説明

部分的に水素化されたラセミ体のansa−メタロセン錯体の製造方法

本発明は、架橋または非架橋型の遷移金属芳香族錯体をアルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物と反応させ、得られた反応混合物を−78〜250℃の温度に加熱し、反応生成物を適当な触媒の存在下で少なくとも部分的に水素化することにより対応する水素化または部分水素化メタロセンを製造することを特徴とする、水素化されたまたは部分的に水素化されたラセミ体のansa−メタロセン錯体を製造する方法、および、オレフィン性不飽和化合物の重合のための触媒または触媒成分として、または立体選択的合成における試薬または触媒として、上記錯体を使用する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素化されたまたは部分水素化されたラセミ体のansa−メタロセン錯体を製造する方法、このメタロセン錯体自体およびその誘導体、および、オレフィン性不飽和化合物の重合のための触媒または触媒成分としてまたは立体選択的合成における試薬または触媒として上記錯体を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
元素周期律表の第3〜6族に属する遷移金属のキラルなメタロセン錯体の用途として、立体特異性オレフィン重合のほかに、エナンチオ選択性有機合成が注目を集めつつある。この用途のために、一般的にラセミ体のメタロセン錯体、すなわちメソ化合物ではない錯体を使用する必要がある。先行技術のメタロセン製造において通常得られるジアステレオマー混合物(ラセミ形とメソ形)の場合には、メソ形が分離されなければならない。従って、以前よりansa−メタロセンのラセミ選択的な製造方法の検討が進められており、一般的な製造方法は、例えばWO99/15538号のパンフレットおよびDE10030638号公報に記載されている。ansa−メタロセンのラセミ選択的な製造は、ansa−メタロセンビスフェノキシドまたはansa−メタロセンビフェノキシドの中間体を介して進行する。
【0003】
エチレンビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリドおよびジメチルシランジイルビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリドのような水素化メタロセンは、“J.Am.Chem.Soc.(1996),118,2105”、“J.Mol.Katal.A.Chem.(1995),102,59”、EP−A−643079号公報、およびJP−A−7292019号公報に開示されている。これらは、アイソタクチックポリプロピレンのようなポリオレフィン、コポリマー、およびエラストマーの製造に適している。さらに、一連の他の水素化メタロセンも、例えばEP−A−581754号公報、JP−A−7041521号公報に開示されている。水素化および部分水素化メタロセンもまた、オレフィン重合のための触媒前駆体として、例えばEP−A−344887号公報、EP−A−185918号公報、EP−A−537686号公報に記載されている。水素化および部分水素化メタロセンは、その不飽和類似体と比較して、異なる三次元構造および異なる重合特性を有しており、この構造および特性により特定の用途における有利な効果および使用の可能性がもたらされる。
【0004】
先行技術では、水素化または部分水素化ansa−メタロセン、特に配位子として部分水素化されたインデニル基を有するansa−メタロセンの製造は、通常ビスインデニルジルコノセンジクロリドの製造、その単離、これに続く水素化、結晶化による水素化または部分水素化生成物の単離を介して行われている。(例えば、EP−839822号公報およびこの公報の引用文献参照)。しかしながら、この製造ルートは、多くの問題を有している。
【0005】
【特許文献1】WO99/15538号のパンフレット
【特許文献2】DE10030638号公報
【特許文献3】EP−A−643079号公報
【特許文献4】JP−A−7292019号公報
【特許文献5】EP−A−581754号公報
【特許文献6】JP−A−7041521号公報
【特許文献7】EP−A−344887号公報
【特許文献8】EP−A−185918号公報
【特許文献9】EP−A−537686号公報
【特許文献10】EP−839822号公報
【非特許文献1】J.Am.Chem.Soc.(1996),118,2105
【非特許文献2】J.Mol.Katal.A.Chem.(1995),102,59
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ansa−メタロセンジクロリド錯体の製造は、通常、金属源として四塩化ジルコニウムを使用する一般的なルートを介して行われ、このルートではansa−配位子をトルエン中に溶解し、強塩基により脱プロトン化し、その後四塩化ジルコニウムと反応させ、対応するansa−メタロセンジクロリド(および2当量の塩化リチウム)を得る。ansa−メタロセンジクロリドは、その生成の間にほとんど沈殿する。この錯体を公知の方法により塩化リチウムから分離し、所望によりさらに結晶化して精製する。
【0007】
この“古典的な”反応ルートは、2つの深刻な問題を有している。まず、ほとんどの場合に、目的のラセミ体のほかに、事実上等量の鏡面対称なメソ形のジアステレオマーが生成する。さらに、この方法を使用して得られるラセミ/メソ混合物の収率は比較的低い(約30〜40%のオーダー)。しかしながら、ansa−メタロセンジクロリドを置換オレフィンの重合のための触媒として使用する場合には、(上述のように)ラセミ体のみを使用しなければならない。ansa−メタロセンジクロリドの製造において、このことのために、しばしば困難で不利なラセミ/メソの分離またはメソ形錯体の分解さえも必要になる。この結果、純粋なラセミ体のansa−メタロセンジクロリドの最終的な収率は、一般的には15〜20%以下である。
【0008】
別の問題点は、製造の効率に関する。上述のように、ansa−メタロセンジクロリドは同時に生成する塩化リチウムから分離しなければならない。この工程は、(特にトルエンに)少し溶解しにくいansa−メタロセンジクロリドを、同様に(トルエンに)事実上溶解しない塩化リチウムから分離するために大量の溶媒が必要となるため、しばしばかなり困難である。従って、この分離工程がこの製造ルートの生産性と効率を制限する。
【0009】
その上、ansa−メタロセンジクロリドの炭化水素溶媒に対する溶解度が低いため、ほとんどの場合に、この錯体の水素化反応における錯体の濃度がかなり低くなる。このことも、全体的な製造ルートにおける生産性および効率を制限する。
【0010】
このため、従来は、部分水素化ansa−メタロセンは、かなり低い収率および不経済な製造条件であっても気にならない場合にのみ得られていた。
【0011】
従って、本発明の目的は、上述の先行技術の問題点を回避し、(NMR測定の精度で)事実上メソ形の異性体を含まない水素化されたまたは部分水素化されたラセミ体のメタロセン錯体を製造するための簡単で安価であるが同時に効率のよい方法を提供することである。本発明の目的は特に、水素化および/または部分水素化メタロセン錯体のラセミ選択的な製造ルートを発見することである。このルートにより、純粋な形態で分離することができる最終生成物を簡単で安価な方法により得ることができる。本発明の目的はまた、主としてオレフィン重合の触媒として直接使用することができるか、または変性した後、例えば“補助配位子”を置換した後、主としてオレフィン重合の触媒としてまたは触媒中で使用することができるか、または立体選択的合成における試薬としてまたは触媒として使用することができる、水素化されたまたは部分水素化されたラセミ体のメタロセン錯体を発見することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明者らは、上述の目的は、各請求項に示した製造方法、得られた水素化されたまたは部分水素化されたラセミ体のメタロセン錯体(VI)、および、この錯体をオレフィン性不飽和化合物の重合の触媒としてまたは触媒中で、または立体選択的合成における試薬または触媒として使用する方法によって達成されることを発見した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
メタロセン錯体に関する“メソ形”、“ラセミ体”および“エナンチオマー”の語の意味は公知であり、例えばRheingoldらにより“Organometallics 11(1992),p1869−1876”に定義されている。
【0014】
本発明に関する限り、“事実上メソ形を含まない”という語は、80%以上、好ましくは少なくとも90%、特に好ましくは少なくとも95%の化合物がラセミ体の形態で存在することを意味する。
【0015】
本発明に関する限り、“水素化(された)または部分水素化(された)”という語は、水素化工程の前に配位子中に存在する少なくとも1対または複数対の不飽和炭素原子、すなわちsp2混成の炭素原子が水素化され、水素化の後に水素飽和形、すなわちsp3混成の炭素原子として存在することを意味する。
【0016】
本発明の水素化されたまたは部分水素化されたラセミ体のansa−メタロセン錯体を製造する方法は、式I
【0017】
【化1】

【0018】
{式中、Mが、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、または元素周期律表の第3族およびランタニドに属する元素を表し、
Xが、同一であっても異なっていてもよく、それぞれフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、水素、C1−C10−アルキル、C6−C15−アリール、炭素原子数1〜10個のアルキル基と炭素原子数6〜20個のアリール基を有するアルキルアリール、−OR10または−NR1011を表し、
nが、1〜4の整数を表し、Mの価数−2の値に対応し、
1〜R8が、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素、ハロゲン、C1−C20−アルキル、置換基としてC1−C10−アルキルを有していてもよい3〜8員のシクロアルキル、C6−C15−アリール、炭素原子数1〜10個のアルキル基と炭素原子数6〜20個のアリール基を有するアルキルアリール、炭素原子数1〜10個のアルキル基と炭素原子数6〜20個のアリール基を有するアリールアルキルを表し、R2〜R7の隣接する基は炭素原子数4〜15個の飽和、部分飽和または不飽和の環基を形成してもよく、R1〜R8はまたSi(R93、−OR10、−SR10、−N(R102、−P(R102を表し、これらの基の全てが完全にまたは部分的にヘテロ原子で置換されていてもよく、
9が、同一であっても異なっていてもよく、それぞれC1−C20−アルキル、C3−C10−シクロアルキル、C6−C15−アリールを表し、これらの基が完全にまたは部分的にヘテロ原子で置換されていてもよく、
10が、同一であっても異なっていてもよく、それぞれC1−C10−アルキル、C6−C15−アリール、C3−C10−シクロアルキル、アルキルアリールまたはSi(R113を表し、
11が、同一であっても異なっていてもよく、それぞれC1−C10−アルキル、C6−C15−アリール、C3−C10−シクロアルキル、アルキルアリールを表し、
Y、Y1が、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ
【0019】
【化2】

【0020】
(式中、R12が、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素、ハロゲン、C1−C10−アルキル、C1−C10−フルオロアルキル、C6−C10−フルオロアリール、C6−C10−アリール、C1−C10−アルコキシ、C2−C10−アルケニル、C7−C40−アリールアルキル、C8−C40−アリールアルケニル、C7−C40−アルキルアリールを表し、または2個の基R12がこれらを結合している原子と共に環を形成してもよく、
1が、ケイ素、ゲルマニウムまたはスズを表す。)を表し、
mが、0、1、2、または3を表し、または、
Yが、非架橋基であり、2個の基R´、R"を表し、
R´、R"が、R1〜R8に対して定義されたのと同じ意味を表し、R´、R"が隣接するR4、R5と炭素原子数4〜15個の飽和、部分飽和または不飽和の環基を形成してもよい。}、
で表される架橋または非架橋遷移金属芳香族錯体を、式II
【0021】
【化3】

【0022】
{式中、
【0023】
【化4】

が、
【0024】
【化5】

のような2価の基を表し、
【0025】
【化6】

が、
【0026】
【化7】

のような2価の基を表し、
13、R13´、R14、R14´が、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素、ハロゲン、C1−C20−アルキル、置換基としてC1−C10−アルキルを有していてもよい3〜8員のシクロアルキル、C6−C15−アリール、炭素原子数1〜10個のアルキル基と炭素原子数6〜20個のアリール基を有するアルキルアリール、炭素原子数1〜10個のアルキル基と炭素原子数6〜20個のアリール基を有するアリールアルキル、Si(R93、−OR10、−SR10、−N(R102、または−P(R102を表し、
Zが、−[Q(R15)(R16)]q
(式中、Qが、同一であっても異なっていてもよく、それぞれケイ素、ゲルマニウム、スズ、または炭素を表し、
15、R16が、それぞれ水素、C1−C10−アルキル、C3−C10−シクロアルキル、またはC6−C15−アリールを表し、
qが、1、2、3または4を表す。)を表し、
17〜R20、R17´〜R20´が、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素、C1−C20−アルキル、置換基としてC1−C10−アルキルを有していてもよい3〜8員のシクロアルキル、C6−C15−アリールまたはアリールアルキルを表し、隣接する基が共同して炭素原子数4〜15個の環基を形成してもよく、R17〜R20、R17´〜R20´はまたSi(R113を表し、
2が、アルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンを表し、
pが、M2がアルカリ土類金属イオンの場合は1を表し、M2がアルカリ金属イオンの場合は2を表す。}、
で表されるシクロペンタジエニル誘導体と反応させる工程、
得られた反応混合物を場合によりフリーラジカルまたはフリーラジカル形成剤を添加して−78℃〜250℃の範囲の温度に加熱し、式III
【0027】
【化8】

