説明

部品の固定装置

【課題】一方の部品と他方の部品とを比較的簡単な操作で脱着させることができる部品の固定装置を提供する。
【解決手段】この固定装置10は、他方の部品5の取付孔7に挿入される本体部30と、本体部30の先端部に装着されるキャップ50とを備え、本体部30は、弾性係合片33と、その先端部外側に突設され、外面が傾斜面36をなし、取付孔7に装着されたグロメット20の係合リブ24に係合する係合爪35と、挿通孔45とを有し、キャップ50は、蓋板51と、傾斜面36に当接する押圧リブ53と、軸部55と、挿通孔45の裏側周縁に係合し、キャップ50を抜け止めするストッパ部57とを有し、キャップ50を本体部30に対して押し込むことにより、押圧リブ53が傾斜面36を押圧し、弾性係合片33を内側に撓ませて、係合爪35が係合リブ24から外れるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、フロアカーペット等の一方の部品に対して、フロアマット等の他方の部品を固定するための、部品の固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両には、フロアカーペット等の一方の部品に対して、運転者又は乗員の足や履物等を載せるための、フロアマット等の他方の部品が、固定装置を介して着脱可能に取付けられている。
【0003】
従来のこの種の固定装置として、下記特許文献1には、鳩目状の補強リングで補強された長孔状の取付孔が形成されたマットを、カーペットに対して固定するための固定装置であって、前記取付孔に適合する略小判形状をなして、該取付孔に挿入されると共に、その基端部をカーペットに対してネジ止め固定された本体部と、該本体部の先端部に回動可能に装着された長手状の回転蓋とを備えた固定装置(敷物用固定具)が開示されている。
【0004】
そして、長手状の回転蓋を、本体部の長手方向に平行に回動させておき、その状態でマットの裏側から取付孔に回転蓋及び本体部を挿通させて、マットの表側に回転蓋を突き出した後、回転蓋を本体部の長手方向に対して直交する角度まで回転させることにより、取付孔の表側周縁に回転蓋が係合して、カーペットにマットを固定させることができる。
【特許文献1】実公平2−25694号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の固定装置の場合、カーペットにマットを取付ける際には、回転蓋を予め、本体部の長手方向に平行に回動させておく必要があった。また、掃除等のためカーペットからマットを取外す際には、本体部の長手方向に直交するまで回動させた回転蓋を、再度、本体部の長手方向に平行になるまで回動させた後、マットを持上げること等によって、取付孔から回転蓋及び本体部を抜け出させて、マットを取外すことができるようになっている。このように、カーペットにマットを脱着させる際には、その都度、回転蓋を回動させなければならず、煩雑で作業性に問題があった。
【0006】
したがって、本発明の目的は、一方の部品と他方の部品とを固定する際、又は、固定された部品同士を取外す際に、比較的簡単な操作で各部品同士を脱着させることができる、部品の固定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の第1は、一方の部品に設置されて、他方の部品に形成された取付孔に挿入されて係合することにより、一方の部品と他方の部品とを固定する部品の固定装置において、前記他方の部品に形成された取付孔に挿入される本体部と、該本体部の前記取付孔への挿入方向の端部に押し込み可能に装着されるキャップとを備え、前記本体部は、一方の部品から所定長さで伸び、撓み可能とされた少なくとも一対の弾性係合片と、該弾性係合片の先端部の外側に突設されると共に、その外面が弾性係合片の基部側に向けて次第に高く突出するように傾斜する傾斜面をなし、前記取付孔の表側周縁に係合する係合爪と、一対の弾性係合片の間に形成された挿通孔とを有し、前記キャップは、前記取付孔の内径よりも小さな外径で形成された蓋板と、該蓋板の片面から突設され、前記係合爪の傾斜面に当接する押圧リブと、前記蓋板の片面から所定長さで伸び、前記本体部の挿通孔に挿通される軸部と、該軸部の先端部に拡径して形成されると共に、前記挿通孔の裏側周縁に係合して、キャップを本体部に対して抜け止めするストッパ部とを有しており、前記キャップを前記本体部に対して押し込むことにより、前記押圧リブが前記係合爪の傾斜面を押圧し、前記弾性係合片を内側に撓ませて、前記係合爪が前記取付孔の表側周縁から外れるように構成されていることを特徴とする部品の固定装置を提供するものである。
