説明

配向膜、これを有する液晶表示素子、及び配向膜用組成物

【課題】液晶の配向性が良好で、しかも着色が少ない配向膜を提供する。
【解決手段】光配向性及び熱硬化性を有する成分(I)と熱硬化によらずに膜を形成する成分(II)とを含有し、少なくとも成分(I)が膜の一方の表面に偏在する成分であるワニスから得られる、一方の表面に偏在する前記成分(I)が配向硬化した成分と前記成分(II)とからなる配向膜を提供し、この配向膜を液晶配向膜として有する液晶表示素子を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光配向性を有する成分を光配向させてなる配向膜に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子は、ノートパソコンやデスクトップパソコンのモニターをはじめ、ビデオカメラのビューファインダー、投写型のディスプレイ等の様々な液晶表示装置に使われており、最近ではテレビにも用いられるようになってきた。さらに、光プリンターヘッド、光フーリエ変換素子、ライトバルブ等のオプトエレクトロニクス関連素子としても利用されている。従来の液晶表示素子としては、ネマティック液晶を用いた表示素子が主流であり、一方の基板近傍にある液晶の配向方向と他方の基板近傍にある液晶のそれとが90度の角度でねじれているTN(Twisted Nematic)モード、前記配向方向が通常180度以上の角度でねじれているSTN(Super Twisted Nematic)モード、薄膜トランジスタを使用したいわゆるTFT(Thin−film−transistor)モードの液晶表示素子が実用化されている。
【0003】
しかしながらこれらの液晶表示素子は、画像が適正に視認できる視野角が狭く、斜め方向から見たときに輝度やコントラストが低下することがあり、また中間調で輝度反転を生じることがある。近年この視野角に関する問題については、1)光学補償フィルムを用いたTN−TFT型液晶表示素子、2)垂直配向と光学補償フィルムを用いたVA(Vertical Alignment)型液晶表示素子、3)横電界方式のIPS(In−Plane Switching)型液晶表示素子(例えば、特許文献1参照)、4)光学補償ベンド(Optically Compensated Bend又はOptically self−Compensated Birefringence:OCB)型液晶表示素子等の技術により改良されている。
【0004】
液晶表示素子の技術の発展は、単にこれらの駆動方式や素子構造の改良のみならず、液晶表示素子に使用される構成部材の改良によっても達成されている。液晶表示素子に使用される構成部材の中でも、特に液晶配向膜は、液晶表示素子の表示品位に係わる重要な要素の一つであり、液晶表示素子の高品質化に伴って液晶配向膜の役割が年々重要になってきている。
【0005】
液晶配向膜は、液晶配向剤より調整される。現在、主として用いられている液晶配向剤とは、ポリアミック酸又は可溶性のポリイミドを有機溶剤に溶解させた溶液である。このような溶液を基板に塗布した後、加熱等の手段により成膜してポリイミド系配向膜を形成する。ポリアミック酸以外の種々の液晶配向剤も検討されているが、耐熱性、耐薬品性(耐液晶性)、塗布性、液晶配向性、電気特性、光学特性、表示特性等の点から、ほとんど実用化されていない。
【0006】
液晶表示素子の表示品位を向上させるために液晶配向膜に要求される重要な特性として、電圧保持率が挙げられる。電圧保持率が低いと、フレーム期間中に液晶にかかる電圧が低下し、結果として輝度が低下して正常な諧調表示に支障を来すことがある。また、例え初期の電圧保持率が高くても、高温加速試験後の電圧保持率(長期信頼性)が低下してしまうような場合は問題である。
【0007】
前記した問題を解決する試みとして、膜としたときの表面エネルギー値が異なるポリアミック酸の2種類をポリマーブレンドして液晶配向膜の性能を向上させる方法が開示されている(例えば、特許文献2)。このようなポリマーブレンドにおいて、第1及び第2成
分のポリアミック酸は、液晶配向膜の膜厚方向に関して、これらの混合比が異なるような、いわゆる成分傾斜構造をしている。
【0008】
しかしながら上記の液晶配向膜は液晶組成物を一定方向に配向させるために、ローラーに巻き付けた布で液晶配向膜を擦る(ラビングする)工程が含まれる。このラビングによる配向処理は、液晶表示素子を製造する上で、以下のいくつかの問題を抱えている。まずラビング操作によって生じる静電気、それにより配向膜表面に吸着されるごみ、又はラビングにより布から溶出する不純物質により、電圧保持率等の液晶表示素子における特性が悪化し、ディスプレイの信頼性が低下することがある。また画面の大型化により、ラビング時に基板が変形し、ラビング布が液晶配向膜と接触しない領域が発生することがある。また逆に高精細なディスプレイでは画素が小さくなることにより、電極とその間の高低差が大きくなるため、ラビングによる均一な配向処理が難しく表示ムラの原因となる場合がある。
【0009】
近年、視野角に関する問題を改善するために開発された、垂直配向と突起構造物の技術を併用したMVA(Multi−domain Vertical Alignment)モード(例えば、特許文献3参照)は、ラビングによる液晶の配向方向制御が不要であるため、傷による表示品位の劣化や液晶表示素子製造時の歩留まりの低下が少なく、現在TV用途の主流となっている。突起構造物は電極付きの基板の上に、感光性樹脂を塗布、成膜、該樹脂の露光、エッチング等々の工程を経て製作される。このようにして製作された突起構造物の上に液晶を垂直に配向させる液晶配向膜が形成される。電圧無印加時、液晶は突起表面に対して垂直に、したがって電極面に対して垂直から微小の角度倒れて配向している。電圧を印加するとこの僅かに倒れた方向に沿って液晶が配向するわけである。
【0010】
以上のようにMVAモードにおいて突起構造物は液晶の配向を規制するのに重要な役割を果たしているが、その製作には既述のように数工程が必要であるため、液晶の配向制御をより簡単に行う方法が種々模索されている。その中で光により液晶配向膜のプレチルト角を制御する方法(例えば、非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4参照)は、これを実現する有力な候補の一つであると考えられる。
【0011】
光を照射して配向処理を施す光配向法については、光分解法、光異性化法、光二量化法、光架橋法等多くの配向機構が提案されている(例えば、非特許文献5、特許文献4参照)。しかしながら光配向法はこれまで配向制御能力が低く、これまで実用に至ったものは少なかった。配向のマルチドメイン化に関しても、光配向膜はマスクをしながら光の照射を重ねることによってこれを行いやすい利点がある(例えば、特許文献5、特許文献6参照)。しかしながら反面、表示素子とした時、バックライト等の光によって配向が乱れやすい欠点がある。光配向を利用した光配向膜としては、例えば異方吸収性分子と疎水性部分とを含む組成物から得られる光配向膜(例えば、特許文献7参照)や、シンナメート系高分子とポリイミド系高分子とを含む組成物から得られる光配向膜(例えば、特許文献8参照)が知られている。
【0012】
また、光異性化法による光配向膜としてアゾベンゼン誘導体を用いたものが種々検討されている(例えば、特許文献9、特許文献10参照)。アゾベンゼン誘導体を用いた光配向膜は、ポリアミック酸の状態で光を照射しその後熱硬化することで、熱硬化後に光を照射したものより異性化による配列度が増大することが知られているが(例えば、非特許文献6)、アゾベンゼン誘導体は着色が濃いため、これを液晶表示素子に利用する場合、着色を抑える方法を工夫する必要がある。
【0013】
【特許文献1】特開平6−160878号公報
【特許文献2】特開平8−43831号公報
【特許文献3】特開平11−242225号公報
【特許文献4】特開2005−275364号公報
【特許文献5】特開平7−72484号公報
【特許文献6】特開平9−211456号公報
【特許文献7】国際公開第97/037273号パンフレット
【特許文献8】特表2003−529111号公報
【特許文献9】特開平10−253963号公報
【特許文献10】国際公開第96/037807号パンフレット
【非特許文献1】Liq.Cryst.vol.28、No.7、1065(2001)
【非特許文献2】Liq.Cryst.vol.29、No.4、567(2002)
【非特許文献3】Mol.Cryst.Liq.Cryst.vol.410、275(2004)
【非特許文献4】Mol.Cryst.Liq.Cryst.vol.412、269(2004)
【非特許文献5】液晶、第3巻、第4号、262ページ、1999年
【非特許文献6】Mol.Cryst.Liq.Cryst.vol.412、293(2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の課題は、配向性を表面に有し、かつ着色を低減させた配向膜を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
比較的表面エネルギーの小さい成分と比較的表面エネルギーの大きい成分の2種類以上をブレンドした熱硬化型の膜材料において、比較的表面エネルギーの小さい成分として光によって異方性が誘起される成分(I)を、比較的表面エネルギーの大きい成分として光によって異方性が誘起されない成分(II)を用い、塗膜したときに膜材料の塗布によって成分傾斜構造(膜表面に比較的表面エネルギーの小さい成分が偏在し、基板近くに比較的表面エネルギーの大きい成分が偏在した状態)が形成された膜材料の塗膜に光照射し、その後に熱硬化することによって、膜表面に異方性を発現させ、これを維持したまま固定化することにより、膜の着色が低減できることを、本発明者らは見出した。この時、光によって異方性が誘起されない成分(II)として、熱的な反応を起こさない材料を用いれば、特に発現した異方性が維持できることを見出し、本発明を完成させた。
【0016】
本発明は、下記の構成からなる。
【0017】
[1] 光の照射によって分子が一方向に配列する光配向性と熱硬化性とを有する成分(I)と、成分(I)を熱硬化させる熱に拠らずに膜を形成する成分(II)とを含有する組成物の膜において成分(I)を光配向させ、さらに熱硬化させてなる、前記成分(I)が配向硬化した成分と前記成分(II)とからなる配向膜であって、
前記成分(I)が配向硬化した成分が表面に偏在している配向膜。
【0018】
[2] 基板上に形成されたときに、前記成分(I)が配向硬化した成分が空気界面に、前記成分(II)が基板界面に偏在していることを特徴とする[1]に記載の配向膜。
【0019】
[3] 前記成分(I)が配向硬化した成分がポリイミドであることを特徴とする[1]又は2]に記載の配向膜。
【0020】
[4] 前記成分(I)が配向硬化した成分が主鎖に感光基を有するポリイミドであることを特徴とする[3]に記載の配向膜。
【0021】
[5] 前記感光基がアゾ基及び三重結合の一方又は両方であることを特徴とする[4]に記載の配向膜。
【0022】
[6] 前記成分(I)が配向硬化した成分が、下記一般式(1−1)、(1−2)、及び(2−1)〜(2−4)で表される1種類以上のジアミンをモノマーとして含むポリイミドであることを特徴とする[5]に記載の配向膜。
【0023】
【化1】

【0024】
式中、R1〜R5はそれぞれ水素、フッ素、CF3又は炭素数1〜30の炭化水素基を表す。
【0025】
[7] 前記成分(I)が配向硬化した成分が、下記構造式(3−1)〜(3−5)及び(4−1)〜(4−4)の中から選ばれる1種類以上のジアミンをモノマーとして含むポリイミドあることを特徴とする[6]に記載の配向膜。
【0026】
【化2】

【0027】
[8] 前記成分(I)が配向硬化した成分が、下記一般式(5)で表される側鎖を有するジアミンをモノマーとしてさらに含むポリイミドであることを特徴とする[4]〜[7]のいずれか一項に記載の配向膜。
【0028】
【化3】

【0029】
一般式(5)中、R6は下記一般式(6)及び(7)で表される基から選ばれる2価の有機基を表す。
【0030】
【化4】

【0031】
一般式(6)中、X1及びX2はそれぞれ単結合、O、COO、OCO、NH、CONH又は炭素数1〜12のアルキレンを表し、G1及びG2はそれぞれ単結合、又は炭素数3〜
12の芳香族環及び炭素数3〜12の脂環式環から選ばれる1〜3個の環を含む二価の基を表し、R7は水素、F、CN、OH又は炭素数1〜30のアルキル、炭素数1〜30のペルフルオロアルキル若しくは炭素数1〜30のアルコキシを表す。
ただし、X1、G1、X2、及びG2の全てが単結合である場合は、R7は炭素数3〜30のアルキル、炭素数3〜30のペルフルオロアルキル若しくは炭素数3〜30のアルコキシであり、G2が単結合でありX2が単結合でもなくアルキレンでもない場合は、R7は水素又はアルキルであり、またG1及びG2が共に単結合である場合は、X1、X2及びR7の炭素数の合計が3以上である。
【0032】
【化5】