で表される錯体を得る工程、および、
該錯体IIIを適当な触媒の存在下で水素によりを少なくとも部分的に水素化する工程を含む。
【0028】
意外にも、水素化または部分水素化メタロセン錯体のラセミ選択的な製造は、式Iで表される遷移金属錯体を対応する架橋ビフェノキシド型または非架橋ビスフェノキシド型配位子から公知の方法による遷移金属ハロゲン化物との反応により好ましくは中間体を分離せずに製造し、この錯体を式IIで表されるシクロペンタジエニル誘導体と反応させることにより後で反応混合物中で接触水素化される式IIIで表される芳香族のビスインデニル配位子を有するビフェノキシド置換またはビスフェノキシド置換メタロセン錯体またはそのヘテロ原子含有類似体を製造すると、成功することがわかっている。
【0029】
この反応ルートにより、ラセミ選択的にかつ高収率で、対応する水素化されたまたは部分水素化されたラセミ体のビフェノキシド置換またはビスフェノキシド置換ansa−メタロセンが得られることがわかっている。この方法により、収率を低下させる複雑なジアステレオマーの分離が回避される。
【0030】
水素化されたまたは部分水素化されたラセミ体のビフェノキシド置換またはビスフェノキシド置換ansa−メタロセンは、直接、または、フェノキシド配位子を置換して対応する部分水素化ansa−メタロセンジクロリド錯体に転化した後、触媒として使用することができる。ビフェノキシド置換またはビスフェノキシド置換ansa−メタロセンは、対応する水素化または部分水素化ansa−メタロセンジクロリド錯体と対照的に、有機溶媒に比較的容易に溶解するため、LiClまたは他の塩または水素化触媒との分離がかなり簡単になる。その上、上述の製造を高濃度の溶液中で行うことができるため、この反応ルートの経済性がさらに改良される。
【0031】
本発明の方法において、方法自体は公知である、式IV
【0032】
【化9】

で表される化合物を好適な脱プロトン化剤を使用して脱プロトン化し、次いで得られた脱プロトン化化合物を適当な式V
【0033】
【化10】

で表される適当な遷移金属化合物と反応させる方法により製造された、式I
【0034】
【化11】

で表される架橋または非架橋遷移金属芳香族錯体を使用するのが好ましい。ただし、上式において、kは0、1、または2を表し、式I、VおよびIV中の置換基および指数は以下の意味をあらわす。すなわち、
Mは、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、特にジルコニウムを表し、
Xは、同一であっても異なっていてもよく、それぞれフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、好ましくは塩素、またはC1−C6−アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、i−ブチル、好ましくはt−ブチル、または、アルコキシド−OR9またはアミド−N(R92を表す。この場合のR9は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ好ましくはC1−C10−アルキル、C6−C15−アリール、それぞれ炭素原子数が1〜10個のアルキル基と炭素原子数が6〜20個のアリール基を有するアルキルアリール、アリールアルキル、フルオロアルキル、またはフルオロアリール、例えばメチル、エチル、i−プロピル、t−ブチル、フェニル、ナフチル、p−トリル、ベンジル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロフェニルを表す。
【0035】
1〜R8は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ好ましくは水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、C1−C20−アルキル、Si(R93、−OR10、−SR10、−N(R102、−P(R102を表し、この場合のR9とR10は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれC1−C10−アルキル、C6−C15−アリール、C3−C10−シクロアルキル、アルキルアリールを表す。
【0036】
さらに、置換基R1〜R8は、置換基としてメチル、エチルまたはプロピルのようなC1−C10−アルキルを有していてもよい3〜8員のシクロアルキルを表してもよい。このようなシクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロペンチル、好ましくはシクロヘキシル、ノルボルニルが挙げられる。特別な形態では、置換基R1〜R8は、フェニルまたはナフチルのようなC6−C15−アリール、p−トリルのような炭素原子数1〜10個のアルキル基と炭素原子数6〜20個のアリール基を有するアルキルアリール、ベンジル、ネオフィルのような炭素原子数1〜10個のアルキル基と炭素原子数6〜20個のアリール基を有するアリールアルキル、Si(R93のようなトリオルガノシリルを表してもよい。この場合のR9は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれC1−C20−アルキル、C6−C15−アリール、C3−C10−シクロアルキルを表し、Si(R93は例えばトリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、トリフェニルシリルを表す。上述の基は、完全にまたは部分的にヘテロ原子、例えばS−、N−、O−またはハロゲン含有構造体で置換されていてもよい。このような置換された基R1〜R8の例としては、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、ヘプタフルオロプロピル、ヘプタフルオロイソプロピル、およびペンタフルオロフェニル基が挙げられる。
【0037】
架橋基Yの場合に好適な置換基R1およびR8、および、非架橋基Yの場合に好適な置換基R1、R´、R"、R8は、互いに独立に、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、i−ブチル、t−ブチルのようなC1−C10−アルキルであり、好ましいのは単純なメチルである。特に好ましいのは、非架橋基Yの場合の置換基R1、R´、R"、R8のすべてが同一であり、それぞれメチル基である場合であり、架橋基Yの場合の置換基R1およびR8が同一であり、それぞれt−ブチル基である場合である。
【0038】
好ましい形態では、非架橋基Yの場合の置換基R1、R´、R"、R8の全てがメチル基であり、特に好ましくは、さらにY1が−O−である場合、すなわち、2分子の2,6−ジメチルフェノールが式IVにおいて配位子として使用されている場合である。さらに、2,4,6−トリメチルフェノールおよび2,4−ジ−t−ブチルフェノールの使用も本発明では好ましい。
【0039】
置換基R3およびR6は、本発明の方法で得られるメタロセン錯体IIIおよびVIの溶解性を変更するために広範に変化させることができ、これらの基は本発明では同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、好ましくは塩素、アルコキシド−OR10、チオラート−SR10、アミン−N(R102、−P(R10)、またはSi(R93を表す。この場合には、R9とR10は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれC1−C10−アルキル、C3−C10−シクロアルキル、特に置換基としてメチル、エチルまたはプロピルのようなC1−C10−アルキルを有していてもよい3〜8員のシクロアルキルを表す。このようなシクロアルキルの例としては、シクロプロピル、シクロペンチル、好ましくはシクロヘキシル、ノルボルニルが挙げられる。その上、R9とR10は、ハロゲンで置換されたアルキルまたはシクロアルキル、例えばトリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、ヘプタフルオロプロピル、またはヘプタフルオロイソプロピルでもよい。
【0040】
当業者は、非極性溶媒へのメタロセン錯体の溶解性を向上させるためにアルキル、シクロアルキルまたは芳香族の置換基R3およびR6を選択することができ、また非極性溶媒へのメタロセン錯体の溶解性を低減するためにハロゲン、アルコキシド、チオラート、アミンなどの極性置換基R3およびR6を選択することができる。
【0041】
後者の場合には、R3およびR6は、塩素または臭素のようなハロゲン、アルコキシド−OR10、チオラート−SR10、またはアミン−N(R102を表す。この場合にはR10は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ノルボルニルである。
【0042】
極めて好ましい形態では、R10はメチルである。式IにおけるR3およびR6は、特に好ましくは塩素、臭素、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、シクロプロピルオキシ、またはシクロヘキシルオキシである。
【0043】
置換基R3およびR6を広範に変更しても、製造のラセミ選択性には悪影響が現れない。従って、選択した反応条件を考慮して、置換基を適当に選択することにより製造の収率を目的に合うように向上させ、改良することができる。
【0044】
本発明に関する限り、フェノキシド、ビフェノキシドまたはビスフェノキシド(またはこれらの類似誘導体)は、全て、本発明における式IVで表される化合物およびその類似誘導体を表す。すなわち、この基本的な構造とY1の位置でのフェノール酸素の代わりにY1に対して定義した他の基または元素とを有する配位子とこの特別な化合物の両方を表す。
【0045】
上述の架橋基YおよびY1の他に、本発明の特に好ましい形態における好ましい架橋基として、メチレン−CH2−、−S−、−O−、−C(CH32−が挙げられる。架橋基Y1が同一であり、それぞれ−O−を表すのが特に好ましい。さらに、mが0であり、両方のY1が酸素を表すビフェノキシドが特に好ましい。
【0046】
Yが非架橋基であり、2個の基R´、R"を表す場合には、これらの基はR1〜R8に対して定義されたのと同じ意味を表し、R1〜R8について好ましい基はR´、R"としても好ましい。その上、基R´、R"は隣接するR4、R5と共に炭素原子数4〜15個の飽和、部分飽和または不飽和の環基を形成してもよい。
【0047】
式IVで表される化合物の脱プロトン化のための脱プロトン化剤としては、例えばn−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、水素化ナトリウム、カリウムt−ブトキシド、マグネシウムから誘導されたグリニャール試薬、ジ−n−ブチルマグネシウム、(n,s)−ジブチルマグネシウムのようなマグネシウム化合物、この他アルカリ土類金属またはアルカリ金属の適当なアルキル化合物が好適である。
【0048】
式Iで表される架橋または非架橋遷移金属錯体は、次いで式IIで表されるシクロペンタジエニル誘導体
【0049】
【化12】

【0050】
(式中の置換基および指数は、上述した定義と同義である。)と、当業者に一般的に知られている方法により反応させられる。
【0051】
式IIで表されるシクロペンタジエニル誘導体としては、
【0052】
【化13】

が、
【0053】
【化14】

であり、
2がアルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオン、特にLi、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、SrまたはBaであり、
Pが、Be、Mg、Ca、Sr、Baの場合には1であり、Li、Na、K、Rb、Csの場合には2であり、
17〜R20、R17´〜R20´が、上述の意味を有する誘導体を使用するのが好ましい。
【0054】
一般的には−78〜110℃の温度範囲、好ましくは反応初期に約20℃で行う手順で反応を行うのが好ましいことがわかっている。この手順において、反応を必要に応じて還流下で沸騰させることにより完了させてもよい。
【0055】
式IVで表される化合物は、まず適当な溶媒または溶媒混合物、例えばトルエンまたはテトラヒドロフラン(THF)中で、例えば水素化ナトリウムまたはn−ブチルリチウムによりまず脱プロトン化され、次いで、遷移金属化合物、例えば四塩化チタン、四塩化ジルコニウム、または四塩化ハフニウムのようなハロゲン化物が、好ましくは式Vで表されるビスTHF付加物またはDME付加物の形態で添加される。または代わりに、式IVの脱プロトン化化合物を遷移金属化合物の溶液に添加することができる。反応が完了したら、生成物Iを一般的には塩を分離した後結晶化させることによって得ることができる。しかしながら、式(I)で表される化合物を単離することなく、塩を除去した後の反応混合物を後続の工程のために使用するのが好ましい。
【0056】
架橋または非架橋遷移金属錯体Iは、一般的に、製造ルートを通して一般的に導入されるルイス塩基をまだ1〜4当量有している。このようなルイス塩基の例としては、ジエチルエーテルまたはテトラヒドロフラン(THF)のようなエーテル、およびTMEDAのようなアミンが挙げられる。しかしながら、例えば減圧下で乾燥することにより、または製造において他の溶媒を選択することにより、ルイス塩基を含まない遷移金属錯体Iを得ることもできる。このような対策は当業者に公知である。
【0057】
式Iで表される遷移金属錯体を、上述のように式IIで表されるシクロペンタジエニル誘導体と反応させ、続いて、以下に示すように、場合により得られた反応混合物を場合によりフリーラジカルまたはフリーラジカル形成剤の存在下で加熱する。
【0058】
Mがジルコニウムであり、基R1〜R8が上述の好ましい意味を有しており、Y1がそれぞれ酸素である遷移金属錯体Iを使用するのが好ましい。特に好適な錯体は、ジクロロジルコニウムビス(2,6−ジメチルフェノキシド)、ジクロロジルコニウムビス(2,4,6−トリメチルフェノキシド)、ジクロロジルコニウムビス(2,6−ジメチル−4−クロロフェノキシド)、ジクロロジルコニウムビス(2,6−ジメチル−4−ブロモフェノキシド)、ジクロロジルコニウムビス(2,6−ジメチル−4−メトキシフェノキシド)、ジクロロジルコニウムビス(2,6−ジメチル−4−エトキシフェノキシド)、ジクロロジルコニウムビス(2,6−ジメチル−4−t−ブトキシフェノキシド)、ジクロロジルコニウムビス(2,4−ジ−t−ブチルフェノキシド)、ジクロロジルコニウムビス(3,5−ジ−t−ブチルフェノキシド)、ジクロロジルコニウム3,3´−ジ−t−ブチル−5,5´−ジメトキシ−1,1´−ビ−2−フェノキシド、ジクロロジルコニウム3,3´−ジ−t−ブチル−5,5´−ジエトキシ−1,1´−ビ−2−フェノキシド、ジクロロジルコニウム3,3´−ジ−t−ブチル−5,5´−ジプロポキシ−1,1´−ビ−2−フェノキシド、ジクロロジルコニウム3,3´−ジ−t−ブチル−5,5´−ジメチルチオ−1,1´−ビ−2−フェノキシド、ジクロロジルコニウム3,3´−ジ−t−ブチル−5,5´−ジエチルチオ−1,1´−ビ−2−フェノキシド、ジクロロジルコニウム3,3´−ジ−t−ブチル−5,5´−ジプロピルチオ−1,1´−ビ−2−フェノキシド、これらの溶媒付加物、および本明細書の実施例に示されているジルコニウムビスフェノキシドおよびジルコニウムビフェノキシド化合物である。
【0059】
本発明の方法における式Iで表される化合物の式IIで表されるシクロペンタジエニル誘導体との反応により、まず公知の方法により式IIIで表される遷移金属錯体が得られる。
【0060】
【化15】

