説明

配線器具取付装置

【課題】螺子体の螺子体取付部への取付作業を容易にすることができるとともに、螺子体の螺子体取付部からの抜け規制力を向上させることができ、さらに、挿入孔に対する螺子体の挿入作業を容易に行うことができる配線器具取付装置を提供する。
【解決手段】螺子体取付部20の収容空間30には螺子体係止部材40が収容されるとともに、収容空間30は幅広の第1収容空間31と幅狭の第2収容空間32とからなる。第2収容空間32により、螺子体係止部材40の挿入孔に対する軸部18bの挿入に伴う係止爪42の移動、及び螺子体係止部材40の撓み変形が許容される。ビス18において、軸部18bの先端には基端から先端に向かうに従い小径となるように先細状の案内突部18cが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、螺子体と、螺子体が挿通可能な挿通孔が前面に形成されるとともに螺子体の軸部に係止する板状の螺子体係止部材が内部に収容された螺子体取付部を備え、螺子体取付部に螺子体を挿入することにより配線器具を取り付け可能とした枠状又は箱状をなす配線器具取付体と、からなる配線器具取付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建物の壁面に配線器具を設置するため、壁裏には配線用ボックス(配線器具取付体)が設置されている。そして、配線用ボックスのボス部(螺子体取付部)に収容されたナットに配線器具固定用のビス(螺子体)を螺合することにより、配線器具が壁面に設置される。しかし、ビスによる螺合作業は、ビスをドライバーで回転させて締め込んでいかなければならず、大変面倒でかつ時間のかかるものであった。そこで、ナットの替わりにボス部に薄板の金属板よりなる部材を収容してなる配線用ボックスが提案されている(特許文献1及び特許文献2参照)。
【0003】
特許文献1の配線用ボックスは、内部空間を囲む周壁と、その周壁の内面側に位置する一対のボス部とを備える。ボス部は、配線器具を取り付けるためのビスが挿入される挿入孔を有するとともに、ボス部には、弾性係合片と受面とが設けられている。弾性係合片は、挿入孔に対して内部空間側とは反対側となる外方側に位置して、挿入孔に向かって延設され、先端が、挿入孔に挿入されたビス軸部に係合する。一方、受面は、挿入孔に対して内部空間側となる内方側に位置して、弾性係合片により押し付けられるビス軸部を受けるものである。
【0004】
そして、配線器具を配線用ボックスに取り付ける際、挿入孔へのビス軸部の挿入に対して弾性係合片は、ビス軸部の挿入方向へ傾斜するように弾性変形することで、ビス軸部の挿入方向への移動を許容する。ビスの挿入を終えると弾性係合片の先端がビス軸部と係合し、配線器具が配線用ボックスに取り付けられる。一方、挿入孔からのビス軸部の抜けに対しては、ビス軸部と係合した弾性係合片が、ビス軸部の抜け方向へ弾性変形しようとして、ビス軸部を受面に押し付けることにより、弾性係合片の抜け方向への弾性変形を困難にして、ビス軸部の抜け方向への移動を阻止する。
【0005】
また、特許文献2の配線用ボックスは、前面に開口を有するボックス本体と、そのボックス本体に配線器具を前方側からビスを用いて取付固定するための固定部とを備える。この固定部は、相対向する第1係合片と第2係合片とを有する。それら第1及び第2係合片には、それぞれビスのねじ山と係合する係合部が設けられている。また、第1及び第2係合片は、弾性変形可能で、相対的に、第1係合片のばね定数が大で、第2係合片のばね定数が小となるように形成されている。
【0006】
そして、配線器具を配線用ボックスに取り付ける際、固定部に、前方側からビスを押し込むように押圧する。すると、第1及び第2係合片に設けられた係合部がビスの軸部に押圧され、第2係合片、あるいは、第1及び第2係合片が弾性変形して、各係合部は軸部から離脱し、軸部は固定部へ進入する。そして、ビスの押し込みを終えると、係合部はビスの軸部と係合し、配線器具は配線用ボックスに取付固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−177377号公報
