部品選択装置、CAD装置、部品選択方法及び部品選択プログラム
【課題】微小部品の選択操作を簡単に行うことを課題とする。
【解決手段】部品選択装置1は、画面上に表示されるカーソル位置を取得するカーソル位置取得部2を有する。さらに、部品選択装置1は、カーソル位置が指す部品の拡大率を決定する拡大率決定部3をさらに有する。この拡大率決定部3は、複数の部品を含む3次元モデルが表示される3次元モデル画像上でカーソル位置取得部2によって取得されたカーソル位置が指す部品の大きさと、3次元モデル画像に重ね表示させる拡大画像の表示枠の大きさとから拡大率を決定する。部品選択装置1は、部品を含む拡大率決定部3によって決定された拡大率で拡大した拡大画像を3次元モデル画像に重ね表示させる表示制御部4をさらに有する。
【解決手段】部品選択装置1は、画面上に表示されるカーソル位置を取得するカーソル位置取得部2を有する。さらに、部品選択装置1は、カーソル位置が指す部品の拡大率を決定する拡大率決定部3をさらに有する。この拡大率決定部3は、複数の部品を含む3次元モデルが表示される3次元モデル画像上でカーソル位置取得部2によって取得されたカーソル位置が指す部品の大きさと、3次元モデル画像に重ね表示させる拡大画像の表示枠の大きさとから拡大率を決定する。部品選択装置1は、部品を含む拡大率決定部3によって決定された拡大率で拡大した拡大画像を3次元モデル画像に重ね表示させる表示制御部4をさらに有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品選択装置、CAD装置、部品選択方法及び部品選択プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハードウェア(hardware)の高性能化に伴って設計支援用アプリケーション(Application)における3次元モデル(Model)の再現能力が高まっている。このような設計支援用アプリケーションの一例としては、3次元CAD(Computer Aided Design)やデジタルモックアップ(DMU:Digital Mock−Up)などが挙げられる。なお、以下では、設計支援用アプリケーションを設計支援アプリと略記する。
【0003】
かかる設計支援アプリでは、3次元モデルの一部に含まれる部分部品が表示されるとともにその形状までもが実物と同等に表示される。そして、部分部品には、3次元モデルに比べてスケール(scale)が著しく小さい微小部品も含まれる。このことから、設計支援アプリにより再現される部分部品の数は多くなり、また、設計支援アプリにより表示される部分部品の密度も高くなる。
【0004】
このため、設計支援アプリによって生成される表示画像上で操作者が特定の微小部品を選択操作する場合にその選択操作に係る操作性が悪化するケース(case)がある。このような表示画像の一例としては、3次元モデルの閲覧または編集を行う作業画像が表示される。例えば、微小部品を選択する場合には、微小部品のスケールが3次元モデルのスケールとかけ離れているので、作業画像上で微小部品が占める割合も微細になる。一例として挙げれば、微小部品が数ドットで表示される場合がある。それゆえ、操作者が作業画像上でポインティングデバイス(pointing device)のカーソル(cursor)の照準を微小部品に合わせるのには困難な状況となる。このような状況下では、操作者は、目的の微小部品をカーソルで指定するのを成功するまでカーソルの照準合わせを行わねばならず、トライアンドエラー(try and error)が発生してしまう。なお、以下では、作業画像上で部分部品を選択する操作のことを「部品選択操作」という。
【0005】
このようなトライアンドエラーが発生するとはいえ、部品選択操作は、特定の部分部品やその形状の一部の属性情報を閲覧する操作や部分部品の属性を変更する操作につながる基本操作であり、使用頻度の高い重要な操作である。なお、かかる部品選択操作には、部分部品そのものを指定する操作だけでなく、部分部品における形状の一部を指定する操作なども含まれる。このように形状の一部を指定する操作の一例としては、ネジなどの部分部品の径を特定する2点を指定する操作などが挙げられる。
【0006】
このように微細部品の選択操作が困難な状況下でも選択対象とする微小部品を特定するための技術として、部品検索機能(従来技術1)、ズーム機能(従来技術2)、拡大画像の重ね表示機能(従来技術3)などが使用される。
【0007】
このうち、従来技術1は、操作者が選択しようとする部分部品の名前などの検索キーワードを受け付け、3次元モデルが含む部分部品の一覧が登録された部品リストの中から検索キーワードに該当する部分部品を検索するものである。これによって、操作者は、検索結果の中から目的の部分部品を選択できる。
【0008】
また、従来技術2は、作業画像に含まれる3次元モデルの拡大を行うものである。これによって、作業者は、3次元モデルとともにその一部として拡大された微小部品またはその形状の一部をポインティングデバイスのカーソルで指定できる。
【0009】
また、従来技術3は、カーソル位置を示すためのカーソル位置マークを常に拡大モニタ表示領域の中心に表示するとともに、カーソルの移動に追従してカーソルを中心とする所定範囲の表示画像を拡大した拡大画像を拡大モニタ表示領域に自動表示するものである。これによって、作業者は、微小部品の周辺にカーソル位置を合わせることにより微小部品の拡大画像を別画像で表示させることができ、拡大された微小部品またはその形状の一部をポインティングデバイスのカーソルで指定できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−357076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記の従来技術1〜3には、依然として、微小部品の選択操作が煩雑であるという問題が残る。
【0012】
例えば、従来技術1では、検索キーワードの入力や検索結果からの部分部品の選択などの余分な操作手順が生じるとともに、操作手順間で異なる種類の入力デバイスを使用する必要が生じる。結果として、従来技術1では、作業画像上で微小部品をカーソル指定するのを避けることにより、微小部品の選択に至るまでの操作過程が迂遠になってしまう。さらに、従来技術1では、検索キーワードとする部分部品が3次元モデルの中に複数存在する場合に、検索結果として得られた部分部品それぞれが3次元モデル上でどの位置に配置されているかを確かめてから目的の部分部品を選択する必要がある。
【0013】
また、従来技術2では、作業画像上で微小部品をカーソル指定する前にズーム機能を使用する必要があり、微小部品の選択操作が煩雑となってしまう。例えば、ズーム機能を使用する場合には、作業画像の中心位置に目的の微小部品を合わせる操作を行った上で拡大コマンドに対応する操作を微小部品がカーソル指定に耐え得る大きさに拡大されるまで繰り返し行う必要がある。
【0014】
さらに、従来技術3では、微小部品の周辺にカーソル位置を合わせると微小部品の拡大画像が重ね表示されるものの、その拡大画像は一律の拡大率で拡大されるに過ぎない。このため、従来技術3では、拡大画像に含まれる微小部品がカーソル指定に耐え得る大きさまで拡大されていない場合に操作者が拡大率を手動で変更する手間が生じるので、依然として、微小部品の選択操作に煩雑さが残る。
【0015】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、微小部品の選択操作を簡単に行うことができる部品選択装置、CAD装置、部品選択方法及び部品選択プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本願の開示する部品選択装置は、画面上に表示されるカーソル位置を取得するカーソル位置取得部を有する。前記部品選択装置は、前記カーソル位置が指す部品の拡大率を決定する拡大率決定部をさらに有する。前記拡大率決定部は、複数の部品を含む3次元モデルが表示される3次元モデル画像上で前記カーソル位置取得部によって取得されたカーソル位置が指す部品の大きさと、該3次元モデル画像に重ね表示させる拡大画像の表示枠の大きさとから前記拡大率を決定する。前記部品選択装置は、前記部品を含む前記拡大率決定部によって決定された拡大率で拡大した拡大画像を前記3次元モデル画像に重ね表示させる表示制御部をさらに有する。
【発明の効果】
【0017】
本願の開示する部品選択装置の一つの態様によれば、微小部品の選択操作を簡単に行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、実施例1に係る部品選択装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、実施例2に係るCAD装置の構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、重ね表示時におけるカーソル移動を説明するための図である。
【図4】図4は、部品選択ビューの自動表示を説明するための図である。
【図5A】図5Aは、部品選択ビューの位置合わせ表示を説明するための図である。
【図5B】図5Bは、部品選択ビューの位置合わせ表示を説明するための図である。
【図6】図6は、部品選択ビューの視点方向自動調節を説明するための図である。
【図7】図7は、実施例2に係る表示制御処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】図8は、実施例3に係る部品選択プログラムを実行するコンピュータの一例について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本願の開示する部品選択装置、CAD装置、部品選択方法及び部品選択プログラムの実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例は開示の技術を限定するものではない。
【実施例1】
【0020】
図1は、実施例1に係る部品選択装置の構成を示すブロック図である。図1に示す部品選択装置1は、カーソル位置取得部2と、拡大率決定部3と、表示制御部4とを有する。
【0021】
カーソル位置取得部2は、画面上に表示されるカーソル位置を取得する。拡大率決定部3は、カーソル位置が指す部品の拡大率を決定する。この拡大率決定部3は、複数の部品を含む3次元モデルが表示される3次元モデル画像上でカーソル位置取得部2によって取得されたカーソル位置が指す部品の大きさと、3次元モデル画像に重ね表示させる拡大画像の表示枠の大きさとから拡大率を決定する。また、表示制御部4は、部品を含む拡大率決定部3によって決定された拡大率で拡大した拡大画像を3次元モデル画像に重ね表示させる。
【0022】
このように、部品選択装置1は、3次元モデル画像に重ね表示させる拡大画像の表示枠に部品が埋まるように部品の拡大率を変化させる。つまり、部品選択装置1では、部品が大きいほど拡大率を小さくし、また、部品が小さいほど拡大率を大きくする。このため、部品選択装置1では、部品のスケールに適合した拡大率で拡大された拡大画像を3次元モデル画像に重ね表示できる。それゆえ、部品選択装置1では、拡大画像に含まれる微小部品がカーソル指定に耐え得る大きさまで操作者が手動で拡大率を変更する手間を不要化できる。したがって、本実施例に係る部品選択装置1によれば、微小部品の選択操作を簡単に行うことが可能になる。
【実施例2】
【0023】
[CAD装置の構成]
続いて、実施例2に係るCAD装置10について説明する。図2は、実施例2に係るCAD装置の構成を示すブロック図である。このCAD装置10は、部品や製品などの設計を支援するアプリケーションであるCADシステム15が搭載されたコンピュータであり、図2に示すように、入力部11と、表示部12と、記憶部13と、制御部14とを有する。
【0024】
このうち、入力部11は、各種情報、例えば後述のCADシステム15に対する指示入力を受け付ける入力デバイスであり、例えば、キーボードやマウスなどである。なお、後述の表示部12も、マウスと協働して、ポインティングデバイス機能を実現する。また、表示部12は、各種の情報、例えば3次元モデル画像や拡大画像を表示する表示デバイスであり、例えば、モニタ、ディスプレイやタッチパネルなどである。