【0008】
上記発明によれば、一方の部品に設けられた本体部に対して、取付孔を整合させて他方の部品を押し込んでいくと、取付孔内周に係合爪の傾斜面が押圧されて、弾性係合片が内側に撓んでいき、更に他方の部品を押し込んで、係合爪が取付孔を乗り越えると、取付孔の表側周縁に係合爪が係合して、他方の部品を一方の部品に固定させることができる。このように、一方の部品に設けた本体部に対して、取付孔を介して他方の部品を押し込むことにより、簡単に各部品同士を固定することができ、取付け作業性を向上させることができる。
【0009】
そして、一方の部品から他方の部品を取外したい場合には、キャップを本体部に対して押し込むことにより、キャップに形成された押圧リブにより係合爪の斜面が押圧されて、弾性係合片が内側に撓み、係合爪が取付孔の表側周縁から外れるので、その状態で、他方の部品を持上げる等して、一方の部品から引離すことにより、一方の部品から他方の部品を取外すことができる。このように、キャップを押し込むだけの操作によって、ワンタッチで簡単に、他方の部品を一方の部品から取外すことができ、取外し作業性を向上させることができる。
【0010】
本発明の第2は、前記第1の発明において、前記キャップの軸部外周には、コイルスプリングが配置されると共に、その一端を前記蓋板に支持させ、他端を前記挿通孔が設けられた支持板に支持させて、前記キャップを前記本体部に対して離れる方向に付勢するように構成されている部品の固定装置を提供するものである。
【0011】
上記発明によれば、コイルスプリングによってキャップが本体部に対して離れる方向に付勢されているので、キャップのガタツキを防止することができ、更に、取外し作業時にキャップを押し込んだとしても、手を離せばキャップを押し込み前の位置に確実に戻すことができ、他方の部品を取外した後の再取付けが簡単となる。
【0012】
本発明の第3は、前記第2の発明において、前記支持板は、所定長さでスリットが形成されており、更に、該スリットの中央を拡径させて、前記挿通孔が形成されている部品の固定装置を提供するものである。
【0013】
上記発明によれば、支持板にはスリットが形成されていることにより、支持板が撓みやすくなっているので、本体部にキャップを組付けるべく、キャップを押し込むと、軸部先端のストッパ部によって、挿通孔内周が容易に押し広げられて、ストッパ部を挿通孔の裏側に突き出して、その周縁に係合させることができ、キャップの組付け作業性を向上させることができる。また、スリットの中央に挿通孔が形成されているので、それに挿通される軸部のスライドを許容しつつ、軸部を弾性的にガタ付きなく保持させることができる。
【0014】
本発明の第4は、前記第1〜3の発明のいずれか1つにおいて、前記本体部は、前記取付孔に適合する筒状壁を有していると共に、前記弾性係合片は、この筒状壁の周壁に形成された切欠溝を介して、撓み可能に形成されており、更に、前記キャップの押圧リブは、前記筒状壁を囲む枠状をなしている部品の固定装置を提供するものである。
【0015】
上記発明によれば、キャップに形成された押圧リブは、本体部に形成された筒状壁を囲む枠状をなしているので、キャップを押し込むときのガイドとなり、その結果、キャップを押し込むときの、キャップの傾きやガタツキ等を防止することができ、キャップをスムーズに押し込むことができる。
【0016】
本発明の第5は、前記第4の発明において、前記筒状壁の外周であって、前記弾性係合片の先端部に形成された係合爪よりも、基部側の位置には、本体部が固定される一方の部品の厚さにほぼ適合する間隔を設けて、2つのフランジ部が形成されている部品の固定装置を提供するものである。
【0017】
