説明

部品実装システム及び部品実装システムにおける状態診断方法

【課題】検査部内における損傷等部位の発生を早期に発見することができ、損傷等部位の特定も容易な部品実装システム及び部品実装システムにおける状態診断方法を提供することを目的とする。
【解決手段】撮像により得られた検査用画像に基づいて部品4の基板2への装着状態の検査を行う検査部R2における制御装置50の診断部50eは、光電変換素子40aが光を受光していない状態で撮像ヘッド40を移動させて信号伝送ケーブル41から伝送されるディジタル信号を検査用信号として一定時間採取し、得られた結果に基づいて、撮像ヘッド40が特定の位置を通過するときに検査用信号の出力レベルが予め定められた基準範囲Dから一時的に外れた状態を検知した場合に、信号伝送ケーブル41に異常があると判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品を基板に装着する部品装着部と部品装着部により基板に装着された部品の基板への装着状態の検査を行う検査部とを備えた部品実装システム及びこの部品実装システムにおける状態診断方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基板に部品(電子部品)を実装して実装基板を生産する部品実装システムは、部品の基板への装着作業を行う部品装着部のほか、部品装着部により基板に装着された部品を撮像ヘッドにより撮像して検査用画像を生成し、その生成した検査用画像に基づいて部品の基板への装着状態の検査を行う検査部を備えている(例えば、特許文献1)。
【0003】
このような部品実装システムにおいて、検査部の撮像ヘッドには光電変換素子のほか光電変換素子が出力するアナログ信号をディジタル信号に変換するA/D変換器が備えられており、A/D変換器によってA/D変換された信号は撮像ヘッドに繋がる信号伝送ケーブルによって制御装置の画像生成部に伝送される。ここで、信号伝送ケーブルは、撮像ヘッドの移動動作に追従して変形するケーブル保護案内部材内に収容されており、撮像ヘッドが移動すると信号伝送ケーブルはケーブル保護案内部材内で屈伸する。このため検査部では撮像ヘッド内の部品(例えば光電変換素子)だけでなくケーブル保護案内部材内の信号伝送ケーブルにも損傷や劣化(以下、損傷等と称する)が生じるおそれがあり、これにより画像データの信頼性が損なわれるケースが出てくる。このため従来、部品実装システムのオペレータは、撮像ヘッド内の部品や信号伝送ケーブルに生じた損傷等箇所をいち早く発見し、当該箇所の修理を行う必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−87450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来、検査部のどこかの部位に損傷等が生じた場合であってこれにオペレータが気付くのは、得られた検査用画像が明らかに実際と異なるものとなっているときであり、このときには損傷等が生じている部位の損傷等の程度がかなり大きくなっている場合が多いことから、それまでに得られた検査用画像のデータの信頼性は極めて低く、既に行った検査が無駄になるおそれがあった。また、オペレータが得られた検査用画像に基づいて検査部のどこかの部位に損傷等が生じていると気付いたとしても、その損傷等部位が撮像ヘッド内の部品に生じているのか信号伝送ケーブルに生じているのかを迅速に特定することは困難であるという問題点があった。
【0006】
そこで本発明は、検査部内における損傷等部位の発生を早期に発見することができ、損傷等部位の特定も容易な部品実装システム及び部品実装システムにおける状態診断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の部品実装システムは、部品を基板に装着する部品装着部と、部品装着部により基板に装着された部品を撮像ヘッドにより撮像して検査用画像を生成し、その生成した検査用画像に基づいて部品の基板への装着状態の検査を行う検査部とを備え、前記検査部は、撮像ヘッドに設けられた光電変換素子及び前記光電変換素子が出力するアナログ信号をディジタル信号に変換するA/D変換器と、前記撮像ヘッドの移動動作に追従して変形するケーブル保護案内部材内に収容されてA/D変換器から出力されるディジタル信号を伝送する信号伝送ケーブルとを有して成る部品実装システムであって、前記光電変換素子が光を受光していない状態で前記撮像ヘッドを移動させて前記信号伝送ケーブルから伝送されるディジタル信号を検査用信号として一定時間採取し、得られた結果に基づいて、前記撮像ヘッドが特定の位置を通過するときに前記検査用信号の出力レベルが予め定められた基準範囲から一時的に外れた状態を検知した場合に前記信号伝送ケーブルに異常があると判断する診断部を備えた。
