説明

配管継手

【課題】空気漏れ検査によりシール部材の破損のチェックを確実化することのできる配管継手を提供する。
【解決手段】配管継手40は、プレート本体26とパイプ体28とが両者間にOリング71を介在した状態で溶着により結合され、Oリング71による一次シール部とプレート本体26とパイプ体28との結合による二次シール部との二重シール構造を備える。二次シール部を開封する空気抜き通路93を設ける。空気抜き通路93が、プレート本体26とパイプ体28との間に形成された環状通路79と、環状通路79を外部に開口するスリット溝89とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来例としては、例えば特許文献1に記載された配管継手がある。なお、図11は従来例に係る配管継手を示す断面図である。
図11に示すように、配管継手200は、雄側継手210及び雌側継手220を備える。雌側継手220は、内周側に円筒状に形成された嵌合凹部224を有している。また、雄側継手210は、円筒状に形成された嵌合凸部214と、嵌合凸部214の先端側に設けられた小さい外径からなる段差部213とを有している。嵌合凸部214が嵌合凹部224内に差込まれている。嵌合凸部214の段差部213と嵌合凹部224との間に、バックアップリング230及びOリング231が介在されている。この状態で、雄側継手210と雌側継手220とがボルト等の締結手段(図示しない)により結合されている。
【0003】
【特許文献1】特開2005−49030号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来例の配管継手200(図11参照)にあっては、雄側継手210と雌側継手220とが締結手段により結合されることによって、両継手210,220の外周部の端面同士が密着されてシールされる。そのシール部に符号、240を付す。すなわち、Oリング231による一次シール部の他に、両継手210,220の結合による二次シール部240を備える、いわゆる二重シール構造となっている。
【0005】
したがって、このような配管継手200では、空気漏れ検査(エアーリークテスト)により、Oリング231の破損(Oリング231の損傷、組付不良等の異常、Oリング231の組付け忘れによる欠品等)を確実にチェックすることが困難であった。すなわち、Oリング231に破損があるにも関わらず、二次シール部240によって空気漏れのない状態ができることで、誤認を生じるおそれがあった。
本発明が解決しようとする課題は、空気漏れ検査によりシール部材の破損のチェックを確実化することのできる配管継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、特許請求の範囲の欄に記載された構成を要旨とする配管継手により解決することができる。
すなわち、特許請求の範囲の請求項1に記載された配管継手によると、一方の管部材と他方の管部材とが両管部材の間にシール部材を介在した状態で結合手段により結合され、前記シール部材による一次シール部と前記両管部材の結合による二次シール部との二重シール構造を備える配管継手であって、前記二次シール部を開封する空気抜き通路を設けたものである。したがって、二重シール構造のうち、二次シール部が空気抜き通路により開封されることにより、シール部材による一次シール部のみによる単一のシール構造となる。このため、空気漏れ検査によりシール部材の破損のチェックを確実化することができる。
【0007】
また、特許請求の範囲の請求項2に記載された配管継手によると、空気抜き通路が、両管部材の間に形成された環状通路と、環状通路を外部に開口する開口部とを備える。したがって、空気抜き通路に環状通路と開口部とを備えることで、その開口部を容易に形成することができる。
【0008】
また、特許請求の範囲の請求項3に記載された配管継手によると、一方の管部材に差込筒部を設け、他方の管部材に前記差込筒部を嵌合する受入筒部を設け、差込筒部にシール部材を嵌装するとともにシール部材を抜け止めする抜け止め部材を装着したものである。したがって、例えば、配管継手内を流れる流体が燃料である場合には、燃料によるシール部材の膨潤を抜け止め部材により制限して、シール部材の膨潤によるシール性の低下を防止することができる。また、結合手段が溶着である場合には、溶着時の熱によるシール部材の脱落を抜け止め部材により防止することができる。また、溶着時の熱のシール部材への影響を抜け止め部材により抑制し、熱によるシール部材の変形及び劣化を防止することができる。
【0009】