上記発明によれば、筒状壁の外周には、本体部が固定される部品の厚さにほぼ適合する間隔で、2つのフランジ部が形成されているので、例えば、一方の部品がカーペット等の比較的軟質のものであっても、2つのフランジ部により部品の表裏両面を挟み込むようにして、しっかりと固定することができる。
【0018】
本発明の第6は、前記第5の発明において、前記2つのフランジ部のうち、前記弾性係合片の先端部の係合爪に近いフランジ部には、前記弾性係合片に対応する位置に、切欠き部が形成されている部品の固定装置を提供するものである。
【0019】
上記発明によれば、弾性係合片の先端部の係合爪に近いフランジ部には、弾性係合片に対応する位置に切欠き部が形成されているので、弾性係合片を撓ませやすくすることができる。その結果、他方の部品を一方の部品に対して押し込んで、係合爪を取付孔の表側に突き出させて、その周縁に係合させる際に、取付孔内周を係合爪が乗り越えやすくさせることができ、取付け作業性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の部品の固定装置によれば、一方の部品に設けた本体部に対して、取付孔を介して他方の部品を押し込むことで、取付孔の表側周縁に係合爪が係合して、他方の部品を一方の部品に簡単に固定させることができ、また、一方の部品から他方の部品を取外したい場合には、キャップを本体部に対して押し込むことにより、キャップの押圧リブにより係合爪の斜面が押圧されて、弾性係合片が内側に撓み、係合爪が取付孔の表側周縁から外れるので、一方の部品から他方の部品をワンタッチで簡単に取外すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図1〜6を参照して、本発明の部品の固定装置の一実施形態について説明する。
【0022】
一般に、車両の床面にはフロアカーペットが敷かれているが、このフロアカーペットをなるべく綺麗に保つために、運転席や助手席、後部座席の各座席の足元に位置する、フロアカーペットの上には、足そのものや、靴,サンダル等の履物類を置くための、フロアマットが載置されている。この種のフロアマットは、使用中に位置ズレすることは好ましくないため、フロアカーペットに対して所定位置で固定されることが望ましく、更に、泥汚れ等による清掃の利便性を考慮して、フロアカーペットから取外せるようになっている。
【0023】
本発明の部品の固定装置10(以下、「固定装置10」という)は、図1に示すように、上記のようなフロアカーペット1(以下、「カーペット1」という)に対して、フロアマット5(以下、「マット5」という)を脱着可能に取付けるために用いられるもので、マット5に形成された取付孔7に挿入される本体部30と、該本体部30の前記取付孔7への挿入方向の端部に押し込み可能に装着されるキャップ50とを備えている。すなわち、この実施形態では、図1に示すように、「カーペット1」が本発明における一方の部品をなしており、「マット5」が本発明における他方の部品をなしている。また、この態様のみならず、例えば、一方の部品を車体パネルとし、他方の部品を、ガーニッシュや、トリムボード、カバー部材等としてもよく、特に限定されるものではない。
【0024】
また、マット5は、比較的軟質のゴム材料から形成されているが、これをカーペット1に対して強固に固定するために、前記取付孔7には、合成樹脂製のグロメット20が装着されている。図1に示すように、このグロメット20は、挿入孔21aが形成された円筒状をなすと共に、前記取付孔7に挿入される挿入筒部21と、この挿入筒部21の基端部外周から斜め下方に傘状に広がって、取付孔7の表側周縁に係合する傘フランジ部22と、前記挿入筒部21の先端部外周に、周方向に沿って均等な間隔を設けて複数形成された係合突起23と、該係合突起23の上端部から前記傘フランジ部22へ向かって、軸方向に沿って直線状に伸びる垂直リブ23aとを有している。また、図4に示すように、挿入筒部21の先端部内周には、環状をなす係合リブ24が、挿入孔21aの中心に向かって突設しており、これに後述する固定装置10の係合爪35が係合するようになっている。
【0025】
