説明

配線ボックス

【課題】ビス保持手段によって固定ビスを底壁に強固に保持することができるとともにビス保持手段からの固定ビスの取り外しを簡単に行うことができる配線ボックスを提供する。
【解決手段】配線ボックス10の底壁12には固定ビス20を立てた状態に保持するビス保持手段30が設けられている。ビス保持手段30は、固定ビス20の強制的な螺入が可能な底壁12から立設されたビス螺入部31と、ビス螺入部31よりも固定ビス20の螺入方向奥側に位置するとともに固定ビス20の先端部21aより大径に形成され、ビス螺入部31に螺入された固定ビス20の先端部21aが配置される螺入孔31aを有する。さらに、ビス保持手段30は、固定ビス20をビス螺入部31に対し傾動させる際に先端部21aを逃がすためのビス逃げ部32をビス螺入部31に有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボックス本体内から固定用貫通孔に挿通された固定ビスを造営材に強制的に螺入することにより造営材に固定される配線ボックスに関する。
【背景技術】
【0002】
建築物における軽量間仕切壁は、軽量形鋼材を立設するとともに軽量形鋼材を挟むようにして壁材(例えば石膏ボード)を立設することで構築される。この軽量間仕切壁に配線器具を設置するため、軽量間仕切壁内には一面に開口する有底四角箱状の配線ボックスが設置される。この配線ボックスは、側壁に形成された貫通孔に挿通された固定ビスを軽量形鋼材に強制的に螺入することにより軽量形鋼材に固定されている。
【0003】
このような配線ボックスにおいて、配線ボックスの軽量形鋼材への固定作業効率を向上させるため、固定ビスは側壁に形成されたビス保持手段に保持されて配線ボックスに予め装着されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1のビス保持手段(ねじ挟持部)は、配線ボックスの貫通孔に形成されている。すなわち、特許文献1のビス保持手段は、貫通孔の一端を固定ビスの螺子部における直径より短くすることで形成され、貫通孔に固定ビスの螺子部を圧入することで固定ビスが配線ボックスに装着されている。そして、特許文献1の配線ボックスを軽量形鋼材に固定する作業は、ビス保持手段に保持された固定ビスをそのまま軽量形鋼材に螺入することで行われ、結果として配線ボックスの軽量形鋼材への固定作業効率が向上する。
【0004】
しかし、特許文献1の配線ボックスにおいて、ビス保持手段に固定ビスが保持された状態では、固定ビスが貫通孔を形成する側壁に直接螺着されている。このため、固定ビスを軽量形鋼材に螺入する際、固定ビスの回転と共に配線ボックスも回転してしまい、配線ボックスを手で押さえながら固定ビスの軽量形鋼材への螺入を行わなければならず、非常に面倒であった。そこで、固定ビスを配線ボックスの側壁ではなく、底壁に保持させた配線ボックスが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
特許文献2の配線ボックス(配線器具ボックス)は底壁に固定ビスの保持手段が設けられている。保持手段は、底壁から立設された支柱と、底壁から離間するように支柱の先端から延設された保持部とからなる。保持部には固定ビスが貫通可能な穴が形成されるとともに、保持部における支柱と反対側は薄肉部となっている。固定ビスが保持部の穴に差し込まれると固定ビスが保持部に保持されるとともに、固定ビスが保持手段によって配線器具ボックスに装着される。そして、特許文献2の配線ボックスを軽量形鋼材に固定する際に、固定ビスは保持部から取り外され、固定ビスを軽量形鋼材に螺入する際、固定ビスの回転と共に配線ボックスが回転することが回避される。
【特許文献1】実開昭54−107099号公報
【特許文献2】実開昭62−177224号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献2において、保持部から固定ビスが脱落するのを防止するため、固定ビスは保持部に強制的に圧入されている。