【0061】
上式中、すべての置換基は好ましい置換基を含めて上述の意味を表す。
【0062】
後続の工程において、式IIIで表される錯体は適当な触媒の存在下で少なくとも部分的に水素化され、式VIで表される水素化されたまたは部分水素化されたラセミ体のansa−メタロセン錯体が得られる。
【0063】
【化16】

【0064】
上式中、各置換基および指数は上述の意味、特に好ましいとされた意味を表し、
【0065】
【化17】

は、
【0066】
【化18】

のような二価の基を表し、
【0067】
【化19】

は、
【0068】
【化20】

のような二価の基を表し、
13、R13´、R14、R14´は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素、ハロゲン、C1−C20−アルキル、置換基としてC1−C10−アルキルを有していてもよい3〜8員のシクロアルキル、C6−C15−アリール、炭素原子数1〜10個のアルキル基と炭素原子数6〜20個のアリール基を有するアルキルアリール、炭素原子数1〜10個のアルキル基と炭素原子数6〜20個のアリール基を有するアリールアルキル、Si(R93、−OR10、−SR10、−N(R102、−P(R102を表し、
Zは、−[Q(R15)(R16)]q
(式中、Qが、同一であっても異なっていてもよく、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、または炭素を表し、
15、R16は、それぞれ水素、C1−C10−アルキル、C3−C10−シクロアルキル、C6−C15−アリールを表し、
qは、1、2、3または4を表す。)を表し、
17〜R20、R17´〜R20´は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素、C1−C20−アルキル、置換基としてC1−C10−アルキルを有していてもよい3〜8員のシクロアルキル、C6−C15−アリールまたはアリールアルキルを表し、隣接する基が共同して炭素原子数4〜15個の環基を形成してもよく、R17〜R20、R17´〜R20´はまたSi(R113を表す。
【0069】
特に好ましくは、
【0070】
【化21】

が、
【0071】
【化22】

【0072】
(式中、R17〜R20、R17´〜R20´は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ好ましくは水素、C1−C10−アルキルを表し、隣接する基が共同して炭素原子数4〜15個の環基を形成してもよい)を表す。
【0073】
水素化は、均一触媒または不均一触媒、好ましくは不均一触媒の存在下で行うことができる。好適な触媒は、所望により適当な触媒担体に担持したPt、Pd、Rh、Ru、OsおよびNi、ラニーニッケル、これらの酸化物、塩、または錯体、これらの混合物である。不均一Pd触媒、特にカーボンまたは活性炭上にPdを担持した触媒の存在下で水素化を行うのが特に好ましい。
【0074】
本発明のために好ましい水素化触媒としては、他に硫酸バリウム上にPdを担持した触媒、酸化アルミニウムにPdを担持した触媒、パラジウムブラック、パラジウムスポンジ、酸化白金、白金ブラック、白金スポンジ、二酸化白金などが挙げられる。
【0075】
好適な水素化触媒は、原則として、使用される水素化の条件下で溶媒を水素化しないか、または部分的にしか水素化しない化合物または元素である。
【0076】
接触水素化は、0〜150℃、特に15〜100℃の範囲の温度で行うのが好ましい。反応において使用される溶媒は、適当な水素化に安定な溶媒、特に好ましくはハロゲンを含まない溶媒である。この目的に適した溶媒は、芳香族溶媒、例えばベンゼン、トルエン、キシレン(異性体混合物として)、o−キシレン、p−キシレン、m−キシレン、メシチレン、テトラリン、アニソール、クメン、1,2−ジエチルベンゼン、1,3−ジエチルベンゼン、1,4−ジエチルベンゼン、1−エチル−2−メチルベンゼン、1−エチル−3−メチルベンゼン、1−エチル−4−メチルベンゼンである。アニソール、トルエン、ベンゼン、キシレン(異性体混合物として、または純粋な物質として)、およびテトラリンが好ましい。
【0077】
他の好適な溶媒として、芳香族または脂肪族のエーテル、例えばアニソール、エチルフェニルエーテル、イソプロピルフェニルエーテル、ジエチルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、およびジメトキシエタン(DME)が挙げられる。脂肪族または芳香族のカルボン酸のエステル、例えばエチルアセタートおよびプロピルブチラートも、溶媒として使用することができる。
【0078】
その上、ジクロロメタンのようなハロゲン化溶媒を使用することもできる。しかしながら、ハロゲン化溶媒を比較的多量に使用することができるのは、厳格な安全基準および環境基準が守られているときに限定されるため、ハロゲン化溶媒でない溶媒を使用するのが好ましい。さらに、塩素化溶媒中では、ハロゲン化反応を回避するためには、白金ブラックまたは二酸化白金のような低い活性を有する水素化触媒しか使用することができない。ハロゲン化反応は生成物の分解および使用される装置における腐食の問題を引き起こす。
【0079】
本発明の方法における不均一触媒による水素化は、一般的には、水素ガス(H2)で加圧された適当な圧力容器、すなわちオートクレーブ中で行われる。適当な水素圧は、100barまでの範囲であり、好ましくは30barまでの範囲であり、特に好ましくは20barまでの範囲である。
【0080】
本発明により水素化または部分水素化された式VIで表されるラセミ体のメタロセン錯体は、オレフィン性不飽和化合物の重合のための触媒または触媒成分として、または立体選択的合成における試薬または触媒として、直接使用することができ、または一般的にはさらに変性される。
【0081】
特に、錯体VI中のフェノキシド配位子の一方または両方、または1個のビフェノキシド配位子は、例えば、使用前に置換反応により置き換えることができる。好適な置換方法は、式VIで表されるラセミ体のメタロセン錯体とSOCl2、四塩化ケイ素、メチルアルミニウムジクロリド、ジメチルアルミニウムクロリド、三塩化アルミニウム、ジアルキルアルミニウムクロリド、アルミニウムセスキクロリド、特に好ましくはエチルアルミニウムジクロリド、またはハロゲン化水素、すなわちHF、HBr、HI、好ましくはHCl(HClは一般的にはそのまま使用されるか、または水中またはジエチルエーテルまたはTHFのような有機溶媒中の溶液として使用される)のようなブレンステッド酸との反応である。特に好適な溶媒は、脂肪族炭化水素、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、芳香族炭化水素、例えばトルエン、o−、m−、またはp−キシレン、またはイソプロピルベンゼン(クメン)、エーテル、例えばテトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、メチルt−ブチルエーテル、またはジメトキシエタン(DME)、アミン、例えばジイソプロピルアミン、テトラメチルエタンジアミン(TMEDA)またはピリジンである。
【0082】
また、炭化水素とエーテルまたはアミンまたはこの両方を含むルイス塩基含有溶媒混合物、例えばトルエンとTHFの混合物、トルエンとDMEの混合物、またはトルエンとTMEDAの混合物も好適である。この場合、ルイス塩基は、溶媒混合物に対して一般的には0.01〜50mol%、好ましくは0.1〜10mol%の量で存在する。特に有用な置換試薬は、カルボン酸のハロゲン化物、例えばアセチルクロリド、フェニルアセチルクロリド、2−チオフェンアセチルクロリド、トリクロロアセチルクロリド、トリメチルアセチルクロリド、O−アセチルマンデリルクロリド、1,3,5−ベンゼントリカルボキシルクロリド、2,6−ピリジンカルボキシルクロリド、t−ブチルアセチルクロリド、クロロアセチルクロリド、4−クロロフェニルアセチルクロリド、ジクロロアセチルクロリド、3−メトキシフェニルアセチルクロイド、アセチルブロミド、ブロモアセチルブロミド、アセチルフロリド、ベンゾイルフロリドであり、これらは一般的には上述の溶媒中でまたはそのままで使用される。
【0083】
この反応により、通常式VIaで表される類似体のモノハロゲン化物またはジハロゲン化物が得られる。
【0084】
【化23】