【0008】
請求項2に記載の部品実装システムは、請求項1に記載の部品実装システムであって、前記光電変換素子が光を受光していない状態で出力するアナログ信号は前記検査部が撮像ヘッドによる撮像を行っていない待機状態で出力する信号である。
【0009】
請求項3に記載の部品実装システムにおける状態診断方法は、部品を基板に装着する部品装着部と、部品装着部により基板に装着された部品を撮像ヘッドにより撮像して検査用画像を生成し、その生成した検査用画像に基づいて部品の基板への装着状態の検査を行う検査部とを備え、前記検査部は、撮像ヘッドに設けられた光電変換素子及び前記光電変換素子が出力するアナログ信号をディジタル信号に変換するA/D変換器と、前記撮像ヘッドの移動動作に追従して変形するケーブル保護案内部材内に収容されてA/D変換器から出力されるディジタル信号を伝送する信号伝送ケーブルとを有して成る部品実装システムにおける状態診断方法であって、前記光電変換素子が光を受光していない状態で前記撮像ヘッドを移動させて前記信号伝送ケーブルから伝送されるディジタル信号を検査用信号として一定時間採取する工程と、前記検査用信号を一定時間採取して得られた結果に基づいて、前記撮像ヘッドが特定の位置を通過するときに前記検査用信号の出力レベルが予め定められた基準範囲から一時的に外れた状態を検知した場合に前記信号伝送ケーブルに異常があると判断する工程とを含む。
【0010】
請求項4に記載の部品実装システムにおける状態診断方法は、請求項3に記載の部品実装システムにおける状態診断方法であって、前記光電変換素子が光を受光していない状態で出力するアナログ信号は前記検査部が撮像ヘッドによる撮像を行っていない待機状態で出力する信号である。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、撮像ヘッドの光電変換素子が光を受光していない状態で撮像ヘッドを移動させて信号伝送ケーブルから伝送されるディジタル信号を検査用信号として一定時間採取し、得られた結果に基づいて、撮像ヘッドが特定の位置を通過するときに検査用信号の出力レベルが予め定められた基準範囲から一時的に外れた状態を検知した場合に信号伝送ケーブルに異常があると判断するようになっており、検査用画像の取得とは無関係に任意の時間に状態診断を行うことができるので、検査部内における損傷等部位の発生を早期に発見することができ、損傷等部位の特定も容易である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施の形態における部品実装システムの平面図
【図2】本発明の一実施の形態における部品実装システムが備える第1の部品装着機の側面図
【図3】本発明の一実施の形態における部品実装システムが備える第2の部品装着機の側面図
【図4】本発明の一実施の形態における部品実装システムが備える検査部の構成を示すブロック図
【図5】本発明の一実施の形態における検査部が備えるケーブル保護案内部材を示す斜視図
【図6】(a)(b)(c)(d)本発明の一実施の形態における検査部が備えるケーブル保護案内部材の動きを示す図
【図7】本発明の一実施の形態における部品実装システムが備えるリフロー後検査機の側面図
【図8】本発明の一実施の形態における検査部の状態診断で得られた検査用信号の例を示す図
【図9】(a)(b)(c)本発明の一実施の形態における検査部の状態診断で得られた検査用信号の例を示す図
【図10】本発明の一実施の形態における検査部の状態診断で得られた検査用信号の例を示す図
【図11】本発明の一実施の形態における検査部の状態診断の実行手順を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1に示す本発明の一実施の形態における部品実装システム1は、基板2の搬送順に並んだスクリーン印刷機11、第1の部品装着機12、第2の部品装着機13、リフロー装置14及びリフロー後検査機15を有して成る。
【0014】
