説明

部分及び完全燃焼NOx制御に用いるFCC用添加剤

アンモ酸化触媒は、FCC触媒の再生中にNOx及びNOx前駆物質の排出を削減する場合に効果的であることが見出された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部分及び完全燃焼の流動式接触分解再生器からのNOx及びNOx前駆物質の排出を削減させるのに用いられる新規な触媒組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
主な工業的課題は、大気汚染物質、例えば、硫黄、炭素及び窒素含有燃料の加工及び燃焼による排ガス流中における一酸化炭素、硫黄酸化物及び窒素酸化物の濃度を低減する効果的な方法を開発することを必要としている。屡々、一般的な運転で直面する硫黄酸化物、一酸化炭素及び窒素酸化物の濃度で、かかる排ガス流を大気に排出するのは環境的に望ましくない。硫黄及び窒素含有炭化水素の接触分解においてコークス沈殿によって失活された分解触媒の再生は、比較的高水準の一酸化炭素、硫黄及び窒素酸化物を含む排ガス流をもたらし得る方法の典型例である。
【0003】
重質油分の接触分解は、粗な石油を有用な生成物、例えば、内燃機関で利用される燃料に転化する場合に使用される主要な精製操作の1つである。流動式接触分解(FCC)法において、高分子量の炭化水素液及び蒸気を、熱い、微粒子状の、固体触媒粒子と、流動床反応器中において、又は細長い移送ライン反応器中で接触させ、そして、自動車用ガソリン及び留出燃料に対して一般的に存在する種類の低分子量炭化水素への所望程度の分解を果たすのに十分な時間に亘って、流動又は分散状態で高温条件下にて維持する。
【0004】
炭化水素の接触分解において、非揮発性の炭素質材料又はコークスを、触媒粒子に対して沈殿させる。コークスは、高程度に縮合された芳香族炭化水素を含む。かかる炭化水素原料が有機硫黄及び窒素化合物を含む場合、コークスは、硫黄及び窒素も含む。また、コークスは分解触媒に凝集することから、分解用触媒の活性及びガソリン調合剤の製造に用いられる触媒の選択性が、減少する。コークスの沈殿によって実質的に失活された触媒は、反応領域から連続的に取り出される。かかる失活触媒は、揮発性沈殿を高温条件下で不活性ガスにて除去するストリッピング領域に運ばれる。その後、触媒粒子は、好適な再生法においてコークス沈殿を実質的に取り除くことによって、その当初の性能に本質的に復活される。その後、再生された触媒を反応領域に連続的に戻して、循環を繰り返す。
【0005】
触媒の再生は、触媒の表面から得られるコークス沈殿を酸素含有ガス、例えば空気と一緒に燃焼させることによって達成される。かかるコークス沈殿の燃焼は、簡素化された方法において、炭素の酸化として考えられ得る。かかる燃焼により得られる生成物は、一酸化炭素及び二酸化炭素である。
【0006】
燃焼過程で得られる排ガス流は、路ガス(通気路ガス:flue gas)と称されている。再生器からの路ガス中における一酸化炭素の高残留濃度は、接触分解法の最初からの課題であった。FCCの考案により、FCC再生器中で著しく高い温度を用いて、再生される触媒において必要とされる低炭素水準を達成した。今日の再生器では、約1100〜1400°Fの範囲の温度条件下で運転するのが一般的である。促進剤を使用しない場合、路ガスは、完全燃焼装置(full burn unit)中において36以上〜0.5までのCO2/CO比を有する場合がある。一酸化炭素の酸化は、高い発熱であり、これにより、希薄な触媒層、サイクロン又は路ガスライン中で起こり得る、いわゆる一酸化炭素の“アフターバーニング”がもたらされる場合がある。アフターバーニングは、プラントの設備に対する重大な損傷の原因となり得る。他方で、大気放出される路ガス中における未燃焼の一酸化炭素は、燃料の価値の損失を表し、そして環境的に望ましくない。
【0007】
大気に排出され、そして一酸化炭素の更に完全な酸化による処理の利点となり得る一酸化炭素の量の制限は、再生器中における一酸化炭素の“完全燃焼”としても知られている完全燃焼を達成するための手段を提供する幾つかの試みを刺激した。
【0008】
FCC再生で完全な一酸化炭素の燃焼を得る場合に用いられる処置は、特に:(1)標準的な再生に対して、再生器に導入される酸素の量を増大させ;そして(2)再生器における平均運転温度を上昇させるか、又は(3)分解触媒中に種々の一酸化炭素酸化促進剤を含んで、一酸化炭素の燃焼を促進させることであった。一酸化炭素のアフターバーニングの課題に対して、種々の解決法、例えば異質の可燃物の添加又は一酸化炭素の燃焼による熱を吸収するための熱受入固体(heat-accepting solid)の使用が提案された。
【0009】
完全燃焼型で運転される再生に適用される処理の特定例には、CO燃焼促進剤金属を触媒又は再生器に添加することを含む。例えば、米国特許第2647860号では、0.1〜1質量%の酸化クロムを分解触媒に添加して、COの燃焼を促進することを提案していた。米国特許第3808121号では、再生器中においてCO燃焼促進金属を含む比較的大きな粒子を使用することを教示していた。小型の触媒を、分解反応器と触媒再生器の間に循環させると共に、燃焼促進粒子は、再生器中に残留する。米国特許第4072600号及び第4093535号は、完全燃焼装置中においてCOの燃焼を促進するために、分解触媒中におけるPt、Pd、Ir、Rh、Os、Ru、及びReを、全触媒項目に対して、0.01〜50ppmの濃度で使用することを教示している。
【0010】
FCC装置の再生器において一酸化炭素の酸化に触媒作用を及ぼすための貴金属の使用は、広く商業的に受け入れられてきた。このような開発の歴史に関しては、米国特許第4171286号及び第4222856号に記載されている。開発の初期段階において、貴金属を、分解触媒の粒子に対して沈殿させた。現行では、貴金属を含む流動性固体粒子の形の促進剤を供給するのが一般的であり、且つかかる粒子は、分解触媒の粒子から物理的に分離される。貴金属、又はその化合物は、好適な担持用担体材料の粒子に担持され、そして促進剤の粒子は、分解触媒の粒子と別個に再生器に導入されるのが一般的である。促進剤の粒子は、微塵として系から取り除かれず、そして分解/ストリッピング/再生サイクル中に分解触媒の粒子と共循環される。
【0011】
