説明

配水バルブ制御装置

【課題】配水バルブ制御装置に故障等の不具合が生じた際にも、需要家に対して良好な配水制御が可能となる配水バルブ制御装置を提供する。
【解決手段】配水バルブ制御装置100は、制御部1と、制御部1から目標開度S2及び正常信号S1が入力される信号入出力部2と、信号入出力部2に接続されたバルブ調節部3とを備える構成とする。そして、配水バルブ制御装置100に不具合が生じた場合には、信号入出力部2は、バルブ調節部3への正常信号S1の出力を停止して配水バルブ202の開度を該不具合発生時の開度に維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は配水バルブ制御装置に関し、より詳細には、上水道プラントで用いる配水バルブ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上水道プラントの浄水場で生成された水は、配水池から例えば配水管等の水供給路を介して需要家に届けられる。このような配水システムでは、水の供給状態を監視するための配水バルブ、圧力計及び流量計等の各種計測器が水供給路に設けられる。
【0003】
また、上水道プラントの配水システムには、需要家への配水圧力を一定にするために配水バルブ制御装置が設置される。そこで、従来、配水バルブ制御装置により良好でかつ安全な圧力制御を行うための種々の手法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1には、流動変動幅が大きい配管系における配水圧力の制御手法が提案されており、具体的には、配管の流量が変化した際に配水圧力を調整する各弁の開度を制御する手法が提案されている。なお、特許文献1で提案されている配水圧力の制御手法では、弁に指令を出す制御装置は、各弁のキャビテェーション係数比が均等に保たれるように、弁開度比を決定しながら圧力制御を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−81247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、従来、上水道プラントで用いられる配水バルブ制御装置では、良好な圧力制御を行うための様々な手法が提案されている。しかしながら、上記特許文献1等で提案されているような配水制御では、例えば配水バルブ制御装置に故障等の不具合が生じた際の配水制御については十分に考慮されていない。
【0007】
本発明は上記現状を鑑みなされたものであり、本発明の目的は、配水バルブ制御装置に故障等の不具合が生じた際にも、需要家に対して良好な配水制御が可能となる配水バルブ制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の配水バルブ制御装置は、制御部と、信号入出力部と、信号入出力部に接続されたバルブ調節部とを備える構成とし、各部の機能を次のようにする。制御部は、水供給路に設けられた配水バルブの開度を調整するための目標開度、及び、正常動作していることを示す正常信号を生成する。信号入出力部は、制御部から目標開度及び正常信号が入力される。また、バルブ開度調節部は、信号入出力部から正常信号が入力されている間は目標開度及び配水バルブの現在の開度を取得し、該取得した目標開度及び配水バルブの現在の開度に基づいて配水バルブを開閉制御する。そして、信号入出力部は、不具合発生時に、バルブ調節部への正常信号の出力を停止して配水バルブの開度を該不具合発生時の開度に維持する。
【発明の効果】
【0009】
上述のように、本発明の配水バルブ制御装置では、配水バルブ制御装置に不具合が生じた際には、配水バルブの開度を不具合発生時(現状)の開度に維持する。それゆえ、本発明によれば、配水バルブ制御装置に故障等の不具合が生じた際にも、需要家に継続して水を供給することができ、良好な配水制御が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る配水バルブ制御装置の概略構成図である。
【図2】配水バルブ制御装置の動作例1〜3の処理手順を示すフローチャートである。
【図3】配水バルブ制御装置の動作例4の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】配水バルブ制御装置の動作例5の処理手順を示すフローチャートである。
【図5】比較例の配水バルブ制御装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る配水バルブ制御装置の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。ただし、本発明は以下に示す例に限定されない。
