説明

配線及び配管の支持構造

【課題】アクスル直上の領域の様に振動が激しく且つ支持が困難な領域で、配線及び配管を一緒に且つ確実に支持することが出来る支持構造の提供。
【解決手段】全体がL字形のステー(7)を有し、前記ステー(7)の長片に複数(例えば2箇所)形成された支持部(取付け孔)により剛性が低い配線(20、30)を支持し、ステーの短片に形成された支持部(取付け孔)により剛性が高い配管(40)を支持していることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばハーネスの様な配線と、ブレーキ液圧用配管の様な配管とを、例えばアクスル上の領域等の振動が激しく、且つ支持が困難な領域で確実に支持する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
トラックやバスのように、リヤアクスルがバンジョウタイプの車両では、ブレーキ配管及びABS(自動ブレーキシステム)の車輪速センサ、ブレーキライニング磨耗検知センサ用のハーネスがリヤアクスル上に取付けられている。アクスルは、走行中の路面の凹凸によって、激しく振動する。そのため、リヤアクスル配管及び配線を行う場合には、リヤアクスルの平坦な面に雌ねじを形成した円柱状のボスを溶接し、このボスにステー、クリップを用いてボルトによって固定している。
【0003】
リヤアクスルでは、ディファレンシャルギヤケースが取付けられ、平坦面が少なく、円柱状のボスの取付け場所は限られている。また、リヤアクスルの左右端部はサスペンション部品が取付けられ、リヤアクスルの左右端部近傍でリヤアクスルの上方にはシャシーフレームが迫っている。すなわち、リヤアクスルは相対運動をする部位が多く、且つ全体の空間スペースも少ない。
狭いスペースに配管と配索の双方が行われているため、配管やハーネス(ケーブル)が相互干渉して、破損に至る危険性もある。
【0004】
固定用のステー、クリップの多くは、片持ち梁であり、合理的に配管・配索を行わないと、配管の振動や、ハーネスの揺動で、ボルトが緩み、固定部が外れてしまう危険性がある。固定部が外れれば、配管とハーネスは干渉を起こす恐れがある。かかる干渉は、配管やハーネスの破損の原因ともなりうる。
【0005】
ここで、狭いスペースに対応するため、従来技術によれば例えば図6に示すように、配管とハーネスの双方を1箇所のボスにそれぞれのクリップで取付けることが行われる。
図6において、アクスルハウジング1の垂直面11及び傾斜面12に配管固定用のボス6A、6Bが溶接によって取り付けられている。傾斜面12の固定用の複数のボス6Bには、ブレーキチューブ40がブレーキ配管用クリップ90によって取付けられボルト10によって固定されている。
一方、垂直面11にはハーネス用クリップ80によってハーネス(ケーブル)20が巻き込まれ、ハーネス用クリップ80の取付け穴が固定用ボスの取付け穴に合わせられる。そして、その上から、ブレーキチューブ40を巻き込んだブレーキチューブ用クリップ90が重ねられるようにしてボルト10によって固定されている。
【0006】
図6の垂直面11に取付けられたようなケースでは、ハーネス(ケーブル)20が柔軟性もあって、アクスルの振動によりハーネス20が揺動(図6の矢印Yの動き)した場合は、固定用のボルト10が緩んでしまう可能性がある。固定用のボルト10が緩めば、ブレーキチューブ40もアクスルハウジング1に対して相対動を発生してしまう。ブレーキチューブ40は、図6では図示を省略しているが、この固定箇所の近くのブレーキ本体に接続されている。したがって、ブレーキチューブがアクスルハウジング1に対して相対動きを起こせば、ブレーキチューブ40の端部とブレーキ本体との接続箇所が破損してしまう可能性もある。
【0007】
その他の従来技術として、例えば、複数の配管をクランプする技術が提案されている(特許文献1参照)。
しかし、係る従来技術(特許文献1)では、複数の配管をエンジン周辺の領域でクランプすることを目的としており、例えばアクスル上の領域の様に、振動が激しく且つ支持が困難な領域で配管及び配線を一緒に支持するという問題を解決するものではない。