【0085】
式中、Halはフッ素、塩素、臭素またはヨウ素を表す。
【0086】
本発明の方法により製造可能な式VIaで表されるメタロセンのうち好ましいものを以下に示すが、式VIaで表されるメタロセンはこれらに限定されない。
【0087】
rac−ジメチルシランジイルビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド;
rac−ジメチルシランジイルビス(2−メチル−4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド;
rac−ジメチルシランジイルビス(2−4,5,6,7−テトラヒドロメチルインデニル)ジルコニウムジブロミド;
rac−ジメチルシランジイルビス(2−メチル−4−フェニル−4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド;
rac−ジメチルシランジイルビス[2−メチル−4−(1−ナフチル)−4,5,6,7−テトラヒドロインデニル]ジルコニウムジクロリド;
rac−ジメチルシランジイルビス[2−メチル−4−(1−ナフチル)−4,5,6,7−テトラヒドロインデニル]ハフニウムジクロリド;
rac−ジメチルシランジイルビス(2−メチル−6,7−ジヒドロ−4,5−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリド;
rac−ジメチルシランジイルビス(4,5,6,7−テトラヒドロ−4,5−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリド;
rac−ジメチルシランジイルビス(2−メチル−4,6−ジイソプロピル−4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド;
rac−ジメチルシランジイルビス(2−メチル−4,6−ジイソプロピル−4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジフロリド;
【0088】
rac−ジメチルシランジイルビス(2−エチル−4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド;
rac−ジメチルシランジイルビス(2−エチル−4−フェニル−4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド;
rac−ジメチルシランジイルビス(2−エチル−4−フェニル−4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ハフニウムジクロリド;
rac−ジメチルシランジイルビス[2−エチル−4−(1−ナフチル)−4,5,6,7−テトラヒドロインデニル]ジルコニウムジクロリド;
rac−ジメチルシランジイルビス(2−エチル−6,7−ジヒドロ−4,5−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリド;
rac−ジメチルシランジイルビス(4,5−ベンゾ−4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド;
rac−ジメチルシランジイルビス(2−エチル−4,6−ジイソプロピル−4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド;
rac−ジメチルシランジイルビス(2−エチル−4,6−ジメチル−4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド;
rac−ジメチルシランジイルビス(2,4,6−トリメチル−4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ハフニウムジクロリド;
rac−イソプロピリデンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド;
rac−エタンジイルビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジフロリド;
rac−エタンジイルビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド;
rac−エタンジイルビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジブロミド;
rac−エタンジイルビス(2−メチル−4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド;
rac−エタンジイルビス(2−エチル−4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド;
rac−エタンジイルビス(2−エチル−4,6−ジイソプロピル−4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド;
rac−エタンジイルビス(2−メチル−6,7−ジヒドロ−4,5−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリド;
rac−エタンジイルビス(2−エチル−6,7−ジヒドロ−4,5−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリド;
rac−エタンジイルビス(2−エチル−4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド;
rac−エタンジイルビス(2−エチル−4−フェニル−4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド;
rac−エタンジイルビスビス(2−エチル−4−フェニル−4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ハフニウムジクロリド;
rac−エタンジイルビス「2−エチル−4−(1−ナフチル)−4,5,6,7−テトラヒドロインデニル」ジルコニウムジクロリド;
および本明細書の実施例に示されている化合物。
【0089】
他の特に好適な置換方法は、式VIで表される水素化されたまたは部分水素化されたラセミ体のメタロセン錯体と有機アルミニウム化合物、例えばトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムのようなトリ−C1−C10−アルキルアルミニウムとの反応である。現在のところ、この反応により、式VIで表される化合物に類似した有機化合物(ビ(ス)フェノキシドの代わりに有機基、例えばメチル、エチル、n−ブチル、i−ブチルのようなC1−C10−アルキルが置換)と例えば有機アルミニウムビナフトキシドが形成されることがわかっている。
【0090】
置換反応では、各成分は通常モノ置換物が目的物であるのかジ置換物が目的物であるのかに応じて化学量論比で使用される。
【0091】
特に好ましい形態では、rac−エタンジイルビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリドが、本発明の方法において、ジハロジルコニウムビス(2,4,6−トリメチルフェノキシド)化合物またはジハロジルコニウムビス(2,4−ジメチルフェノキシド)化合物またはジハロジルコニウムビス(2,4−ジ−t−ブチルフェノキシド)化合物をエタン−1,2−ジイルビスインデニルジリチウムと反応させることにより、エタンジイルビス(インデニル)ジルコニウムビス(2,4,6−トリメチルフェノキシド)またはエタンジイルビス(インデニル)ジルコニウムビス(2,4−ジメチルフェノキシド)またはエタンジイルビス(インデニル)ジルコニウムビス(2,4−ジ−t−ブチルフェノキシド)を製造し、これらをさらに水素化してエタンジイルビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムビス(2,4,6−トリメチルフェノキシド)またはエタンジイルビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムビス(2,4−ジメチルフェノキシド)またはエタンジイルビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムビス(2,4−ジ−t−ブチルフェノキシド)を製造し、次いでフェノキシド基を置換することにより製造される。
【0092】
本発明の方法により、メタロセン錯体IIIのラセミ体、これから製造することができる水素化または部分水素化錯体VI、およびこれから得ることができる対応するジハロゲン化物VIa、および類似化合物を極めて選択性よく製造することができる。
【0093】
水素化されたまたは部分水素化されたラセミ体のメタロセン錯体VIおよびこれから得られる化合物は、本発明の新規な方法により選択的にかつ高収率で得られる。その上、本発明の方法により、得られる生成物の溶解性をフェノキシドまたはビフェノキシド配位子に対する適当な置換基を選択することにより簡単な方法で制御することができ、このことは生成物の分離をより簡単にし、製造の収率を増加させる。また、水素化されるべき錯体IIIの非極性溶媒中での溶解性が高いと、高濃度溶液中で作業を行うことができ、このことは従来技術の方法に比較して本発明の製造方法の経済性と効率を大きく向上させる。
【0094】
さらなる重要な利点は、本発明の方法が単一容器工程としてラセミ選択的に実施しうる点である。本発明において、“単一容器工程”とは、それぞれの反応工程の後に中間体を分離しない工程を意味する。前の反応工程で得られた反応生成混合物を使用して後続の反応を直接行うことができる。
【0095】
本発明において得られた水素化されたまたは部分水素化されたラセミ体のメタロセン錯体、特に式VIで表される錯体または例えば(ビ)フェノキシド配位子の置換によって得られる式VIaで表される上述の誘導体は、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、スチレンのようなオレフィン性不飽和化合物の重合のための触媒としてまたは触媒組成物において使用することができる。これらは、プロピレン、スチレンのようなプロキラルなオレフィン性不飽和化合物の立体選択的重合に特に適している。本発明において得られるラセミ体のメタロセン錯体が“メタロセン成分”として作用する好適な触媒または触媒組成物は、例えば、EP−A−700935号公報の7頁の34行から8頁の21行、および式(IV)(V)に記載されているように、メタロセニウムイオンを形成する化合物によって通常得られる。メタロセニウムイオンを形成可能な他の化合物としては、メチルアルモキサンのようなアルモキサン(RAlO)nまたはホウ素活性剤が挙げられる。
【0096】
本発明により得られるラセミ体のメタロセン、特に式VIで表される錯体または例えば(ビ)フェノキシド配位子の置換によって得られる式VIaで表される上述の誘導体は、立体選択的合成、特に立体選択的な有機物合成において、試薬としてまたは触媒としてまたは触媒組成物において使用することができる。例としては、C=C二重結合またはC=OおよびC=N二重結合の立体選択的アルキル化または立体選択的還元反応が挙げられる。
【実施例】
【0097】
一般的手順:有機金属化合物の製造および取り扱いは、アルゴン雰囲気下で空気および湿分を排除して行った(シュレンク法またはグローブボックス)。必要な全ての溶媒は、使用前にアルゴンを通気してモレキュラーシーブ上で乾燥した。
【0098】
以下の例で使用した溶媒および試薬は、市販品である。例えは:
トルエン:分析グレード、Merck社製
THF:99.9%、無水物、Acros社製
n−ブチルリチウム:トルエン中20質量%溶液、Chemmetall社製
ビフェノール:99%+、Aldrich社製
ZrCl4:98%、Cezus Chemie社製
2,4,6−トリメチルフェノール:97%、Aldrich社製。
【0099】
架橋ビスインデニル配位子の製造は、先行技術において当業者に公知の慣用の方法で行ったが、使用したビスインデニルのいくつかは市販されている化合物である。使用したBuLi溶液の濃度は、トルエン中約20質量%(約2.6M)であった。
【0100】
例1A
エタンジイルビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムビス(2,4,6−トリメチルフェノキシド)の製造
a)ZrCl4(DME)の製造
乾燥した500mLの3口丸底フラスコに電磁攪拌子、滴下濾斗、およびコック付の排気部を取付け、不活性ガスを通気し、この中で10.6g(45.47mmol)の四塩化ジルコニウムを50gのトルエンに懸濁させた。この懸濁液を氷浴で約4℃に冷却し、次いで4.2gのDMEを滴下濾斗を介して15分間でゆっくりと添加した。懸濁液を室温に加温し、さらに1時間攪拌した。
【0101】
b)Li(2,4,6−Me3−C62O)の製造
乾燥した500mLの3口丸底フラスコに電磁攪拌子、滴下濾斗、およびコック付の排気部を取付け、不活性ガスを通気し、この中で12.8g(91mmol)の2,4,6−トリメチルフェノールを50gのトルエンと8.4gのDMEに溶解した。溶液を氷浴で約4℃に冷却し、次いで28.3gのBuLi溶液(濃度20質量%)を滴下濾斗を介して15分間添加した。添加を完了した後、溶液を室温に加温し、さらに室温で1時間攪拌した。
【0102】
c)(DME)Cl2Zr(2,4,6−Me3−C62O)2の製造
窒素雰囲気下、室温で、工程b)で得られた溶液を工程a)で得られた懸濁液に注射器を使用して数分間で添加した。丸底フラスコに残った残留リチウムフェノキシドは、10mLのトルエンを使用して洗浄した。
【0103】
d)エタン−1,2−ジイルビスインデニルジリチウムの製造
乾燥した1000mLの3口丸底フラスコに電磁攪拌子、滴下濾斗、およびコック付の排気部を取付け、不活性ガスを通気し、この中で9.80g(37.9mmol)の1,2−エタンジイルビスインデニルを50gのトルエンおよび8.4gのDMEに溶解した。室温で、25.6gのBuLi溶液(濃度20質量%)を20分間でゆっくりと滴下した。得られた懸濁液をさらに2.5時間室温で攪拌した。
【0104】
e)エタンジイルビス(インデニル)ジルコニウムビス(2,4,6−トリメチルフェノキシド)の製造
窒素雰囲気下、工程c)で得られた懸濁液を工程d)で得られた懸濁液に注射器で添加した。丸底フラスコに残った残留物は、10mLのトルエンを使用して洗浄した。得られた懸濁液を室温で終夜攪拌し、次いで60℃に加熱し、窒素雰囲気下、注射器により、不活性ガスを通気したガラスフィルターNo.4上に移した。懸濁液をコック付の1000mLの丸底フラスコ中にろ過し、濾過後のケーキを10gのトルエンで洗浄した。
【0105】
f)水素化によるエタンジイルビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムビス(2,4,6−トリメチルフェノキシド)の製造
工程e)で得られた溶液を、窒素雰囲気下、水素導入部を有する1000mLのオートクレーブに移した。2.3gのカーボンに担持したパラジウムおよび2.8gのNHEt2をこの溶液に添加した。攪拌子を回転させ、反応器を窒素で三回次いで水素で三回置換した。反応器を60℃に加熱し、水素で20barに加圧した。2時間後、圧力が約17barに降下し、再び20barに戻した。4.5時間後、圧力が約19barに降下し、再び20barに戻した。攪拌および加熱を停止し、反応器を終夜放置した。12時間後、水素圧が17barに降下し、再び20barに戻した。NMRスペクトルより、反応が不完全であることが確認された。2.5mol%のPd/Cを30gのトルエンの懸濁液として添加した。反応器を再び4時間60℃に加熱したが、水素は消費されなかった。10.9mol%のPd/Cを50gのトルエンの懸濁液として添加した。攪拌および加熱をしないで19時間放置したところ、水素圧が18barに降下した。反応器を再び60℃に加熱し、2.5時間後に室温に冷却した。得られた溶液を濾過した。濾過液の質量は353gであった。1H−NMRスペクトルより、出発化合物から目的の錯体への完全な水素化が確認された。
【0106】
次いで、濾過液を2つに分割した。それぞれの172.5gの質量の画分は、約20mmolの水素化された目的の錯体エタンジイルビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムビス(2,4,6−トリメチルフェノキシド)を含んでいた。
【0107】
例1B
エタンジイルビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリドの製造
10gのトルエンに3.5gの塩化アセチルを溶解させた溶液を、滴下濾斗を介して室温で、例1Aで得られた172.5gの溶液にゆっくりと添加した。溶液を添加している間に、沈殿が生成した。次いで混合物を室温で5時間放置した。5gのトルエンに溶解した0.8gの塩化アセチルを、次いで滴下濾斗を介して添加した。1H−NMRスペクトルに、出発錯体(ビスフェノキシド)に帰属される共鳴は認められなかった。懸濁物を終夜放置した後濾過した。濾過後のケーキを減圧下で乾燥したところ、3gの質量になった。1H−NMRスペクトルより、純粋なラセミ体のエタンジイルビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリドが確認された。総合的な収率は約35%であった。濾過液は188.7gの質量を有していた。
【0108】
次いで濾過液を21.7gに濃縮したところ、少量の沈殿物が生成した。少量のヘキサンを添加したが、沈殿はもはや生成しなかった。例1Aと例1Bの総合的な収率は35%であった。
【0109】
例2
エタンジイルビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムビス(2,4,6−トリメチルフェノキシド)およびエタンジイルビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリドの改良された製造
a)ZrCl4(THF)2の製造
乾燥した500mLの3口丸底フラスコに電磁攪拌子、滴下濾斗、およびコック付の排気部を取付け、不活性ガスを通気し、この中で10.6g(45.47mmol)の四塩化ジルコニウムを50gのトルエンに懸濁させた。この懸濁液を氷浴で約4℃に冷却し、次いで6.9gのTHFを滴下濾斗を介して15分間でゆっくりと添加した。得られた懸濁液を室温に加温し、さらに40分間攪拌した。
【0110】
b)Li(2,4,6−Me3−C62O)の製造
乾燥した500mLの3口丸底フラスコに電磁攪拌子、滴下濾斗、およびコック付の排気部を取付け、不活性ガスを通気し、この中で12.8g(91mmol)の2,4,6−トリメチルフェノールを50gのトルエンと6.6gのTHFに溶解した。溶液を氷浴で約4℃に冷却し、次いで28.3gのBuLi溶液(濃度20質量%)を、滴下濾斗を介して15分間で滴下した。添加を完了した後、混合物を室温に加温し、さらに室温で40分間攪拌した。
【0111】
c)(THF)2Cl2Zr(2,4,6−Me3−C62O)2の製造
窒素雰囲気下、室温で、工程b)で得られた溶液を工程a)で得られた懸濁液に注射器により数分間で添加し、得られた懸濁液をさらに2.5時間室温で攪拌した。
【0112】
d)エタン−1,2−ジイルビスインデニルジリチウムの製造
乾燥した1000mLの3口丸底フラスコに電磁攪拌子、滴下濾斗、およびコック付の排気部を取付け、不活性ガスを通気し、この中で9.80g(37.9mmol)の1,2−エタンジイルビスインデニルを50gのトルエンおよび3.9gのTHFに溶解した。室温で、25.6gのBuLi溶液(濃度20質量%)を20分間でゆっくりと滴下した。得られた懸濁液をさらに2.5時間室温で攪拌した。
【0113】
e)エタンジイルビス(インデニル)ジルコニウムビス(2,4,6−トリメチルフェノキシド)の製造
窒素雰囲気下、工程c)で得られた懸濁液を工程d)で得られた懸濁液に注射器により添加した。得られた懸濁液を室温で48時間攪拌し、次いで注射器により不活性ガスを通気したガラスフィルターNo.4上に移した。懸濁液をコック付の1000mLの丸底フラスコ中にろ過した。
【0114】
f)水素化によるエタンジイルビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムビス(2,4,6−トリメチルフェノキシド)の製造
工程e)で得られた懸濁液を、窒素雰囲気下、水素導入部を有する1000mLのオートクレーブに移した。2.3gのカーボンに担持したパラジウムおよび7.7gのトリエチルアミンをこの溶液に添加した。攪拌子を回転させ、反応器を窒素で三回次いで水素で三回置換した。反応器を80℃に加熱し、次いで水素で20barに加圧した。2.5時間後、圧力が約17.5barに降下した。NMRスペクトルより、出発化合物の完全な水素化が確認された。攪拌および加熱を停止し、反応器を4時間室温に冷却した。水素化触媒を分離するために、懸濁液をザイツフィルターで濾過した。濾過液の質量は290gであった。濾過液を50℃、150−200mbarの条件下で、131.5gに濃縮した。
【0115】
g)エタンジイルビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリドの製造
50gのトルエンに7.5gの塩化アセチルを溶解させた溶液を、滴下濾斗を介して室温で工程f)で得られた溶液に滴下した。塩化アセチル溶液を添加している間に、沈殿が生成した。塩化アセチル溶液を全部添加した後、懸濁液を室温で4時間放置した。この間、緻密な沈殿が生成した。沈殿を溶解させずに反応混合物を30℃に加熱した。反応混合物を室温でさらに48時間攪拌した。次いで30gのヘプタンをこの溶液に添加した。生成した沈殿物を濾過し、20gのヘプタンで3回、10gのヘプタンで1回洗浄した。沈殿物を減圧下で数時間乾燥したところ、最終的な質量は8.3gになった。1H−NMRスペクトルより、濾過された沈殿が純粋なrac−エタンジイルビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリドから成ることが確認された。総合的な収率は50%(配位子量基準)であった。
【0116】
例3
エタンジイルビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムビス(2,4,6−トリメチルフェノキシド)およびエタンジイルビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリドの増量した製造
a)ZrCl4(THF)2の製造
例2の工程a)の手順で製造を行った。ただしZrCl4を46.6g(199.97mmol)、トルエンを219.8g、THFを30.3g使用した。
【0117】
b)Li(2,4,6−Me3−C62O)の製造
例2の工程b)の手順で製造を行った。ただし2,4,6−トリメチルフェノールを56.3g(413.3mmol)、トルエンを220g、THFを29g、20%濃度BuLi溶液を124.3g使用した。
【0118】
c)(THF)2Cl2Zr(2,4,6−Me3−C62O)2の製造
例2の工程c)の手順で製造を行った。
【0119】
d)エタン−1,2−ジイルビスインデニルジリチウムの製造
例2の工程d)の手順で製造を行った。ただし1,2−エタンジイルビスインデニル43.1g(166.82mmol)をトルエン220gおよびTHF17.1g中に使用し、20%濃度BuLi溶液を112.5g滴下した。
【0120】
e)エタンジイルビス(インデニル)ジルコニウムビス(2,4,6−トリメチルフェノキシド)の製造
例2の工程e)の手順で、工程c)で得られた懸濁液を工程d)で得られた懸濁液を混合することにより製造を行った。残った残留物は10mLのトルエンで洗浄した。得られた懸濁液を室温で2時間攪拌し、次いで窒素雰囲気下ガラスフィルターNo.4上で濾過した。濾過後のケーキを50gのトルエンで洗浄した。濾過液の総質量は1097.4gであり、ケーキの質量は31gであった。濾過液を3つに分割した。
【0121】
f1)トリエチルアミンの存在下での水素化によるエタンジイルビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムビス(2,4,6−トリメチルフェノキシド)の製造
274.35g(理論値41.8mmol)の工程e)で得られた濾過液を、窒素雰囲気下、水素導入部を有する1000mLのオートクレーブに移した。8.5gのトリエチルアミンをこの溶液に添加し、次いで2.5gのカーボンに担持したパラジウムを添加した。攪拌子を回転させ、反応器を窒素で三回次いで水素で三回置換した。次いで、反応器を80℃に加熱し、水素で20barに加圧した。40分後、水素圧が約18barに降下し、20barに戻した。さらに2時間後、圧力は20barのままであった。NMRスペクトルより、目的の化合物への完全な水素化が確認された。反応器を1.5時間冷却し、懸濁液を丸底フラスコに移し、反応器を20gのトルエンで洗浄した。水素化触媒を分離するために、懸濁液をザイツフィルターで濾過し、濾過物を20gのトルエンで洗浄した。濾過液の質量は390.8gであった。
【0122】
g1)エタンジイルビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリドの製造