【特許文献2】特開2005−12877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、特許文献1の配線用ボックスにおいて、挿入孔へのビス軸部の挿入を容易とするために弾性係合片の弾性力を弱くすると、弾性係合片がビス軸部に係合した状態からのビス軸部の抜けへの規制力が弱くなり好ましくない。逆に、ビス軸部の抜けへの規制力を強くするために弾性係合片の弾性力を強くすると、挿入孔へのビス軸部の挿入の際の弾性係合片による抵抗が大きくなり、ビスのボス部への取付作業が困難になり好ましくない。また、特許文献2の配線用ボックスにおいても、固定部へのビスの挿入を容易とするために第1及び第2係合片の弾性力を弱くすると、第1及び第2係合片の係合部がビスの軸部に係合した状態からの抜けへの規制力が弱くなり好ましくない。逆に、ビスの抜けへの規制力を強くするために第1及び第2係合片の弾性力を強くすると、固定部へのビスの挿入の際の各係合片による抵抗が大きくなり、ビスの固定部への取付作業が困難になり好ましくない。
【0009】
本発明は、螺子体の螺子体取付部への取付作業を容易にすることができるとともに、螺子体の螺子体取付部からの抜け規制力を向上させることができ、さらに、挿入孔に対する螺子体の挿入作業を容易に行うことができる配線器具取付装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、螺子体と、前記螺子体が挿通可能な挿通孔が前面に形成されるとともに該螺子体の軸部に係止する板状の螺子体係止部材が内部に収容された螺子体取付部を備え、該螺子体取付部に前記螺子体を挿入することにより配線器具を取り付け可能とした枠状又は箱状をなす配線器具取付体と、からなる配線器具取付装置であって、前記螺子体係止部材には前記螺子体が挿入される挿入孔が形成されるとともに、前記挿通孔から前記螺子体取付部内へ挿入された前記軸部に係止して前記螺子体の螺子体取付部からの反挿入方向への抜け出しを規制すべく先端同士が互いに対向し、かつ前記螺子体の挿入方向に向かうように前記螺子体係止部材から延びる係止爪が少なくとも一対形成され、さらに、前記螺子体係止部材は前記軸部が前記挿入孔に挿入されたときに前記係止爪の先端同士の間隔を広げるために撓み変形可能に形成されており、前記螺子体取付部には、該螺子体係止部材を収容する収容空間が形成されるとともに、該収容空間により、前記挿入孔への前記軸部の挿入に伴う前記係止爪の移動、及び前記螺子体係止部材の撓み変形が許容され、前記軸部の先端には案内突部が形成されるとともに、該案内突部は前記軸部側の基端側より先端側が小径に形成されていることを要旨とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の配線器具取付装置において、前記案内突部は、基端から先端に向かうに従い徐々に小径をなすように先細状に形成されていることを要旨とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の配線器具取付装置において、前記螺子体係止部材は、前記螺子体の挿入方向奥側に向かって湾曲する湾曲部を備えるとともに、該湾曲部の両端から屈曲形成された当接部を備えており、前記収容空間は、前記螺子体取付部への前記螺子体の挿入方向に沿って手前側が幅広く、かつ奥側が幅狭に形成されており、前記幅狭に形成された空間により、前記挿入孔への前記螺子体の挿入に伴う前記係止爪の移動、及び前記湾曲部の撓み変形が許容され、さらに、前記螺子体取付部の内面であって前記幅狭の空間より前記挿入方向の手前側となる位置には、前記挿入孔への前記軸部の挿入の際に前記当接部それぞれが当接支持される支持部が形成されていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、螺子体の螺子体取付部への取付作業を容易にすることができるとともに、螺子体の螺子体取付部からの抜け規制力を向上させることができ、さらに、挿入孔に対する螺子体の挿入作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態の配線用ボックス及び螺子体係止部材を示す斜視図。
【図2】螺子体取付部内を示す平断面図。
【図3】螺子体取付部を示す部分拡大平面図。
【図4】螺子体取付部内を示す部分拡大縦断面図。
【図5】案内突部を螺子体係止部材の挿入孔に挿入した状態を示す部分拡大断面図。
【図6】ビスを増し締めしたときの螺子体係止部材を示す部分拡大平断面図。
【図7】配線用ボックスに配線器具を取り付けた状態を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を、配線器具取付体としての配線用ボックスと、螺子体としてのビスとからなる配線器具取付装置に具体化した一実施形態を図1〜図7にしたがって説明する。
図7に示すように、配線器具取付装置10は、配線用ボックス11と、ビス18とから形成されている。まず、配線用ボックス11について説明する。なお、以下の説明において配線用ボックス11の「上」「下」は、図1に示す矢印Y1の方向を上下方向とし、「左」「右」は、図1に示す矢印Y2の方向を左右方向とし、「前」「後」は、図1に示す矢印Y3の方向を前後方向とする。