このため、保持部に圧入された固定ビスを保持部から取り外すには、固定ビスによって薄肉部を破断する必要があり、固定ビスを保持手段から取り外す作業が非常に大変であるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、ビス保持手段によって固定ビスを底壁に強固に保持することができるとともにビス保持手段からの固定ビスの取り外しを簡単に行うことができる配線ボックスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、底壁と、該底壁から立設された側壁とから有底箱状に形成されたボックス本体を備えるとともに前記側壁に固定ビスを貫通させる固定用貫通孔が形成され、前記ボックス本体内から前記固定用貫通孔に挿通された前記固定ビスを造営材に強制的に螺入することにより前記造営材に固定される配線ボックスであって、前記底壁には前記固定ビスを立てた状態に保持するビス保持手段が設けられており、前記ビス保持手段が、前記固定ビスの強制的な螺入が可能な前記底壁から立設されたビス螺入部と、前記ビス螺入部よりも前記固定ビスの螺入方向奥側に位置するとともに前記固定ビスの先端部より大径に形成されて前記固定ビスの先端部が配置されるビス配置空間と、前記ビス螺入部に形成されるとともに前記固定ビスを前記ビス螺入部に対し傾動させる際に前記先端部を逃がすためのビス逃げ部と、を有することを要旨とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の配線ボックスにおいて、前記ビス配置空間は前記底壁を貫通して形成され、さらに、前記底壁には前記ビス配置空間及びビス逃げ部に連通し、傾動する固定ビスの先端部を通過させるビス通過部が形成されていることを要旨とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の配線ボックスにおいて、前記ビス保持手段は、前記底壁における前記側壁の内面近傍に設けられていることを要旨とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の配線ボックスにおいて、前記ビス逃げ部は、前記ビス螺入部における前記側壁に対向する位置に形成され、前記固定ビスは前記側壁から離れる側に向けて傾動可能にビス保持手段に保持されていることを要旨とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の配線ボックスにおいて、前記ビス螺入部には、該ビス螺入部に螺入された固定ビスの傾動の際に該固定ビスの螺子部が圧入される傾動用凹部が凹設されていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ビス保持手段によって固定ビスを底壁に強固に保持することができるとともにビス保持手段からの固定ビスの取り外しを簡単に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図6にしたがって説明する。以下の説明において配線ボックス及び軽量形鋼材の「上」「下」は、図1に示す矢印Y1の方向を上下方向とし、「左」「右」は、図1に示す矢印Y2の方向を左右方向とする。
【0015】
図1に示すように、配線ボックス10は軽量間仕切壁(図示せず)に配線器具(図示せず)を設置するため、軽量間仕切壁を形成する造営材としての軽量形鋼材Pに固定されるものである。なお、軽量形鋼材Pは、薄鋼板からなり、軽量形鋼材Pの立設方向に対して直交する方向への平断面視が略C字状をなすC型鋼である。軽量形鋼材Pは、立設方向に延びる開口部Paと、開口部Paに相対向する背面板部Pbと、背面板部Pbを挟む一対の側板部Pcとからなる。また、開口部Paは、一対の側板部Pcから延設された相対向する一対のリップ部Pdの間に形成されている。
【0016】
配線ボックス10は合成樹脂材料よりなり、一面に開口する有底四角箱状に形成されたボックス本体11を備えている。ボックス本体11は、四角板状をなす底壁12と、底壁12の周縁から立設された側壁としての上側壁13、下側壁14、左側壁15、及び右側壁16とから形成されている。左側壁15の内面には、左側壁15の外面側に向けて凹むとともに細長に延びる凹部15bが、左側壁15の上下方向に間隔をおいて3つ形成されている。
【0017】
左側壁15において、各凹部15bそれぞれには、半円孔状をなすとともに左側壁15を厚み方向に貫通する固定用貫通孔15aが形成されている。左側壁15の上部に形成された凹部15bには固定用貫通孔15aが1つ、中央部に形成された凹部15bには固定用貫通孔15aが2つ、下部に形成された凹部15bには固定用貫通孔15aが1つ形成されている。
【0018】