10mLのトルエンに3.3gの塩化アセチルを溶解させた溶液を、滴下濾斗を介して室温で工程f1)で得られた溶液に滴下した。添加の間に、沈殿が生成した。添加後、懸濁液を室温で1時間放置した。10gのトルエンに3.3gの塩化アセチルを溶解させた溶液をさらに滴下した。反応混合物を室温で12時間放置した。反応混合物を次いで40℃に5時間加熱し、次いで室温で72時間放置した。次いで10gのトルエンに1.8gの塩化アセチルを溶解させた溶液をさらに添加し、得られた混合物を室温で全体で17時間攪拌した。次いで反応混合物を45℃に4時間加熱し、さらに室温で96時間攪拌した。次いで混合物を濃縮して100mLを留出させた。混合物をNo.3フィルターで濾過し、濾過後のケーキを15gのトルエンで洗浄した。濾過後のケーキを減圧下で数時間乾燥したところ、質量は11.4gになった。1H−NMRスペクトルより、純粋なラセミ体のエタンジイルビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリドであることが確認された。
【0123】
濾過液を260gに濃縮し、12時間−20℃で放置した。形成された沈殿を濾過し、濾過後のケーキを少量のトルエンで洗浄した。沈殿物を減圧下で乾燥したところ、17gの質量であった。1H−NMRスペクトルより、純粋なラセミ体の生成物であることが確認された。濾過液は94gの質量であり、1H−NMRスペクトルよりほんの少量の錯体が確認された。総合収率は44%(配位子量基準)であった。
【0124】
f2)アミンを添加しない条件での水素化によるエタンジイルビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムビス(2,4,6−トリメチルフェノキシド)の製造
274.35g(理論値41.8mmol)の工程e)で得られた溶液を、窒素雰囲気下、水素導入部を有する1000mLのオートクレーブに移した。2.5gのカーボンに担持したパラジウムをこの溶液に添加した。攪拌子を回転させ、反応器を窒素で三回次いで水素で三回置換した。次いで、反応器を80℃に加熱し、水素で20barに加圧した。1時間後、圧力が約17.5barに降下し、20barに戻した。1.5時間後、圧力が約19barに降下し、20barに戻した。4時間後、圧力が約18barに降下し、20barに戻した。1H−NMRスペクトルより、エタンジイルビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウム(2,4,6−トリメチルフェノキシド)への完全な水素化が確認された。
【0125】
次いで反応器を水素圧10barの条件で30分間室温に冷却した。懸濁液をフラスコに移し、ザイツフィルターで水素化触媒を分離するために濾過した。濾過液は保存された。
【0126】
g2)エタンジイルビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリドの製造
6.6gの塩化アセチルを、滴下濾斗を介して室温で工程f2)で得られた溶液にゆっくりと添加した。添加完了後、懸濁液を17時間攪拌した。次いで懸濁液を濾過し、濾過後のケーキを10gのトルエンで2回洗浄し、次いで10gのヘプタンで洗浄し、次いで再び10gのトルエンで洗浄した。濾過後のケーキを減圧下で数時間乾燥したところ、6.9gになった。NMRスペクトルは、純粋なラセミ体のエタンジイルビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリドを示していた。濾過液は331.5gの質量を有しており、40℃、100〜150mbarで97.2gに濃縮された。濃縮された濾過液にヘプタンを添加した。白色の沈殿が速やかに生成し、この沈殿を濾過し、数時間減圧下で乾燥したところ、質量は0.5gであった。1H−NMRスペクトルは、純粋なラセミ体の錯体を示していた。総合収率は42%(配位子量基準)であった。
【0127】
f3)水素化によるエタンジイルビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムビス(2,4,6−トリメチルフェノキシド)の製造
548.7g(理論値83.6mmol)の工程e)で得られた溶液を、窒素雰囲気下、水素導入部を有する1000mLのオートクレーブに移した。5gのカーボンに担持したパラジウムをこの溶液に添加した。攪拌しながら、反応器を窒素で三回次いで水素で三回置換した。次いで、反応器を80℃に加熱し、水素で20barに加圧した。1.5時間後、圧力が約6barに降下した。反応を停止した。1H−NMRスペクトルより、KL050への完全な水素化が確認された。攪拌と加熱を停止し、反応器を室温に冷却した。懸濁液を丸底フラスコに移し、ザイツフィルターで水素化触媒を分離するために濾過した。濾過液の質量は585.6gであった。濾過液をそれぞれ146.4gの3つの画分に分割した。
【0128】
g3a)2段階で塩化アセチルを添加するエタンジイルビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリドの製造
5gのトルエンに1.95gの塩化アセチルを溶解させた溶液を、滴下濾斗を介して室温で工程f3)で得られた146.4gの溶液にゆっくりと添加した。次いで反応混合物を室温で1時間攪拌し、その後、5gのトルエンに1.95gの塩化アセチルを溶解させた溶液をさらに添加し、反応混合物を室温でさらに5.5時間攪拌した。この間、約4時間後に沈殿が生成した。反応混合物をさらに12時間攪拌した。次いで懸濁液をもとの質量の30%になるまで濃縮し、次いでNo.3フィルターで濾過した。沈殿を減圧下で数時間乾燥したところ、3.1gになった。1H−NMRスペクトルは、純粋なラセミ体の錯体を示していた。濾過液は46.9gの質量であった。総合収率は35%(配位子量基準)であった。
【0129】
g3b)1段階で塩化アセチルを添加するエタンジイルビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリドの製造
塩化アセチルの全体量(3.7g)を室温で1段階で滴下濾斗を介して添加し、反応混合物を室温の代わりに45℃で5時間攪拌した以外は、工程g3a)の手順を繰り返して製造を行った。約2時間後に沈殿が生成した。次いで懸濁液をもとの質量の46%になるまで濃縮し、No.3フィルターで濾過した。沈殿を少量のトルエンで洗浄し、次いで減圧下で数時間乾燥したところ、2.3gになった。1H−NMRスペクトルは、純粋なラセミ体の錯体の形成を示していた。濾過液は89.7gの質量であった。総合収率は26%(配位子量基準)であった。
【0130】
g3c)希釈しない塩化アセチルを添加するエタンジイルビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリドの製造
3.7gの塩化アセチルを、滴下濾斗を介して45℃で工程f3)で得られた146.4gの溶液に添加した。次いで反応混合物をこの温度で2時間攪拌したところ、沈殿が生成した。次いで懸濁液をもとの質量の約60%になるまで濃縮し、No.3フィルターで濾過した。沈殿を減圧下で数時間乾燥したところ、2.2gになった。1H−NMRスペクトルは、純粋なラセミ体の錯体の形成を示していた。濾過液は114.2gの質量であった。総合収率は26%(配位子量基準)であった。
【0131】
例4
中間体を単離するエタンジイルビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムビス(2,4,6−トリメチルフェノキシド)の製造
a)ZrCl4(THF)の製造
これまでの例の工程a)の手順で製造を行った。ただしZrCl4を46.6g(199.97mmol)、トルエンを80g、THFを30.3g使用した。
【0132】
b)Li(2,4,6−Me3−C62O)の製造
これまでの例の工程b)の手順で製造を行った。ただし2,4,6−トリメチルフェノールを56.3g(413.3mmol)、トルエンを100g、THFを29g、BuLi溶液を124.3g使用した。
【0133】
c)(THF)2Cl2Zr(2,4,6−Me3−C62O)2の製造
これまでの例の工程c)の手順で製造を行った。
【0134】
d)エタン−1,2−ジイルビスインデニルジリチウムの製造
これまでの例の工程d)の手順で製造を行った。ただし、1,2−エタンジイルビスインデニル46.51g(179.98mmol)、トルエン80g、THF17.1g、BuLi溶液112.5gを使用した。
【0135】
e)エタンジイルビス(インデニル)ジルコニウムビス(2,4,6−トリメチルフェノキシド)の製造
これまでの例の工程e)の手順で製造を行った。ただし、濾過後のケーキを40gのトルエン、次いで35gのトルエンで洗浄した。理論上の濃度は14.6g、濾過液の質量は750.7gであった。
【0136】
エタンジイルビス(インデニル)ジルコニウムビス(2,4,6−トリメチルフェノキシド)の単離
工程e)で得られた約200gの溶液を、溶媒の質量が半分未満になるまで(123g)蒸発させて濃縮した。室温で数時間後に、この溶液から錯体が結晶化した。錯体を濾過して分離し、5mLのトルエンで洗浄し、減圧下で乾燥した。13.35gの錯体が得られた。母液をさらに減圧下で濃縮したところ、室温で数日後にさらに2.61gの結晶を得た。総合収率は15.61g(25.26mmol)であった。従って、反応全体での収率は52%(94.81mmol)である。
【0137】
f1)水素化によるエタンジイルビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムビス(2,4,6−トリメチルフェノキシド)の製造
557.6g(理論値134mmol)の工程e)で得られた溶液を、窒素雰囲気下、水素導入部を有する1000mLのオートクレーブに移した。8gのカーボンに担持したパラジウムをこの溶液に添加した。攪拌子を回転させ、反応器を窒素で三回次いで水素で三回置換した。次いで、反応器を80℃に加熱し、水素で20barに加圧した。60分後、水素圧が約0barに降下し、再び20barに戻した。1.5時間後、圧力は17barに降下した。1H−NMRスペクトルは、エタンジイルビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムビス(2,4,6−トリメチルフェノキシド)への完全な水素化と痕跡量の不純物を示していた。反応器を1.5時間37℃に冷却し、懸濁液を丸底フラスコに移し、水素化触媒を分離するために懸濁液をザイツフィルターで濾過した。濾過物を20gのトルエンで洗浄した。濾過液の質量は567.9gであった。
【0138】
エタンジイルビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムビス(2,4,6−トリメチルフェノキシド)の単離
155.36gの工程f1)で得られた溶液を大幅に濃縮(溶媒約30mL)した。数時間後、室温で溶液から錯体がゆっくりと結晶化した。溶液をさらに約20mLに濃縮し、粘着性のオイルを残した。50mLのヘプタンを室温で添加した。白色の結晶として錯体が沈殿した。フラスコを−20℃で3日間保存し、次いで沈殿を濾過した。錯体が炭化水素にも極めて高い溶解性を示すため、7.34gの錯体しか単離できなかった。収率は7.34g(32.5%)であった。
【0139】
例5
エタンジイルビス(インデニル)ジルコニウム3,3´,5,5´−テトラ−t−ブチル−1,1´−ビ−2−フェノキシドを介したエタンジイルビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウム3,3´,5,5´−テトラ−t−ブチル−1,1´−ビ−2−フェノキシドの製造
a)ZrCl4(THF)2の製造
これまでの例の工程a)の手順で製造を行った。ただし、ZrCl4を8.93g(38.32mmol)、トルエンを130g、THFを8.0g使用した。
【0140】
b)Li2(3,3´,5,5´−テトラ−t−ブチル−1,1´−ビ−2−フェノキシド)の製造
乾燥した500mLの3口丸底フラスコに電磁攪拌子、滴下濾斗、およびコック付の排気部を取付け、不活性ガスを通気し、この中で15.7g(38.23mmol)の3,3´,5,5´−テトラ−t−ブチル−1,1´−ビ−2−フェノールを130gのトルエンと8gのTHFに溶解した。溶液を氷浴で約4℃に冷却し、次いで28.4mLのBuLi溶液(濃度20質量%)を滴下濾斗を介して1時間滴下した。添加を完了した後、反応混合物を室温に加温し、さらに1時間攪拌した。
【0141】
c)(THF)2Cl2Zr(3,3´,5,5´−テトラ−t−ブチル−1,1´−ビ−2−フェノキシド)の製造
窒素雰囲気下、室温で、工程b)で得られた溶液を工程a)で得られた懸濁液に注射器により数分間で添加し、得られた懸濁液をさらに4時間攪拌した。
【0142】
d)エタン−1,2−ジイルビスインデニルジリチウムの製造
乾燥した1000mLの3口丸底フラスコに電磁攪拌子、滴下濾斗、およびコック付の排気部を取付け、不活性ガスを通気し、この中で9.5g(36.77mmol)の1,2−エタンジイルビスインデニルを120gのトルエンおよび7.0gのTHFに溶解した。懸濁液を氷浴で冷却し、27.5mLのBuLi溶液をゆっくりと滴下した。得られた懸濁液をさらに室温で1.5時間攪拌した。
【0143】
e)エタンジイルビス(インデニル)ジルコニウム3,3´,5,5´−テトラ−t−ブチル−1,1´−ビ−2−フェノキシドの製造
窒素雰囲気下、工程c)で得られた懸濁液を工程d)で得られた懸濁液に注射器により添加した。残った残留物を10mLのトルエンで洗浄した。得られた反応混合物を室温で12時間攪拌し、次いで80℃に加熱した。この温度で、懸濁液を窒素雰囲気下でガラスフィルターNo.4上に移し、懸濁液をコック付の底フラスコ中に濾過した。濾過液を減圧下で濃縮し、370mLの溶媒を蒸発させた。濃縮した濾過液を室温に数日間放置したが、錯体は結晶化しなかった。濾過液の溶媒を減圧下で完全に除去したところ、泡状の物質が得られた。この物質を粉末に破砕した。不純物のLiClを含む粗錯体30.5gが単離された。
【0144】
例6
6.1g(理論値9.2mmol)の例5で得られた粗エタンジイルビス(インデニル)ジルコニウム3,3´,5,5´−テトラ−t−ブチル−1,1´−ビ−2−フェノキシドを、232gのトルエンに溶解し、窒素雰囲気下、水素導入部を有する1000mLのオートクレーブに移した。0.11gのカーボンに担持したパラジウムをこの溶液に添加した。攪拌子を回転させ、反応器を窒素で三回次いで水素で三回置換した。次いで、反応器を40℃に加熱し、水素で20barに加圧した。2時間後、圧力が約18barに降下し、20barに戻した。3時間後、圧力が18barに降下し、再び20barに戻した。さらに6時間後、圧力が18barに降下し、再び20barに戻した。トルエン中にPd/Cを0.9g混入した液をさらに添加した。反応器を再度水素20barに加圧して、1時間放置したところ、圧力が18barに降下した。さらに2時間後、反応を停止させた。1H−NMRスペクトルは、水素化錯体エタンジイルビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウム3,3´,5,5´−テトラ−t−ブチル−1,1´−ビ−2−フェノキシドの完全な生成を示しており、さらに、3,3´,5,5´−テトラ−t−ブチル−1,1´−ビ−2−フェノールに帰属される共鳴も認められた。
【0145】
b)前工程の反応を、出発材料としての8.5g(理論値11mmol)の粗錯体を300gのジクロロメタンに溶解して繰り返し、次いで、窒素雰囲気下、水素導入部を有する1000mLのオートクレーブに移した。0.15gのカーボンに担持したパラジウムをこの溶液に添加した。攪拌子を回転させ、反応器を窒素で三回次いで水素で三回置換した。次いで、反応器を50℃に加熱し、水素で20barに加圧した。90分後、圧力が17barに降下し、20barに戻した。11時間後、圧力を再び20barに戻し、60℃に昇温した。さらに6時間後、圧力は一定であった。攪拌と加熱を停止し、反応器を25℃に冷却し、この温度に48時間維持した。反応器を次いで再び60℃に加熱し、水素で20barに加圧した。この圧力は4.5時間維持された。次いで反応器を室温に冷却し、懸濁液を丸底フラスコに移し、水素化触媒を分離するためにザイツフィルターで濾過した。濾過液の溶媒を蒸発させ、ベージュ色の泡状物を得た。この泡状物に10mLのヘプタンを添加した。数分後に白色の結晶が生成した。フラスコを2℃に冷却し、この温度で4時間維持した。次いで沈殿を濾過し、少量のヘプタンで洗浄し、次いで減圧下で乾燥した。1.5gの生成物が単離された。1H−NMRスペクトルは、白色の沈殿が純粋なrac−エタンジイルビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウム3,3´,5,5´−テトラ−t−ブチル−1,1´−ビ−2−フェノキシドから成ることを示していた。母液からさらに0.1gの錯体が得られた。収率は18%(粗出発材料基準)であった。
【0146】
例7
エタンジイルビス(インデニル)ジルコニウムビス(2,4−ジ−t−ブチルフェノキシド)を介したエタンジイルビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリドの製造
a)ZrCl4(THF)2の製造
乾燥した500mLの3口丸底フラスコに電磁攪拌子、滴下濾斗、およびコック付の排気部を取付け、不活性ガスを通気し、この中で18g(77.4mmol)の四塩化ジルコニウムを40gのトルエンに懸濁させた。室温で11.9gのTHFを滴下濾斗を介して15分間でゆっくりと添加した。懸濁液を室温でさらに1時間攪拌した。
【0147】
b)Li(2,4−t−Bu2−C63O)の製造
乾燥した500mLの3口丸底フラスコに電磁攪拌子、滴下濾斗、およびコック付の排気部を取付け、不活性ガスを通気し、この中で32.9g(154.8mmol)の2,4−ジ−t−ブチルフェノールを40gのトルエンと9gのTHFに溶解した。室温で50.6gのBuLi溶液(濃度20質量%)を滴下濾斗を介して15分間でゆっくりと添加した。得られた懸濁液を室温でさらに1時間攪拌した。
【0148】
c)(THF)2Cl2Zr(2,4−t−Bu2−C63O)2の製造
窒素雰囲気下、室温で、工程b)で得られた溶液を工程a)で得られた懸濁液にカニューレにより数分間で添加した。丸底フラスコに残留した残りのリチウムフェノキシドを10mLのトルエンを使用して洗浄した。
【0149】
d)エタン−1,2−ジイルビスインデニルジリチウムの製造
乾燥した1000mLの3口丸底フラスコに電磁攪拌子、滴下濾斗、およびコック付の排気部を取付け、不活性ガスを通気し、この中で20g(77.4mmol)の1,2−エタンジイルビスインデニルを40gのトルエンおよび7gのTHFに溶解した。室温で50.8gのBuLi溶液(濃度20質量%)を20分間でゆっくりと滴下した。得られた懸濁液をさらに室温で2.5時間攪拌した。
【0150】
e)エタンジイルビス(インデニル)ジルコニウムビス(2,4−ジ−t−ブチルフェノキシド)の製造
窒素雰囲気下、工程c)で得られた懸濁液を工程d)で得られた懸濁液にカニューレにより添加した。丸底フラスコに残った残留物を10mLのトルエンで洗浄した。得られた懸濁液を室温で終夜攪拌し、次いで窒素雰囲気下でカニューレにより不活性ガス通気したガラスフィルターNo.4上に移した。懸濁液をコック付の1000mLの丸底フラスコ中に濾過し、濾過後のケーキを10mLのトルエンで洗浄した。
【0151】
f)水素化によるエタンジイルビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムビス(2,4−ジ−t−ブチルフェノキシド)の製造
工程e)で得られた溶液を、窒素雰囲気下、水素導入部を有する1000mLのオートクレーブに移した。4.2gのカーボンに担持したパラジウムをこの溶液に添加した。攪拌子を回転させ、反応器を窒素で三回次いで水素で三回置換した。反応器を80℃に加熱し、水素で20barに加圧した。1時間後、圧力が約8barに降下し、再び20barに戻した。2時間後、圧力が約12barに降下し、再び20barに戻した。3時間後、圧力が10barに降下し、再び20barに戻した。4時間後、圧力が11barに降下し、攪拌および加熱を停止した。1H−NMRスペクトルは、出発化合物が完全に目的の錯体に水素化されたことを示した。得られた溶液を濾過した。濾過液の質量は306.4gであった。
【0152】
g)エタンジイルビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリドの製造
10.9gの塩化アセチルを、滴下濾斗を介して室温で工程f)で得られた溶液にゆっくりと添加した。塩化アセチルを添加している間に、沈殿が生成した。次いで混合物を室温で56時間放置した。1H−NMRスペクトルに、出発錯体(ビスフェノキシド)に帰属される共鳴は見られなかった。次いで、懸濁物を濾過した。濾過後のケーキを減圧下で乾燥したところ、17.5gの質量になった。1H−NMRスペクトルより、純粋なラセミ体のエタンジイルビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリドが確認された。総合的な収率は約55%(出発材料の量基準)であった。
【0153】
比較例A
エタンジイルビス(インデニル)ジルコニウム(2,4−ジ−t−ブチルフェノキシド)クロリドを介したエタンジイルビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリドの製造
a)ZrCl4(THF)2の製造
乾燥した500mLの3口丸底フラスコに電磁攪拌子、滴下濾斗、およびコック付の排気部を取付け、不活性ガスを通気し、この中で18g(77.4mmol)の四塩化ジルコニウムを40gのトルエンに懸濁させた。室温で12gのTHFを滴下濾斗を介して15分間でゆっくりと添加した。懸濁液を室温でさらに1時間攪拌した。
【0154】
b)Li(2,4−t−Bu2−C63O)の製造
乾燥した500mLの3口丸底フラスコに電磁攪拌子、滴下濾斗、およびコック付の排気部を取付け、不活性ガスを通気し、この中で16.5g(77.6mmol)の2,4−ジ−t−ブチルフェノールを20gのトルエンと4.5gのTHFに溶解した。室温で24.1gのBuLi溶液(濃度20質量%)を滴下濾斗を介して15分間でゆっくり添加した。得られた懸濁液を室温でさらに1時間攪拌した。
【0155】
c)(THF)2Cl3Zr(2,4−t−Bu2−C63O)の製造
窒素雰囲気下、室温で、工程b)で得られた溶液を工程a)で得られた懸濁液にカニューレにより数分間で添加した。丸底フラスコに残留した残りのリチウムフェノキシドを10mLのトルエンを使用して洗浄した。
【0156】
d)エタン−1,2−ジイルビスインデニルジリチウムの製造
乾燥した1000mLの3口丸底フラスコに電磁攪拌子、滴下濾斗、およびコック付の排気部を取付け、不活性ガスを通気し、この中で20g(77.4mmol)の1,2−エタンジイルビスインデニルを40gのトルエンおよび7gのTHFに溶解した。室温で50.8gのBuLi溶液(濃度20質量%)を20分間でゆっくりと滴下した。得られた懸濁液をさらに室温で2.5時間攪拌した。
【0157】
e)エタンジイルビス(インデニル)ジルコニウム(2,4−ジ−t−ブチルフェノキシド)クロリドの製造
窒素雰囲気下、工程c)で得られた懸濁液を工程d)で得られた懸濁液にカニューレにより添加した。丸底フラスコに残った残留物を10mLのトルエンで洗浄した。得られた懸濁液を室温で終夜攪拌し、次いで窒素雰囲気下でカニューレにより不活性ガスを通気したガラスフィルターNo.4上に移した。懸濁液をコック付の1000mLの丸底フラスコ中に濾過し、濾過後のケーキを10mLのトルエンで洗浄した。
【0158】
f)水素化によるエタンジイルビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウム(2,4−ジ−t−ブチルフェノキシド)クロリドの製造
工程e)で得られた溶液を、窒素雰囲気下、水素導入部を有する1000mLのオートクレーブに移した。4.2gのカーボンに担持したパラジウムをこの溶液に添加した。攪拌子を回転させ、反応器を窒素で三回次いで水素で三回置換した。反応器を80℃に加熱し、水素で20barに加圧した。1時間後、圧力が約10barに降下し、再び20barに戻した。2時間後、圧力が約12barに降下し、再び20barに戻した。3時間後、圧力が16barに降下し、攪拌および加熱を停止した。1H−NMRスペクトルは、出発化合物が完全に目的の錯体に水素化されたことを示した。得られた溶液を濾過した。濾過液の質量は248gであった。
【0159】
g)エタンジイルビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリドの製造
5.5gの塩化アセチルを、滴下濾斗を介して室温で工程f)で得られた溶液にゆっくりと添加した。塩化アセチルを添加している間に、沈殿が生成した。次いで混合物を室温で18時間放置した。次いで、0.6gの塩化アセチルを滴下濾斗を介して添加し、懸濁液を2時間45℃に加熱した。1H−NMRスペクトルに、出発錯体(モノフェノキシド)に帰属される共鳴は見られなかった。次いで、懸濁物を濾過した。濾過後のケーキを減圧下で乾燥したところ、5gの質量になった。1H−NMRスペクトルより、純粋なラセミ体のエタンジイルビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリドが確認された。総合的な収率は15%(出発材料の量基準)であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】