【0016】
図1に示すように、配線用ボックス11は、前面に開口する有底四角箱状に形成されている。配線用ボックス11は、矩形板状をなす底壁12と、底壁12の周縁から立設された側壁としての上側壁13、下側壁14、左側壁15、及び右側壁16とから形成されている。上側壁13、下側壁14、左側壁15、及び右側壁16それぞれは矩形板状に形成されている。
【0017】
上側壁13及び下側壁14の内面それぞれにおいて、上側壁13及び下側壁14の長さ方向における中央部には、細長四角箱状をなす螺子体取付部20が、螺子体取付部20における長さ方向が上側壁13及び下側壁14の長さ方向に沿って延びるように一体形成されている。図7に示すように、螺子体取付部20は、配線用ボックス11に対しビス18により配線器具19を取り付けるために配線用ボックス11に設けられている。なお、ビス18は、頭部18aと、外面に螺子が形成された軸部18bと、軸部18bの先端に設けられた案内突部18cとから形成されている。案内突部18cの直径は、軸部18bの直径より小さくなっている。また、図5に示すように、案内突部18cは、軸部18b(基端)から先端に向かうに従い徐々に小径となるように形成され、先細状に形成されている。案内突部18cの基端の直径は軸部18bの直径より僅かに小さく、案内突部18cの先端での直径は、軸部18bの直径の1/2になっている。また、案内突部18cの先端は、尖ることなくビス18の軸線に対し直交する平坦面状に形成されている。
【0018】
図1に示すように、螺子体取付部20は、上側壁13及び下側壁14の長さ方向(左右方向)へ細長に延びるように形成されている。螺子体取付部20は、螺子体取付部20の前面が上側壁13及び下側壁14の開口端と面一となるように形成されている。また、螺子体取付部20において、ビス18の挿入方向手前側に位置する壁部20aには、螺子体取付部20の前面からビス18が挿通可能な挿通孔21が形成されるとともに、この挿通孔21から螺子体取付部20内にビス18の軸部18b及び案内突部18cが挿入可能になっている。また、壁部20aにおいて、挿通孔21の左右両側には透孔23が壁部20aを前後方向(厚み方向)に貫通して形成されている。
【0019】
図2に示すように、螺子体取付部20へのビス18の挿入方向(矢印Xに示す)において、挿通孔21より奥側に位置する螺子体取付部20の壁部20bには、ビス18の軸部18b及び案内突部18cが挿通可能なガイド孔22が形成されている。挿通孔21とガイド孔22は、螺子体取付部20の厚み方向(ビス18の挿入方向)において互いに対向する位置に形成されている。ビス18の挿入方向に沿った、挿通孔21とガイド孔22の間隔(壁部20aと壁部20bの間隔)は、案内突部18cの軸方向に沿った長さより短くなっている。このため、ビス18の軸部18bが挿通孔21内に位置するうちに案内突部18cをガイド孔22内に挿入することが可能になっている。
【0020】
各螺子体取付部20の内部には収容空間30が形成されるとともに、この収容空間30にはビス18の軸部18bが係止可能な螺子体係止部材40が収容されている。図1に示すように、螺子体係止部材40は、矩形板状をなす金属の薄板を所定形状に成形してなるものである。螺子体係止部材40は、初期状態では弓なりに湾曲するように形成された湾曲部41を備えるとともに、この湾曲部41の両端から屈曲形成された当接部45を備えている。
【0021】
湾曲部41は軸部18bによる押圧によって全体が撓み変形可能に形成されるとともに、撓み変形した後に、変形する前の原形状に復帰するように弾性変形可能に形成されている。湾曲部41には、湾曲部41の長辺方向の両側から中央部に向けて延びる一対の係止爪42が形成されている。各係止爪42は、螺子体係止部材40を形成する金属板を所定形状に切り欠き、さらに、係止爪42以外の湾曲部41全体を長辺方向に沿って弓なりに湾曲させることにより係止爪42の先端側が湾曲部41から突出するように形成されている。すなわち、図2に示すように、係止爪42の先端側は、湾曲部41において、円弧状に膨出する側の面から突出している。また、一対の係止爪42は、互いの先端同士を対向させるように湾曲部41から延設されている。
【0022】
各係止爪42それぞれは、所要の強度を有するとともに、軸部18bによる押圧によって撓み変形可能に形成されるとともに、撓み変形した後に、変形する前の原形状に自身で復帰するように弾性変形可能に形成されている。湾曲部41からの係止爪42の延設方向に沿った係止爪42の長さ(係止爪42の基端から先端までの長さ)と、係止爪42の基端から湾曲部41の先端までの長さは同じになっている。