促進剤のCO燃焼効率に関する判断は、(より高温の)希薄な層、すなわちサイクロン又は路ガスライン(路ガス路)と、高密度層との間の温度差ΔTを制御するための能力に関して行われる。殆どのFCC装置は、PtのCO燃焼促進剤を用いてきたものの、最近では、Pdを主として基礎とする非Pt促進剤が広く使用されている。
【0012】
FCC装置の取引基準に対して使用される促進剤物質としては、少量(例、100〜1500ppm)の白金が含浸されるカオリン粘土の焼結噴霧乾燥される多孔性ミクロスフェアの担持用担体材料を含む。商業的に用いられる殆どの促進剤は、高純度の多孔性アルミナ、一般的にはガンマアルミナのミクロスフェアに対して白金源を含浸することによって得られる。種々の市販製品に対して貴金属として白金を選択するのは、かかる金属に関して、白金がFCC再生器中での一酸化炭素の酸化促進の場合に最も効果的な第VIII族の金属であるという従来技術の開示内容と整合性があるという点において好ましいと考えられている。例えば、米国特許第4107032号の図3及び米国特許第4350614号の図3を参照されたい。図面は、CO2/CO比に対して、種々の貴金属促進剤の濃度を0.5〜10ppm増大させることの効果を示している。
【0013】
米国特許第4608357号では、パラジウムをシリカ−アルミナの特定形態の粒子、すなわち浸出ムライトに担持させる場合、FCC装置の再生器において効を奏するような条件下で一酸化炭素の二酸化炭素への酸化を促進する場合にパラジウムが著しく効果的であることを教示している。パラジウムは、促進剤における唯一の触媒活性金属成分であるか、又は他の金属、例えば白金と混合される場合がある。
【0014】
米国特許第5164072号及び第5110780号は、La安定化アルミナ、好ましくは約4〜8質量%のLa23にPtを有するFCC用CO促進剤に関する。セリアは“除外される必要がある”ことを開示している。第3欄(col.3)において“適量、例えば約6〜8%のLa23の存在下で、2%のCeは役に立たない。La23が少ない場合には実際に有害である。”ことを開示している。具体的な例示において、引用特許は、8%のCeの、ガンマアルミナに担持される白金のCO促進に対する悪影響と、Laのプラスの効果とを示している。
【0015】
燃焼促進剤、例えば白金の使用により、COの排出を削減するものの、このようなCOの排出の削減は、望ましくない効果、すなわち、再生器の路ガス中において窒素酸化物(NOx)の増大によって達成されるのが一般的である。また、高い活性の燃焼促進剤、例えば白金及びパラジウムは、再生領域において窒素酸化物の形成を促進するために働く。従来のCO促進剤の使用により、NOxの劇的な増大(例、>300%)を引き起こし得ることが報告されている。
【0016】
触媒再生器中において、再生器の路ガスにおけるNOx含有量を増大させることなくコークス及びCOを完全に燃焼させることは、困難である。窒素酸化物を大気中に排出することは、環境的に望ましくなく、厳しく規制されることから、かかる促進剤の使用は、一方の望ましくない放出を他方に置き換えるという効果を有する。環境上の懸念に応えるため、高い労力が、NOxの排出を削減するための方法を見出すことに費やされている。
【0017】
NOxの形成を低減するか、又はNOxが形成された後にNOxを処理するための種々のアプローチが用いられてきた。最も一般的には、添加剤を、FCC触媒粒子の一体部分として、又はFCC触媒との混合物における別個の粒子として使用した。
【0018】
NOxの排出を制御しつつCO促進を行うであろう種々の添加剤が開発された。
【0019】
米国特許第4350614号(特許文献8)及び第4088568号は、Pt基礎CO促進剤への希土類元素の添加を開示している。例えば、幾つかの利点を示す4%のREOである。REOの、FCCによるNOxの排出の減少に対する効果については、教示していない。
【0020】
米国特許第4199435号は、無機担体におけるPt、Pd、Ir、Os、Ru、Rh、Re及び銅から選択される燃焼促進剤を教示している。
【0021】
米国特許第4290878号は、一般的なPt促進剤と比較してNOxを削減するPt−Ir及びPt−Rhバイメタル促進剤を教示している。
【0022】
米国特許第4300997号は、過度のNOx形成を生じさせないPd−Ru促進剤、をCOの酸化に使用する方法を教示している。
【0023】
米国特許第4544645号は、Pdと、他の全ての第VIII族の金属(Ruを除く)とのバイメタルを記載している。
【0024】
米国特許第6165933号及び第6358881号は、FCC法でのCO燃焼を促進すると共に、NOxの形成を最小限にするために、(i)酸性酸化物の担体、(ii)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属又はこれらの混合物、(iii)酸素貯蔵能力を有する遷移金属の酸化物、及び(iv)パラジウムを含む成分を含む組成物を記載している。
【0025】
米国特許第6117813号は、第VIII族の遷移金属の酸化物、第VIIIB族の遷移金属の酸化物及び第IIA族の金属酸化物からなるCO促進剤を教示している。
【0026】
完全なCO燃焼と対照的に、FCC触媒再生器は、不完全型の燃焼で運転される場合があり、そしてかかる再生器は、“部分燃焼”装置と一般的に称される。不完全なCO燃焼により、比較的多量のコークスを再生された触媒に残し、これを、FCC再生領域からFCC反応領域に通過させる。再生器の路ガス中におけるCOの相対含有量は、比較的高く、すなわち約1〜10容量%である。部分燃焼型FCCの重要な特徴は、コークスの質量あたりのコークス燃焼の熱作用が、発熱性CO燃焼反応を抑制することから、低減される点にある。これにより、油の処理量を高くし、再生器の温度を低下することが可能であり、そしてかかる利益の維持は、FCC法の経済的側面に対して最も重要である。不完全燃焼運転下、NOxは、再生器の路ガス中に見出され得ないものの、相当量のアンモニア及びHCNは、路ガス中に存在するのが一般的である。米国特許第4744962号によると、不完全燃焼下で形成される再生器の路ガスは、約0.1〜0.4%のO2、15%のCO2、4%のCO、12%のH2O、200ppmのSO2、500ppmのNH3、及び100ppmのHCNを含むのが一般的である。アンモニア及びHCNをCO煮沸器に入れることが可能である場合、アンモニア及びHCNの一部をNOxに転化しても良い。