各固定用貫通孔15aは、配線ボックス10を軽量形鋼材Pに固定するための固定ビス20が挿通可能に形成されている。なお、図4(a)に示すように、固定ビス20は、螺子部21と頭部22とからなり、螺子部21の先端部21aは、螺子部21から先端に向かうに従い尖るように形成されている。よって、固定ビス20において、先端部21aの直径は螺子部21の直径より小さくなっている。図1に示すように、各固定用貫通孔15aは固定ビス20の螺子部21の直径よりも大きく形成されている。また、左側壁15の上下方向における中央部には把持部23が左側壁15から外方へ向けて突設されている。
【0019】
底壁12において、左側壁15の内面近傍であって、上下両側の凹部15bと対向する位置それぞれにはビス保持手段30が設けられている。ビス保持手段30は、ビス保持手段30に保持された固定ビス20の頭部22と、凹部15bとの間に指の先端を挿入し、頭部22に指の先端を引っ掛けることができるような隙間が形成されるように左側壁15の内面近傍に設けられている。
【0020】
図2に示すように、ビス保持手段30は、底壁12から立設された略円筒状をなすビス螺入部31を有する。図3(b)に示すように、ビス螺入部31には、ビス螺入部31を立設方向に貫通し、かつ底壁12を厚み方向に貫通する螺入孔31aが形成されている。螺入孔31aの口径は、固定ビス20における螺子部21の直径より僅かに小さく、先端部21aの直径より大きくなっている。そして、図4(a)に示すように、固定ビス20の螺子部21が螺入孔31aに強制的にねじ込まれると、螺入孔31aを形成するビス螺入部31の内面に螺子部21がねじ込まれるとともにビス螺入部31に固定ビス20を立てた状態に保持できるようになっている。
【0021】
固定ビス20の先端部21aが底壁12から突出しないようにビス螺入部31に固定ビス20を螺入させたとき、固定ビス20の先端部21aは、底壁12に形成された螺入孔31a内に位置している。螺入孔31aの口径は、先端部21aより大きいため、先端部21aは螺入孔31aを形成する底壁12に接触することなく螺入孔31a内に配置される。よって、本実施形態では、ビス螺入部31への固定ビス20の螺入方向より奥側となる位置、すなわち螺入孔31aの底壁12側がビス配置空間となっている。
【0022】
図2、図3(a)、及び図3(b)に示すように、ビス螺入部31の左側壁15側には、細溝状のビス逃げ部32がビス螺入部31を立設方向に切り欠いて形成されるとともに、ビス逃げ部32は螺入孔31aに連通するように形成されている。ビス逃げ部32は、ビス螺入部31の先端から基端、すなわちビス螺入部31の先端から底壁12に達するまでを切り欠いて形成されている。ビス螺入部31の周方向に沿ったビス逃げ部32の開口幅は、固定ビス20の先端部21aにおける直径より大きくなっている。このため、ビス螺入部31に保持された固定ビス20を傾動させた際には、固定ビス20の先端部21aはビス逃げ部32を通過できるようになっている。
【0023】
また、ビス螺入部31において、ビス逃げ部32の反対側(ボックス本体11の内方側)には細溝状の傾動用凹部33がビス螺入部31を立設方向に切り欠いて形成されるとともに、傾動用凹部33は螺入孔31aに連通するように形成されている。傾動用凹部33は、ビス螺入部31の先端から基端の直前までビス螺入部31を切り欠いて形成され、傾動用凹部33の内底面には、固定ビス20の傾動の際に、螺子部21が当接する当接段部33aが形成されている。ビス螺入部31の周方向に沿った傾動用凹部33の開口幅は、固定ビス20における螺子部21の直径より僅かに小さくなっている。
【0024】
図3(b)に示すように、底壁12において、螺入孔31aよりも左側壁15側には、細長に延びるビス通過部35が底壁12を厚み方向に貫通して形成されている。そして、ビス通過部35はビス逃げ部32に連通するとともに螺入孔31a(ビス配置空間)に連通するように形成されている。ビス螺入部31の周方向に沿ったビス通過部35の開口幅は、固定ビス20における先端部21aの直径より僅かに大きくなっている。このため、固定ビス20の先端部21aはビス通過部35を通過可能になっている。そして、ビス保持手段30は、ビス逃げ部32及び傾動用凹部33を有するビス螺入部31を有するとともに、螺入孔31aよりなるビス配置空間及びビス通過部35を有している。
【0025】