【特許文献1】実公昭61−8295号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、例えばアクスル上の領域の様に振動が激しく且つ支持が困難な領域で、配線及び配管を一緒に且つ確実に支持することが出来る支持構造の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の配線及び配管の支持構造は、全体がL字形のステー(7)を有し、前記ステー(7)の長片(71)に複数(例えば2箇所)形成された支持部(取付け孔74、75)により剛性が低い配線(20、30)を支持し、ステーの短片(72)に形成された支持部(取付け孔76)により剛性が高い配管(40)を支持していることを特徴としている(請求項1)。
【0010】
本発明において、L字形のステー(7)はアクスル(1)に設けられたアクスルボス(固定用のボス6A)にボルト(10)により固定されており、前記配線(20、30)は車輪速センサの検出信号伝達用ハーネス(20)及び摩耗センサ(ブレーキのライニングの摩耗度合いを知るためのセンサ)の検出信号伝達用ハーネス(30)であり、前記配管(40)はブレーキ液圧伝達用配管(ブレーキチューブ40)であるのが好ましい(請求項2)。
【0011】
また、前記L字形ステー(7)の長片(71)は、ステー(7)の角部交点近傍個所と長片(71)の端部に配線支持部(取付け孔74、75)が形成されているのが好ましい(請求項3)。
ここで、L字形ステー(7)の長片(71)は、折曲可能に構成されているのが好ましい。
【0012】
そして、前記L字形ステー(7)の短片(72)の端部に配管支持部(取付け孔76)が形成されているのが好ましい(請求項4)。そして、当該短片(72)に段差部(73)を形成しているのが好ましい。
ただし、L字形ステーの短片は、段差部(73)を形成せずに、平板であっても良い。
【発明の効果】
【0013】
上述する構成を具備する本発明の配線及び配管の支持構造によれば、配線(20、30)はL字形ステー(7)の長片(71)で支持され、剛性が比較的低い配線であっても、支持されていない部分の湾曲を最低限に抑制して、レイアウトすることが可能である。
また、ステー(7)の短片(72)は剛性が比較的高い配管(40)を固定、支持することにより、剛体である配管と一体化するので、L字形の長片(71)を回転せしめる様な外力が作用しても、短片(72)及び配管(40)により、当該回転が阻止される。従って、ステー(7)の回転による緩みが防止される。
【0014】
また本発明によれば、配線(20、30)はL字形ステー(7)の長片(71)により固定、支持され、配管(40)はL字形ステー(7)の短片(72)により固定、支持されているので、配線(20、30)及び配管(40)はL字形ステー(7)により間隔を隔てて配置されることになる。そのため、振動により配線(20、30)が動いたとしても、配線(20、30)と配管(40)が干渉することは防止され、配線(20、30)が破損したり、或いは、配管(40)との干渉により配管(40)が磨耗したりしてしまうことも防止される。
【0015】
従って、本発明の配線及び配管の支持構造によれば、振動が激しい領域であっても、配線(20、30)や配管(40)の支持が困難な領域であっても、配線(20、30)及び配管(40)を支持することが出来るので、本発明の配線及び配管の支持構造を、アクスル(1)上の領域におけるセンサのハーネス及びブレーキ液圧伝達用配管の支持に適用することが可能である(請求項2)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、懸架用ばねとして、リーフスプリング(重ね板ばね)を用いたバスのリヤアクスルの一例であり、リヤアクスル回りの配管及び配線のリヤアクスルへの支持部分を示している。しかしながら、本発明は他の形式の懸架用ばねに適用し得ることは明らかである。
【0017】
図1において、符号2は懸架用スプリングのアクスルハウジング1への取付け部材であるスプリングシートを、符号3は懸架用のリーフスプリングを、符号4はリーフスプリング3をアクスルハウジング1へ固定するための1対のUボルトを、そして符号5はUボルト係合部材(パッド)をそれぞれ示している。
