説明

配線パターン及びその形成方法

【課題】工程数と製造コストの増加を抑えながら、絶縁層を位置精度良く形成すること。
【解決手段】(1)第1の工程では、第1の方向へ延びる第1のパターンと、第1のパターンから第1の方向へ隙間を隔てて配置される島状のダミーパターンと、第1のパターンからダミーパターンの延長上であって、ダミーパターンから隙間を隔てた位置に延在する第2のパターンとを含む第1の配線層を形成する。(2)第2の工程では、第1のパターンの少なくともダミーパターンに隣接する端部、及びダミーパターンの一部を露出させる開口部を含む絶縁層を、絶縁材料を塗布することにより形成する。(3)第3の工程では、第1の方向へ延び、絶縁層の開口部において第1のパターン及びダミーパターンと接続され、第2のパターンに対し絶縁層により絶縁され、ダミーパターンと重なる位置に配置される第3のパターンを含む第2の配線層を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電気回路の基板上に形成される配線パターン及びその形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、インクジェット法等の塗布法や印刷法により電気回路の基板上に金属配線等の配線パターンを形成することが行われている。ここで、インクジェットを用いて基板上に膜や層のパターンを形成する場合に、形成されるべきパターンの形状によって、インクジェットから吐出される液材料の、基板上での塗れ広がりの度合いを部分的に異ならせる必要がある。例えば、層の境界部を形成する場合には、基板上に付着した液材料が塗れ広がらないことが望ましい。
【0003】
ここで、下記の特許文献1に記載される技術では、絶縁材料をインクジェットで吐出することでコンタクトホール(開口部)を有する絶縁層を形成するようにしている。この場合、コンタクトホールの外縁部を、先に濃度の高い絶縁材料でパターン形成し、その後に、コンタクトホール以外の部分に濃度の低い絶縁材料を吐出し、乾燥させて、絶縁層を形成するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−32535号公報
【特許文献2】特開2006−59983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に記載される技術では、コンタクトホールを有する絶縁層を形成するために、先の形成工程と後の形成工程の2工程が必要となり、工程数が増えることとなった。また、濃度の異なる絶縁材料が必要となり、その分だけ製造コストが増大するという懸念があった。
【0006】
この発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、工程数と製造コストの増加を抑えながら、開口部を有する絶縁層を位置精度良く形成することを可能とした配線パターン及びその形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、基板の上に形成され、第1の配線層と、第2の配線層と、第1の配線層と第2の配線層との間に形成された絶縁層とを備えた配線パターンであって、第1の配線層は、所定の方向へ延びる第1のパターンと、第1のパターンの端部から隙間を隔てた位置にて所定の方向へ延びる第2のパターンと、第1のパターンの端部と第2のパターンとの間にて隙間を隔てて島状に配置されたダミーパターンとを含むことと、絶縁層は、少なくとも第1のパターンのダミーパターンに隣接する端部を露出させる開口部を含むことと、第2の配線層は、所定の方向へ延び、絶縁層の開口部において少なくとも第1のパターンに接続され、第2のパターンに対し絶縁層により絶縁される第3のパターンを含むことと、ダミーパターンは、少なくとも一部が第3のパターンと重なる位置に配置されることとを備えたことを趣旨とする。
【0008】
上記発明の構成によれば、第1の配線層と第2の配線層とが絶縁層を介して上下に積層され、第1の配線層を構成する少なくとも第1のパターンと、第2の配線層を構成する第3のパターンとが絶縁層の開口部にて接続されている。ここで、絶縁層を形成するために、例えば、絶縁材料を塗布することにより、第1のパターンの少なくともダミーパターンに隣接する端部を開口部にて露出させるときに、絶縁層の開口部の縁を規定する絶縁材料の流れが、ダミーパターンに接して堰き止められることとなる。ここで、「ダミーパターン」は、電気的に機能しないパターンを意味する。
【0009】