さて、図4(a)に示すように、ビス保持手段30に固定ビス20を保持させるには、螺子部21を螺入孔31aにねじ込む。すると、螺子部21が螺入孔31aを形成するビス螺入部31の内面に螺入される。このとき、固定ビス20の先端部21aが底壁12の下面から突出しない位置まで螺子部21が螺入される。すると、螺子部21がビス螺入部31によって保持されるとともに先端部21aが螺入孔31a(ビス配置空間)に配置される。螺入孔31a(ビス配置空間)内に配置された先端部21aは、ビス螺入部31によって保持されていない。ビス保持手段30に保持された固定ビス20は、頭部22がボックス本体11の開口側に臨むとともに左側壁15の内面に沿うように底壁12から立ち上がった状態になっている。さらに、頭部22と凹部15bとの間には、僅かな隙間が形成されている。
【0026】
ビス保持手段30に保持された固定ビス20を取り外すには、まず、頭部22と凹部15bとの間に指を入れ、指の先端を頭部22に引っ掛けて固定ビス20を左側壁15から離れる側に向けて押圧する。すると、図4(b)に示すように、螺子部21が傾動用凹部33内に圧入され、螺子部21によってビス螺入部31が押し広げられるとともに、ビス逃げ部32も押し広げられる。さらに、螺子部21が当接段部33aに当接すると、固定ビス20は当接段部33aを支点として傾動する。
【0027】
そして、図4(c)及び図5に示すように、固定ビス20が傾動すると、固定ビス20の先端部21aは螺入孔31a(ビス配置空間)からビス通過部35を通過し、さらに、ビス逃げ部32を通過していく。このため、固定ビス20の傾動の際に、先端部21aが底壁12やビス螺入部31に干渉することが防止される。そして、先端部21aがビス逃げ部32を通過すると、固定ビス20をビス螺入部31から取り外すことができる。
【0028】
その後、図6に示すように、配線ボックス10の左側壁15外面を軽量形鋼材Pのリップ部Pdに当接させながら、固定ビス20を固定用貫通孔15aに挿通してリップ部Pdに強制的に螺入する。このとき、固定用貫通孔15aは固定ビス20の螺子部21の直径より大きいため、固定ビス20の回転と共に配線ボックス10が回転することが防止される。そして、固定ビス20がリップ部Pdに螺入されると、配線ボックス10が軽量形鋼材Pに固定される。
【0029】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)底壁12に設けられたビス保持手段30は、固定ビス20が強制的に螺入されるビス螺入部31を有し、固定ビス20をビス螺入部31に螺着することができるため、ビス保持手段30によって底壁12に固定ビス20を強固に保持することができる。よって、配線ボックス10が振動を受けたりしても固定ビス20がビス保持手段30から脱落することを防止することができる。また、ビス保持手段30において、ビス螺入部31には、固定ビス20を傾動させた際に固定ビス20の先端部21aを通過させるためのビス逃げ部32が形成されている。このため、ビス螺入部31が固定ビス20傾動の障害となることがなく、固定ビス20を容易に傾動させることができ、ビス保持手段30からの固定ビス20の取り外しを簡単に行うことができる。
【0030】
(2)ビス保持手段30は底壁12に設けられ、ビス保持手段30により固定ビス20を底壁12から立てた状態に保持することができる。よって、固定ビス20は、頭部22がボックス本体11の開口側に向けた状態でビス保持手段30に保持され、固定ビス20を容易に摘むことができる。その結果として、例えば、固定ビス20の軸方向が底壁12に沿うように固定ビス20が配線ボックス10に保持されている場合に比して、配線ボックス10に装着された固定ビス20を容易に取り外すことができ、固定ビス20を用いた配線ボックス10の固定作業を速やかに行うことができる。
【0031】
(3)ビス保持手段30が底壁12に設けられているため、固定用貫通孔15aに固定ビス20を保持させる必要が無くなる。よって、固定用貫通孔15aを螺子部21の直径より大きくすることができ、配線ボックス10を軽量形鋼材Pに固定する際、固定ビス20の回転と共に配線ボックス10が回転することを防止することができる。その結果として、配線ボックス10の回転を防止するため、手で配線ボックス10を抑える必要がなくなる。
【0032】
(4)ビス保持手段30は、固定ビス20の保持のために螺子部21が強制的に螺入されるビス螺入部31を有する。そして、固定ビス20を回転させることによって固定ビス20はビス螺入部31を螺進していくため、固定ビス20のビス螺入部31に対する入り込み量を微調節することができる。よって、固定ビス20をビス保持手段30に保持させる際、固定ビス20の先端部21aが底壁12から突出しないようにする作業を容易に行うことができる。