【0018】
アクスルハウジング1のアクスルチューブの角断面部分11における垂直面11に配管固定用のボス6Aが溶接によって取り付けられている。一方、アクスルハウジング1の傾斜面12にも配管固定用のボス6Bが溶接によって取り付けられている。
【0019】
傾斜面12の固定用のボス6Bには、ハーネス用クリップ8によって、2本のハーネス20、30が巻き込まれ、ハーネス用クリップ8の取付け穴が固定用ボス6Bの取付け穴に合わせられ、その上から、ブレーキチューブ40を巻き込んだブレーキチューブ用クリップ9が重ねられるようにボルト10によってして固定されている。
2本のハーネスの内の1本は輪速センサの検出信号伝達用ハーネス20であり、他方はブレーキライニングの摩耗度合いを知るための磨耗センサの検出信号伝達用ハーネス30である。
【0020】
アクスルチューブの角断面部分における垂直面11の固定用ボス6Aには、本発明の実施形態の構成をなすL字形のステー7がボルト10により固定されている。L字形のステー7には、ハーネス20、30がクリップ8を介して、また、ブレーキチューブ40がクリップ9を介して、固定用ボルト10によって固定されている。
図2はL字形のステー7の正面図を、図3はL字形のステー7の側面図を示している。
【0021】
図2、図3において、L字形のステー7は、長片71と、短片72と、長片71と短片72とが交差する角部交点77とを備え、全体がL字形に形成されている。L字形ステー7の長片71は、角部交点77近傍個所に取り付け孔74が、長片71の図2における右方の端部に取付け孔75が形成されている。
図3の例では、長片71の延長で角部交点77を含む部分から、短片72に移る位置に段差部73が設けられている。なお、この段差部73は取付け場所によっては格別に設けなくてもよく、ステー全体を平板状に構成することもできる。
【0022】
長片71の取付け孔74、75にはハーネス用のクリップ8によって、輪速センサの検出信号伝達用ハーネス20及びブレーキのライニングの摩耗度合いを知るための磨耗センサの検出信号伝達用ハーネス30が固定されるように構成されている。
なお、図3において、ハーネス20、30の上下方向の位置関係を図示とは逆にすることも可能である。
【0023】
L字形のステー(7)は長片(71)と短片(72)との境界を構成するステーの角部交点(77)において、1箇所のみで固定されるので、固定個所が制限される領域、例えばアクスル(1)上の領域であっても、配線(20、30)及び配管(40)を支持することが可能となる。
ここで、ステー7の長片71とハーネス用クリップ8との位置関係は、図2で示す例に限定される訳ではない。
例えば、図2では長片71の取付け孔74とステー7を固定するための孔(図8における孔80:図2では明示せず)とが同一位置となっているが、図7で示すように、長片71の取付け孔74と、ステー7を固定するための孔80とを別々の位置に形成しても良い。
また、ステー7をアクスル側に固定する位置(図2においては取付け孔74、図7においては孔80)は、図2や図7の位置に限らず、必要に応じて他の位置に形成しても良い。例えば、図2や図7の位置よりも右側に形成しても良い。
【0024】
短片72の取付け孔76にはブレーキ配管(ブレーキチューブ)用のクリップ9によって、ブレーキチューブ40が固定されるように構成されている。
なお、図3における符号6Aは固定用のボスを、符号11はアクスルハウジングの垂直面を示している。
【0025】
図4は、本実施形態の第1変形例で、図4の右側が、図2のL字形のステー7を左右勝手違いに形成したステー7Aを用い、アクスルハウジング1のセンターラインLcの左右で凡そ対称にレイアウトした例である。
【0026】
図5は、本実施形態の第2変形例で、図4の右側のL字形のステー7Aの長片側の先端を途中から上方を向くように形成した実施例ステー7Bを用いた例である。
【0027】
本実施形態の配線及び配管の支持構造によれば、L字形のステー7は角部交点77において、1箇所のみで固定されるので、固定個所が制限される領域、例えばアクスルハウジング1上であっても、ハーネス類20、30及び配管(例えば、ブレーキチューブ)40を支持することが可能となる。
