説明

都市ガスのガバナー基地における侵入者感知器

【技術課題】
都市ガスのガバナー室に侵入者があった場合に、これを感知する感知器を提供する。
【解決手段】
無負荷時にはコイルスプリング9の力で前進し、負荷時には前記コイルスプリング9を圧縮しながら感知器本体1内に後退する被動ピン5と、光反射体8を設けると共にこの光反射体8と対向する位置に光センサー10を感知器本体1に取り付ける。
感知器1をガバナー室20に取り付け、扉21が開放されたときに光センサー10でこれを感知して、監視回路19へ向けて信号を送り、この監視回路19から管理センタへ向けて警報信号を発信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、都市ガスの整圧のために配管路に取り付けられたガバナーを収容するガバナー室(ボックス)において、このガバナー室内に侵入する者があった際、これを感知して管理センターへ通報したり、警報を発呼させたりするために、ガバナー室の扉の所に取り付けて用いられる感知器に関する。
【背景技術】
【0002】
都市ガスの供給配管路(供給網)には、高圧を中圧に又は中圧を低圧に整圧するために、要所にガバナーが設けられていて、このガバナーのある箇所をガバナー基地と呼んでいる。このガバナー基地において、ガバナーは、周囲を密閉した特開2002−070171号に示すようなガバナー室内に収められていて、関係者以外がこのガバナー室内に出入りできないように出入口の扉は施錠されているが、何者かによって侵入される心配がある。
【0003】
そして、万一、ガバナーに悪戯されたりすると、ガス事故を招きかねないことから、従来のガバナー室の扉には、侵入者を感知するための感知器が取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−070171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の感知器の場合、侵入者により扉の開放を電気的な手段で感知する構成のため、万一ガス漏れが発生していたりすると、スパークした火花が漏れ出たガスに引火する心配があった。
【0006】
本発明は斯る点に鑑みて提案されるものであって、その目的は、万一ガスの漏洩があっても、これに引火したりしない都市ガスのガバナー基地における侵入者感知器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、都市ガスのガバナー基地における侵入者感知器において、無負荷時にはスプリングの力で前進し、負荷時には前記スプリングを圧縮しながらケース内に後退する被動ピンを感知器本体に組み付けると共に前記感知器本体内に位置する前記被動ピンの一部に光反射体を取り付けたこと、
前記感知器本体において、前記光反射体と対向する位置に光センサーを取り付けたこと、
前記被動ピンの先端をガバナー室の扉の開閉動作位置に臨ませてガバナー室側に感知器本体を取り付けると共に前記光センサーと監視回路間を光ファイバーで結び、扉が開放されたときに光センサーでこれを感知して、前記監視回路へ向けて信号を送り、この監視回路から管理センタへ向けて警報信号を送信するように構成して成ることを特徴とするものである。
【0008】
この発明によると、スパークの心配のない光センサーで扉の開放動作を感知するため、ガバナー室内にガス漏れがあっても、引火する心配がなく、安全である。
【0009】
更に、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のガバナー基地における侵入者感知器において、前記被動ピンの先端にねじ孔を形成すると共にこのねじ孔内に調整被動ピンをねじ込んで取り付けることにより、被動ピンの長さを調整自在に構成して成ることを特徴とするものである。
【0010】
この発明によると、ガバナー室における扉の位置、構造に併せて、位置調整を行うことができる。
【0011】
更に、請求項3に記載の発明においては、請求項2に記載のガバナー基地における侵入者感知器において、前記調整被動ピンの先端に膨大部付の袋ナットを取り付けて成ることを特徴とするものである。
【0012】
この発明によると、調整被動ピンの先端の角が扉に当らないため、扉を損傷したり、開き戸式の扉の場合には、スムーズに扉の動きが調整被動ピン側に伝わる。
【0013】
更に、請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のガバナー基地における侵入者感知器において、前記光反射体に換えて被動ピンの一部に光反射部を直接形成して成ることを特徴とするものである。
