説明

還流式紙幣処理装置

【課題】金種別に紙幣を収容する還流式紙幣収納部、回収カセット、及び補充カセットを備えた還流式紙幣処理装置において、装置構成を複雑化することなく、始業時における釣銭用紙幣の補充作業を効率化する。
【解決手段】搬送経路5上を搬送されてきた紙幣を金種毎に出入れ自在に収容する複数の還流式紙幣収納部10、12と、搬送経路と連通したカセット装着部15に択一的に着脱される補充カセット20、及び回収カセット30と、制御手段と、を備え、補充カセットはカセット装着部に装着された時に収容した紙幣を補充カセット外に繰り出す繰出し機構23を備え、制御手段は、補充紙幣を搬送経路を経由して還流式紙幣収納部に収納する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は例えば紙幣を入金する機能を備えた各種自動販売機、入出金装置、両替機等の紙幣取扱装置に装備される紙幣処理装置の改良に関し、例えば金種別に紙幣を収容する還流式紙幣収納部を複数備えた還流式紙幣処理装置において、装置構成を複雑化することなく、始業時における釣銭用紙幣の補充作業を効率化することができる技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
投入された紙幣を受け入れる入金機能や、釣り銭や払出し金として紙幣を払出す出金機能を備えた紙幣処理装置は各種自動販売機、入出金装置、両替機等に装備されており、この紙幣処理装置には始業時に準備した紙幣、或いは稼働中に投入された紙幣を金種別に保管するための紙幣収納部が装備されている。
紙幣収納部には、始業時に予め釣銭用に収納しておいた紙幣の他に、装置の稼働中に利用者が投入した紙幣を一旦収納する一方で、これらの紙幣を釣銭とするために外部へ排出する機能を備えた還流式の紙幣収納部と、終業時等において紙幣処理装置内の全ての紙幣を回収する回収用紙幣収納部(回収カセット)と、がある。
【0003】
還流式紙幣収納部が始業時等において空の状態にある場合には、釣銭用の紙幣を補充する必要がある。我が国では五千円、一万円札等の高額紙幣に対する釣銭として多用される千円札を千円札用の還流式紙幣収納部に補充する作業を始業時に実施するのが通常である。この補充作業では、補充用の紙幣を収容した補充カセットを装置本体にセットし、補充カセットに装備された繰出し機構を駆動して千円札を千円札用の還流式紙幣収納部に補充するのが一般である。
回収カセットは、金種毎に設けた還流式紙幣収納部とは別個に装置内に併設され、各還流式紙幣収納部から全金種を一括して回収する。
このように還流式紙幣処理装置においては回収カセットと補充カセットが併用されているが、従来は、装置本体内に回収カセットと補充カセットを常時搭載したタイプが主流であった。しかし、このタイプにあっては、運用中には使用しない補充カセットが常備されているためにこのスペース分だけ装置構成が大型化するという欠点があった。
この不具合に対処するために、一つのカセットに回収カセットと補充カセットの機能を併有させたタイプが開発、実施されてきた(特許文献1)。しかし、このタイプにあっては、一つのカセットに回収機能と補充機能(繰出し機能)を集約した構成となるため、構造が複雑化し、コストアップを招く等の問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3751404号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、金種別に紙幣を収容する還流式紙幣収納部、回収カセット、及び補充カセットを備えた還流式紙幣処理装置において、装置構成を複雑化することなく、始業時における釣銭用紙幣の補充作業を効率化することができる技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1の発明に係る還流式紙幣処理装置は、紙幣を入出金する入出金部と、該入出金部から受け入れた紙幣を装置本体内に搬送する搬送経路と、搬送経路上を搬送されてきた紙幣を金種毎に出入れ自在に収容する複数の還流式紙幣収納部と、前記搬送経路と連通したカセット装着部と、前記カセット装着部に択一的に着脱される補充カセット、及び回収カセットと、前記カセット装着部に装着されたカセットが補充カセットと回収カセットの何れであるかを判定する手段と、制御手段と、を備え、前記補充カセットは、前記カセット装着部に装着された時に収容した紙幣を該補充カセット外に繰り出す繰出し機構を備え、前記制御手段は、前記カセット装着部に補充カセットが装着された時、前記補充カセットから繰り出された紙幣を前記搬送経路を経由して前記還流式紙幣収納部に収納するように制御することを特徴とする。