スクリーン印刷機11は基板2の電極部3に半田を印刷し、第1の部品装着機12はスクリーン印刷機11から送られてきた基板2の電極部3上に部品(電子部品)4を装着する。第2の部品装着機13は、第1の部品装着機12から送られてきた基板2に部品4の装着を行うとともに、各部品4の基板2上での装着状態の検査を行う。リフロー装置14は部品4の装着がなされた基板2を加熱して半田を溶かす半田リフローを行い、部品4を基板2の電極部3上に固定させる。リフロー後検査機15は半田リフローが終了した基板2上での各部品4の装着状態の検査を行う。以下の説明では、スクリーン印刷機11、第1の部品装着機12、第2の部品装着機13、リフロー装置14及びリフロー後検査機15について、基板2の搬送方向をX軸方向、X軸方向と直交する水平面内方向をY軸方向、上下方向をZ軸方向とする。
【0015】
図1において、スクリーン印刷機11は基台21上にX軸方向に延びた基板搬送コンベア22を備え、基板搬送コンベア22の上方には平板状のマスク23とX軸方向に延びた箆上のスキージ24を備える。マスク23には基板2の電極部3の配置に応じた配置の開口部23aが設けられており、スキージ24は図示しないスキージ移動機構によってY軸方向に移動される。
【0016】
スクリーン印刷機11によるスクリーン印刷作業では、先ず上流工程側(部品実装システム1の外部)から送られてきた基板2を基板搬送コンベア22によって搬入してマスク23の下方に位置決めした後、基板2を図示しないリフト装置によって上昇させてマスク23に下方から接触させる。これにより基板2の電極部3とマスク23の開口部23aとが合致した状態となったらマスク23上に半田を供給し、マスク23上でスキージ24をY軸方向に摺動させる。このスキージ24の摺動によって半田はマスク23上で掻き寄せられ、マスク23の開口部23aに押し込まれて基板2(電極部3)に転写される。半田が基板2に転写されたらリフト装置によって基板2を下降させてマスク23から離間させ、基板搬送コンベア22を作動させて基板2を下流工程側に搬出する。
【0017】
図1及び図2において、第1の部品装着機12は基台31上にX軸方向に延びた基板搬送コンベア32と、XYロボットから成るヘッド移動機構33を備えている。ヘッド移動機構33は基台31に固定されてY軸方向に延びたY軸テーブル33aと、X軸方向に延びるとともにY軸テーブル33a上をY軸方向に移動自在な2つのX軸テーブル33bと、各X軸テーブル33b上をX軸方向に移動自在な2つの移動ステージ33cを備える。各移動ステージ33cには下方に吸着口を向けた複数の吸着ノズル34を備えた装着ヘッド35が取り付けられており、ヘッド移動機構33の作動(Y軸テーブル33aに対するX軸テーブル33bの移動とX軸テーブル33bに対する移動ステージ33cの移動の組み合わせ)により、2つの装着ヘッド35をそれぞれXY面内で移動させることができる。
【0018】
基台31のY軸方向に対向する2箇所にはテープフィーダ等の複数の部品供給装置36が設けられており、各部品供給装置36はそれぞれ所定の部品供給位置36a(図2)に部品4を供給する。各装着ヘッド35には撮像視野を下方に向けた基板カメラ37が設けられており、基台31上の基板搬送コンベア32を挟む2箇所には撮像視野を上方に向けた部品カメラ38が設けられている。
【0019】
第1の部品装着機12による基板2への部品4の装着作業では、先ず、上流工程側のスクリーン印刷機11から送られてきた基板2を基板搬送コンベア32によって搬入して位置決めする。基板2を位置決めしたらヘッド移動機構33を作動させて一方の装着ヘッド35を移動させ、その装着ヘッド35に備えられた基板カメラ37によって基板2上の対角位置に設けられ一対の基板マーク(図示せず)の撮像を行う。そして、基板カメラ37の撮像によって得られた基板マークの位置から基板2の正規の位置からの位置ずれを算出する。
【0020】
基板2の位置ずれを算出したら、ヘッド移動機構33を作動させて2つの装着ヘッド35をそれぞれ部品供給装置36と基板2との間で行き来させ、吸着ノズル34の吸着動作と吸着解除動作とによって各部品供給装置36が供給する部品4を基板2の電極部3上に移載して装着させる。
【0021】
吸着ノズル34に吸着させた部品4を基板2に装着させるまでの間には部品4が部品カメラ38の上方を通過するようにし、部品カメラ38による部品4の撮像を行って吸着ノズル34に対する部品4の位置ずれ(吸着ずれ)を検出する。そして、部品4の基板2への装着時には、検出した基板2の位置ずれと吸着ずれがキャンセルされるように吸着ノズル34の位置補正を行う。基板2に対する部品4の装着が終了したら、基板搬送コンベア32を作動させて基板2を下流工程側に搬出する。
【0022】