上記目的を達成するために、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、第1のパターン及び第3のパターンは、それぞれ整列に配置された複数本の配線により構成され、ダミーパターンは、複数の島状の配線により構成され、複数の島状の配線は、少なくとも第3のパターンの複数本の配線が並ぶ方向へ離間して配置されることを趣旨とする。
【0010】
上記発明の構成によれば、請求項1に記載の発明の作用に加え、第1のパターン及び第3のパターンは、それぞれ整列に配置された複数本の配線により構成されるので、開口部において、第1のパターンの配線と第3のパターンの配線との配置を整合させることにより、第1のパターンと第3のパターンとの位置合わせが容易となる。また、ダミーパターンを構成する複数の島状の配線は、少なくとも第3のパターンの複数本の配線が並ぶ方向へ離間して配置されるので、複数の島状の配線の少なくとも一部が第3のパターンの複数本の配線と重なることとなる。
【0011】
上記目的を達成するために、請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、第1のパターン、ダミーパターン及び第3のパターンは、互いに幅の等しい配線により構成されることを趣旨とする。
【0012】
上記発明の構成によれば、請求項1又は2に記載の発明の作用に加え、第1のパターン、ダミーパターン及び第3のパターンが、互いに幅の等しい配線により構成されるので、第1のパターン及びダミーパターンと、第3のパターンとの位置合わせが容易となる。
【0013】
上記目的を達成するために、請求項4に記載の発明は、基板の上に形成され、第1の配線層と、第2の配線層と、第1の配線層と第2の配線層との間に形成される絶縁層とを備えた配線パターンの形成方法であって、所定の方向へ延びる第1のパターンと、第1のパターンの端部から隙間を隔てた位置にて所定の方向へ延びる第2のパターンと、第1のパターンの端部と第2のパターンとの間にて隙間を隔てて島状に配置されるダミーパターンとを含む第1の配線層を形成する第1の工程と、少なくとも第1のパターンのダミーパターンに隣接する端部を露出させる開口部を含む絶縁層を形成する第2の工程と、所定の方向へ延び、絶縁層の開口部において少なくとも第1のパターンに接続され、第2のパターンに対し絶縁層により絶縁され、ダミーパターンと重なる位置に配置される第3のパターンを含む第2の配線層を形成する第3の工程とを備えたことを趣旨とする。
【0014】
上記発明の構成によれば、第1の工程、第2の工程及び第3の工程を経ることにより、第1の配線層と第2の配線層とが絶縁層を介して上下に積層され、第1の配線層を構成する少なくとも第1のパターンと、第2の配線層を構成する第3のパターンとが絶縁層の開口部にて接続される。ここで、第2の工程では、例えば、絶縁材料を塗布することにより、第1の工程で形成された第1のパターンの少なくともダミーパターンに隣接する端部を開口部にて露出させながら絶縁層が形成される。そして、絶縁材料を塗布するときには、絶縁層の開口部の縁を規定する絶縁材料の流れが、ダミーパターンに接して堰き止められることとなる。
【0015】
上記目的を達成するために、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、第1のパターン及び第3のパターンは、それぞれ整列に配置された複数本の配線により構成され、ダミーパターンは、複数の島状の配線により構成され、複数の島状の配線は、少なくとも第3のパターンの複数本の配線が並ぶ方向へ離間して配置されることを趣旨とする。
【0016】
上記発明の構成によれば、請求項4に記載の発明の作用に加え、第1のパターン及び第3のパターンは、それぞれ整列に配置された複数本の配線により構成されるので、第1のパターンの配線と第3のパターンの配線との配置を整合させることにより、第1のパターンと第3のパターンとの位置合わせが容易となる。また、ダミーパターンを構成する複数の島状の配線は、少なくとも第3のパターンの複数本の配線が並ぶ方向へ離間して配置されるので、複数の島状の配線の少なくとも一部が第3のパターンの複数本の配線と重なることとなる。
【0017】
上記目的を達成するために、請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載の発明において、第1のパターン、ダミーパターン及び第3のパターンは、互いに幅の等しい配線により構成されることを趣旨とする。
【0018】
上記発明の構成によれば、請求項4又は5に記載の発明の作用に加え、第1のパターン、ダミーパターン及び第3のパターンが、互いに幅の等しい配線により構成されるので、第3の工程において、第1のパターン及びダミーパターンと、第3のパターンとの位置合わせが容易となる。