また、特許請求の範囲の請求項4に記載された配管継手によると、両管部材を樹脂製とし、一方の管部材に前記受入筒部を取り囲む接続筒部を設け、接続筒部の先端面を熱板により加熱溶融して他方の管部材に溶着させる構成としたものである。したがって、両管部材の結合手段である熱板溶着により、一方の管部材の接続筒部と他方の管部材とを容易にかつ確実に結合することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に本発明を実施するための最良の形態を図面を用いて説明する。
【実施例】
【0011】
本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。本実施例の配管継手は、自動二輪車、ATV車(全地形対応車)、自動車等の車両の燃料タンクに搭載される燃料ポンプモジュールにおけるセットプレートに適用したものである。このため、燃料ポンプモジュールを説明し、その後、セットプレートの配管継手について説明する。なお、図1は燃料ポンプモジュールを示す側面図、図2は同じく側断面図、図3は同じく構成部品を示す分解斜視図である。
【0012】
図3に示すように、燃料ポンプモジュール10は、セットプレート12、プレッシャレギュレータ14、燃料ポンプ16、ケーシング部材18、サクションフィルタ20をモジュール化したものである。以下、順に説明する。なお、図1に示すように、燃料ポンプモジュール10が搭載される燃料タンク22の上壁部23には、例えば円形状の開口孔24が形成されている。
【0013】
セットプレート12を説明する。図2に示すように、セットプレート12は、その主体をなすプレート本体26と、そのプレート本体26上に結合されたパイプ体28とを一体化してなる。プレート本体26は、樹脂製で、ほぼ円板状に形成されている。プレート本体26の下面側には、円筒状の嵌合筒部30が突出されている。プレート本体26は、前記燃料タンク22の開口孔24内に嵌合筒部30を嵌合した状態で該開口孔24を閉鎖するように配置される。また、プレート本体26には、内外二重筒状をなす内筒部31と外筒部32が一体形成されている。内筒部31内の上端開口面は端板部により閉鎖されている。また、外筒部32の上端部は、内筒部31の上端面より上方に延出されている。外筒部32の上端部内は、プレート本体26の下面側における外筒部32と内筒部31との間の環状の空間部34と連通している。また、プレート本体26の下面側には、外筒部32と内筒部31との間の空間部34の内外に連通する吐出口接続管部35、及び、その外筒部32を横切る状態で内筒部31の内外を連通する余剰燃料排出管部36が、斜め下方に向けて並列状に一体形成されている。
【0014】
図3に示すように、前記プレート本体26には、ターミナルを備えたコネクタ部38が一体形成されている。プレート本体26の上面側において、コネクタ部38には、図示しない電子制御ユニット(ECU)からなる制御手段に電気的につながる外部コネクタが差込みによって接続可能となっている。また、プレート本体26の下面側において、コネクタ部38には、燃料ポンプ16に電気的につながるリード線(図示しない)が接続されている。
【0015】
図2に示すように、前記パイプ体28は、樹脂製で、例えば90°エルボ管状に形成されている。パイプ体28の基端部(下端部)は、前記プレート本体26の外筒部32の上端部に配管継手40(後述する)を介して接続されている。
【0016】
次に、プレッシャレギュレータ14を説明する。図3に示すように、プレッシャレギュレータ14は、ダイアフラム(図示しない。)を挟持する上下一対をなすハウジング42,44を備えている。ダイアフラムで区画された上側のハウジング42内が調圧室とされ、下側のハウジング44内が大気に開放する大気開放室とされている。また、上側のハウジング42は、段付円筒状に形成されており、その小径筒部の先端面に調圧室内から余剰燃料を排出する燃料排出口45が形成され、また、段付部には外部の燃料を調圧室内に導入する燃料導入口46が形成されている。
【0017】
図2に示すように、プレッシャレギュレータ14の上側のハウジング42の大径筒部がセットプレート12の外筒部32内に嵌合されている。これとともに、その上側のハウジング42の小径筒部が内筒部31内に嵌合されている。これにより、燃料導入口46(図3参照)が内筒部31と外筒部32との間の空間部34に連通される。また、燃料排出口45(図3参照)が内筒部31内に連通される。
【0018】