【0027】
従来技術は、完全燃焼運転におけるNOxの形成に対する添加剤の影響に焦点を集めているものの、かかる公知の添加剤は、より低排出の基準が作成される場合、益々、不適当となる。更に、かかる添加剤は、部分燃焼運転において有効であることを実証しなかった。部分燃焼運転において、COのCO2への転化を少なくとも抑え、そして時々、最小限にする。HCN及びNH3は、再生処理中においてコークスの部分燃焼の主な生成物である。HCNをCO及びNH3に転化し、その後、NOxの代わりに、N2に選択的に酸化することが可能である新規の添加剤を見出す必要がある。また、益々高くなるNOxの排出基準を満足するために、完全燃焼再生法における新規の添加剤を見出す必要もある。
【0028】
【特許文献1】米国特許第2647860号
【特許文献2】米国特許第3808121号
【特許文献3】米国特許第4072600号
【特許文献4】米国特許第4093535号
【特許文献5】米国特許第4171286号
【特許文献6】米国特許第4222856号
【特許文献7】米国特許第4107032号
【特許文献8】米国特許第4350614号
【特許文献9】米国特許第4608357号
【特許文献10】米国特許第5164072号
【特許文献11】米国特許第5110780号
【特許文献12】米国特許第4088568号
【特許文献13】米国特許第4199435号
【特許文献14】米国特許第4290878号
【特許文献15】米国特許第4300997号
【特許文献16】米国特許第4544645号
【特許文献17】米国特許第6165933号
【特許文献18】米国特許第6358881号
【特許文献19】米国特許第6117813号
【特許文献20】米国特許第4744962号
【発明の開示】
【0029】
〔発明の概要〕
本発明は、完全燃焼及び部分燃焼流動式接触分解再生器からのNOx及びNOx前駆物質の排出を削減するのに用いられる触媒組成物に関する。気相との関係で、FCC再生器にある場合、NH3、HCN及びNOxのN2への転化に対して高い活性及び選択性を有する金属含有添加剤組成物が提供される。本発明の金属添加剤組成物、例えばFeSb−基礎組成物は、部分及び完全燃焼FCC再生器の両方の運転において、最終的なNOx排出を削減するために機能する。
【0030】
更に本発明は、NOxの排出を削減するために、FCC触媒再生運転においてアンモ酸化触媒を使用する方法を提供する。
【0031】
本発明の目的は、部分燃焼FCC再生器においてNOx及びNOx前駆物質の排出を削減すると共に、これと同時に生じるCOの酸化を回避することにある。
【0032】
本発明の他の目的は、完全燃焼FCC再生器においてNOx及びNOx前駆物質の排出を削減することにある。
【0033】
〔発明の詳細な説明〕
本願の明細書で使用されるように:
“WPV”は、担体における初期湿り水孔容積を示し、
“ABD”は、担体における明らかな又は下落嵩密度を示し、
“BET”は、Brunauer, Emmett and Tellerによる表面積(m2/g)を示し、そして
“APS”は、レーザー散乱による平均粒径(μm)を示す。
【0034】
本発明は、炭化水素の原料を分解する流動式接触分解法に関して使用される。市販のFCC系で処理されるのが一般的である同一の炭化水素原料は、本発明を用いる分解系で処理されても良い。好適な原料は、例えば、新鮮な又は部分的に精製された石油蒸留物又は残留物を含む。合成原料、例えば石油及びシェール油についても適当である。好適な原料は、約200〜600℃又はそれ以上の範囲で沸騰するのが一般的である。好適な原料としては、分解に既に付された再循環炭化水素を含んでいても良い。
【0035】
比較的高分子量の炭化水素である、このような石油蒸留物の接触分解により、低分子量の炭化水素生成物を製造する。分解は、触媒再生領域と別個であり且つ異なる接触分解反応器中で行われる。分解は、再生器と一般的に称される触媒再生領域を有する循環伝達(cyclical communication)の形態で行われる。この種の接触分解系において好適な触媒は、シリカを含む無機酸化物、例えばシリカ、アルミナ、又はシリカ含有分解触媒を含む。触媒は、例えば、少なくとも1種の多孔性無機酸化物、例えばシリカ、アルミナ、マグネシア、ジルコニア等、又はシリカとアルミナの混合物又はシリカとマグネシアの混合物等を含む一般的な非ゼオライト系分解触媒であっても良い。また、触媒は、シリカ−アルミナ、クレー等であっても良い多孔質の耐火マトリックスと会合される結晶質のアルミノシリケートゼオライトを含む一般的なゼオライト含有分解触媒であっても良い。マトリックスは、分解触媒に対して50〜95質量%を構成するのが一般的であり、且つ残りの5〜50質量%は、マトリックスに分散又は固定されるゼオライト成分である。ゼオライトは、希土類−交換、例えば0.1〜10質量%のREであるか、又は水素−交換であっても良い。一般的なゼオライト含有分解触媒は、屡々、X型ゼオライト又はY型ゼオライトを含む。低い(1%未満)ナトリウム含有量のY型ゼオライトが特に有用である。本願の明細書で議論される全てのゼオライト含有量は、平衡触媒、すなわちE−Catのゼオライト含有量より、マークアップ触媒のゼオライト含有量と称される。触媒が、最近のFCC再生器における過酷な、水蒸気充填環境において消費すると、高い結晶性は、数週間か数ヶ月で失われるので、平衡触媒は、古典的な分析法によって極めて低いゼオライト含有量を含むであろう。殆どの精製装置は、そのマークアップ触媒のゼオライト含有量に関連するのが一般的である。当該分野で明らかなように、かかる系で用いられる触媒粒子の組成は、本発明の方法において重大な特徴ではないので、公知の又は有用な触媒は、本発明において許容可能である。
【0036】
触媒項目は、別個の添加剤粒子として含まれるか、又は分解触媒の各粒子と混合される1種以上の添加剤を含んでいても良い。添加剤は、時々、オクタンを増大させるために使用される(平均孔径のゼオライト、時々、付形選択性ゼオライト、すなわち、1〜12の制限指数(Constraint Index)を有し、ZSM−5の特徴を有するゼオライト、並びに同様の結晶構造を有するゼオライトと称される。)。
【0037】
分解直後に触媒から炭化水素生成物を分離するのが望ましい。このような理由から、ストリッピング領域を、分解反応器と再生器の中間に配置して、炭化水素生成物を触媒から短時間で又は迅速に遊離させる。ストリッピング領域は、約300〜約600℃の温度で維持され、そしてストリッピングを助けるために、水蒸気又は窒素等の不活性ガスを有するのが一般的である。
