説明

還元剤の拡散器

【課題】従来に比べて析出物が発生し難い構造を有する還元剤の拡散器を提案する。
【解決手段】本提案に係る拡散器10は、エンジンの排気系に還元触媒を配置し、該還元触媒よりも上流の排気中にノズルから還元剤を噴射するようにした排気浄化装置で使用する拡散器であって、還元触媒上流の排気管4の内径よりも小径の外径とし、両端開口の一方を排気の流入口11inとし且つ他方を排気の流出口11outとして使用する筒部11と、流入口11inから離して筒部11の中に設けられ、筒部内を流れる排気を掻き混ぜる拡散部12と、を含んで構成され、筒部11の流入口側端部分11aを排気管4に接続することにより排気管内に設置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの排気浄化装置であって、還元触媒の上流で排気中に還元剤(その前駆体を含む)を噴射する方式の排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの排気に含まれるNOx(窒素酸化物)を除去する排気浄化装置としてSCR式の排気浄化装置が使用されている。この排気浄化装置は、排気系に還元触媒を配設し、該還元触媒の上流において排気中にノズルから還元剤を噴射して添加することにより、排気中のNOxと還元剤とを触媒還元反応させて、NOxを無害成分に浄化処理するものである。その還元反応は、NOxと反応性が良好なアンモニアを用いるものが主流であり、このための還元剤としては、排気熱及び排気中の水蒸気により加水分解してアンモニアを容易に発生する尿素水溶液やアンモニア水溶液などの液体還元剤が用いられる。
【0003】
このタイプの排気浄化装置では、排気中に還元剤を均一拡散させるため、特許文献1にあるように、還元触媒上流の排気管中にミキサと呼ばれる拡散板を設けて排気を掻き混ぜ、ノズルから噴射された還元剤の拡散を促す技術が提案されている。拡散板は、特許文献1のようにパンチング孔を多数開けた金属板や格子状に形成した金属板、あるいは、特許文献2に開示されるような多数のフィンを切り立てた金属板である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−077957号公報
【特許文献2】特開2009−024654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記背景技術のように還元触媒上流の排気管中に拡散板を設ける場合、ノズルから噴射された還元剤が十分に分散する前に拡散板にぶつかることに起因して(還元剤濃度の片寄りが排気中にあるようなとき)、当該拡散板及びその手前の排気通路壁面に析出物(例えば尿素の結晶)が付着することがある。この析出物は排気温度の上昇で溶解し得るが、排気管を狭めて圧力損失等を招くことが懸念されるので、できるだけ析出を抑制した方が好ましい。
【0006】
本発明はこの点に着目したもので、従来に比べて析出物が発生し難い構造を有する還元剤の拡散器を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために提案する還元剤の拡散器は、
エンジンの排気系に還元触媒を配置し、該還元触媒よりも上流の排気中にノズルから還元剤を噴射するようにした排気浄化装置で使用する拡散器であって、
前記還元触媒上流の排気管の内径よりも小径の外径とし、両端開口の一方を排気の流入口とし且つ他方を排気の流出口として使用する筒部と、前記流入口から離して前記筒部内に設けられ、当該筒部内を流れる排気を掻き混ぜる拡散部と、を含んで構成され、
前記筒部の流入口側端部分を前記排気管に接続することにより前記排気管内に設置される。
【発明の効果】
【0008】
上記提案に係る還元剤の拡散器は、還元触媒上流の排気管よりも細くした筒部内に、流入口から離して拡散部を設けている。当該筒部は、流入口側端部分を排気管に接続して排気管内に設置され、還元剤噴射後の排気を流入口から筒部内へ全量流入させて流径を細くするので、排気の流速を筒部の入口部分で増加させることができ、該流速の上がった排気を流入口から離れた拡散部へ送ることができる。流速が速まることで還元剤の分散が促されるので、拡散部へ到達するときには還元剤の分散が進み、筒部内において発生する析出物は、従来に比べて抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】拡散器を適用する排気浄化装置の構成例を示す概略図。