【0019】
上記目的を達成するために、請求項7に記載の発明は、請求項4乃至6の何れか一つに記載の発明において、絶縁層は、絶縁材料をインクジェットにより所定のパターンに塗布することにより形成され、絶縁材料が塗布される表面のうち第1の配線層が形成されていない下地表面の方が第1の配線層の表面よりも絶縁材料に対する撥液性が高いことを趣旨とする。
【0020】
上記発明の構成によれば、請求項4乃至6の何れか一つに記載の発明の作用に加え、絶縁材料が塗布される表面のうち第1の配線層が形成されていない下地表面の方が第1の配線層の表面よりも絶縁材料に対する撥液性が高いことから、第1の配線層が形成されていない下地表面にて絶縁材料に塗れ広がりによる流れが生じる。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に記載の発明によれば、従来技術とは異なり、工程数と製造コストの増加を抑えながら、開口部を有する絶縁層を位置精度良く形成することができ、特に、開口部を精度良く形成することができる。
【0022】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、開口部において少なくとも第1のパターンと第3のパターンを精度良く接続することができる。
【0023】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2に記載の発明の効果に加え、上下に配置される第1のパターン及びダミーパターンと、第3のパターンとの間で、位置合わせの精度を向上させることができる。
【0024】
請求項4に記載の発明によれば、従来技術とは異なり、工程数と製造コストの増加を抑えながら、開口部を有する絶縁層を位置精度良く形成することができ、特に、開口部を精度良く形成することができる。
【0025】
請求項5に記載の発明によれば、請求項4に記載の発明の効果に加え、少なくとも第1のパターンと第3のパターンを精度良く接続することができる。
【0026】
請求項6に記載の発明によれば、請求項4又は5に記載の発明の効果に加え、上下に配置される第1のパターン及びダミーパターンと、第3のパターンとの間で、位置合わせの精度を向上させることができる。
【0027】
請求項7に記載の発明によれば、この配線パターンを形成するに際して、請求項4乃至6の何れか一つに記載の形成方法に係る効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】第1実施形態に係り、電気回路の基板とその上に形成された配線パターンの一部を示す平面図。
【図2】同実施形態に係り、基板と配線パターンの一部を示す図1のA−A線断面図。
【図3】同実施形態に係り、第1の配線層の一部を示す平面図。
【図4】同実施形態に係り、絶縁層の一部を示す平面図。
【図5】同実施形態に係り、第2の配線層の一部を示す平面図。
【図6】同実施形態に係り、配線パターンの形成方法を示すフローチャート。
【図7】同実施形態に係り、基板とその上に形成された第1の配線層の一部を示す平面図。
【図8】同実施形態に係り、基板と第1の配線層の一部を示す図7のB−B線断面図。
【図9】同実施形態に係り、基板とその上に形成された第1の配線層及び絶縁層の一部を示す平面図。
【図10】同実施形態に係り、基板と第1の配線層及び絶縁層の一部を示す図9のC−C線断面図。
【図11】同実施形態に係り、実際の基板上に形成される第1の配線層(ダミーパターンを含む。)の様子を示す平面図。
【図12】同実施形態に係り、実際の基板上に形成される第1の配線層(ダミーパターンを含む。)と絶縁層の様子を示す平面図。
【図13】同実施形態に係り、実際の基板上に形成される第1の配線層(ダミーパターンを含む。)、絶縁層及び第2の配線層の様子を示す平面図。
【図14】同実施形態に係り、実際の基板上に形成される第1の配線層(ダミーパターンを含まない。)と絶縁層の様子を示す平面図。
【図15】第2実施形態に係り、基板とその上に形成された第1の配線層及び絶縁層の一部を示す平面図。
【図16】同実施形態に係り、基板と第1の配線層及び絶縁層の一部を示す図15のE−E線断面図。
【図17】第3実施形態に係り、第1の配線層の一部を示す平面図。
【図18】第4実施形態に係り、第1の配線層の一部を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
<第1実施形態>
以下、本発明における配線パターン及びその形成方法を具体化した第1実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0030】