【0038】
高分子量の炭化水素を低分子量の炭化水素に転化する際に用いられるのが一般的な分解条件としては、約425〜約600℃の温度を含む。触媒の表面に沈殿されるコークスの量の平均は、供給材料の組成に応じて0.5〜2.5質量%の範囲である。分解後の迅速な遊離が、ストリッピング領域を介して再び達成される。更に、分解の条件は、精製装置、原料の組成、そして所望の生成物に応じて変更しても良い。特定の分解パラメータは、広範な分解条件にて再生器からNOx、NH3、及びHCNを良好に除去する本発明にとって重要ではない。
【0039】
ストリッピング領域から触媒再生領域に通過される触媒は、触媒再生領域において酸素の存在下で再生するであろう。かかる領域は、通常、約500〜750℃の温度を有する触媒による低密度床及び約500〜約800℃の温度を有する触媒による載置型希釈層(surmounted dilute phase)を含む。コークスを触媒から除去するために、酸素を、使用済み触媒におけるコークスに対して化学量論又は不足当量で供給する。かかる酸素は、再生領域の底部において好適な散布装置によって添加されても良く、又は所望により、追加の酸素を、触媒の濃密層に載置される再生領域の希釈層に添加することも可能である。本発明において、完全燃焼型、すなわちフルバーン型の再生領域を運転するために化学量論量の酸素を、多くのFCC装置における方法で一般的であるため用いることが可能であり、或いは再生領域を、部分燃焼型、すなわち部分燃焼を含む運転の標準形式か、又は時々、再生領域における一酸化炭素の量が、再生器の路ガスに対して約1〜10容量%の水準で維持される還元型と称される運転の標準形式で稼働することが可能である。
【0040】
殆どの再生器は、添加される再生空気の量を調節することによって主として制御されるものの、空気を一定に保ち、そして他の条件を変更する他の平衡制御スキームが利用可能である。コークスの産出量を変更する原料の割合を変更しつつ空気の割合を一定にするのは、再生器の運転を変更するための許容可能な方法である。また、原料の予熱の変更、すなわち再生器の空気の予熱を変更しつつ一定の空気についても許容可能である。結局、触媒冷却器を使用して、熱を装置から除去することが可能である。装置が、熱平衡のままでいるのに十分なコークスを生成しない場合、トーチ油、又は他の燃料を再生器で燃焼させても良い。
【0041】
再生領域を部分燃焼の形式で運転する場合、オフガス流は、相当量のアンモニア(NH3)及びHCNを含む。アンモニアの量は、例えば、供給材料の組成に応じて、約10〜1000ppmの範囲であっても良い。再生された触媒からの必要な分離の後、路ガス流を、CO煮沸器に通過させ、そこで、COが酸素の存在下でCO2に転化される。アンモニア及びHCNをCO煮沸器に入れる場合、その一部又は全てを、CO2へのCO酸化中にNOxに転化することが可能である。
【0042】
本発明の一の実施形態によると、金属添加剤を再生器に供給して、下流側のCO煮沸器においてNOxの形成を防ぐように形成されるアンモニア及びHCNガスを除去する。かかる実施形態において、本発明の添加剤は、部分燃焼条件下で運転される再生装置に対して特に有用である。
【0043】
多くのアンモ酸化触媒を、FCC触媒再生運転において金属添加剤として使用して、NOx、及びその前駆物質の排出を削減することが可能であることが見出された。本発明は、担持用担体における金属添加剤としてのアンモ酸化触媒を含む触媒組成物、並びにかかる組成物をFCC再生器の燃料ガス中におけるNOx及びNOx前駆物質の排出の削減に使用する方法を提供することにある。
【0044】
アンモ酸化触媒は、以下のように:
【0045】
【化1】

オレフィン及びアンモニアからニトリルを作製するためのアンモ酸化法において使用される。
【0046】
プロピレンは、一般的な炭化水素原料であるものの、イソブチレン、置換芳香族化合物、アルカン及び置換炭化水素についても使用される。アンモ酸化温度は、原料として空気を用いて、400〜500℃の範囲であるのが一般的である。圧力は、FCCと同様に、40〜100μmの流動床触媒粒径を使用する流動床法において1.5〜3バールである。当初は、アンモニア及び炭素源から炭素−窒素三重結合を形成する同一の触媒は、逆加水分解反応に対しても同様に触媒作用を及ぼすことが可能であると考えられていた。類推によると、かかる触媒により、高温条件下で且つ流動床FCC再生器の環境下でHCNにおける炭素−窒素三重結合を加水分解可能である。次に、HCNをNH3及びCOに水によって加水分解することは、この種の反応における最も簡単な形態であると考えられている。
【0047】
【化2】

【0048】
その後、NH3を再生器中でN2に選択的に酸化するので、NOxの望ましくない製造を回避するのが望ましい。
【0049】
本発明者等の研究の結果は、このような加水分解反応(2)は、屡々、達成するのが容易であるものの、次の、NH3のN2への選択的な酸化は、更に困難なステップであることを示している。重要な点は、NH3のN2への酸化は、本発明においてNOxの排出を削減するために望ましいということである。しかしながら、一般的なアンモ酸化法において、NH3のN2への酸化は、回避されるべきである。アンモ酸化法においてN2の製造を排除するように調節されるのが一般的である触媒からFCC再生中に形成され得るN2のこのように高い産出量は、驚くべきことである。
【0050】
[A.金属添加剤]