【0033】
一般式(7)中、R8は水素又は炭素数1〜12のアルキルを表し、環A1はそれぞれ独立して1,4−フェニレン又は1,4−シクロへキシレンを表し、Z1及びZ2はそれぞれ独立して単結合、CH2、CH2CH2又はOを表し、rは0〜3の整数、sはそれぞれ独立して0〜5の整数、t1は0〜3の整数、t2は0〜3の整数を表す。また、前記1,4−フェニレン又は1,4−シクロへキシレンの任意の水素は炭素数1〜4のアルキルで置き換えられていてもよい。
【0034】
[9] 前記側鎖を有するジアミンが、下記一般式(8−1)又は(8−2)で表されるジアミンであることを特徴とする[8]に記載の配向膜。
【0035】
【化6】

【0036】
一般式(8−1)及び(8−2)中、R9は炭素数1〜20のアルキルを表し、lは0又は2、m及びnはそれぞれ0又は1を表し、またZ3はO又はCH2を表す。
【0037】
[10] 前記成分(I)が配向硬化した成分が、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、及び2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物から選ばれる一種類以上をモノマーとして含むポリイミドであることを特徴とする[3]〜[9]のいずれか一項に記載の配向膜。
【0038】
[11] 前記成分(II)が光配向性を有さないことを特徴とする[1]〜[10]のいずれか一項に記載の配向膜。
【0039】
[12] 前記成分(II)が、可溶性ポリイミド、N−アルキル置換ポリアミック酸、又はポリエステル酸であることを特徴とする[11]に記載の配向膜。
【0040】
[13] 前記成分(II)が、3,5−ジアミノ安息香酸、3,5−ジアミノベンズアミド、及び2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物から選ばれる一種類以上をモノマーとして含む可溶性ポリイミドであることを特徴とする[12]に記載の配向膜。
【0041】
[14] 光の照射によって分子が一方向に配列する光配向性と熱硬化性とを有する成分(I)と、成分(I)を熱硬化させる熱に拠らずに膜を形成する成分(II)とを含有する組成物の膜において成分(I)を光配向させさらに熱硬化させてなる、前記成分(I)が配向硬化した成分と前記成分(II)とからなる配向膜であって、
前記成分(I)が配向硬化した成分が表面に偏在しており、
前記成分(I)が配向硬化した成分は、4,4’−ジアミノアゾベンゼンと、1−{4−[4−(4−n−ペンチルシクロヘキシル)シクロヘキシル]フェニルメチル}−3,5−ジアミノベンゼンとを含むジアミンと、ピロメリット酸二無水物及び1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物の一方又は両方を含むテトラカルボン酸二無水物との反応生成物から得られるポリイミドであり、
前記成分(II)は、N,N’−ジメチルアミノ−4,4’−ジフェニルメタンを含むジアミンと、ピロメリット酸二無水物及び1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物の一方又は両方を含むテトラカルボン酸二無水物との反応生成物であるN−アルキル置換ポリアミック酸であるか、又は、3,5−ジアミノ安息香酸、3,5−ジアミノベンズアミド、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、及び4,4’−ジアミノジフェニルメタンからなる群から選ばれる一以上を含むジアミンと、ピロメリット酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、及び2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物からなる群から選ばれる一以上を含むテトラカルボン酸二無水物との反応生成物から得られる可溶性ポリイミドであることを特徴とする配向膜。
【0042】
[15] 対向配置されている一対の基板と、該基板の対向している面の一方又は両方に形成されている液晶配向膜と、該液晶配向膜間に形成されている液晶層と、該液晶層中の液晶組成物に電圧を印加するための電極とを有する液晶表示素子において、
前記液晶配向膜の一方又は両方が[1]〜[14]のいずれか一項に記載の配向膜であることを特徴とする液晶表示素子。
【0043】
[16] 主鎖に感光基を有する光配向性ポリアミック酸又はその誘導体と、可溶性ポリイミド、N−アルキル置換ポリアミック酸、又はポリエステル酸とを含有する配向膜用組成物。
【0044】
[17] 前記感光基がアゾ基及び三重結合の一方又は両方であることを特徴とする[16]に記載の配向膜用組成物。
【0045】
[18] 前記光配向性ポリアミック酸又はその誘導体が、前記一般式(1−1)、(1−2)、及び(2−1)〜(2−4)で表される1種類以上のジアミンをモノマーとして含むことを特徴とする[17]に記載の配向膜用組成物。
【0046】
[19] 前記光配向性ポリアミック酸又はその誘導体が、前記構造式(3−1)〜(3
−5)及び(4−1)〜(4−4)の中から選ばれる1種類以上のジアミンをモノマーとして含むことを特徴とする[18]に記載の配向膜用組成物。
【0047】
[20] 前記光配向性ポリアミック酸又はその誘導体が、前記一般式(5)で表される側鎖を有するジアミンをモノマーとしてさらに含むことを特徴とする[16]〜[19]のいずれか一項に記載の配向膜用組成物。
【0048】
[21] 前記側鎖を有するジアミンが、前記一般式(8−1)又は(8−2)で表されるジアミンであることを特徴とする[20]に記載の配向膜用組成物。
【0049】
[22] 前記光配向性ポリアミック酸又はその誘導体が、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、及び2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物から選ばれる一種類以上をモノマーとして含むことを特徴とする[16]〜[21]のいずれか一項に記載の配向膜用組成物。
【0050】
[23] 前記成分(II)が、3,5−ジアミノ安息香酸、3,5−ジアミノベンズアミド、及び2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物から選ばれる一種類以上をモノマーとして含む可溶性ポリイミドであることを特徴とする[16]〜[22]のいずれか一項に記載の配向膜用組成物。
【0051】
[24] 前記光配向性ポリアミック酸又はその誘導体が、4,4’−ジアミノアゾベンゼンと1−{4−[4−(4−n−ペンチルシクロヘキシル)シクロヘキシル]フェニルメチル}−3,5−ジアミノベンゼンとを含むジアミンと、ピロメリット酸二無水物及び1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物の一方又は両方を含むテトラカルボン酸二無水物との反応生成物であり、
前記成分(II)は、N,N’−ジメチルアミノ−4,4’−ジフェニルメタンを含むジアミンと、ピロメリット酸二無水物及び1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物の一方又は両方を含むテトラカルボン酸二無水物との反応生成物であるN−アルキル置換ポリアミック酸であるか、又は、3,5−ジアミノ安息香酸、3,5−ジアミノベンズアミド、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、及び4,4’−ジアミノジフェニルメタンからなる群から選ばれる一以上を含むジアミンと、ピロメリット酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、及び2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物からなる群から選ばれる一以上を含むテトラカルボン酸二無水物との反応生成物から得られる可溶性ポリイミドであることを特徴とする[16]〜[23]のいずれか一項に記載の配向膜用組成物。
【0052】
本発明において、配向膜とは、少なくとも膜の表面の構成成分の分子が一方向に並列している膜を示す。また、成分傾斜とは、膜厚方向に対して成分の割合が変化することを示し、成分傾斜構造体とは成分傾斜した構造体を示す。
【発明の効果】
【0053】
本発明によれば、光配向による分子配列を表面に有し、かつ着色を低減させた配向膜が得られる。例えば本発明を液晶配向膜に応用した場合、液晶配向性は従来と同等で膜色が大幅に改善された液晶光配向膜を提供することができる。この液晶配向膜を用いることで、特にVAモードにおいて、突起構造物のような液晶の配向を制御するための構造物を製作することなく表示可能な素子を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0054】
本発明の配向膜は、光の照射によって分子が一方向に配列する光配向性と熱硬化性とを
有する成分(I)と、成分(I)を熱硬化させる熱に拠らずに膜を形成する成分(II)とを含有する組成物の膜において成分(I)を光配向させ、さらに熱硬化させてなる、前記成分(I)が配向硬化した成分と前記成分(II)とからなる配向膜であって、前記成分(I)が配向硬化した成分が表面に偏在している。本発明の配向膜は、成分(I)が配向硬化した成分が膜の表面に偏在し、かつ膜厚方向において、成分(I)と成分(II)との層又は主な分布帯が隣接する位置関係にあれば、さらなる成分を含んでいてもよい。
【0055】
ここで「偏在」とは、配向膜の表面が、成分(I)が配向硬化した成分における分子の一方向配列で実質的に覆われる程に、成分(I)が配向硬化した成分が配向膜の表面に存在していることを言う。成分(I)が配向硬化した成分の偏在は、本発明の液晶表示素子を、偏光顕微鏡(例えば倍率が100倍、光学条件がクロスニコルの条件)で観察したときに配向欠陥が観察されないことによって確認することができる。
【0056】
成分(I)が配向硬化した成分は、成分(I)及び(II)のそれぞれの膜を形成したときにこれらの膜について求められる表面エネルギーの差が大きくなる成分(I)及び(II)を用いることによって、配向膜の表面により多く存在させることができ、前記表面エネルギーの差が小さくなる成分(I)及び(II)を用いることによって配向膜の表面により少なく存在させることができる。また、成分(II)よりも小さな前記表面エネルギーの成分(I)を用いることによって、配向膜を基板表面に形成したときに成分(I)が配向硬化した成分を配向膜の空気界面に偏在させることができ、成分(II)よりも大きな前記表面エネルギーの成分(I)を用いることによって、配向膜を基板表面に形成したときに成分(I)が配向硬化した成分を基板界面に偏在させることができる。
【0057】
成分(I)が配向硬化した成分を配向膜の表面に十分に偏在させる観点から、成分(I)の膜の表面エネルギーと成分(II)の膜の表面エネルギーとの差は、十分に大きいことが好ましく、例えば2mJ/m2以上であることが好ましく、10mJ/m2以上であることがさらに好ましい。各成分の膜は、得られる膜の厚さが60nm程度になるように成分(I)及び(II)の溶液のそれぞれの塗膜を形成し、得られたそれぞれの成分の塗膜を、成分(I)を硬化させる条件で焼成することによって作製することができ、各成分の膜の表面エネルギーは、特開2004−143051号公報の段落0100に記載されている方法に基づいて、純水及びエチレングリコールと各成分の膜との接触角の測定値から求めることができる。
【0058】
本発明の配向膜において、成分(I)が配向硬化した成分の含有量は、十分な配向性を膜表面に付与する観点、及びその経時劣化を防ぐ観点から、熱硬化前の成分(I)及び成分(II)の合計量に対する成分(I)の含有量としたときに8重量%以上であることが好ましく、10重量%以上がより好ましい。また前記配向膜における成分(II)の含有量は、配向膜の着色を低減させる観点から、熱硬化前の成分(I)に対して50重量%以上であることが好ましく、70%重量以上であることがより好ましい。
【0059】
前記成分(I)が配向硬化した成分は、熱硬化前の成分(I)に光を照射することで分子が一方向に配向した後に熱硬化させて得られる成分である。なお、熱硬化とは、成分(I)の熱硬化を意味し、成分(I)において閉環や架橋等の硬化反応を起こすように成分(I)の膜を加熱することを言う。前記成分(I)が配向硬化した成分は、その前駆体、すなわち成分(I)、において光配向性と熱硬化性とを有する成分であればよく、一種類の化合物でもあって二種以上の化合物の混合物であってもよい。また成分(I)が混合物である場合は、成分(I)全体で光配向性と熱硬化性とを有していればよい。
【0060】
前記成分(I)が配向硬化した成分としては、例えばジアミンとテトラカルボン酸二無水物とをモノマーとして含むポリイミドが挙げられ、光配向による配向の経時劣化を小さ
くする観点から、特に主鎖に感光基を有するポリイミドが好ましい。前記ジアミンは一種でも二種以上でもよく、前記テトラカルボン酸二無水物も一種でも二種以上でもよい。
【0061】
前記感光基は、光異性化により一方向へ配列する基であることが好ましく、このような感光基であれば全ての公知の感光基を応用することができる。しかしながら光に対し高感度である点から、成分(I)はアゾベンゼン誘導体、ジフェニルアセチレン誘導体、又はジフェニルブタジイン誘導体であることが好ましく、したがって、このような感光基としては、例えばアゾ基及び炭素間三重結合が挙げられる。
【0062】
このような感光基を主鎖に有するポリイミドには、二つのアミノの間に感光基を有するジアミン、及び二つの酸無水物基の間に感光基を有するテトラカルボン酸二無水物、の一方又は両方をモノマーとして含むポリイミドを用いることができる。このようなポリイミドの全モノマー中における感光基を有するモノマーの含有量は、十分な光配向性を得る観点から、25モル%以上であることが好ましく、30モル%以上の含有量であることがより好ましい。前記ポリイミドは、例えばジアミンとテトラカルボン酸二無水物との反応生成物であって、ジアミン及びテトラカルボン酸二無水物の一方又は両方に前記感光基を有する光配向性及び熱硬化性を有するポリアミック酸又はその誘導体を、光配向させた後に熱硬化させることによって得られる。なお、本明細書において、「モノマーとして含む」とは、モノマー由来の構成単位がポリマーに含まれることも意味する。
【0063】
二つのアミノの間に感光基を有するジアミンとしては、例えば下記一般式(1−1)、(1−2)、及び(2−1)〜(2−4)で表されるジアミンをモノマーとして含むポリイミドが挙げられる。
【0064】
【化7】