また、このグロメット20を取付孔7に抜け止め固定させるべく、マット5の裏側には固定プレート25が配置される。すなわち、この固定プレート25は、環状に形成された環状リング26と、該環状リング26の内周から所定長さで環状に突出する環状リブ28と、該環状リブ28の内周に、周方向に沿って均等な間隔を設けて前記係合突起23と同数で、かつ、同係合突起23を通過可能な幅で形成された通過溝28aと、前記環状リング26の内周の、各通過溝28aの中間位置に形成され、前記垂直リブ23aが嵌入する嵌入溝28bとを有している。
【0026】
そして、挿入筒部21を取付孔7の表側から挿入して、その先端部を取付孔7の裏側に突き出すと共に、傘フランジ部22を取付孔7の表側周縁に係合させて、取付孔7にグロメット20を仮保持させる。その後、挿入筒部21の係合突起23に、通過溝28aを整合させ、係合突起23が通過溝28aを通過するまで固定プレート25を押し込み、その状態で、固定プレート25をグロメット20に対して所定角度回転させることにより、嵌入溝28bに垂直リブ23aが嵌入すると共に、係合突起23が環状リブ28の裏側周縁に係合し、グロメット20が取付孔7に抜け止め固定されるようになっている。
【0027】
上述したマット5は、本発明の固定装置10によって、カーペット1に固定される。この固定装置10は、カーペット1に設けられた組付孔3に挿入されて、該マット5に装着される本体部30と、該本体部30の先端部(取付孔7への挿入方向の端部)に押し込み可能に装着されるキャップ50とを備えている。なお、図1に示すように、比較的軟質の材料からなるカーペット1には、その組付孔3の外側周縁に、一対の切込み3a,3aが対向して形成されており、組付孔3に本体部30を装着させやすくなっている。
【0028】
図1,2及び図5を併せて参照すると、本体部30は、前述したグロメット20の係合リブ24及びカーペット1の組付孔3の各内径に対してほぼ適合するか、或いは、それよりもやや小さな外径で伸びる円筒状の筒状壁31を有している。また、筒状壁31の外周の対向した箇所には、一対のコ字状の切欠溝32,32(図2(a)参照)が形成されており、これらの切欠溝32,32を介して、筒状壁31の内側及び外側に撓み可能とされた、一対の弾性係合片33,33が対向して形成されている。
【0029】
また、各弾性係合片33の先端部の外側には、前述したグロメット20の係合リブ24に係合する係合爪35が、それそれ突設している。更に、この係合爪35の外面は、図2(c)に示すように、前記弾性係合片33の基部側に向かって次第に高く突出するように傾斜した傾斜面36をなしており、これに後述するキャップ50の押圧リブ53の押圧面53aが当接するようになっている。すなわち、図4に示すように、キャップ50を本体部30に組み付けた状態で、前記押圧リブ53の押圧面53aが傾斜面36に当接して、キャップ50を本体部30にガタツキなく装着させると共に、図6に示すように、キャップ50が押し込まれた場合には、傾斜面36が押圧リブ53により押圧されて、これにより弾性係合片33を内側に撓ませるようになっている。また、各係合爪35の前記傾斜面36とは反対側の外面には、外方に最も高く突出した頂部から、基部側に向けて次第に高さが低くなるように傾斜した係合段部37が形成されており、前述したグロメット20の係合リブ24に係合しやすくなっていると共に、図6に示すように、マット5を取外すときに、係合リブ24に引っ掛かりにくくさせ、グロメット20内から弾性係合片33を、スムーズに抜き出すことができるようになっている。
【0030】
なお、この実施形態においては、前記弾性係合片33を、筒状壁31の外周に切欠溝32を介して形成するようにしたが、本発明における弾性係合片は、この態様に限定されるものではない。すなわち、一方の部品を合成樹脂や金属等で形成されたパネル等とし、その底面から所定長さで伸びるように、上記のような弾性係合片を一体的に形成してもよい。また、前記係合爪35は、この実施形態の場合、他方の部品であるマット5に形成された取付孔7の表側周縁に係合するものではなく、同取付孔7に装着されたグロメット20の係合リブ24に係合するようになっている。すなわち、本発明において、「取付孔の表側周縁に係合する係合爪」とは、取付孔の表側周縁に直接係合する係合爪だけを意味するものではなく、グロメット等の部材を介して、取付孔の表側周縁に間接的に係合する係合爪も含む意味である。