次に、燃料ポンプ16を説明する。図3に示すように、燃料ポンプ16は、例えば、ウエスコ式の電動ポンプであって、ほぼ円柱状に形成されている。燃料ポンプ16の下端面には、燃料タンク22内の燃料を吸入する燃料吸入口48が設けられている。また、燃料ポンプ16の上端面には、吸入した燃料を吐出する燃料吐出口49が設けられている。
【0019】
図2に示すように、前記燃料ポンプ16の燃料吐出口49は、前記セットプレート12の吐出口接続管部35内に接続されている。また、燃料ポンプ16には、前記セットプレート12のコネクタ部38につながるリード線(図示しない。)が接続されている。燃料ポンプ16は、通電によって駆動され、内蔵の回転体(例えば、インペラ)を回転させることにより、燃料タンク22内の燃料を燃料吸入口48を通じて吸入しかつ昇圧して燃料吐出口49から吐出する。
【0020】
次に、ケーシング部材18を説明する。図3に示すように、ケーシング部材18は、樹脂製で、ほぼ円筒状のポンプ収容筒部51を主体として形成されている。図2に示すように、ケーシング部材18は、ポンプ収容筒部51内に燃料ポンプ16を収容する状態で、前記セットプレート12の下面側にスナップフィットにより装着されている。また、ケーシング部材18には、セットプレート12に対する装着にともない、前記プレッシャレギュレータ14を抜け止めするためのレギュレータ保持部52が形成されている。
【0021】
次に、サクションフィルタ20を説明する。図3に示すように、サクションフィルタ20は、濾過部材54とフレーム部材55と接続管部材56とを備えている。濾過部材54は、例えば、樹脂製のメッシュスクリーン、不織布等の濾材により扁平な袋状に形成されている。また、フレーム部材55は、樹脂製で、濾過部材54内に内装されており、該濾過部材54を膨らんだ状態に保持する。フレーム部材55には、濾過部材54の外側で上方に開口する管接続口を有している。
【0022】
図2に示すように、前記接続管部材56は、樹脂製で、45°エルボ管状に形成されている。接続管部材56の下端部は、前記フレーム部材55の管接続口に接続されている。また、接続管部材56の上端部は、前記ケーシング部材18のポンプ収容筒部51の下部にスナップフィットによる装着されている。これにともない、接続管部材56は、前記燃料ポンプ16の燃料吸入口48に接続されている。
【0023】
前記燃料ポンプモジュール10のセットプレート12は、燃料タンク22上に対して次のようにして固定されている。すなわち、図2に示すように、セットプレート12のプレート本体26で燃料タンク22の上壁部23の開口孔24を閉鎖するとともに、該開口孔24内に嵌合筒部30を嵌合する。このとき、燃料タンク22の開口孔24の孔縁部とプレート本体26の外周部との間にはガスケット(図示しない)が介装される。そして、燃料タンク22の上壁部23上に、セットプレート12のプレート本体26の外周部を囲繞する円環状のリテーナ60が同心状に配置される。
【0024】
前記リテーナ60は、鉄等の金属製で、その内周部が前記セットプレート12のプレート本体26の外周部上に対応し、外周部が燃料タンク22の上壁部23上に対応する。リテーナ60の外周部には、所定数(本実施例では6個)のボルト挿通孔61が周方向に等間隔で設けられている。また、燃料タンク22の上壁部23には、各ボルト挿通孔61に対応する有底状のめねじ孔63が設けられている。固定ボルト65をリテーナ60のボルト挿通孔61を介して燃料タンク22の上壁部23のめねじ孔63に締付けることにより、リテーナ60の内周部と燃料タンク22の上壁部23の開口孔24の後縁部との間にセットプレート12が挟持すなわち固定される。
【0025】
前記燃料タンク22に搭載された燃料ポンプモジュール10(図2参照)において、エンジン(内燃機関)の運転にともない、燃料ポンプ16が駆動される。これにより、燃料タンク22内の燃料が、サクションフィルタ20の濾過部材54を通じてろ過された後、接続管部材56を介して燃料吸入口48に吸入される。燃料吸入口48内に吸入された燃料は、燃料ポンプ16内で昇圧された後、燃料吐出口49から吐出される。その燃料吐出口49から吐出された燃料は、セットプレート12の吐出口接続管部35から、内筒部31と外筒部32との間の空間部34及び外筒部32の上端部内を上昇した後、パイプ体28内を通じて燃料供給経路(図示しない。)へと送給される。パイプ体28から送給される燃料の圧力は、プレッシャレギュレータ14によって所定圧に調圧される。また、プレッシャレギュレータ14の燃料排出口45から排出された余剰燃料は、内筒部31内から余剰燃料排出管部36内を通じて燃料タンク22内へ排出される。
【0026】