【0012】
まず、本発明の一実施形態に係る配水バルブ制御装置の構成を説明する前に、配水バルブ制御装置に故障等の不具合が生じた場合における配水制御の問題点をより具体的に説明する。図5に、その問題点の説明に用いる配水バルブ制御装置の一構成例(以下、比較例という)を示す。なお、図5は、比較例の配水バルブ制御装置300の概略ブロック構成図である。
【0013】
比較例の配水バルブ制御装置300は、プログラマブルコントローラ1と、入出力装置302と、バルブ開度調節計3とを備える。
【0014】
プログラマブルコントローラ1は、CPU(Central Processing Unit)ユニット11と、CPUユニット11に接続されたI/O(Input/Output)通信ユニット12と、これらのユニットを駆動する電源ユニット13とを有する。
【0015】
入出力装置302は、I/O通信ユニット21と、アナログ信号出力ユニット303と、第1アナログ信号入力ユニット24と、第2アナログ信号入力ユニット25と、第3アナログ信号入力ユニット26と、これらのユニットを駆動する電源ユニット28とを有する。
【0016】
なお、比較例では、I/O通信ユニット21と、アナログ信号出力ユニット303、第1アナログ信号入力ユニット24、第2アナログ信号入力ユニット25及び第3アナログ信号入力ユニット26とはバス27を介して電気的に接続される。また、第1アナログ信号入力ユニット24、第2アナログ信号入力ユニット25及び第3アナログ信号入力ユニット26は、配水池201から需要家205へ向かう水供給路Pの途中に設けられた配水バルブ202、圧力計203及び流量計204に電気的にそれぞれ接続される。
【0017】
さらに、比較例では、プログラマブルコントローラ1のI/O通信ユニット12と、入出力装置302のI/O通信ユニット21とが通信ケーブル20で接続される。なお、プログラマブルコントローラ1のI/O通信ユニット12は、ケーブル304によりバルブ開度調節計3に接続される。また、バルブ開度調節計3は、入出力装置302のアナログ信号出力ユニット303及び配水バルブ202と電気的に接続される。
【0018】
比較例の配水バルブ制御装置300では、バルブ開度調節計3に、プログラマブルコントローラ1が正常であることを示す信号(以下、CPU正常信号S1という)が入力される。また、CPU正常信号S1が入力されている間、バルブ開度調節計3はアナログ信号出力ユニット303から配水バルブ開度の目標値(目標開度)に対応する所定電圧値の電圧信号(以下、配水バルブ目標開度S2という)を取得する。そして、バルブ開度調節計3は、取得した配水バルブ目標開度S2に基づいて配水バルブ202を開閉制御する。
【0019】
具体的には、アナログ信号出力ユニット303から例えば0[V]の配水バルブ目標開度S2が出力された際には、バルブ開度調節計3は配水バルブ202を閉じる制御を行う。一方、アナログ信号出力ユニット303から例えば1〜5[V]の配水バルブ目標開度S2が出力された際には、バルブ開度調節計3は、取得した配水バルブ目標開度S2に対応する開度で配水バルブ202を開ける制御を行う。
【0020】
なお、比較例では、配水バルブ制御装置300に不具合が生じた際には、アナログ信号出力ユニット303は、リセットモードで動作し、例えば0[V]の配水バルブ目標開度S2を出力するものとする。また、比較例では、プログラマブルコントローラ1及び入出力装置302間の通信は、プログラマブルコントローラ1に故障が発生した場合や、電源ユニット13が電源断した場合には停止される。ただし、比較例では、CPUユニット11を手動で停止した場合には、プログラマブルコントローラ1及び入出力装置302間の通信は継続されるものとする。
【0021】
比較例の配水バルブ制御装置300における配水圧力の制御動作は次の通りである。まず、配水バルブ制御装置300は、配水バルブ202の開度(配水バルブ開度S4)、圧力計の計測値(配水圧力S5)及び流量計の計測値(配水流量S6)のアナログ信号を取得する。次いで、プログラマブルコントローラ1は、取得した各種アナログ信号に基づいて配水圧力を適切に制御するための演算を行い、配水バルブ目標開度S2を算出する。次いで、プログラマブルコントローラ1は、算出した配水バルブ目標開度S2を、通信ケーブル20を介して入出力装置302内のアナログ信号出力ユニット303に出力する。
【0022】
次いで、プログラマブルコントローラ1からケーブル304を介してCPU正常信号S1がバルブ開度調節計3に入力されている場合(プログラマブルコントローラ1が正常動作している場合)、バルブ開度調節計3は、配水バルブ目標開度S2をアナログ信号出力ユニット303から読み込む。そして、バルブ開度調節計3は、配水バルブ目標開度S2と、配水バルブ202から入力される配水バルブ開度S4とに基づいて配水バルブ202に開/閉指令信号S3を出力し、配水バルブ202の開度を制御する。