【0031】
更に、本体部30について説明すると、前記筒状壁31の外周には、前記弾性係合片33の先端に形成された係合爪35よりも基部側の位置に、2つのフランジ部が形成されている。すなわち、筒状壁31の基端部外周から、環状の下側フランジ部39が形成されていて、更に、筒状壁31の外周の、下側フランジ部39から前記カーペット1の肉厚に適合する距離をあけた位置からは、同じく環状をなす上側フランジ部40が形成されている。図4に示すように、下側フランジ部39は、カーペット1の組付孔3の裏側周縁に係合し、一方、上側フランジ部40は、同組付孔3の表側周縁に係合して、両フランジ部39,40により、カーペット1が挟み付けられて、カーペット1に本体部30が装着されるようになっている。また、係合爪35により近接した位置にある、上側フランジ部40には、前述した一対の弾性係合片33,33に対応する位置に、一対の切欠き部41,41が形成されている。すなわち、図2(b)に示すように、前記の弾性係合片33及びその周縁に形成されたコ字状をなす切欠溝32よりもやや大きな幅でもって、上側フランジ部40の上記箇所を一定幅でカットされて、切欠き部41,41が形成されている。
【0032】
また、筒状壁31の内部であって、その軸方向のほぼ中間位置には、対向する壁面同士を連結するように、長板状の支持板43が架設されている。すなわち、この支持板43は、図2(b)に示すように、筒状壁31を軸方向に見たときに、前述した弾性係合片33,33を結ぶ線に対して直交する方向に配設されていて、更に、その長手方向中央には所定長さでスリット44が形成され、このスリット44の中央には、その溝幅よりも拡径した内径で、円形状をなす挿通孔45が設けられている。この挿通孔45には、後述するキャップ50の軸部55がスライド可能に挿通されると共に、その裏面側(下側フランジ部39に近接する側)の周縁には、同キャップ50のストッパ部57が係合して、本体部30に対してキャップ50が抜け止めされて装着されるようになっている(図4参照)。また、スリット44の中央に形成された挿通孔45により、それに挿通される軸部55のスライドを許容しつつ、軸部55を弾性的にガタ付きなく保持可能となっている。更に、支持板43の挿通孔45の表側周縁は、後述するコイルスプリング60の一端部を支持する部分となっている。
【0033】
以上説明した本体部30には、コイルスプリング60を介して、筒状壁31の先端部に、キャップ50が押し込み可能に装着されている。図3を併せて参照すると、このキャップ50は、略円板状の蓋板51と、該蓋板51の裏面側の外周縁から所定高さで立設して、前記係合爪35の傾斜面36に当接する押圧リブ53と、前記蓋板51の裏面側中央から所定長さで円柱状に伸びて、前記支持板43の挿通孔45にスライド可能に挿通される軸部55と、該軸部55の先端部に拡径して形成されると共に、前記挿通孔45の裏側周縁に係合するストッパ部57とから形成されている。
【0034】
前記蓋板51は、前記グロメット20の係合リブ24の内径よりも、やや小さな外径で、かつ、筒状壁31の外径よりは大きな外径で形成されており、前記係合リブ24を通り抜けて、グロメット20の挿入筒部21内に収納されるようになっている(図5参照)。また、蓋板51には、その中央部がやや窪んで凹部51aが形成されており、キャップ50を押し込みやすくなっている。更に、蓋板51の裏面外周から立設する押圧リブ53は、円板状をなす蓋板51に対応して、筒状壁31の外径よりも大きな内径で形成された、円形枠状をなしており、筒状壁31の外周を囲むようにして、その先端部に装着されるようになっている。また、前記軸部55は、キャップ50を本体部30に対して装着させたときに、キャップ50を押し込み可能な長さとなるように伸びている。なお、軸部55は円柱状のみならず、角柱状や、長板状等で延設されていてもよく、特に限定されるものではない。
【0035】