次に、セットプレート12の配管継手40について説明する。なお、図4はセットプレートの配管継手部を示す斜視図、図5は同じく断面図、図6はセットプレートの構成部品を示す分解斜視図、図7はセットプレートの配管継手部を示す分解断面図である。
図5に示すように、配管継手40は、プレート本体26上に突出する外筒部32の上端部を受入筒部67とし、パイプ体28の基端部に形成されかつ受入筒部67内に嵌合される筒状部を差込筒部69とし、その受入筒部67と差込筒部69との間にOリング71を介在した状態でプレート本体26とパイプ体28とを溶着手段(溶着部に符号、73を付す)により結合した構造である。以下に詳述する。
【0027】
図7に示すように、前記パイプ体28の差込筒部69は、基部(上部)を大径とし、その先端部(下部)を小径とする段付円筒状に形成されている。また、差込筒部69の基端部の外周側には、受入筒部67の先端部(上端部)を受入可能な環状溝76を形成する外嵌筒部75が形成されている。さらに、外嵌筒部75の下端部には、受入筒部67を環状通路79(図5参照)を隔てて取り囲む円筒状の接続筒部78が段付円筒状に形成されている。この接続筒部78は、差込筒部69よりも下側に延出されている。また、差込筒部69の小径部の内周面には、断面波形状の環状凹部81が形成されている。また、パイプ体28の外嵌筒部75と接続筒部78との接続部分の外周面には、段付部28aが形成されている。
【0028】
前記Oリング71は、ゴム状弾性材により断面円形状をなす円環状に形成されている。Oリング71は、前記差込筒部69の小径部に外嵌状に装着される(図7中、二点鎖線71参照)。なお、Oリング71は、本明細書でいう「シール部材」に相当する。
【0029】
前記差込筒部69に装着された前記Oリング71を抜け止めするためにキャップ83が用いられる。図7に示すように、キャップ83は、樹脂製で、中空円筒状の嵌合筒部84と、その下端部の外周部に張り出す抜け止めフランジ85とを有している。嵌合筒部84の外周面には、環状凸部86が形成されている(図6参照)。また、キャップ83は、嵌合筒部84を差込筒部69内に押し込み、差込筒部69の環状凹部81に嵌合筒部84の環状凸部86が樹脂の弾性変形を利用して係合することによって、差込筒部69に装着されている(図5及び図8参照)。このキャップ83の抜け止めフランジ85によりOリング71が抜け止めされる。このとき、差込筒部69の先端面(下端面)に対して抜け止めフランジ85が当接又は近接する。また、抜け止めフランジ85は、差込筒部69の大径部の外径より僅かに小さい外径で形成されている。なお、キャップ83は、本明細書でいう「抜け止め部材」に相当する。
【0030】
図7に示すように、前記プレート本体26の受入筒部67の基端部の外周側には、大径をなす取付基部88が同心状に形成されている。取付基部88の上面外周部には、円環状をなしかつ適数個(本実施例では4個、図6では2個を示す)のスリット溝89により断続的に形成された取付筒部90が形成されている。取付筒部90は、前記パイプ体28の接続筒部78と整合可能に形成されている(図5参照)。
【0031】
次に、前記したプレート本体26にパイプ体28を結合する手順を説明する。なお、図8は熱板溶着に係る説明図である。
まず、前に述べたように、Oリング71及びキャップ83を装着したパイプ体28の接続筒部78の下端面に、その下方から熱板91を面接触させる(図8参照)。熱板91により接続筒部78の下端面を加熱溶融させる。
その後、図4及び図5に示すように、接続筒部78の下端部(溶融部分)をプレート本体26の取付基部88の上端面に押付けて溶着(溶着部73参照)させる。これとともに、プレート本体26の受入筒部67内にパイプ体28の差込筒部69を嵌合する(図5参照)。このとき、Oリング71が、受入筒部67内に弾性変形を利用して嵌合されることにより、受入筒部67と差込筒部69との間が弾性的にシールされる。このOリング71によるシール部を「一次シール部」という。また、熱板溶着(溶着部73)によるシール部を「二次シール部」という。また、溶着は、本明細書でいう「結合手段」に相当する。
【0032】
しかして、受入筒部67と接続筒部78との間に形成された環状通路79は、受入筒部67と環状溝76との間の隙間を通じて、受入筒部67と差込筒部69との間におけるOリング71の上側の隙間に連通する一方、また、プレート本体26の取付基部88のスリット溝89を通じて外部に開口される。なお、受入筒部67と差込筒部69との間におけるOリング71の上側の隙間、受入筒部67と環状溝76との間の隙間、環状通路79、プレート本体26の取付基部88のスリット溝89により、二次シール部を開封する空気抜き通路93が形成されている。また、スリット溝89は、本明細書でいう「開口部」に相当する。また、プレート本体26とパイプ体28は、本明細書でいう「管部材」にそれぞれ相当する。