図1に、この実施形態の電気回路の基板1とその上に形成された配線パターン2の一部を平面図により示す。図2に、基板1と配線パターン2の一部を、図1のA−A線断面図により示す。図1,2は、電気回路の基板全体の一部を想定したものである。この配線パターン2は、銀等の金属材料よりなる第1の配線層3(便宜上白抜きで示す。)と、銀等の金属材料よりなる第2の配線層4(便宜上メッシュを付して示す。)と、第1の配線層3と第2の配線層4との間に形成される樹脂よりなる絶縁層5(便宜上ドットを付して示す。)とを備える。図1において、本実施形態では、絶縁層5は、透明性を有することから、絶縁層5の下側に位置する第1の配線層3が実線で表される。
【0031】
図3に、第1の配線層3の一部を平面図により示す。図3に示すように、第1の配線層3は、第1のパターン11、島状のダミーパターン12及び第2のパターン13を備える。第1のパターン11は、ほぼ直角に屈曲して整列に配置された互いに幅の等しい複数本の配線11aを含み、それらの一端部が、紙面左右方向である第1の方向D1へ延び、他端部が、紙面上下方向である第2の方向D2へ延びる。第2のパターン13は、第1のパターン11の端部から第1の方向D1へ隙間を隔てた位置にて配置され、整列に配置された複数本の配線13aを含む。これら配線13aは、互いに幅が等しく、上下方向に延在する部分を含む。島状のダミーパターン12は、第1のパターン11の端部と第2のパターン13との間にて隙間を隔てて配置され、整列に配置された互いに幅の等しい複数の配線12aを含む。ここで、「ダミーパターン」は、電気的に機能しなパターンを意味する。この実施形態で、第1の配線層3は「3〜4(μm)」程度の厚みを有し、各配線11a,12a,13aは「250(μm)」程度の幅を有する。
【0032】
図4に、絶縁層5の一部を平面図により示す。図4に示すように、絶縁層5は、基板1のほぼ全面を覆う面積を有し、その中に開口部5aを含む。この実施形態で、絶縁層5は「10(μm)」程度の厚みを有する。
【0033】
図5に、第2の配線層4の一部を平面図により示す。図5に示すように、第2の配線層4は、第3のパターン14を含む。第3のパターン14は、ほぼ直角に屈曲して整列に配置された互いに幅の等しい複数本の配線14aから構成される。第3のパターン14の一端部は、紙面左右方向である第1の方向D1へ延び、他端部が、紙面上下方向である第2の方向D2へ延びる。この実施形態で、第2の配線層4は「3〜4(μm)」程度の厚みを有し、配線14aは「250(μm)」程度の幅を有する。
【0034】
次に、上記した配線パターンの形成方法につき、図6に示すフローチャートを参照して説明する。
【0035】
先ず、図6(1)に示す「第1の工程」では、第1の配線層3を形成する。図7に、基板1とその上に形成された第1の配線層3の一部を平面図により示す。図8に、基板1と第1の配線層3の一部を、図7のB−B線断面図により示す。すなわち、この第1の工程では、インクジェットから金属材料を吐出することにより、図7,8に示すように、第1の方向D1へ延びる第1のパターン11と、第1のパターン11の一端部から隙間を隔てた位置にて第2の方向D2へ延びる部分を含む第2のパターン13と、第1のパターン11の一端部と第2のパターン13との間にて隙間を隔てて島状に配置されるダミーパターン12とを基板1の上に形成する。
【0036】
次に、図6(2)に示す「第2の工程」では、絶縁層5を形成する。図9に、基板1とその上に形成された第1の配線層3及び絶縁層5の一部を平面図により示す。図10に、基板1と第1の配線層3及び絶縁層5の一部を、図9のC−C線断面図により示す。すなわち、第2の工程では、インクジェットから液状の絶縁材料を吐出して塗布することにより、図9,l0に示すように、第1の配線層3を構成する第1のパターン11の少なくともダミーパターン12に隣接する端部、及びダミーパターン12の一部を露出させる開口部5aを含む絶縁層5を基板1の上に形成する。ここで、絶縁材料が塗布される表面のうち第1の配線層3が形成されていない下地表面(基板1の表面)の方が第1の配線層3の表面よりも絶縁材料に対する撥液性が高くなっている。このため、第1の配線層3が形成されていない下地表面(基板1の表面)にて絶縁材料に塗れ広がりによる流れが生じる。また、絶縁材料を塗布するときには、絶縁層5の開口部5aの縁を規定する絶縁材料の流れが、ダミーパターン12に接して堰き止められる。
【0037】
