説明

配管支持装置

【課題】空調装置に接続される配管の振動を減衰させる配管支持装置を低コストで実現する。
【解決手段】空調装置1に接続される配管3を弾性的に支持する配管支持装置であって、配管3が、屈曲部3aと、屈曲部3aの一方の側から延びる第1部分3bと、屈曲部3aの他方の側から延びて空調装置1に接続される第2部分3cと、を有していて、該配管支持装置が、空調装置1の筐体5に固定されて配管3を弾性的に支持する振動減衰部材11を備えており、振動減衰部材11は、配管3から力を受けたときの弾性変形の方向が配管3の第1部分3bの延びる方向と非平行であることを特徴とする配管支持装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置に接続される配管を弾性的に支持する配管支持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用空調装置の室内空調ユニットは、その内部にヒータコア及びエバポレータなどの熱交換器を収容し、また通常は車室内最前部の車両計器盤の内側に配置されている。それら熱交換器には、エンジン室に配置されたエンジン、冷却水ラジエター、コンデンサ、又は圧縮機等との間で冷媒又は温水を循環させる配管が接続されている。配管は、熱交換器に接続されて主に室内側を走る室内側配管と、エンジン室に配置された前述の構成要素に接続されてエンジン室内を走るエンジン室側配管とを有している。
【0003】
室内空調ユニットに接続されるそのような配管は、エンジンの振動あるいは車両走行に基づく振動を受けるので、その振動を室内空調ユニットにできるだけ伝えないことが、車室内の静粛性を向上させるために求められている。例えば特許文献1に記載の発明がこの問題に取り組んでおり、そこでは、ヒータコアに接続される温水配管レイアウトにおいて、エンジンで発生した振動が減衰されてヒータコアへ伝達されるようにするために、エンジン室側配管を分割し、その分割した配管端部の連結部位を車体側に支持させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−248926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の構成によると、エンジン室側配管を分割すること、及び車体側で配管を支持することから、組立工数の増大及び部品数の増加を招き、従って生産コストの上昇を招いていた。
【0006】
本発明は前述した従来技術の課題に鑑みてなされたもので、その目的は、空調装置に接続される配管の振動を減衰させる配管支持装置を低コストで実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明の請求項1に記載の発明は、空調装置(1)に接続される配管(3)を弾性的に支持する配管支持装置であって、配管(3)が、屈曲部(3a)と、屈曲部(3a)の一方の側から延びる第1部分(3b)と、屈曲部(3a)の他方の側から延びて空調装置(1)に接続される第2部分(3c)と、を有していて、該配管支持装置が、空調装置(1)の筐体(5)に固定されて配管(3)を弾性的に支持する振動減衰部材(11)を備えており、振動減衰部材(11)は、配管(3)から力を受けたときの弾性変形の方向が配管(3)の第1部分(3b)の延びる方向と非平行であることを特徴とする配管支持装置を提供する。
【0008】
これによれば、配管支持装置が振動減衰部材(11)だけから構成されるので部品コストを低く抑えられることができ、また、振動減衰部材(11)は空調装置(1)の筐体(5)に固定されるので、車体側に固定される場合に比較すると、組立を容易に行うことが可能になる。さらに、振動減衰部材(11)の弾性変形の方向が配管(3)の第1部分(3b)の延びる方向とは一致しないので、振動減衰部材(11)の配置スペースを設計的に確保しやすく、その結果振動減衰部材(11)の弾性変形量を大きく設定することが可能になり、バラつきの少ない振動減衰効果を得ることが可能になる。
【0009】
