説明

部分芳香族の成形組成物及びそれの使用

【課題】電気及び/又は電子部材を製造することが可能であり、確実なはんだ付けを可能とするポリアミド成形組成物であって、すなわち、特にブリスターがはんだ付けプロセスで形成されることなく、特に、吸水後260℃、場合によりそれより高い温度で、及び、部材の最終設計の場合にはんだ付けを可能とする、ポリアミド成形組成物を提供する。
【解決手段】テレフタル酸(TPA)、イソフタル酸(IPA)、1,6-ヘキサンジアミン(HMDA)、及び、9〜12個の炭素原子(C9-C12-ジアミン)を有する別の脂肪族ジアミンを含むコポリアミドを含むポリアミド成形組成物によって達成され、C9-C12-ジアミン、特に好ましくは脂肪族の非分枝C9-C12ジアミン、及び、イソフタル酸の定義された含有量に従う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレフタル酸コポリアミドをベースとするポリアミド成形組成物及びそれらの製造方法とそれの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
電気及び電子分野において、ポリマー材料は、
・表面温度260℃で、無鉛はんだを用いて、水を吸収した後でさえも、ブリスターなしにはんだ付け可能であり、
・ハロゲン含有難燃剤を使用することなく難燃性とすることができ、
・低圧力かつ長い流動長で容易に加工可能であり、
・歪がほとんどなく、
・寸法的に安定していること
が要求される。
【0003】
PA6T/6Iタイプの部分芳香族ポリアミドは、US 4,607,073に記載されるように、脂肪族ポリアミドPA6、PA66及びPA46と比較して低吸水性と高融解点を有する。未加工ポリマーとしてでさえも、それらは簡単にはんだ付けされうる。しかしながら、ハロゲンフリーの難燃剤の含有量は、難燃剤の制限的な熱安定性のせいで、問題となっている。低圧力及び長い流動長の射出成形においては、ポリアミドの分解が発生し始める非常に高い融解温度でのみ可能である。加工は、狭い加工窓(processing window)のせいで極度に問題となっている。
PA6T/66タイプの部分芳香族ポリアミドは、JP-B-2928325(最初に公開されたのはJP-A-308846)に記載されるように、高い融解点を有するが、過度の高吸水性を有する。それらは、乾燥状態でのみはんだ付けされることができ、最大湿度感度レベル2(Joint Industry Standard IPC/JEDEC J-STD-020D.1に従ったSML)に達する。それらは、はんだ付け前に、85℃及び60%相対湿度で、最大168時間調整されうる。この調整は、一般的に、これらの材料で作られる電子部材が、無制限の保存寿命を持たず、かつ、はんだ付けされるまで厳しい湿度の制御のもとで包装されなければならないことを意味する。
【0004】
EP 1 988 113には、モノマーである1,10-デカンジアミン及びテレフタル酸で形成される40〜95 mol%の10Tユニット、並びに、モノマーである1,6-ヘキサンジアミン及びテレフタル酸で形成される5〜60 mol%の6Tユニットを有するポリアミドが開示されている。これらのポリアミドは、高い熱変形抵抗性、良好なプロセス加工性、低吸水性、水吸収後でも変わらない機械的特性、ガラス繊維強化製品の高い表面品質、及び、高い寸法安定性を有する。吸水後の260℃でのはんだぬれ性は、PA6T/66タイプの部分芳香族ポリアミドのはんだぬれ性よりも有意に高いが、PA10T/6T製の電気及び電子部材のはんだぬれ性は、限界ぎりぎりであり、すなわち、それらは、好適な設計をされた場合にのみ、最大湿感レベル1(Joint Industry Standard IPC/JEDEC J-STD-020D.1に従ったSML)に達しうる。臨界厚さを有するコネクター及び熱を内部に伝える金属インサートの場合、はんだ付けでブリスターが形成されうる。
【0005】
US 4617342には、80:20〜99:1の比でのテレフタル酸及びイソフタル酸、並びに、98:2〜60:40の範囲でモル比でのヘキサメチレンジアミン(HMDA)及びトリメチルヘキサメチレンジアミン(THMDA)をベースとして得られる結晶ポリアミドが開示されている。当該ポリアミドのために提案される応用法は、例えば、自動車のエンジン分野での高い耐熱性を有する部材である。この文献は、HMDA及びTHMDAの組合せのみを開示し、実施例において、ヘキサメチレンジアミンと共に存在するTHMDAの割合は低く、5〜7 mol%の範囲である。その文献における目的は、増強されたポリフタルアミドを提供することである。この目的のために、TPA含有量は、少なくとも80 mol%に設定される。しかしながら、この手段は、これらの材料を製造し加工することを非常に困難なものとする。このために、HMDAの一部は、TMHMDAで置き換えられる。低い結晶度を受けて、成形組成物を再び処理しやすくするために、この分岐C9-ジアミンにおける、アモルファスドメインの濃度が高くなる。しかしながら、これらの系は、はんだ付けに応用するのに適していない。
【0006】
GB 1228761では、イソフタル酸の割合が高い、テレフタル酸及びイソフタル酸をベースとする完全なアモルファスポリアミドが開示されている。この文献中で使用されなければならない、ジアミンであるイソホロンジアミン、C9-ジアミンは、その効果に関してTMHMDAと比較されうる。更に、全ての実施例において、IPAの濃度は、少なくとも50 mol%である。当該成形組成物を、はんだ付けすることはできず、明らかに要求される機械的特性を有していない。
US 4831108では、完全に異なるポリアミドの範囲に適していることが明らかなポリアミドを製造するプロセスについて開示されている。従って、この文献には、ポリフタルアミドの製造だけでなく、同じプロセスを用いてPA66の製造(実施例4)も記載されている。
この文献においてTHMDAについて述べる限りにおいて、このジアミンは、常に低い割合で使用される。