【0033】
次に、セットプレート12の空気漏れ検査について説明する。なお、図9は空気洩れ検査に係る説明図である。
図9に示すように、空気漏れ検査は、セットプレート12のプレート本体26の下面側にカバー部材95を装着してプレート本体26の下面側の開口端(内筒部31、外筒部32、吐出口接続管部35及び余剰燃料排出管部36のそれぞれの開口端)を閉鎖する。そして、パイプ体28の先端側から管内に空気を印加するとともに、セットプレート12全体を水中に沈めることによって行われる。このとき、空気が空気抜き通路93のスリット溝89から水中に気泡となって漏れ出たときにはOリング71に破損があることが判明し、水中に気泡が漏れ出ないときはOリング71に破損がないことが確認される。
【0034】
また、本実施例では、前記配管継手40が採用されたセットプレート12を燃料タンク22にリテーナ60を介して固定するに際して次の安全対策を採用している。なお、図10はリテーナ及びブラケットを示す斜視図である。
図10に示すように、リテーナ60上にブラケット97が固定ボルト65を利用して共締めされる。ブラケット97は、鉄等の金属製で、パイプ体28の基端部の近くに位置する2本の固定ボルト65によってリテーナ60上に締結されている。ブラケット97には、セットプレート12の配管継手40におけるパイプ体28の外周面の段付部28a上に当接又は近接する一対の抜止片98が形成されている。これにより、万が一、プレート本体26とパイプ体28との溶着が外れた場合であっても、ブラケット97の抜止片98によってパイプ体28の上方への移動が制限される。このため、プレート本体26からパイプ体28が抜け外れることによる燃料漏れの発生を防止することができる。なお、ブラケット97の抜止片98によるパイプ体28の上方への移動量は、プレート本体26の受入筒部67に対するOリング71のラップ代L(図5参照)以下に制限されるものであればよい。
【0035】
上記したセットプレート12の配管継手40によると、プレート本体26とパイプ体28とが両者の間にOリング71を介在した状態で溶着により結合され、Oリング71による一次シール部と、プレート本体26とパイプ体28との結合(溶接)による二次シール部との二重シール構造を備える配管継手40であって、二次シール部を開封する空気抜き通路93を設けたものである(図5参照)。したがって、二重シール構造のうち、二次シール部が空気抜き通路93により開封されることにより、Oリング71による一次シール部のみによる単一のシール構造となる。このため、Oリング71の空気漏れ検査によりOリング71の破損のチェックを確実化することができる。
【0036】
また、空気抜き通路93が、プレート本体26とパイプ体28との間に形成された環状通路79と、環状通路79を外部に開口するスリット溝89とを備える。したがって、空気抜き通路93に環状通路79とスリット溝89とを備えることで、そのスリット溝89を容易に形成することができる。
【0037】
また、パイプ体28に差込筒部69を設け、プレート本体26に差込筒部69を嵌合する受入筒部67を設け、差込筒部69にOリング71を嵌装するとともにOリング71を抜け止めするキャップ83を装着したものである。したがって、例えば、配管継手40内を流れる燃料によるOリング71の膨潤をキャップ83により制限して、Oリング71の膨潤によるシール性の低下を防止することができる。また、溶着時の熱によるOリング71の脱落をキャップ83により防止することができる。また、溶着時の熱のOリング71への影響をキャップ83により抑制し、熱によるOリング71の変形及び劣化を防止することができる。
【0038】
また、Oリング71を、パイプ体28の差込筒部69に無理なく装着したうえで、キャップ83により抜け止めする構成としたことにより、差込筒部69とキャップ83の抜け止めフランジ85とによる環状溝に対するOリング71の所定の充填率を確保することができる。すなわち、Oリング71を環状溝に抜け止めフランジ85を乗り越えるようにして装着する場合に問題とされる環状溝に対するOリング71の充填率の低下を改善することができる。
【0039】
また、プレート本体26及びパイプ体28を樹脂製とし、パイプ体28に受入筒部67を取り囲む接続筒部78を設け、接続筒部78の先端面を熱板91により加熱溶融してプレート本体26に溶着させる構成としたものである。したがって、プレート本体26とパイプ体28との熱板溶着(溶着部73参照)により、プレート本体26の接続筒部78とパイプ体28とを容易にかつ確実に結合することができる。