本発明の請求項2に記載の発明では、振動減衰部材(11)は、配管(3)の屈曲部(3a)において配管(3)を支持することを特徴とする。これによれば、配管の屈曲部(3a)が所定の曲率で湾曲することにより生じるスペースを振動減衰部材(11)の弾性変形のためのスペースとして利用できるので、さらに大きな弾性変形量を振動減衰部材(11)に設定することが可能になる。
【0010】
本発明の請求項3に記載の発明では、振動減衰部材(11)が、配管(3)の第2部分(3c)において配管(3)を支持することを特徴とする。これによれば、配管の外周の湾曲により生じるスペースを振動減衰部材(11)の弾性変形のためのスペースとして利用できるので、さらに大きな弾性変形量を振動減衰部材(11)に設定することが可能になる。
【0011】
本発明の請求項4に記載の発明では、振動減衰部材(11)が板ばねからなることを特徴とする。これにより、振動減衰部材(11)の部品コストを低下させることが可能になる。
【0012】
本発明の請求項5に記載の発明では、振動減衰部材(11)の板ばねが空調装置(1)の筐体(5)に固定される代わりに係止されてよい。これにより、振動減衰部材(11)の固定をネジ等を使って行う場合に比べて短時間に行えるので組立工数を低下させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態による配管支持装置の正面図である。
【図2】前記配管支持装置の振動のイナータンスを示す図である。
【図3】第2実施形態による配管支持装置の正面図である。
【図4】第1実施形態の変形例による配管支持装置の正面図である。
【図5】前記変形例による配管支持装置の平面図である。
【図6】関連技術による配管支持装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明による実施形態を説明する前に、本発明の基礎となった関連技術による配管支持装置6について、それが適用される車両用空調装置の室内空調ユニット及び配管等を含めた模式的な正面図である図6を参照して説明する。なお、図6に参考で示されたX及びY方向は車両の左右及び前後の方向にそれぞれ対応し、また図示されないが紙面に垂直なZ方向が重力方向である。
【0015】
図6において、参照符号1は車両用空調装置の室内空調ユニット、及び参照符号2はエンジン室と車室とを区切るダッシュパネルをそれぞれ表わしており、室内空調ユニット1は、通常は、車室内の最前部の車両計器盤(図示せず)の内側に配置されて車体の部材(図示せず)に固定されている。また、室内空調ユニット1内には、車室内空気の加熱又は冷却を行うために、図示されないが、通常はヒータコア及びエバポレータ及び送風機等が収容されている。室内空調ユニットの筐体5は、比較的に重量物であるヒータコア及びエバポレータ及び送風機がそれに固定されるので、十分な剛性を有するように形成されており、図6の例の場合、プラスチック成形品から形成されたものであって、図示されない補強リブが要所に配置されている。
【0016】
室内空調ユニット1内の図示しないヒータコア及びエバポレータには、温水又は冷媒を受け入れる供給管と温水又は冷媒をエンジン室側に戻す吐出管とがそれぞれ接続されており、図6においては、ヒータコア(図示せず)に温水を供給する配管3を代表例として示している。配管3は、図6に示される例では、アルミ合金製のものであって、ほぼ90度に屈曲した屈曲部3aと、屈曲部3aから図の上方に延びる軸線Ayを有する第1部分3bと、屈曲部3aから水平に延びる軸線Axを有する第2部分3cとを有しており、第2部分3cは図6の右方の図示されない領域で図の下方にさらに屈曲されてからヒータコアに接続されている。また、配管3の第1部分3bの上端には、エンジン室内側のヒーターホース4が接続される。
【0017】
図6の配管支持装置6は、配管3の第2部分3cと室内空調ユニットの筐体5の外面との間に配設された配管支持部材6からなるものである。前記配管支持部材6は、ゴムあるいは樹脂の発泡材料から形成されて弾力性を有する薄い直方体状に形成されていて、配管3を図のY方向で弾性的に支持しており、従って配管3のY方向の振動を減衰させる効果を有している。
【0018】