請求項2の発明は、前記カセット装着部に装着された前記補充カセットから補充紙幣が繰り出される際に、一旦該補充紙幣を受け入れる補充紙幣判定部を備え、前記補充紙幣判定部は、前記補充カセットから繰り出されてきた補充紙幣を受け入れるスイッチバック部と、該スイッチバック部に導入された補充紙幣の重送、及び金種を判定するセンサと、該補充紙幣をスイッチバック部に導入したり前記搬送経路に送出するスイッチバック駆動機構と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
請求項3の発明は、紙幣を入出金する入出金部と、該入出金部から受け入れた紙幣を装置本体内に搬送する搬送経路と、該搬送経路に沿って紙幣を搬送する搬送機構と、前記搬送経路に導入されてきた紙幣を識別する識別部と、該搬送経路上を搬送されてきた紙幣を金種毎に出入れ自在に収容する複数の還流式紙幣収納部と、前記搬送経路と連通したカセット装着部と、前記カセット装着部に択一的に着脱される補充カセット、及び回収カセットと、前記カセット装着部に装着されたカセットが補充カセットと回収カセットの何れであるかを判定する手段と、前記カセット装着部に装着された前記補充カセットから補充紙幣が繰り出される際に一旦該補充紙幣を受け入れる補充紙幣判定部と、制御手段と、を備え、前記補充カセットは、前記カセット装着部に装着された時に収容した紙幣を該補充カセット外に繰り出す繰出し機構を備え、前記回収カセットは、前記カセット装着部に装着された時に前記還流式紙幣収納部から前記搬送経路を経由して搬送されてきた紙幣を内部に回収する回収機構を備え、前記制御手段は、前記カセット装着部に補充カセットが装着された時、前記補充カセットから繰り出された紙幣を前記搬送経路を経由して前記還流式紙幣収納部に収納するように前記搬送機構を制御することを特徴とする。
請求項4の発明は、前記補充紙幣判定部は、前記補充カセットから繰り出されてきた補充紙幣を受け入れるスイッチバック部と、該スイッチバック部に導入された補充紙幣の重送、及び金種を判定するセンサと、該補充紙幣をスイッチバック部に導入したり前記搬送経路に送出するスイッチバック駆動機構と、を備えていることを特徴とする。
【0008】
請求項5の発明は、前記カセット装着部にカセットが装着された時に、該カセットの装着状態を維持するロック機構と、ロック機構によるロック解除動作と連動して該カセットの装着状態を解除させるカセット押出機構と、前記補充カセットに収容されている紙幣の有無を検知する補充用紙幣検知手段と、を備え、前記制御手段は、前記カセット装着部に前記補充カセットが装着され該補充カセットから補充紙幣が繰り出されている時に、前記補充用紙幣検知手段が紙幣無しを検知、又は前記還流式紙幣収納部に収容された紙幣が規定枚数に達すると、前記ロック機構を解除し、前記カセット押出機構によって前記補充カセットの装着状態を解除することを特徴とする。
請求項6の発明では、前記制御手段は、前記カセット装着部に前記回収カセットが装着された状態で回収動作が開始されると、前記還流式紙幣収納部に収納された紙幣を前記搬送経路を経由して前記回収カセットに搬送するよう制御することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係る還流式紙幣処理装置の概略構成図であり、(a)は補充時の紙幣搬送ルートを、(b)は補充時のリジェクト紙幣搬送ルートを示した図である。
【図2】補充カセットの内部構造を示す説明図である。
【図3】(a)(b)及び(c)は還流式紙幣処理装置の外観図、一部透視図、及び一部拡大図である。
【図4】(a)(b)及び(c)は補充カセットのロック機構の構成、及び作動手順を示す説明図である。
【図5】補充カセットがセットされた場合の紙幣補充手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を図面に示した実施の形態により詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る還流式紙幣処理装置の概略構成図であり、(a)は補充時の紙幣搬送ルートを、(b)は補充時のリジェクト紙幣搬送ルートを示している。また、図2は補充カセットの内部構造を示す説明図であり、図3(a)(b)及び(c)は還流式紙幣処理装置の外観図、一部透視図、及び一部拡大図であり、図4(a)(b)及び(c)は補充カセットのロック機構の構成、及び作動手順を示す説明図であり、図5は補充カセットがセットされた場合の紙幣補充手順を示すフローチャートである。