【0065】
一般式(1−1)、(1−2)、及び(2−1)〜(2−4)中、R1〜R5はそれぞれ水素、フッ素、CF3又は炭素数1〜30の炭化水素基を表す。
【0066】
前記一般式(1−1)、(1−2)、及び(2−1)〜(2−4)で表されるジアミンとしては、例えば下記構造式(3−1)〜(3−5)及び(4−1)〜(4−4)で表されるジアミンが挙げられる。
【0067】
【化8】

【0068】
前記二つの酸無水物基の間に感光基を有するテトラカルボン酸二無水物には、例えば前記二つのアミノの間に感光基を有するジアミンにおける二つのアミノを酸無水物基に置き換えた化合物が挙げられる。
【0069】
前記感光基を主鎖に有するポリイミドの前記ジアミンは、前記二つのアミノの間に感光基を有するジアミン以外の他のジアミンをさらに含んでいてもよい。このような他のジアミンとしては、例えば側鎖を有するジアミン、及び側鎖を有さないジアミンが挙げられる。なお側鎖とは、二つのアミノを結ぶ二価の有機基に結合する一価の有機基である。
【0070】
前記側鎖を有するジアミンは、このジアミンをモノマーとして含むポリイミドの前記表面エネルギーを小さくする観点、本発明の配向膜を液晶配向膜として用いる際のプレチル
ト角を発現させる観点、及び、配向安定性、プレチルト角、電気特性等の諸特性をバランス良く発現させる観点から好ましく用いられる。側鎖を有するジアミンの含有量は、例えば前記表面エネルギーを小さくする観点では前記のジアミン全体に対して5〜95モル%であることが好ましく、10〜80モル%であることがより好ましい。また前記プレチルト角を発現させ、特に液晶を垂直配向させる観点では、側鎖ジアミンの含有量は、前記ジアミン全体に対し、10〜70モル%であることが好ましく、20〜50モル%であることがより好ましい。側鎖を有するジアミンの種類は前記のような目的だけでなく、目標とする電気特性に合わせて任意に選定できる。
【0071】
前記側鎖を有するジアミンにおける側鎖の構造には、例えば炭素数3以上の基が挙げられる。より具体的には、
1)置換基を有していてもよいフェニル、置換基を有していてもよいシクロヘキシルフェニレン、置換基を有していてもよいビス(シクロヘキシル)フェニレン、又は炭素数3以上のアルキル、アルケニル若しくはアルキニル、
2)置換基を有していてもよいフェニルオキシ、置換基を有していてもよいシクロヘキシルオキシ、置換基を有していてもよいビス(シクロヘキシル)オキシ、置換基を有していてもよいフェニルシクロヘキシルオキシ、置換基を有していてもよいシクロヘキシルフェニルオキシ、又は炭素数3以上のアルキルオキシ、アルケニルオキシ若しくはアルキニルオキシ、
3)フェニルカルボニル、又は炭素数3以上のアルキルカルボニル、アルケニルカルボニル若しくはアルキニルカルボニル、
4)フェニルカルボニルオキシ、又は炭素数3以上のアルキルカルボニルオキシ、アルケニルカルボニルオキシ若しくはアルキニルカルボニルオキシ、
5)置換基を有していてもよいフェニルオキシカルボニル、置換基を有していてもよいシクロヘキシルオキシカルボニル、置換基を有していてもよいビス(シクロヘキシル)オキシカルボニル、置換基を有していてもよいビス(シクロヘキシル)フェニルオキシカルボニル、置換基を有していてもよいシクロヘキシルビス(フェニル)オキシカルボニル、又は炭素数3以上のアルキルオキシカルボニル、アルケニルオキシカルボニル若しくはアルキニルオキシカルボニル、
6)フェニルアミノカルボニル、又は炭素数3以上のアルキルアミノカルボニル、アルケニルアミノカルボニル若しくはアルキニルアミノカルボニル、
7)炭素数3以上の環状アルキレン、
8)置換基を有していてもよいシクロヘキシルアルキレン、置換基を有していてもよいフェニルアルキレン(ただしフェニルが置換基を有さない場合は、アルキレンは直鎖の部分の炭素数が2以上であり、フェニルが置換基を有する場合は、アルキレンの炭素数は1以上である)、置換基を有していてもよいビス(シクロヘキシル)アルキレン、置換基を有していてもよいシクロヘキシルフェニルアルキレン、置換基を有していてもよいビス(シクロヘキシル)フェニルアルキレン、置換基を有していてもよいフェニルアルキルオキシ、アルキルフェニルオキシカルボニル、又はアルキルビフェニリルオキシカルボニル、
9)アルキル、フッ素置換アルキル、又はアルコキシによって置換されたフェニル又はシクロヘキシル、及び、
10)2個以上のベンゼン環又はシクロヘキサン環が単結合し、又は、−O−、−COO−、−OCO−、−CONH−若しくは炭素数1〜3のアルキレンを介して結合した、アルキル、フッ素置換アルキル、又はアルコキシによって置換された環集合基等が挙げられるが、これに限定されない。
【0072】
ここで、「置換基」としては、アルキル、アルコキシ、又はアルコキシアルキル等が挙げられる。
【0073】
また、これらの置換基は、ビス(シクロヘキシル)、又はビス(フェニル)は、アルキ
レンによって中断されていてもよい。
【0074】
なお、本明細書において、「アルキル」、「アルケニル」、「アルキニル」というときは、直鎖でもよいし、分岐鎖でもよい。
【0075】
側鎖を有するジアミンには、例えば下記一般式(5)で表されるジアミンが挙げられる。
【0076】
【化9】

【0077】
前記一般式(5)中、R6は下記一般式(6)及び(7)で表される基から選ばれる二価の有機基を表す。
【0078】
【化10】

【0079】
一般式(6)中、X1及びX2はそれぞれ単結合、O、COO、OCO、NH、CONH又は炭素数1〜12のアルキレンを表し、G1及びG2はそれぞれ単結合、又は炭素数3〜12の芳香族環及び炭素数3〜12の脂環式環から選ばれる1〜3個の環を含む二価の基を表し、R7は水素、F、CN、OH又は炭素数1〜30のアルキル、炭素数1〜30のペルフルオロアルキル若しくは炭素数1〜30のアルコキシを表す。ただし、X1、G1、X2、及びG2の全てが単結合である場合は、R7は炭素数3〜30のアルキル、炭素数3〜30のペルフルオロアルキル若しくは炭素数3〜30のアルコキシであり、G2が単結合でありX2が単結合でもなくアルキレンでもない場合は、R7は水素又はアルキルであり、またG1及びG2が共に単結合である場合は、X1、X2及びR7の合計の炭素数が3以上である。
【0080】
前記一般式(6)において、2つのアミノ基はフェニル環炭素に結合しているが、2つのアミノ基の結合位置関係はメタ又はパラであることが好ましい。さらに2つのアミノ基はそれぞれ、「R7−G2−X2−G1−X1−」の結合位置を1位としたときに3位と5位、又は2位と5位に結合していることが好ましい。
【0081】
【化11】

【0082】
一般式(7)中、R8は水素又は炭素数1〜12のアルキルを表し、環A1はそれぞれ独立して1,4−フェニレン又は1,4−シクロへキシレンを表し、Z1及びZ2はそれぞれ独立して単結合、CH2、CH2CH2又はOを表し、rは0〜3の整数、sはそれぞれ独立して0〜5の整数、t1は0〜3の整数、t2は0〜3の整数を表す。また、1,4−
フェニレン又は1,4−シクロへキシレンの任意の水素は炭素数1〜4のアルキルで置き換えられていてもよい。
【0083】
一般式(6)で表される有機基を有する、側鎖を有するジアミンとしては、例えば下記一般式(8−1)で表されるジアミンが挙げられる。
【0084】
【化12】

【0085】
一般式(8−1)中、R9は炭素数1〜20のアルキルを表し、lは0又は2を表し、m及びnはそれぞれ0又は1を表す。
【0086】
一般式(6)で表される有機基を有する、側鎖を有するジアミンとしては、例えば下記一般式(6−1)〜(6−25)で表されるジアミン及び下記構造式(6−26)〜(6−31)のジアミンが挙げられる。特に前記一般式(8−1)で表されるジアミンとしては、例えば下記一般式(6−1)〜(6−11)、(6−24)及び(6−25)で表されるジアミンが挙げられる。
【0087】
【化13】

【0088】
【化14】

【0089】
【化15】

【0090】
【化16】

【0091】
前記一般式(6−1)、(6−2)、(6−7)及び(6−8)中、R20は炭素数1〜20のアルキル又は炭素数1〜20のアルコキシが好ましく、炭素数5〜16のアルキルがさらに好ましい。前記一般式(6−3)〜(6−6)及び(6−9)〜(6−11)中、R21は炭素数1〜20のアルキル又は炭素数1〜20のアルコキシが好ましく、炭素数3〜10のアルキルがさらに好ましい。前記一般式(6−12)〜(6−14)中、R22は炭素数4〜20のアルキルが好ましく、炭素数6〜16のアルキルがさらに好ましい。前記一般式(6−15)中、R23は炭素数6〜20のアルキル又は炭素数8〜20のアルキルがさらに好ましい。前記一般式(6−16)中、R24は炭素数3〜20のアルキル又は炭素数3〜20のアルコキシが好ましく、炭素数5〜12のアルキルがさらに好ましい。前記一般式(6−17)〜(6−25)中、R25は炭素数1〜20のアルキル又は炭素数1〜20のアルコキシが好ましく、炭素数3〜10のアルキルがさらに好ましい。
【0092】
これらのうち、より好ましくは、一般式(6−1)、(6−2)、(6−4)、(6−5)、及び(6−6)で表されるジアミンが挙げられ、さらに好ましくは、一般式(6−1)又は(6−2)で表されるジアミンが挙げられる。
【0093】
一般式(7)で表される有機基を有する、側鎖を有するジアミンとしては、例えば下記一般式(8−2)で表されるジアミンが挙げられる。
【0094】
【化17】

【0095】
一般式(8−2)中、R9は炭素数1〜20のアルキルを表し、lは0又は2を表し、m及びnはそれぞれ0又は1を表し、Z3はO又はCH2を表す。
【0096】
一般式(7)で表される有機基を有する、側鎖を有するジアミンとしては、例えば下記一般式(7−1)〜(7−16)で表されるジアミンが挙げられる。特に前記一般式(8−2)で表されるジアミンとしては、例えば下記一般式(7−5)、(7−6)、(7−8)〜(7−10)及び(7−12)で表されるジアミンが挙げられる。
【0097】
【化18】

【0098】
【化19】

【0099】
【化20】

【0100】
前記一般式(7−1)〜(7−4)、(7−7)、(7−11)、(7−13)〜(7−16)中、R26は水素原子、炭素数1〜12のアルキル又は炭素数1〜12のアルコキシが好ましく、炭素数4〜7のアルキルがさらに好ましい。前記一般式(7−5)、(7−6)、(7−8)〜(7−10)及び(7−12)中、R27は炭素数1〜12のアルキル又は炭素数1〜12のアルコキシが好ましく、炭素数4〜7のアルキルがさらに好ましい。
【0101】
前記側鎖を有さないジアミンは、電気特性を向上させる観点から好ましく用いられる。側鎖を有さないジアミンの含有量は、例えば前記電気特性を向上させる観点では前記のジアミン全体に対して50モル%以下であることが好ましく、30モル%以下であることがより好ましい。側鎖を有さないジアミンとしては、例えば下記構造式で表されるジアミンが挙げられる。
【0102】
【化21】