【0025】
なお、以下では、マウスによってポインティングデバイス機能が実現される場合を説明するが、タッチパッドなどの他の入力デバイスによりポインティングデバイス機能が実現される場合にも開示の装置に適用できる。
【0026】
記憶部13は、例えば、フラッシュメモリ(flash memory)などの半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスクなどの記憶装置である。なお、記憶部13は、上記の種類の記憶装置に限定されるものではなく、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)であってもよい。
【0027】
この記憶部13は、制御部14で実行される各種プログラム、例えばOS(Operating System)やCAD(Computer Aided Design)システム15などを記憶する。さらに、記憶部13は、先のプログラムの実行に必要なデータ、例えば3次元モデル及びその部分部品の製図情報であるCADデータ13aを記憶する。このほか、記憶部13は、カーソル移動量算出用データ13bを併せて記憶する。
【0028】
カーソル移動量算出用データ13bは、3次元モデル画像及び拡大画像の2つの画像を重ね表示する場合におけるカーソルの移動量を算出するための関数を含むデータである。このカーソル移動量算出用データ13bは、後述するカーソル情報取得部15aによって使用される。なお、以下では、3次元モデル画像を1つだけで表示することを「単独表示」と呼び、また、3次元モデル画像及び拡大画像の2つの画像を重ね表示することを「重ね表示」と呼ぶ。また、以下では、3次元モデル画像を「3次元モデル表示ビュー」と呼び、カーソル位置が指す部品を含む拡大画像を「部品選択ビュー」と呼ぶ。
【0029】
ここで、上記の関数を例示する前に重ね表示用のカーソル操作量を算出する技術的意義を説明する。本実施例に係るCAD装置10は、3次元モデル表示ビューよりも大きいスケールで部品が表示される部品選択ビュー上で部品を選択できる重ね表示を行う。すなわち、CAD装置10では、3次元モデルビュー上でカーソル位置が指す部品の位置と、部品選択ビューの表示枠の中心位置とが重なるように3次元モデル表示ビュー及び部品選択ビューを重ね表示させる。このような重ね表示を行う場合には、操作者は、拡大画像を目視しながらマウスを操作することになる。
【0030】
このとき、単独表示時と重ね表示時との間でマウスの操作量に連動させて動かすカーソルの移動量を同じとしたのでは、操作者がマウスの操作量から予測するカーソルの移動量と、実際のカーソルの移動量との間にズレが生じてしまう。なぜなら、CAD装置10では、3次元モデル表示ビュー上でカーソルが指し示す部品の拡大画像を部品選択ビューとして重ね表示するが、操作者は、あくまでも部品選択ビューのスケールに合わせてマウスを動かすからである。このため、操作者は部品選択ビューに含まれる部品上でマウスを動かしているつもりでも、カーソルは3次元モデル表示ビュー上の部品からはみ出す。それゆえ、カーソルの照準が操作者の意図しない部品に合ったり、或いは3次元モデル上からも外れたりしてしまう。このようなマウス操作上の違和感が生じることを防止するために、後述の表示制御部15cによって単独表示時とは異なる重ね表示用のカーソル操作量を導出する関数を記憶部13にセットさせる。すなわち、カーソル情報取得部15aによってカーソル移動量の算出時にカーソル移動量算出用データ13bの有無がチェックされることを念頭に、重ね表示が実行される場合に表示制御部15cによって関数がセットされる。
【0031】
このような関数としては、操作者によって動かされたマウスの操作量が大きいほどカーソルの移動量が大きくなり、さらに、後述の拡大率決定部15bによって決定された拡大率が大きいほどカーソルの移動量が小さくなるように導出する式の規定が好ましい。一例としては、「重ね表示時のカーソル移動量=マウスの操作量÷カーソル位置が指す部品の拡大率」などが挙げられる。
【0032】
拡大率データ13cは、カーソル位置が指す部品の拡大率を含むデータである。この拡大率データ13cは、後述の拡大率決定部15bによって決定され、後述のカーソル情報取得部15aによって使用される。
【0033】
制御部14は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積回路、または、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)などの電子回路である。
【0034】
この制御部14は、各種の処理手順を規定したプログラムや制御データを格納するための内部メモリを有し、これらによって種々の処理を実行する。制御部14は、図2に示すように、3次元モデルの設計を支援するアプリケーションであるCADシステム15を搭載し、CADシステム15がカーソル情報取得部15aと、拡大率決定部15bと、表示制御部15cとを有する。
【0035】
カーソル情報取得部15aは、カーソルに係る情報を取得する処理部である。例えば、カーソル情報取得部15aは、操作者によってマウスを移動させる操作がなされた場合に、マウス操作量からカーソル移動量を算出する。
【0036】
このとき、前回のカーソル移動時に部品選択ビューが重ね表示されていれば、カーソル情報取得部15aは、記憶部13にカーソル移動量算出データ13bとして記憶された関数を読み出す。そして、カーソル情報取得部15aは、今回計測されたマウス操作量と、記憶部13に拡大率データ13cとして記憶された拡大率とを先に読み出した関数へ代入することにより、重ね表示用のカーソル移動量を算出する。例えば、マウス移動量が3cmであり、拡大率が2倍であった場合には、重ね表示用のカーソル移動量は1.5cm(=3÷2)と算出される。
【0037】
一方、前回のカーソル移動時に部品選択ビューが重ね表示されていなければ、カーソル情報取得部15aは、今回計測されたマウス操作量をそのまま単独表示用のカーソル移動量とする。例えば、マウス移動量が3cmであった場合には、単独表示用のカーソル移動量も3cmとなる。
【0038】
そして、カーソル情報取得部15aは、このようにして算出したカーソル移動量およびマウスの移動軌跡にしたがって3次元モデル表示ビュー上でカーソルを移動させる。図3は、重ね表示時におけるカーソル移動を説明するための図である。図3に示す符号30は、3次元モデル表示ビューを示す。図3に示す符号30aは、ノートパソコンの3次元モデルを示す。図3に示す符号Cはカーソルを示す。図3に示す符号31は、部品選択ビューを示す。図3に示す符号31a、符号32及び符号33は、ノートパソコンの3次元モデルに含まれる部分部品を示す。図3に示す符号m1及びn1は、カーソルCの起点を示す。図3に示す符号m2及びn2は、カーソルCの終点を示す。なお、図3に示す例では、説明の便宜上、3次元モデルビュー上でカーソル位置が指す部品の位置と、部品選択ビューの表示枠の中心位置とをずらせて図示している。また、部分部品32及び33については、ここでは説明に使用せず、後述の図5の説明に使用することとする。
【0039】
ここで、図3に示す部品選択ビュー31に含まれる部分部品31a上で操作者が起点m1から終点m2へカーソルCを動かす意図を持つ場合を想定する。仮に、単独表示時と重ね表示時との間でマウスの操作量に対するカーソルの移動量を同じとした場合には、操作者が起点m1から終点m2に至るマウス操作を行うと3次元モデル表示ビュー30上で起点n1から終点n2までカーソルCが移動する。このため、3次元モデル表示ビュー30上でカーソルCが部分部品31aからはみ出してしまう。一方、カーソル情報取得部15aでは、同じマウス操作量であっても重ね表示時の方が単独表示時よりもカーソル移動量を小さくする関数を用いる。このため、操作者が起点m1から終点m2に至るマウス操作を行っても3次元モデル表示ビュー30上でカーソルCが部分部品31aからはみ出す可能性を低減できる。したがって、操作者がマウス操作量から予測するカーソル移動量と、実際のカーソル移動量との間に生じるズレを低減でき、マウス操作上の違和感が生じることを防止できる。
【0040】
拡大率決定部15bは、3次元モデル表示ビュー上でカーソル情報取得部15aによって取得されたカーソル位置が指す部品の大きさと、部品選択ビューの表示枠の大きさとからカーソル位置が指す部品の拡大率を決定する処理部である。なお、以下では、3次元モデル表示ビュー上でカーソル位置が指す部品を「カーソル指示部品」と呼ぶ。
【0041】
これを説明すると、拡大率決定部15bは、3次元モデル表示ビュー上でカーソル位置が指す部品を包含する包含球を求め、その包含球が部品選択ビューの表示枠に最大限投影された時の拡大率をカーソル指示部品の拡大率と決定する。このとき、拡大率決定部15bは、部品選択ビューの表示枠の枠線と包含球の円周とが少なくとも1点で接した場合に最大限投影されたものと見做す。なお、ここでは、包含球が部品選択ビューの表示枠にぴったり投影される場合の拡大率を採用することとしたが、部品選択ビューの表示枠の枠線と包含球の円周との最短距離が所定の距離となるように余白を設けることとしてもよい。
【0042】
表示制御部15cは、表示部12の表示制御を行う処理部である。この表示制御部15cは、CAD装置10特有の表示機能として、(1)部品選択ビューの自動表示、(2)部品選択ビューの位置合わせ表示、(3)部品選択ビューの視点方向自動調節などの機能を有する。
【0043】
(1)部品選択ビューの自動表示
まず、表示制御部15cによる部品選択ビューの自動表示について説明する。表示制御部15cは、カーソル情報取得部15aによって移動されたカーソル位置が3次元モデル表示ビューの部品上に存在する場合には、3次元モデル表示ビューにカーソル指示部品を含む部品選択ビューを重ねて表示部12に表示させる。その一方で、表示制御部15cは、カーソル情報取得部15aによって移動されたカーソル位置が3次元モデル表示ビューの部品上に存在しない場合には、3次元モデル表示ビューだけを表示部12に表示させる。
【0044】
図4は、部品選択ビューの自動表示を説明するための図である。図4に示す符号40、符号41及び符号42は、いずれもノートパソコンの3次元モデル表示ビューを示す。図4に示す符号40a、符号41a及び符号42aは、いずれもノートパソコンの3次元モデルを示す。図4に示す符号Cは、カーソルを示す。図4に示す符号43は、部品選択ビューを示す図である。図4に示す符号43aは、3次元モデル40a、41a及び42aの部分部品を示す。なお、図4に示す例では、3次元モデル表示ビュー40、3次元モデル表示ビュー41、3次元モデル表示ビュー42の順に画面が遷移する場合を想定する。
【0045】
図4に示す3次元モデル表示ビュー40が表示されている段階では、カーソルCが3次元モデル表示ビュー40のノートパソコン40a上になく、カーソルCが空白部分に載置されている。ここから、3次元モデル表示ビュー41に示す位置までカーソルCが移動されると、3次元モデル表示ビュー42に示すノートパソコン42aの部分部品43a上にカーソルCが載置される。そして、表示制御部15cは、3次元モデル表示ビュー42に部品選択ビュー43を重ね表示させる。その上で、表示制御部15cは、3次元モデルビュー42上でカーソルCが載置された部分部品43aの位置と、部品選択ビュー43の表示枠の中心位置とが重なるように3次元モデル表示ビュー42及び部品選択ビュー43を重ね表示させる。このとき、部分部品43aを包含する包含球が部品選択ビュー43の表示枠に最大限投影された時の拡大率が部分部品43aの拡大率として拡大率決定部15bによって決定される。そして、表示制御部15cは、記憶部13に記憶されたCADデータ13aを用いて、部分部品43a及びその周辺の部分の画像を拡大率決定部15bによって決定された拡大率で拡大し、その拡大画像が部品選択ビュー43からはみ出る部分を切取り表示させる。