【0011】
還流式紙幣処理装置(以下、紙幣処理装置、という)1は、例えば食券等の自動販売機(券売機)に装備されて紙幣の受け入れ、釣銭等としての紙幣の払い出しの処理を行う機能を有する。
紙幣処理装置1は、外装体2と、金種の異なる紙幣を一枚ずつ受入れ可能であると共に紙幣束として一括払出しが可能な入出金部3と、入出金部3から受け入れた紙幣を装置本体内に搬送する搬送経路5と、搬送経路5に沿って紙幣を搬送する駆動力を生成するための駆動力を生成、伝達するための図示しないモータ、ソレノイド、及びローラ、ベルト、ゲートから成る搬送機構6と、入出金部3の直下流側の搬送経路上に配置されて一枚ずつ給送されてくる紙幣の真贋、金種等を判定する識別部7と、搬送経路5上を搬送されてきた紙幣を金種毎に出入れ自在に収容する第1及び第2の還流式紙幣収納部10、12と、搬送経路5と連通したカセット装着部15と、カセット装着部15に択一的に着脱される補充カセット20、及び回収カセット30と、カセット装着部15に装着された補充カセット20から一枚ずつ給送されてくる紙幣を一旦受け入れて重送の有無、金種等を識別判定し問題がない場合にはスイッチバック式に金種別に各還流式紙幣収納部10、12へ搬送すると共に問題がある場合には補充カセット20内のリジェクトボックス24にスイッチバック搬送する補充紙幣判定部40と、前記カセット装着部に装着されたカセットが補充カセットと回収カセットの何れであるかを判定する手段と、入出金部3、搬送機構6、還流式紙幣収納部10、12等を制御する制御手段80と、を備える。
【0012】
入出金部3は一枚ずつ投入された紙幣を順次搬送経路5に送り出すと共に、釣銭として払い出される紙幣(束)を排出する機構を備えている。
搬送経路5及び搬送機構6は、入出金部3から投入された紙幣を所定のルートにて搬送することにより、釣り銭として払い出しを予定している紙幣(五千円、一千円)を第1、及び第2の還流式紙幣収納部10、12に送り込む仕分け搬送機能と、カセット装着部15に装着された補充カセット20から給送されてきた補充紙幣を第1及び第2の還流式紙幣収納部10、12に金種別に搬送する補充紙幣搬送機能と、第1及び第2の還流式紙幣収納部10、12から夫々一枚ずつ繰り出されてきた紙幣又は、入出金部から投入された釣銭として払い出さない紙幣(一万円、二千円)をカセット装着部15に装着された回収カセット30内に送り込む回収紙幣搬送機能と、を併有している。
制御手段80からの制御によって各ローラ、ベルト、ゲート11を切り替え駆動することにより、所定のタイミングにて上記の各搬送機能を実現することができる。
【0013】
第1の還流式紙幣収納部10は、例えば五千円紙幣専用であり、搬送経路5を経由して一旦受け入れた五千円紙幣を、紙幣回収時に搬送経路5に一枚ずつ送出する還流機能を有している。
第2の還流式紙幣収納部12は、釣銭として多用される紙幣、例えば千円紙幣用であり、搬送経路5を経由して一旦受け入れた千円紙幣を搬送経路5に一枚ずつ送出する還流機能を有している。釣銭を払い出す場合には搬送経路5に一枚ずつ送出された千円紙幣は順次ドラムに巻き付けられて重なり、紙幣束となって入出金部3に搬送される。また、紙幣回収時には還流式紙幣収納部10、12より搬送経路5に一枚ずつ送出された紙幣が、順次ドラムに巻き付けられて重なり、紙幣束となって回収カセット30に搬送され収容される。
第1及び第2の還流式紙幣収納部10、12は、100枚程度の紙幣を収容できる。
補充カセット20と回収カセット30は、カセット装着部15内に個別に装着可能となるように、外観形状は略同等に構成されている。
補充カセット20は、多数枚(例えば、800枚以上)の補充紙幣を収容する補充紙幣収容部21と、カセット装着部15に装着された時に補充紙幣収容部21内に収容された紙幣P1を補充カセット外(補充紙幣判定部40)へ繰り出す繰出し機構23と、補充紙幣判定部40においてリジェクトされて戻されてきた補充紙幣を収容するリジェクトボックス24(収容量は20枚程度)と、を有する。
【0014】