【0103】
【化22】

【0104】
【化23】

【0105】
【化24】

【0106】
前記側鎖を有さないジアミンは、本発明の配向膜に高いVHRを付与し焼き付き現象を抑制する観点から、前記構造式(V−1)〜(V−7)、(VI−1)〜(VI−12)、(VI−26)、(VI−27)、(VII−1)、(VII−2)、(VII−6)、(VIII−1)〜(VIII−5)で表されるジアミンがより好ましく、前記構造式(V−6)、(V−7)、(VI−1)〜(VI−12)で表されるジアミンが最も好ましい。
【0107】
さらに前記ジアミンは、以下に示す極性基を有するジアミンをさらに含んでいてもよい。これらのジアミンは本発明成分(I)又は(II)に用いた場合、これらの表面エネルギーを大きくすることができる。極性基を有するジアミンは、前記成分(I)及び(II)のうちの比較的極性が低い一方の成分(I)又は(II)に対して比較的極性が高い他方の成分(II)又は(I)において、前記成分(I)及び(II)の偏在の度合いをさらに大きくする観点から好ましく用いられる。極性基を有するジアミンの含有量は、例えば前記偏在の度合いをさらに大きくする観点では前記のジアミン全体に対して30〜100モル%であることが好ましく、50〜100モル%であることがより好ましい。前記極性基としては、例えば酸素や窒素を含む置換基が挙げられ、例えばCOOH、CONH2、OH、CONH、及びNH等が挙げられ、このような極性基を有するジアミンとしては
、例えば下記構造式(IX−1)〜(IX−22)で表されるジアミンが挙げられる。
【0108】
【化25】

【0109】
【化26】

【0110】
前記構造式(IX−1)〜(IX−18)で表されるジアミンは、比較的合成が容易な観点から好ましい。さらに前記構造式(IX−2)、(IX−3)、(IX−6)、(IX−7)、(IX−12)、(IX−13)、(IX−14)、(IX−15)及び(IX−18)で表されるジアミンは、電気特性が良好である観点から好ましい。
【0111】
さらに前記ジアミンは、本発明の配向膜を液晶配向膜に使用した場合の電気特性を向上させる観点から、シロキサン系ジアミンをさらに含んでいてもよい。該シロキサン系ジアミンは特に限定されるものではないが、下記一般式(20)で表されるジアミンであることが本発明において好ましい。
【0112】
【化27】

【0113】
一般式(20)中、R31及びR32はそれぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル又はフェニルを表し、R33はメチレン、フェニレン又はアルキル置換されたフェニレンを表し、xは独立して1〜6の整数を表し、yは1〜10の整数を表す。
【0114】
これらのジアミンにおいて、芳香環に直接アミノ基が結合した芳香族系(複素芳香環系を含む)ジアミンは、液晶に良好な配向性を与えるので特に好ましい。さらに液晶表示素子の電気特性の低下原因となりやすいエステルやエーテル結合等の酸素や硫黄を含まない構造のものが好ましい。しかし、そのような構造を有していても、電気特性に悪影響を与えない範囲内の量であれば何ら問題とはならない。
【0115】
前記テトラカルボン酸二無水物は、一種でも二種以上でもよく、芳香環に直接ジカルボン酸無水物が結合した芳香族系(複素芳香環系を含む)、芳香環に直接ジカルボン酸無水物が結合していない脂肪族系(複素環系を含む)の何れの群に属するものであってもよい。前記テトラカルボン酸二無水物極の含有量は、前記のジアミン全体に対して90〜110モル%であることが好ましく、95〜105モル%であることがより好ましい。本発明の配向膜を液晶配向膜として用いる場合、本発明の配向膜には、液晶表示素子の電気特性の低下原因となりやすいエステルやエーテル結合等の酸素や硫黄を含まないことが好ましい。したがって、テトラカルボン酸二無水物も酸素や硫黄を含まない構造のものが好ましい。しかし、そのような構造を有していても電気特性に悪影響を与えない範囲内の量であれば何ら問題とはならない。
【0116】
テトラカルボン酸二無水物としては、例えば下記一般式(9)で表されるテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0117】
【化28】

【0118】
一般式(9)中、Qは下記一般式(10)〜(18)で表される基から選ばれる四価の基を表す。
【0119】
【化29】

【0120】
一般式(10)中、G3は単結合、炭素数1〜12のアルキレン、1,4−フェニレン、又は1,4−シクロへキシレンを表し、X3及びX4はそれぞれ単結合又はCH2を表す。
【0121】
【化30】

【0122】
一般式(11)中、R10、R11、R12及びR13はそれぞれ水素、メチル、エチル又はフェニルを表す。
【0123】
【化31】

【0124】
一般式(12)中、環A2はシクロヘキサン環又はベンゼン環を表す。
【0125】
【化32】

【0126】
一般式(13)中、G4は単結合、CH2、CH2CH2、O、CO、S、C(CH32、又はC(CF32を表し、環A3は独立してシクロヘキサン環又はベンゼン環を表す。
【0127】
【化33】

【0128】
一般式(14)中、R14は水素又はメチルを表す。
【0129】
【化34】

【0130】
一般式(15)中、X5は独立して単結合又はCH2を表し、vは1又は2を表す。
【0131】
【化35】

【0132】
一般式(16)中、X6は単結合又はCH2を表す。
【0133】
【化36】

【0134】
一般式(17)中、R15は水素、メチル、エチル又はフェニルを表し、環A4はシクロヘキサン環又はベンゼン環を表す。
【0135】
【化37】

【0136】
一般式(18)中、w1及びw2はそれぞれ0又は1を表す。
【0137】
本発明で好ましく用いることのできる前記テトラカルボン酸二無水物としては、例えば下記構造式A−1〜A−42で表されるテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0138】
【化38】