【0046】
このように、カーソル位置が3次元モデル表示ビューの部品上に存在する場合に3次元モデル表示ビュー及び部品選択ビューを重ね表示させることで、3次元モデル表示ビューの部品上にカーソルを載置するだけで部品選択ビューを自動表示できる。また、カーソル位置が3次元モデル表示ビューの部品上に存在しない場合に3次元モデル表示ビューを単独表示させることで、3次元モデル表示ビュー上の空白部分にカーソルを載置するだけで部品選択ビューを非表示とすることができる。
【0047】
(2)部品選択ビューの位置合わせ表示
続いて、表示制御部15cによる部品選択ビューの位置合わせ表示について説明する。表示制御部15cは、3次元モデルビュー上でカーソルが載置された部分部品の位置と、部品選択ビューの表示枠の中心位置とが重なるように3次元モデル表示ビュー及び部品選択ビューを重ね表示させる。
【0048】
図5A及び図5Bは、部品選択ビューの位置合わせ表示を説明するための図である。図5Aに示す符号50は、図3に示した部分部品32の部品選択ビューを示す。図5Aに示す符号50aは、部品選択ビュー50の中心位置を示す。図5Bに示す符号51は、図3に示した部分部品33の部品選択ビューを示す。図5Bに示す符号51aは、部品選択ビュー51の中心位置を示す。図5A及び図5Bに示す符号Cは、カーソルである。
【0049】
図3に示した3次元モデル表示ビュー30の部分部品32上にカーソルCが載置されると、表示制御部15cは、3次元モデル表示ビュー30に部品選択ビュー50を重ね表示させる。その上で、表示制御部15cは、部品選択ビュー50の表示枠の中心位置50aがカーソルCの載置箇所と一致するように部品選択ビュー50の表示位置を調節する。また、図3に示した3次元モデル表示ビュー30の部分部品33上にカーソルCが載置されると、表示制御部15cは、3次元モデル表示ビュー30に部品選択ビュー51を重ね表示させる。その上で、表示制御部15cは、部品選択ビュー51の表示枠の中心位置51aがカーソルCの載置箇所と一致するように部品選択ビュー51の表示位置を調節する。
【0050】
これによって、操作者は、3次元モデル表示ビューよりも大きいスケールでカーソル指示部品が表示される部品選択ビュー上で部品選択を実行でき、微小部品の選択操作をより簡単に行うことができる。
【0051】
また、部分部品32は、3次元モデル表示ビュー30上で表示されるサイズが部分部品33よりも大きいので、部分部品33よりも拡大率が抑制される。一方、部分部品33は、3次元モデル表示ビュー30上で表示されるサイズが部分部品32よりも小さいので、部分部品33よりも拡大率が強化される。
【0052】
(3)部品選択ビューの視点方向自動調節
次に、表示制御部15cによる部品選択ビューの視点方向自動調節について説明する。表示制御部15cは、3次元モデル表示ビュー上でカーソル情報取得部15aによって取得されたカーソル位置が指す部品の正面方向から所定の角度を傾けた方向に部品に対する視点方向を変更した上で部品選択ビューを表示させる。
【0053】
図6は、部品選択ビューの視点方向自動調節を説明するための図である。図6に示す符号60は、視点方向調節前の部品選択ビューを示す。図6に示す符号60aは、視点方向調節前の部分部品を指す。図6に示す符号61は、視点方向調節後の部品選択ビューを示す。図6に示す符号61aは、視点方向調節後の部分部品を示す。なお、図6に示す符号Cは、カーソルを示す。
【0054】
図6に示すように、表示制御部15cは、部品選択ビュー60に含まれる部分部品60aの正面方向から所定の角度αに傾けて部品選択ビュー61に示す部分部品61aのように視点方向を調節する。ここで、部分部品60の正面方向から右斜め45度に傾けた方向に変更した場合には、部分部品61の正面方向及び側面方向のいずれも俯瞰できるようになる。このため、画面の手前に表示される部分の表示体積が画面の奥側の表示体積よりも大きく、部品が窪んでいる場合などでも、画面の奥側まで部分部品を俯瞰できる。
【0055】
なお、ここでは、視点方向を右斜め方向に傾ける場合を説明したが、視点方向を左斜め方向に傾ける調節を行ってもよい。また、視点方向を正面方向から傾ける角度αは、必ずしも45度である必要はない。例えば、正面方向から部分部品を閲覧したい場合には、角度αをゼロに設定できる。また、側面方向から部分部品を閲覧したい場合には、角度αを90度に設定できる。
【0056】
さらに、表示制御部15cでは、3次元モデル表示ビューとは独立して部品選択ビューの視点方向を変更する。ここで、3次元モデル表示ビューの視点方向を変更したくないという要望は操作者の間で根強い。このため、3次元モデル表示ビューの視点方向を変更することなく、付属画像である部品選択ビューの視点方向を変更できるのは微小部品の操作利便性にかかわらず、閲覧利便性の面からも効果が大きい。
【0057】
[処理の流れ]
図7は、実施例2に係る表示制御処理について説明する。図7は、実施例2に係る表示制御処理の手順を示すフローチャートである。この表示制御処理は、操作者によってマウスを移動させる操作がなされた場合に起動する処理である。
【0058】
図7に示すように、カーソル情報取得部15aは、マウス操作量からカーソル移動量を算出する(ステップS101)。これを説明すると、カーソル情報取得部15aは、カーソル移動量の算出時にチェックする記憶部13の参照領域にカーソル移動量算出用データ13aがセットされている場合には、重ね表示用のカーソル移動量を算出する。なお、カーソル移動量算出用データ13aがセットされている場合には、カーソル情報取得部15aは、単独表示用のカーソル移動量を算出する。
【0059】
続いて、カーソル情報取得部15aは、このようにして算出したカーソル移動量およびマウスの移動軌跡にしたがって3次元モデル表示ビュー上でカーソルを移動させる(ステップS102)。そして、移動後のカーソル位置が3次元モデル表示ビューの部品上に存在する場合(ステップS103肯定)には、表示制御部15cは、部品選択ビューが表示中であるか否かを判定する(ステップS104)。
【0060】
このとき、部品選択ビューが表示中でない場合(ステップS104否定)には、表示制御部15cは、3次元モデル表示ビューにカーソル指示部品を含む部品選択ビューを重ねて表示部12に表示させる(ステップS105)。なお、部品選択ビューが表示中でない場合(ステップS104肯定)には、そのままステップS106へ移行する。
【0061】
その後、表示制御部15cは、部品選択ビューの表示枠の中心位置がカーソルの載置箇所と一致するように部品選択ビューの表示位置を調節する(ステップS106)。そして、表示制御部15cは、カーソルが指し示す部品が前回の部品から変化したか否かを判定する(ステップS107)。なお、前回にカーソルが部品を指していなくとも、今回新たに部品選択ビューが表示された場合には、カーソルが指し示す部品が前回の部品から変化したものと判定される。
【0062】
ここで、前回の部品から変化した場合(ステップS107肯定)には、拡大率決定部15cは、カーソル指示部品の大きさと、部品選択ビューの表示枠の大きさとからカーソル位置が指す部品の拡大率を決定する(ステップS108)。そして、表示制御部15cは、カーソル指示部品及びその周辺の部分の画像を拡大率決定部15bによって決定された拡大率で拡大し、その拡大画像が部品選択ビュー43からはみ出る部分を切取り表示させる(ステップS109)。
【0063】
その後、表示制御部15cは、カーソル情報取得部15aがカーソル移動量の算出時にチェックする記憶部13の参照領域にカーソル移動量算出用データ13aをセットする(ステップS110)。そして、表示制御部15cは、カーソル指示部品の正面方向から所定の角度を傾けた方向に部品選択ビューの視点方向を調節し(ステップS111)、処理を終了する。
【0064】
一方、移動後のカーソル位置が3次元モデル表示ビューの部品上に存在しない場合(ステップS103否定)には、表示制御部15cは、部品選択ビューが表示中であるか否かを判定する(ステップS112)。なお、部品選択ビューが表示中ではない場合(ステップS112否定)には、そのまま処理を終了する。
【0065】
このとき、部品選択ビューが表示中である場合(ステップS112肯定)には、表示制御部15cは、3次元モデル表示ビューに重ね表示していた部品選択ビューを閉じる(ステップS113)。そして、表示制御部15cは、カーソル情報取得部15aがカーソル移動量の算出時にチェックする記憶部13の参照領域からカーソル移動量算出用データ13aをリセットし(ステップS114)、処理を終了する。
【0066】
[実施例2の効果]
上述してきたように、本実施例に係るCAD装置10によれば、3次元モデル表示ビューに重ね表示させる部品選択ビューの表示枠に部品が埋まるように部品の拡大率を変化させる。つまり、CAD装置10では、部品が大きいほど拡大率を小さくし、また、部品が小さいほど拡大率を大きくする。このため、CAD装置10では、部品のスケールに適合した拡大率で拡大された部品選択ビューを3次元モデル表示ビューに重ね表示できる。それゆえ、CAD装置10では、部品選択ビューに含まれる微小部品がカーソル指定に耐え得る大きさまで操作者が手動で拡大率を変更する手間を不要化できる。したがって、本実施例に係るCAD装置10によれば、微小部品の選択操作を簡単に行うことが可能である。
【0067】
また、本実施例に係るCAD装置10では、3次元モデル表示ビュー上でカーソル指示部品の正面方向から所定の角度を傾けた方向に部品に対する視点方向を変更した上で部品選択ビューを表示させる。このため、操作者は、部品の正面方向及び側面方向のいずれも俯瞰できるようになる。したがって、本実施例に係るCAD装置10によれば、画面の手前に表示される部分の表示体積が画面の奥側の部分の表示体積よりも大きく、部品が窪んでいる場合などでも、画面の奥側まで部品を俯瞰することが可能である。
【0068】
さらに、本実施例に係るCAD装置10では、3次元モデル表示ビュー上でカーソル位置が指す部品の位置と、部品選択ビューの表示枠の中心位置とが重なるように3次元モデル表示ビュー及び部品選択ビューを重ね表示させる。したがって、本実施例に係るCAD装置10によれば、操作者は、3次元モデル表示ビューよりも大きいスケールでカーソル指示部品が表示される部品選択ビュー上で部品選択を実行でき、微小部品の選択操作をより簡単に行うことが可能である。
【0069】
また、本実施例に係るCAD装置10では、カーソル位置が3次元モデル表示ビューの部品上に存在する場合には、3次元モデル表示ビューにカーソル指示部品を含む部品選択ビューを重ねて表示部12に表示させる。また、本実施例に係るCAD装置10では、カーソル位置が3次元モデル表示ビューの部品上に存在しない場合には、3次元モデル表示ビューだけを表示部12に表示させる。したがって、本実施例に係るCAD装置10によれば、3次元モデル表示ビューの部品上にカーソルを載置するだけで部品選択ビューを自動表示したり、3次元モデル表示ビュー上の空白部分にカーソルを載置するだけで部品選択ビューを非表示とすることができる。
【0070】
さらに、本実施例に係るCAD装置10では、部品選択ビューが3次元モデル表示ビューに重ね表示されている場合には、部品選択ビューが重ね表示されていない場合に比較してカーソルの移動量を小さくする。したがって、本実施例に係るCAD装置10によれば、操作者がマウス操作量から予測するカーソル移動量と、実際のカーソル移動量との間に生じるズレを低減でき、マウス操作上の違和感が生じることを防止できる。
【実施例3】
【0071】
さて、これまで開示の装置に関する実施例について説明したが、本発明は上述した実施例以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。そこで、以下では、本発明に含まれる他の実施例を説明する。
【0072】
[応用例]