【0023】
上述のようにして動作する配水バルブ制御装置300において、例えば、入出力装置302の電源ユニット28が電源断した場合には、プログラマブルコントローラ1及び入出力装置302間のI/O通信が停止する。
【0024】
この場合、アナログ信号出力ユニット303は、リセットモードで動作するので、例えば0[V]の配水バルブ目標開度S2をバルブ開度調節計3に出力する。また、この際、プログラマブルコントローラ1は正常に動作しているので、CPU正常信号S1がバルブ開度調節計3に入力された状態(ON状態)は維持される。その結果、バルブ開度調節計3は例えば0[V]の配水バルブ目標開度S2を取得して配水バルブ202を閉める旨の指令信号を配水バルブ202に出力する。すなわち、比較例では、配水バルブ制御装置300に不具合が生じてプログラマブルコントローラ1及び入出力装置302間のI/O通信が停止すると、需要家205への水供給が停止し(断水が発生し)、需要家205に大きな影響を与える。
【0025】
また、比較例の配水バルブ制御装置300では、図5に示すように、プログラマブルコントローラ1とバルブ開度調節計3との間を、CPU正常信号S1を通電するためのケーブル304で接続する。それゆえ、プログラマブルコントローラ1とバルブ開度調節計3との間の距離が長くなると、ケーブル304の長さも長くなる。この場合、ケーブル304での損失が大きくなり、十分な振幅のCPU正常信号S1をバルブ開度調節計3に印加することが困難になり誤動作する可能性もある。すなわち、比較例の配水バルブ制御装置300の構成は、プログラマブルコントローラ1及びバルブ開度調節計3間の距離に制約を受ける。
【0026】
そこで、以下に説明する本発明に係る配水バルブ制御装置の一実施形態では、配水バルブ制御装置に上述のような不具合が生じた際にも需要家205への水供給を維持できる配水バルブ制御装置を説明する。さらに、以下に説明する実施形態では、上述したプログラマブルコントローラ1及びバルブ開度調節計3間の距離の制約に関する問題も軽減可能な配水バルブ制御装置を説明する。
【0027】
[配水バルブ制御装置の構成]
図1に、本発明の一実施形態に係る配水バルブ制御装置の概略構成を示す。なお、図1において、上述した図5に示す配水バルブ制御装置300(比較例)と同じ構成には同じ符号を付して示す。なお、本実施形態の配水バルブ制御装置100は、上水道プラントの配水監視システム(不図示)に組み込まれている。
【0028】
本実施形態の配水監視システムでは、配水バルブ制御装置100は、図1に示すように、配水池201から需要家205へ向かう水供給路Pの途中に設けられた配水バルブ202、圧力計203及び流量計204に電気的に接続される。
【0029】
なお、配水バルブ202、圧力計203及び流量計204は、それぞれ配水バルブ開度S4(開度)、配水圧力S5(圧力)及び配水流量S6(流量)の現状を監視するために設けられる。そして、配水バルブ202、圧力計203及び流量計204はそれぞれ計測した配水バルブ開度S4、配水圧力S5及び配水流量S6を配水バルブ制御装置100に出力する。
【0030】
また、図1には示さないが、配水バルブ202、圧力計203及び流量計204でそれぞれ計測された配水バルブ開度S4、配水圧力S5及び配水流量S6等の情報は、配水監視システムの監視系に入力される。そして、その監視系に入力された各情報はディスプレイ(不図示)に表示される。また、本実施形態では、配水監視システムはオペレータにより操作可能な操作入力部(不図示)を備え、その操作入力部に対するオペレータの所定操作により、CPUユニット11を手動で停止することができる。
【0031】
配水バルブ制御装置100は、プログラマブルコントローラ1(制御部)と、入出力装置2(信号入出力部)と、バルブ開度調節計3(バルブ調節部)とを備える。
【0032】
プログラマブルコントローラ1は、CPUユニット11と、I/O通信ユニット12と、電源ユニット13とを有する。なお、CPUユニット11は、I/O通信ユニット12と電気的に接続され、I/O通信ユニット12は、通信ケーブル20を介して入出力装置2の後述するI/O通信ユニット21に接続される。また、図1には示さないが、電源ユニット13は、プログラマブルコントローラ1を構成する各ユニットに電気的に接続される。
【0033】
CPUユニット11は、演算処理装置および制御装置として機能し、配水バルブ制御装置100内の各部の動作全般を制御する。例えば、本実施形態では、CPUユニット11は、入出力装置2から入力される配水バルブ開度S4、配水圧力S5及び配水流量S6に基づいて配水圧力を適切に制御するための演算を行い、配水バルブ目標開度S2(目標開度)を算出する。