【0033】
(5)螺入孔31aはビス螺入部31から底壁12を貫通するように形成され、底壁12に形成された螺入孔31a(ビス配置空間)内には固定ビス20の先端部21aが配置される。すなわち、底壁12の厚み分を利用して固定ビス20を保持することができる。よって、ビス保持手段30に保持された固定ビス20の、ボックス本体11内に向けた底壁12からの突出量を小さくすることができる。そして、底壁12には螺入孔31aに連通するようにビス通過部35が形成されているため、固定ビス20の傾動の際に底壁12が障害となることがなく、固定ビス20を容易に傾動させることができる。
【0034】
(6)ビス保持手段30は左側壁15の内面近傍に設けられている。このため、ビス保持手段30に保持された固定ビス20は、左側壁15に向けて傾動させにくくなる。すなわち、頭部22が左側壁15に向かうことで固定ビス20を摘みにくくなる方向へ固定ビス20を傾動させにくくなる。よって、ビス保持手段30を左側壁15の内面近傍に設けることで、頭部22を摘みやすい方向へ固定ビス20が傾動させられるようにすることができる。
【0035】
(7)左側壁15の内面近傍に設けられビス保持手段30において、ビス逃げ部32が左側壁15側に形成されている。このため、ビス保持手段30に保持された固定ビス20は、左側壁15から離れるようにボックス本体11の内方に向けて傾動させられ、傾動させた固定ビス20の頭部22をボックス本体11内の広い空間に配置させることができる。その結果として、傾動させた固定ビス20の頭部22を容易に摘むことができる。
【0036】
(8)ビス螺入部31には、固定ビス20の傾動の際に螺子部21が圧入される傾動用凹部33が凹設されている。そして、傾動用凹部33に固定ビス20の螺子部21が圧入されると、ビス螺入部31が押し広げられるとともにビス逃げ部32も広げられる。よって、ビス逃げ部32の開口幅が広がり、固定ビス20の先端部21aがビス逃げ部32に干渉することを確実に防止することができ、固定ビス20の傾動を容易に行うことができる。
【0037】
(9)ビス螺入部31には、固定ビス20の傾動の際に螺子部21が圧入される傾動用凹部33が凹設されている。このため、固定ビス20を傾動させ、先端部21aがビス逃げ部32を通過した後も、螺子部21は傾動用凹部33内に圧入されている。よって、固定ビス20の傾動をビス螺入部31に保持させたまま行うことができ、固定ビス20の傾動の際に、固定ビス20がビス螺入部31から脱落しにくくすることができる。
【0038】
(10)ビス螺入部31には、固定ビス20の傾動の際に螺子部21が圧入される傾動用凹部33が凹設されるとともに、傾動用凹部33の内底面に当接段部33aが形成されている。そして、固定ビス20の傾動の際、固定ビス20は当接段部33aを支点として傾動する。このため、例えば、固定ビス20がビス螺入部31の先端を支点として傾動する場合に比して、固定ビス20の先端部21a側の傾動範囲を狭くすることができる。よって、底壁12に形成するビス通過部35の長さを短くすることができる。
【0039】
(11)ビス保持手段30は、固定ビス20が強制的に螺入されるビス螺入部31を有し、固定ビス20をビス螺入部31に螺着することで固定ビス20を強固に保持できる。そして、ビス保持手段30にビス逃げ部32を形成することにより、ビス保持手段30に保持された固定ビス20を傾動させ、ビス保持手段30から固定ビス20を取りは外ことができる。したがって、固定ビス20をビス螺入部31から螺退させてビス保持手段30から取り外す場合に比して、固定ビス20の取り外しを容易に行うことができる。
【0040】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 実施形態では、頭部22と凹部15bとの間に指を入れ、指の先端を頭部22に引っ掛けて固定ビス20を傾動させたが、左側壁15に凹部15bが形成されていない配線ボックス10においては、頭部22に指の先端を載せた状態で固定ビス20を傾動させてもよい。
【0041】
○ ビス螺入部31の傾動用凹部33は無くてもよい。この場合、固定ビス20はビス螺入部31の先端を支点として傾動する。
○ ビス逃げ部32をビス螺入部31における上側壁13側や下側壁14側に切り欠き形成するとともにそれらビス逃げ部32に連通するようにビス通過部35を底壁12における上側壁13側や下側壁14側に形成する。そして、固定ビス20を上側壁13や下側壁14に向けて傾動させるようにしてもよい。