EP 1795632では、様々な出発材料をベースとして得られうるポリアミドについて開示している。記載されたジアミンは、とりわけ、C9-ジアミン、例えば、1,9-ノナンジアミン及び1,8-メチルオクタンジアミンである。とりわけ、これらのジアミンは、HMDAを併用して、TPA及びIPAと共に反応されうる。この反応が、非常に低いHMDA濃度(HMDA:C9-ジアミン = 20:80)を利用して行なわれるか、又は、ヘキサメチレンジアミンが、THMDAで置き換えられた場合であっても、得られる材料は、はんだ付けで応用するのに比較的適さないものとなるか、更に全く適さないものとなってしてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の説明
本発明の目的は、電気及び/又は電子部材を製造することが可能であり、確実なはんだ付けを可能とするポリアミド成形組成物であって、すなわち、特にブリスターがはんだ付けプロセスで形成されることなく、特に、吸水後260℃、場合によりそれより高い温度で、及び、部材の最終設計の場合にはんだ付けを可能とする、ポリアミド成形組成物を提供することである。
また、電気及び電子工学の更なる要求を満たさなければならない。このポリアミド成形組成物は:
・ハロゲン含有難燃剤を使用することなく難燃性とすることができ、
・低圧力かつ長い流動長で容易に加工可能であり、
・歪がほとんどなく、
・寸法的に安定していなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、テレフタル酸(TPA)、イソフタル酸(IPA)、1,6-ヘキサンジアミン(HMDA)、及び、9〜12個の炭素原子(C9-C12-ジアミン)を有する別の脂肪族ジアミンを含むコポリアミドを含むポリアミド成形組成物によって達成され、C9-C12-ジアミン、特に好ましくは脂肪族の非分枝C9-C12ジアミン、及び、イソフタル酸の定義された含有量に従う。これらのコポリアミドは、好ましくは、300〜330℃の範囲の融解点、高い結晶度、好ましくは110〜140℃の範囲のガラス転移温度、及び、好ましくは、85%より多い未加工ポリマー(ポリアミド)のはんだぬれ性(下記で定義される)と75%より多い化合物のはんだぬれ性を有する。はんだぬれ性は、Joint Industry Standard IPC/JEDEC J-STD-020D.1に従って、85℃及び85%相対湿度で、168時間調整された後に6つの異なるテスト条件下で、ブリスターを生じない、3つの異なる厚みのポジティブな(positively)試験棒材の相対割合で定義される。化合物は、好ましくは、加えて、ポリアミドマトリクス、フィラー、及び/又は、強化剤、及び/又は、難燃剤、及び、添加剤も含む。
【0009】
詳細には、本発明によって以下の組成を有するポリアミド成形組成物が提供される:
(A)30〜100質量%の部分芳香族の、部分結晶コポリアミドで、
72.0〜98.3質量%のテレフタル酸(TPA)及び/又はナフタレンジカルボン酸、及び、28.0〜1.7質量%のイソフタル酸(IPA)から構成される、100質量%の二塩基酸フラクション、及び、
51.0〜80.0質量%の1,6-ヘキサンジアミン(HMDA)、及び、20.0〜49.0質量%のC9-C12-ジアミン、特に脂肪族の非分枝C9-C12-ジアミンから構成される、100質量%のジアミンフラクション
から構成されるコポリアミド;
(B)0〜70質量%のフィラー、及び、強化剤;
(C)0〜25質量%の難燃剤;
(D)0〜5質量%の添加剤;
(ここで、成分(A)〜(D)は合計で100質量%となる)。
【0010】
従って、TPAは全部又は部分的にナフタレンジカルボン酸で置き換えられうる。
第一の好適な態様に従うと、C9-C12-ジアミンは、1,9-ノナンジアミン、メチル-1,8-オクタンジアミン(cctanediamine)、1,10-デカンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン、1,12-ドデカンジアミン、及び、これらのジアミンの混合物からなる群から選択されるジアミンであり、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン、1,12-ドデカンジアミン又はこれらのジアミンの混合物であることが好ましく、1,10-デカンジアミン、及び、1,12-ドデカンジアミンであることが特に好ましく、1,10-デカンジアミン単独であることが特別に好ましい。驚くことに、特に、分枝脂肪族ジアミン、例えば、TMHMDAを使用すると、容易にはんだ付けできない成形組成物となることが分かっている。従って、上述した割合の特定の脂肪族の非分枝C9-C12-ジアミンの好ましい使用により、予想外にも、はんだ付け加工に特に適した成形組成物となる。
成分(A)のジアミンフラクションは、好ましくは、55.0〜75.0質量%の1,6-ヘキサンジアミン(HMDA)、及び、25.0〜45.0質量%のC9-C12-ジアミン、特に脂肪族の非分枝C9-C12-ジアミンから構成される。
成分(A)のジアミンフラクションは、より好ましくは、55.0〜70.0質量%の1,6-ヘキサンジアミン(HMDA)、及び、30.0〜45.0質量%のC9-C12-ジアミン、特に脂肪族の非分枝C9-C12-ジアミンから構成される。
【0011】
本発明の特定の態様において、C9-C12-ジアミンの割合と、イソフタル酸の割合は、互いに特定の比で存在する。詳細には、これは、この好適な態様において、成分(A)の二塩基酸フラクションが、72.0〜98.3質量%のテレフタル酸(TPA)及び/又はナフタレンジカルボン酸、及び、ジアミンフラクションの百分率で、C9-C12-ジアミン、特に脂肪族の非分枝C9-C12-ジアミンの含有量のフラクションに応じて決定される質量%範囲の含有量のイソフタル酸(IPA)から構成されることを意味する。以下の式に従って決定される百分率のイソフタル酸の含有量は、+/-5質量%の範囲内である。
IPA (質量%) = (39 − 0.7*C9-C12-ジアミン)
但し、当然ながら、イソフタル酸の含有量は、いずれにしても少なくとも1.7質量%である。