次に、図6(3)に示す「第3の工程」では、第2の配線層4を形成する。すなわち、第3の工程では、インクジェットから金属材料を吐出することにより、図1,2に示すように、第1の方向D1へ延び、絶縁層5の開口部5aにおいて第1の配線層3の第1のパターン11及びダミーパターン12と接続され、第2のパターン13に対し絶縁層5により絶縁される第3のパターン14を基板1の上に形成する。
【0038】
以上説明したこの実施形態の配線パターン及びその形成方法によれば、第1の工程、第2の工程及び第3の工程を経ることにより、図1,2に示すように、第1の配線層3と第2の配線層4とが絶縁層5を介して上下に積層され、第1の配線層3を構成する第1のパターン11及びダミーパターン12と、第2の配線層4を構成する第3のパターン14とが、絶縁層5の開口部5aにて接続される。ここで、第2の工程では、液状の絶縁材料をインクジェットにより塗布することにより、第1の工程で形成された第1のパターン11のダミーパターン12に隣接する端部、及びダミーパターン12の一部を開口部5aにて露出させながら絶縁層5が形成される。そして、液状の絶縁材料を塗布するときには、絶縁層5の開口部5aの縁を規定する絶縁材料の流れが、液状の絶縁材料の表面張力の作用によりダミーパターン12に接して堰き止められる。液状の絶縁材料は、表面張力により、導体であるダミーパターン12に引き寄せられる傾向があることから、このような現象が生じるのである。この結果、開口部5aの縁がダミーパターン12を越えて第2のパターン13へ向けて広がることを防止することができる。これにより、図9に2点鎖線で示すように、開口部5aが広がり過ぎてダミーパターン12に隣接する第2のパターン13の一部を露出させるようなことを防止することができる。このため、従来技術とは異なり、工程数と製造コストの増加を抑えながら、開口部5aを有する絶縁層5を位置精度良く形成することができ、特に、開口部5aを所定の位置にて所定の大きさで精度良く形成することができる。つまり、絶縁層5の開口部5aの定置性を向上させることができる。
【0039】
ここで、実際の基板上に形成される第1の配線層と絶縁層の様子を、図11〜13に、平面図により示す。「第1の工程」では、図11に示すように、基板1の上に第1の配線層3が形成される。ここで、第1のパターン11と第2のパターン13との間には、島状のダミーパターン12が隙間を隔てて形成されることが分かる。
【0040】
その後、「第2の工程」では、図12に示すように、基板1の上にて、第1の配線層3の上に、開口部5aを含む絶縁層5が形成される。ここで、図12に示すように、開口部5aの中には、第1の配線層3を構成する第1のパターン11の端部及びダミーパターン12のそれぞれ一部が露出していることが分かる。また、絶縁層5の開口部5aの図中左側の縁を規定する絶縁材料の流れが、第1のパターン11に接して堰き止められることが分かる。同様に、開口部5aの図中右側の縁を規定する絶縁材料の流れが、ダミーパターン12に接して堰き止められることが分かる。
【0041】
その後、「第3の工程」では、図13に示すように、絶縁層5の開口部5aにて第1の配線層3の第1のパターン11及びダミーパターン12と接続され、第2のパターン13に対し絶縁層5により絶縁される第2の配線層4の第3のパターン14が形成される。ここで、ダミーパターン12は、第3のパターン14によって隠れることが分かる。
【0042】
これに対し、図14に示すように、第1のパターン11と第2のパターン13との間に島状のダミーパターンを持たない第1の配線層3では、その上に形成した絶縁層5の開口部5aの図中右側の縁を規定する絶縁材料の流れが、第2のパターン13にまで及び、第2のパターン13の一部が開口部5aから露出していることが分かる。従って、図12と図14との比較から、本実施形態における島状のダミーパターン12による効果が明らかである。
【0043】
この実施形態では、ダミーパターン12が島状に形成され、それを構成する複数の配線12aが互いに分離している。このため、ダミーパターン12に、第2の配線層4を構成する第3のパターン14が接続されても、第3のパターン14がダミーパターン12によって短絡することがない。
【0044】
この実施形態では、第1の配線層3を構成する第1のパターン11及びダミーパターン12と、第2の配線層4を構成する第3のパターン14が、それぞれ整列に配置された複数本の配線11a,12a,14aにより構成される。従って、開口部5aにおいて、第1のパターン11の配線11a及びダミーパターン12の配線12aと、第3のパターン14の配線14aとの配置を整合させることにより、第1のパターン11と第3のパターン14との位置合わせが容易となる。このため、開口部5aにおいて、第1のパターン11及びダミーパターン12と、第3のパターン14とを精度良く接続することができる。