【0023】
図1に示すように、各係止爪42の先端それぞれは円弧状に切り欠かれるとともに、その切り欠かれた部位が対向することにより円孔状をなす挿入孔43が形成されている。この挿入孔43の直径は、ビス18の軸部18bにおける直径より僅かに小さく形成されるとともに、図4に示すように、案内突部18cにおける直径より大きく形成されている。図1に示すように、湾曲部41において、係止爪42の延設方向に直交する短辺方向で挿入孔43を挟む位置には、湾曲部41の撓み変形を補助する切欠部44が形成されている。切欠部44は、挿入孔43を径方向に挟む位置にある湾曲部41の両側部41aそれぞれを切り欠き形成してなる。そして、湾曲部41は、ビス18の軸部18bが挿入孔43に挿入されたときに一対の係止爪42の先端同士の間隔を広げるために撓み変形可能に形成されている。また、図1に示すように、湾曲部41及び当接部45は、挿入孔43の中心点を通過し、かつ湾曲部41の短辺方向に延びる中心線に対し線対称になるように形成されている。
【0024】
当接部45は、湾曲部41の円弧に対し交差するように湾曲部41の長さ方向両端に形成されている。当接部45は平板状に形成されている。そして、両当接部45同士の間に湾曲部41が架け渡されている。また、湾曲部41が初期状態にあるとき、両当接部45において、湾曲部41が膨出しない側の面同士は同一平面上に位置している。
【0025】
図2に示すように、上記構成の螺子体係止部材40は、挿入孔43が螺子体取付部20の挿通孔21に臨むように螺子体取付部20の収容空間30内に収容され、詳細には、螺子体係止部材40は、挿入孔43が挿通孔21と同一軸線上に位置するように収容空間30内に収容されている。収容空間30は、螺子体取付部20へのビス18の挿入方向に沿った手前側で幅広に形成された第1収容空間31と、ビス18の挿入方向において第1収容空間31より奥側に位置し、かつ第1収容空間31より幅狭に形成された第2収容空間32とから形成されている。
【0026】
ビス18の挿入方向における第1収容空間31の開口幅は、当接部45の厚みより大きくなっている。また、螺子体取付部20の長さ方向(ビス18の挿入方向に直交する方向)に沿った第1収容空間31の開口幅は、平板状に変形した螺子体係止部材40の長辺方向に沿った全体長さより僅かに長く形成されている。
【0027】
収容空間30を形成する螺子体取付部20の内面において、第1収容空間31と第2収容空間32の境界であり、ビス18の挿入方向における第2収容空間32より手前側となる位置には支持部33が形成されている。また、螺子体取付部20の長さ方向(ビス18の挿入方向に直交する方向)に沿った第2収容空間32の開口幅は、弓なりに湾曲する初期状態における湾曲部41の長辺方向に沿った長さより僅かに長く又は同じに形成成されている。
【0028】
さらに、螺子体取付部20の長さ方向(ビス18の挿入方向に直交する方向)に沿った支持部33の幅は、螺子体係止部材40の長辺方向に沿った当接部45の長さより僅かに長く形成されている。また、収容空間30は、挿通孔21の中心点を通過し、かつ螺子体取付部20の高さ方向(上下方向)へ延びる中心線に対し、第2収容空間32及び支持部33が線対称となるように形成されている。
【0029】
そして、螺子体係止部材40は、湾曲部41全体が、第2収容空間32を利用し、当接部45が第1収容空間31を利用して収容空間30内に収容可能になっている。当接部45は、第1収容空間31において、ビス18の挿入方向及び反挿入方向への移動が許容された状態で収容されている。そして、螺子体係止部材40は、挿入孔43が挿通孔21と同一軸線上に位置するように収容空間30内に収容されているが、配線用ボックス11の傾動等により、当接部45が支持部33から離間することがある。このため、螺子体係止部材40は、収容空間30内に多少のガタを有した状態で収容されている。また、螺子体係止部材40は、挿入孔43が湾曲部41の長辺方向両端の当接部45よりもビス18の挿入方向奥側に位置するように湾曲した状態で収容空間30内に収容可能になっている。
【0030】
また、当接部45において、ビス18の挿入方向奥側の面は支持部33に当接可能になっている。第2収容空間32におけるビス18の挿入方向に沿った開口幅は、当接部45が支持部33に支持された状態で、挿入孔43への軸部18bの挿入に伴う湾曲部41の撓み変形、及び係止爪42の撓み変形(移動)を許容する長さに設定されている。
【0031】