このことは、例えば、C9-C12-ジアミン、特に、脂肪族の非分枝C9-C12-ジアミンの含有量が20質量%であり、イソフタル酸の含有量が20〜30質量%の範囲内であることを意味する。35質量%のC9-C12-ジアミンの含有量で、イソフタル酸の含有量は、9.5〜19.5質量%の範囲内である。49質量%のC9-C12-ジアミンの含有量で、イソフタル酸の含有量は、1.7〜9.7質量%の範囲内にある。更に好ましい態様において、範囲は、+/- 3質量%、特に好ましくは+/- 2質量%である。
【0012】
従って、好ましくは、ジアミンの合計をベースにして20〜49質量%のC9-C12-ジアミン含有量、特に、脂肪族の非分枝C9-C12-ジアミン含有量、及び、二塩基酸の合計をベースにして(39 − 0.7*C9-C12-ジアミン)±5質量%のIPA含有量(但し、IPAの含有量はいずれにしても少なくとも1.7質量%である)を有するポリアミドを用いる。
更に特定の態様において、以下の組成がコポリアミド(ポリアミドマトリクス)にとって好ましい:
ジアミンの合計をベースとして、20〜49質量%の(好ましくは脂肪族の非分枝)C9-C12-ジアミン含有量、及び、二塩基酸の合計をベースとして、(39 − 0.7*C9-C12-ジアミン)±3質量%のIPA含有量を有するコポリアミド。
ジアミンの合計をベースとして、20〜49質量%の(好ましくは脂肪族の非分枝)C9-C12-ジアミン含有量、及び、二塩基酸の合計をベースとして、(39 − 0.7*C9-C12-ジアミン)±2質量%のIPA含有量を有するコポリアミド。
【0013】
好ましくは、ジアミンの合計をベースとして、25〜45質量%の(好ましくは脂肪族の非分枝)C9-C12-ジアミン含有量、及び、二塩基酸の合計をベースとして、(39 − 0.7*C9-C12-ジアミン)±5質量%のIPA含有量を有するポリアミドを用いる。
ジアミンの合計をベースとして、25〜45質量%の(好ましくは脂肪族の非分枝)C9-C12-ジアミン含有量、及び、二塩基酸の合計をベースとして、(39 − 0.7*C9-C12-ジアミン)±3質量%のIPA含有量を有するコポリアミド。
ジアミンの合計をベースとして、25〜45質量%の(好ましくは脂肪族の非分枝)C9-C12-ジアミン含有量、及び、二塩基酸の合計をベースとして、(39 − 0.7*C9-C12-ジアミン)±2質量%のIPA含有量を有するコポリアミド。
【0014】
好ましくは、ジアミンの合計をベースとして、30〜45質量%の(好ましくは脂肪族の非分枝)C9-C12-ジアミン含有量、及び、二塩基酸の合計をベースとして、(39 − 0.7*C9-C12-ジアミン)±5質量%のIPA含有量を有するポリアミドを提供する。
ジアミンの合計をベースとして、30〜45質量%の(好ましくは脂肪族の非分枝)C9-C12-ジアミン含有量、及び、二塩基酸の合計をベースとして、(39 − 0.7*C9-C12-ジアミン)±3質量%のIPA含有量を有するコポリアミド。
ジアミンの合計をベースとして、30〜45質量%の(好ましくは脂肪族の非分枝)C9-C12-ジアミン含有量、及び、二塩基酸の合計をベースとして、(39 − 0.7*C9 C12-ジアミン)±2質量%のIPA含有量を有するコポリアミド。
別の脂肪族ジアミン(C9-C12-ジアミン)の中で、好ましくは、1,10-デカンジアミン及び1,12-ドデカンジアミンを使用し、特に好ましくは、1,10-デカンジアミンを用いる。
更に好ましい態様において、成分(B)の割合は、20〜65質量%の範囲である。
【0015】
部分芳香族の、部分結晶コポリアミド(成分(A))の溶液粘度ηrel(m-クレゾール中で測定される(0.5質量%, 20℃))は、2.0以下、好ましくは1.9以下、特に好ましくは1.8以下である。好ましくは、コポリアミドの溶液粘度ηrelは、1.45〜2.0の範囲にあり、特に1.5〜1.9又は1.5〜1.8の範囲にある。
コポリアミド(成分A)は、好ましくは110〜140℃の範囲、好ましくは115〜135℃の範囲、特に120〜130℃の範囲のガラス転移温度を有する。
融解点は、好ましくは300〜330℃の範囲、より好ましくは305〜325℃の範囲、特に310〜325℃の範囲である。
コポリアミドの融解エンタルピーは、好ましくは30〜60 J/gの範囲、より好ましくは35〜60 J/gの範囲、特に好ましくは40〜60 J/g範囲である。
【0016】
更に、組成物は、好ましくは、成分(A)及び/又は全ポリアミド成形組成物が、例えば、95℃の温度で水中に336時間置いた後に、5質量%未満、好ましくは4質量%未満の吸水率を有するように、調合される。
上記の特性が達成される限りにおいて、成分(A)の8質量%以下、好ましくは5質量%以下、特に好ましくは3質量%以下の芳香族ジカルボン酸が、10〜36個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸で置き換えられても良い。好ましい脂肪族二塩基酸は、セバシン酸及びドデカン二酸である。更に、ジアミンの8質量%以下、好ましくは5質量%以下、特に好ましくは3質量%以下が、1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン、メチル-1,5-ペンタンジアミン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン(MACM)、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン(PACM)、m-キシリレンジアミン(MXDA)又はp-キシリレンジアミン(PXDA)で置き換えられても良い。ジアミン及び二塩基酸の合計をベースとして、5質量%以下のラクタム又はアミノカルボン酸が、特に、ラウロラクタム又はアミノラウリン酸が、成分(A)に存在しても良い。しかしながら、特に好ましい態様において、成分(A)は、芳香族二塩基酸TPA及びIPA、並びに、ジアミンである1,6-ヘキサンジアミン及び少なくとも1種のC9-C12-ジアミン、特に、1,10-デカンジアミンのみによって形成される。