【0139】
【化39】

【0140】
【化40】

【0141】
前記テトラカルボン酸二無水物は、本発明の配向膜における光配向性を向上させる観点から前記構造式A−1、A−2、又はA−7で表されるテトラカルボン酸二無水物であることが好ましく、前記構造式A−1又はA−2で表されるテトラカルボン酸二無水物であることが特に好ましい。また、前記テトラカルボン酸二無水物は、本発明の配向膜を液晶配向膜として用いる際のVHRを向上させる観点、及び配向膜の着色を軽減させる観点から、下記構造式A−13、A−17、A−18、A−19、A−20、A−27、A−28、A−29、A−31、A−38、A−39、A−40、又はA−42で表されるテトラカルボン酸二無水物であることが好ましく、下記構造式A−13又はA−17で表されるテトラカルボン酸二無水物であることが特に好ましい。
【0142】
前記テトラカルボン酸二無水物は、二つの酸無水物基の間に前記側鎖を有するテトラカルボン酸二無水物や、二つの酸無水物基の間に前記極性基を有するテトラカルボン酸二無水物をさらに含んでいてもよい。これらのテトラカルボン酸二無水物は、前述した側鎖を有するジアミンや極性基を有するジアミンと同様の目的で同様に用いることができる。
【0143】
前記成分(II)は、成分(I)を熱硬化させる熱に拠らずに膜を形成する成分である。この時、成分(I)を熱硬化させる熱に拠らずに膜を形成する成分とは、ある成分を単独で塗膜した場合、該熱硬化の前と後において、構成する各構造(例えばポリマーの主鎖
等)の相対的な位置関係が殆ど変化をしない成分を表す。具体的には該熱硬化温度において反応する置換基を、成分(I)の光配向構造が成分(I)の熱硬化時において十分に維持される程度に有していてもよい、ガラス転移点が該熱硬化温度以上であるポリマー等が挙げられる。
【0144】
本発明の配向膜が前記成分(I)及び(II)の二成分の膜である場合には、成分(II)は成分(I)が配向硬化した成分が偏在する膜の他方の表面に偏在し、本発明の配向膜が三成分以上の多成分の膜である場合には、成分(II)は、配向膜の膜厚方向において、成分(I)が配向硬化した成分と隣接する位置関係に偏在する成分である。本発明の配向膜を通常の液晶配向膜として用いる場合には、成分(I)が配向硬化した成分は空気界面に偏在し、成分(II)は基板界面に偏在することが好ましい。
【0145】
前記成分(II)は、光配向性を有していてもよいが、成分(I)による光配向性を本発明の配向膜の配向性に十分に反映させる観点から、光配向性を有さないことが好ましい。また成分(II)は、前記成分(I)と溶融等の均一な状態を形成する成分であることが、成分(I)が配向硬化した成分を膜の表面へ十分に偏在させる観点から好ましい。このような成分(II)としては、例えば可溶性ポリイミド、N−アルキル置換ポリアミック酸、及びポリエステル酸が挙げられる。
【0146】
前記可溶性ポリイミドは、例えばジアミンとテトラカルボン酸二無水物との反応生成物であるポリアミック酸を、定法に従って、例えば無水酢酸等のイミド化剤をポリアミック酸の残存カルボキシル基に対し等モル%以上使用し、イミド化することによって得られる。またN−アルキル置換ポリアミック酸は、二つのアミノ基としてモノアルキルアミノ基を有するジアミンとテトラカルボン酸二無水物とを反応させることによって得られる。さらにポリエステル酸は、ジオールと酸無水物とを反応させることによって得られる。成分(II)は、前記表面エネルギーに基づいて、適宜選ぶことができる。
【0147】
成分(I)に誘起された配向が成分(II)の成膜時の熱イミド化反応によって乱されるのを防ぐ観点から、成分(II)に可溶性ポリイミドを使用した場合、そのイミド化率は50%以上か好ましく、70%以上がより好ましい。
【0148】
前記可溶性ポリイミドのモノマーには、前記ジアミンと、前記テトラカルボン酸二無水物とを用いることができる。前記可溶性ポリイミドのモノマーは、前記成分(I)におけるモノマーに応じて適宜選択することができる。例えば、成分(I)において前記表面エネルギーを小さくするモノマーを用いる場合には、前記可溶性ポリイミドのモノマーには、前記表面エネルギーを大きくするモノマー(例えば側鎖を有さないジアミン、極性基を有するジアミン、側鎖を有さないテトラカルボン酸二無水物、及び極性基を有するテトラカルボン酸二無水物)を用いることが好ましく、成分(I)において前記表面エネルギーを大きくするモノマーを用いる場合には、前記可溶性ポリイミドのモノマーには、前記表面エネルギーを小さくするモノマー(例えば側鎖を有するジアミン及び側鎖を有するテトラカルボン酸二無水物)を用いることが好ましい。
【0149】
前記N−アルキル置換ポリアミック酸のモノマーには、前記可溶性ポリイミドのモノマーに用いられるジアミンのアミノ基をそれぞれモノアルキルアミノ基としたN−アルキルジアミンと、前記テトラカルボン酸二無水物とを用いることができる。前記N−アルキル置換ポリアミック酸のモノマーも、前記可溶性ポリイミドと同様に、前記成分(I)におけるモノマーに応じて適宜選択することができる。
【0150】
前記可溶性ポリイミド及び前記N−アルキル置換ポリアミック酸のモノマーのうち、前記テトラカルボン酸二無水物は、可溶性ポリイミド又はN−アルキル置換ポリアミック酸
の溶剤に対する溶解性を向上させる観点から、前記構造式A−13、A−20、A−28、A−31、A−34、A−35、A−39、A−40、A−41、及びA−42で表されるテトラカルボン酸二無水物を含むことが好ましい。中でも、液晶配向膜のVHRを向上させる観点から、前記テトラカルボン酸二無水物は、前記構造式A−20及びA−39の一方又は両方を含むことが好ましい。
【0151】
このような可溶性ポリイミドとしては、例えば成分(I)が配向硬化した成分が空気界面に偏在する場合では、3,5−ジアミノ安息香酸、3,5−ジアミノベンズアミド、及び2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物から選ばれる一種類以上をモノマーとして含む可溶性ポリイミドが挙げられる。
【0152】
前記ポリエステル酸のモノマーには、上記酸二無水物及び公知の全てのジオールを用いることができる。
【0153】
本発明の配向膜は、成分(I)と成分(II)とを含有する液状の均一混合物の塗膜に、この塗膜中において成分(I)が偏在する一表面側から光を照射して成分(I)を光配向させ、光配向した成分(I)を熱硬化させることによって得ることができる。例えば本発明の配向膜は、成分(I)として、主鎖に感光基を有する光配向性ポリアミック酸又はその誘導体と、成分(II)として、可溶性ポリイミド、N−アルキル置換ポリアミック酸、又はポリエステル酸とを含有する配向膜用組成物(以下、「ワニス」とも言う)から得ることができる。
【0154】
前記光配向性ポリアミック酸又はその誘導体は、前述した成分(I)のポリイミドのモノマーである前記ジアミンと前記テトラカルボン酸二無水物とを反応させて得られる。なおポリアミック酸又はその誘導体としては、ポリアミック酸、ポリアミック酸の一部のアミノ基とカルボキシル基とが脱水閉環した部分ポリイミド、ポリアミック酸のカルボキシル基の一部又は全部をエステル化したポリアミック酸エステル、テトラカルボン酸二無水物の一部をジカルボン酸に置換して反応させたポリアミック酸−ポリアミド共重合体、及び該ポリアミック酸−ポリアミド共重合体の一部を脱水閉環反応させたポリアミドイミド等が挙げられる。該ポリアミック酸又はその誘導体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体等の共重合体であってもよい。
【0155】
本発明のワニスにおける前記可溶性ポリイミド、N−アルキル置換ポリアミック酸、及びポリエステル酸には、本発明の配向膜の成分(II)において前述した各成分を同様に用いることができる。該可溶性ポリイミドは、ランダム共重合体、ブロック共重合体等の共重合体であってもよい。
【0156】
本発明のワニスは、塗膜への光照射と熱硬化のための加熱とによって前述した本発明の配向膜を形成するのであれば、成分(I)及び(II)以外の他の成分をさらに含有していてもよい。このような他の成分としては、例えば光配向性を有さないポリアミック酸又はその誘導体、有機シリコーン化合物、架橋剤、及び溶剤が挙げられる。光配向性を有さないポリアミック酸は、前記感光基を有さない前記のモノマーを反応させて得ることができ、配向膜やワニスの物性の調整の観点から添加することができる。
【0157】
前記有機シリコーン化合物は、ワニスのガラス基板への密着性を調節する観点から好ましい。本発明のワニスに添加する有機シリコーン化合物は特に限定されるものではないが、例えば、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシド
キシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤、及び、ジメチルポリシロキサン、ポリジメチルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン等のシリコーンオイル、が挙げられる。
【0158】
該有機シリコーン化合物のワニスへの含有量は、本発明の配向膜及びワニスに要求される特性を損なうことなく、配向膜の基板への密着性を改善することができる範囲であれば特に制限はない。しかしながら、これらを多く添加すると、膜の異方性が低下することがある。したがって、前記有機シリコーン化合物のワニスにおける含有量は、ワニスに含有されるポリマーの重量(光配向性ポリアミック酸又はその誘導体と、前記可溶性ポリイミド、N−アルキル置換ポリアミック酸、又はポリエステル酸との総量)に対し、0.01〜5重量%であることが好ましく、0.1〜3重量%であることがより好ましい。
【0159】
前記架橋剤は、本発明の配向膜の特性の経時劣化や環境による劣化を防ぐ観点から好ましい。前記架橋剤には、ポリアミック酸又はその誘導体のカルボン酸残基と反応してポリアミック酸同士を繋ぐ化合物を用いることができる。このような架橋剤としては、特許第3049699号公報、特開2005−275360号公報、特開平10−212484号公報等に記載されているような多官能エポキシ、イソシアネート材料等が挙げられる。また架橋剤自身が反応して網目構造のポリマーとなり、本発明の配向膜において、配向膜の強度を向上するような材料も上記と同様な目的に使用することができる。このような架橋剤としては、特開平10−310608号公報、特開2004−341030号公報等に記載されているような多官能ビニルエーテル、マレイミド、又はビスアリルナジイミド誘導体等が挙げられる。なお本発明に用いられる架橋剤はこれら以外でもよい。このような架橋剤は架橋時に膜の配向を損なう可能性があるので、その使用量は必要最小限(例えば光配向性ポリアミック酸又はその誘導体と、前記可溶性ポリイミド、N−アルキル置換ポリアミック酸、又はポリエステル酸との総量に対して100重量%以下)にすることが好ましい。
【0160】
前記溶剤は、前記光配向性ポリアミック酸又はその誘導体と、前記可溶性ポリイミド、N−アルキル置換ポリアミック酸、又はポリエステル酸とを溶解する溶剤であることが好ましい。溶剤は一種でも二種以上でもよい。このような溶剤としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルイミダゾリジノン、N−メチルカプロラクタム、N−メチルプロピオンアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド(DMAc)、及びγ−ブチロラクトン(GBL)が挙げられる。
【0161】
上記の溶剤以外の溶剤であって、塗布性改善等を目的とした他の溶剤としては、例えば乳酸アルキル、3−メチル−3−メトキシブタノール、テトラリン、イソホロン、エチレングリコールモノブチルエーテル(BCS)等のエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のジエチレングリコールモノアルキルエーテル、エチレングリコールモノアルキル及びフェニルアセテート、トリエチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル、マロン酸ジエチル等のマロン酸ジアルキル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のジプロピレングリコールモノアルキルエーテル、並びにこれらグリコールモノエーテル類等のエステル化合物が挙げられる。
【0162】
これらの中で、前記溶剤には、NMP、ジメチルイミダゾリジノン、GBL、BCS、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等を特に好ましく用いることができる。
【0163】
本発明の配向剤は、所望により各種の添加剤をさらに含有していてもよい。例えば、塗布性のさらなる向上を望むときにはかかる目的に沿った界面活性剤を、帯電防止のさらなる向上を必要とするときは帯電防止剤を適量含有していてもよい。
【0164】
本発明におけるワニス中のポリマー(光配向性ポリアミック酸又はその誘導体と、前記可溶性ポリイミド、N−アルキル置換ポリアミック酸、又はポリエステル酸)の濃度は特に限定されないが、0.1〜40重量%であることが好ましい。該ワニスを基板に塗布するときには、膜厚の調整のために、含有されているポリマーを予め溶剤により希釈する操作が必要とされることがある。ポリマーの濃度が40重量%以下であると、ワニスの粘度は好ましいものとなり、膜厚の調整のためにワニスを希釈する必要があるときに、ワニスに対して溶剤を容易に混合できるため好ましい。
【0165】
スピンナー法や印刷法等の塗布方法のときには膜厚を良好に保つために、ポリマーの濃度を通常10重量%以下とすることが多い。その他の塗布方法、例えばディッピング法やインクジェット法ではさらに低濃度とすることもあり得る。一方ポリマーの濃度が0.1重量%以上であると、得られる配向膜の膜厚が好ましいものとなり易い。したがってポリマーの濃度は、通常のスピンナー法や印刷法等の塗布方法では0.1重量%以上、好ましくは0.5〜10重量%である。しかしながら、該ワニスの塗布方法によっては、さらに希薄な濃度で使用してもよい。
【0166】
本発明のワニスの粘度は、塗布する方法、ポリマーの濃度、使用するポリマーの種類、溶剤の種類と割合によって多種多様である。例えば印刷機による塗布の場合は、5〜100mPa・s(より好ましくは10〜70mPa・s)である。この範囲にあれば十分な膜厚が得られ、また印刷ムラもない。インクジェット印刷による塗布の場合は1〜30mPa・s(より好ましくは5〜20mPa・s)である。
【0167】
本発明のワニスに含有される前記ポリマーの分子量、例えば重量平均分子量(Mw)は、目的とするワニスの粘度を得るために任意に選択できる。しかしながら、本発明の配向膜における経時劣化を防ぐ観点から、本発明のワニスに含有される前記光配向性ポリアミック酸又はその誘導体を含むポリアミック酸又はその誘導体、前記可溶性ポリイミド、N−アルキル置換ポリアミック酸、及びポリエステル酸のMwは10,000以上が好ましい。ポリアミック酸又はその誘導体や可溶性ポリイミドにおいて分子量を調節するためには、モノアミン、及び/又はモノカルボン酸無水物を前記のモノマーと併用しても良い。また分子量が大きすぎると粘度が高くなり取り扱い難くなるので、前記ポリマーのMwは200,000以下が好ましい。
【0168】
Mwを10,000以下にする必要がある場合、焼成時に架橋反応する置換基を前記のポリアミック酸又はその誘導体及び可溶性ポリイミドの一方又は両方のモノマーに導入することが好ましい。このような目的のために特開平11−193326号公報に記載の反応性基を有するジアミン又はテトラカルボン酸二無水物や、特開平1−188528号公報に記載の反応性基を有するモノアミン、及び/又はモノカルボン酸無水物を前記原料と併用することが好ましい。また前記架橋剤を同様な目的に使用しても良い。
【0169】
Mwを10,000以下にする必要がある場合、光照射時に重合若しくは架橋反応する置換基を前記のポリアミック酸又は可溶性ポリイミド(ポリアミック酸誘導体)に導入することは、本発明の配向膜の配向を保持するためにさらに好ましい。このような目的のために、国際公開第00/06543号パンフレット又は特開2002−69180号公報に記載のジアミンや、特開平11−236451号公報に記載のモノカルボン酸無水物を前記のモノマーと併用することが好ましい。
【0170】
本発明の配向膜は、既述したワニスを塗布する工程と、得られた塗膜に光を照射して光配向性ポリアミック酸又はその誘導体を配向させる工程と、光配向性ポリアミック酸又はその誘導体が配向した前記塗膜を加熱し、前記塗膜中の配向した光配向性ポリアミック酸又はその誘導体(成分(I))を熱硬化(イミド化)する工程とによって製造することができる。
【0171】
本発明では、前述した光照射工程における光の種類、照射角度等は特に制限されるものではない。前記光照射工程では、光配向性ポリアミック酸又はその誘導体が前記塗膜において偏在する空気界面又は基板界面のいずれか一方の表面側から光を照射することが好ましい。本発明の配向膜を液晶配向膜として使用する場合、プレチルト角を発現させるために配向膜の表面に対して斜めの方向から光を照射することが好ましい。またこのときの光として特に無偏光が好ましい。この工程によれば、前記光配向性ポリアミック酸又はその誘導体における塗膜の表面に対する水平方向への配向と、光の入射面におけるポリアミック酸の配向(基板面に対する傾斜角、塗膜の表面に対する垂直方向への配向)との両方を制御することが可能である。また液晶を膜表面に対して平行方向へ配向させたい場合、前記塗膜の表面に対して垂直方向から直線偏光を照射することが好ましい。
【0172】
また、前記の2つの方法を組み合わせた工程を行っても良い。この工程によれば、配向膜の材料であるポリアミック酸主鎖の配向の程度を高くし、かつ一様なプレチルト角を有する液晶の配向を得る観点から好ましい。
【0173】
前記光照射工程において、塗膜の表面に対して斜めの方向から照射される光の照射角度は、特に限定されるものではないが、任意のプレチルト角を得るためには、塗膜の表面又は基板面に対して20〜70度であることが、良好なポリアミック酸主鎖の配向と液晶のプレチルト角とを得る観点から好ましく、さらには30〜60度であることがより好ましい。
【0174】
前記光照射工程において照射される光として、直線偏光又は直線偏光以外の光を用いることができる。直線偏光以外の光には、例えばP偏光成分とS偏光成分の強度比が制御された光、P偏光とS偏光とが制御された光、及び無偏光等が挙げられる。前記P偏光成分とS偏光成分の強度比が制御された光には、円偏光や楕円偏光のような各偏光成分の間に位相関係がある光、及びこのような位相関係がない光が挙げられる。前記直線偏光以外の光はこれらのいずれの光であってもよく、このような光は、偏光フィルター、偏光プリズム、光の照射方向に対して斜めに設置したガラス板を透過させることによって得ることができる。
【0175】
前記光照射工程において照射される光の光源には、本発明の目的が達成される範囲内である限り、どのようなものであってもよい。このような光源としては、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、重水素ランプ、メタルハライドランプ、アルゴン共鳴ランプ、キセノンランプ、Deep UVランプ、エキシマーレーザー等が挙げられる。
【0176】
前記光照射工程において照射される光の波長は300〜600nm、より好ましくは340〜500nmである。300nm以上の波長の光では配向膜の光分解が抑えられ、600nm以下の波長の光では光反応が進み易くなる。このような観点から、光照射工程における光の照射では、短波長カットフィルター又はバンドパスフィルター等を用いることが好ましい。また光反応を効率的に行うため、紫外・可視の連続光源を用い、紫外光と可視光を同時に照射することが好ましい。
【0177】
前記光照射工程において照射される光の照射光量は、塗膜の種類、光源の波長、照射条件に依存する。目安としては、Deep UVランプと340〜500nmのバンドパス
フィルターを用いて光照射工程を行う場合の照射量は、0.5J/cm2以上であり、好ましくは1J/cm2以上である。照射量は特に上限はないが、配向膜の劣化を避けるためには、2,000J/cm2以下であることが好ましく、設備及び処理に係わるコスト等の経済性を考慮すると300J/cm2以下であることが好ましい。
【0178】
本発明の配向膜の加熱硬化の方法としては、オーブン又は赤外炉の中で加熱処理する方法、ホットプレート上で加熱処理する方法等の一般に知られている方法が適用可能である。前記イミド化工程は一般に150〜300℃程度の温度で行うことが好ましい。
【0179】
本発明の配向膜の製造では、基板に塗布したワニスから溶剤を除く工程をさらに含むことが好ましい。前記工程は前述した光照射工程の前に行うことが好ましく、前記イミド化工程と同様に、オーブン又は赤外炉の中で加熱処理する方法、ホットプレート上で加熱処理する方法等の一般に知られている方法によって行うことができる。この工程はポリアミック酸又はその誘導体がイミド化することを防ぐため、溶剤の蒸発が可能な範囲内の比較的低温で実施することが好ましい。本発明において、100℃以下で1〜10分間にこれを行うことが好ましい。
【0180】
本発明の配向膜の製造では、膜を加熱硬化した後、洗浄液による洗浄工程をさらに含んでいてもよい。洗浄工程としては、ジェットスプレー、蒸気洗浄又は超音波洗浄等が挙げられる。これらの洗浄は単独で行ってもよいし併用してもよい。洗浄液としては純水、メチルアルコール、エチルアルコール若しくはイソプロピルアルコール等のアルコール類、ベンゼン、トルエン若しくはキシレン等の芳香族炭化水素類、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素、又はアセトン若しくはメチルエチルケトン等のケトン類を用いることができるが、これらに限定されるものではない。もちろんこれらの洗浄液は十分に精製された不純物の少ないものが好ましい。
【0181】
本発明の配向膜は、液晶配向膜に応用した時、5〜89.7度の範囲の、特に80.0〜89.7度の範囲の、プレチルト角を必要とする方式の液晶表示素子に最適である。前記プレチルト角は、例えば中央精機製液晶特性評価装置OMS−CA3型を用いてJournal of Applied Physics, Vol.48 No.5, p.1783−1792 (1977)に記載されているクリスタルローテーション法によって測定することができる。又は前記プレチルト角は、Mol. Cryst. Liq.
Cryst. 241 (1994) 147.に記載されているクリスタルローテーション法によって測定することができる。
【0182】
本発明における配向膜の膜厚は、膜の厚みの均一性と機械的、光学的、電気特性の観点から、通常30〜500nmである。膜による表示素子の着色を抑えるため、液晶配向膜の膜厚は30〜200nmであることが好ましく、50〜150nmであることがより好ましい。
【0183】
本発明の配向膜の膜厚は、例えばエリプソメトリーや接触式段差計等の通常の膜厚測定方法によって測定することができる。また配向膜の膜厚は、ワニスの濃度、粘度やワニスの塗布条件によって調整することができる。
【0184】
本発明の液晶表示素子は、対向配置されている一対の基板と、前記基板の対向している面の一方又は両方に形成されている本発明の配向膜と、前記配向膜間に形成されている液晶層と、前記液晶層中の液晶組成物に電圧を印加するための電極とを有する。本発明における液晶表示素子は、配向膜を除いて従来の液晶表示素子と同様に構成することができる。より具体的には、本発明の液晶表示素子は、上記のように基板上に配向膜を作製し、次いでスペーサを介して該基板を対向させて組み立てる工程、液晶組成物を基板の隙間に封
入する工程及び偏光フィルムを貼り付ける工程等を行うことにより得られる。
【0185】
前記電極は基板の一面に形成される電極であれば特に限定されない。このような電極には例えばITOや金属の蒸着膜等が挙げられる。また電極は基板の全面に形成されていても良いし、所望の形状にパターン化されていても良い。電極の形状には例えば櫛型又はジグザグ構造等が挙げられる。電極は一対2枚の基板のうち一方に形成されていても良いし、両方に形成されていても良い。前記基板又は電極の上に前記配向膜が形成される。
【0186】
前記液晶層は、対向している面の一方又は両方に本発明の配向膜が形成されているような対向している一対の基板の隙間に、液晶組成物を封入して形成される。液晶層の厚みを均一に制御するため、基板の間に介在して適当な間隔を形成するスペーサを必要に応じて用いることができる。前記スペーサとしてはガラスや樹脂製の微粒子やシート等が挙げられる。
【0187】
前記液晶組成物には、誘電率異方性が負の各種の液晶組成物を用いることができる。このような液晶組成物の好ましい例は、特開昭57−114532号公報、特開平2−4725号公報、特開平4−224885号公報、特開平8−40953号公報、特開平8−104869号公報、特開平10−168076号公報、特開平10−168453号公報、特開平10−236989号公報、特開平10−236990号公報、特開平10−236992号公報、特開平10−236993号公報、特開平10−236994号公報、特開平10−237000号公報、特開平10−237004号公報、特開平10−237024号公報、特開平10−237035号公報、特開平10−237075号公報、特開平10−237076号公報、特開平10−237448号公報(EP967261A1明細書)、特開平10−287874号公報、特開平10−287875号公報、特開平10−291945号公報、特開平11−029581号公報、特開平11−080049号公報、特開2000−256307号公報、特開2001−019965号公報、特開2001−072626号公報、特開2001−192657号公報等に開示されている。
【0188】
前記液晶組成物に一種以上の光学活性化合物を添加して使用することも何ら差し支えない。
【0189】
また本発明の液晶表示素子は、液晶表示素子の種類に応じてさらなる他の部材を有していても良い。例えばカラー表示の薄膜トランジスタ(TFT)を使用した液晶素子においては、第1の透明基板上にはTFT、絶縁膜、保護膜及び画素電極等が形成されており、第2の透明基板上には画素領域以外の光を遮断するブラックマトリクス、カラーフィルター、平坦化膜及び画素電極等を有する。またIPSモードにおいては、電極を持たない透明基板上に、ブラックマトリクス、カラーフィルター、平坦化膜等を有する。他方に設置された櫛歯状の電極は、例えばガラス等の透明基板上にCr等の金属のスパッタリング法等を用いて堆積した後、所定の形状のレジストパターンをマスクとしてエッチングを行って形成される。
【0190】
さらにVAモードにおいては、透明基板上に微小な突起物を形成させる場合(いわゆるMVAモード)があるが、本発明の配向膜を用いれば、マスキングを併用した光照射処理により、液晶の配向方向のマルチドメイン化が実施できる。
【実施例】
【0191】
以下本発明を実施例及び比較例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお実施例及び比較例で用いるジアミン及びテトラカルボン酸二無水物を以下の表1に示す。下記化合物(30)、(31)、VI−1、VI−2、PMDA(
A−1)、CBTA(A−13)は市販の化合物を精製して実験に用いた。下記化合物(32)は特開昭49−108029号公報に従って合成し、下記化合物(33)は特開2002−162630号公報(実施例2(「4−(4−(4−プロピルシクロヘキシル)シクロヘキシル)ベンゼン」の代わりに「4−(4−(4−ペンチルシクロヘキシル)シクロヘキシル)ベンゼン」を使用)に従って合成した。化合物(34)、(61)、及びVIII−2はそれぞれJ.Org.Chem.,50,4478(1985)、特開昭58−109479号公報及び特開平11−193346号公報に従って合成した。ポリマーの調整は窒素気流中で行った。
【0192】
【表1】