また、収容空間30内では、螺子体係止部材40は湾曲部41の長辺方向の中央部が、第2収容空間32に向けて膨出するように配設されるとともに、螺子体係止部材40は当接部45以外は螺子体取付部20の内面に当接していない。このため、湾曲部41は、第2収容空間32内で撓み変形が許容される。
【0032】
さらに、当接部45が支持部33に当接支持された状態では、係止爪42は第1収容空間31から第2収容空間32に向けて斜めに延びるとともに、第2収容空間32内に自由端となった状態で配設されている。そして、係止爪42が第2収容空間32内で自由端となった状態で配設されているため、第2収容空間32内での係止爪42の移動(撓み変形)が許容されるようになっている。
【0033】
図1及び図3に示すように、上側壁13及び下側壁14には、それら上側壁13及び下側壁14を貫通して、配線用ボックス11外と第1収容空間31とを連通させる連通孔36が形成されている。上側壁13及び下側壁14の外面における連通孔36の開口形状において、ビス18の挿入方向に沿った連通孔36の開口幅は、同挿入方向に沿った第1収容空間31の開口幅より広く形成されている。また、ビス18の挿入方向に沿った連通孔36の開口幅は、上側壁13及び下側壁14の外面側から第1収容空間31に向かうに連れて徐々に狭くなり、第1収容空間31の開口幅より狭くなっている。さらに、ビス18の挿入方向に直交する方向に沿った連通孔36の開口幅は、第1収容空間31の開口幅と同じになっている。
【0034】
そして、この連通孔36から収容空間30内に螺子体係止部材40が挿入されるようになっている。螺子体係止部材40は、初期状態では湾曲部41が湾曲しているため、湾曲部41を平板状に変形させて螺子体係止部材40を連通孔36に挿入する。そして、収容空間30内に螺子体係止部材40が収容されると、湾曲部41の原形状への復帰により湾曲部41は弓なりの初期状態で収容空間30内に収容される。
【0035】
図4に示すように、螺子体取付部20の内面において、収容空間30と連通孔36の境界となる位置は規制部51を形成している。この規制部51には、収容空間30内に収容された螺子体係止部材40の湾曲部41が係合して、螺子体係止部材40の収容空間30からの抜け出しが規制されている。
【0036】
そして、上記螺子体取付部20を備えた配線用ボックス11と、ビス18とから本実施形態の配線器具取付装置10が形成されている。
さて、上記構成の配線用ボックス11に配線器具19を取り付けるには、まず、図7に示すように、配線器具19を配線器具保持枠50に保持させる。次に、配線器具保持枠50を貫通させた一対のビス18それぞれを、各螺子体取付部20の挿通孔21に挿通する。このとき、図5に示すように、挿通孔21とガイド孔22の間隔は、案内突部18cの軸方向に沿った長さより短くなっている。このため、ビス18の軸部18bが係止爪42を押圧する前に、案内突部18cが挿入孔43に挿入されるとともにガイド孔22に進入するようになっている。すなわち、案内突部18cが挿通孔21から挿入孔43を貫通してガイド孔22内に挿入される。
【0037】
続いて、ビス18を螺子体取付部20内に押し込む。このとき、螺子体係止部材40が、挿入孔43が挿通孔21と同一軸線上に位置するように湾曲部41が第2収容空間32に収容された状態で収容空間30内に収容されていれば、軸部18bが挿通孔21内で多少軸振れしても、図4の2点鎖線に示すように、ビス18の挿入方向において、先細状の案内突部18cの先に挿入孔43が位置している。よって、案内突部18cが挿入孔43より外側の湾曲部41に当接することなく挿入孔43に挿入される。
【0038】
万一、螺子体係止部材40が、湾曲部41が第2収容空間32から位置ずれし、挿入孔43が挿通孔21から位置ずれしてしまっているとき、ビス18を螺子体取付部20内に押し込むと、案内突部18cは先端ほど小径をなす先細状であるため、位置ずれした挿入孔43に対し案内突部18cを挿入することができる。なお、挿入孔43が挿通孔21から位置ずれしてしまった状態とは、例えば、一対の当接部45のうち一方が支持部33から離間するとともに他方が支持部33に当接し、螺子体係止部材40全体が、ビス18の挿入方向に沿って傾いた状態のことである。
【0039】
そして、ビス18を、挿通孔21と同一軸線上に位置するように螺子体取付部20内に押し込むと、挿入孔43内での案内突部18cの直径は徐々に大きくなっていくため、係止爪42の縁に案内突部18cが接触する。続けてビス18を、挿通孔21と同一軸線上に位置するように螺子体取付部20内に押し込むと、案内突部18cが係止爪42の縁に摺接する。
【0040】