【0017】
提案されるポリアミド成形組成物の更に好ましい態様において、成分(B)のフィラー及び強化剤は、繊維、特にガラス繊維及び/又はカーボン繊維であり、特に好ましくは短繊維(好ましくは2〜50 mmの範囲の長さで5〜40μmの直径を有する)、及び/又は、長繊維(特に、円形及び/又は非円形の断面積を有する繊維)であり、最後の記載の場合において、主断面軸対第二断面軸の長さの比が、好ましくは2超過であり、好ましくは2〜8、特に好ましくは2〜5の範囲である。
好ましくは、非円形の断面積を有し、主断面軸対第二断面軸の長さの比が、2超過であり、好ましくは2〜8、特に2〜5の範囲であるガラス繊維を用いる。これらのガラス繊維は、フラットガラス繊維として知られており、長円形、楕円形、くびれを有する楕円(繭繊維として知られている)、長方形又は実質的に長方形の断面積を有する。
【0018】
本発明に従って使用される非円形の断面積を有するフラットガラス繊維は、好ましくは、短ガラス繊維として使用される(0.2〜20 mm、好ましくは2〜12 mmの長さを有するカットガラス)。
使用されるフラットガラス繊維の更なる特徴的な要素は、主断面軸の長さが、好ましくは6〜40μmの範囲、特に15〜30μmの範囲であり、第二断面軸の長さが3〜20μmの範囲であり、特に4〜10 μmの範囲であることである。
本発明の成形組成物を強化するために円形及び非円形の断面積を有するガラス繊維の混合物を使用することもでき、上記で定義されたように、フラットガラス繊維の割合は、好ましくは主成分となる割合で、すなわち、繊維の全質量の50質量%を超える。
【0019】
良好な流動性と良好な表面品質を有する強化成形組成物を得ようとする場合には、特に難燃剤と組み合わせて、強化繊維は、好ましくは、主成分となる割合(すなわち例えば、80質量%に及ぶ範囲、又は、90質量%以上)でフラットガラス繊維を含むか、又は、フラットガラス繊維のみを含む。
本発明に従って粗紡糸として使用されるガラス繊維(フィラー成分B)は、直径が10〜20 μmであり、好ましくは12〜18 μmであり、ガラス繊維の断面は、円形、長円形、楕円形、実質的に長方形又は長方形とすることができる。特に好ましくは、2〜5の断面軸の比を有するフラットガラス繊維を用いる。特に、E-ガラス繊維が本発明に従って使用される。しかしながら、全てのほかのタイプのガラス繊維、例えば、A-、C-、D-、M-、S-、R-ガラス繊維、又はそれらの混合物、又は、E-ガラス繊維との混合物を使用することもできる。
【0020】
長繊維で強化される成形組成物については、直径10〜14μm、特に直径10〜12μmの長ガラス繊維を、直径15〜19μmの一般的な長ガラス繊維の代わりに使用する場合に、高度な靱性が得られ、それ故に更なる金属様特性が得られる。
本発明のポリアミド成形組成物は、長繊維-強化棒状のペレットを製造するための公知の方法、特に、長繊維粗紡糸が完全に融解ポリマーに含浸され、次いで冷却され、切断される引抜成形法によって製造されても良い。この方法で得られた長繊維-強化棒状のペレットは、好ましくはペレット長3〜25mm、特に4〜12mmを有し、更に加工されて一般的な加工方法(例えば射出成形、圧縮成形)で成形体を製造することもできる。
【0021】
引抜成形法で使用される長カーボン繊維は、5〜10 μm(ミクロン)、好ましくは6〜8 μmの直径を有する。マトリクス及び繊維ハンドリング(fibre handling)の結合を改善するために、繊維を従来技術におけるガラス繊維及びカーボン繊維で知られている化学的に異なる層で被覆することができる。
ガラス繊維自体は、繊維の断面積の形及び長さに応じて、E-ガラス繊維、A-ガラス繊維、C-ガラス繊維、D-ガラス繊維、M-ガラス繊維、S-ガラス繊維、及び、R-ガラス繊維からなる群から選択でき、好ましくは、E-ガラス繊維を使用する。
成分(B)のフィラー及び強化剤も、また、粒状のフィラー、又は、繊維と粒状のフィラーとの混合物でありうる。好ましくは、粒状のフィラーとして、タルク、マイカ、シリケート、水晶、二酸化チタン、珪灰石、カオリン、アモルファスシリカ、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、チョーク、石灰、長石、硫酸バリウム、固体又は中空ガラス球又は粉末ガラス、永久磁石又は磁化可能な金属化合物、及び/又は、合金、又は、混合物をベースとする無機フィラーが使用される。フィラーは表面修飾されてもよい。
【0022】
更に好ましい態様において、ポリアミド成形組成物は、成分(C)の割合が、8〜25質量%、好ましくは10〜22質量%、特に好ましくは10〜18質量%の範囲内であることを特徴とする。
好ましくは、成分(C)は、60〜100質量%、好ましくは70〜98質量%、特に好ましくは80〜96質量%のホスフィン酸塩、及び/又は、ジホスフィン酸塩、及び、0〜40質量%か、2〜30質量%か、4〜20質量%の窒素含有相乗剤、及び/又は、窒素及び/又はリン含有難燃剤から構成され、最後の記載の場合は、好ましくは、メラミン及びメラミンの縮合生成物、特に、メレム、メラム、メロン、及び、ポリリン酸とメラミンの反応生成物、ポリリン酸とメラミンの縮合生成物の反応生成物、並びに、それらの混合物、特にメラミンポリリン酸塩から選択される。
【0023】
従って、別の態様において、本発明の成形組成物は、追加で、8〜25質量%、好ましくは10〜22質量%、特に10〜18質量%の難燃剤(成分(C)の一部として、又は、全成分(C)を形成するものとして)を含む。難燃剤は、好ましくはハロゲンフリーである。
成分(C)中、又は、全成分(C)を形成する難燃剤は、好ましくは60〜100質量%、より好ましくは70〜98質量%、特に80〜96質量%のホスフィン酸塩、及び/又は、ジホスフィン酸塩(成分(C1))、及び0〜40質量%の、好ましくは2〜30質量%の、特に4〜20質量%の窒素含有相乗剤、及び/又は、窒素及びリン含有難燃剤(成分(C2))である。
【0024】