【0193】
【化41】

【0194】
合成例1(ワニスV1の調製)
100mLの四つ口フラスコに化合物30(0.4908g、2.3135mmol)、化合物33(1.0005g、2.3123mmol)を入れ、N−メチル−2−ピロリドン7gに溶解した。反応系の温度を室温に保ちながらPMDA(1.0087g、4.6245mmol)を加え一晩反応させた。得られたワニスにγ−ブチルラクトンを15g、BCSを17.5g、N−メチル−2−ピロリドンを8g加え約80℃に加熱した。粘度が約17mPa・sになるまで該温度で攪拌し、高分子成分の濃度が約5重量%のポリアミック酸のワニスV1を調製した。このV1におけるポリアミック酸の重量平均分子量Mwは31,000であった。
【0195】
前記ワニスにおけるポリアミック酸の重量平均分子量(Mw)は、ゲル・パーエミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を用い、溶出液として0.6重量%リン酸含有DMFを用い、カラム温度50℃、ポリスチレンを標準溶液として測定した。また、前記ワニスの粘度は、回転粘度計(E型)で測定した。
【0196】
合成例2〜5(ワニスV2〜5の調製)
合成例1と同様な方法によって、以下の表2に示すポリアミック酸のワニスV2〜V5を調製した。
【0197】
【表2】

【0198】
合成例6
200mLの四つ口フラスコに化合物31(4.3689g、28.7144mmol)を入れ、N−メチル−2−ピロリドン10gに溶解した。反応系の温度を室温に保ちながらCBTA(5.6311g、28.7140mmol)を加え一晩反応させた。得られたワニスにN−メチル−2−ピロリドンを20g、γ−ブチルラクトンを60g加えた。このワニスに無水酢酸(1.4657g、14.3569mmol)を加え、100℃で2時間加熱し、高分子成分濃度が約10%の可溶性ポリイミドのワニスV6を調製した。このV6の粘度は約9mPa・s、ポリイミドの重量平均分子量Mwは7,000、イミド化率は81%であった。
【0199】
前記イミド化率は1H NMR(Bruker BIOSPIN DRX−500)により測定した。まずポリマーを純水中で再沈殿させ、ろ過し、純水で1回洗浄した。この試料を100℃で3時間真空乾燥させた。この試料をDMSO−d6中に溶解し、室温でNMRを測定した(積算128回)。ポリマーの芳香環部分とCOOH又はCONH基の1Hの積分値の比から、イミド化率を求めた。
【0200】
合成例7〜10(ワニスV7〜V10の調製)
合成例6と同様な方法によって、以下の表3に示す可溶性ポリイミドのワニスV7〜V10を調製した。
【0201】
【表3】

【0202】
ワニスV1を膜としたときの表面エネルギー測定
ワニスV1にNMPを加え、高分子成分の濃度が約3重量%の溶液を得た。これをガラス基板にスピナー法により塗布した(1,800rpm、15秒)。塗布後の基板を80℃で3分間加熱し溶媒を蒸発させた後、さらにオーブン中で230℃30分間加熱処理し
、膜厚約60nmの膜を得た。得られた膜の接触角を、特開2004−143051号公報の記載(実施例における「(4)表面エネルギーの測定」)に従って、純水とエチレングリコール(EG)とを用いて測定し、得られた接触角の値から表面エネルギーを求めたところ、26.2mJ/m2であった。
【0203】
また、ワニスV2〜10についてもワニスV1と同様に膜を形成し、得られた膜の表面エネルギーを求めたところ、下記表の値となった。
【0204】
【表4】