更に、上記の押圧リブ53は、その先端部内面に、先端部に向かって次第に拡径するテーパ状をなした押圧面53aが形成されており、この押圧面53aが係合爪35の傾斜面36に当接して、キャップ50からの押込力を弾性係合片33に作用させる部分となる。また、押圧面53aは、上記のように、テーパ状に傾斜して形成されているので、図4に示すように、キャップ50を本体部30に装着させた状態で、傾斜面36に比較的大きな接触面積で当接して、キャップ50のガタツキを防止する役割をなすと共に、その状態で、図6に示すように、キャップ50を本体部30に対して押し込んだときに、キャップ50の押込力を傾斜面36に効果的に作用させることが可能となっている。また、図5に示すように、固定装置10を介してカーペット1にマット5を固定させた際に、マット5に装着されたグロメット20の上端部から、キャップ50が出っ張らない程度の長さとなるように、押圧リブ53が形成されている。
【0036】
また、前記ストッパ部57の外周には、先端に向かって次第に縮径するテーパ面57aが形成されていて、いわゆる先細テーパ形状をなしているので、ストッパ部57を、本体部30の支持板43の挿通孔45に、挿通させやすくなっている。
【0037】
上記のキャップ50は、次のようにして、本体部30に装着されるようになっている。すなわち、コイルスプリング60の巻軸内に軸部55を挿入して、軸部55外周にコイルスプリング60を外装させると共に、その一端部を前記蓋板51の裏面に当接させて、キャップ50にコイルスプリング60を仮保持させる。この状態で、支持板43中央の挿通孔45にストッパ部57を整合させて、筒状壁31の先端部に被せるようにして、キャップ50を本体部30に対して押し込んでいく。すると、筒状壁31内に軸部55が入り込んで、ストッパ部57が支持板43の表面側に突き当たり、更に、キャップ50が押し込まれると、挿通孔45の内周を押し広げつつ、ストッパ部57が挿通孔45内に徐々に入り込み、ストッパ部57が挿通孔45の裏側に突き出ると、挿通孔45の裏側周縁にストッパ部57が係合して、本体部30にキャップ50が抜け止めされて固定される。
【0038】
このとき、支持板43には、挿通孔45以外にスリット44が形成されているため、支持板43が撓みやすくなっている。そため、ストッパ部57を挿通孔45に挿通させる際に、ストッパ部57によって、挿通孔45の内周が容易に押し広げられるようになり、ストッパ部57を挿通孔45の裏側に比較的簡単に突き出させることができるので、本体部30に対するキャップ50の組付け作業性を向上させることができる。
【0039】
また、このとき、コイルスプリング60の一端部は、支持板43の挿通孔45の表側周縁に当接支持され、他端部はキャップ50の蓋板51の裏面に当接支持されて、コイルスプリング60が圧縮された状態で保持されるため、キャップ50が本体部30に対して離れる方向に弾性付勢された状態で、装着されるようになっている。このように、コイルスプリング60によってキャップ50が本体部30に対して離れる方向に付勢されているので、キャップ50のガタツキを防止することができ、更に、取外し作業時にキャップ50を押し込んだとしても、手を離せばキャップ50を押し込み前の位置に確実に戻すことができ、清掃等のためマット5を取外した後、再度カーペット1に取付けたい場合に、マット5の再取付けを簡単に行うことができるようになっている。
【0040】
そして、上記のようにして、本体部30にキャップ50が装着された固定装置10は、キャップ50を押し込んでない状態では、コイルスプリング60の付勢力により、キャップ50が上方に押し上げられて、弾性係合片33,33は撓んでいない状態となっており、キャップ50を本体部30に対して押し込むと、押圧リブ53内面の押圧面53aが、係合爪35外面の傾斜面36を押圧して、弾性係合片33を内側に撓ませるようになっている。
【0041】
次に、上記構成からなる本発明の固定装置10の使用方法について説明する。
【0042】
まず、カーペット1に取付けるマット5の取付孔7に、前述したように、グロメット20を表側から挿入する一方、裏側から固定プレート25を整合させて回転させることにより、グロメット20に組み付けて、取付孔7にグロメット20を抜け止め固定させる。
【0043】