図1及び図3において、第2の部品装着機13は、上述した第1の部品装着機12が備えるヘッド移動機構33の一方の移動ステージ33cから装着ヘッド35を取り外してそこに撮像視野を下方に向けた撮像ヘッド40を取り付けるとともに、その撮像ヘッド40を取り付けた側の部品供給装置36と部品カメラ38を取り外した構成を有する。装着ヘッド35による基板2への部品4の装着作業に関する構成と作業の内容については第1の部品装着機12の場合と同様である。
【0023】
撮像ヘッド40はレーザーと受光素子とを用いた一種のセンサーとしての構造を有した撮像手段であり、図4に示すように、PSD(position sensitive device)やPD(photodiode)等から成る複数の光電変換素子40aと、各光電変換素子40aが出力するアナログ信号をディジタル信号に変換するA/D変換器40bを備えている。撮像ヘッド40は光電変換素子40aの数に応じた複数の信号伝送ケーブル41を介して制御装置50(図3も参照)に繋がっている。制御装置50には画像生成部50a、画像認識部50b、判定部50c及び結果出力部50dが設けられており、結果出力部50dにはディスプレイ装置60が接続されている。
【0024】
図5及び図6において、X軸テーブル33bと移動ステージ33cとの間には、X軸テーブル33bに対する移動ステージ33cの移動動作に追従して変形するケーブル保護案内部材42が設けられており、複数の信号伝送ケーブル41はこのケーブル保護案内部材42内に収容されて保護及び案内がされるようになっている。撮像ヘッド40がX軸テーブル33bに対して移動すると、複数の信号伝送ケーブル41はケーブル保護案内部材42内で屈伸する。
【0025】
撮像ヘッド40が備える光電変換素子40aは、受光した光の強さに応じたアナログ信号(電圧信号)を出力する。撮像ヘッド40のX軸テーブル33bに沿ったX軸方向への移動と、X軸テーブル33bのY軸テーブル33aに沿ったY軸方向移動との組み合わせによって撮像ヘッド40は基板2に対するXY面内方向への走査を行うことができ、これにより基板2全体の撮像を行うことができる。
【0026】
A/D変換器40bは、光電変換素子40aが出力したアナログ信号をA/D変換して輝度値を表すディジタル信号を生成する。
【0027】
制御装置50の画像生成部50aは、撮像ヘッド40から信号伝送ケーブル41を介して送られてきたディジタル信号に基づいて検査用画像を生成し、制御装置50の画像認識部50bは、画像生成部50aが生成した検査用画像に基づいて画像認識を行う。これにより制御装置50は、撮像ヘッド40によって撮像した部品4の位置や形状等を把握することができる。
【0028】
制御装置50の判定部50cは、画像認識部50bにおいて認識した部品4の位置や形状等に基づいて、撮像ヘッド40により撮像した部品4の基板2上での装着状態の検査(良否判定)を行う。
【0029】
制御装置50の結果出力部50dは、判定部50cにおいて基板2への装着状態が不良であると判定された部品4があった場合に、その部品4の基板2上での位置を特定してディスプレイ装置60に表示する。これにより部品実装システム1のオペレータは、基板2への装着状態が不良となっている部品4を認識することができ、その基板2を生産ラインから取り外すなどの適切な処置をとることができる。
【0030】
上記構成の第2の部品装着機13は、第1の部品装着機12による基板2の部品4の装着手順と同様の手順によって基板2への部品4の装着を行った後、撮像ヘッド40を移動させて基板2上に装着されている部品4の撮像を行い、得られた検査用画像に基づいて部品4の基板2への装着状態の検査を行う。
【0031】
図1において、リフロー装置14は、基台71上にX軸方向に延びた基板搬送コンベア72とリフロー炉73を備えている。基板搬送コンベア72は上流工程側の第2の部品装着機13から搬出された基板2を受け取って下流工程側のリフロー後検査機15に搬送し、リフロー炉73はその間に基板2を加熱して基板2上の半田を溶融させる。これにより基板2に装着された各部品4は基板2の電極部3上に固定される。
【0032】
図1及び図7において、リフロー後検査機15は、前述した第2の部品装着機13が備えるヘッド移動機構33から装着ヘッド35を取り外すとともに、基台31上から部品供給装置36と部品カメラ38を取り外した構成を有している。このためリフロー後検査機15は第2の部品装着機13と同様に基板2上での部品4の装着状態の検査を行う機能を備えており、リフロー装置14によって半田リフローがなされた基板2を基板搬送コンベア32によって搬入して基板2上での部品4の装着状態の検査を行う。