【0045】
この実施形態では、第1のパターン11、ダミーパターン12及び第3のパターン14が、互いに幅の等しい配線11a,12a,14aにより構成される。従って、第3の工程で、開口部5aにおいて、第1のパターン11及びダミーパターン12と、第3のパターン14との位置合わせが容易となる。このため、上下に配置される第1のパターン11及びダミーパターン12と、第3のパターン14との間で、位置合わせの精度を向上させることができる。
【0046】
この実施形態では、絶縁層5に開口部5aを形成するので、開口部5aの分だけ絶縁材料の削減に有効である。
【0047】
<第2実施形態>
次に、本発明における配線パターン及びその形成方法を具体化した第2実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0048】
なお、以下の説明において、第1実施形態と同等の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略し、異なった点を中心に説明する。
【0049】
図15に、この実施形態において、基板1とその上に形成された第1の配線層3及び絶縁層5の一部を平面図により示す。図16に、この実施形態において、基板1と第1の配線層4及び絶縁層5の一部を、図15のE−E線断面図により示す。この実施形態では、第1の配線層3と絶縁層5との関係において第1実施形態と構成が異なる。すなわち、図15,16に示すように、この実施形態では、絶縁層5の開口部5aにつき、第1の方向D1における幅が第1実施形態のそれよりも狭くなっており、第1のパターン11の端部のみが露出し、ダミーパターン12が露出していない点で第1実施形態と異なる。ダミーパターン12は、絶縁層5により覆われ、開口部5aの図面右側の縁は、第1のパターン11の端部とダミーパターン12との間に位置している。液状の絶縁材料の粘性が比較的高い場合は、開口部5aの縁を規定する絶縁材料の流れがダミーパターン12まで及ばないことがある。ただし、この場合でも、条件によっては、開口部5aの縁を規定する絶縁材料の流れがダミーパターン12にまで及ぶことがあり、そのときは、第1実施形態と同様にダミーパターン12が機能して絶縁材料の流れを堰き止めることとなる。これによって、第1実施形態と同等の作用効果を得ることができる。
【0050】
<第3実施形態>
次に、本発明における配線パターン及びその形成方法を具体化した第3実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0051】
図17に、この実施形態における第1の配線層3の一部を平面図により示す。この実施形態では、ダミーパターン12の構成の点で前記各実施形態と異なる。すなわち、この実施形態では、図17に鎖線楕円で囲んで示すように、ダミーパターン12が、二次元的に分散配置した多数のドット状配線12bにより構成される。このように多数のドット状配線12bを分散配置することで、隣り合う配線12bの間の距離が狭くなる。この意味から、「第2の工程」で絶縁材料を塗布するときに、絶縁層5の開口部5aの縁を規定する絶縁材料の流れが、ダミーパターン12に接して堰き止められる機能を高めることができる。
【0052】
<第4実施形態>
次に、本発明における配線パターン及びその形成方法を具体化した第4実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0053】
図18に、この実施形態における第1の配線層3の一部を平面図により示す。この実施形態では、ダミーパターン12の構成の点で前記各実施形態と異なる。すなわち、この実施形態では、図18に鎖線楕円で囲んで示すように、ダミーパターン12が、スリット状に並列配置された多数の棒状配線12cにより構成される。このように多数の棒状配線12cをスリット状に並列配置することで、隣り合う配線12cの間の距離が狭くなる。この意味から、「第2の工程」で絶縁材料を塗布するときに、絶縁層5の開口部5aの縁を規定する絶縁材料の流れが、ダミーパターン12に接して堰き止められる機能を高めることができる。
【0054】
なお、この発明は前記各実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で構成の一部を適宜に変更して実施することができる。
【0055】
例えば、前記各実施形態における各配線層3,4を構成する各パターン11,13,14の配線11a,13a,14aの本数を適宜に変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