図2に示すように、補充紙幣収容部21は常時上方に付勢されたバックアッププレート22aを備え、バックアッププレート22a上に補充用紙幣P1を積層している。繰出し機構23は、バックアッププレート22a上の紙幣束の最上部に接して一枚ずつ取り出す取出しローラ23aと、取出しローラによって取り出されてきた紙幣を一枚ずつ分離して補充紙幣判定部40へ向けて給送する分離ローラ対23bと、正逆転可能な給送ローラ23cと、切替ゲート23d等を有する。ローラ23a、23bは補充カセット20内に搭載されたモータM1、M2によって駆動され、給送ローラ23cは紙幣処理装置本体の駆動力により駆動される。切替ゲート23dは、図示しないソレノイドにより駆動される。装置本体側には、繰出し機構23から繰り出された補充紙幣を補充紙幣判定部40へ送り込んだり、補充紙幣判定部40内の紙幣を搬送経路5へ送り出すために回動する切替ゲート11aが配置されており、この切替ゲート11aは図示しないソレノイドによって駆動される。なお、センサS1はバックアッププレート22a上の補充用紙幣P1の有無を検知するエンドセンサ(補充用紙幣検知手段)であり、センサS2はリジェクトボックス満杯検知センサであり、センサS3は繰出し検知センサである。
制御手段80は、補充紙幣を収容した補充カセット20がカセット装着部15に装着されたことが検知されたとき、この状態で繰出し機構23は、補充紙幣収容部21内の補充紙幣を一枚ずつ繰り出し、切替ゲート11aを駆動することによって補充紙幣判定部40に送込み、センサ44による検知によって正規の紙幣と判定された場合には切替ゲート11aを切り換えて搬送経路5へスイッチバック搬送して各還流式紙幣収納部10、12に送り込み、正規の紙幣ではない場合にはリジェクトボックス24に送り込むように切替ゲート11a及び給送ローラ23cを駆動する。
【0015】
図1(a)中に内部構成を示した回収カセット30は、カセット装着部15に装着された時に搬送経路5を経由して搬送されてきた紙幣を収容する回収機構31と、回収紙幣収容部32と、を備えている。回収機構31は、搬送経路5から送り込まれてきた紙幣を回収紙幣収容部32に送り込むローラ群31aと、ローラ群31aを駆動する図示しないモータを有する。回収紙幣収容部32は、昇降自在で常時上方に付勢されたバックアッププレート32aと、バックアッププレート上の紙幣束の上面に接する固定部材としてのフォーク32bと、フォークに設けた切欠きを介して最上面の紙幣を押し下げる昇降自在な加圧部材32cと、を有する。回収機構31を構成するローラ群31aによって送り込まれてきた紙幣は一旦フォーク32b上にて停止し、この状態で加圧部材32cが下降して紙幣上面を押圧することにより紙幣は変形しながらフォークの開口を経由してバックアッププレート上に移載される。
カセット装着部15は装置筐体の底部に設けられた空所であり、その内壁には補充カセット20と回収カセット30の奥壁に夫々設けられた端子20A、30Aと接続されるコネクタ部16を備えている。コネクタ部16に対して、補充カセット20と回収カセット30の何れか一方を完全に装着することにより端子20A、又は30Aとコネクタ部16とが電気的な接続状態となり、各カセット内の駆動部に対して電力が供給されると共に、制御手段との間で信号の授受が行われることとなる。また、コネクタ部16と各端子との接続によって得られる電気信号の違いから補充カセット20と回収カセット30の何れが接続されたかを制御手段が判別できるように構成されている。或いは、他の判別用スイッチ(リミットスイッチ、或いはフォトセンサ)を設けて、何れのカセットであるかを判別できるように構成してもよい。
【0016】
また、後述するようにカセット装着部15の近傍には装着された各カセットを機械的にロックするロック機構とカセット押出機構が設けられており、ロック機構によるロック状態が解除された場合には、カセット押出機構が連動して作動し、各カセットをカセット装着部外へ押し出すように構成されている。本例では、制御手段は、補充カセット内の紙幣がエンドになった場合、或いは還流式紙幣収納部10、12が満杯となった際に(或いは、必要枚数に達した時に)、補充動作を停止し、補充カセットを自動的に押し出す。