そして、一方の部品であるカーペット1に本体部30を装着させるべく、下側フランジ部39を組付孔3内に対して斜め上方から差し込んでいくのであるが、このとき、組付孔3周縁には、一対の切込み3a,3aが形成されているため、組付孔3内周が容易に押し広げられて、下側フランジ部39を組付孔3の裏側周縁に係合させることができる。また、下側フランジ部39に対してカーペット1の肉厚に適合する距離で離れて形成された上側フランジ部40が、組付孔3の表側周縁に係合して、上下のフランジ部により、カーペット1が挟み付けられるようになるので、比較的軟質であるカーペット1であっても、しっかりと本体部30を固定することができる(図4参照)。
【0044】
そして、カーペット1にマット5を取付ける際には、取付孔7に装着されたグロメット20の挿入孔21aを本体部30に整合させて、カーペット1に対してマット5を押し込むことによってなされる。すなわち、上記状態で、マット5を押し込むと、環状の係合リブ24の内周を通って、キャップ50がグロメット20の挿入孔21a内に挿入され、なおも押し込むと、係合リブ24内周に係合爪35の傾斜面36が押圧されて、弾性係合片33が内側に撓み、係合リブ24が傾斜面36を乗り越えて係合段部37に至ると、弾性係合片33が弾性復帰して、係合段部37が係合リブ24に係合し、更に、図5に示すように、グロメット20の下端部及び固定プレート25が、上側フランジ部40に突き当たって支持されて、カーペット1にマット5を取付けることができる。また、この状態では、グロメット20の挿入孔21a内に本体部30の筒状壁31が突き出され、それと共にキャップ50が露出され、キャップ50を押し込み可能な状態となっている。
【0045】
このように、グロメット20の挿入孔21aに、本体部30を整合させて、マット5を押し込むだけの簡単な作業で、カーペット1にマット5を取付けることができ、取付け作業性を向上させることができる。また、このとき、上側フランジ部40には、弾性係合片33に対応して切欠き部41が形成されているので、弾性係合片33が比較的撓みやすくなっており、その結果、上記のように、マット5を押し込む際に、係合リブ24を、係合爪35の傾斜面36が乗り越えやすくさせることができ、取付け作業性を向上させることができる。
【0046】
一方、清掃や取替え等のために、マット5をカーペット1から取外したい場合には、グロメット20の挿入孔21a内に、押し込み可能に配置された、固定装置10のキャップ50を押し込むだけでよい。すなわち、蓋板51を介してキャップ50を本体部30に対して押し込むことにより、押圧リブ53の押圧面53aにより傾斜面36が押圧され、これによってキャップ50の押込力が係合爪35に作用し、弾性係合片33を内側に撓ませて、その結果、係合段部37と係合リブ24との係合を解除させて、図6に示すように、係合爪35が係合リブ24から外れることとなる。この状態で、マット5を持上げて、カーペット1から引離すことにより、グロメット20の挿入孔21a内から、キャップ50及び本体部30を抜き出して、カーペット1からマット5を簡単に取外すことができる。
【0047】
また、この実施形態においては、キャップ50の外周縁に形成された押圧リブ53が、筒状壁31を囲むような枠状をなしている。そのため、上記のように、キャップ50を押し込むときに、押圧リブ53がガイドとなるので、キャップ50を押し込む際の、キャップ50の傾きやガタツキ等を防止することができ、キャップ50をスムーズに押し込むことができる。
【0048】
以上説明したように、本発明の固定装置10においては、マット5をカーペット1に取付ける際には、グロメット20の挿入孔21aを、本体部30に整合させてマット5を押し込むだけの簡単な作業でよく、その取付け作業性を向上させることができると共に、カーペット1からマット5を取外したい場合には、キャップ50を押し込むだけの操作によって、ワンタッチで簡単に、マット5を取外すことができ、取外し作業性も向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の部品の固定装置を示す分解斜視図である。
【図2】同部品の固定装置を構成する本体部を示しており、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は(b)のA−A矢視線における断面図である。