【0205】
実施例1
サンプル瓶にワニスV1とV3の混合物(重量比;V1:V3=20:80)を5g計り取り、BCを加え6.25gとし、混合ワニスを得た。片面にITO電極を設けた透明ガラス基板(2cm×3cm)上に、ポリアミック酸及び可溶性ポリイミドの濃度が約4重量%の前記混合ワニスを滴下し、スピンナー法により塗布した(1,600rpm、15秒)。塗布後、基板を80℃で3分間加熱し溶媒を蒸発させた後、基板平面を光源に対して45度傾け、無偏光を照射した(365nmでエネルギー約5J/cm2)。光照射後の基板を230℃で30分間加熱処理し、ITO上の膜の干渉色より推定される膜厚が約60nmの配向膜を得た。
【0206】
ITO電極上に上記の配向膜が形成された基板2枚を、配向膜が形成されている面を対向させ、さらに対向する配向膜の間に液晶組成物を注入させるための空隙を形成して合わせ、この空隙に下記に示す液晶組成物を注入し、セル厚20μmの液晶セルC1(液晶表示素子)を組み立てた。基板の張り合わせ方向は、傾斜させた方向を左右とし傾斜させた方向と垂直な方向を上下とした時、左右を反対に上下を同一にして行った。
【0207】
【化42】

【0208】
この液晶セルC1を110℃で30分間アイソトロピック処理を行い室温まで冷却した。この液晶セルC1を偏光顕微鏡で観察したところ、クロスニコル状態で液晶セルC1を回転させても暗状態は変化せず、また液晶の配向欠陥による光抜けも観察されなかった。この液晶セルC1のプレチルト角を前記の方法で測定したところ、89.4度であった。液晶が傾斜する方向は無偏光の光の照射方向であった。またこの液晶セルC1に電圧(5V)を印加して偏光顕微鏡で観察したところ、セルの全領域中に配向欠陥によるシュリーレン組織は観察されずきれいな配向が得られた。またこの状態で液晶セルC1を回転させたとき明瞭な明暗が観察された。この液晶セルC1の電圧保持率(VHR)は95.5%であり、イオン密度は973pCであった。
【0209】
本実施例では、偏光顕微鏡観察は、倍率が100倍、光学条件がクロスニコルの条件で行った。
【0210】
また前記プレチルト角は、前述のJ.Appl.Phs.,48,1783(1977)に記載のクリスタルローテーション法によって測定した。
【0211】
さらに前記VHRは、「水嶋他、第14回液晶討論会予稿集 p78(1988)」に記載の方法で行った。測定は、ゲート幅69μs、周波数30Hz、波高±5Vの矩形波をセルに印加して行った。測定は60℃で行った。この値は、印加した電荷がフレーム周期後どの程度保持されているかを示す指標であり、この値が100%ならば全ての電荷が保持されていることを示す。
【0212】
また前記イオン密度は、応用物理、第65巻、第10号、1065(1996)に記載の方法に従い、東陽テクニカ社製、液晶物性測定システム6254型を用いて測定した。周波数0.01Hzの三角波を用い、±10Vの電圧範囲、温度60℃で測定した。イオン密度が大きいとイオン性不純物による焼き付き等の不具合が発生しやすい。即ち上記残留電荷と同様、イオン密度は焼き付き発生を予測する指標となる物性値である。
【0213】
実施例2
ワニスV1とV3の混合ワニスをV1とV6との混合ワニス(重量比;V1:V6=20:80)に変えたこと以外は実施例1と同様に液晶セルC2を作製した。この液晶セルC2を偏光顕微鏡で観察したところ、クロスニコル状態で液晶セルC2を回転させても暗状態は変化せず、また液晶の配向欠陥による光抜けも観察されなかった。
【0214】
この液晶セルC2のプレチルト角を前記の方法で測定したところ、89.3度であった。液晶が傾斜する方向は無偏光の光の照射方向であった。またこの液晶セルC2に電圧(5V)を印加して偏光顕微鏡で観察したところ、配向欠陥によるシュリーレン組織は観察されなかった。またこの状態で液晶セルC2を回転させたとき明瞭な明暗が観察された。
【0215】
この液晶セルC2のVHRは95.5%であり、イオン密度は901pCであった。
【0216】
実施例3
ワニスV1とV3の混合ワニスをV1とV7との混合ワニス(重量比;V1:V7=20:80)に変えたこと以外は実施例1と同様に液晶セルC3を作製した。この液晶セルC3を偏光顕微鏡で観察したところ、クロスニコル状態で液晶セルC3を回転させても暗状態は変化せず、また液晶の配向欠陥による光抜けも観察されなかった。
【0217】
この液晶セルC3のプレチルト角を前記の方法で測定したところ、89.1度であった。液晶が傾斜する方向は無偏光の光の照射方向であった。またこの液晶セルC3に電圧(5V)を印加して偏光顕微鏡で観察したところ、配向欠陥によるシュリーレン組織は観察されなかった。またこの状態で液晶セルC3を回転させたとき明瞭な明暗が観察された。
【0218】
この液晶セルC2のVHRは95.2%、イオン密度は817pCであった。
【0219】
実施例4
ワニスV1とV3の混合ワニスをV1とV8との混合ワニス(重量比;V1:V8=20:80)に変えたこと以外は実施例1と同様に液晶セルC4を作製した。この液晶セルC4を偏光顕微鏡で観察したところ、クロスニコル状態で液晶セルC4を回転させても暗状態は変化せず、また液晶の配向欠陥による光抜けも観察されなかった。
【0220】
この液晶セルC4のプレチルト角を前記の方法で測定したところ、89.2度であった。液晶が傾斜する方向は無偏光の光の照射方向であった。またこの液晶セルC4に電圧(
5V)を印加して偏光顕微鏡で観察したところ、配向欠陥によるシュリーレン組織は観察されなかった。またこの状態で液晶セルC4を回転させたとき明瞭な明暗が観察された。
【0221】
この液晶セルC4のVHRは95.2%、イオン密度は663pCであった。
【0222】
実施例5
ワニスV1とV3の混合ワニスをV2とV8との混合ワニス(重量比;V2:V8=20:80)に変えたこと以外は実施例1と同様に液晶セルC5を作製した。この液晶セルC5を偏光顕微鏡で観察したところ、クロスニコル状態で液晶セルC5を回転させても暗状態は変化せず、また液晶の配向欠陥による光抜けも観察されなかった。
【0223】
この液晶セルC5のプレチルト角を前記の方法で測定したところ、89.1度であった。液晶が傾斜する方向は無偏光の光の照射方向であった。またこの液晶セルC5に電圧(5V)を印加して偏光顕微鏡で観察したところ、配向欠陥によるシュリーレン組織は観察されなかった。またこの状態で液晶セルC5を回転させたとき明瞭な明暗が観察された。
【0224】
この液晶セルC5のVHRは97.9%、イオン密度は486pCであった。
【0225】
実施例6
ワニスV1とV3の混合ワニスをV1とV9との混合ワニス(重量比;V1:V9=20:80)に変えたこと以外は実施例1と同様に液晶セルC6を作製した。この液晶セルC6を偏光顕微鏡で観察したところ、クロスニコル状態で液晶セルC6を回転させても暗状態は変化せず、また液晶の配向欠陥による光抜けも観察されなかった。
【0226】
この液晶セルC6のプレチルト角を前記の方法で測定したところ、89.3度であった。液晶が傾斜する方向は無偏光の光の照射方向であった。またこの液晶セルC6に電圧(5V)を印加して偏光顕微鏡で観察したところ、配向欠陥によるシュリーレン組織は観察されなかった。またこの状態で液晶セルC6を回転させたとき明瞭な明暗が観察された。
【0227】
この液晶セルC6のVHRは96.0%、イオン密度は707pCであった。
【0228】
実施例6’
ワニスV1とV3の混合ワニスをV4’とV8’との混合ワニス(重量比;V4’:V8’=10:90)に変えたこと以外は実施例1と同様に液晶セルC6’を作製した。この液晶セルC6’を偏光顕微鏡で観察したところ、クロスニコル状態で液晶セルC6’を回転させても暗状態は変化せず、また液晶の配向欠陥による光抜けも観察されなかった。
【0229】
この液晶セルC6’のプレチルト角を前記の方法で測定したところ、89.1度であった。液晶が傾斜する方向は無偏光の光の照射方向であった。またこの液晶セルC6’に電圧(5V)を印加して偏光顕微鏡で観察したところ、配向欠陥によるシュリーレン組織は観察されなかった。またこの状態で液晶セルC6’を回転させたとき明瞭な明暗が観察された。
【0230】
この液晶セルC6’のVHRは98.3%、イオン密度は186pCであった。
【0231】
実施例7
基板をITO電極なしのガラス基板(コーニング)に変えて、実施例5と同様にワニスV2とV8との混合ワニスによる膜厚約60nmの配向膜を形成し、この配向膜が形成された基板のUV−Visスペクトルを測定した。このUV−Visスペクトルは、UV−Visスペクトル測定装置(日本分光V−660)を用い、リファレンスに配向膜を形成
していないガラス基板を用い測定した。結果を図1に示す。
【0232】
比較例1
実施例1において、無偏光の照射と230℃30分間の加熱処理の順番を逆にしたこと以外は、実施例1と同様に液晶セルC7を作製した。この液晶セルC7を偏光顕微鏡で観察したところ、クロスニコル状態で液晶セルを回転させても暗状態は変化せず、また液晶の配向欠陥による光抜けも観察されなかった。
【0233】
この液晶セルC7のプレチルト角を前記の方法で測定したところ、90.0度であった。またこの液晶セルC7に電圧(5V)を印加して偏光顕微鏡で観察したところ、セルの全領域中に数箇所数個に配向不良が観察された。
【0234】
この液晶セルC7のVHRは95.3%、イオン密度は1,050pCであった。
【0235】
比較例2
ワニスV1とV3の混合ワニスをV1とV10との混合ワニス(重量比;V1:V10=20:80)に変えたこと以外は実施例1と同様に液晶セルC8を作製した。この液晶セルC8を偏光顕微鏡で観察したところ、クロスニコル状態で液晶セルC8を回転させても暗状態は変化せず、また液晶の配向欠陥による光抜けも観察されなかった。
【0236】
この液晶セルC8のプレチルト角を前記の方法で測定したところ、89.7度であった。またこの液晶セルC8に電圧(5V)を印加して偏光顕微鏡で観察したところ、セルの全領域中に数箇所数個に配向不良が観察された。
【0237】
この液晶セルC8のVHRは90.7%、イオン密度は1,540pCであった。
【0238】
比較例3
ワニスV1とV3の混合ワニスをV1とV5との混合ワニス(重量比;V1:V5=20:80)に変えたこと以外は実施例1と同様に液晶セルC9を作製した。この液晶セルC8を偏光顕微鏡で観察したところ、クロスニコル状態で液晶セルC9を回転させても暗状態は変化せず、また液晶の配向欠陥による光抜けも観察されなかった。
【0239】
この液晶セルC9のプレチルト角を前記の方法で測定したところ、89.8度であった。またこの液晶セルC9に電圧(5V)を印加して偏光顕微鏡で観察したところ、セルの全領域中に数箇所数個に配向不良が観察された。
【0240】
この液晶セルC9のVHRは91.0%、イオン密度は1,420pCであった。
【0241】
比較例4
ワニスV2とV8の混合ワニスをワニスV4に変えて、実施例7と同様にITO電極なしのガラス基板(コーニング)上に配向膜を形成し、この配向膜が形成された基板のUV−Visスペクトルを測定した。結果を図2に示す。
【0242】
実施例1〜6と比較例1との結果から、光配向性と熱硬化性とを有する成分(I)と光配向性と熱硬化性との両方を有さない成分(II)を含むワニスを、特定の角度から無偏光を照射したのち、熱硬化して配向膜とすることで、ガラス基板に対して垂直に配向した液晶にプレチルト角を発現することができ、良好な表示が可能なVAモード液晶表示素子が得られることが分かる。
【0243】
また実施例4と比較例2との結果から、前記成分(I)と前記成分(II)について、
各成分の膜としたときの表面エネルギー値の差が大きな成分(I)と成分(II)とを用いることにより、成分(I)が膜の表面に偏在し、さらには表面エネルギーの値が成分(II)に対して相対的に小さな成分(I)を用いることによって、前記成分(I)が空気界面に、前記成分(II)が基板界面に偏在し、液晶の配向が良好なVAモード液晶表示素子が得られることが分かる。
【0244】
さらに実施例1〜6と比較例3との結果から、光配向性を有さない成分(II)として、成分(I)の熱硬化の加熱なしに膜を形成する材料を用いることで、液晶の配向が良好なVAモード液晶表示素子が得られることが分かる。
【0245】
さらに実施例7と比較例4との結果から、本発明の配向膜は、アゾベンゼンを含むジアミンをモノマーとして有するポリアミック酸のみの層からなる光配向膜に比べ、着色が少ないことが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0246】
【図1】実施例7における配向膜を有する基板のUV−Visスペクトルを示す図である。
【図2】比較例4における配向膜を有する基板のUV−Visスペクトルを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光の照射によって分子が一方向に配列する光配向性と熱硬化性とを有する成分(I)と、成分(I)を熱硬化させる熱に拠らずに膜を形成する成分(II)とを含有する組成物の膜において成分(I)を光配向させ、さらに熱硬化させてなる、前記成分(I)が配向硬化した成分と前記成分(II)とからなる配向膜であって、
前記成分(I)が配向硬化した成分が表面に偏在している配向膜。
【請求項2】
基板上に形成されたときに、前記成分(I)が配向硬化した成分が空気界面に、前記成分(II)が基板界面に偏在していることを特徴とする請求項1に記載の配向膜。
【請求項3】
前記成分(I)が配向硬化した成分がポリイミドであることを特徴とする請求項1又は2に記載の配向膜。
【請求項4】
前記成分(I)が配向硬化した成分が主鎖に感光基を有するポリイミドであることを特徴とする請求項3に記載の配向膜。
【請求項5】
前記感光基がアゾ基及び三重結合の一方又は両方であることを特徴とする請求項4に記載の配向膜。
【請求項6】
前記成分(I)が配向硬化した成分が、下記一般式(1−1)、(1−2)、及び(2−1)〜(2−4)で表される1種類以上のジアミンをモノマーとして含むポリイミドであることを特徴とする請求項5に記載の配向膜。
【化1】