【0033】
このように本実施の形態における部品実装システム1は、部品4を基板2に装着する部品装着部R1(図1)と、部品装着部により基板2に装着された部品4を撮像ヘッド40により撮像して検査用画像を生成し、その生成した検査用画像に基づいて部品4の基板2への装着状態の検査を行う検査部R2(図1)を備えたものとなっている。部品装着部R1は第1の部品装着機12と第2の部品装着機13の一部(装着ヘッド35を含む部分)がそれぞれ該当し、検査部R2は第2の部品装着機13の一部(撮像ヘッド40を含む部分)とリフロー後検査機15がそれぞれ該当する。そして、各検査部R2には、撮像ヘッド40又は信号伝送ケーブル41に損傷や劣化等(損傷等)が発生した場合にこれを発見することができる状態診断機能が備えられており、以下にその説明を行う。
【0034】
図4に示すように、各検査部R2の制御装置50(第2の部品装着機13が備える制御装置50或いはリフロー後検査機15が備える制御装置50)には、信号伝送ケーブル41を介して撮像ヘッド40からの信号が入力される診断部50eが備えられている。この制御装置50の診断部50eは、光電変換素子40aが光を受光していない状態(検査部R2が撮像ヘッド40による撮像動作を行っていない待機状態)において、オペレータによる診断開始スイッチ51の操作がなされたことを検知した場合には、ヘッド移動機構33の作動制御を行って、撮像ヘッド40を(撮像ヘッド40が取り付けられた移動ステージ33cを)X軸テーブル33bに沿って最大ストロークMS(図6)で数回往復移動させつつ、各光電変換素子40aが光を受光していない状態で出力する信号を検査用信号として一定時間採取する。
【0035】
ここで、各光電変換素子40aが光を受光していない状態で出力する信号はアナログ信号(電圧値)であるが、このアナログ信号はA/D変換器40bによってディジタル信号に変換されるので、制御装置50の診断部50eが信号伝送ケーブル41を介して受け取る信号はディジタル信号となる。
【0036】
撮像ヘッド40の最大ストロークMSとは、図6に示すように、X軸テーブル33b上での撮像ヘッド40の移動可能領域の一端側の端部がA、他端側がBである場合に、撮像ヘッド40を端部Aから端部Bまで移動させるとき(図6(a)→図6(b)→図6(c)→図6(d))、或いは撮像ヘッド40を端部Bから端部Aまで移動させるとき(図6(d)→図6(c)→図6(b)→図6(a))の撮像ヘッド40の移動ストロークをいい、撮像ヘッド40を最大ストロークMSで往復移動させるとは、撮像ヘッド40を端部A→端部B→端部A或いは端部B→端部A→端部Bと移動させることをいう。
【0037】
図8、図9(a),(b),(c)及び図10は、撮像ヘッド40を最大ストロークMSで4回往復移動させながらひとつの信号伝送ケーブル41から取得した検査用信号の出力レベルの時間変化を示す例である。これらの図中に示す符号「A」,「B」は撮像ヘッド40の移動可能領域上の撮像ヘッド40の位置を示しており、各図中、最大ストロークMSを1往復した分の採取データの範囲を符号Gで示している。
【0038】
図8は検査用信号の出力レベルが基準範囲D内に継続的に収まっている場合の例である。ここで「基準範囲D」とは、撮像ヘッド40と信号伝送ケーブル41の双方に異常がない場合に出力されると予想されるディジタル信号の値を、ノイズの影響によるばらつきを考慮して予め定めたものであり、制御装置50の記憶部50f(図4)に記憶されている。このように検査用信号の出力レベルが基準範囲D内に継続的に収まっている場合には、制御装置50の診断部50eは、撮像ヘッド40及び全ての信号伝送ケーブル41は正常であると判断する。
【0039】
図9(a),(b),(c)は信号伝送ケーブル41から伝送されてきた検査用信号の出力レベルが基準範囲Dから継続的に外れた状態となっている場合の例である。より詳細には、図9(a)は基準範囲Dに対して極端に大きな出力レベルの検査用信号が継続的に出力されていた場合の例、図9(b)は基準範囲Dに対して極端に小さな出力レベルの検査用信号が継続的に出力されていた場合の例、図9(c)は基準範囲Dに対して極端に大きな出力レベルの検査用信号と極端に小さな出力レベルの検査用信号が交互かつ継続的に出力されていた場合の例である。これらの場合には、明らかに光電変換素子40aの性能に問題があると考えられるので(稀にA/D変換器40bに不具合が生じた場合もあり得る)、制御装置50の診断部50eは撮像ヘッド40に異常があると判断する。
【0040】