すると、案内突部18cが拡径するのに従い挿入孔43がビス18と同一軸線上に位置するように、すなわち、挿入孔43が挿通孔21と同一軸線上に位置するように螺子体係止部材40の位置が修正される。そして、軸部18bが係止爪42に接触する時点では、挿入孔43が挿通孔21と同一軸線上に位置するように湾曲部41が第2収容空間32に位置決めされるとともに、当接部45が支持部33に当接する。
【0041】
そして、両当接部45それぞれが支持部33に当接すると、螺子体係止部材40は、湾曲部41が第2収容空間32内に収容されるとともに、挿入孔43が挿通孔21と同一軸線上に位置するように、湾曲部41が収容空間30内の所定位置に位置決めされる。その結果、案内突部18cが挿入孔43に挿入される。
【0042】
そして、軸部18bにより両係止爪42の先端が第2収容空間32に向けて押圧されると、当接部45が支持部33に支持された状態で、係止爪42は第2収容空間32内で移動(撓み変形)する。さらに、ビス18を螺子体取付部20内に押し込むと、係止爪42が軸部18bによって押圧されることにより湾曲部41全体が撓み変形する。すなわち、湾曲部41は、一対の係止爪42の先端同士が離れて軸部18bの進入が許容されるように、湾曲部41の曲率が移動前(撓み変形前)の曲率より大きくなるように変形する。
【0043】
このとき、第2収容空間32では、湾曲部41における中央部の挿入方向への撓み変形が許容される。すなわち、第2収容空間32によって湾曲部41全体の撓み変形が許容される。同時に、第2収容空間32によって係止爪42の移動(撓み変形)が許容される。その後、撓み変形した係止爪42が弾性変形により原形状に復帰すると、係止爪42の先端が軸部18bに係止する。また、ビス18の螺子体係止部材40に対する押圧が停止されると、撓み変形した湾曲部41が弾性変形により原形状(初期状態)に復帰する。このとき、第2収容空間32によって湾曲部41全体の原形状への復帰のための変形が許容される。
【0044】
そして、軸部18bに係止爪42が係止した後、配線器具保持枠50を螺子体取付部20に取り付けるために、ビス18を螺子体係止部材40に対して螺進させると(増し締めすると)、図6に示すように、螺子体係止部材40が壁部20aに向けて引き寄せられ、湾曲部41全体が壁部20a内面に当接し、平板状に変形する。さらに、ビス18を螺進させると、ビス18の螺進が停止したときに配線器具19が配線用ボックス11に取り付けられる。
【0045】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)螺子体取付部20内に、螺子体係止部材40における湾曲部41全体の撓み変形を許容する収容空間30(第2収容空間32)を形成するとともに、係止爪42をその移動を許容しつつ収容する収容空間30(第2収容空間32)を形成した。このため、係止爪42が軸部18bによって押圧されたとき、その押圧力が係止爪42を介して湾曲部41に伝わり、湾曲部41全体が収容空間30内で撓み変形する。よって、この湾曲部41全体の撓み変形により、係止爪42によるビス18の挿入抵抗が低減され、螺子体係止部材40(螺子体取付部20)へのビス18の挿入作業を容易に行うことができる。一方、係止爪42それぞれは、所要の強度を有し、ビス18を反挿入方向へ移動させても係止爪42が軸部18bに係止した状態が維持され、ビス18の螺子体取付部20からの抜け出しを防止することができる。よって、配線器具取付装置10によれば、ビス18の螺子体取付部20への取付作業を容易にすることができるとともに、ビス18の螺子体取付部20からの抜け規制力を向上させることができる。
【0046】
(2)ビス18の案内突部18cを、基端から先端に向かうに従い小径となるように先細状に形成した。このため、螺子体取付部20内に挿入されたビス18を螺子体係止部材40の挿入孔43に挿入するとき、ビス18が軸振れしても案内突部18cの先端を挿入孔43と対向するように位置させることができる。よって、ビス18を挿入方向へ移動させたとき、案内突部18cを挿入孔43に確実かつ容易に挿入することができ、その結果として、配線器具19を配線用ボックス11に取り付ける作業を容易に行うことができる。
【0047】
(3)ビス18の案内突部18cを、基端から先端に向かうに従い小径となるように先細状に形成した。このため、万一、螺子体係止部材40が、挿入孔43が挿通孔21と同一軸線上に位置していない状態で収容空間30に収容されていても、案内突部18cを挿入孔43に挿入することができる。さらに、案内突部18cが先端から基端に向かうに従い大径をなすため、挿入孔43への挿入が進むことにより、案内突部18cを係止爪42に摺接させることができる。このため、案内突部18cの係止爪42に対する摺接により、位置ずれした螺子体係止部材40を挿入孔43が挿通孔21と同一軸線上に位置するようにすることができ、軸部18bを挿入孔43に挿入する作業を容易に行うことができる。