【0028】
ここで、ハーネス20、30はL字形ステー7の長片71の2箇所で固定、支持され、且つ、支持部分の間隔を長片71の長さと同程度にすることが出来るので、剛性が比較的低い配線であっても、支持されていない部分(例えば、図1におけるLの領域)の湾曲を最低限に抑制して、レイアウトすることが可能である。
【0029】
また、ステー7の短片72は剛性が比較的高いブレーキチューブ40を固定、支持することにより、剛体であるブレーキチューブ40と一体化するので、L字形の長片71を回転せしめる様な外力が作用しても、短片72及びブレーキチューブ40により、当該回転が阻止される。従って、ステー7の回転による緩みが防止される。
【0030】
また本実施形態の配管・配線の支持構造によれば、配線であるハーネス20、30はL字形ステー7の長片71により固定、支持され、配管であるブレーキチューブ40はL字形ステー7の短片72により固定、支持されているので、ハーネス20、30及びブレーキチューブ40はL字形ステー7により間隔を隔てて配置されることになる。
そのため、振動によりハーネス20、30が動いたとしても、ハーネス20、30とブレーキチューブ40との干渉は防止でき、ハーネス20、30が破損したり、或いは、ハーネス20、30との干渉によりブレーキチューブ40が磨耗したりしてしまうことも防止される。
【0031】
従って、本実施形態の配線及び配管の支持構造によれば、振動が激しい領域であっても、配線や配管の支持が困難な領域であっても、ハーネス20、30及びブレーキチューブ40を支持することが出来るので、本実施形態の配線及び配管の支持構造を、アクスル上の領域におけるセンサのハーネス及びブレーキチューブの支持に適用することが可能である。
【0032】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態をリヤアクスルに適用した斜視図。
【図2】本実施形態で用いる配管・配線同時固定用のステーの正面図。
【図3】図2に対応する側面図。
【図4】本発明の実施形態の第1変形例を説明する態様図。
【図5】本発明の実施形態の第2変形例を説明する態様図。
【図6】従来技術における配管・配線の支持構造を説明する態様図。
【図7】さらに別の変形例で用いる配管・配線同時固定用のステーの正面図。
【符号の説明】
【0034】
1・・・アクスルハウジング
2・・・スプリングシート
3・・・リーフスプリング
4・・・Uボルト
6A、6B・・・固定用ボス
7・・・L字形のステー
8・・・ハーネス用クリップ
9・・・配管用クリップ
11・・・垂直面
12・・・傾斜面
71・・・長辺
72・・・短辺
73・・・段差部
74〜76・・・取付け孔
77・・・角部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体がL字形のステーを有し、前記ステーの長片に複数形成された支持部により剛性が低い配線を支持し、ステーの短片に形成された支持部により剛性が高い配管を支持していることを特徴とする配線及び配管の支持構造。
【請求項2】
L字形のステーはアクスルに設けられたアクスルボスにボルトにより固定されており、前記配線は車輪速センサの検出信号伝達用ハーネス及び摩耗センサの検出信号伝達用ハーネスであり、前記配管はブレーキ液圧伝達用配管である請求項1の配線及び配管の支持構造。
【請求項3】
前記L字形ステーの長片は、ステーの角部交点近傍個所と長片の端部に配線支持部が形成されている請求項1、2の何れかの配線及び配管の支持構造。
【請求項4】
前記L字形ステーの短片の端部に配管支持部が形成されている請求項1〜3の何れか1項の配線及び配管の支持構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−151228(P2010−151228A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−329749(P2008−329749)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000003908)UDトラックス株式会社 (1,028)
【Fターム(参考)】