例えば、上記の実施例2では、図3〜図6で部品選択用ビューの表示枠の形状を円とした場合を例示したが、開示の装置はこれに限定されない。例えば、開示の装置は、楕円、多角形などの任意の図形を部品選択用ビューの表示枠として使用できる。さらに、開示の装置は、部品選択ビューの表示枠の大きさも任意に設定できる。また、開示の装置では、1種類の表示枠を固定して使用するだけでなく、同種類の部品を部品選択ビューに表示させる場合には同じ形状の表示枠を使用し、異種類の部品を部品選択ビューに表示させる場合には異なる形状の表示枠を使用することもできる。
【0073】
また、上記の実施例2では、1つのカーソル指示部品が部品選択ビューの表示枠にぴったり埋めるように拡大率を決定する場合を説明したが、開示の装置はこれに限定されない。例えば、開示の装置では、所定のサイズよりも小さい部品がカーソル指示部品となった場合には、その部品を含む組み立て部品、いわゆるアセンブリをカーソル指示部品として拡大率を決定するようにしてもよい。さらに、開示の装置では、上記のアセンブリをカーソル指示部品とするアセンブリモードと、1つの部品をカーソル指示部品とする通常モードとを操作者に選択させるようにしてもよい。
【0074】
[適用例]
また、図示した各装置の各構成要素は、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。例えば、カーソル情報取得部15a、拡大率決定部15b、又は表示制御部15cの全部または一部の機能をCAD装置10の外部装置としてネットワーク経由で接続するようにしてもよい。そして、CAD装置10のCADシステム15が外部装置を呼び出すことにより、部品選択補助機能を発揮することとしてもよい。また、カーソル情報取得部15a、拡大率決定部15b、又は表示制御部15cの一部を別の装置がそれぞれ有し、ネットワーク接続されて協働することで、上記のCAD装置10の機能を実現するようにしてもよい。
【0075】
[部品選択プログラム]
また、上記の実施例で説明した各種の処理は、予め用意されたプログラムをパーソナルコンピュータやワークステーションなどのコンピュータで実行することによって実現することができる。そこで、以下では、図8を用いて、上記の実施例と同様の機能を有する部品選択プログラムを実行するコンピュータの一例について説明する。なお、図8は、実施例3に係る部品選択プログラムを実行するコンピュータの一例について説明するための図である。
【0076】
図8に示すように、実施例3におけるコンピュータ100は、操作部110aと、マイク110bと、スピーカ110cと、ディスプレイ120と、通信部130とを有する。さらに、このコンピュータ100は、CPU150と、ROM160と、HDD(Hard Disk Drive)170と、RAM(Random Access Memory)180と有する。これら110〜180の各部はバス140を介して接続される。
【0077】
ROM160には、上記の実施例2で示したカーソル情報取得部15aと、拡大率決定部15bと、表示制御部15cとを含むCADシステム15と同様の機能を発揮する制御プログラムが予め記憶される。つまり、ROM160には、図8に示すように、カーソル情報取得プログラム160aと、拡大率決定プログラム160bと、表示制御プログラム160cとを含むCADプログラム161が記憶される。なお、これらのプログラム160a〜160cについては、図2に示したCAD装置10の各構成要素と同様、適宜統合又は分離しても良い。
【0078】
そして、CPU150が、これらのプログラム160a〜160cを含むCADプログラム161をROM160から読み出して実行する。これによって、CPU150は、図8に示すように、各プログラム160a〜160cを含むCADプログラム161については、カーソル情報取得プロセス150a及び拡大率決定プロセス150bを含むCADシステム151として機能するようになる。このCADシステム151は、表示制御プロセス150cを含む。なお、各プロセス150a〜150cは、図2に示した、カーソル情報取得部15aと、拡大率決定部15bと、表示制御部15cとにそれぞれ対応する。
【0079】
そして、HDD170には、CADデータ170aと、カーソル移動量算出用データ170bとが設けられる。なお、これらCADデータ170a及びカーソル移動量算出用データ170bは、図2に示したCADデータ13a及びカーソル移動量算出用データ13bに対応する。
【0080】
そして、CPU150は、CADデータ170a及びカーソル移動量算出用データ170bを読み出してRAM180に格納する。続いて、CPU150は、CADデータ170aを用いて、部品選択補助機能を実現する。さらに、CPU150は、RAM180に格納されたCADデータ180aを用いて、拡大率データ180cを生成し、生成した拡大率データ180cをRAM180に格納する。その上で、CPU150は、カーソル移動量算出用データ180bと、拡大率データ180cとを用いて、カーソル移動量調節機能を実現する。
【0081】
以上の実施例を含む実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0082】
(付記1)画面上に表示されるカーソル位置を取得するカーソル位置取得部と、
複数の部品を含む3次元モデルが表示される3次元モデル画像上で前記カーソル位置取得部によって取得されたカーソル位置が指す部品の大きさと、該3次元モデル画像に重ね表示させる拡大画像の表示枠の大きさとに基づき、前記カーソル位置が指す部品の拡大率を決定する拡大率決定部と、
前記部品を含む前記拡大率決定部によって決定された拡大率で拡大した拡大画像を前記3次元モデル画像に重ね表示させる表示制御部と
を有することを特徴とする部品選択装置。
【0083】
(付記2)前記表示制御部は、前記3次元モデル画像上で前記カーソル位置取得部によって取得されたカーソル位置が指す部品の正面方向から所定の角度を傾けた方向に前記部品に対する視点方向を変更した上で前記拡大画像を表示させることを特徴とする付記1に記載の部品選択装置。
【0084】
(付記3)前記表示制御部は、前記3次元モデル画像上で前記カーソル位置取得部によって取得されたカーソル位置が指す部品の位置と、前記拡大画像の表示枠の中心位置とが重なるように前記3次元モデル画像及び前記拡大画像を重ね表示させることを特徴とする付記1または2に記載の部品選択装置。
【0085】
(付記4)前記表示制御部は、前記カーソル位置取得部によって取得されたカーソル位置が前記3次元モデル画像上の部品を指す場合には、前記拡大画像を前記3次元モデル画像に重ね表示させ、前記3次元モデル画像上の部品を指さない場合には、前記3次元モデル画像を単独表示させることを特徴とする付記1、2または3に記載の部品選択装置。
【0086】
(付記5)前記表示制御部によって前記拡大画像が前記3次元モデル画像に重ね表示されている場合には、前記拡大画像が重ね表示されていない場合に比較してカーソルの移動量を小さくするカーソル移動量制御部をさらに有することを特徴とする付記4に記載の部品選択装置。
【0087】
(付記6)画面上に表示されるカーソル位置を取得するカーソル位置取得部と、
複数の部品を含む3次元モデルが表示される3次元モデル画像上で前記カーソル位置取得部によって取得されたカーソル位置が指す部品の大きさと、該3次元モデル画像に重ね表示させる拡大画像の表示枠の大きさとに基づき、前記カーソル位置が指す部品の拡大率を決定する拡大率決定部と、
前記部品を含む前記拡大率決定部によって決定された拡大率で拡大した拡大画像を前記3次元モデル画像に重ね表示させる表示制御部と
を有することを特徴とするCAD装置。
【0088】
(付記7)画面上に表示されるカーソル位置を取得するカーソル位置取得工程と、
複数の部品を含む3次元モデルが表示される3次元モデル画像上で前記カーソル位置取得工程によって取得されたカーソル位置が指す部品の大きさと、該3次元モデル画像に重ね表示させる拡大画像の表示枠の大きさとに基づき、前記カーソル位置が指す部品の拡大率を決定する拡大率決定工程と、
前記部品を含む前記拡大率決定工程によって決定された拡大率で拡大した拡大画像を前記3次元モデル画像に重ね表示させる表示制御工程と
を含んだことを特徴とする部品選択方法。
【0089】
(付記8)画面上に表示されるカーソル位置を取得するカーソル位置取得手順と、
複数の部品を含む3次元モデルが表示される3次元モデル画像上で前記カーソル位置取得手順によって取得されたカーソル位置が指す部品の大きさと、該3次元モデル画像に重ね表示させる拡大画像の表示枠の大きさとに基づき、前記カーソル位置が指す部品の拡大率を決定する拡大率決定手順と、
前記部品を含む前記拡大率決定手順によって決定された拡大率で拡大した拡大画像を前記3次元モデル画像に重ね表示させる表示制御手順と
をコンピュータに実行させることを特徴とする部品選択プログラム。
【符号の説明】
【0090】
1 部品選択装置
2 カーソル位置取得部
3 拡大率決定部
4 表示制御部
10 CAD装置
11 入力部
12 表示部
13 記憶部
13a CADデータ
13b カーソル移動量算出用データ
13c 拡大率データ
14 制御部
15 CADシステム
15a カーソル情報取得部
15b 拡大率決定部
15c 表示制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品選択装置、CAD装置、部品選択方法及び部品選択プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハードウェア(hardware)の高性能化に伴って設計支援用アプリケーション(Application)における3次元モデル(Model)の再現能力が高まっている。このような設計支援用アプリケーションの一例としては、3次元CAD(Computer Aided Design)やデジタルモックアップ(DMU:Digital Mock−Up)などが挙げられる。なお、以下では、設計支援用アプリケーションを設計支援アプリと略記する。
【0003】
かかる設計支援アプリでは、3次元モデルの一部に含まれる部分部品が表示されるとともにその形状までもが実物と同等に表示される。そして、部分部品には、3次元モデルに比べてスケール(scale)が著しく小さい微小部品も含まれる。このことから、設計支援アプリにより再現される部分部品の数は多くなり、また、設計支援アプリにより表示される部分部品の密度も高くなる。
【0004】
このため、設計支援アプリによって生成される表示画像上で操作者が特定の微小部品を選択操作する場合にその選択操作に係る操作性が悪化するケース(case)がある。このような表示画像の一例としては、3次元モデルの閲覧または編集を行う作業画像が表示される。例えば、微小部品を選択する場合には、微小部品のスケールが3次元モデルのスケールとかけ離れているので、作業画像上で微小部品が占める割合も微細になる。一例として挙げれば、微小部品が数ドットで表示される場合がある。それゆえ、操作者が作業画像上でポインティングデバイス(pointing device)のカーソル(cursor)の照準を微小部品に合わせるのには困難な状況となる。このような状況下では、操作者は、目的の微小部品をカーソルで指定するのを成功するまでカーソルの照準合わせを行わねばならず、トライアンドエラー(try and error)が発生してしまう。なお、以下では、作業画像上で部分部品を選択する操作のことを「部品選択操作」という。
【0005】
このようなトライアンドエラーが発生するとはいえ、部品選択操作は、特定の部分部品やその形状の一部の属性情報を閲覧する操作や部分部品の属性を変更する操作につながる基本操作であり、使用頻度の高い重要な操作である。なお、かかる部品選択操作には、部分部品そのものを指定する操作だけでなく、部分部品における形状の一部を指定する操作なども含まれる。このように形状の一部を指定する操作の一例としては、ネジなどの部分部品の径を特定する2点を指定する操作などが挙げられる。
【0006】
このように微細部品の選択操作が困難な状況下でも選択対象とする微小部品を特定するための技術として、部品検索機能(従来技術1)、ズーム機能(従来技術2)、拡大画像の重ね表示機能(従来技術3)などが使用される。