多くの公知のアンモ酸化触媒が存在する。アンモ酸化触媒の技術に関する有用な概説の例示は、1997年にWiley-VCH, Weinheimによって発行されたHandbook of Heterogeneous CatalysisにおけるR. K. Grasselliによる章において見出され得る。本発明のおいて有用な上記の触媒は、金属−酸素の結合強度が必要とされる選択性を得るために最適化された錯体混合金属モリブデート又はアンチモンエートを含んでいても良い。Grasselliによると、このような最適化により、分子酸素よりも更に選択的な酸化剤である格子酸素を得る。Bi−MO系は、公知のアンモ酸化触媒である。多成分Bi−MO錯体は、Bi未満の還元電位を有するレドックス元素、例えばFe、Ce、及びCrを含んでいて良く、その役割は、酸素分子を分離し、酸素分子によって酸化され、そしてアンモ酸化中に還元されたBi−MOを連続的に再酸化することである。従って、かかるレドックス元素は、高い活性及び選択性を得るために必須である。他の公知の促進剤としては、GrasselliによるとNi、Co、Mg及び/又はMnを含む。最初に市販化された触媒は、Cu、Sn、Sb及びBiの促進剤を用いるホスホモリブデートであったが、その後、触媒は、K、Fe、Ni、Co、Cs、Mn、Mg、Crを含み、且つかかる手法は、Bi−MO系に対して5つの改良を含む。良好なアンチモナイト触媒は、少なくとも1個のレドックス対のFe2+/3+、Ce3+/4+、Cr2+/3+、U5+/6+、又はSn、V、若しくはMnを含み、その役割は、ここでもまたO2から格子酸素を作製し、その後、Sb3+/5+活性部位をかかる格子酸素で満たすことであり、これらのそれぞれは、所定の選択された元素を添加することによって更に改善される。このような促進剤としては、Na、Cu、Mg、Zn、Ni、V、W、Te、Moによる多くの変形物を含む。多くの変更が可能であるのと同時に、アンモ酸化反応に最適化される調剤は、アンモ酸化触媒の技術で記載したように極めて特別である。多くのアンモ酸化触媒が本発明に対する適用性を見出すことが可能であるとは限らない。例えば、BiMoOxは、Grasselliによると優れたアンモ酸化触媒であるものの、Biは液体であり、Moは、FCC条件下で蒸気である。従って、BiMoOxを、容易に組み込むことができないか、又はBiMoOxは、FCC再生器中で安定でない場合がある。本発明の当業者であれば、FCC再生条件下で、公知のアンモ酸化触媒の有用性に関してかかるアンモ酸化触媒を容易に評価することが可能である。
【0051】
Grasselliの調査は、流動床アンモ酸化法において良好な活性及び選択性を有する、コロイドのSiO2で合成された沈殿Fe−Sb基礎触媒を記載している。上述したように、遷移元素並びに他の第3族及びおそらく第4族の元素を添加して、触媒結果を変更又は改良する。触媒及び方法からSbを蒸発及び損出するのは、所定の最小限のSbを超える量を含む触媒に対して均一の影響を明らかに有するものの、Sb及び促進剤に対するFeの割合は、かかる結果に対して重大である場合がある。触媒において過剰のSb又は運転中のSbの有効な添加は、アンモ酸化中の最小限のSb含有量を維持するために用いられる。
【0052】
一般に、FeSbM系の金属添加剤は、本発明において有効であることが見出された。M、すなわち必要により含まれる促進剤は、第II〜VII族の金属、例えばMg、Mn、Mo、Ni、Sn、V又はCuであっても良いものの、これらに限定されない。好ましい実施形態において、MはCuである。FeSbMの3成分化合物は、同一の充填条件下のFe、Sb及びMの2成分化合物と比較して、NOx及びNOx前駆物質の削減に対して更に有効であることが見出された。Fe:Sb:Cuの原子比は、それぞれ0.1〜10:0.1〜10:0〜10であっても良い。好ましい比は、0.5〜2:1〜5:0.5〜2であり、最も好ましい比は、1:2.5:1である。一般に、金属は、別個に調製される担体材料に対して金属酸化物として全充填の約5〜15質量%で存在するであろう。金属添加剤は、組成物の全質量に対して酸化物として約8〜12質量%の量で存在するのが好ましく、酸化物として約10質量%であるのが更に好ましい。酸化物として10質量%である場合、これは、最も好ましい実施形態の場合、約1.5質量%のFe23、1.5質量%のCuO、及び7質量%のSb24となる。対照的に、一般的なアンモ酸化触媒は、40質量%を超え、80質量%以下の活性金属酸化物を含むことに留意すべきである。
【0053】
[B.担持用担体]
多くの担持用担体材料は、本発明の金属添加剤組成物を収容するために使用されても良い。例えば、かかる担持用担体材料としては、以下のものを含んでいても良い:(i)ゼオライト含む現場FCC、(ii)か焼カオリン、(iii)アルミナ又は(iv)シリカ。シリカを使用する場合、ジルコニウムを添加して、熱安定性にすることが可能である。Zr−安定化シリカ担持用担体が有用であると見出された。他の公知の金属酸化物担持用担体を使用することも可能である。
【0054】
[C.本発明の組成物の調製]
FeSbM系を含む触媒を、以下の通りに調製しても良い。担体のミクロスフェアに、硝酸鉄−塩化アンチモンの共溶解溶液を最初に含浸させることが可能であるが、かかる溶液は、酸性の金属元素の溶解塩を更に含んでいる。担体のミクロスフェアにおける一部の細孔容積にだけ充填するように含浸するのが有用である。細孔容積の残りの部分に、濃縮された水酸化アンモニウム溶液を充填することが可能である。使用されるアンモニウムの量は、硝酸塩と塩化物の当量に等しいのが一般的である。これにより、中性のpHと、初期湿り体積においてミクロスフェアの内側における溶解金属の沈殿と、を形成する。他の金属アンモ酸化触媒の場合、手順を従わせることが可能であるものの、異なる塩を使用する場合があることは明らかである。
【0055】
同伴された硝酸アンモニウム塩は、所望により爆発性であっても良い。従って、含浸されたミクロスフェアを、約30分間に亘って反応させ、その後、脱イオン水でスラリーにし、ろ過し、洗浄して、塩を除去し、これにより、FeSbMヒドロゲルをミクロスフェア中に残すことが可能である。その後、水酸化物混合物をか焼することが可能である。塩基性の促進剤金属を使用する場合、促進剤を、第2の含浸においてアンモニウム溶液と組み合わせることが可能であるが、その際に、全体の当量は、酸性及び塩基性の溶液を含浸させた後に中性を形成するように調節される。
【0056】
[D.利用]
本発明の金属添加剤を、CO促進剤及び他の添加剤として同一の方法で添加剤充填器を介してFCC装置に添加しても良い。或いは、本発明の添加剤は、FCC装置に供給される新鮮なFCC触媒と予備ブレンドされても良い。好ましくは、本発明の金属添加剤組成物を、再生されるFCC触媒の添加に対して、約10%未満、好ましくは5%未満、更に好ましくは約2%未満の用量で一般的なFCC触媒と一緒に使用する。これにより、添加剤を、使用触媒と一緒にリンサーとFCC装置の再生器の間に循環させることが可能である。
【0057】