【0048】
(4)案内突部18cの先端における直径は、軸部18bの直径の1/2になっている。このため、ビス18の軸振れの範囲が多少大きくても、案内突部18cの先端を挿入孔43と対向するように位置させることができる。
【0049】
(5)螺子体係止部材40において、湾曲部41の両端に当接部45を形成するとともに、螺子体取付部20の内面に一対の支持部33を形成した。このため、螺子体係止部材40が収容空間30内で、当接部45が支持部33から離間していても、ビス18の軸部18bによって係止爪42が挿入方向へ押圧されたとき、当接部45が支持部33に当接する。このとき、当接部45は、湾曲部41に対し屈曲し、かつ平板状をなすため、一対の当接部45それぞれが支持部33に当接すると、湾曲部41を第2収容空間32内へ確実に配置することができる。
【0050】
(6)第2収容空間32の開口幅は、弓なりに湾曲する初期状態における湾曲部41の長辺方向に沿った長さより僅かに長く又は同じに形成されている。ここで、例えば第2収容空間32の開口幅が、初期状態における湾曲部41の長辺方向に沿った長さより短くなっていると、湾曲部41を第2収容空間32に収容し、位置決めすることができない。よって、軸部18bによって湾曲部41が挿入方向へ押圧されたとき、湾曲部41を第2収容空間32に収容させ、当接部45を支持部33に確実に当接支持させることができる。
【0051】
(7)螺子体取付部20の長さ方向(ビス18の挿入方向に直交する方向)に沿った第1収容空間31の開口幅は、平板状に変形した螺子体係止部材40の長辺方向に沿った全体長さより僅かに長く形成されている。よって、螺子体係止部材40の変形を第1収容空間31で許容することができ、ビス18の増し締めを行うことができる。
【0052】
(8)湾曲部41及び当接部45は、挿入孔43の中心点を通過し、かつ湾曲部41の短辺方向に延びる中心線に対し線対称になるように形成されている。また、第2収容空間32及び支持部33は、挿通孔21の中心点を通過し、かつ螺子体取付部20の高さ方向(上下方向)へ延びる中心線に対し線対称となるように形成されている。このため、両当接部45が各支持部33に当接支持されると、支持部33間の中央に位置する挿通孔21に対し、挿入孔43を同一軸線上に配置することができる。
【0053】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 案内突部18cは、軸部18b側の基端側は同径をなす円柱状に形成され、その円柱状をなす部位の先端に、その円柱状をなす部位より小径をなす円柱状の小径部を形成してもよい。
【0054】
○ 案内突部18cは、軸部18b側の基端から先端に向けて直径が段階的に小径をなすように段差状に形成してもよい。
○ 螺子体係止部材40は、湾曲部41と当接部45とを備えるとしたが、当接部45を省略し、螺子体係止部材40全体が弓なりに湾曲するように形成してもよい。このように構成した場合、螺子体係止部材40全体が湾曲していると、当接部45が形成されていない場合と比較して、螺子体係止部材40は収容空間30内で位置ずれしやすく、挿入孔43が挿通孔21から位置ずれしやすい。しかし、ビス18の案内突部18cが基端側より先端側が小径に形成されていると、位置ずれした挿入孔43に対し案内突部18cを挿入しやすくでき、さらには、挿入孔43に挿入された後に、螺子体係止部材40の位置ずれを修正して、挿入孔43を挿通孔21と同一軸線上に位置させることができる。よって、螺子体係止部材40全体が湾曲していても、案内突部18cが基端側より先端側が小径に形成されていることで、挿入孔43に対するビス18の挿入作業を容易に行うことができる。
【0055】
○ 実施形態において、当接部45は平板状でなく波板状や円弧状のように任意に変更してもよい。
○ 実施形態において、湾曲部41が初期状態にあるとき、両当接部45を、湾曲部41が膨出しない側の面同士が同一平面上に位置するように形成したが、同一平面上に位置していなくてもよい。
【0056】
○ 実施形態において、配線器具取付体としての四角枠状をなす配線器具取付枠に螺子体取付部20を設け、配線器具取付枠とビス18とから配線器具取付装置を形成してもよい。
【0057】
○ 実施形態において、上側壁13及び下側壁14の外面における連通孔36の開口を粘着テープによって閉鎖してもよい。
○ 実施形態において、螺子体としてのビス18の代わりにボルトや木螺子を用いてもよい。
【0058】