図6の配管支持装置6は、単一品でありまた単純な形態であること、及び室内空調ユニット1の筐体5に取付けられるので、低い生産コストが実現できた。しかしながら、この配管支持部材6を用いた場合には、意図した振動の減衰効果を十分に得られないことがあった。これは、室内空調ユニットの筐体5と配管3の第2部分3cとの間のスペースを通常は十分確保できず、従って配管支持部材6の厚さを十分大きくできないこと、並びに前記スペースの寸法誤差が比較的大きいこと、並びにエンジン室内側のヒーターホース4を配管3に挿入して接続するときに配管3に作用する図6の下向きの力Fによって配管支持部材6が過度に圧縮された状態となることの以上3つの要因から、配管支持部材6の実際の変形量が設定された適切な範囲から外れるためであった。
【0019】
次に、本願発明の第1実施形態による配管支持装置10について、それが適用される車両用空調装置の室内空調ユニット1及び配管3等を含めた模式的な正面図である図1を参照して以下に説明する。なお、第1実施形態による配管支持装置10が適用される室内空調ユニット1及び配管3等の構成要素は図6で示される関連技術の場合と同様のものであり、従って同一の参照符号を割り付けてその説明を省略する。
【0020】
図1に示される第1実施形態の配管支持装置10は、板ばねからなる振動減衰部材11を備えている。前記振動減衰部材11は、図1では表現されないが、配管3の直径とほぼ等しい幅の概ね矩形状に形成されていて、図1の水平方向に延びる基部11aと、基部11aの右端から右斜め約45度下方に延びる作用部11bとを有しており、基部11aが、室内空調ユニットの筐体5に形成された円筒状のボス部5aにねじ7により固定されて、作用部11bの表面が配管3の屈曲部3aの外側の湾曲部分に接して配管3を弾性的に支持している。また振動減衰部材11は、本実施形態では、プラスチック材料から形成されている。
【0021】
第1実施形態の配管支持装置10は、単一部品から単純に構成されて、振動減衰部材11が室内空調ユニット1の筐体5に固定されるので、低い生産コストで実現できる。さらに、上述したように配置されているので、配管3から力を受けたとき、配管3の第1部分3bの軸線Ayとは非平行の斜め下方への方向で弾性変形をする。このため、エンジン室内側のヒーターホース4を配管3に接続するとき等において配管3が下方へ押されて移動した場合の振動減衰部材11の変形量は配管3のそのときの移動量より小であること、及び配管3の屈曲部3aの外側と室内空調ユニットの筐体5との間には、配管3の第2部分3cと前記筐体5との間よりも振動減衰部材11のためにより大きなスペースを確保できることから、第1部分3bの軸線Ayに平行な弾性変形の方向を有する例えば図6の比較例で示した配管支持部材6に比較すると大きなたわみ量を設定することが可能になる。その結果、部材の製作誤差及び組立誤差の影響を受け難い、安定に作用する振動減衰装置が実現される。
【0022】
図2は、図1の実施形態による配管支持装置10で配管3を支持した場合と、支持しなかった場合の各々での、図1のY方向の振動を加えた場合の室内空調ユニットの筐体5のイナータンスの実測値を示している。この図からわかるように、図1の配管支持装置10で配管3を支持すると、配管3が支持されなかった場合に比較して、イナータンスの2箇所のピークがそれぞれ約1/3に低減されることが確認できた。
【0023】
次に、第2実施形態の配管支持装置20について図3を参照して説明する。図3は、第2実施形態の配管支持装置20の正面図であるが、投影方向が図1とは90度異なっていて、配管3の第2部分3cが横断面が表される図である。
【0024】
図3に示されるように、第2実施形態の配管支持装置20の振動減衰部材11は、図3の水平方向に延びる基部11aと、基部11aの右端から右斜め約45度下方に延びる作用部11bとを有しており、基部11aが、室内空調ユニット筐体5から延びる円筒状のボス部5aにねじ7により固定されている。この実施形態では、作用部11bの表面が配管3の屈曲部3aにではなく屈曲部3aに隣接した配管3の第2部分3cに接して配管3を弾性的に支持している。
【0025】
第2実施形態の振動減衰部材11は、上述したように構成及び配置されているので、配管3から力を受けたとき、配管3の第1部分3bの軸線Ayとは非平行の斜め下方への方向で弾性変形をする。このため、第1部分3bの軸線Ayに平行な弾性変形の方向を有する例えば図6の比較例で示した配管支持部材6に比較すると大きなたわみ量を設定することが可能になる。