NOx削減組成物を、別個の添加剤粒子として、又はFCC触媒粒子の一体部分として使用しても良い。添加剤として使用する場合、NOx削減成分それ自体は、FCC法での使用に好適な粒子に形成される場合がある。或いは、NOx削減成分は、バインダー、フィラー等と、一般的な技術によって組み合わされても良い。例えば、米国特許第5194413号を参照し、その開示内容を参照することによって本願の内容に組み込む。
【0058】
本発明のNOx削減添加剤をFCC触媒粒子に組み込む場合、金属添加剤成分を最初に形成し、その後、FCC触媒粒子を形成する他の成分と組み合わせるのが好ましい。NOx削減組成物をFCC触媒粒子に直接組み込むことは、公知の技術によって達成され得る。この場合に好適な技術の例示は、米国特許第3957689号、第4499197号、第4542188号及び第4458623号に開示され、これらの開示内容を参照することによって本願の内容に組み込む。
【0059】
更に詳述しなくても、当業者であれば、先の記載によって本発明を完全に利用することが可能であると考えられる。
【0060】
従って、以下の特定の実施形態は、単なる説明と解釈され、開示内容の残りをいかなる手法で限定するものではないと解釈されるべきである。以下の実施例において、特段述べない限り、全ての部及び質量は、質量換算であった。
【実施例】
【0061】
[実施例1]Zr−安定化シリカ−クレーミクロスフェアにおけるFe1Sb2.5Cu1
担持用担体材料を、以下の通りに調製した。35部の沈殿されたSiO2粉末、45部の、Engelhard Corporation社製のASP−200(登録商標)水和カオリン及び20部の、Ludox(登録商標)HS40コロイドシリカの形態のSiO2を、40%の固体及びpH>9の条件下でコールズ混合器(Cowles mixer)中でブレンドしたが、最終的スラリーを、水酸化アンモニウムを用いてpH=10.6の条件下で2時間混合した。その後、これを噴霧乾燥し、pH=3及び180°Fの条件下、質量換算で1:1の触媒:54質量%のNH4NO3水溶液を用いて再びアンモニウム交換し、ろ過し、そして洗浄し、乾燥し、そして開放トレー(open tray)中において1400°Fの条件下で2時間に亘ってか焼した。BET表面積は155m2/gmであり、Na2O=0.16質量%、Al23=19質量%、Fe23=0.42質量%、APS=125μmであった。
【0062】
その後、かかる担持用担体材料に、初期湿り法によって2%のZrO2を標的にするジルコニルニトレートを含浸し、その後、1400°Fの条件下で2時間に亘ってか焼した。調製された担体材料の分析により、1.7質量%のZrO2及び136m2/gmのBET表面積を示していた。
【0063】
金属添加剤系を調製するために、30gのZr−安定化担体に、Fe、Sb及びCu塩の混合溶液を含浸させた。2.48gのFe(NO33・9H2O及び3.50gのSbCl3及び1.43gのCu(NO32・2.5H2Oを水に溶解して、完全に溶解された溶液を形成したが、これは、担体の細孔容積の半分より多かった。これと別個に、7.29gの28質量%のNH4OHを、2種類の溶液が30gの担体の担体細孔容積に対して整数倍となるような体積まで希釈した。担体に、FeSbCu溶液を含浸させて、担体の細孔容積の約半分を充填し、細孔容積の残りに、水酸化アンモニウム溶液を充填した。一般的に、含浸ステップの2つのパスは、追加のパスを用いることが可能であったとしても必要とされる場合がある。含浸される材料に対して30分の反応時間であり、そして材料をpH=8の条件下でスラリーにし、ろ過し、そしてpH=8の水で洗浄した。その後、洗浄された材料を乾燥し、必要により、各溶液の全てを使用するまで再び含浸した。
【0064】
その後、材料を800°Fで24時間、その後、1400°Fで8時間か焼した。
【0065】
[実施例2及び3]Fe/Sb/Mg及びFe/Sb/Mn
2種類の他のサンプルを、Fe1Sb2.5Mg0.35及びFe0.5Sb2.5Mn0.5の原子比のMg(NO32・6H2O及びMn(NO32・H2O塩を使用して作製した。Zr/SiO2及びクレーの担体を実施例1と同一の方法で調製した。実施例2及び3に関する詳細な成分を、以下に列挙する:
【0066】
【表1】

【0067】
20%の本発明の金属添加剤及び80%の標準的なゼオライト系FCC触媒を含むブレンドを作製し、そして1500°Fの条件下で2時間煮沸した。その後、かかる煮沸ブレンドを、50%の煮沸添加剤ブレンド、40%の、添加剤無しの煮沸FCC触媒及び10%の未希釈の新鮮な添加剤としてブレンドした。各々の再組み合わせブランドは、結果として、10%の煮沸添加剤及び10%の未煮沸添加剤を、未煮沸のゼオライト系FCC触媒無しに含んでいた。これにより得られる2gの50−40−10ブレンドを、その後、18gの煮沸FCC触媒で更に希釈し、そして1300°Fの反応領域を有する流動床試験装置に配置した。代表的な量のCO2、CO、H2O、O2、SO2、NO、HCN、NH3及び不活性希釈剤を含む試験ガスを、添加剤に対する空間速度の反応器中における触媒混合物に入れたが、これは、2%の添加剤を含む平衡触媒(E−cat)で運転するFCC再生器の代表例であった。流れにおいて約30〜60分後、反応器の溶出液を分析し、そしてモル収率を表1にまとめた。
【0068】
20gの煮沸FCC触媒ミクロスフェアにて作製された空作業(blank run)により、部分燃焼法と整合性のある1812μモルのCO2及び1494μモルのCO、並びに14.2μモルのHCN、22.6μモルのNH3、3.1μモルのNOx、0.1μモルのN2O及び(91/2)μモルのN2を得たが、後者の場合、確定された量の2倍を表1に報告して、N−原子に基づくN2の産出量とした。
【0069】
比較結果についても、約500ppmのPtを含む添加剤を使用する精製装置から取り出される完全に促進された平衡触媒に関して示した。他の添加剤を使用しなかった。このようなPt材料を用いると、予想したように、N2の増大と共に、COが少なくなり、NOxが更に増大した。CO酸化の相対速度、すなわちk(COP)は、3.69であったものの、部分燃焼条件下での試験により、相当なCOの産出に至った。
【0070】