補充紙幣判定部40は、カセット装着部15内に補充カセット20が装着された状態において、補充カセットから一枚ずつ繰り出されてくる紙幣を一旦受け入れてから逆搬送するスイッチバック部41と、スイッチバック部41に送り込まれてくる紙幣の重送、金種を判定するセンサ44等を備える。スイッチバック部41は、図示しないモータによって駆動されるローラ、ベルト等のスイッチバック駆動機構42と、切替ゲート11aと、を備え、制御手段からの制御によって補充紙幣を正逆両方向へ搬送するように構成されている。切替ゲート11aがスイッチバック部41へガイドする方向に向いている時に繰出し機構23を駆動して紙幣を送り出すことにより当該紙幣はスイッチバック部に導入される。
【0017】
スイッチバック部41に受け入れた紙幣をセンサ44(フォトセンサ等)が検知し、その検知結果によって制御手段が正規の紙幣であると判定した場合には、切替ゲート11aを搬送経路5へガイドする方向に切り換えてスイッチバック部41は紙幣を搬送経路5へ向けて送り出す。その後は、搬送機構6が金種に応じて何れか一方の還流式紙幣収納部10、12に送り込む(図1(a)の太線の搬送経路)。
スイッチバック部41に受け入れた紙幣を制御手段がリジェクトすべき紙幣であると判定した場合には、切替ゲート11aを補充紙幣繰出し時と同じ方向に向けつつ、スイッチバック駆動機構42を駆動して補充カセット20へ戻す。この際、切替ゲート23dの方向をリジェクトボックス24へ向けつつ正逆転ローラ23cを逆転させることにより、リジェクト紙幣はリジェクトボックス24へ収容される(図1(b)の太線の搬送経路)。
なお、スイッチバック式の補充紙幣判定部40は必須ではなく、ユーザーのニーズに応じて省略することができる。補充紙幣判定部40を設けない場合には、補充カセットから繰り出された紙幣は搬送経路5に送り出される。この場合、搬送経路に紙幣の重送、金種を判定するセンサを設け、リジェクトする必要がある場合にはリジェクトボックスに移送し、正常な場合には各還流式紙幣収納部10、12に仕分け搬送する。
【0018】
次に、図3(a)(b)及び(c)、図4(a)(b)及び(c)に基づいて補充カセットのロック機構の構成、及び作動手順について説明する。
本例に係る補充カセットのロック機構50は、図3(b)に示すように、補充カセットの補充紙幣収容部21と繰出し機構23を回避した厚み方向手前側に設けられたカセット側部品と、紙幣処理装置1側に設けられた装置本体側部品とから構成されている。
即ち、カセット側部品は、補充カセットに設けられたロック解除用ソレノイド51と、ロック解除用ソレノイド51のプランジャ51aにより一端を支持された第1のリンク片52と、補充カセットにより中間部に設けた軸支部54aを回動自在に軸支されると共に第1のリンク片52の先端部により一端部54bを回動自在に軸支された第2のリンク片54と、ソレノイドのプランジャ51aを常時突出方向へ付勢する図示しないバネと、第2のリンク片54の他端54cが対面する位置に形成された開口56と、を有する。図4(a)のようにソレノイド51がOFFの時にはバネによってプランジャ51aが突出しているため、第2のリンク片54は水平な姿勢を維持している。(b)のようにソレノイドがオンしてプランジャ51aが引っ込むと、第2のリンク片54の他端54cが開口56から外側へ向けて突出する。
【0019】
次に、装置本体側部品は、装置本体によって基端部60aを上下方向に回動自在に軸支されたロック部材60と、ロック部材60の先端部60bが下降する方向(ロック方向)へ常時付勢する図示しないバネと、補充カセットをカセット装着部15から離脱させる方向(図面左方)へ常時付勢する図示しない弾性部材(カセット押出機構)と、を有する。ロック部材60の中間位置からはロック片61が突設しており、ロック片61にはローラ62が回転自在に軸支されている。カセット装着部15内に補充カセット20が装着されていない状態では、ロック部材60は下降した状態にある。
図4(a)のようにソレノイド51がOFFの状態にある時には第2のリンク片54の他端54cが下降しているため、開口56内にはロック片61が入り込む余地がある。ソレノイド51をOFFにした状態で装置外にある補充カセット20をカセット装着部15内に装着すると、弾性部材に抗して装着する過程で下降状態にあるロック片61が開口56内に入り込み、図4(a)のロック状態となる。
ロック部材60が下降している時にはロック片61に設けた爪部61aが開口56の内周縁に係止(ロック)されるため、補充カセット20を取出し方向(図面左方)へ引き出すことができない。
【0020】