【0034】
なお、本実施形態では、配水バルブ目標開度S2として電圧信号を用い、配水バルブ目標開度S2が例えば0[V]の電圧信号である場合には配水バルブ202を閉じる制御を行う。一方、配水バルブ目標開度S2が例えば1〜5[V]である場合には、その配水バルブ目標開度S2に対応する配水バルブ開度で配水バルブ202が開くように制御する。
【0035】
ただし、配水バルブ目標開度S2の値(電圧値)と配水バルブ202の開閉制御との関係はこの例に限定されず、任意に設定することができる。また、本実施形態では、配水バルブ目標開度S2の信号として電圧信号を用いる例を説明するが、本発明はこれに限定されず、配水バルブ目標開度S2として電流信号を用いてもよい。この場合、例えば、配水バルブ202を閉じる際の配水バルブ目標開度S2を0[mA]とし、配水バルブ202を開ける際の配水バルブ目標開度S2を4〜20[mA]程度とすることができる。
【0036】
さらに、CPUユニット11は、CPU正常信号S1(正常信号)を生成する。そして、CPUユニット11が正常動作している間は、CPUユニット11はCPU正常信号S1を出力し続ける。なお、本実施形態では、CPU正常信号S1として所定電圧値の電圧信号を用いる。
【0037】
I/O通信ユニット12は、プログラマブルコントローラ1及び入出力装置2間で所定の信号(情報)を送受信(通信)する際に必要な通信デバイス等を含む通信インタフェースである。また、電源ユニット13は、プログラマブルコントローラ1を構成する各ユニットの駆動電源である。
【0038】
なお、本実施形態では、プログラマブルコントローラ1の故障や電源ユニット13の電源断等によりCPUユニット11が停止した場合には、プログラマブルコントローラ1及び入出力装置2間の通信動作も停止する。また、本実施形態では、CPUユニット11を手動で停止した場合にも、プログラマブルコントローラ1及び入出力装置2間の通信を停止する。すなわち、本実施形態では、プログラマブルコントローラ1及び入出力装置2間の通信動作が、CPUユニット11の動作と連携するように構成する。
【0039】
入出力装置2は、I/O通信ユニット21と、デジタル信号出力ユニット22と、アナログ信号出力ユニット23と、第1アナログ信号入力ユニット24と、第2アナログ信号入力ユニット25と、第3アナログ信号入力ユニット26と、電源ユニット28とを有する。なお、各ユニットの接続関係は次の通りである。
【0040】
I/O通信ユニット21は、通信ケーブル20を介してプログラマブルコントローラ1のI/O通信ユニット12に接続される。また、デジタル信号出力ユニット22及びアナログ信号出力ユニット23の入力端子は、バス27を介してI/O通信ユニット21に接続され、デジタル信号出力ユニット22及びアナログ信号出力ユニット23の出力端子は、バルブ開度調節計3に接続される。なお、デジタル信号出力ユニット22の出力端子は、ケーブル30を介してバルブ開度調節計3に接続される。さらに、第1アナログ信号入力ユニット24〜第3アナログ信号入力ユニット26の入力端子は、それぞれ配水バルブ202、圧力計203及び流量計204に接続される。また、第1アナログ信号入力ユニット24〜第3アナログ信号入力ユニット26の出力端子は、バス27を介してI/O通信ユニット21に接続される。なお、図1には示さないが、電源ユニット28は、入出力装置2を構成する各ユニットに電気的に接続される。
【0041】
I/O通信ユニット21は、プログラマブルコントローラ1及び入出力装置2間で所定の信号を送受信する際に必要な通信デバイス等を含む通信インタフェースである。
【0042】
デジタル信号出力ユニット22には、CPUユニット11で生成されたCPU正常信号S1が、プログラマブルコントローラ1から通信ケーブル20、I/O通信ユニット21及びバス27を介して入力される。そして、デジタル信号出力ユニット22は、入力されたCPU正常信号S1をバルブ開度調節計3に出力する。すなわち、本実施形態では、CPU正常信号S1を入出力装置2内のデジタル信号出力ユニット22を介して間接的にバルブ開度調節計3に入力する。
【0043】
また、本実施形態では、配水バルブ制御装置100に後述するような故障等の不具合が生じた場合、デジタル信号出力ユニット22は、CPU正常信号S1の出力を停止する。すなわち、本実施形態では、配水バルブ制御装置100に不具合が生じた場合、デジタル信号出力ユニット22は、リセットモードで動作する。
【0044】