(式中、R1〜R5はそれぞれ水素、フッ素、CF3又は炭素数1〜30の炭化水素基を表
す。)
【請求項7】
前記成分(I)が配向硬化した成分が、下記構造式(3−1)〜(3−5)及び(4−1)〜(4−4)の中から選ばれる1種類以上のジアミンをモノマーとして含むポリイミドあることを特徴とする請求項6に記載の配向膜。
【化2】

【請求項8】
前記成分(I)が配向硬化した成分が、下記一般式(5)で表される側鎖を有するジアミンをモノマーとしてさらに含むポリイミドであることを特徴とする請求項4〜7のいずれか一項に記載の配向膜。
【化3】

(一般式(5)中、R6は下記一般式(6)及び(7)で表される基から選ばれる2価の有機基を表す。)
【化4】

(一般式(6)中、X1及びX2はそれぞれ単結合、O、COO、OCO、NH、CONH又は炭素数1〜12のアルキレンを表し、G1及びG2はそれぞれ単結合、又は炭素数3〜12の芳香族環及び炭素数3〜12の脂環式環から選ばれる1〜3個の環を含む二価の基を表し、R7は水素、F、CN、OH又は炭素数1〜30のアルキル、炭素数1〜30のペルフルオロアルキル若しくは炭素数1〜30のアルコキシを表す。
ただし、X1、G1、X2、及びG2の全てが単結合である場合は、R7は炭素数3〜30のアルキル、炭素数3〜30のペルフルオロアルキル若しくは炭素数3〜30のアルコキシであり、G2が単結合でありX2が単結合でもなくアルキレンでもない場合は、R7は水素又はアルキルであり、またG1及びG2が共に単結合である場合は、X1、X2及びR7の炭素数の合計が3以上である。)
【化5】

(一般式(7)中、R8は水素又は炭素数1〜12のアルキルを表し、環A1はそれぞれ独立して1,4−フェニレン又は1,4−シクロへキシレンを表し、Z1及びZ2はそれぞれ独立して単結合、CH2、CH2CH2又はOを表し、rは0〜3の整数、sはそれぞれ独立して0〜5の整数、t1は0〜3の整数、t2は0〜3の整数を表す。また、前記1,4−フェニレン又は1,4−シクロへキシレンの任意の水素は炭素数1〜4のアルキルで置き換えられていてもよい。)
【請求項9】
前記側鎖を有するジアミンが、下記一般式(8−1)又は(8−2)で表されるジアミンであることを特徴とする請求項8に記載の配向膜。
【化6】

(一般式(8−1)及び(8−2)中、R9は炭素数1〜20のアルキルを表し、lは0又は2、m及びnはそれぞれ0又は1を表し、またZ3はO又はCH2を表す。)
【請求項10】
前記成分(I)が配向硬化した成分が、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン
酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、及び2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物から選ばれる一種類以上をモノマーとして含むポリイミドであることを特徴とする請求項3〜9のいずれか一項に記載の配向膜。
【請求項11】
前記成分(II)が光配向性を有さないことを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の配向膜。
【請求項12】
前記成分(II)が、可溶性ポリイミド、N−アルキル置換ポリアミック酸、又はポリエステル酸であることを特徴とする請求項11に記載の配向膜。
【請求項13】
前記成分(II)が、3,5−ジアミノ安息香酸、3,5−ジアミノベンズアミド、及び2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物から選ばれる一種類以上をモノマーとして含む可溶性ポリイミドであることを特徴とする請求項12に記載の配向膜。
【請求項14】
光の照射によって分子が一方向に配列する光配向性と熱硬化性とを有する成分(I)と、成分(I)を熱硬化させる熱に拠らずに膜を形成する成分(II)とを含有する組成物の膜において成分(I)を光配向させさらに熱硬化させてなる、前記成分(I)が配向硬化した成分と前記成分(II)とからなる配向膜であって、
前記成分(I)が配向硬化した成分が表面に偏在しており、
前記成分(I)が配向硬化した成分は、4,4’−ジアミノアゾベンゼンと、1−{4−[4−(4−n−ペンチルシクロヘキシル)シクロヘキシル]フェニルメチル}−3,5−ジアミノベンゼンとを含むジアミンと、ピロメリット酸二無水物及び1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物の一方又は両方を含むテトラカルボン酸二無水物との反応生成物から得られるポリイミドであり、
前記成分(II)は、N,N’−ジメチルアミノ−4,4’−ジフェニルメタンを含むジアミンと、ピロメリット酸二無水物及び1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物の一方又は両方を含むテトラカルボン酸二無水物との反応生成物であるN−アルキル置換ポリアミック酸であるか、又は、3,5−ジアミノ安息香酸、3,5−ジアミノベンズアミド、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、及び4,4’−ジアミノジフェニルメタンからなる群から選ばれる一以上を含むジアミンと、ピロメリット酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、及び2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物からなる群から選ばれる一以上を含むテトラカルボン酸二無水物との反応生成物から得られる可溶性ポリイミドであることを特徴とする配向膜。
【請求項15】
対向配置されている一対の基板と、該基板の対向している面の一方又は両方に形成されている液晶配向膜と、該液晶配向膜間に形成されている液晶層と、該液晶層中の液晶組成物に電圧を印加するための電極とを有する液晶表示素子において、
前記液晶配向膜の一方又は両方が請求項1〜14のいずれか一項に記載の配向膜であることを特徴とする液晶表示素子。
【請求項16】
主鎖に感光基を有する光配向性ポリアミック酸又はその誘導体と、可溶性ポリイミド、N−アルキル置換ポリアミック酸、又はポリエステル酸とを含有する配向膜用組成物。
【請求項17】
前記感光基がアゾ基及び三重結合の一方又は両方であることを特徴とする請求項16に記載の配向膜用組成物。
【請求項18】
前記光配向性ポリアミック酸又はその誘導体が、下記一般式(1−1)、(1−2)、及び(2−1)〜(2−4)で表される1種類以上のジアミンをモノマーとして含むことを特徴とする請求項17に記載の配向膜用組成物。
【化7】

(式中、R1〜R5はそれぞれ水素、フッ素、CF3又は炭素数1〜30の炭化水素基を表す。)
【請求項19】
前記光配向性ポリアミック酸又はその誘導体が、下記構造式(3−1)〜(3−5)及び(4−1)〜(4−4)の中から選ばれる1種類以上のジアミンをモノマーとして含むことを特徴とする請求項18に記載の配向膜用組成物。
【化8】

【請求項20】
前記光配向性ポリアミック酸又はその誘導体が、下記一般式(5)で表される側鎖を有するジアミンをモノマーとしてさらに含むことを特徴とする請求項16〜19のいずれか一項に記載の配向膜用組成物。
【化9】

(一般式(5)中、R6は下記一般式(6)及び(7)で表される基から選ばれる2価の有機基を表す。)
【化10】

(一般式(6)中、X1及びX2はそれぞれ単結合、O、COO、OCO、NH、CONH又は炭素数1〜12のアルキレンを表し、G1及びG2はそれぞれ単結合、又は炭素数3〜12の芳香族環及び炭素数3〜12の脂環式環から選ばれる1〜3個の環を含む二価の基を表し、R7は水素、F、CN、OH又は炭素数1〜30のアルキル、炭素数1〜30のペルフルオロアルキル若しくは炭素数1〜30のアルコキシを表す。
ただし、X1、G1、X2、及びG2の全てが単結合である場合は、R7は炭素数3〜30のアルキル、炭素数3〜30のペルフルオロアルキル若しくは炭素数3〜30のアルコキシであり、G2が単結合でありX2が単結合でもなくアルキレンでもない場合は、R7は水素又はアルキルであり、またG1及びG2が共に単結合である場合は、X1、X2及びR7の炭素数の合計が3以上である。)
【化11】

(一般式(7)中、R8は水素又は炭素数1〜12のアルキルを表し、環A1はそれぞれ独立して1,4−フェニレン又は1,4−シクロへキシレンを表し、Z1及びZ2はそれぞれ独立して単結合、CH2、CH2CH2又はOを表し、rは0〜3の整数、sはそれぞれ独立して0〜5の整数、t1は0〜3の整数、t2は0〜3の整数を表す。また、前記1,4−フェニレン又は1,4−シクロへキシレンの任意の水素は炭素数1〜4のアルキルで置き換えられていてもよい。)
【請求項21】
前記側鎖を有するジアミンが、下記一般式(8−1)又は(8−2)で表されるジアミンであることを特徴とする請求項20に記載の配向膜用組成物。
【化12】

(一般式(8−1)及び(8−2)中、R9は炭素数1〜20のアルキルを表し、lは0又は2、m及びnはそれぞれ0又は1を表し、またZ3はO又はCH2を表す。)
【請求項22】
前記光配向性ポリアミック酸又はその誘導体が、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、及び2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物から選ばれる一種類以上をモノマーとして含むことを特徴とする請求項16〜21のいずれか一項に記載の配向膜用組成物。
【請求項23】
前記成分(II)が、3,5−ジアミノ安息香酸、3,5−ジアミノベンズアミド、及び2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物から選ばれる一種類以上をモノマーとして含む可溶性ポリイミドであることを特徴とする請求項16〜22のいずれか一項に記載の配向膜用組成物。
【請求項24】
前記光配向性ポリアミック酸又はその誘導体が、4,4’−ジアミノアゾベンゼンと1
−{4−[4−(4−n−ペンチルシクロヘキシル)シクロヘキシル]フェニルメチル}−3,5−ジアミノベンゼンとを含むジアミンと、ピロメリット酸二無水物及び1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物の一方又は両方を含むテトラカルボン酸二無水物との反応生成物であり、
前記成分(II)は、N,N’−ジメチルアミノ−4,4’−ジフェニルメタンを含むジアミンと、ピロメリット酸二無水物及び1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物の一方又は両方を含むテトラカルボン酸二無水物との反応生成物であるN−アルキル置換ポリアミック酸であるか、又は、3,5−ジアミノ安息香酸、3,5−ジアミノベンズアミド、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、及び4,4’−ジアミノジフェニルメタンからなる群から選ばれる一以上を含むジアミンと、ピロメリット酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、及び2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物からなる群から選ばれる一以上を含むテトラカルボン酸二無水物との反応生成物から得られる可溶性ポリイミドであることを特徴とする請求項16〜23のいずれか一項に記載の配向膜用組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−173792(P2009−173792A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−14860(P2008−14860)
【出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【出願人】(596032100)チッソ石油化学株式会社 (309)
【Fターム(参考)】