説明

配管肉厚測定データの管理方法

【課題】測定箇所が明確に特定される配管の肉厚測定データの管理方法を提供すること。
【解決手段】プラント、系統、測定点番号を含む配管の肉厚測定点を特定する配管減肉管理情報が記録されたICタグ4を用意し、測定対象である配管1の肉厚測定点の近傍に前記ICタグを取り付け、前記配管の肉厚測定に際して前記ICタグから前記配管減肉管理情報を参照するようにした配管肉厚測定データの管理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管の肉厚測定データを管理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、原子力発電所では、多数の配管の健全性確認のため、定期的な肉厚測定によって減肉管理を行っている。その配管肉厚測定の測定箇所には、類似箇所が多数あって或る測定箇所と他の測定箇所とを間違い易く、また現場で行う手書きの記録用紙への写し替え等、人為的過誤が発生し易い等のリスクを秘めている。このように測定箇所の特定は、配管の肉厚測定を行う上では重要な課題である。
【0003】
そこで、従来、測定箇所の特定に関して下記特許文献1,2に示される方法が提供されている。
1) 特許文献1:放射線を発生させる放射線発生装置および放射線発生装置にて発生した放射線を入射し、光に変換して前記光のイメージを増幅するイメージインテンシファイアを用いた放射線検査装置と、この放射線検査装置の位置を検出する位置検出装置とを設け、この位置検出装置により被測定物である配管の測定位置を特定するように構成したものである。
2) 特許文献2:放射線を検査対象の配管に放射する放射線源と、この放射線源より放射されて配管を透過した放射線を取り込んで受像を行うカラーイメージインテンシファイア(カラーII)と、配管を挟んで放射線源とカラーIIとの相対的位置、姿勢を定位させる位置決め機構と、カラーIIから出力されるカラー信号をそれぞれ波長成分毎に分解して画像処理を行う画像処理装置とを備える。
【特許文献1】特開2007-47077号公報
【特許文献2】特開2008-51563号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
まず、特許文献1における放射線源を用いて肉厚測定を実施する方法では、測定位置の特定と減肉量測定の精度向上とが挙げられている。
【0005】
また、特許文献2における非破壊方式の検査装置および方法では、装置の設置スペースの極少化および検査時間の短縮化を図る上で、イメージセンサと放射線源との位置決めの重要性が挙げられている。しかし、配管測定箇所の位置の特定および配管減肉測定での人為的過誤の防止に関する開示はない。
【0006】
一般に、原子力発電所では、多数の配管の健全性確認のため、定期的に肉厚測定を行ない、減肉管理を行っている。しかし、その方法は、複数の指定された各測定箇所にメッシュ(罫書き線)を入れ、そのポイントに肉厚測定装置(超音波厚み計)を使用して、測定員が測定装置の指示値を記録用紙に手書きで記録している。また、ある測定年度の測定に際し、測定点の過誤を防止するには、現場の位置、過年度の測定時期、測定メッシュ等の情報を事前に確認する必要がある。
【0007】
その際、配管測定箇所には多くの類似箇所があって間違い易く、また現場での手書きの記録用紙への写し替え等、ヒューマンエラーが発生し易い状況である。しかも、手作業で膨大な量の記録を測定装置から記録用紙に記録していく作業は多大な労力を要する。
【0008】
ここで、図4(a),(b)、図5(a),(b)ないし図6を参照して、配管肉厚測定の従来例(例えば超音波厚み計での測定)について説明する。対象とする配管1は、図5(a),(b)に示すように、通常、保温材2に覆われている。このため、その保温材2を取り外した上で、図4(a),(b)における肉厚測定を行う。
【0009】
従来の配管肉厚測定装置は、図4に示す肉厚測定装置(超音波厚み計)8、探触子9およびケーブル10により構成されている。複数の指定された測定範囲3に、メッシュ(罫書き線)を設定する。
【0010】
メッシュは、図示の通り、配管の周方向(例1、2等番号を付けた線)と軸方向(例A、B等アルファベットを付けた線)との罫線により構成され、その交点に肉厚測定装置8(超音波厚み計)の探触子9を当てて、対象とする配管1の測定範囲3の各測定ポイントの肉厚を測定する。
【0011】