アナログ信号出力ユニット23には、CPUユニット11で算出された配水バルブ目標開度S2が、プログラマブルコントローラ1から通信ケーブル20、I/O通信ユニット21及びバス27を介して入力される。そして、アナログ信号出力ユニット23は、入力された配水バルブ目標開度S2をバルブ開度調節計3に出力する。
【0045】
また、本実施形態では、配水バルブ制御装置100に後述するような故障等の不具合が生じた場合、アナログ信号出力ユニット23は、出力する配水バルブ目標開度S2を不具合発生時の配水バルブ目標開度S2に維持する。すなわち、本実施形態では、配水バルブ制御装置100に不具合が生じた場合、アナログ信号出力ユニット23は、ホールドモードで動作する。
【0046】
第1アナログ信号入力ユニット24は、配水バルブ202で計測される現在の配水バルブ開度S4(アナログ信号)を取得する。そして、第1アナログ信号入力ユニット24は、取得した配水バルブ開度S4をバス27、I/O通信ユニット21及び通信ケーブル20を介してプログラマブルコントローラ1に出力する。なお、配水バルブ202で計測される現在の配水バルブ開度S4は、図1に示すように、バルブ開度調節計3にも入力される。
【0047】
第2アナログ信号入力ユニット25は、圧力計203で計測される現在の配水圧力S5(アナログ信号)を取得する。そして、第2アナログ信号入力ユニット25は、取得した配水圧力S5をバス27、I/O通信ユニット21及び通信ケーブル20を介してプログラマブルコントローラ1に出力する。
【0048】
第3アナログ信号入力ユニット26は、流量計204で計測される現在の配水流量S6(アナログ信号)を取得する。そして、第3アナログ信号入力ユニット26は、取得した配水流量S6をバス27、I/O通信ユニット21及び通信ケーブル20を介してプログラマブルコントローラ1に出力する。
【0049】
バルブ開度調節計3は、入出力装置2から入力されるCPU正常信号S1及び配水バルブ目標開度S2、並びに、配水バルブ202から入力される配水バルブ開度S4に基づいて、配水バルブ202に開/閉指令信号S3を出力する。本実施形態では、バルブ開度調節計3の誤動作を防止するために、バルブ開度調節計3の配水バルブ目標開度S2の取り込み動作を、CPU正常信号S1を用いて制御する。
【0050】
具体的には、バルブ開度調節計3は、CPU正常信号S1が入力されている状態(ON状態)では配水バルブ目標開度S2を取得する。そして、バルブ開度調節計3は、取得した配水バルブ目標開度S2及び配水バルブ開度S4に基づいて、配水バルブ202の開度が配水バルブ目標開度S2となるように配水バルブ202に開/閉指令信号S3を出力する。一方、CPU正常信号S1が停止された際(OFF状態)には、入出力装置2からの配水バルブ目標開度S2の取得を停止する。この場合、配水バルブ202の配水バルブ開度は、CPU正常信号S1の停止時の配水バルブ開度に維持される。
【0051】
[配水バルブ制御装置の動作]
次に、本実施形態の配水バルブ制御装置100の動作を説明する。最初に、正常時における配水バルブ制御装置100の動作を説明する。
【0052】
まず、第1アナログ信号入力ユニット24、第2アナログ信号入力ユニット25及び第3アナログ信号入力ユニット26は、水供給路Pにおける現在の配水バルブ開度S4、配水圧力S5及び配水流量S6をそれぞれ取得する。そして、第1アナログ信号入力ユニット24〜第3アナログ信号入力ユニット26は、取得した配水バルブ開度S4、配水圧力S5及び配水流量S6をバス27、入出力装置2のI/O通信ユニット21、通信ケーブル20、及び、プログラマブルコントローラ1のI/O通信ユニット12を介してCPUユニット11に出力する。
【0053】
次いで、CPUユニット11は、入出力装置2から入力された配水バルブ開度S4、配水圧力S5及び配水流量S6に基づいて配水圧力を適切に制御するための演算を行い、配水バルブ目標開度S2を算出する。なお、配水バルブ目標開度S2は、配水圧力S5及び配水流量S6に基づいて算出することも可能である。しかしながら、配水バルブ202は、その配水バルブ開度によって流量特性が異なる場合がある。それゆえ、本実施形態では、配水バルブ開度の違いによって生じる流量特性の差を補正するために、配水バルブ開度S4を用いる。
【0054】
次いで、CPUユニット11は、算出した配水バルブ目標開度S2をプログラマブルコントローラ1のI/O通信ユニット12、通信ケーブル20、入出力装置2のI/O通信ユニット21、及び、バス27を介してアナログ信号出力ユニット23に出力する。そして、アナログ信号出力ユニット23は、入力された配水バルブ目標開度S2をバルブ開度調節計3に出力する。
【0055】