成分(C2)は、好ましくは、メラミン及びメラミンの縮合生成物、例えば、メレム、メラム、メロン、ポリリン酸とメラミンの反応生成物、ポリリン酸とメラミンの縮合生成物の反応生成物、及び、それらの混合物から選択される。
成分(C2)として、特に好ましいのは、メラミンポリリン酸塩である。このような難燃剤は、従来技術で知られている。この点において、DE 103 46 326を参照することができ、ここでこの文献は、参照により明確に本明細書に組み込まれる。
成分(C1)として、好ましくは、一般式(I)及び/又は一般式(II)のホスフィン酸塩及び/又はそれらのポリマーを用いる。
【0025】
【化1】

【0026】
(式中、
R1、R2は、同一又は異なっており、夫々好ましくは、直鎖又は分枝のC1-C8-アルキル、又はアリールであり;
R3は、直鎖又は分枝のC1-C10-アルキレン、C6-C10-アリーレン、-アルキルアリーレン、又は、アリールアルキレンであり;
Mは、周期表の2族又は3族の典型又は遷移金属イオンであり;そして
mが2又は3であり;
nが1又は3であり;
xが1又は2である。)
金属イオンMとして、好ましくは、Al、Ca、Ba及びZnを含む。
【0027】
難燃剤成分(C1)及び(C2)と組み合わせて、適切な場合は、(C1)及び(C2)の合計をベースとして0.5〜5質量%の酸素、窒素又は硫黄含有金属化合物を安定剤(成分(C3))としての添加剤で加えることも可能である。ここで好ましい金属は、ここで好ましい金属は、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム及び亜鉛である。適切な化合物は酸化物、水酸化物、炭酸塩、ケイ酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩及びスズ酸塩、及び前記化合物の組み合わせ及び混合物、例えば酸化物の水酸化物又は酸化物の水酸化物炭酸塩の群から選択される。例としては、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ベーマイト、ジヒドロタルサイト(dihydrotalcite)、ヒドロカルマイト(hydrocalumite)、水酸化カルシウム、酸化スズ水和物、水酸化亜鉛、ホウ酸亜鉛、硫化亜鉛、リン酸亜鉛、炭酸亜鉛、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、炭酸マグネシウム、塩基性ケイ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、パルミチン酸カリウム、ベヘン酸マグネシウムが挙げられる。
【0028】
更に、強調されるべきことは、本発明のポリアミド成形組成物又はそれから製造される成形体との関連において、優れた耐燃性が、上述の優れた特性と組み合わせて達成されることである。成形組成物は、0.8 mmの厚みの試験片でUL区分がV0である(UL-94,Underwritersラボラトリーズ(U.L.)の標準に従ったテスト。www.ulstandards.com参照)。
本発明のコポリアミドは、相乗剤(C2)を添加しなかった場合でさえ、防火区分「V0」を達成する。従って、添加される難燃剤は、好ましくは、成分C1及びC3と共にのみから構成される。
成形組成物は、安定剤、加工助剤、衝撃改質剤、及び別の添加剤を含んでも良い。
【0029】
本発明の成形組成物は、更に添加剤(D)、例えば、無機安定剤、有機安定剤、潤滑剤、染料、核形成剤、金属顔料、金属フレーク、金属被覆粒子、衝撃改質剤、静電防止剤、伝導性添加剤、離型剤、光学的光沢剤、天然層状ケイ酸塩、合成層状ケイ酸塩、又は、上述の添加剤の混合物からなる群から選択される添加剤を含んでも良い。本発明の成形組成物中で、静電防止剤として、例えば、カーボンブラック及び/又はカーボンナノチューブを使用することができる。しかしながら、カーボンブラックの使用は、成形組成物の黒着色を改良するのにも役立ちうる。
本発明の成形組成物中で、層状ケイ酸塩として、例えば、カオリン、蛇紋石、タルク、マイカ、バーミキュライト、イライト、スメクタイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、複水酸化物又はそれらの混合物を使用することができる。層状ケイ酸塩は、表面処理されても良いし、処理されなくても良い。
【0030】
本発明の成形組成物中で、安定剤又はエージング阻害剤として、例えば、酸化防止剤、光安定剤、UV安定剤、UV吸収剤、又は、UVブロッカーを使用することができる。
本発明のポリアミドは、前縮合(precondensate)及び後縮合(after-condensation)の連続プロセスによって一般的な重縮合プラントで製造されうる。好ましくは、鎖レギュレーター(chain regulator)は、粘度を調整するために重縮合プロセスで使用される。好ましい鎖レギュレーターは、モノアミン又は一塩基酸、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、2-エチルヘキサン酸、シクロヘキサン酸、安息香酸、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、2-エチルヘキシルアミン、n-オクチルアミン、n-ドデシルアミン、n-テトラデシルアミン、n-ヘキサデシルアミン、ステアリルアミン、シクロヘキシルアミン、3-(シクロヘキシルアミノ)プロピルアミン、メチルシクロヘキシルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、2-フェニルエチルアミンなどである。更に、粘度は、過剰なジアミン又は二塩基酸を用いることで調製されてもよい。
【0031】
180〜230℃の溶解温度で、塩溶液が均一で、かつ、透明であるために、20〜30%の水をモノマーに添加することが通常である。減圧及び液化の間、又は押出機での融解物の後縮合の間の過剰な発泡を防ぐために、消泡剤を混合物に添加することが好ましい。好ましい消泡剤は、水性シリコンエマルジョン、ポリジメチルシロキサン担持固体担体、例えば、ゼオライト、無水物、高分子量ポリシロキサン又は有機性の水溶性溶媒中のシロキサン(0.01〜0.5質量%の量)である。