図10は信号伝送ケーブル41から伝送されてきた検査用信号の出力レベルが基準範囲Dから継続的に外れた状態とはなっていないが、撮像ヘッド40が特定の位置を通過するときに検査用信号の出力レベルが基準範囲Dから一時的に外れることがある場合の例であり、この場合には、検査用信号の出力レベルが、撮像ヘッド40のX軸テーブル33bに沿った往復移動に対応して周期的かつ瞬間的に極端に大きく上昇する状態が認められる。
【0041】
これは、ケーブル保護案内部材42に収容された信号伝送ケーブル41が、撮像ヘッド40の移動動作に伴って所定の屈曲状態になったときに信号伝送が非正常になるケースであり、信号伝送ケーブル41が一定の変形を繰り返すことによって信号伝送ケーブル41の一部の箇所(例えば図6中に示す箇所P)が繰り返し屈伸して断線等を起こしているものと考えられる。このため制御装置50の診断部50eは、得られた検査用信号の出力レベルが、撮像ヘッド40が特定の位置を通過するときに基準範囲Dから一時的に外れる状態となっているときには、その検査用信号を伝送した信号伝送ケーブル41に異常があると判断する。
【0042】
部品実装システム1の各検査部R2における状態診断(状態診断方法)では、検査部R2の制御装置50の診断部50eは先ず、オペレータによる診断開始スイッチ51の操作がなされたことの検知を行う。オペレータは診断開始スイッチ51の操作を基板生産作業の開始時や終了時のほか、検査用画像の取得とは無関係に任意のときに行うことができることから、診断部50eは診断開始スイッチ51の操作がなされたか否かの判断を常時行っており(図11に示すステップST1)、オペレータによる診断開始スイッチ51の操作がなされたことを検知した場合には、ヘッド移動機構33の作動制御を行って撮像ヘッド40をX軸テーブル33bに沿って最大ストロークMSで数回往復移動させつつ、光電変換素子40aが光を受光していない状態で複数の信号伝送ケーブル41それぞれから伝送されてくる各ディジタル信号を検査用信号として一定時間採取する(図11に示すステップST2に示す検査用信号採取工程)。
【0043】
制御装置50の診断部50eは、複数の信号伝送ケーブル41それぞれから伝送されてくる各ディジタル信号を検査用信号として一定時間採取したら、その結果に基づいて検査部R2の状態診断を行う診断実行工程を行う(以下のステップST3〜ステップST7)。
【0044】
この診断実行工程では、先ず、採取した複数の検査用信号のうち、少なくともひとつの検査用信号の出力レベルが継続的に基準範囲Dから外れた状態となっているかどうかを調べる(図11に示すステップST3)。その結果、少なくともひとつの検査用信号の出力レベルが継続的に基準範囲Dから外れた状態となっていた場合には、撮像ヘッド40に異常があると判断してその旨を結果出力部50d経由でディスプレイ装置60に表示する(図11に示すステップST4)。
【0045】
一方、診断部50eは、ステップST3において、全ての検査用信号の出力レベルが継続的に基準範囲Dから外れた状態となっていなかった場合には、次いで、少なくともひとつの検査用信号の出力レベルが基準範囲Dから一時的に外れた状態となっているかどうかを調べる(図11に示すステップST5)。その結果、少なくともひとつの検査用信号の出力レベルが基準範囲Dから一時的に外れた状態となっていた場合には、その出力レベルが基準範囲Dから一時的に外れた状態となっているディジタル信号を出力した信号伝送ケーブル41に異常があると判断して、その旨を結果出力部50d経由でディスプレイ装置60に表示する(図11に示すステップST6)。
【0046】
一方、診断部50eは、ステップST5において、いずれの検査用信号も出力レベルが基準範囲Dから一時的に外れた状態となっていなかった場合、すなわち、すべての検査用信号の出力レベルが継続的に基準範囲D内に収まっていた場合には、撮像ヘッド40及び全ての信号伝送ケーブル41は正常である(異常なし)と判断して、その旨を結果出力部50d経由でディスプレイ装置60に表示する(図11に示すステップST7)。
【0047】
このようなディスプレイ装置60を介して示される検査部R2の状態診断の結果に対し、部品実装システム1のオペレータは、ディスプレイ装置60に撮像ヘッド40に異常がある旨の表示がなされたときには、撮像ヘッド40を正常なものと交換する作業を行い、ディスプレイ装置60に信号伝送ケーブル41に異常がある旨の表示がなされたときには、信号伝送ケーブル41の全体を、若しくは異常が認められた信号伝送ケーブル41を正常なものと交換する作業を行う。