【0014】
この発明によると、被動ピンに反射体を取り付ける手間と費用の削減が可能である。但し、被動ピンの材質によっては、経年的に反射率が低下することが考えられるため、実用化する場合には、経年劣化に対する対応を考慮する必要がある。
【0015】
更に、請求項5に記載の発明は、請求項1に記載のガバナー基地における侵入者感知器において、前記監視回路には、管理センターの通報に併せて警報を発呼する発呼回路が付加されていることを特徴とするものである。
【0016】
この発明によると、ガバナー基地においてブザー等による侵入警報が発呼されることから、侵入者には脅威となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、感知器は、光センサーによりガバナー室の扉の開放動作を感知し、この感知手段に電気回路を持たないため、電気回路を持った従来の感知器のようにスパークの心配がなく、安全である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る感知器の正面図である。
【図2】横断平面図である。
【図3】扉が閉じ、光センサーが作動している状態の断面図である。
【図4】光センサーの正面図である。
【図5】被動ピンから調整ピンを取り外した状態の説明図である。
【図6】ガバナー室の一例を示す説明図である。
【図7】感知器をガバナー室に取り付けた状態の説明図である。
【図8】引き戸に本発明に係る感知器を取り付けた例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る感知器は、都市ガスのガバナー基地(ガバナーボックス)における侵入者の感知を主目的としているが、その他のボックス等であって、防爆等の理由から電気的回路を持つ感知器を使用することが望ましくない施設にも適用が可能である。
【0020】
本発明の感知器は、ガバナー室等の扉であって、片開き、両開き、引き戸式の扉に取り付けて使用される。
【0021】
感知器はガバナー室内に取り付け、ガバナー室の外には警報回路(警報器)が取り付けられていて、この警報回路とガバナー室内の感知器とは光ファイバーケーブルで結ばれており、警報回路からは、常時光信号が光センサーに負荷されている。
【0022】
そして、感知器の被動ピンは、扉が閉じている状態においてはこの扉により押し込まれており、反射体は光センサーの前面に移動して来ている。この結果、光センサー回路が閉成されていて、この状態は正常状態である。
【0023】
そして、侵入者により扉が開放されると、被動ピンの先端から扉が逃げるために被動ピンはスプリングの力で前進し、この作用で反射体が光センサーの前方から外れる。
【0024】
この結果、光センサー回路が開放されるため、この開放状態を監視していた警報回路が駆動して管理センターへ無線又は有線で侵入が発生したことを通報する。
【0025】
この時、警報回路は、同時にブザー等を駆動して警報音を発呼する。
【0026】
感知器は、ガバナー室ごとに扉の建てつけが違うことが多いため、あらかじめL型等のブラケットを用意しておき、現場の状況に合わせて最適な状態に取り付ける。
【実施例1】
【0027】
図1〜図8に基づいて請求項1〜5に記載した発明の実施例を詳細に説明する。
【0028】
符号の1は四角形の感知器本体であって、正面には蓋2がビス3で取り付けられていて、このビス3を外すことにより蓋2を取って内部のメンテナンス等に対応することができる。4は感知器本体1をガバナー室内に取り付けるときに用いるブラケットに固定するためのビス孔である。
【0029】
5は感知器本体1の側面に出入り自在に組み付けられた被動ピンであって、この被動ピン5の先端5aにはストッパー6が形成されていると共に先端5aの中心から軸方向に向けてねじ孔7が形成されている。
【0030】
また、被動ピン5において、感知器本体1内に位置する後端5b部分の正面には光反射性に優れたステンレス等で作られた反射体8が取り付けられている。但し、被動ピン5の側面を平滑に形成して、ここを直接の反射面としても良い。
【0031】
9は前記被動ピン5を押し出す方向に賦勢しているコイルスプリングである。
【0032】
10は感知器本体1の正面から内部に向けて取り付けられた光センサーであって、この光センサー10は、図4に示すように、発光素子11と受光素子12が前記反射体8に対面していて、被動ピン5の後退により反射体8が光センサー10の正面に移動して来ると、発光素子11で発光した光が反射体8で反射し、受光素子12で受光することにより光回路13、14を閉成する構成である。