本発明の金属添加剤(実施例1〜3)により、Pt添加剤を使用する比較試験より多くのN2を形成し、そして非常に少ないNOxを形成した。実施例1は、特に、131μモルの窒素原子総量、すなわちN2の95%の産出量の合計から124μモルの窒素原子を得た。他の2つの添加剤は、低い活性であったものの、NOxに対する選択性は、望ましく低いものであった。このような材料の相対CO酸化活性についても、好ましく低く、平衡CO促進剤の活性に対して、僅か0.5〜2%であった。N2の高い産出量、NOxの低い産出量及び低いCO酸化活性により、本発明の金属添加剤を部分燃焼FCC運転の場合に有用となった。
【0071】
2つ以上の比較実施例について、低いCO酸化活性を有して、部分燃焼運転に好適となるように行った。最初は、2%の銅、セリアを基礎とする21%の希土類添加剤であった。かかる添加剤は、実施例2及び3の金属添加剤より高い活性であったものの、NOxに対して高い選択性を有していたことが見出された。一般的なCe−V−Mg−AlのSOx添加剤についても、比較のため試験した。かかる添加剤は、実施例2及び3の金属添加剤より高い活性を有し、並びにNOxに対して高い選択性を有していたことが見出された。実施例1で説明したように、本発明の好ましい組成物は、N2の産出量及び選択性に関して試験された全ての材料より優れていた。
【0072】
[実施例4]
かかる実施例において、実施例1のFe/Sb/Cuの原子比を1/2.5/0.35に変更した。全ての他の成分は、実施例1と同一であった。本実施例で使用される塩及び質量に関する詳細は、表2に列挙された。
【0073】
[実施例5〜12]
上述した実施例のようなCuOを使用する代わりに、他の遷移金属を実施例5〜12において使用した。例えば、MOxは、実施例5〜12において、それぞれBi23、Ce23、CuO、MoO3、NiO、SnO2、V25及びZnOと示された。これらの実施例で使用される塩及び質量に関する詳細は、表2に列挙された。
【0074】
[実施例13〜18]
かかる製造例において、10質量%の合計金属酸化物充填の条件下で1/2.5/1の原子比を有するFe/Sb/Cuを、種々の担体材料に対して施した。ミクロスフェア担体の調製方法を以下に記載し、そして担体の特性の一部を表3及び4に列挙した。
【0075】
実施例13では、9質量%のZrO2に充填された以外、実施例1用に噴霧乾燥されたSiO2+カオリン担体を使用した。その後、FeSbCuで充填した。表4は、このような全ての触媒の調製を列挙してる。このように調製された材料の一部に、Pt又はPdを含浸させたものの、材料の相対的な性能は、NOxに関して改善されなかった。
【0076】
実施例14では、か焼されたカオリンのみを含むミクロスフェアを使用した。
【0077】
実施例15では、材料が5質量%のREOを含む以外、米国特許第6656347号に記載されるFCC触媒を使用したが、その開示内容を参照することによって本願の内容に組み込んだ。
【0078】
実施例16では、Sasol North America社による“Puralox”としてのミクロスフェアのアルミナ固体を使用した。このようなミクロスフェア担体は、95m2/gの新たな表面積を有している。
【0079】
実施例17では、一般的なCe−V促進化MgAl24スピネルSOx添加剤を使用した。
【0080】
実施例18では、29部の水和カオリン及び14部のLudoxのコロイドSiO2でスラリーにされ、ミクロスフェアに噴霧乾燥され、イオン交換されて、不純物を除去し、その後、1400°Fの条件下で2時間に亘ってか焼された57部の10質量%WO3/TiO2SCR担体粉末から調製される担体を使用した。
【0081】
[実施例19〜26]
実施例19〜26では、促進剤無しのFe/Sbが数種類の割合にて活性を有するのかについて1/2.5/1の比であるFe/Sb/Cuに関する全金属酸化物充填の影響と、そしてFe/Sb/Cu系における個々の金属の役割と、を調査した。調査における最新の状況に関して、Fe又はSbは、1/2.5/1(10%の充填条件下)の基本調剤から除去されると共に、残りの金属の質量%充填は未変化であった。ジルコニア高充填担体を使用した。表5は、触媒に関する詳細を示している。
【0082】
[実施例27〜32]
実施例27は、希釈FCC触媒を表6の本発明の金属添加剤無しに使用した空実験又は対照実験に関する8回の作業の平均を調査した。
【0083】
実施例28は、実施例1、すなわち本発明の好ましい添加剤に関する他の性能試験の結果を調査した。NOxは対照より高かったものの、HCN及びNH3の殆どは、N2に転化されたが、これは、94%の産出量で形成された。また、CO2/COに対して最小限の効果を有していた。一般的なPt促進化平衡触媒により、N2に関して僅か76%の収率を得て、且つ残りは、高水準のCO2に加えて、主としてNOxであった(表6における実施例28)。
【0084】
表6における実施例29〜32は、Mo、Ni、Sn、及びV−促進化FeSbが、促進剤を全く無しよりも更にN2を産出したものの、少なくとも本発明の充填条件下で、促進剤として銅を有する添加剤と比較して、低い活性であったことを示している。
【0085】
[実施例33〜38]
表7における実施例33〜38は、数種類の担体における基本的なFe1Sb2.5Cu1調剤の性能について明らかにし、且つ実施例33は、担体に対して高充填のジルコニアであること以外、実施例1の調製の繰り返しであった。ZrSiO2、カオリン及びFCC触媒担体に関する結果は良好であった。NOxの産出量及びCOの酸化は、アルミナ担体の場合に高いこともあり、そしてSOx添加剤及びW/TiO2SCR担体の場合に大幅に高かった。
【0086】
[実施例39〜47]
表8における実施例39〜47は、種々の金属酸化物の役割及び本発明の実施可能な範囲を規定する実験から得られる結果を明らかにした。
【0087】
実施例39は、流動床に対して20gの充填にて標準的な0.4gの添加剤を用いて行われたものの、かかる添加剤は、Fe、Sb及びCuをゼロ充填にて有していた。窒素の産出量は、上述した対照作業よりも少し高かっただけであり、これにより、FeSbMは、極めて高いN2の産出量を得るために必須であることが示された。
【0088】
1%の充填にて作製された実施例20のFeSbCuに関して2つの試験が行われたものの、反応器への添加剤の充填は、通常の試験より10倍高かったので、反応器におけるFeSbCu酸化物の量は、実施例28の10%の合計MOx充填と同一であった。驚くべきことに、N2の産出量は、FeSbCuが存在しない空担体と本質的に同一であった。3%のMOx充填である実施例21の材料により、同一の驚くべき結果を得た。銅を有さないFe/Sbの3種類の割合についても同様に、低いN2の産出量を示したが、対照の実施例27より依然として高かった。