次に、ソレノイド51に通電してONにすると、プランジャ51aが引っ込んで第1のリンク片52を下降させるため、第2のリンク片54の他端54cが開口56へ向けて上昇する。この際、他端54cがロック片61により支持されたローラ62を押し上げるため、図4(b)のように爪部61aと開口56の内周縁から離脱し、ロックが解除された状態となる。ロックが解除されることにより弾性部材による補充カセットを押し出す力が有効となり、補充カセットはカセット装着部15の外部に押し出される。
次に、図4中の符号70はロック解除用として装置本体側に設けられた回転式の錠であり、シリンダ錠71と、シリンダ錠の作動片72から延びてロック部材60の先端部と係合する連結片73と、を備えている。補充カセット側のロック解除用ソレノイド51がロック解除動作を行う際に、回転式の錠70によってロック部材60をロック方向へ作動させることによりロック解除を円滑化することができる。
即ち、図4(a)のロック状態ではシリンダ錠71がOFFの状態にあるため図示しないバネがロック部材60の先端部60bを下降させている。次いで、(b)のようにシリンダ錠71を回動させると、連結片73がロック部材60を引き上げるため、ロック片61が開口56から離脱する。この結果、(c)のように弾性部材によって補充カセット20は押し出される。
【0021】
本発明では、制御手段80は、カセット装着部に補充カセットが装着され補充カセットから補充紙幣が繰り出されている時にセンサS1(補充用紙幣検知手段)が補充カセット内の紙幣がエンドになったことを検知した場合、或いは還流式紙幣収納部10、12に収容された紙幣が満杯なると(或いは、規定枚数に達すると)、補充動作を停止し、ロック機構を作動させてロック部材60によるロックを解除して補充カセットを自動的に押し出す。
なお、カセット装着部15に回収カセット30を装着した場合にもロック部材60が作動して回収カセット30側に設けた開口(補充カセットの開口56に相当)と係合して回収カセットをロックするが、ロックを解除して回収カセットを取り出すためには装置本体側の回転式の錠70を作動させればよい。
回転式の錠に代えてロータリーソレノイドを採用することによりロック機構を解除する操作は、操作ボードに配置した操作キーを操作することにより実施可能となる。
また、制御手段80は、カセット装着部15に回収カセット30が装着された状態で回収動作が開示されると、還流式紙幣収納部10、12に収納された紙幣を搬送経路を経由して回収カセット30に搬送するよう制御する。
【0022】
次に、図5に基づいて始業時などに補充カセットを用いた釣銭用紙幣(千円札)を自動的に補充する手順について説明する。
まず、電源投入後にカセット装着部15内にカセットが装着されると(S2、Yes)、どのカセットがセットされているかを判定する(S3)。この判定は、各カセットに設けた端子20A、30Aと装置本体側のコネクタ部16との接続に基づいて得られる信号により制御手段が行う。判定の結果、回収カセットである場合(S3No)には通常の運用モードに移行し、補充カセットである場合(S3Yes)には補充カセット繰出し動作に移行する。この補充カセット繰出し動作においては、切替ゲート23dをカセット外へ向けると共に、切替ゲート11aを補充紙幣判定部40へ向けた状態で、繰出し機構23を駆動し、更にスイッチバック駆動機構42を駆動する(S4〜S7)。補充紙幣判定部40ではセンサ44によって当該紙幣について重送の有無、金種をチェックし、重送あり、金種が異なる場合には夫々リジェクトボックス24へ逆送する。この際、切替ゲート23dを補充カセット20側へ切替え、スイッチバック駆動機構42を逆転させる(S8〜12)。
【0023】
重送がなく、金種が正規な場合には(S9、11が共にYES)、切替ゲート11aを搬送経路5側へ切り換えると共に、スイッチバック駆動機構42と搬送機構6を駆動して補充紙幣を各還流式紙幣収納部10、12へ仕分け搬送する(S13)。
その後、補充動作を繰り返してゆき、補充カセット20が空になった場合、或いは千円紙幣用の還流式紙幣収納部12が規定枚数(満杯、或いは準備金としての必要枚数)に達した場合にはロック機構を解除してカセット押出機構を作動させることにより補助カセット20をカセット装着部15から離脱させる。
本発明の紙幣処理装置1の特徴は、紙幣を補充する際に、カセット装着部15に既に装着されている回収カセット30を一旦取り外して補充カセット20を装着できるように構成した点にある。