また、この際、CPUユニット11は、生成したCPU正常信号S1をプログラマブルコントローラ1のI/O通信ユニット12、通信ケーブル20、入出力装置2のI/O通信ユニット21、及び、バス27を介してデジタル信号出力ユニット22に出力する。そして、デジタル信号出力ユニット22は、入力されたCPU正常信号S1をバルブ開度調節計3に出力する。
【0056】
次いで、バルブ開度調節計3は、入出力装置2から入力されるCPU正常信号S1及び配水バルブ目標開度S2、並びに、配水バルブ202から入力される現在の配水バルブ開度S4に基づいて配水バルブ202に開/閉指令信号S3を出力する。
【0057】
具体的には、配水バルブ制御装置100の正常動作時には、CPU正常信号S1がバルブ開度調節計3に入力されているので(ON状態)、まず、バルブ開度調節計3は、アナログ信号出力ユニット23から配水バルブ目標開度S2を取り込む。次いで、バルブ開度調節計3は、配水バルブ目標開度S2及び配水バルブ開度S4に基づいて配水バルブ202に開/閉指令信号S3を出力する。正常動作時には、配水バルブ制御装置100は、このようにして配水バルブの開閉制御を行い、配水池201から需要家205への水供給路Pの配水圧力を制御する。
【0058】
次に、配水バルブ制御装置100に何らかの不具合が生じた場合の配水バルブ制御装置100の動作を説明する。なお、ここでいう「不具合」には、配水バルブ制御装置100内の各装置部に故障等が生じて停止した場合だけでなく、例えばオペレータがCPUユニット11を手動停止した場合も含む。
【0059】
本実施形態では、配水バルブ制御装置100に不具合が生じた場合、バルブ開度調節計3に入力するCPU正常信号S1を停止する。これにより、配水バルブ制御装置100に何らかの不具合が生じた場合には、配水バルブ202の配水バルブ開度は不具合発生時の配水バルブ開度に維持され、断水を防止することができる。
【0060】
また、本実施形態では、配水バルブ制御装置100に不具合が生じた場合、より確実に、配水バルブ202の配水バルブ開度を不具合発生時の配水バルブ開度に維持するために、アナログ信号出力ユニット23をホールドモードで動作させる。すなわち、本実施形態では、配水バルブ制御装置100に不具合が生じた場合、バルブ開度調節計3に入力する配水バルブ目標開度S2を不具合発生時の値に維持する。
【0061】
配水バルブ制御装置100に何らかの不具合が生じた場合にアナログ信号出力ユニット23をリセットモードで動作させても、配水バルブ目標開度S2がリセットされる前にCPU正常信号S1を停止すれば、配水バルブ202の配水バルブ開度は不具合発生時の配水バルブ開度に維持され、断水を防止することができる。しかしながら、何らかの原因で、アナログ信号出力ユニット23のリセット動作のタイミングがCPU正常信号S1の停止動作のそれより早くなった場合、配水バルブ202の配水バルブ開度S4がリセットされ、配水バルブ202が閉じることになる。この場合、断水が発生する。
【0062】
本実施形態では、上述のような問題を解消して、断水をより確実に防止するために、配水バルブ制御装置100に何らかの不具合が生じた場合にはアナログ信号出力ユニット23をホールドモードで動作させる。この場合、アナログ信号出力ユニット23の不具合発生時の動作タイミングがCPU正常信号S1の停止動作のそれより早くなっても、バルブ開度調節計3には不具合発生時の配水バルブ目標開度S2が入力されるので、配水バルブ202の配水バルブ開度は不具合発生時の配水バルブ開度に維持される。
【0063】
ここで、配水バルブ制御装置100で発生しうる各種不具合例を挙げ、各不具合例発生時の配水バルブ制御装置100の動作を、図面を参照しながらより具体的に説明する。
【0064】
(1)動作例1
動作例1では、プログラマブルコントローラ1の電源ユニット13に電源断が発生した際の配水バルブ制御装置100の動作を、図2を参照しながら説明する。なお、図2は、動作例1、並びに、後述する動作例2及び3における配水バルブ制御装置100の圧力制御の処理手順を示すフローチャートである。
【0065】
プログラマブルコントローラ1の電源ユニット13に電源断が発生する(ステップS11)と、CPUユニット11が停止する。この際、配水バルブ制御装置100は、CPUユニット11の停止動作に連携してプログラマブルコントローラ1及び入出力装置2間の通信動作を停止する(ステップS12)。
【0066】
次いで、アナログ信号出力ユニット23は、ホールドモードで動作し、配水バルブ目標開度S2を不具合発生時の値に維持(現状維持)する(ステップS13)。また、この際、デジタル信号出力ユニット22は、リセットモードで動作し、CPU正常信号S1の出力を停止(OFF)する(ステップS14)。なお、ステップS13及びS14の処理は、並行して(同時に)実施してもよいし、一方の処理ステップを実施した後に他方の処理ステップを実施してもよい。