【0040】
本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本発明の配管継手40は、前記実施例の燃料ポンプモジュール10のセットプレート12に限らず、各種の配管継手として利用することができる。また、本発明の配管継手40は、前記実施例の差込式に限らず、フランジ式、突き合わせ式等の配管継手にも適用することができる。また、配管継手40内を流れる流体は、燃料に限らず、その他の液体、気体等でもよい。また、管部材同士を結合する結合手段としては、前記実施例の熱板溶着に限らず、スピン溶着、超音波溶着、レーザ溶着等の溶着手段、ボルト・ナット等のねじ止めによる締結手段、接着剤による接着手段等でもよい。また、環状通路79を外部に開口する開口部は、プレート本体26の取付基部88のスリット溝89に代え、取付基部88を貫通する孔に代えることができる。また、パイプ体28の接続筒部78の下端面に形成したスリット溝、あるいは、接続筒部78を貫通する孔に代えることができる。また、シール部材としては、Oリング71に限らず、シール性を有する部材であればよい。また、前記実施例では、燃料タンク22にリテーナ60を介してセットプレート12を固定する構成として、燃料タンク22側に設けためねじ孔63に、固定ボルト65をリテーナ60のボルト挿通孔61を介して締付けたが、燃料タンク22側に設けたスタッドボルトをリテーナ60のボルト挿通孔61に挿通し、そのスタッドボルトに固定ナットを締付ける構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】一実施例に係る燃料ポンプモジュールを示す側面図である。
【図2】燃料ポンプモジュールを示す側断面図である。
【図3】燃料ポンプモジュールの構成部品を示す分解斜視図である。
【図4】セットプレートの配管継手部を示す斜視図である。
【図5】セットプレートの配管継手部を示す断面図である。
【図6】セットプレートの構成部品を示す分解斜視図である。
【図7】セットプレートの配管継手部を示す分解断面図である。
【図8】パイプ体を示す断面図である。
【図9】空気洩れ検査に係る説明図である。
【図10】リテーナ及びブラケットを示す斜視図である。
【図11】従来例に係る配管継手を示す断面図である。
【符号の説明】
【0042】
12 セットプレート
26 プレート本体(管部材)
28 パイプ体(管部材)
40 配管継手
67 受入筒部
69 差込筒部
71 Oリング(シール部材)
78 接続筒部
79 環状通路
83 キャップ(抜け止め部材)
89 スリット溝(開口部)
91 熱板
93 空気抜き通路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の管部材と他方の管部材とが両管部材の間にシール部材を介在した状態で結合手段により結合され、前記シール部材による一次シール部と前記両管部材の結合による二次シール部との二重シール構造を備える配管継手であって、
前記二次シール部を開封する空気抜き通路を設けたことを特徴とする配管継手。
【請求項2】
請求項1に記載の配管継手であって、
前記空気抜き通路が、前記両管部材の間に形成された環状通路と、前記環状通路を外部に開口する開口部とを備えることを特徴とする配管継手。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の配管継手であって、
前記一方の管部材に差込筒部を設け、
前記他方の管部材に前記差込筒部を嵌合する受入筒部を設け、
前記差込筒部に、前記シール部材を嵌装するとともに該シール部材を抜け止めする抜け止め部材を装着した
ことを特徴とする配管継手。
【請求項4】
請求項3に記載の配管継手であって、
前記両管部材を樹脂製とし、
前記一方の管部材に前記受入筒部を取り囲む接続筒部を設け、
前記接続筒部の先端面を熱板により加熱溶融して前記他方の管部材に溶着させる構成とした
ことを特徴とする配管継手。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−106911(P2010−106911A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−277947(P2008−277947)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【出願人】(000116574)愛三工業株式会社 (1,018)
【Fターム(参考)】