そして、測定範囲3における肉厚測定値を記録用紙に記録する。測定に際し、測定点の過誤を防止するには、現場配管の測定位置、過年度の測定時期、測定範囲3のメッシュ上位置等の情報を事前に過去記録を参照して確認しておく必要がある。このように、配管肉厚測定およびデータ管理は、手間が掛かる作業であり、省力化が要望されている。
【0012】
そこで、測定箇所の過誤を防止し、図6に示す測定データ13を容易に収集できること、および評価管理部門に早く間違いのないデータを提供できることが望まれる。
【0013】
本発明は上述の点を考慮してなされたもので、測定箇所が明確に特定され得る配管の肉厚測定データの管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的達成のため、本発明では、
プラント、系統、測定点番号を含む配管の肉厚測定点を特定する配管減肉管理情報が記録されたICタグを用意し、
測定対象である配管の肉厚測定点の近傍に前記ICタグを取り付け、
前記配管の肉厚測定に際して前記ICタグから前記配管減肉管理情報を参照する
ようにした配管肉厚測定データの管理方法、
を提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図1ないし図3を参照して本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は、本発明の適用対象である配管減肉管理システムの構成を示した説明図である。測定対象である配管1は、保温材2(図6)を除去した状態で示しており、測定範囲3の内部あるいはその近傍における所定箇所にICタグ4が取り付けられている。
【0017】
このICタグ4は、無線伝送系5を介してデータ端末機器6に情報を伝送することができる。そして、このICタグ4には、プラント、系統、測定点番号等、肉厚測定点等を特定する情報が記録されている。
【0018】
データ端末機器6には、ケーブル12を介して肉厚測定装置8が接続されており、探触子9からケーブル10を経て伝達される信号に基づき、肉厚測定装置8で測定した肉厚測定データが与えられる。
【0019】
また、データ端末機器6には、ケーブル11を介して配管減肉管理データベース7が接続されており、データ端末機器6から減肉測定点の位置(番地)情報および肉厚測定データを配管減肉管理データベース7に与え、配管減肉管理データベース7からデータ端末機器6が配管情報および過去のデータを受け取る。
【0020】
この図1は、例えば定期点検で対象とする配管1を点検するために、プラントを停止して保温材2を取外した状態を示している。この状態で、対象とする配管1の測定範囲3における測定点近傍に取り付けられたICタグ4により、対象とする配管1の固有情報であるプラント名、系統名、測定点番号等、肉厚測定点を特定する情報を、無線伝送系5を介してデータ端末機器6へ伝送させる。
【0021】
また、配管減肉データベース7から、対象とする測定点の過去データ、評価データ等の情報を、データ端末機器6へケーブル12を通じて伝送させる。
【0022】
これにより、データ端末機器6および配管減肉データベース7は、対象とする肉厚測定点に関する情報を共有した状態となる。
【0023】
図2(a),(b)は、配管1における測定箇所を特定するためのメッシュを示したものである。このメッシュは、配管1の長手方向に、符号「1,2,3,4,5,6,7,・・・」(図2(a)参照)を付して描いた罫線と、周方向に符号「A,B,C,D,E,F,G,H」(図2(b)参照)を付して描いた罫線とにより形成される。
【0024】
このメッシュを利用して探触子9を設置すれば、探触子9の設置位置が直ちに明示される。そして、この設置位置データが、ICタグ4から無線伝送系5によりデータ端末機器6に伝送される。データ端末機器6には、肉厚測定装置8(図1参照)からの肉厚測定データも与えられるから、肉厚測定データとその測定位置データとが関連付けられた上で、配管減肉管理データベース7に与えられる。
【0025】
上記のように、図2は、対象とする配管1に、測定に用いるメッシュを形成した状態を示している。メッシュは、配管減肉管理データベース7から呼び込んだデータ端末機器6の表示情報により形成する。
【0026】
配管1のメッシュ近傍に取り付けられたICタグ4によって与えれる、対象とする配管1の測定位置データをデータ端末機器6に表示させることにより、これから測定しよとする箇所が正しいか否かを目視判別できるから、測定箇所の間違い、すなわち測定すべき測定箇所ではない箇所で測定する過誤を無くすことができる。
【0027】