【0048】
このように本実施の形態における部品実装システム1及び部品実装システム1における状態診断方法では、撮像ヘッド40の光電変換素子40aが光を受光していない状態で撮像ヘッド40を移動させて信号伝送ケーブル41から伝送されるディジタル信号を検査用信号として一定時間採取し、得られた結果に基づいて、撮像ヘッド40が特定の位置を通過するときに検査用信号の出力レベルが予め定められた基準範囲Dから一時的に外れた状態を検知した場合に信号伝送ケーブル41に異常があると判断するようになっており、検査用画像の取得とは無関係に任意の時間に状態診断を行うことができるので、検査部R2内における損傷等部位の発生を早期に発見することができ、損傷等部位の特定も容易である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
検査部内における損傷等部位の発生を早期に発見することができ、損傷等部位の特定も容易な部品実装システム及び部品実装システムにおける状態診断方法を提供する。
【符号の説明】
【0050】
1 部品実装システム
2 基板
4 部品
40 撮像ヘッド
40a 光電変換素子
40b A/D変換器
41 信号伝送ケーブル
42 ケーブル保護案内部材
50e 診断部
R1 部品装着部
R2 検査部
D 基準範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品を基板に装着する部品装着部と、部品装着部により基板に装着された部品を撮像ヘッドにより撮像して検査用画像を生成し、その生成した検査用画像に基づいて部品の基板への装着状態の検査を行う検査部とを備え、前記検査部は、撮像ヘッドに設けられた光電変換素子及び前記光電変換素子が出力するアナログ信号をディジタル信号に変換するA/D変換器と、前記撮像ヘッドの移動動作に追従して変形するケーブル保護案内部材内に収容されてA/D変換器から出力されるディジタル信号を伝送する信号伝送ケーブルとを有して成る部品実装システムであって、
前記光電変換素子が光を受光していない状態で前記撮像ヘッドを移動させて前記信号伝送ケーブルから伝送されるディジタル信号を検査用信号として一定時間採取し、得られた結果に基づいて、前記撮像ヘッドが特定の位置を通過するときに前記検査用信号の出力レベルが予め定められた基準範囲から一時的に外れた状態を検知した場合に前記信号伝送ケーブルに異常があると判断する診断部を備えたことを特徴とする部品実装システム。
【請求項2】
前記光電変換素子が光を受光していない状態で出力するアナログ信号は前記検査部が撮像ヘッドによる撮像を行っていない待機状態で出力する信号であることを特徴とする請求項1に記載の部品実装システム。
【請求項3】
部品を基板に装着する部品装着部と、部品装着部により基板に装着された部品を撮像ヘッドにより撮像して検査用画像を生成し、その生成した検査用画像に基づいて部品の基板への装着状態の検査を行う検査部とを備え、前記検査部は、撮像ヘッドに設けられた光電変換素子及び前記光電変換素子が出力するアナログ信号をディジタル信号に変換するA/D変換器と、前記撮像ヘッドの移動動作に追従して変形するケーブル保護案内部材内に収容されてA/D変換器から出力されるディジタル信号を伝送する信号伝送ケーブルとを有して成る部品実装システムにおける状態診断方法であって、
前記光電変換素子が光を受光していない状態で前記撮像ヘッドを移動させて前記信号伝送ケーブルから伝送されるディジタル信号を検査用信号として一定時間採取する工程と、
前記検査用信号を一定時間採取して得られた結果に基づいて、前記撮像ヘッドが特定の位置を通過するときに前記検査用信号の出力レベルが予め定められた基準範囲から一時的に外れた状態を検知した場合に前記信号伝送ケーブルに異常があると判断する工程とを含むことを特徴とする部品実装システムにおける状態診断方法。
【請求項4】
前記光電変換素子が光を受光していない状態で出力するアナログ信号は前記検査部が撮像ヘッドによる撮像を行っていない待機状態で出力する信号であることを特徴とする請求項3に記載の部品実装システムにおける状態診断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−62404(P2013−62404A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200484(P2011−200484)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】