{式中、Mが、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、または元素周期律表の第3族およびランタニドに属する元素を表し、
Xが、同一であっても異なっていてもよく、それぞれフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、水素、C1−C10−アルキル、C6−C15−アリール、炭素原子数1〜10個のアルキル基と炭素原子数6〜20個のアリール基を有するアルキルアリール、−OR10または−NR1011を表し、
nが、1〜4の整数を表し、Mの価数−2の値に対応し、
1〜R8が、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素、ハロゲン、C1−C20−アルキル、置換基としてC1−C10−アルキルを有していてもよい3〜8員のシクロアルキル、C6−C15−アリール、炭素原子数1〜10個のアルキル基と炭素原子数6〜20個のアリール基を有するアルキルアリール、炭素原子数1〜10個のアルキル基と炭素原子数6〜20個のアリール基を有するアリールアルキルを表し、R2〜R7の隣接する基は炭素原子数4〜15個の飽和、部分飽和または不飽和の環基を形成してもよく、R1〜R8はまたSi(R93、−OR10、−SR10、−N(R102、−P(R102を表し、これらの基の全てが完全にまたは部分的にヘテロ原子で置換されていてもよく、
9が、同一であっても異なっていてもよく、それぞれC1−C20−アルキル、C3−C10−シクロアルキル、C6−C15−アリールを表し、これらの基が完全にまたは部分的にヘテロ原子で置換されていてもよく、
10が、同一であっても異なっていてもよく、それぞれC1−C10−アルキル、C6−C15−アリール、C3−C10−シクロアルキル、アルキルアリールまたはSi(R113を表し、
11が、同一であっても異なっていてもよく、それぞれC1−C10−アルキル、C6−C15−アリール、C3−C10−シクロアルキル、アルキルアリールを表し、
Y、Y1が、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ
【化2】