【0007】
このうち、従来技術1は、操作者が選択しようとする部分部品の名前などの検索キーワードを受け付け、3次元モデルが含む部分部品の一覧が登録された部品リストの中から検索キーワードに該当する部分部品を検索するものである。これによって、操作者は、検索結果の中から目的の部分部品を選択できる。
【0008】
また、従来技術2は、作業画像に含まれる3次元モデルの拡大を行うものである。これによって、作業者は、3次元モデルとともにその一部として拡大された微小部品またはその形状の一部をポインティングデバイスのカーソルで指定できる。
【0009】
また、従来技術3は、カーソル位置を示すためのカーソル位置マークを常に拡大モニタ表示領域の中心に表示するとともに、カーソルの移動に追従してカーソルを中心とする所定範囲の表示画像を拡大した拡大画像を拡大モニタ表示領域に自動表示するものである。これによって、作業者は、微小部品の周辺にカーソル位置を合わせることにより微小部品の拡大画像を別画像で表示させることができ、拡大された微小部品またはその形状の一部をポインティングデバイスのカーソルで指定できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−357076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記の従来技術1〜3には、依然として、微小部品の選択操作が煩雑であるという問題が残る。
【0012】
例えば、従来技術1では、検索キーワードの入力や検索結果からの部分部品の選択などの余分な操作手順が生じるとともに、操作手順間で異なる種類の入力デバイスを使用する必要が生じる。結果として、従来技術1では、作業画像上で微小部品をカーソル指定するのを避けることにより、微小部品の選択に至るまでの操作過程が迂遠になってしまう。さらに、従来技術1では、検索キーワードとする部分部品が3次元モデルの中に複数存在する場合に、検索結果として得られた部分部品それぞれが3次元モデル上でどの位置に配置されているかを確かめてから目的の部分部品を選択する必要がある。
【0013】
また、従来技術2では、作業画像上で微小部品をカーソル指定する前にズーム機能を使用する必要があり、微小部品の選択操作が煩雑となってしまう。例えば、ズーム機能を使用する場合には、作業画像の中心位置に目的の微小部品を合わせる操作を行った上で拡大コマンドに対応する操作を微小部品がカーソル指定に耐え得る大きさに拡大されるまで繰り返し行う必要がある。
【0014】
さらに、従来技術3では、微小部品の周辺にカーソル位置を合わせると微小部品の拡大画像が重ね表示されるものの、その拡大画像は一律の拡大率で拡大されるに過ぎない。このため、従来技術3では、拡大画像に含まれる微小部品がカーソル指定に耐え得る大きさまで拡大されていない場合に操作者が拡大率を手動で変更する手間が生じるので、依然として、微小部品の選択操作に煩雑さが残る。
【0015】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、微小部品の選択操作を簡単に行うことができる部品選択装置、CAD装置、部品選択方法及び部品選択プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本願の開示する部品選択装置は、画面上に表示されるカーソル位置を取得するカーソル位置取得部を有する。前記部品選択装置は、前記カーソル位置が指す部品の拡大率を決定する拡大率決定部をさらに有する。前記拡大率決定部は、複数の部品を含む3次元モデルが表示される3次元モデル画像上で前記カーソル位置取得部によって取得されたカーソル位置が指す部品の大きさと、該3次元モデル画像に重ね表示させる拡大画像の表示枠の大きさとから前記拡大率を決定する。前記部品選択装置は、前記部品を含む前記拡大率決定部によって決定された拡大率で拡大した拡大画像を前記3次元モデル画像に重ね表示させる表示制御部をさらに有する。
【発明の効果】
【0017】
本願の開示する部品選択装置の一つの態様によれば、微小部品の選択操作を簡単に行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、実施例1に係る部品選択装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、実施例2に係るCAD装置の構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、重ね表示時におけるカーソル移動を説明するための図である。
【図4】図4は、部品選択ビューの自動表示を説明するための図である。
【図5A】図5Aは、部品選択ビューの位置合わせ表示を説明するための図である。
【図5B】図5Bは、部品選択ビューの位置合わせ表示を説明するための図である。
【図6】図6は、部品選択ビューの視点方向自動調節を説明するための図である。
【図7】図7は、実施例2に係る表示制御処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】図8は、実施例3に係る部品選択プログラムを実行するコンピュータの一例について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本願の開示する部品選択装置、CAD装置、部品選択方法及び部品選択プログラムの実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例は開示の技術を限定するものではない。
【実施例1】
【0020】
図1は、実施例1に係る部品選択装置の構成を示すブロック図である。図1に示す部品選択装置1は、カーソル位置取得部2と、拡大率決定部3と、表示制御部4とを有する。
【0021】
カーソル位置取得部2は、画面上に表示されるカーソル位置を取得する。拡大率決定部3は、カーソル位置が指す部品の拡大率を決定する。この拡大率決定部3は、複数の部品を含む3次元モデルが表示される3次元モデル画像上でカーソル位置取得部2によって取得されたカーソル位置が指す部品の大きさと、3次元モデル画像に重ね表示させる拡大画像の表示枠の大きさとから拡大率を決定する。また、表示制御部4は、部品を含む拡大率決定部3によって決定された拡大率で拡大した拡大画像を3次元モデル画像に重ね表示させる。
【0022】
このように、部品選択装置1は、3次元モデル画像に重ね表示させる拡大画像の表示枠に部品が埋まるように部品の拡大率を変化させる。つまり、部品選択装置1では、部品が大きいほど拡大率を小さくし、また、部品が小さいほど拡大率を大きくする。このため、部品選択装置1では、部品のスケールに適合した拡大率で拡大された拡大画像を3次元モデル画像に重ね表示できる。それゆえ、部品選択装置1では、拡大画像に含まれる微小部品がカーソル指定に耐え得る大きさまで操作者が手動で拡大率を変更する手間を不要化できる。したがって、本実施例に係る部品選択装置1によれば、微小部品の選択操作を簡単に行うことが可能になる。
【実施例2】
【0023】
[CAD装置の構成]
続いて、実施例2に係るCAD装置10について説明する。図2は、実施例2に係るCAD装置の構成を示すブロック図である。このCAD装置10は、部品や製品などの設計を支援するアプリケーションであるCADシステム15が搭載されたコンピュータであり、図2に示すように、入力部11と、表示部12と、記憶部13と、制御部14とを有する。
【0024】
このうち、入力部11は、各種情報、例えば後述のCADシステム15に対する指示入力を受け付ける入力デバイスであり、例えば、キーボードやマウスなどである。なお、後述の表示部12も、マウスと協働して、ポインティングデバイス機能を実現する。また、表示部12は、各種の情報、例えば3次元モデル画像や拡大画像を表示する表示デバイスであり、例えば、モニタ、ディスプレイやタッチパネルなどである。
【0025】
なお、以下では、マウスによってポインティングデバイス機能が実現される場合を説明するが、タッチパッドなどの他の入力デバイスによりポインティングデバイス機能が実現される場合にも開示の装置に適用できる。
【0026】
記憶部13は、例えば、フラッシュメモリ(flash memory)などの半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスクなどの記憶装置である。なお、記憶部13は、上記の種類の記憶装置に限定されるものではなく、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)であってもよい。
【0027】
この記憶部13は、制御部14で実行される各種プログラム、例えばOS(Operating System)やCAD(Computer Aided Design)システム15などを記憶する。さらに、記憶部13は、先のプログラムの実行に必要なデータ、例えば3次元モデル及びその部分部品の製図情報であるCADデータ13aを記憶する。このほか、記憶部13は、カーソル移動量算出用データ13bを併せて記憶する。
【0028】
カーソル移動量算出用データ13bは、3次元モデル画像及び拡大画像の2つの画像を重ね表示する場合におけるカーソルの移動量を算出するための関数を含むデータである。このカーソル移動量算出用データ13bは、後述するカーソル情報取得部15aによって使用される。なお、以下では、3次元モデル画像を1つだけで表示することを「単独表示」と呼び、また、3次元モデル画像及び拡大画像の2つの画像を重ね表示することを「重ね表示」と呼ぶ。また、以下では、3次元モデル画像を「3次元モデル表示ビュー」と呼び、カーソル位置が指す部品を含む拡大画像を「部品選択ビュー」と呼ぶ。
【0029】
ここで、上記の関数を例示する前に重ね表示用のカーソル操作量を算出する技術的意義を説明する。本実施例に係るCAD装置10は、3次元モデル表示ビューよりも大きいスケールで部品が表示される部品選択ビュー上で部品を選択できる重ね表示を行う。すなわち、CAD装置10では、3次元モデルビュー上でカーソル位置が指す部品の位置と、部品選択ビューの表示枠の中心位置とが重なるように3次元モデル表示ビュー及び部品選択ビューを重ね表示させる。このような重ね表示を行う場合には、操作者は、拡大画像を目視しながらマウスを操作することになる。
【0030】
このとき、単独表示時と重ね表示時との間でマウスの操作量に連動させて動かすカーソルの移動量を同じとしたのでは、操作者がマウスの操作量から予測するカーソルの移動量と、実際のカーソルの移動量との間にズレが生じてしまう。なぜなら、CAD装置10では、3次元モデル表示ビュー上でカーソルが指し示す部品の拡大画像を部品選択ビューとして重ね表示するが、操作者は、あくまでも部品選択ビューのスケールに合わせてマウスを動かすからである。このため、操作者は部品選択ビューに含まれる部品上でマウスを動かしているつもりでも、カーソルは3次元モデル表示ビュー上の部品からはみ出す。それゆえ、カーソルの照準が操作者の意図しない部品に合ったり、或いは3次元モデル上からも外れたりしてしまう。このようなマウス操作上の違和感が生じることを防止するために、後述の表示制御部15cによって単独表示時とは異なる重ね表示用のカーソル操作量を導出する関数を記憶部13にセットさせる。すなわち、カーソル情報取得部15aによってカーソル移動量の算出時にカーソル移動量算出用データ13bの有無がチェックされることを念頭に、重ね表示が実行される場合に表示制御部15cによって関数がセットされる。
【0031】
このような関数としては、操作者によって動かされたマウスの操作量が大きいほどカーソルの移動量が大きくなり、さらに、後述の拡大率決定部15bによって決定された拡大率が大きいほどカーソルの移動量が小さくなるように導出する式の規定が好ましい。一例としては、「重ね表示時のカーソル移動量=マウスの操作量÷カーソル位置が指す部品の拡大率」などが挙げられる。
【0032】
拡大率データ13cは、カーソル位置が指す部品の拡大率を含むデータである。この拡大率データ13cは、後述の拡大率決定部15bによって決定され、後述のカーソル情報取得部15aによって使用される。