補充カセットを用いた紙幣補充が終了した後では、補充カセットを取外して回収カセット30をカセット装着部15にセットして通常運用を行う。このように補充カセットは補充時のみカセット装着部にセットして使用し、補充後は取り外して回収カセットをセットすることで、一つの補充カセットを複数の紙幣処理装置1に共通使用することが可能となる。このため、紙幣処理装置のサイズを大きくする必要がなくなり、また低コスト化することができる。
【0024】
これを詳細に説明すると、例えば、回収カセット30及び補充カセット20の各収容枚数を夫々800枚とし、各還流式紙幣収納部10、12の夫々の収容枚数を100枚とした場合、釣銭用の千円札を収容する第2の還流式紙幣収納部12に始業時に収容しておく準備金としては50枚程度あれば十分である。このため、補充カセット20に収容可能な800枚の千円札は、補充作業16回分に相当することとなる。従って、複数の紙幣処理装置1を管理する場合に、紙幣処理装置一台につき補充カセットを一台ずつ用意しておく必要がなくなり、一台の補充カセットによって複数台の紙幣処理装置に対する紙幣補充作業を順次実施することができる。つまり、複数台の紙幣処理装置につき一台の割で補充カセットを購入、所持すればよく、購入コストを低減できる。構造が複雑な繰出し機構を備えた補充カセットは、紙幣を単に収容する構造を備えた回収カセットよりもコストが高いため、補充カセットの購入台数を減少できるメリットは大きい。
また、紙幣処理装置の運用の仕方によっては、始業時の釣銭用紙幣補充作業を不要とするケース(準備金として紙幣を補充せずに、還流式紙幣収納部に千円札がある程度貯まった場合のみ釣銭を出す運用)もあるため、この場合には補充カセットを購入しないで済むこととなる。つまり、コストを考慮しながら運用のタイプに応じて補充カセット購入の要不要を判断することが可能となる。
【0025】
また、補充カセットから還流式紙幣収納部に対して紙幣を補充する前に、補充カセットからの重送の有無、金種についての判別を行い、重送あり、異金種と判定された場合には補充カセット内のリジェクトボックス内に収容する。このため、釣銭としてふさわしくない紙幣が還流式紙幣収納部に収納されることを防止することができる。
また、回収カセット30をカセット装着部から取外し、補充カセット20を装着すると、補充カセットがカセット装着部15から抜けないように自動的にロックされ、更に自動的に補充動作が開始される。補充カセット内の紙幣が空になるか、釣銭用の還流式紙幣収納部が満杯になると(或いは、必要枚数に達すると)、補充動作を停止し、自動的にロックが解除され、補充カセットがカセット装着部から押し出される。
補充動作中は、紙幣処理装置の表示部に補充中であることが表示される。
終業時には各還流式紙幣収納部10、12に収納された各紙幣を順次回収カセット30内に移送して回収を完了する。
【符号の説明】
【0026】
1…紙幣処理装置、2…外装体、3…入出金部、5…搬送経路、6…搬送機構、7…識別部、10…還流式紙幣収納部、12…還流式紙幣収納部、11…ゲート、11a…切替ゲート、15…カセット装着部、16…コネクタ部、20…補充カセット、20A、30A…端子、21…補充紙幣収容部、22a…バックアッププレート、23…繰出し機構、23a…取出しローラ、23b…給送ローラ対、23c…給送ローラ、23d…切替ゲート、24…リジェクトボックス、30…回収カセット、31…回収機構、31a…ローラ群、32…回収紙幣収容部、32a…バックアッププレート、32b…フォーク、32c…加圧部材、40…補充紙幣判定部、41…スイッチバック部、42…スイッチバック駆動機構、44…センサ、50…ロック機構、51…ソレノイド、51…ロック解除用ソレノイド、51a…プランジャ、52…第1のリンク片、54…第2のリンク片、54a…軸支部、54b…一端部、54c…他端部、56…開口、60…ロック部材、60a…基端部、60b…先端部、61…ロック片、61a…爪部、62…ローラ、70…回転式の錠、ソレノイド、71…シリンダ錠、72…作動片、73…連結片、80…制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙幣を入出金する入出金部と、該入出金部から受け入れた紙幣を装置本体内に搬送する搬送経路と、搬送経路上を搬送されてきた紙幣を金種毎に出入れ自在に収容する複数の還流式紙幣収納部と、前記搬送経路と連通したカセット装着部と、前記カセット装着部に択一的に着脱される補充カセット、及び回収カセットと、前記カセット装着部に装着されたカセットが補充カセットと回収カセットの何れであるかを判定する手段と、制御手段と、を備え、