【0067】
次いで、バルブ開度調節計3は、配水バルブ目標開度S2の取り込みを停止する(ステップS15)。この結果、配水バルブ202の配水バルブ開度は不具合発生時の配水バルブ開度に維持される。
【0068】
プログラマブルコントローラ1の電源ユニット13に電源断が発生した場合には、このようにして配水バルブ202の開閉制御を行う。
【0069】
(2)動作例2
動作例2では、プログラマブルコントローラ1のCPUユニット11の故障停止時における配水バルブ制御装置100の動作を、図2を参照しながら説明する。
【0070】
CPUユニット11が故障停止する(ステップS21)と、配水バルブ制御装置100は、CPUユニット11の停止動作に連携してプログラマブルコントローラ1及び入出力装置2間の通信動作を停止する(ステップS12)。その後は、上記動作例1と同様にして動作する。それゆえ、動作例2においても、ステップS15で配水バルブ目標開度S2の取り込みが停止され、配水バルブ202の配水バルブ開度は不具合発生時の配水バルブ開度に維持される。
【0071】
(3)動作例3
動作例3では、通信ケーブル20の断線時における配水バルブ制御装置100の動作を、図2を参照しながら説明する。
【0072】
通信ケーブル20が断線する(ステップS31)と、プログラマブルコントローラ1及び入出力装置2間の通信動作が停止する(ステップS12)。その後は、上記動作例1と同様にして動作する。それゆえ、動作例3においても、ステップS15で配水バルブ目標開度S2の取り込みが停止され、配水バルブ202の配水バルブ開度は不具合発生時の配水バルブ開度に維持される。
【0073】
(4)動作例4
動作例4では、入出力装置2の電源ユニット28に電源断が発生した際の配水バルブ制御装置100の動作を、図3を参照しながら説明する。なお、図3は、動作例4における配水バルブ制御装置100の圧力制御の処理手順を示すフローチャートである。
【0074】
入出力装置2の電源ユニット28に電源断が発生する(ステップS41)と、デジタル信号出力ユニット22及びアナログ信号出力ユニット23が停止する。その結果、入出力装置2は、バルブ開度調節計3への配水バルブ目標開度S2及びCPU正常信号S1の出力を停止する(ステップS42)。
【0075】
次いで、バルブ開度調節計3は、CPU正常信号S1がOFFするので、配水バルブ目標開度S2の取り込みを停止する(ステップS43)。この結果、配水バルブ202の配水バルブ開度は不具合発生時の配水バルブ開度に維持される。
【0076】
入出力装置2の電源ユニット28に電源断が発生した場合には、このようにして配水バルブ202の開閉制御を行う。
【0077】
(5)動作例5
動作例5では、CPUユニット11を手動停止させた際の配水バルブ制御装置100の動作を、図4を参照しながら説明する。なお、図4は、動作例5における配水バルブ制御装置100の圧力制御の処理手順を示すフローチャートである。
【0078】
オペレータがCPUユニット11を手動停止した(ステップS51)場合、配水バルブ制御装置100は、CPUユニット11の停止動作に連携してプログラマブルコントローラ1及び入出力装置2間の通信動作を停止する(ステップS52)。
【0079】
次いで、アナログ信号出力ユニット23は、ホールドモードで動作し、配水バルブ目標開度S2をCPUユニット11の停止時における値に維持する(ステップS53)。また、この際、デジタル信号出力ユニット22は、リセットモードで動作し、CPU正常信号S1の出力を停止する(ステップS54)。なお、ステップS53及びS54の処理は、並行して(同時に)実施してもよいし、一方の処理ステップを実施した後に他方の処理ステップを実施してもよい。
【0080】
次いで、バルブ開度調節計3は、配水バルブ目標開度S2の取り込みを停止する(ステップS55)。この結果、動作例5においても、上記動作例1〜4と同様に、配水バルブ202の配水バルブ開度はCPUユニット11の手動停止時の配水バルブ開度に維持される。
【0081】
オペレータがCPUユニット11を手動停止した場合には、このようにして配水バルブ202の開閉制御を行う。
【0082】
上記動作例1〜5で説明したように、本実施形態の配水バルブ制御装置100では、不具合が生じた場合、バルブ開度調節計3へのCPU正常信号S1の出力を停止(OFF)し、配水バルブ202の配水バルブ開度を不具合発生時の配水バルブ開度に維持する。それゆえ、本実施形態では、配水バルブ制御装置100に不具合が生じた場合であっても、断水を防止することができ、需要家205への水供給を維持することができる。
【0083】