【0033】
制御部14は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積回路、または、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)などの電子回路である。
【0034】
この制御部14は、各種の処理手順を規定したプログラムや制御データを格納するための内部メモリを有し、これらによって種々の処理を実行する。制御部14は、図2に示すように、3次元モデルの設計を支援するアプリケーションであるCADシステム15を搭載し、CADシステム15がカーソル情報取得部15aと、拡大率決定部15bと、表示制御部15cとを有する。
【0035】
カーソル情報取得部15aは、カーソルに係る情報を取得する処理部である。例えば、カーソル情報取得部15aは、操作者によってマウスを移動させる操作がなされた場合に、マウス操作量からカーソル移動量を算出する。
【0036】
このとき、前回のカーソル移動時に部品選択ビューが重ね表示されていれば、カーソル情報取得部15aは、記憶部13にカーソル移動量算出データ13bとして記憶された関数を読み出す。そして、カーソル情報取得部15aは、今回計測されたマウス操作量と、記憶部13に拡大率データ13cとして記憶された拡大率とを先に読み出した関数へ代入することにより、重ね表示用のカーソル移動量を算出する。例えば、マウス移動量が3cmであり、拡大率が2倍であった場合には、重ね表示用のカーソル移動量は1.5cm(=3÷2)と算出される。
【0037】
一方、前回のカーソル移動時に部品選択ビューが重ね表示されていなければ、カーソル情報取得部15aは、今回計測されたマウス操作量をそのまま単独表示用のカーソル移動量とする。例えば、マウス移動量が3cmであった場合には、単独表示用のカーソル移動量も3cmとなる。
【0038】
そして、カーソル情報取得部15aは、このようにして算出したカーソル移動量およびマウスの移動軌跡にしたがって3次元モデル表示ビュー上でカーソルを移動させる。図3は、重ね表示時におけるカーソル移動を説明するための図である。図3に示す符号30は、3次元モデル表示ビューを示す。図3に示す符号30aは、ノートパソコンの3次元モデルを示す。図3に示す符号Cはカーソルを示す。図3に示す符号31は、部品選択ビューを示す。図3に示す符号31a、符号32及び符号33は、ノートパソコンの3次元モデルに含まれる部分部品を示す。図3に示す符号m1及びn1は、カーソルCの起点を示す。図3に示す符号m2及びn2は、カーソルCの終点を示す。なお、図3に示す例では、説明の便宜上、3次元モデルビュー上でカーソル位置が指す部品の位置と、部品選択ビューの表示枠の中心位置とをずらせて図示している。また、部分部品32及び33については、ここでは説明に使用せず、後述の図5の説明に使用することとする。
【0039】
ここで、図3に示す部品選択ビュー31に含まれる部分部品31a上で操作者が起点m1から終点m2へカーソルCを動かす意図を持つ場合を想定する。仮に、単独表示時と重ね表示時との間でマウスの操作量に対するカーソルの移動量を同じとした場合には、操作者が起点m1から終点m2に至るマウス操作を行うと3次元モデル表示ビュー30上で起点n1から終点n2までカーソルCが移動する。このため、3次元モデル表示ビュー30上でカーソルCが部分部品31aからはみ出してしまう。一方、カーソル情報取得部15aでは、同じマウス操作量であっても重ね表示時の方が単独表示時よりもカーソル移動量を小さくする関数を用いる。このため、操作者が起点m1から終点m2に至るマウス操作を行っても3次元モデル表示ビュー30上でカーソルCが部分部品31aからはみ出す可能性を低減できる。したがって、操作者がマウス操作量から予測するカーソル移動量と、実際のカーソル移動量との間に生じるズレを低減でき、マウス操作上の違和感が生じることを防止できる。
【0040】
拡大率決定部15bは、3次元モデル表示ビュー上でカーソル情報取得部15aによって取得されたカーソル位置が指す部品の大きさと、部品選択ビューの表示枠の大きさとからカーソル位置が指す部品の拡大率を決定する処理部である。なお、以下では、3次元モデル表示ビュー上でカーソル位置が指す部品を「カーソル指示部品」と呼ぶ。
【0041】
これを説明すると、拡大率決定部15bは、3次元モデル表示ビュー上でカーソル位置が指す部品を包含する包含球を求め、その包含球が部品選択ビューの表示枠に最大限投影された時の拡大率をカーソル指示部品の拡大率と決定する。このとき、拡大率決定部15bは、部品選択ビューの表示枠の枠線と包含球の円周とが少なくとも1点で接した場合に最大限投影されたものと見做す。なお、ここでは、包含球が部品選択ビューの表示枠にぴったり投影される場合の拡大率を採用することとしたが、部品選択ビューの表示枠の枠線と包含球の円周との最短距離が所定の距離となるように余白を設けることとしてもよい。
【0042】
表示制御部15cは、表示部12の表示制御を行う処理部である。この表示制御部15cは、CAD装置10特有の表示機能として、(1)部品選択ビューの自動表示、(2)部品選択ビューの位置合わせ表示、(3)部品選択ビューの視点方向自動調節などの機能を有する。
【0043】
(1)部品選択ビューの自動表示
まず、表示制御部15cによる部品選択ビューの自動表示について説明する。表示制御部15cは、カーソル情報取得部15aによって移動されたカーソル位置が3次元モデル表示ビューの部品上に存在する場合には、3次元モデル表示ビューにカーソル指示部品を含む部品選択ビューを重ねて表示部12に表示させる。その一方で、表示制御部15cは、カーソル情報取得部15aによって移動されたカーソル位置が3次元モデル表示ビューの部品上に存在しない場合には、3次元モデル表示ビューだけを表示部12に表示させる。
【0044】
図4は、部品選択ビューの自動表示を説明するための図である。図4に示す符号40、符号41及び符号42は、いずれもノートパソコンの3次元モデル表示ビューを示す。図4に示す符号40a、符号41a及び符号42aは、いずれもノートパソコンの3次元モデルを示す。図4に示す符号Cは、カーソルを示す。図4に示す符号43は、部品選択ビューを示す図である。図4に示す符号43aは、3次元モデル40a、41a及び42aの部分部品を示す。なお、図4に示す例では、3次元モデル表示ビュー40、3次元モデル表示ビュー41、3次元モデル表示ビュー42の順に画面が遷移する場合を想定する。
【0045】
図4に示す3次元モデル表示ビュー40が表示されている段階では、カーソルCが3次元モデル表示ビュー40のノートパソコン40a上になく、カーソルCが空白部分に載置されている。ここから、3次元モデル表示ビュー41に示す位置までカーソルCが移動されると、3次元モデル表示ビュー42に示すノートパソコン42aの部分部品43a上にカーソルCが載置される。そして、表示制御部15cは、3次元モデル表示ビュー42に部品選択ビュー43を重ね表示させる。その上で、表示制御部15cは、3次元モデルビュー42上でカーソルCが載置された部分部品43aの位置と、部品選択ビュー43の表示枠の中心位置とが重なるように3次元モデル表示ビュー42及び部品選択ビュー43を重ね表示させる。このとき、部分部品43aを包含する包含球が部品選択ビュー43の表示枠に最大限投影された時の拡大率が部分部品43aの拡大率として拡大率決定部15bによって決定される。そして、表示制御部15cは、記憶部13に記憶されたCADデータ13aを用いて、部分部品43a及びその周辺の部分の画像を拡大率決定部15bによって決定された拡大率で拡大し、その拡大画像が部品選択ビュー43からはみ出る部分を切取り表示させる。
【0046】
このように、カーソル位置が3次元モデル表示ビューの部品上に存在する場合に3次元モデル表示ビュー及び部品選択ビューを重ね表示させることで、3次元モデル表示ビューの部品上にカーソルを載置するだけで部品選択ビューを自動表示できる。また、カーソル位置が3次元モデル表示ビューの部品上に存在しない場合に3次元モデル表示ビューを単独表示させることで、3次元モデル表示ビュー上の空白部分にカーソルを載置するだけで部品選択ビューを非表示とすることができる。
【0047】
(2)部品選択ビューの位置合わせ表示
続いて、表示制御部15cによる部品選択ビューの位置合わせ表示について説明する。表示制御部15cは、3次元モデルビュー上でカーソルが載置された部分部品の位置と、部品選択ビューの表示枠の中心位置とが重なるように3次元モデル表示ビュー及び部品選択ビューを重ね表示させる。
【0048】
図5A及び図5Bは、部品選択ビューの位置合わせ表示を説明するための図である。図5Aに示す符号50は、図3に示した部分部品32の部品選択ビューを示す。図5Aに示す符号50aは、部品選択ビュー50の中心位置を示す。図5Bに示す符号51は、図3に示した部分部品33の部品選択ビューを示す。図5Bに示す符号51aは、部品選択ビュー51の中心位置を示す。図5A及び図5Bに示す符号Cは、カーソルである。
【0049】
図3に示した3次元モデル表示ビュー30の部分部品32上にカーソルCが載置されると、表示制御部15cは、3次元モデル表示ビュー30に部品選択ビュー50を重ね表示させる。その上で、表示制御部15cは、部品選択ビュー50の表示枠の中心位置50aがカーソルCの載置箇所と一致するように部品選択ビュー50の表示位置を調節する。また、図3に示した3次元モデル表示ビュー30の部分部品33上にカーソルCが載置されると、表示制御部15cは、3次元モデル表示ビュー30に部品選択ビュー51を重ね表示させる。その上で、表示制御部15cは、部品選択ビュー51の表示枠の中心位置51aがカーソルCの載置箇所と一致するように部品選択ビュー51の表示位置を調節する。
【0050】
これによって、操作者は、3次元モデル表示ビューよりも大きいスケールでカーソル指示部品が表示される部品選択ビュー上で部品選択を実行でき、微小部品の選択操作をより簡単に行うことができる。
【0051】
また、部分部品32は、3次元モデル表示ビュー30上で表示されるサイズが部分部品33よりも大きいので、部分部品33よりも拡大率が抑制される。一方、部分部品33は、3次元モデル表示ビュー30上で表示されるサイズが部分部品32よりも小さいので、部分部品33よりも拡大率が強化される。
【0052】
(3)部品選択ビューの視点方向自動調節
次に、表示制御部15cによる部品選択ビューの視点方向自動調節について説明する。表示制御部15cは、3次元モデル表示ビュー上でカーソル情報取得部15aによって取得されたカーソル位置が指す部品の正面方向から所定の角度を傾けた方向に部品に対する視点方向を変更した上で部品選択ビューを表示させる。
【0053】
図6は、部品選択ビューの視点方向自動調節を説明するための図である。図6に示す符号60は、視点方向調節前の部品選択ビューを示す。図6に示す符号60aは、視点方向調節前の部分部品を指す。図6に示す符号61は、視点方向調節後の部品選択ビューを示す。図6に示す符号61aは、視点方向調節後の部分部品を示す。なお、図6に示す符号Cは、カーソルを示す。
【0054】
図6に示すように、表示制御部15cは、部品選択ビュー60に含まれる部分部品60aの正面方向から所定の角度αに傾けて部品選択ビュー61に示す部分部品61aのように視点方向を調節する。ここで、部分部品60の正面方向から右斜め45度に傾けた方向に変更した場合には、部分部品61の正面方向及び側面方向のいずれも俯瞰できるようになる。このため、画面の手前に表示される部分の表示体積が画面の奥側の表示体積よりも大きく、部品が窪んでいる場合などでも、画面の奥側まで部分部品を俯瞰できる。
【0055】
なお、ここでは、視点方向を右斜め方向に傾ける場合を説明したが、視点方向を左斜め方向に傾ける調節を行ってもよい。また、視点方向を正面方向から傾ける角度αは、必ずしも45度である必要はない。例えば、正面方向から部分部品を閲覧したい場合には、角度αをゼロに設定できる。また、側面方向から部分部品を閲覧したい場合には、角度αを90度に設定できる。