【0033】
15は被動ピン5の先端に形成したねじ孔7内に正面からそのねじ部16をねじ込んで取り付けられた調整被動ピンであって、現場で被動ピン5の長さでは対応しきれない位置関係のときに、この調整被動ピン15を取り付けて長さを調整することができる。
【0034】
17は調整被動ピン15の先端に取り付けられた袋ナットであって、この袋ナット17の先端側には丸い膨大部18が形成してあり、この膨大部18は扉との接触に際し、接触角が小さいときにこの接触圧を緩和する目的であるが、必ずしも必要とはしない。特に引き戸式の場合には、殆ど必要としないが、勿論あっても良い。
【0035】
図2、図3において、19は警報回路、20はガバナー室、21はこの出入口に取り付けられた扉を示し、図2は扉21が開放されている状態であって、被動ピン5はコイルスプリング9により前進している。一方図3は扉21が閉じられていて、被動ピン5が後退していて、反射体8と光センサー10とが対面した状態(光回路13、14が閉成された状態)である。
【0036】
図5は調整被動ピン15を被動ピン5の先端から取り外した状態を示すものである。
【0037】
図6は、上記した感知器1が取り付けられたガバナー室20の外観図、図7(A)(B)はガバナー室20内に感知器1を取り付けた状態を示すものであって、感知器1は、L型のブラケット22に対してビス孔4を利用して固定され、ブラケット22はガバナー室20の側板25にボルト26により被動ピン5を扉21側に向けて取り付けられている。
【0038】
扉21は、図7(B)に示すように、閉じた状態では被動ピン5を押し込んで光センサー10の光回路13、14を閉成し、扉21が開放されると被動ピン5はコイルスプリング8により押し出されて光センサー10の光回路13、14は開放される。
【0039】
図8は引き戸式の取り付け例であって、引き戸26に蹴り板27を取り付け、この蹴り板27をガバナー室20の枠28にブラケット29で取り付けられた感知器1の調整被動ピン15の先端に臨ませておき、引き戸26が閉じられた状態で調整被動ピン15により被動ピン5が押し込まれる。
【0040】
以上に説明した感知器1の取り付け例は一例であって、現場の状況に応じて種々形状のブラケットを用いて対応することになる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無負荷時にはスプリングの力で前進し、負荷時には前記スプリングを圧縮しながらケース内に後退する被動ピンを感知器本体に組み付けると共に前記感知器本体内に位置する前記被動ピンの一部に光反射体を取り付けたこと、
前記感知器本体において、前記光反射体と対向する位置に光センサーを取り付けたこと、
前記被動ピンの先端をガバナー室の扉の開閉動作位置に臨ませてガバナー室側に感知器本体を取り付けると共に前記光センサーと監視回路間を光ファイバーで結び、扉が開放されたときに光センサーでこれを感知して、前記監視回路へ向けて信号を送り、この監視回路から管理センタへ向けて警報信号を送信するように構成して成る都市ガスのガバナー基地における侵入者感知器。
【請求項2】
前記被動ピンの先端にねじ孔を形成すると共にこのねじ孔内に調整被動ピンをねじ込んで取り付けることにより、被動ピンの長さを調整自在に構成して成る請求項1に記載の都市ガスのガバナー基地における侵入者感知器。
【請求項3】
前記調整被動ピンの先端に膨大部付の袋ナットを取り付けて成る請求項2に記載のガバナー基地における侵入者感知器。
【請求項4】
前記光反射体に換えて被動ピンの一部に光反射部を直接形成して成る請求項1乃至3のいずれか1項に記載のガバナー基地における侵入者感知器。
【請求項5】
前記監視回路は、管理センターへの通報に併せて警報を発呼する発呼回路を付加して成る請求項1に記載のガバナー基地における侵入者感知器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−22810(P2011−22810A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−167480(P2009−167480)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(390024877)トーセツ株式会社 (28)
【Fターム(参考)】