【0026】
(その他の実施形態)
第1実施形態の配管支持装置10の変形例について、図4及び図5を参照して説明する。図4は、前記変形例の配管支持装置10の、図1と同様の室内空調ユニット1及び配管3等を含めた模式的な正面図であり、図5はその平面図である。
【0027】
図4に示される配管支持装置10は、第1及び第2実施形態と同様の板ばねからなる振動減衰部材11を備えている。但しこの振動減衰部材11は、室内空調ユニット筐体5の矩形の平面形状を有するボス部5aとの固定構造が前述した実施形態の場合と異なっている。図4の振動減衰部材11の基部11aは室内空調ユニット筐体5のボス部5aにねじ7で締結固定されるのではなく、ボス部5aに係止されて、配管3から作用する図4の右回りの回転モーメントを支持するように形成されている。
【0028】
より詳しくは、振動減衰部材11の基部11aは、水平部より段付きにされた段付き部11bと、段付き部11bの図の左端から上に立ち上がってから右方に水平に延びる引っ掛け部11cとから構成されており、段付き部11bと引っ掛け部11cがボス部5aの第1支持部5bを挟持するように、段付き部がボス部5aに設けられた穴5cをくぐり抜けている。この係止構造により、前記右回りの回転モーメントを支持することができる。また、この係止構造は第2実施形態との組合せも可能である。
【0029】
次に、第2実施形態の変形例として、振動減衰部材11及びボスを配管3に対して対称に1対、つまり図3の配管3の第2部分3cの左側だけでなく右側にも設けた配管支持装置の実施形態が可能である。
【0030】
さらに、第2実施形態と第1実施形態を組み合わせた実施形態、つまり配管3の第2部分3cだけでなく屈曲部3aにおいても振動減衰部材11によって配管3を支持する実施形態も可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 室内空調ユニット
2 ダッシュパネル
3 配管
3a 屈曲部
3b 第1部分
3c 第2部分
4 ヒーターホース
5 空調ユニット筐体
5a ボス部
11 振動減衰部材
11a 基部
11b 作用部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調装置(1)に接続される配管(3)を弾性的に支持する配管支持装置であって、
前記配管(3)が、屈曲部(3a)と、前記屈曲部(3a)の一方の側から延びる第1部分(3b)と、前記屈曲部(3a)の他方の側から延びて前記空調装置(1)に接続される第2部分(3c)と、を有しており、
該配管支持装置が、前記空調装置(1)の筐体(5)に固定されて前記配管(3)を弾性的に支持する振動減衰部材(11)を備えており、
前記振動減衰部材(11)は、前記配管(3)から力を受けたときの弾性変形の方向が前記配管(3)の前記第1部分(3b)の延びる方向と非平行であることを特徴とする、配管支持装置。
【請求項2】
前記振動減衰部材(11)が、前記配管(3)の前記屈曲部(3a)において前記配管(3)を支持することを特徴とする、請求項1に記載の配管支持装置。
【請求項3】
前記振動減衰部材(11)が、前記配管(3)の前記第2部分(3c)において前記配管(3)を支持することを特徴とする、請求項1に記載の配管支持装置。
【請求項4】
前記振動減衰部材(11)が、板ばねからなることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の配管支持装置。
【請求項5】
前記板ばねが前記空調装置(1)の前記筐体(5)に固定される代わりに係止されることを特徴とする、請求項4に記載の配管支持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−188007(P2012−188007A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−52936(P2011−52936)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】