【図2】拡散器の第1実施形態を示す断面図。
【図3】拡散器の第2実施形態を示す断面図。
【図4】拡散器の第3実施形態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に、エンジンの排気系に組み込まれる排気浄化装置の構成例を2つ示している。図1AはPM捕集フィルタと還元触媒を直線状に並べたタイプ、図1Bは、排気流路を折り返してPM捕集フィルタと還元触媒をS字状に並べたタイプの排気浄化装置である。
【0011】
当該排気浄化装置は、NOx除去に加えてPM捕集の機能も備えたSCR式の排気浄化装置であり、エンジンの排気系において、排気流の上流から下流へ、酸化触媒(DOC)、PM捕集フィルタ(DPF)、還元触媒(SCR)、アンモニアスリップ触媒(ASC)を直列に並べてある(順番はこれに限らない)。このうち、酸化触媒及びPM捕集フィルタは上流側の第1の筐体1内に収容され、還元触媒及びアンモニアスリップ触媒は下流側の第2の筐体2内に収容される。還元剤(前駆体を含む)としては例えば尿素水溶液が使用され、当該還元剤を排気中へ噴射するノズル3が、第1及び第2の筐体1,2を連結する連通管としての排気管4に設けられている。
【0012】
この還元触媒上流の排気管4においてノズル3の下流側に、還元剤の拡散器10が設置される。拡散器10は、筒部11及び拡散部12を含んで構成され、筒部11の流入口を上流側、流出口を下流側にして、排気管4内に設置されている。この拡散器10の第1実施形態について、詳細を図2に示す。
【0013】
第1実施形態に係る拡散器10は、筒部11が真っ直ぐな円筒管で、その両端開口の一方が流入口11in、他方が流出口11outとして使用され、筒部11の外径は排気管4の内径よりも小径である。筒部11は、流入口側端部分11aが、周設されたフランジ11bを介して排気管4に接続されており、排気管4を流れる還元剤を含んだ排気が全量、流入口11inから筒部11内へ流入する。筒部11の内径は排気管4の内径よりも小径なので、排気管4から筒部11へ流入する排気の流径が細り、したがって筒部11内で排気の流速は増加する。
【0014】
筒部11内には、流入口11inから離して、すなわち本実施形態の場合は流入口11inから最も離れた流出口側端部分11cに、流出口11outを塞ぐようにして拡散部12が設けられている。拡散部12は、例えば前述の特許文献2にあるような多数のフィンを切り立てた拡散板を使用して形成されたもので、筒部11内を流れてきた排気を掻き混ぜて、還元剤を拡散させる働きをもつ。拡散部12の位置は、図中に点線で示すように筒部11の途中でもよいが、流入口11inからできるだけ離しておいた方が析出物抑制の点では好ましい。このためには、筒部11の軸方向の長さもできるだけ長い方がよく、図示のように流出口側端部分11cに拡散部12が設けられる場合、一例として図1Bの排気浄化装置では、排気管4が還元触媒へ向かって折れ曲がる直前に拡散部12を位置させることのできる長さとする。
【0015】
筒部11を排気管4へ接続するフランジ11bは、筒部11の流入口側端部分11aの周縁外周に全周に渡って周設されたもので、排気管4の外周に周設されたフランジ部4aに、ガスケット4bを介在させて挟み込まれてボルト等で締め付け固定される。すなわち、排気管4は、このフランジ部4aでツーピースに分割されており、筒部11のフランジ11b及びガスケット4bを挟み込んでフランジ部4aの締結により互いに接続される。
【0016】
流入口11inを囲繞するフランジ11bが排気管4へ固定されることにより、当該フランジ11bより下流において、筒部11をとり巻くように断熱層13が形成される。すなわち、筒部11の外周より突出したフランジ11bが排気管4へ固定されるので、筒部11をとり巻くように、筒部11の外周面と排気管4の内周面との間に隙間が形成される。この隙間は、流れのない空間(空気層)となるので、筒部11をとり巻く熱伝導の低い層が形成され、断熱層13として機能する。排気管4は、走行風に曝されることにより冷やされるが、断熱層13が筒部11をとり巻いていることにより、筒部11内を流れる排気は保温される。排気が保温されることで、触媒床温の温度低下を抑制することができるので、還元触媒における浄化効率が向上する。