【図3】同部品の固定装置を構成するキャップを示しており、(a)は底面図、(b)は正面から見た場合の断面図である。
【図4】同部品の固定装置により、各部品同士を固定する前の状態を示す説明図である。
【図5】同部品の固定装置により、各部品同士を固定した状態を示す説明図である。
【図6】同部品の固定装置により、一方の部品から他方の部品を取外す際の状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0050】
1 フロアカーペット(一方の部品)
5 フロアマット(他方の部品)
7 取付孔
10 固定装置
20 グロメット
25 固定プレート
30 本体部
31 筒状壁
33 弾性係合片
35 係合爪
36 傾斜面
39 下側フランジ部
40 上側フランジ部
43 支持板
44 スリット
45 挿通孔
50 キャップ
51 蓋板
53 押圧リブ
53a 押圧面
55 軸部
57 ストッパ部
60 コイルスプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の部品に設置されて、他方の部品に形成された取付孔に挿入されて係合することにより、一方の部品と他方の部品とを固定する部品の固定装置において、
前記他方の部品に形成された取付孔に挿入される本体部と、該本体部の前記取付孔への挿入方向の端部に押し込み可能に装着されるキャップとを備え、
前記本体部は、一方の部品から所定長さで伸び、撓み可能とされた少なくとも一対の弾性係合片と、該弾性係合片の先端部の外側に突設されると共に、その外面が弾性係合片の基部側に向けて次第に高く突出するように傾斜する傾斜面をなし、前記取付孔の表側周縁に係合する係合爪と、一対の弾性係合片の間に形成された挿通孔とを有し、
前記キャップは、前記取付孔の内径よりも小さな外径で形成された蓋板と、該蓋板の片面から突設され、前記係合爪の傾斜面に当接する押圧リブと、前記蓋板の片面から所定長さで伸び、前記本体部の挿通孔に挿通される軸部と、該軸部の先端部に拡径して形成されると共に、前記挿通孔の裏側周縁に係合して、キャップを本体部に対して抜け止めするストッパ部とを有しており、
前記キャップを前記本体部に対して押し込むことにより、前記押圧リブが前記係合爪の傾斜面を押圧し、前記弾性係合片を内側に撓ませて、前記係合爪が前記取付孔の表側周縁から外れるように構成されていることを特徴とする部品の固定装置。
【請求項2】
前記キャップの軸部外周には、コイルスプリングが配置されると共に、その一端を前記蓋板に支持させ、他端を前記挿通孔が設けられた支持板に支持させて、前記キャップを前記本体部に対して離れる方向に付勢するように構成されている請求項1記載の部品の固定装置。
【請求項3】
前記支持板は、所定長さでスリットが形成されており、更に、該スリットの中央を拡径させて、前記挿通孔が形成されている請求項2記載の部品の固定装置。
【請求項4】
前記本体部は、前記取付孔に適合する筒状壁を有していると共に、前記弾性係合片は、この筒状壁の周壁に形成された切欠溝を介して、撓み可能に形成されており、
更に、前記キャップの押圧リブは、前記筒状壁を囲む枠状をなしている請求項1〜3のいずれか1つに記載の部品の固定装置。
【請求項5】
前記筒状壁の外周であって、前記弾性係合片の先端部に形成された係合爪よりも、基部側の位置には、本体部が固定される一方の部品の厚さにほぼ適合する間隔を設けて、2つのフランジ部が形成されている請求項4記載の部品の固定装置。
【請求項6】
前記2つのフランジ部のうち、前記弾性係合片の先端部の係合爪に近いフランジ部には、前記弾性係合片に対応する位置に、切欠き部が形成されている請求項5記載の部品の固定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−163961(P2008−163961A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−350971(P2006−350971)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000124096)株式会社パイオラックス (331)
【Fターム(参考)】