この発明は、インクジェット法等の塗布法や印刷法により電気回路の基板上に金属配線等の配線パターンを形成する技術に利用でき、例えば、位置センサ等の小型精密な機器の製造に利用できる。
【符号の説明】
【0057】
1 基板
2 配線パターン
3 第1の配線層
4 第2の配線層
5 絶縁層
5a 開口部
11 第1のパターン
11a 配線
12 ダミーパターン
12a 配線
12b ドット状配線
12c 棒状配線
13 第2のパターン
13a 配線
14 第3のパターン
14a 配線
D1 第1の方向(所定の方向)
D2 第2の方向(所定の方向)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上に形成され、第1の配線層と、第2の配線層と、前記第1の配線層と前記第2の配線層との間に形成された絶縁層とを備えた配線パターンであって、
前記第1の配線層は、所定の方向へ延びる第1のパターンと、前記第1のパターンの端部から隙間を隔てた位置にて所定の方向へ延びる第2のパターンと、前記第1のパターンの端部と前記第2のパターンとの間にて隙間を隔てて島状に配置されたダミーパターンとを含むことと、
前記絶縁層は、少なくとも前記第1のパターンの前記ダミーパターンに隣接する端部を露出させる開口部を含むことと、
前記第2の配線層は、所定の方向へ延び、前記絶縁層の前記開口部において少なくとも前記第1のパターンに接続され、前記第2のパターンに対し前記絶縁層により絶縁される第3のパターンを含むことと、
前記ダミーパターンは、少なくとも一部が前記第3のパターンと重なる位置に配置されることと
を備えたことを特徴とする配線パターン。
【請求項2】
前記第1のパターン及び前記第3のパターンは、それぞれ整列に配置された複数本の配線により構成され、前記ダミーパターンは、複数の島状の配線により構成され、前記複数の島状の配線は、少なくとも前記第3のパターンの前記複数本の配線が並ぶ方向へ離間して配置されることを特徴とする請求項1に記載の配線パターン。
【請求項3】
前記第1のパターン、前記ダミーパターン及び前記第3のパターンは、互いに幅の等しい配線により構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の配線パターン。
【請求項4】
基板の上に形成され、第1の配線層と、第2の配線層と、前記第1の配線層と前記第2の配線層との間に形成される絶縁層とを備えた配線パターンの形成方法であって、
所定の方向へ延びる第1のパターンと、前記第1のパターンの端部から隙間を隔てた位置にて所定の方向へ延びる第2のパターンと、前記第1のパターンの端部と前記第2のパターンとの間にて隙間を隔てて島状に配置されるダミーパターンとを含む第1の配線層を形成する第1の工程と、
少なくとも前記第1のパターンの前記ダミーパターンに隣接する端部を露出させる開口部を含む絶縁層を形成する第2の工程と、
所定の方向へ延び、前記絶縁層の前記開口部において少なくとも前記第1のパターンに接続され、前記第2のパターンに対し前記絶縁層により絶縁され、前記ダミーパターンと重なる位置に配置される第3のパターンを含む第2の配線層を形成する第3の工程と
を備えたことを特徴とする配線パターンの形成方法。
【請求項5】
前記第1のパターン及び前記第3のパターンは、それぞれ整列に配置された複数本の配線により構成され、前記ダミーパターンは、複数の島状の配線により構成され、前記複数の島状の配線は、少なくとも前記第3のパターンの前記複数本の配線が並ぶ方向へ離間して配置されることを特徴とする請求項4に記載の配線パターンの形成方法。
【請求項6】
前記第1のパターン、前記ダミーパターン及び前記第3のパターンは、互いに幅の等しい配線により構成されることを特徴とする請求項4又は5に記載の配線パターンの形成方法。
【請求項7】
前記絶縁層は、絶縁材料をインクジェットにより所定のパターンに塗布することにより形成され、前記絶縁材料が塗布される表面のうち前記第1の配線層が形成されていない下地表面の方が前記第1の配線層の表面よりも前記絶縁材料に対する撥液性が高いことを特徴とする請求項4乃至6の何れか一つに記載の配線パターンの形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−134429(P2012−134429A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287497(P2010−287497)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000116574)愛三工業株式会社 (1,018)
【Fターム(参考)】