重縮合触媒としては、好ましくは、0.005〜1.5質量%のリン化合物、例えば、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸及び/又は、一価から三価のカチオン、例えば、Na、K、Mg、Ca、Zn又はAlを有するそれらの塩、及び/又は、それらのエステル、例えば、トリフェニルホスファート、トリフェニルホスファイト又はトリス(ノニルフェニル)ホスファイトが、好ましくはモノマー混合物に添加される。好ましくは、次亜リン酸、及び、次亜リン酸水素ナトリウム一水和物を提供し、ここでリンの量は、コポリアミドをベースとして100〜500 ppmである。
【0032】
更に、本発明はまた、ポリアミド成形組成物の製造方法も提供する。更に、本発明は、当該ポリアミド成形組成物を使用して製造された成形体も提供する。上述したように、ブリスターは、例えば、臨界厚さを有するコネクター及び熱を内部に伝える金属インサートにおいて、はんだ付けの間に形成されうる。1〜2mmの範囲の厚みは、頻繁に具体的な臨界厚みとなり、比較的低温でブリスターを形成し始める。比較的薄い壁厚みは、ブリスターの形成をそれほど留意する必要はない。なぜなら、この場合において、ブリスター形成可能な臨界量の水は蓄積できず、かつ、水は短い拡散経路による加熱で簡単に蒸発しうるためである。より厚い壁厚みは、同様にあまり気にかけなくても良い。なぜなら、厚み試験棒材は、短い加熱時間で十分に加熱されるわけではないためである。提案される材料は、好ましくは、壁厚みの範囲が0.5〜3 mm、特に、1〜2 mmの成形体で使用され、この壁厚みは、少なくともはんだ付けの間の熱伝導によって影響をうけ、ブリスターが形成されやすい範囲にある。
更に、本発明は、当該ポリアミド成形組成物で少なくとも部分的に構成される成形体の使用法も提供する。このような使用法とは、例えば、印刷回路板の一部、ハウジング部材、フィルム、コンジット、スイッチ、配電器、継電器、抵抗体、キャパシタ、コイル、ランプ、ダイオード、LED、トランジスター、コネクター、レギュレーター、記憶装置、及び、センサーである。更なる態様は、独立請求項に示される。
本発明の好ましい形態を以下に示し、部分的に、説明の目的で単に役立つ図面を用いるが、制限するものとして解釈されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】テスト2(表4参照)の条件下での1.6 mmの厚みのUL94 焼成棒材(burning bar)の表面温度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
好ましい態様の説明
本発明は、特定の実施例で以下に説明され、従来技術に従った低性能の系と比較される。以下に示される実施例は、本発明を支持することと、従来技術との違いを明示する役割を果たすが、請求項に定義される発明の一般的な対象を制限として解釈されない。
【0035】
比較例C1からC8:
ポリアミドを、前縮合と後縮合の連続法によって製造した。表1及び2に示される調合成分を、触媒、レギュレーター及び水と一緒に20Lのオートクレーブに入れて、50〜80分間、260℃の製造温度に加熱し、1時間32バールの圧力下で保持し、次いで、ノズルから吐出させた。前縮合物を、24時間、30ミリバールの減圧下で、120℃で乾燥させた。
このようにして得られたポリアミド前縮合物を、前述したプロセスパラメーター(バレル温度:340℃、スクリューの回転速度:150 rpm、スループット:6 kg/時間)で、25mmの直径のスクリューを有するツインスクリュー押出機(Werner&Pfleiderer製)を用いて後縮合した。融解物を、ゾーン10で窒素ストリームを用いて脱気させた。生成物を直径3mmのノズルから押出物として吐出(take off)させ、ペレット化した。ペレットを100℃で30ミリバールの減圧下で、24時間乾燥させた。
ポリアミドを、Arburg Allrounder 320-210-750射出成形機を用いて、ゾーン1から4の定義されたバレル温度及び定義された金型温度で射出成形し、ISO試験片を製造した。
比較例C1〜C3及びC7は、純粋コポリアミド、すなわち、フィラー及び強化剤、難燃剤を含まず、本質的に添加剤を含まない;比較例C4〜C6及びC8は、比較例C1〜C3及びC7のコポリアミドを用いるが、表3で示された量のフィラー及び強化剤、難燃剤、及び、添加剤が添加されたものとした。
表1:比較例(US 4,607,073に従ったC1、JP 2928325に従ったC2、及び、EP 1 988 113に従ったC3)
【0036】
【表1】

【0037】
実施例E1からE13:
本発明に従ったポリアミドの製造を、比較例C3のポリアミドの製造と同様の方法で行なった。表2のように調合成分を、触媒、レギュレーター及び水と一緒に用いた。
実施例E1〜E8及びE14は、表2に示される割合のように、成分(A)の純粋コポリアミド、すなわち、フィラー及び強化剤、難燃剤を含まず、本質的に添加剤を含まない;実施例E9〜E13及びE15では、夫々表3に示されたように実施例E1、E5及びE14のコポリアミドを使用したが、表3に記載された量のフィラー及び強化剤、難燃剤を含み、添加剤を添加した。
表2:実施例E1〜E8及びE14及び比較例C7の未加工ポリアミドの組成と特性:比較例C3と同様の射出成形条件
【0038】
【表2】

【0039】
表3:比較例C4〜C6及びC8、並びに、実施例E9〜E13及びE15の化合物の組成と特性;比較例C1〜C3と同様の比較例C4〜C6の射出成形条件、及び、比較例C3と同様の実施例E9〜E13、15及びC8の射出成形条件
Melapur(登録商標)200/70:メラミン ポリリン酸塩(Ciba Spez. GmbH)、難燃剤、CAS No: 218768-84-4
Exolit(登録商標)GP1230:オルガノリン塩(Clariant Produkte GmbH)、難燃剤
