されていることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の構造化SCR触媒。
【請求項13】
材料帯域が、担体として用いられるハニカム体上に配置されていることを特徴とする、請求項12記載の構造化SCR触媒。
【請求項14】
材料帯域が、流方向で0〜5ミリメートルの縦伸びを有するオーバーラップ領域を有することを特徴とする、請求項13記載の構造化SCR触媒。
【請求項15】
材料帯域の間に、流方向で0〜5ミリメートルの縦伸びを有するハニカム体の未コーティング部分が配置されていることを特徴とする、請求項13記載の構造化SCR触媒。
【請求項16】
浄化されるべき排ガスと最初に接触する材料帯域が、ハニカム体の長さの5〜95%を占めることを特徴とする、請求項13記載の構造化SCR触媒。
【請求項17】
請求項1から16までのいずれか1項記載の構造化SCR触媒を含有する排ガス浄化装置。
【請求項18】
還元剤としてのアンモニアまたはアンモニアに分解されうる化合物の使用下で内燃機関のリーン排ガスから窒素酸化物を除去するための、請求項1から16までのいずれか1項記載の構造化SCR触媒の使用。
【請求項19】
還元剤としてのアンモニアまたはアンモニアに分解されうる化合物の使用下で内燃機関のリーン排ガスから窒素酸化物を除去するための、請求項16記載の構造化SCR触媒の使用であって、その際、該触媒は、350℃を超えない温度で主として運転され、かつ浄化されるべき排ガスと最初に接触する材料帯域が、ハニカム体の長さの5〜50%を占める、請求項16記載の構造化SCR触媒の使用。
【請求項20】
還元剤としてのアンモニアまたはアンモニアに分解されうる化合物の使用下で内燃機関のリーン排ガスから窒素酸化物を除去するための、請求項16記載の構造化SCR触媒の使用であって、その際、該触媒は、350℃を上回る温度で主として運転され、かつ浄化されるべき排ガスと最初に接触する材料帯域が、ハニカム体の長さの50〜95%を占める、請求項16記載の構造化SCR触媒の使用。
【請求項1】
還元剤としてのアンモニアまたはアンモニアに分解されうる化合物の使用下で内燃機関のリーン排ガス中の窒素酸化物を還元するための、場合により触媒不活性担体上に施与されており、かつ排ガスと時間的に連続して接触する複数の触媒活性材料帯域から構成される構造化SCR触媒であって、その際、該材料帯域は、SCR反応の様々の変換プロフィールを示し、その際、浄化されるべき排ガスと最初に接触する材料帯域の変換プロフィールは、浄化されるべき排ガスと続いて接触する材料帯域の変換プロフィールより高い温度にある、前記構造化SCR触媒において、浄化されるべき排ガスと最初に接触する帯域が、鉄交換されたゼオライトを含有し、かつ浄化されるべき排ガスと続いて接触する材料帯域が、遷移金属交換されたゼオライトまたは五酸化バナジウム、三酸化タングステンおよび二酸化チタンまたはそれらの組み合わせ物から成る群から選択された遷移金属酸化物を含有するか、または遷移金属交換されたゼオライトおよび五酸化バナジウム、三酸化タングステンおよび二酸化チタンまたはそれらの組み合わせ物から成る群から選択された遷移金属酸化物を含有することを特徴とする、還元剤としてのアンモニアまたはアンモニアに分解されうる化合物の使用下で内燃機関のリーン排ガス中の窒素酸化物を還元するための構造化SCR触媒。
【請求項2】
白金族金属を含有しないことを特徴とする、請求項1記載の構造化SCR触媒。
【請求項3】
浄化されるべき排ガスと最初に接触する材料帯域の変換プロフィールが350℃〜500℃の温度領域中にあることを特徴とする、請求項2記載の構造化SCR触媒。
【請求項4】
浄化されるべき排ガスと続いて接触する材料帯域の変換プロフィールが100℃〜400℃の温度領域中にあることを特徴とする、請求項2記載の構造化SCR触媒。
【請求項5】
遷移金属交換されたゼオライトが、銅、マンガン、コバルト、ニッケル、銀および金またはそれらの組み合わせ物から成る群から選択された遷移金属を含有することを特徴とする、請求項4記載の構造化SCR触媒。
【請求項6】
遷移金属交換されたゼオライトが銅を含有することを特徴とする、請求項5記載の構造化SCR触媒。
【請求項7】
材料帯域が垂直に重ねて配置されており、その際、上の層が、浄化されるべき排ガスと最初に接触する材料帯域であることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の構造化SCR触媒。
【請求項8】
浄化されるべき排ガスと続いて接触する材料帯域が、上の層と、担体として用いられるハニカム体との間に配置されていることを特徴とする、請求項7記載の構造化SCR触媒。
【請求項9】