【0042】
○ ビス保持手段30を、底壁12の中央部に設けてもよい。また、底壁12において、ビス保持手段30に保持された固定ビス20を傾動させた際、頭部22が各側壁13〜16に接触しない位置にビス保持手段30を設けてもよい。
【0043】
○ ビス保持手段30を、底壁12における上側壁13、下側壁14、又は右側壁16の内面近傍に設けてもよい。
○ 底壁12を貫通するまで螺入孔31aを形成せず、ビス螺入部31内のみに螺入孔31aを形成し、さらに、底壁12にビス通過部35を、ビス螺入部31に傾動用凹部33を形成しなくてもよい。この場合、ビス螺入部31の螺入孔31a内にビス配置空間が設けられる。
【0044】
○ 造営材として木柱に本実施形態の配線ボックス10を固定してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】配線ボックス及び軽量形鋼材を示す斜視図。
【図2】ビス保持手段を拡大して示す部分斜視図。
【図3】(a)はビス保持手段を示す平面図、(b)はビス保持手段を示す図3(a)の3b−3b線断面図。
【図4】(a)はビス保持手段に固定ビスを保持させた状態を示す部分断面図、(b)は固定ビスを当接段部を支点として傾動させた状態を示す部分断面図、(c)はさらに固定ビスを傾動させた状態を示す部分断面図。
【図5】固定ビスの先端部がビス逃げ部を通過する状態を示す部分正面図。
【図6】配線ボックスを軽量形鋼材に固定する状態を示す側断面図。
【符号の説明】
【0046】
P…造営材としての軽量形鋼材、10…配線ボックス、11…ボックス本体、12…底壁、13…側壁としての上側壁、14…側壁としての下側壁、15…側壁としての左側壁、15a…固定用貫通孔、16…側壁としての右側壁、20…固定ビス、21…螺子部、21a…先端部、30…ビス保持手段、31…ビス螺入部、31a…ビス配置空間としての螺入孔、32…ビス逃げ部、33…傾動用凹部、35…ビス通過部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底壁と、該底壁から立設された側壁とから有底箱状に形成されたボックス本体を備えるとともに前記側壁に固定ビスを貫通させる固定用貫通孔が形成され、前記ボックス本体内から前記固定用貫通孔に挿通された前記固定ビスを造営材に強制的に螺入することにより前記造営材に固定される配線ボックスであって、
前記底壁には前記固定ビスを立てた状態に保持するビス保持手段が設けられており、
前記ビス保持手段が、
前記固定ビスの強制的な螺入が可能な前記底壁から立設されたビス螺入部と、
前記ビス螺入部よりも前記固定ビスの螺入方向奥側に位置するとともに前記固定ビスの先端部より大径に形成されて前記固定ビスの先端部が配置されるビス配置空間と、
前記ビス螺入部に形成されるとともに前記固定ビスを前記ビス螺入部に対し傾動させる際に前記先端部を逃がすためのビス逃げ部と、を有する配線ボックス。
【請求項2】
前記ビス配置空間は前記底壁を貫通して形成され、さらに、前記底壁には前記ビス配置空間及びビス逃げ部に連通し、傾動する固定ビスの先端部を通過させるビス通過部が形成されている請求項1に記載の配線ボックス。
【請求項3】
前記ビス保持手段は、前記底壁における前記側壁の内面近傍に設けられている請求項1又は請求項2に記載の配線ボックス。
【請求項4】
前記ビス逃げ部は、前記ビス螺入部における前記側壁に対向する位置に形成され、前記固定ビスは前記側壁から離れる側に向けて傾動可能にビス保持手段に保持されている請求項3に記載の配線ボックス。
【請求項5】
前記ビス螺入部には、該ビス螺入部に螺入された固定ビスの傾動の際に該固定ビスの螺子部が圧入される傾動用凹部が凹設されている請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の配線ボックス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−213292(P2009−213292A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−54883(P2008−54883)
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【出願人】(000243803)未来工業株式会社 (550)
【Fターム(参考)】