Alugel 34TH:ステアリン酸アルミニウム添加剤(Baerlocher製)
Irganox 1098:立体のヒンダードフェノール系酸化防止剤(Ciba Spez. GmbH)
Vetrotex 995:長さ4.5mmで直径10μmのカットガラス繊維(円形断面)(Owens Corning Fiberglas製)
【0040】
【表3】

【0041】
上記表1〜2から、成分(A)単独で測定された場合に、比較される系C1及びC2は、吸水率及びはんだぬれ性の双方に関しては、提案された系には、はるかに及ばないことが理解できた。吸水率は、従来技術のこれらの系において有意に高く、はんだぬれ性は有意に低かった。
比較される系C3において吸水率は低かったが、はんだぬれ性は、はじめに示されたように、多くの実際的応用で十分なものではなかった。
表3のように、フィラー及び強化剤、難燃剤及び添加剤を含むポリアミド成形組成物に関しても、比較例C4〜C6で比較された場合に、夫々の場合において、本発明に従った系が、低吸水率と高はんだぬれ性の間でより良い解決をもたらすことが分かった。
驚くことに、C7とE14の比較、及びC8とE15の比較により、明確で印象的なことには、本発明に従って使用される直鎖(非分枝)の脂肪族ジアミンC9-C12(E14、E15)をベースとする場合と比較して、分岐ジアミンC9-C12をベースとすると、はんだ付け可能な成形組成物が、得られないことが分かった。
測定は、以下の標準に従って、以下の試験片を用いて行なわれた。
【0042】
≪熱挙動≫:
融解点、融解エンタルピー及びガラス転移温度(Tg):
ISO標準 11357-11-2
ペレット
示差走査熱量測定(DSC)を、20℃/分の加熱速度で行なった。
ガラス転移温度(Tg)に関しては、開始温度を記載した。
≪相対粘度≫:
DIN EN ISO 307、0.5質量%濃度のm-クレゾール溶液中、温度20℃
ペレット
≪Tensile E modulus, 引張強度及び引裂強度≫:
ISO 527(伸張速度50 mm/分(非強化変形)又は伸張速度5 mm/分(強化変形))
ISO引張棒材、標準:ISO/CD 3167、タイプAl、170 x 20/10 x 4 mm、温度23℃
≪シャルピー衝撃靭性≫:
ISO 179/*eU
ISO 試験棒材、標準:ISO/CD 3167、タイプB1、80 x 10 x 4 mm、温度23℃
* 1 = 非計装化、 2 = 計装化
≪シャルピーノッチ付衝撃靭性≫:
ISO 179/*eA
ISO 試験棒材、標準:ISO/CD 3167、タイプB1、80 x 10 x 4 mm、温度23℃
* 1 = 非計装化、2 = 計装化
≪吸水率≫:
95℃で、336時間水中で、ISO 527に従った引張棒材の質量変化
【0043】
≪はんだぬれ性≫:
0.8、1.6及び3.2 mmの厚みを有するUL94焼成棒材(burning bar)を射出成形した。これらの棒材を、85℃及び85%相対湿度で、168時間、Allen 600制御CAキャビネット(Angelantoniインダストリーズs.p.a(IT)製)を用いて、Joint Industry Standard IPC/JEDEC J-STD-020D.1に記載されているように、湿度感度レベル1(SML 1)で保持した。次いで、3つの異なる厚みの5つの試験棒材を、夫々プレートにおいて(片側加熱)、リフローはんだ付けシステムRO300FC(Essemtec AG(CH)製)で、200mm/分のベルト速度で輸送した。加熱ゾーンを表4に示される温度に設定した。ピーク温度260℃で、1.6mmの厚みのUL94焼成棒材を用いて、テスト2(片側)で上述したはんだ付けプロフィールを得た。図1に示すように、1.6mmの厚みのUL94焼成棒材の表面温度は54秒間で255℃を超え、22秒間で260℃を超えた。次いで、3つの異なる厚みの5つの試験棒材を夫々、プレートなしで直接ワイヤーメッシュの上に置いたので、両側が加熱された。はんだぬれ性を計算するために、ブリスターなしの試験棒材の数を試験された試験棒材の合計数(= 90)で割り、100%を乗じた。
表4:リフローはんだ付けシステムの加熱ゾーンの温度設定
【0044】
【表4】

【0045】
JEDEC SML 1:
1.6 mm厚みUL94バーニング棒材で、湿度感度レベル1(SML 1)に達した。このことは、ブリスターを表4のようにテスト2(片側)の条件下で測定できなかったことを意味し、85℃で85%相対湿度にて、168時間の条件の後に図1で示される温度プロフィールを意味する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構成を有するポリアミド成形組成物:
(A)30〜100質量%の部分芳香族の、部分結晶コポリアミドで、
72.0〜98.3質量%のテレフタル酸(TPA)及び/又はナフタレンジカルボン酸、及び、28.0〜1.7質量%のイソフタル酸(IPA)から構成される、100質量%の二塩基酸フラクション、及び、
51.0〜80.0質量%の1,6-ヘキサンジアミン(HMDA)、及び、20.0〜49.0質量%の脂肪族の非分枝C9-C12-ジアミンから構成される、100質量%のジアミンフラクション
から構成されるコポリアミド;
(B)0〜70質量%のフィラー、及び、強化剤;
(C)0〜25質量%の難燃剤;
(D)0〜5質量%の添加剤;
(ここで、成分(A)〜(D)は合計で100質量%となる)。
【請求項2】
脂肪族の非分枝C9-C12-ジアミンが、
1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン、1,12-ドデカンジアミン、及び、これらのジアミンの混合物からなる群から選択されるジアミンであり、
1,10-デカンジアミン、及び、1,12-ドデカンジアミンであることが好ましく、
1,10-デカンジアミン単独であることが特に好ましい、請求項1に記載のポリアミド成形組成物。
【請求項3】
成分(A)のジアミンフラクションが、