○ 螺子体取付部20にビス18を挿入する際、係止爪42が撓み変形せず、湾曲部41の撓み変形のみを利用して軸部18bの挿入孔43への挿入を許容してもよい。なお、係止爪42の抜け規制力を維持する範囲内では、係止爪42は補助的に撓んでもよい。
【0059】
○ 螺子体係止部材40における湾曲部41は、平面視が楕円形状や細長円盤状に形成されていてもよい。
○ 実施形態において、螺子体取付部20の内部は、第1収容空間31及び第2収容空間32が形成されるとともに、第2収容空間32よりビス18の挿入方向奥側がさらに第2収容空間32より幅広に形成されていてもよい。この場合、第2収容空間32よりビス18の挿入方向奥側の空間は、第1収容空間31と同じ幅に形成されていてもよいし、第1収容空間31より幅広に形成されていてもよい。
【0060】
○ 実施形態において、螺子体係止部材40における係止爪42は3つ又は4つ以上形成されていてもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
【0061】
(イ)前記案内突部の先端での直径は、前記軸部の直径の1/2になっている請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の配線器具取付装置。
(ロ)前記螺子体係止部材は、前記挿入孔が前記螺子体取付部の挿通孔に臨むように前記収容空間に収容されている請求項1〜請求項3、及び技術的思想(イ)のうちいずれか一項に記載の配線器具取付装置。
【符号の説明】
【0062】
10…配線器具取付装置、11…配線器具取付体としての配線用ボックス、18…螺子体としてのビス、18b…軸部、18c…案内突部、19…配線器具、20…螺子体取付部、21…挿通孔、30…収容空間、31…幅広に形成された空間としての第1収容空間、32…幅狭に形成された空間としての第2収容空間、33…支持部、40…螺子体係止部材、41…湾曲部、42…係止爪、43…挿入孔、45…当接部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
螺子体と、
前記螺子体が挿通可能な挿通孔が前面に形成されるとともに該螺子体の軸部に係止する板状の螺子体係止部材が内部に収容された螺子体取付部を備え、該螺子体取付部に前記螺子体を挿入することにより配線器具を取り付け可能とした枠状又は箱状をなす配線器具取付体と、
からなる配線器具取付装置であって、
前記螺子体係止部材には前記螺子体が挿入される挿入孔が形成されるとともに、前記挿通孔から前記螺子体取付部内へ挿入された前記軸部に係止して前記螺子体の螺子体取付部からの反挿入方向への抜け出しを規制すべく先端同士が互いに対向し、かつ前記螺子体の挿入方向に向かうように前記螺子体係止部材から延びる係止爪が少なくとも一対形成され、さらに、前記螺子体係止部材は前記軸部が前記挿入孔に挿入されたときに前記係止爪の先端同士の間隔を広げるために撓み変形可能に形成されており、
前記螺子体取付部には、該螺子体係止部材を収容する収容空間が形成されるとともに、該収容空間により、前記挿入孔への前記軸部の挿入に伴う前記係止爪の移動、及び前記螺子体係止部材の撓み変形が許容され、
前記軸部の先端には案内突部が形成されるとともに、該案内突部は前記軸部側の基端側より先端側が小径に形成されている配線器具取付装置。
【請求項2】
前記案内突部は、基端から先端に向かうに従い徐々に小径をなすように先細状に形成されている請求項1に記載の配線器具取付装置。
【請求項3】
前記螺子体係止部材は、前記螺子体の挿入方向奥側に向かって湾曲する湾曲部を備えるとともに、該湾曲部の両端から屈曲形成された当接部を備えており、前記収容空間は、前記螺子体取付部への前記螺子体の挿入方向に沿って手前側が幅広く、かつ奥側が幅狭に形成されており、前記幅狭に形成された空間により、前記挿入孔への前記螺子体の挿入に伴う前記係止爪の移動、及び前記湾曲部の撓み変形が許容され、さらに、前記螺子体取付部の内面であって前記幅狭の空間より前記挿入方向の手前側となる位置には、前記挿入孔への前記軸部の挿入の際に前記当接部それぞれが当接支持される支持部が形成されている請求項1又は請求項2に記載の配線器具取付装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−72119(P2011−72119A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−220799(P2009−220799)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000243803)未来工業株式会社 (550)
【Fターム(参考)】