また、本実施形態では、上述のように、配水バルブ制御装置100に不具合が生じた場合、アナログ信号出力ユニット23をホールドモードで動作させるので、より確実に、断水を防止することができる。
【0084】
さらに、本実施形態の配水バルブ制御装置100では、CPU正常信号S1を伝達するためのケーブル30は入出力装置2及びバルブ開度調節計3間に設けられる。それゆえ、上記比較例の配水バルブ制御装置300に比べてケーブル30の長さを短くすることができ、上述したプログラマブルコントローラ1及びバルブ開度調節計3間の距離の制約に関する上記問題を軽減することができる。
【0085】
上記実施形態では、配水バルブ制御装置100に不具合が生じた際に、入出力装置2内のアナログ信号出力ユニット23をホールドモードで動作させる例を説明したが、本発明はこれに限定されない。配水バルブ制御装置100に不具合が生じた際に、入出力装置2内のアナログ信号出力ユニット23をリセットモードで動作させてもよい。
【0086】
ただし、この場合、上述したように、デジタル信号出力ユニット22におけるCPU正常信号S1の停止動作がアナログ信号出力ユニット23のリセット動作より必ず先に行われるように、配水バルブ制御装置100を構成する。これにより、アナログ信号出力ユニット23から出力される配水バルブ目標開度S2がリセットされる前に、バルブ開度調節計3の配水バルブ目標開度S2の取り込み動作が必ず停止されるので、配水バルブ202の配水バルブ開度を現状の配水バルブ開度に維持することができる。
【0087】
また、上記実施形態では、プログラマブルコントローラ1と入出力装置2との間を通信ケーブル20で接続する例を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、通信手法に応じて、通信ケーブルの代わりに電気ケーブルを用いてもよい。ただし、通常、通信ケーブルとしてはシールド機能付きケーブルが用いられるので、耐ノイズ性の向上という観点では、上記実施形態のように、プログラマブルコントローラ1と入出力装置2との間を通信ケーブル20で接続することが好ましい。
【符号の説明】
【0088】
1…プログラマブルコントローラ、2…入出力装置、3…バルブ開度調節計、11…CPUユニット、12,21…I/O通信ユニット、13,28…電源ユニット、20…通信ケーブル、22…デジタル信号出力ユニット、23…アナログ信号出力ユニット、24…第1アナログ信号入力ユニット、25…第2アナログ信号入力ユニット、26…第3アナログ信号入力ユニット、27…バス、30…ケーブル、100…配水バルブ制御装置、201…配水池、202…配水バルブ、203…圧力計、204…流量計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水供給路に設けられた配水バルブの開度を調整するための目標開度、及び、正常動作していることを示す正常信号を生成する制御部と、
前記制御部から前記目標開度及び前記正常信号が入力される信号入出力部と、
前記信号入出力部に接続され、前記信号入出力部から前記正常信号が入力されている間は前記目標開度及び前記配水バルブの現在の開度を取得し、該取得した前記目標開度及び前記配水バルブの現在の開度に基づいて前記配水バルブを開閉制御するバルブ調節部とを備え、
前記信号入出力部は、不具合発生時に、前記バルブ調節部への前記正常信号の出力を停止して前記配水バルブの開度を該不具合発生時の開度に維持することを特徴とする配水バルブ制御装置。
【請求項2】
前記信号入出力部は、前記不具合発生時に、該不具合発生時の前記目標開度を前記バルブ調節部に出力することを特徴とする請求項1に記載の配水バルブ制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記水供給路に設けられた配水バルブ、圧力計及び流量計でそれぞれ計測される開度、圧力及び流量の情報を、前記信号入出力部を介して取得し、該取得した情報に基づいて前記目標開度を算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の配水バルブ制御装置。
【請求項4】
さらに、前記制御部と前記入出力部とを接続する通信ケーブルを備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の配水バルブ制御装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−58814(P2012−58814A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−198756(P2010−198756)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】