【0056】
さらに、表示制御部15cでは、3次元モデル表示ビューとは独立して部品選択ビューの視点方向を変更する。ここで、3次元モデル表示ビューの視点方向を変更したくないという要望は操作者の間で根強い。このため、3次元モデル表示ビューの視点方向を変更することなく、付属画像である部品選択ビューの視点方向を変更できるのは微小部品の操作利便性にかかわらず、閲覧利便性の面からも効果が大きい。
【0057】
[処理の流れ]
図7は、実施例2に係る表示制御処理について説明する。図7は、実施例2に係る表示制御処理の手順を示すフローチャートである。この表示制御処理は、操作者によってマウスを移動させる操作がなされた場合に起動する処理である。
【0058】
図7に示すように、カーソル情報取得部15aは、マウス操作量からカーソル移動量を算出する(ステップS101)。これを説明すると、カーソル情報取得部15aは、カーソル移動量の算出時にチェックする記憶部13の参照領域にカーソル移動量算出用データ13aがセットされている場合には、重ね表示用のカーソル移動量を算出する。なお、カーソル移動量算出用データ13aがセットされている場合には、カーソル情報取得部15aは、単独表示用のカーソル移動量を算出する。
【0059】
続いて、カーソル情報取得部15aは、このようにして算出したカーソル移動量およびマウスの移動軌跡にしたがって3次元モデル表示ビュー上でカーソルを移動させる(ステップS102)。そして、移動後のカーソル位置が3次元モデル表示ビューの部品上に存在する場合(ステップS103肯定)には、表示制御部15cは、部品選択ビューが表示中であるか否かを判定する(ステップS104)。
【0060】
このとき、部品選択ビューが表示中でない場合(ステップS104否定)には、表示制御部15cは、3次元モデル表示ビューにカーソル指示部品を含む部品選択ビューを重ねて表示部12に表示させる(ステップS105)。なお、部品選択ビューが表示中でない場合(ステップS104肯定)には、そのままステップS106へ移行する。
【0061】
その後、表示制御部15cは、部品選択ビューの表示枠の中心位置がカーソルの載置箇所と一致するように部品選択ビューの表示位置を調節する(ステップS106)。そして、表示制御部15cは、カーソルが指し示す部品が前回の部品から変化したか否かを判定する(ステップS107)。なお、前回にカーソルが部品を指していなくとも、今回新たに部品選択ビューが表示された場合には、カーソルが指し示す部品が前回の部品から変化したものと判定される。
【0062】
ここで、前回の部品から変化した場合(ステップS107肯定)には、拡大率決定部15cは、カーソル指示部品の大きさと、部品選択ビューの表示枠の大きさとからカーソル位置が指す部品の拡大率を決定する(ステップS108)。そして、表示制御部15cは、カーソル指示部品及びその周辺の部分の画像を拡大率決定部15bによって決定された拡大率で拡大し、その拡大画像が部品選択ビュー43からはみ出る部分を切取り表示させる(ステップS109)。
【0063】
その後、表示制御部15cは、カーソル情報取得部15aがカーソル移動量の算出時にチェックする記憶部13の参照領域にカーソル移動量算出用データ13aをセットする(ステップS110)。そして、表示制御部15cは、カーソル指示部品の正面方向から所定の角度を傾けた方向に部品選択ビューの視点方向を調節し(ステップS111)、処理を終了する。
【0064】
一方、移動後のカーソル位置が3次元モデル表示ビューの部品上に存在しない場合(ステップS103否定)には、表示制御部15cは、部品選択ビューが表示中であるか否かを判定する(ステップS112)。なお、部品選択ビューが表示中ではない場合(ステップS112否定)には、そのまま処理を終了する。
【0065】
このとき、部品選択ビューが表示中である場合(ステップS112肯定)には、表示制御部15cは、3次元モデル表示ビューに重ね表示していた部品選択ビューを閉じる(ステップS113)。そして、表示制御部15cは、カーソル情報取得部15aがカーソル移動量の算出時にチェックする記憶部13の参照領域からカーソル移動量算出用データ13aをリセットし(ステップS114)、処理を終了する。
【0066】
[実施例2の効果]
上述してきたように、本実施例に係るCAD装置10によれば、3次元モデル表示ビューに重ね表示させる部品選択ビューの表示枠に部品が埋まるように部品の拡大率を変化させる。つまり、CAD装置10では、部品が大きいほど拡大率を小さくし、また、部品が小さいほど拡大率を大きくする。このため、CAD装置10では、部品のスケールに適合した拡大率で拡大された部品選択ビューを3次元モデル表示ビューに重ね表示できる。それゆえ、CAD装置10では、部品選択ビューに含まれる微小部品がカーソル指定に耐え得る大きさまで操作者が手動で拡大率を変更する手間を不要化できる。したがって、本実施例に係るCAD装置10によれば、微小部品の選択操作を簡単に行うことが可能である。
【0067】
また、本実施例に係るCAD装置10では、3次元モデル表示ビュー上でカーソル指示部品の正面方向から所定の角度を傾けた方向に部品に対する視点方向を変更した上で部品選択ビューを表示させる。このため、操作者は、部品の正面方向及び側面方向のいずれも俯瞰できるようになる。したがって、本実施例に係るCAD装置10によれば、画面の手前に表示される部分の表示体積が画面の奥側の部分の表示体積よりも大きく、部品が窪んでいる場合などでも、画面の奥側まで部品を俯瞰することが可能である。
【0068】
さらに、本実施例に係るCAD装置10では、3次元モデル表示ビュー上でカーソル位置が指す部品の位置と、部品選択ビューの表示枠の中心位置とが重なるように3次元モデル表示ビュー及び部品選択ビューを重ね表示させる。したがって、本実施例に係るCAD装置10によれば、操作者は、3次元モデル表示ビューよりも大きいスケールでカーソル指示部品が表示される部品選択ビュー上で部品選択を実行でき、微小部品の選択操作をより簡単に行うことが可能である。
【0069】
また、本実施例に係るCAD装置10では、カーソル位置が3次元モデル表示ビューの部品上に存在する場合には、3次元モデル表示ビューにカーソル指示部品を含む部品選択ビューを重ねて表示部12に表示させる。また、本実施例に係るCAD装置10では、カーソル位置が3次元モデル表示ビューの部品上に存在しない場合には、3次元モデル表示ビューだけを表示部12に表示させる。したがって、本実施例に係るCAD装置10によれば、3次元モデル表示ビューの部品上にカーソルを載置するだけで部品選択ビューを自動表示したり、3次元モデル表示ビュー上の空白部分にカーソルを載置するだけで部品選択ビューを非表示とすることができる。
【0070】
さらに、本実施例に係るCAD装置10では、部品選択ビューが3次元モデル表示ビューに重ね表示されている場合には、部品選択ビューが重ね表示されていない場合に比較してカーソルの移動量を小さくする。したがって、本実施例に係るCAD装置10によれば、操作者がマウス操作量から予測するカーソル移動量と、実際のカーソル移動量との間に生じるズレを低減でき、マウス操作上の違和感が生じることを防止できる。
【実施例3】
【0071】
さて、これまで開示の装置に関する実施例について説明したが、本発明は上述した実施例以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。そこで、以下では、本発明に含まれる他の実施例を説明する。
【0072】
[応用例]
例えば、上記の実施例2では、図3〜図6で部品選択用ビューの表示枠の形状を円とした場合を例示したが、開示の装置はこれに限定されない。例えば、開示の装置は、楕円、多角形などの任意の図形を部品選択用ビューの表示枠として使用できる。さらに、開示の装置は、部品選択ビューの表示枠の大きさも任意に設定できる。また、開示の装置では、1種類の表示枠を固定して使用するだけでなく、同種類の部品を部品選択ビューに表示させる場合には同じ形状の表示枠を使用し、異種類の部品を部品選択ビューに表示させる場合には異なる形状の表示枠を使用することもできる。
【0073】
また、上記の実施例2では、1つのカーソル指示部品が部品選択ビューの表示枠にぴったり埋めるように拡大率を決定する場合を説明したが、開示の装置はこれに限定されない。例えば、開示の装置では、所定のサイズよりも小さい部品がカーソル指示部品となった場合には、その部品を含む組み立て部品、いわゆるアセンブリをカーソル指示部品として拡大率を決定するようにしてもよい。さらに、開示の装置では、上記のアセンブリをカーソル指示部品とするアセンブリモードと、1つの部品をカーソル指示部品とする通常モードとを操作者に選択させるようにしてもよい。
【0074】
[適用例]
また、図示した各装置の各構成要素は、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。例えば、カーソル情報取得部15a、拡大率決定部15b、又は表示制御部15cの全部または一部の機能をCAD装置10の外部装置としてネットワーク経由で接続するようにしてもよい。そして、CAD装置10のCADシステム15が外部装置を呼び出すことにより、部品選択補助機能を発揮することとしてもよい。また、カーソル情報取得部15a、拡大率決定部15b、又は表示制御部15cの一部を別の装置がそれぞれ有し、ネットワーク接続されて協働することで、上記のCAD装置10の機能を実現するようにしてもよい。
【0075】
[部品選択プログラム]
また、上記の実施例で説明した各種の処理は、予め用意されたプログラムをパーソナルコンピュータやワークステーションなどのコンピュータで実行することによって実現することができる。そこで、以下では、図8を用いて、上記の実施例と同様の機能を有する部品選択プログラムを実行するコンピュータの一例について説明する。なお、図8は、実施例3に係る部品選択プログラムを実行するコンピュータの一例について説明するための図である。
【0076】
図8に示すように、実施例3におけるコンピュータ100は、操作部110aと、マイク110bと、スピーカ110cと、ディスプレイ120と、通信部130とを有する。さらに、このコンピュータ100は、CPU150と、ROM160と、HDD(Hard Disk Drive)170と、RAM(Random Access Memory)180と有する。これら110〜180の各部はバス140を介して接続される。
【0077】
ROM160には、上記の実施例2で示したカーソル情報取得部15aと、拡大率決定部15bと、表示制御部15cとを含むCADシステム15と同様の機能を発揮する制御プログラムが予め記憶される。つまり、ROM160には、図8に示すように、カーソル情報取得プログラム160aと、拡大率決定プログラム160bと、表示制御プログラム160cとを含むCADプログラム161が記憶される。なお、これらのプログラム160a〜160cについては、図2に示したCAD装置10の各構成要素と同様、適宜統合又は分離しても良い。
【0078】
そして、CPU150が、これらのプログラム160a〜160cを含むCADプログラム161をROM160から読み出して実行する。これによって、CPU150は、図8に示すように、各プログラム160a〜160cを含むCADプログラム161については、カーソル情報取得プロセス150a及び拡大率決定プロセス150bを含むCADシステム151として機能するようになる。このCADシステム151は、表示制御プロセス150cを含む。なお、各プロセス150a〜150cは、図2に示した、カーソル情報取得部15aと、拡大率決定部15bと、表示制御部15cとにそれぞれ対応する。
【0079】
そして、HDD170には、CADデータ170aと、カーソル移動量算出用データ170bとが設けられる。なお、これらCADデータ170a及びカーソル移動量算出用データ170bは、図2に示したCADデータ13a及びカーソル移動量算出用データ13bに対応する。
【0080】