【0017】
以上の第1実施形態に係る拡散器10によれば、筒部11が、流入口側端部分11aを排気管4に接続して管内設置され、ノズル3による還元剤噴射後の排気を流入口11inから内部へ全量流入させて流径を細くするので、排気の流速を筒部11の入口部分で増加させることができ、該流速の上がった排気を流入口11inから離れた拡散部12へ送ることができる。流速が速まることで還元剤の分散が促されるので、拡散部12へ到達するときには還元剤の分散が進む。ノズル3による還元剤噴射位置から拡散部12までの距離を稼ぎ且つ排気流速を上げ、還元剤が十分に分散して排気中に濃度の濃い部分がなくなってから拡散部12により拡散させることが可能となるので、筒部11の内部において発生する析出物は、従来に比べて抑制される。また、筒部11内に析出物が発生し堆積したとしても、当該拡散器10をまるごと交換すれば対処できるので、整備が容易である。
【0018】
図3に、拡散器10の第2実施形態を示す。第2実施形態の拡散器10は、筒部11の流入口側端部分11a’がラッパ状に拡がっている形態をもつ。その他は第1実施形態と同じである。流入口側端部分11a’がラッパ状に拡がっていることにより、排気をスムーズに筒部11内へ導く漏斗状の流入口11inが形成される。第1実施形態の場合、フランジ11bを周設した流入口側端部分11aが出隅となっているので、この部分の排気の流れが悪くなるが、第2実施形態ではここの流れが改善される。
【0019】
図4には、拡散器10の第3実施形態を示す。第3実施形態の拡散器10は、筒部11の流入口側端部分11a’が第2実施形態と同じくラッパ状に拡がっていると共に、筒部11の流出口側端部分11cが拡散部12よりもさらに下流側へ延長され、絞り加工されている。すなわち、筒部11において拡散部12よりも下流部分の内径が縮径され、拡散部12の下流側に縮径部分11dが形成されている。縮径部分11dを通過するときに排気の流速が上がるので、排気中の還元剤拡散がいっそう促進される。縮径部分11d以外は第1及び第2実施形態と同じである。
【符号の説明】
【0020】
10 拡散器
11 筒部
11a,11a’ 流入口側端部分
11b フランジ
11c 流出口側端部分
11d 縮径部分
11in 流入口
11out 流出口
12 拡散部
13 断熱層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気系に還元触媒を配置し、該還元触媒よりも上流の排気中にノズルから還元剤を噴射するようにした排気浄化装置で使用する、還元剤の拡散器であって、
前記還元触媒上流の排気管の内径よりも小径の外径とし、両端開口の一方を排気の流入口とし且つ他方を排気の流出口として使用する筒部と、
前記流入口から離して前記筒部内に設けられ、当該筒部内を流れる排気を掻き混ぜる拡散部と、
を含んで構成され、
前記筒部の流入口側端部分を前記排気管に接続することにより前記排気管内に設置される、拡散器。
【請求項2】
前記筒部の流入口側端部分の外周にフランジが周設され、該フランジが前記排気管に固定されることにより、当該フランジより下流において前記筒部の外周面と前記排気管の内周面との間に、前記筒部をとり巻く断熱層が形成される、請求項1記載の拡散器。
【請求項3】
前記筒部の流入口側端部分がラッパ状に拡がっている、請求項1又は請求項2記載の拡散器。
【請求項4】
前記筒部は、前記拡散部よりも下流部分の内径が縮径されている、請求項1〜3のいずれかに記載の拡散器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−127311(P2012−127311A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−281195(P2010−281195)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000003908)UDトラックス株式会社 (1,028)
【出願人】(000220804)東京濾器株式会社 (84)
【Fターム(参考)】