前記補充カセットは、前記カセット装着部に装着された時に収容した紙幣を該補充カセット外に繰り出す繰出し機構を備え、
前記制御手段は、前記カセット装着部に補充カセットが装着された時、前記補充カセットから繰り出された紙幣を前記搬送経路を経由して前記還流式紙幣収納部に収納するように制御することを特徴とする還流式紙幣処理装置。
【請求項2】
前記カセット装着部に装着された前記補充カセットから補充紙幣が繰り出される際に、一旦該補充紙幣を受け入れる補充紙幣判定部を備え、
前記補充紙幣判定部は、前記補充カセットから繰り出されてきた補充紙幣を受け入れるスイッチバック部と、該スイッチバック部に導入された補充紙幣の重送、及び金種を判定するセンサと、該補充紙幣をスイッチバック部に導入したり前記搬送経路に送出するスイッチバック駆動機構と、を備えていることを特徴とする請求項1に記載の還流式紙幣処理装置。
【請求項3】
紙幣を入出金する入出金部と、該入出金部から受け入れた紙幣を装置本体内に搬送する搬送経路と、該搬送経路に沿って紙幣を搬送する搬送機構と、前記搬送経路に導入されてきた紙幣を識別する識別部と、該搬送経路上を搬送されてきた紙幣を金種毎に出入れ自在に収容する複数の還流式紙幣収納部と、前記搬送経路と連通したカセット装着部と、前記カセット装着部に択一的に着脱される補充カセット、及び回収カセットと、前記カセット装着部に装着されたカセットが補充カセットと回収カセットの何れであるかを判定する手段と、前記カセット装着部に装着された前記補充カセットから補充紙幣が繰り出される際に一旦該補充紙幣を受け入れる補充紙幣判定部と、制御手段と、を備え、
前記補充カセットは、前記カセット装着部に装着された時に収容した紙幣を該補充カセット外に繰り出す繰出し機構を備え、
前記回収カセットは、前記カセット装着部に装着された時に前記還流式紙幣収納部から前記搬送経路を経由して搬送されてきた紙幣を内部に回収する回収機構を備え、
前記制御手段は、前記カセット装着部に補充カセットが装着された時、前記補充カセットから繰り出された紙幣を前記搬送経路を経由して前記還流式紙幣収納部に収納するように前記搬送機構を制御することを特徴とする還流式紙幣処理装置。
【請求項4】
前記補充紙幣判定部は、前記補充カセットから繰り出されてきた補充紙幣を受け入れるスイッチバック部と、該スイッチバック部に導入された補充紙幣の重送、及び金種を判定するセンサと、該補充紙幣をスイッチバック部に導入したり前記搬送経路に送出するスイッチバック駆動機構と、を備えていることを特徴とする請求項3に記載の還流式紙幣処理装置。
【請求項5】
前記カセット装着部にカセットが装着された時に、該カセットの装着状態を維持するロック機構と、ロック機構によるロック解除動作と連動して該カセットの装着状態を解除させるカセット押出機構と、
前記補充カセットに収容されている紙幣の有無を検知する補充用紙幣検知手段と、を備え、
前記制御手段は、前記カセット装着部に前記補充カセットが装着され該補充カセットから補充紙幣が繰り出されている時に、前記補充用紙幣検知手段が紙幣無しを検知、又は前記還流式紙幣収納部に収容された紙幣が規定枚数に達すると、前記ロック機構を解除し、前記カセット押出機構によって前記補充カセットの装着状態を解除することを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の還流式紙幣処理装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記カセット装着部に前記回収カセットが装着された状態で回収動作が開始されると、前記還流式紙幣収納部に収納された紙幣を前記搬送経路を経由して前記回収カセットに搬送するよう制御することを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の還流式紙幣処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−43351(P2012−43351A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186152(P2010−186152)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(305027456)ネッツエスアイ東洋株式会社 (200)
【Fターム(参考)】