そして、CPU150は、CADデータ170a及びカーソル移動量算出用データ170bを読み出してRAM180に格納する。続いて、CPU150は、CADデータ170aを用いて、部品選択補助機能を実現する。さらに、CPU150は、RAM180に格納されたCADデータ180aを用いて、拡大率データ180cを生成し、生成した拡大率データ180cをRAM180に格納する。その上で、CPU150は、カーソル移動量算出用データ180bと、拡大率データ180cとを用いて、カーソル移動量調節機能を実現する。
【0081】
以上の実施例を含む実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0082】
(付記1)画面上に表示されるカーソル位置を取得するカーソル位置取得部と、
複数の部品を含む3次元モデルが表示される3次元モデル画像上で前記カーソル位置取得部によって取得されたカーソル位置が指す部品の大きさと、該3次元モデル画像に重ね表示させる拡大画像の表示枠の大きさとに基づき、前記カーソル位置が指す部品の拡大率を決定する拡大率決定部と、
前記部品を含む前記拡大率決定部によって決定された拡大率で拡大した拡大画像を前記3次元モデル画像に重ね表示させる表示制御部と
を有することを特徴とする部品選択装置。
【0083】
(付記2)前記表示制御部は、前記3次元モデル画像上で前記カーソル位置取得部によって取得されたカーソル位置が指す部品の正面方向から所定の角度を傾けた方向に前記部品に対する視点方向を変更した上で前記拡大画像を表示させることを特徴とする付記1に記載の部品選択装置。
【0084】
(付記3)前記表示制御部は、前記3次元モデル画像上で前記カーソル位置取得部によって取得されたカーソル位置が指す部品の位置と、前記拡大画像の表示枠の中心位置とが重なるように前記3次元モデル画像及び前記拡大画像を重ね表示させることを特徴とする付記1または2に記載の部品選択装置。
【0085】
(付記4)前記表示制御部は、前記カーソル位置取得部によって取得されたカーソル位置が前記3次元モデル画像上の部品を指す場合には、前記拡大画像を前記3次元モデル画像に重ね表示させ、前記3次元モデル画像上の部品を指さない場合には、前記3次元モデル画像を単独表示させることを特徴とする付記1、2または3に記載の部品選択装置。
【0086】
(付記5)前記表示制御部によって前記拡大画像が前記3次元モデル画像に重ね表示されている場合には、前記拡大画像が重ね表示されていない場合に比較してカーソルの移動量を小さくするカーソル移動量制御部をさらに有することを特徴とする付記4に記載の部品選択装置。
【0087】
(付記6)画面上に表示されるカーソル位置を取得するカーソル位置取得部と、
複数の部品を含む3次元モデルが表示される3次元モデル画像上で前記カーソル位置取得部によって取得されたカーソル位置が指す部品の大きさと、該3次元モデル画像に重ね表示させる拡大画像の表示枠の大きさとに基づき、前記カーソル位置が指す部品の拡大率を決定する拡大率決定部と、
前記部品を含む前記拡大率決定部によって決定された拡大率で拡大した拡大画像を前記3次元モデル画像に重ね表示させる表示制御部と
を有することを特徴とするCAD装置。
【0088】
(付記7)画面上に表示されるカーソル位置を取得するカーソル位置取得工程と、
複数の部品を含む3次元モデルが表示される3次元モデル画像上で前記カーソル位置取得工程によって取得されたカーソル位置が指す部品の大きさと、該3次元モデル画像に重ね表示させる拡大画像の表示枠の大きさとに基づき、前記カーソル位置が指す部品の拡大率を決定する拡大率決定工程と、
前記部品を含む前記拡大率決定工程によって決定された拡大率で拡大した拡大画像を前記3次元モデル画像に重ね表示させる表示制御工程と
を含んだことを特徴とする部品選択方法。
【0089】
(付記8)画面上に表示されるカーソル位置を取得するカーソル位置取得手順と、
複数の部品を含む3次元モデルが表示される3次元モデル画像上で前記カーソル位置取得手順によって取得されたカーソル位置が指す部品の大きさと、該3次元モデル画像に重ね表示させる拡大画像の表示枠の大きさとに基づき、前記カーソル位置が指す部品の拡大率を決定する拡大率決定手順と、
前記部品を含む前記拡大率決定手順によって決定された拡大率で拡大した拡大画像を前記3次元モデル画像に重ね表示させる表示制御手順と
をコンピュータに実行させることを特徴とする部品選択プログラム。
【符号の説明】
【0090】
1 部品選択装置
2 カーソル位置取得部
3 拡大率決定部
4 表示制御部
10 CAD装置
11 入力部
12 表示部
13 記憶部
13a CADデータ
13b カーソル移動量算出用データ
13c 拡大率データ
14 制御部
15 CADシステム
15a カーソル情報取得部
15b 拡大率決定部
15c 表示制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画面上に表示されるカーソル位置を取得するカーソル位置取得部と、
複数の部品を含む3次元モデルが表示される3次元モデル画像上で前記カーソル位置取得部によって取得されたカーソル位置が指す部品の大きさと、該3次元モデル画像に重ね表示させる拡大画像の表示枠の大きさとに基づき、前記カーソル位置が指す部品の拡大率を決定する拡大率決定部と、
前記部品を含む前記拡大率決定部によって決定された拡大率で拡大した拡大画像を前記3次元モデル画像に重ね表示させる表示制御部と
を有することを特徴とする部品選択装置。
【請求項2】
前記表示制御部は、前記3次元モデル画像上で前記カーソル位置取得部によって取得されたカーソル位置が指す部品の正面方向から所定の角度を傾けた方向に前記部品に対する視点方向を変更した上で前記拡大画像を表示させることを特徴とする請求項1に記載の部品選択装置。
【請求項3】
前記表示制御部は、前記3次元モデル画像上で前記カーソル位置取得部によって取得されたカーソル位置が指す部品の位置と、前記拡大画像の表示枠の中心位置とが重なるように前記3次元モデル画像及び前記拡大画像を重ね表示させることを特徴とする請求項1または2に記載の部品選択装置。
【請求項4】
前記表示制御部は、前記カーソル位置取得部によって取得されたカーソル位置が前記3次元モデル画像上の部品を指す場合には、前記拡大画像を前記3次元モデル画像に重ね表示させ、前記3次元モデル画像上の部品を指さない場合には、前記3次元モデル画像を単独表示させることを特徴とする請求項1、2または3に記載の部品選択装置。
【請求項5】
画面上に表示されるカーソル位置を取得するカーソル位置取得部と、
複数の部品を含む3次元モデルが表示される3次元モデル画像上で前記カーソル位置取得部によって取得されたカーソル位置が指す部品の大きさと、該3次元モデル画像に重ね表示させる拡大画像の表示枠の大きさとに基づき、前記カーソル位置が指す部品の拡大率を決定する拡大率決定部と、
前記部品を含む前記拡大率決定部によって決定された拡大率で拡大した拡大画像を前記3次元モデル画像に重ね表示させる表示制御部と
を有することを特徴とするCAD装置。
【請求項6】
画面上に表示されるカーソル位置を取得するカーソル位置取得工程と、
複数の部品を含む3次元モデルが表示される3次元モデル画像上で前記カーソル位置取得工程によって取得されたカーソル位置が指す部品の大きさと、該3次元モデル画像に重ね表示させる拡大画像の表示枠の大きさとに基づき、前記カーソル位置が指す部品の拡大率を決定する拡大率決定工程と、
前記部品を含む前記拡大率決定工程によって決定された拡大率で拡大した拡大画像を前記3次元モデル画像に重ね表示させる表示制御工程と
を含んだことを特徴とする部品選択方法。
【請求項7】
画面上に表示されるカーソル位置を取得するカーソル位置取得手順と、
複数の部品を含む3次元モデルが表示される3次元モデル画像上で前記カーソル位置取得手順によって取得されたカーソル位置が指す部品の大きさと、該3次元モデル画像に重ね表示させる拡大画像の表示枠の大きさとに基づき、前記カーソル位置が指す部品の拡大率を決定する拡大率決定手順と、
前記部品を含む前記拡大率決定手順によって決定された拡大率で拡大した拡大画像を前記3次元モデル画像に重ね表示させる表示制御手順と
をコンピュータに実行させることを特徴とする部品選択プログラム。
【請求項1】
画面上に表示されるカーソル位置を取得するカーソル位置取得部と、
複数の部品を含む3次元モデルが表示される3次元モデル画像上で前記カーソル位置取得部によって取得されたカーソル位置が指す部品の大きさと、該3次元モデル画像に重ね表示させる拡大画像の表示枠の大きさとに基づき、前記カーソル位置が指す部品の拡大率を決定する拡大率決定部と、
前記部品を含む前記拡大率決定部によって決定された拡大率で拡大した拡大画像を前記3次元モデル画像に重ね表示させる表示制御部と
を有することを特徴とする部品選択装置。
【請求項2】
前記表示制御部は、前記3次元モデル画像上で前記カーソル位置取得部によって取得されたカーソル位置が指す部品の正面方向から所定の角度を傾けた方向に前記部品に対する視点方向を変更した上で前記拡大画像を表示させることを特徴とする請求項1に記載の部品選択装置。
【請求項3】
前記表示制御部は、前記3次元モデル画像上で前記カーソル位置取得部によって取得されたカーソル位置が指す部品の位置と、前記拡大画像の表示枠の中心位置とが重なるように前記3次元モデル画像及び前記拡大画像を重ね表示させることを特徴とする請求項1または2に記載の部品選択装置。
【請求項4】
前記表示制御部は、前記カーソル位置取得部によって取得されたカーソル位置が前記3次元モデル画像上の部品を指す場合には、前記拡大画像を前記3次元モデル画像に重ね表示させ、前記3次元モデル画像上の部品を指さない場合には、前記3次元モデル画像を単独表示させることを特徴とする請求項1、2または3に記載の部品選択装置。
【請求項5】
画面上に表示されるカーソル位置を取得するカーソル位置取得部と、
複数の部品を含む3次元モデルが表示される3次元モデル画像上で前記カーソル位置取得部によって取得されたカーソル位置が指す部品の大きさと、該3次元モデル画像に重ね表示させる拡大画像の表示枠の大きさとに基づき、前記カーソル位置が指す部品の拡大率を決定する拡大率決定部と、
前記部品を含む前記拡大率決定部によって決定された拡大率で拡大した拡大画像を前記3次元モデル画像に重ね表示させる表示制御部と
を有することを特徴とするCAD装置。
【請求項6】
画面上に表示されるカーソル位置を取得するカーソル位置取得工程と、
複数の部品を含む3次元モデルが表示される3次元モデル画像上で前記カーソル位置取得工程によって取得されたカーソル位置が指す部品の大きさと、該3次元モデル画像に重ね表示させる拡大画像の表示枠の大きさとに基づき、前記カーソル位置が指す部品の拡大率を決定する拡大率決定工程と、
前記部品を含む前記拡大率決定工程によって決定された拡大率で拡大した拡大画像を前記3次元モデル画像に重ね表示させる表示制御工程と
を含んだことを特徴とする部品選択方法。
【請求項7】
画面上に表示されるカーソル位置を取得するカーソル位置取得手順と、
複数の部品を含む3次元モデルが表示される3次元モデル画像上で前記カーソル位置取得手順によって取得されたカーソル位置が指す部品の大きさと、該3次元モデル画像に重ね表示させる拡大画像の表示枠の大きさとに基づき、前記カーソル位置が指す部品の拡大率を決定する拡大率決定手順と、
前記部品を含む前記拡大率決定手順によって決定された拡大率で拡大した拡大画像を前記3次元モデル画像に重ね表示させる表示制御手順と
をコンピュータに実行させることを特徴とする部品選択プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2011−141700(P2011−141700A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1579(P2010−1579)
【出願日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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