(式中、R12が、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素、ハロゲン、C1−C10−アルキル、C1−C10−フルオロアルキル、C6−C10−フルオロアリール、C6−C10−アリール、C1−C10−アルコキシ、C2−C10−アルケニル、C7−C40−アリールアルキル、C8−C40−アリールアルケニル、C7−C40−アルキルアリールを表し、または2個の基R12がこれらを結合している原子と共に環を形成してもよく、
1が、ケイ素、ゲルマニウムまたはスズを表す。)を表し、
mが、0、1、2、または3を表し、または、
Yが、非架橋基であり、2個の基R´、R"を表し、
R´、R"が、R1〜R8に対して定義されたのと同じ意味を表し、R´、R"が隣接するR4、R5と共に炭素原子数4〜15個の飽和、部分飽和または不飽和の環基を形成してもよい。}、
で表される架橋または非架橋遷移金属芳香族錯体を、式II
【化3】

{式中、
【化4】

が、
【化5】

で表される2価の基を表し、
【化6】

が、
【化7】

で表される2価の基を表し、
13、R13´、R14、R14´が、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素、ハロゲン、C1−C20−アルキル、置換基としてC1−C10−アルキルを有していてもよい3〜8員のシクロアルキル、C6−C15−アリール、炭素原子数1〜10個のアルキル基と炭素原子数6〜20個のアリール基を有するアルキルアリール、炭素原子数1〜10個のアルキル基と炭素原子数6〜20個のアリール基を有するアリールアルキル、Si(R93、−OR10、−SR10、−N(R102、または−P(R102を表し、
Zが、−[Q(R15)(R16)]q
(式中、Qが、同一であっても異なっていてもよく、それぞれケイ素、ゲルマニウム、スズ、または炭素を表し、
15、R16が、それぞれ水素、C1−C10−アルキル、C3−C10−シクロアルキル、またはC6−C15−アリールを表し、
qが、1、2、3または4を表す。)を表し、
17〜R20、R17´〜R20´が、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素、C1−C20−アルキル、置換基としてC1−C10−アルキルを有していてもよい3〜8員のシクロアルキル、C6−C15−アリールまたはアリールアルキルを表し、隣接する基が共同して炭素原子数4〜15個の環基を形成してもよく、R17〜R20、R17´〜R20´はまたSi(R113を表し、
2が、アルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンを表し、
pが、M2がアルカリ土類金属イオンの場合は1を表し、M2がアルカリ金属イオンの場合は2を表す。}、
で表されるシクロペンタジエニル誘導体と反応させ、
得られた反応混合物を場合によりフリーラジカルまたはフリーラジカル形成剤を添加して−78℃〜250℃の範囲の温度に加熱し、式III
【化8】

で表される錯体を製造し、
該錯体IIIを適当な触媒の存在下で水素により少なくとも部分的に水素化する、
ことにより、部分的に水素化されたラセミ体のansa−メタロセンを製造する方法。
【請求項2】
水素化に続いて、架橋フェノキシド類似配位子または2個の非架橋フェノキシド類似配位子の少なくとも1方を置換することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1が同一であり、それぞれ酸素を表すことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
水素化を、場合により適当な触媒担体に担持したPt、Pd、Rh、Ru、OsまたはNi、ラニーニッケル、これらの酸化物、塩、または錯体、これらの混合物のような均一または不均一触媒の存在下で、特に好ましくは活性炭に担持したPdの存在下で行うことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
式Iで表される錯体を、まず式IV
【化9】

で表される化合物を脱プロトン化し、次いで得られた脱プロトン化化合物を適当な式V
【化10】

で表される遷移金属化合物と反応させる(式中の全ての基が請求項1において定義されたのと同じ意味を表し、kが0、1、または2を表す。)ことによって製造し、
このようにして得られた式Iで表される錯体を、反応溶液中で中間生成物を分離することなく式IVで表される錯体に転化する、
ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
請求項1に記載のエタンジイルビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムビス(2,4,6−トリメチルフェノキシド)の製造方法であって、
ジハロジルコニウムビス(2,4,6−トリメチルフェノキシド)化合物をエタン−1,2−ジイルビスインデニルジリチウムと反応させてエタンジイルビス(インデニル)ジルコニウムビス(2,4,6−トリメチルフェノキシド)を製造し、次いでこれを水素化してエタンジイルビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムビス(2,4,6−トリメチルフェノキシド)を製造することを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1に記載のエタンジイルビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムビス(2,4−ジ−t−ブチルフェノキシド)の製造方法であって、
ジハロジルコニウムビス(2,4−ジ−t−ブチルフェノキシド)化合物をエタン−1,2−ジイルビスインデニルジリチウムと反応させてエタンジイルビス(インデニル)ジルコニウムビス(2,4−ジ−t−ブチルフェノキシド)を製造し、次いでこれを水素化してエタンジイルビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムビス(2,4−ジ−t−ブチルフェノキシド)を製造することを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項2〜5のいずれか1項に記載のエタンジイルビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリドの製造方法であって、
ジハロジルコニウムビス(2,4,6−トリメチルフェノキシド)化合物をエタン−1,2−ジイルビスインデニルジリチウムと反応させてエタンジイルビス(インデニル)ジルコニウムビス(2,4,6−トリメチルフェノキシド)を製造し、次いでこれを水素化してエタンジイルビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムビス(2,4,6−トリメチルフェノキシド)を製造し、次いでフェノキシド基を置換することを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項2〜5のいずれか1項に記載のエタンジイルビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリドの製造方法であって、
ジハロジルコニウムビス(2,4−ジ−t−ブチルフェノキシド)化合物をエタン−1,2−ジイルビスインデニルジリチウムと反応させてエタンジイルビス(インデニル)ジルコニウムビス(2,4−ジ−t−ブチルフェノキシド)を製造し、次いでこれを水素化してエタンジイルビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムビス(2,4−ジ−t−ブチルフェノキシド)を製造し、次いでフェノキシド基を置換することを特徴とする方法。
【請求項10】
式VI
【化11】