55.0〜75.0質量%の1,6-ヘキサンジアミン(HMDA)、及び、25.0〜45.0質量%の脂肪族の非分枝C9-C12-ジアミンから構成される、請求項1又は2に記載のポリアミド成形組成物。
【請求項4】
成分(A)のジアミンフラクションが、
55.0〜70.0質量%の1,6-ヘキサンジアミン(HMDA)、及び、30.0〜45.0質量%の脂肪族の非分枝C9-C12-ジアミンから構成される、請求項1〜3のいずれかに記載のポリアミド成形組成物。
【請求項5】
成分(A)の二塩基酸フラクションが、
72.0〜98.3質量%のテレフタル酸(TPA)及び/又はナフタレンジカルボン酸、及び、
ジアミンフラクションの百分率で、脂肪族の非分枝C9-C12-ジアミンの含有量のフラクションに応じて決定される、以下の式に従った質量%範囲(但し+/-5質量%の範囲、好ましくは、+/-3質量%の範囲、特に好ましくは、+/-2質量%の範囲である)の含有量のイソフタル酸(IPA)から構成される、
IPA (質量%) = (39 − 0.7*C9-C12-ジアミン)
請求項1〜4のいずれかに記載のポリアミド成形組成物。
【請求項6】
成分(B)の割合が、
20〜65質量%の範囲内である、請求項1〜5のいずれかに記載のポリアミド成形組成物。
【請求項7】
20℃の温度で0.5質量%のm-クレゾール中で測定された、成分(A)の部分芳香族の、部分結晶コポリアミドの溶液粘度が、
2.0以下、好ましくは1.9以下、特に好ましくは1.8以下である、請求項1〜6のいずれかに記載のポリアミド成形組成物。
【請求項8】
成分(A)の部分芳香族の、部分結晶コポリアミドが、
110〜140℃の範囲、好ましくは115〜135℃の範囲、特に好ましくは120〜130℃の範囲のガラス転移温度を有し、及び/又は、
成分(A)の部分芳香族の、部分結晶コポリアミドが、
300〜330℃の範囲、好ましくは305〜325℃の範囲、特に好ましくは310〜325℃の範囲の融解点を有する、請求項1〜7のいずれかに記載のポリアミド成形組成物。
【請求項9】
成分(A)の部分芳香族の、部分結晶コポリアミドが、
30〜60 J/gの範囲、好ましくは35〜60 J/gの範囲、特に好ましくは40〜60 J/gの融解エンタルピーを有する、請求項1〜8のいずれかに記載のポリアミド成形組成物。
【請求項10】
成分(A)及び/又は全ポリアミド成形組成物が、
5質量%未満の、好ましくは4質量%未満の吸水率を、好ましくは95℃の温度で336時間後の水中で有する、請求項1〜9のいずれかに記載のポリアミド成形組成物。
【請求項11】
成分(B)のフィラー及び強化剤が、
繊維、特に、ガラス繊維及び/又はカーボン繊維であって、特に好ましくは短繊維(好ましくは2〜50 mmの範囲の長さを有する)、及び/又は、長繊維(特に、円形及び/又は非円形の断面積を有する繊維)であり、
最後の記載の場合において、主断面軸対第二断面軸の長さの比が、好ましくは2超過であり、好ましくは2〜8、特に好ましくは2〜5の範囲である、請求項1〜10のいずれかに記載のポリアミド成形組成物。
【請求項12】
成分(B)のフィラー及び強化剤が、
粒状のフィラー、又は、繊維と粒状のフィラーとの混合物であり、
好ましくは、粒状のフィラーとして、タルク、マイカ、シリケート、水晶、二酸化チタン、珪灰石、カオリン、アモルファスシリカ、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、チョーク、石灰、長石、硫酸バリウム、固体又は中空ガラス球又は粉末ガラス、永久磁石又は磁化可能な金属化合物、及び/又は、合金、又は、混合物をベースとする無機フィラーを使用する、
請求項1〜11のいずれかに記載のポリアミド成形組成物。
【請求項13】
成分(C)の割合が、
8〜25質量%、好ましくは10〜22質量%、特に好ましくは10〜18質量%の範囲内であり、
成分(C)が、
好ましくは60〜100質量%、好ましくは70〜98質量%、特に好ましくは80〜96質量%のホスフィン酸塩、及び/又は、ジホスフィン酸塩、及び、0〜40質量%か、2〜30質量%か、4〜20質量%の窒素含有相乗剤、及び/又は、窒素及び/又はリン含有難燃剤から構成され、
最後の記載の場合は、好ましくは、メラミン及びメラミンの縮合生成物、特に、メレム、メラム、メロン、及び、ポリリン酸とメラミンの反応生成物、ポリリン酸とメラミンの縮合生成物の反応生成物、並びに、それらの混合物、特にメラミンポリリン酸塩から選択される、請求項1〜12のいずれかに記載のポリアミド成形組成物。
【請求項14】
安定剤、加工助剤、無機安定剤、有機安定剤、潤滑剤、染料、核形成剤、金属顔料、金属フレーク、金属被覆粒子、衝撃改質剤、静電防止剤、伝導性添加剤、離型剤、光学的光沢剤、天然層状ケイ酸塩、合成層状ケイ酸塩、又は、上述の添加剤の混合物が、
成分(D)の添加剤として存在し、
好ましくは、静電防止剤として、カーボンブラック及び/又はカーボンナノチューブを使用する、請求項1〜13のいずれかに記載のポリアミド成形組成物。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれかに記載のポリアミド成形組成物を用いて製造される成形体であって、
特に好ましくは、電気及び電子部材、印刷回路板、印刷回路板の一部、ハウジング部材、フィルム、コンジットの形態であり、特に、スイッチ、配電器、継電器、抵抗体、キャパシタ、コイル、ランプ、ダイオード、LED、トランジスター、コネクター、レギュレーター、記憶装置、及び/又は、センサーの形態である、成形体。

【図1】
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【公開番号】特開2011−157548(P2011−157548A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−15234(P2011−15234)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(510022808)エーエムエス−パテント アクチェンゲゼルシャフト (12)
【Fターム(参考)】