浄化されるべき排ガスと続いて接触する材料帯域が、担体として用いられるハニカム体と同一物であることを特徴とする、請求項7記載の構造化SCR触媒。
【請求項10】
材料帯域の間に、遷移金属原子に対して拡散バリヤーとして作用する別のコーティングが配置されていることを特徴とする、請求項7から9までのいずれか1項記載の構造化SCR触媒。
【請求項11】
コーティングが主として、交換されなかったゼオライト("H−ゼオライト")またはアンモニウム交換されたゼオライトまたはその組み合わせ物を含有することを特徴とする、請求項10記載の構造化SCR触媒。
【請求項12】
材料帯域が、排ガスの流方向に連続して配置されていることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の構造化SCR触媒。
【請求項13】
材料帯域が、担体として用いられるハニカム体上に配置されていることを特徴とする、請求項12記載の構造化SCR触媒。
【請求項14】
材料帯域が、流方向で0〜5ミリメートルの縦伸びを有するオーバーラップ領域を有することを特徴とする、請求項13記載の構造化SCR触媒。
【請求項15】
材料帯域の間に、流方向で0〜5ミリメートルの縦伸びを有するハニカム体の未コーティング部分が配置されていることを特徴とする、請求項13記載の構造化SCR触媒。
【請求項16】
浄化されるべき排ガスと最初に接触する材料帯域が、ハニカム体の長さの5〜95%を占めることを特徴とする、請求項13記載の構造化SCR触媒。
【請求項17】
請求項1から16までのいずれか1項記載の構造化SCR触媒を含有する排ガス浄化装置。
【請求項18】
還元剤としてのアンモニアまたはアンモニアに分解されうる化合物の使用下で内燃機関のリーン排ガスから窒素酸化物を除去するための、請求項1から16までのいずれか1項記載の構造化SCR触媒の使用。
【請求項19】
還元剤としてのアンモニアまたはアンモニアに分解されうる化合物の使用下で内燃機関のリーン排ガスから窒素酸化物を除去するための、請求項16記載の構造化SCR触媒の使用であって、その際、該触媒は、350℃を超えない温度で主として運転され、かつ浄化されるべき排ガスと最初に接触する材料帯域が、ハニカム体の長さの5〜50%を占める、請求項16記載の構造化SCR触媒の使用。
【請求項20】
還元剤としてのアンモニアまたはアンモニアに分解されうる化合物の使用下で内燃機関のリーン排ガスから窒素酸化物を除去するための、請求項16記載の構造化SCR触媒の使用であって、その際、該触媒は、350℃を上回る温度で主として運転され、かつ浄化されるべき排ガスと最初に接触する材料帯域が、ハニカム体の長さの50〜95%を占める、請求項16記載の構造化SCR触媒の使用。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公表番号】特表2009−542435(P2009−542435A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518729(P2009−518729)
【出願日】平成19年6月6日(2007.6.6)
【国際出願番号】PCT/EP2007/005006
【国際公開番号】WO2008/006427
【国際公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(501399500)ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト (139)
【氏名又は名称原語表記】Umicore AG & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Rodenbacher Chaussee 4,D−63457 Hanau,Germany
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月6日(2007.6.6)
【国際出願番号】PCT/EP2007/005006
【国際公開番号】WO2008/006427
【国際公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(501399500)ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト (139)
【氏名又は名称原語表記】Umicore AG & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Rodenbacher Chaussee 4,D−63457 Hanau,Germany
【Fターム(参考)】
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