{式中、Mが、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、または元素周期律表の第3族およびランタニドに属する元素を表し、
Xが、同一であっても異なっていてもよく、それぞれフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、水素、C1−C10−アルキル、C6−C15−アリール、炭素原子数1〜10個のアルキル基と炭素原子数6〜20個のアリール基を有するアルキルアリール、−OR10または−NR1011を表し、
nが、1〜4の整数を表し、Mの価数−2の値に対応し、
1〜R8が、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素、ハロゲン、C1−C20−アルキル、置換基としてC1−C10−アルキルを有していてもよい3〜8員のシクロアルキル、C6−C15−アリール、炭素原子数1〜10個のアルキル基と炭素原子数6〜20個のアリール基を有するアルキルアリール、炭素原子数1〜10個のアルキル基と炭素原子数6〜20個のアリール基を有するアリールアルキルを表し、R2〜R7の隣接する基は炭素原子数5〜15個の飽和、部分飽和または不飽和の環基を形成してもよく、R1〜R8はまたSi(R93、−OR10、−SR10、−N(R102、−P(R102を表し、これらの基の全てが完全にまたは部分的にヘテロ原子で置換されていてもよく、
9が、同一であっても異なっていてもよく、それぞれC1−C20−アルキル、C3−C10−シクロアルキル、C6−C15−アリールを表し、これらの基が完全にまたは部分的にヘテロ原子で置換されていてもよく、
10が、同一であっても異なっていてもよく、それぞれC1−C10−アルキル、C6−C15−アリール、C3−C10−シクロアルキル、アルキルアリールまたはSi(R113を表し、
11が、同一であっても異なっていてもよく、それぞれC1−C10−アルキル、C6−C15−アリール、C3−C10−シクロアルキル、アルキルアリールを表し、
Y、Y1が、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ
【化12】

(式中、R12が、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素、ハロゲン、C1−C10−アルキル、C1−C20−フルオロアルキル、C6−C10−フルオロアリール、C6−C10−アリール、C1−C10−アルコキシ、C2−C10−アルケニル、C7−C40−アリールアルキル、C8−C40−アリールアルケニル、C7−C40−アルキルアリールを表し、または2個の基R12がこれらを結合している原子と共に環を形成してもよく、
1が、ケイ素、ゲルマニウムまたはスズを表す。)を表し、
mが、0、1、2、または3を表し、または、
Yが、非架橋基であり、2個の基R´、R"を表し、
R´、R"が、R1〜R8に対して定義されたのと同じ意味を表し、R´、R"が隣接するR4、R5と共に炭素原子数4〜15個の飽和、部分飽和または不飽和の環基を形成してもよく、
【化13】


【化14】

で表される2価の基を表し、
【化15】


【化16】

で表される2価の基を表し、
13、R13´、R14、R14´が、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素、ハロゲン、C1−C10−アルキル、置換基としてC1−C10−アルキルを有していてもよい3〜8員のシクロアルキル、C6−C15−アリール、炭素原子数1〜10個のアルキル基と炭素原子数6〜20個のアリール基を有するアルキルアリール、炭素原子数1〜10個のアルキル基と炭素原子数6〜20個のアリール基を有するアリールアルキル、Si(R93、−OR10、−SR10、−N(R102、または−P(R102を表し、
Zが、−[Q(R15)(R16)]q
(式中、Qが、同一であっても異なっていてもよく、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、または炭素を表し、
15、R16が、それぞれ水素、C1−C10−アルキル、C3−C10−シクロアルキル、またはC6−C15−アリールを表し、
qが、1、2、3または4を表す。)を表し、
17〜R20、R17´〜R20´が、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素、C1−C20−アルキル、置換基としてC1−C10−アルキルを有していてもよい3〜8員のシクロアルキル、C6−C15−アリールまたはアリールアルキルを表し、隣接する基が共同して炭素原子数4〜15個の環基を形成してもよく、R17〜R20、R17´〜R20´はまたSi(R113を表す。}、
で表されるラセミ体のansa−メタロセン錯体。
【請求項11】
エタンジイルビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジフロリド、エタンジイルビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、エタンジイルビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジブロミド、rac−エタンジイルビス(2−メチル−4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−エタンジイルビス(2−エチル−4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリドから選択される、請求項8に記載のメタロセン錯体。
【請求項12】
請求項8または9に記載のラセミ体のメタロセン錯体を、オレフィン性不飽和化合物の重合のための触媒または触媒成分として、または立体選択的合成における試薬または触媒として使用する方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】

{式中、Mが、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、または元素周期律表の第3族およびランタニドに属する元素を表し、
Xが、同一であっても異なっていてもよく、それぞれフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、水素、C1−C10−アルキル、C6−C15−アリール、炭素原子数1〜10個のアルキル基と炭素原子数6〜20個のアリール基を有するアルキルアリール、−OR10または−NR1011を表し、
nが、1〜4の整数を表し、Mの価数−2の値に対応し、
1〜R8が、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素、ハロゲン、C1−C20−アルキル、置換基としてC1−C10−アルキルを有していてもよい3〜8員のシクロアルキル、C6−C15−アリール、炭素原子数1〜10個のアルキル基と炭素原子数6〜20個のアリール基を有するアルキルアリール、炭素原子数1〜10個のアルキル基と炭素原子数6〜20個のアリール基を有するアリールアルキルを表し、R2〜R7の隣接する基は炭素原子数4〜15個の飽和、部分飽和または不飽和の環基を形成してもよく、R1〜R8はまたSi(R93、−OR10、−SR10、−N(R102、−P(R102を表し、これらの基の全てが完全にまたは部分的にヘテロ原子で置換されていてもよく、
9が、同一であっても異なっていてもよく、それぞれC1−C20−アルキル、C3−C10−シクロアルキル、C6−C15−アリールを表し、これらの基が完全にまたは部分的にヘテロ原子で置換されていてもよく、
10が、同一であっても異なっていてもよく、それぞれC1−C10−アルキル、C6−C15−アリール、C3−C10−シクロアルキル、アルキルアリールまたはSi(R113を表し、
11が、同一であっても異なっていてもよく、それぞれC1−C10−アルキル、C6−C15−アリール、C3−C10−シクロアルキル、アルキルアリールを表し、
Y、Y1が、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ
【化2】

(式中、R12が、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素、ハロゲン、C1−C10−アルキル、C1−C10−フルオロアルキル、C6−C10−フルオロアリール、C6−C10−アリール、C1−C10−アルコキシ、C2−C10−アルケニル、C7−C40−アリールアルキル、C8−C40−アリールアルケニル、C7−C40−アルキルアリールを表し、または2個の基R12がこれらを結合している原子と共に環を形成してもよく、
1が、ケイ素、ゲルマニウムまたはスズを表す。)を表し、
mが、0、1、2、または3を表し、または、
Yが、非架橋基であり、2個の基R´、R"を表し、
R´、R"が、R1〜R8に対して定義されたのと同じ意味を表し、R´、R"が隣接するR4、R5と共に炭素原子数4〜15個の飽和、部分飽和または不飽和の環基を形成してもよい。}、
で表される架橋または非架橋遷移金属芳香族錯体を、式II
【化3】

{式中、
【化4】

が、
【化5】

で表される2価の基を表し、
【化6】

が、
【化7】

で表される2価の基を表し、
13、R13´、R14、R14´が、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素、ハロゲン、C1−C20−アルキル、置換基としてC1−C10−アルキルを有していてもよい3〜8員のシクロアルキル、C6−C15−アリール、炭素原子数1〜10個のアルキル基と炭素原子数6〜20個のアリール基を有するアルキルアリール、炭素原子数1〜10個のアルキル基と炭素原子数6〜20個のアリール基を有するアリールアルキル、Si(R93、−OR10、−SR10、−N(R102、または−P(R102を表し、
Zが、−[Q(R15)(R16)]q
(式中、Qが、同一であっても異なっていてもよく、それぞれケイ素、ゲルマニウム、スズ、または炭素を表し、
15、R16が、それぞれ水素、C1−C10−アルキル、C3−C10−シクロアルキル、またはC6−C15−アリールを表し、
qが、1、2、3または4を表す。)を表し、
17〜R20、R17´〜R20´が、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素、C1−C20−アルキル、置換基としてC1−C10−アルキルを有していてもよい3〜8員のシクロアルキル、C6−C15−アリールまたはアリールアルキルを表し、隣接する基が共同して炭素原子数4〜15個の環基を形成してもよく、R17〜R20、R17´〜R20´はまたSi(R113を表し、
2が、アルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンを表し、
pが、M2がアルカリ土類金属イオンの場合は1を表し、M2がアルカリ金属イオンの場合は2を表す。}、
で表されるシクロペンタジエニル誘導体と反応させ、
得られた反応混合物を場合によりフリーラジカルまたはフリーラジカル形成剤を添加して−78℃〜250℃の範囲の温度に加熱し、式III
【化8】

で表される錯体を製造し、
該錯体IIIを適当な触媒の存在下で水素により少なくとも部分的に水素化する、
ことにより、式VI
【化9】

(式中、
【化10】


【化11】

で表される二価の基を表し、
【化12】


【化13】

で表される二価の基を表す。)
で表される錯体を製造し、
得られた架橋フェノキシド類似配位子または2個のフェノキシド類似配位子を置換して式VIa
【化14】

(式中、Halはフッ素、塩素、臭素またはヨウ素を表す。)
で表される部分的に水素化されたラセミ体のansa−メタロセン錯体を製造する方法。
【請求項2】
1が同一であり、それぞれ酸素を表すことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
水素化を、場合により適当な触媒担体に担持したPt、Pd、Rh、Ru、OsまたはNi、ラニーニッケル、これらの酸化物、塩、または錯体、これらの混合物のような均一または不均一触媒の存在下で、特に好ましくは活性炭に担持したPdの存在下で行うことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
式Iで表される錯体を、まず式IV
【化15】

で表される化合物を脱プロトン化し、次いで得られた脱プロトン化化合物を適当な式V
【化16】

で表される遷移金属化合物と反応させる(式中の全ての基が請求項1において定義されたのと同じ意味を表し、kが0、1、または2を表す。)ことによって製造し、
このようにして得られた式Iで表される錯体を、反応溶液中で中間生成物を分離することなく式IVで表される錯体に転化する、
ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
エタンジイルビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド(式VIaで表される化合物)を製造するための請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法であって、
ジハロジルコニウムビス(2,4,6−トリメチルフェノキシド)化合物(式Iで表される化合物)をエタン−1,2−ジイルビスインデニルジリチウム(式IIで表される化合物)と反応させてエタンジイルビス(インデニル)ジルコニウムビス(2,4,6−トリメチルフェノキシド)(式IIIで表される化合物)を製造し、次いでこれを水素化してエタンジイルビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムビス(2,4,6−トリメチルフェノキシド)(式VIで表される化合物)を製造し、次いでフェノキシド基を置換することを特徴とする方法。
【請求項6】
エタンジイルビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド(式VIaで表される化合物)を製造するための請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法であって、
ジハロジルコニウムビス(2,4−ジ−t−ブチルフェノキシド)化合物(式Iで表される化合物)をエタン−1,2−ジイルビスインデニルジリチウム(式IIで表される化合物)と反応させてエタンジイルビス(インデニル)ジルコニウムビス(2,4−ジ−t−ブチルフェノキシド)(式IIIで表される化合物)を製造し、次いでこれを水素化してエタンジイルビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムビス(2,4−ジ−t−ブチルフェノキシド)(式VIで表される化合物)を製造し、次いでフェノキシド基を置換することを特徴とする方法。

【公表番号】特表2006−503910(P2006−503910A)
【公表日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−501528(P2005−501528)
【出願日】平成15年10月22日(2003.10.22)
【国際出願番号】PCT/EP2003/011679
【国際公開番号】WO2004/037838
【国際公開日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【出願人】(500585878)バーゼル、ポリオレフィン、ゲゼルシャフト、ミット、ベシュレンクテル、ハフツング (35)
【Fターム(参考)】