【0089】
実施例46及び47では、Sb(実施例46及び25)又はFe(実施例47又は26)が調製から除外された以外、反応器に対して標準的な0.4gの用量での金属添加剤及び一般的なFe1Sb2.5Cu1調剤に関する性能を測定した。アンチモン無しの場合のN2産出量は妥当であったが、Sbが含まれた場合には、少なくとも実施例1の当初のサンプルに関する試験結果の場合と同等ではなかった。実施例46に関して明らかな選択性の不都合は見られず、そして性能は、担体のこのようなバッチに対する主要なFeSbCuの処方に関する試験33よりも良好で、ほぼ同一であった。これにより、Sbが役割を有していたのかどうか、及びFeCuそれ自体に価値があり、そして足りるものであったのかどうかへの関心に至った。ここで、表7における実施例33の後に説明される実施例48として、実施例33が繰り返された。実施例48の産出量の結果は、実施例28に匹敵していた。
【0090】
[実施例49〜60]
最後に、1%の新鮮な添加剤−1%の煮沸添加剤ブレンドに対して、2%の新鮮な添加剤及び2%の煮沸添加剤を含む実験を行った。精製装置の運転は複雑であり、そして全ての触媒は時間と共に経年変化するので、これらの実験では、どのようにして添加剤が種々の商業的なシナリオの下で役割を果たすのかを示す助けとなることが可能であった。実施例13〜16の触媒を対比した。なぜなら、混合物として好ましい結果を得るからである。それぞれ、10質量%の合計充填の1/2.5/1のFe/Sb/Cuを含んでいた。
【0091】
表9は、実施例13〜16に関する種々の試験結果を列挙した(実施例49〜60)。
【0092】
好ましい実施形態の実施例13(9%のZrO2/(SiO2+カオリン)担体)により、選択性の低下無しの失活との整合性をもって、煮沸材料に関して低いNOx及びN2、及び高いCOを得た。
【0093】
カオリンのミクロスフェアにて作製された実施例14により、驚くべきことに、高い新鮮なNOx選択性を得た。添加剤の寿命が短かった場合、NOxは、かかる材料を用いた場合に上昇する場合があった。当初の低い選択性が迅速になくなった場合、当初の選択性は、いかなる方法で全体として殆ど寄与しない場合がある。このような担体材料は、その低コスト及び分解反応に対する低い干渉のために好ましい。
【0094】
本発明の他の好ましい実施形態である、担体としてFCC触媒にて作製された実施例15は、良好で新鮮な選択性及び活性を示した。また、失活された材料も選択性を残した。これにより、比較的高い用量をFCC装置に対して迅速に添加可能であること示し、そして結果は、迅速に且つ複雑さ無しに判明した。
【0095】
アルミナ担体を用いて作製された実施例16は、煮沸NOxの選択性及び全体のN2の産出量が大幅に改善されたものの、高い新たなNOx選択性を示した。また、高いCO転化率についても見出されたが、これは望ましくなかった。
【0096】
上述の記載から、当業者であれば、本発明の本質的な特徴を容易に確かめることが可能であり、そして本発明の精神及び目的から逸脱することなく、本発明を種々の用法及び条件に適合するように種々の変更及び修正を行うことが可能である。例えば、全ての実施例において、生成物を真空で乾燥する。しかし、かかる生成物は、大気圧下で乾燥されても良い。
【0097】
【表2】

【0098】
【表3】

【0099】
【表4】

【0100】
【表5】

【0101】
【表6】

【0102】
【表7】

【0103】
【表8】

【0104】
【表9】

【0105】
【表10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
FCC触媒のコークス含有量を減少させるための再生器において、再生器路ガス中のNOx、又はNOx前駆物質排出の量を削減しつつFCC触媒を再生する方法であって、アンモ酸化触媒組成物をFCC再生器に導くステップを含むことを特徴とする再生方法。
【請求項2】
触媒組成物は、
FeSbM(但し、Mが、必要により存在し、第II〜VII族の金属から選択される。)で表される金属添加剤と、該金属添加剤の担持用担体と、を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
MはCuである請求項2に記載の方法。
【請求項4】
アンモ酸化触媒組成物を、新鮮な及び/又は再生されたFCC触媒と混合する請求項1に記載の方法。
【請求項5】
FCC触媒の存在下で接触分解領域における炭化水素原料を分解し、そして再生器においてFCC分解触媒を再生する方法であって、
アンモ酸化触媒組成物を再生器に導くことによって、再生器路ガス中のNOx、又はNOx前駆物質排出の量を削減しつつ再生器中でFCC触媒を再生するステップを含むことを特徴とする改善方法。
【請求項6】
アンモ酸化触媒組成物は、
FeSbM(但し、Mが、必要により存在し、第II〜VII族の金属から選択される。)で表される金属添加剤を含む請求項5に記載の改善方法。
【請求項7】
MはCuである請求項6に記載の方法。
【請求項8】
FeSbM(但し、Mが、第II〜VII族の金属から選択される。)で表される金属添加剤と、該金属添加剤を含む金属酸化物の担持用担体と、を含むNOx排出削減用触媒組成物。
【請求項9】
MはCuである請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
金属添加剤は、酸化物として、触媒に対して5〜15質量%にて含まれる請求項8に記載の組成物。

【公表番号】特表2009−517202(P2009−517202A)
【公表日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−542391(P2008−542391)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【国際出願番号】PCT/US2006/044867
【国際公開番号】WO2007/064510
【国際公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(507276151)ビーエーエスエフ、カタリスツ、エルエルシー (47)
【Fターム(参考)】