また、肉厚測定データが探触子9からケーブル11を通じて肉厚測定装置8へ、そして肉厚測定装置8からデータ端末機器6に直接読み込まれるから、測定時に測定データを伝送するための特別な操作をする必要がなく作業性がよい。
【0028】
さらに、肉厚測定データが測定位置データとともにデータ端末機器6から配管減肉管理データベース7に読み込まれることにより、過年度データ、評価データを配管減肉管理データベース7で肉厚測定位置に関連付けて適正に管理できるようになる。このため、紙媒体での記録データ13の写し替えの間違いを無くすことができる。
【0029】
図3(a),(b)は、プラント運転中の対象配管1にICタグ4が貼り付けられた状態を示すもので、保温材2が対象とする配管1を覆っている。そして、ICタグ4は、配管1の外壁に保温材2に埋め込まれた状態で取り付けられている。一方、探触子9は、保温材2の外周上に取り付けられており、保温材2を剥がすことなく肉厚測定を行う。
【0030】
(配管減肉管理情報の利用方法)
ICタグ4に記録された位置情報は、次のように利用することができる。まず、データ端末機器6が、ICタグ4から読み取った位置情報をキーワードとして、配管減肉管理データベース7からその位置を特定する系統図、配管図情報を取得して測定員の持つデータ端末機器6に表示するという利用法である。これにより、測定箇所がプラントにおけるどのような位置であるかを明確に把握することができる。
【0031】
また、データ端末機器6に配管減肉測定点のメッシュを表示させることにより、データの過不足を防止することができる。
【0032】
さらに、データ端末機器6に、当該測定箇所に関する過年度の測定データ、評価データ(例えば余寿命)を表示させることにより配管管理の過誤を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の配管肉厚測定データ管理システムの構成を示す説明図。
【図2】図2(a),(b)は、本発明の配管肉厚測定データ管理システムによるメッシュを示す説明図。
【図3】図3(a),(b)は、本発明の配管肉厚測定データ管理システムにおけるICタグの取り付け状態を示す説明図。
【図4】図4(a),(b)は、従来の配管肉厚測定手法を示す図。
【図5】図5(a),(b)は、従来の配管保温方法を示す図。
【図6】従来の配管肉厚測定データ表を示す図。
【符号の説明】
【0034】
1…対象配管、2…保温材、3…測定範囲、4…ICタグ、5…無線伝送系、
6…データ端末機器、7…配管減肉管理データベース、8…肉厚測定装置、9…探触子、10…ケーブル、11…ケーブル、12…ケーブル、13…記録用紙(データ用紙)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラント、系統、測定点番号を含む配管の肉厚測定点を特定する配管減肉管理情報が記録されたICタグを用意し、
測定対象である配管の肉厚測定点の近傍に前記ICタグを取り付け、
前記配管の肉厚測定に際して前記ICタグから前記配管減肉管理情報を参照する
ようにした配管肉厚測定データの管理方法。
【請求項2】
請求項1記載の配管肉厚測定データの管理方法において、
前記配管減肉管理情報および前記プラントの系統図、配管図の情報を記録した配管減肉管理データベース、ならびに前記ICタグおよび前記配管減肉管理データベースに接続されるデータ端末機器を用意し、
前記データ端末機器が、前記ICタグから読み取った情報をキーワードとして、前記配管減肉管理データベースから前記肉厚測定点の位置を特定する系統図、配管図の情報を取得して表示する配管肉厚測定データの管理方法。
【請求項3】
請求項1記載の配管肉厚測定データの管理方法において、
前記データ端末機器に、前記肉厚測定点の測定メッシュを表示させる配管肉厚測定データの管理方法。
【請求項4】
請求項1記載の配管肉厚測定データの管理方法において、
前記データ端末機器に、過年度の測定データおよび評価データを表示させる配管肉厚測定データの管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−96720(P2010−96720A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−269999(P2008−269999)
【出願日】平成20年10月20日(2008.10.20)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】